個人投資家の実態―現役世代の投資家は何を見ているのか―

一瀬龍太朗氏(以下、一瀬):みなさま、こんにちは。リンクコーポレイトコミュニケーションズの一瀬と申します。本日はお忙しい中、当セミナーにご参加いただきまして、ありがとうございます。これより「個人投資家の実態―現役世代の投資家は何を見ているのか―」というタイトルで、当社およびログミーFinanceの共催セミナーを開催します。よろしくお願いします。

今回、このセミナーですが、実は少しシリーズものになっています。前回は、サーバーワークスという会社にお越しいただき、IR活動の先進的な取り組みというところで、根掘り葉掘りインタビューさせていただきました。こちらは、YouTubeにもアーカイブされていますので、ご覧になられていない方は、ぜひご覧いただきたいと思います。

その中で「IR活動もターゲティングが大事である」「マーケティングの要素をどんどん取り入れたほうがいいのではないか」というお話がありました。とくに上場企業において、個人投資家向けに対してのマーケティングがきちんとできている会社はあまり多くないと思います。

そこで、「個人投資家の方にはどういう方々がいらっしゃるのか」という情報を、よりIRご担当の方々にお伝えすることができれば、さらに個人投資家向けのIR活動やマーケティングの前進ができるのではないかと考えます。

そのため、今回は実際に30代、40代の現役世代の個人投資家3名にご登壇いただき、パネルディスカッションを通して、お話しいただきたいと考えています。後半はQ&Aも用意していますので、ぜひみなさまからご質問をいただきたいと思っています。よろしくお願いします。それでは、さっそく進行を進んでいきたいと思います。

開催の経緯(前回セミナーの振り返り)

一瀬:前回セミナーの振り返りです。前回は、「挑戦的マーケティングIR〜コロナ禍でも躍進するIRとは〜」というセミナーの中で、「ターゲティングをしましょう」「誰に応援されたいのかを定めて、IRで情報提供をすることが大事ですよ」という話題がありました。

登壇者紹介(ファシリテーター)①

一瀬:株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズのマネジャーの一瀬と申します。私は、親会社のリンクアンドモチベーションという会社の管理部門で経理・財務・経営企画などを担当し、IRを部門を立ち上げマネジャーを担当していました。その後、その経験を活かして、リンクコーポレイトコミュニケーションズという会社で、世の中の上場企業のIR活動を発展させるというミッションのもとで、日々奮闘しています。

本日はもう一人、ファシリテーターをお呼びしています。ログミー株式会社の秋元さん、自己紹介をお願いできますでしょうか?

登壇者紹介(ファシリテーター)②

秋元洋平(以下、秋元):ログミー株式会社の秋元と申します。よろしくお願いします。「ログミーFinance」という決算説明会の全文書き起こしのメディアの事業部長として、3年ほど前に立ち上げたときからずっと責任者として関わっています。

月に一度くらい、個人投資家の方とコミュニケーションを取るセミナーなどを行なっていて、今日もそちらでお会いした方たちをお呼びしています。企業のみなさまにもセミナーによって何か気づきがご提供できればいいなと思っています。よろしくお願いします。

現役世代の個人投資家とは?

一瀬:それでは、中身に入っていきたいと思います。本日は、個人投資家のみなさまをお呼びしてセッションを行なったのちにQ&Aという流れを予定しているのですが、冒頭は若手の現役層の個人投資家の方々がどのような属性で、どのような運用のしかたなのかというマクロデータが少しありますので、ご紹介したいと思います。「約200人にお聞きました。現役世代の個人投資家とは?」ということでアンケートを募集した結果について、秋元さんお願いします。

秋元:実は今回、ご登壇の3名のうち2名は、個人投資家のコミュニティを運営されています。あともう1名も、いろいろな勉強会にご参加されている方でして、今回、そちらの勉強会の方にご協力をいただき、アンケートを執り行ないました。合計で200名くらいの方にお答えいただきました。

あなたの【年齢】について教えてください。(196回答)

一瀬:ありがとうございます。ではさっそく、データから紐解いていきましょう。まず、年齢についてですが、若手が非常に多いですね。

秋元:おそらく、私も一瀬さんも、IR新会社として企業にお話することが多いと思うのですが、この結果は、企業が思っている個人投資家像とは年齢層が全く違いますよね。

一瀬:おそらく個人投資家と言うと、やはり60代や70代というイメージを強くお持ちの方が多いと思います。上場企業としても、なかなか現役世代とは接触できないと思うのですよね。株主総会の様子が個人投資家のイメージに直結しやすいと思うのですが、若手の方は、兼業で、仕事の傍らで投資されているため、株主総会や、個人投資家を集めたイベントには参加が難しいわけです。そのため、今回、「Twitter」や勉強会を通じて、個人投資家にかなり若手の方がいらっしゃるということは、少し新しい気付きかもしれません。

あなたの【株式投資歴】について教えてください。(196回答)

一瀬:続いて見てみましょう。投資歴ですね。投資歴が10年以上が30パーセント以上です。

秋元:イメージとしては現役世代の方たちは、投資を始めてまだ日が浅いのかというイメージが非常に大きいと思うのですが、決してそんなことはないですよね。10年くらいというと、リーマンショックの頃ですか。

一瀬:そうですね。

秋元:そこを乗り越えてきた方々が30パーセント以上いるということから見ると、けっこう猛者が揃っているイメージですね。

一瀬:決して良いときだけではなく、経済へのいろいろな打撃を受けたときの銘柄や株の動きなどの経験から、現在投資に取り組まれているのかもしれないですね。

あなたの【株式での運用額】について教えてください。(195回答)

一瀬:続いて運用額です。私はこのデータを見たとき、けっこうびっくりしました。機関投資家のようなサイズ感で運用している方もいらっしゃるのですね。

秋元:本当にそう思います。私たちも個人投資家の方をお呼びしてコミュニケーションを取る機会もあるのですが、運用額が億を超える方が普通にいらっしゃるので、私のイメージしていたものと全然違ったなということがありました。データを見ると、それが間違いではないのだなということがわかりますね。

一瀬:富裕層といえば、年齢がかなりご高齢の方で運用額も大きいというようなイメージがありますが、必ずしもそうではないのかもしれないですね。当然、個人投資家にはいろいろな方がいらっしゃいますが、中でも中長期でしっかり運用されているところをセグメンテーションすると、このような結果が浮き彫りになってくるということですね。

それでは、今日はこのような属性の投資家を3名お呼びしていますので、ご登場いただきたいと思います。お多福さんからぜひ自己紹介をお願いします。

登壇者紹介(ゲストスピーカー)お多福さん

お多福氏(以下、お多福):お多福と申します。投資歴は一番浅く、2018年の9月から始めたばかりです。何から買っていいのか、どうしていいのかがわからないので、いろいろな勉強会に参加させていただいてます。

一瀬:お多福さんも兼業投資家ということで、普段はお仕事をされていてその合間ですね。

お多福:そうです。

一瀬:ありがとうございます。また後ほどいろいろとおうかがいしたいと思います。

秋元:よろしくお願いします。

一瀬:では続いてキリンさん、よろしくお願いします。

登壇者紹介(ゲストスピーカー)キリンさん

キリン氏(以下、キリン):キリンと申します。よろしくお願いします。投資歴は約5年程度の兼業投資家です。神戸に住んでおり、昨年から神戸投資勉強会というコミュニティを運営しています。投資手法としては、主に上場して数年くらいの企業を分析しています。安定成長ができそうな会社を日々探しており、中期投資くらいのものをメインにしています。よろしくお願いします。

一瀬:よろしくお願いします。

秋元:キリンさん、神戸投資勉強会って、どんな会なのでしょうか。

キリン:「Twitter」でメンバーを集めているのですが、基本の運営は情報共有、情報交換をメインにしており、それぞれ銘柄を持ち寄ってトークを行なったり、あと最近は新型コロナウイルスの影響でなかなか難しいのですが、企業のIRの方をお呼びしてセミナーを行なったりしています。

秋元:いつも何名くらい集まるのですか?

キリン:やはり企業の来るときのほうが集まりがよいのですが、60名から70名くらいは集まることが多いです。

一瀬:けっこう多いのですね。年齢層は何十代が多いというようなイメージはありますか?

キリン:そうですね。私は39歳なのですが、だいたい私の前後ぐらいの年齢の方が多いかなと思っています。一番上の方は50代くらいですね。若い方は、最年少の方は高校生まで会ったことがあります。

一瀬:そうなのですか。ありがとうございます。のちほどまた、いろいろとうかがいたいと思います。最後はkenmoさんですね。kenmoさん、よろしくお願いします。

登壇者紹介(ゲストスピーカー)kenmoさん

kenmo氏(以下、kenmo):よろしくお願いします。kenmoです。兼業投資家で、上場企業に勤めつつ主に日本株中心に投資しています。2012年から投資を始め、投資歴は9年になります。2018年から神奈川県の湘南で湘南投資勉強会を主催しています。今日はIR担当の方が多くいらっしゃるということで、今日はIRに「こうしろ」みたいな姿勢ではなくて、あくまで「個人投資家はこのように考えている」というようなところをお話ししたいと思っています。よろしくお願いします。

秋元:先ほどと同じような質問になってしまうのですが、湘南投資勉強会のご説明を簡単にいただけますか?

kenmo:キリンさんの神戸投資勉強会と同じようなかたちで、銘柄のディスカッションを行なったり、有名な個人投資家やIR担当の方をお呼びしてセミナーを行なったりしています。あとは「四季報」をひたすら読むなど、いろいろなことを行なっています。

秋元:ありがとうございます。

Q.投資銘柄を知るきっかけは?

一瀬:それでは最初の質問に入っていきたいと思いますが、ここからメインのファシリテーションを秋元さんにバトンタッチしたいと思います。

秋元:はい。では、「投資銘柄を知るきっかけは?」というところで、事前に約200名の方にアンケートをとってご回答いただいていますので、次のスライドをご覧ください。

あなたの【投資銘柄を知るきっかけ】について教えてください。(195回答)

秋元:「四季報」「個人投資家の勉強会」「Twitter」「YouTube」というところですが、このような結果はおそらく年配の方々の情報収集方法とまったく違いますよね。

一瀬:そうですね。まず「Twitter」「YouTube」などは入ってこないですからね。私も最近のトレンドとして「YouTube」で銘柄を探されている方がけっこう多いということを知りまして、時代は変わりつつあるんだなということを感じますね。

秋元:やはり新聞や雑誌、テレビ、ラジオ、証券会社といったものが、企業が投資銘柄を知るきっかけとしてイメージされているものの多くを占めているのかなと思っています。しかし、こちらのアンケートの結果に「個人投資家の勉強会」「Twitter」「YouTube」、あとWebサイトなどが入ってきているということで、やはり時代の流れを強く感じました。

一瀬:それにしても「四季報」強いですね。

秋元:強いですね。すごいです。

一瀬:kenmoさん、先ほど勉強会でも使われているとのことでしたが、「四季報」はやはり重宝されていますか?

kenmo:そうですね。私はだいたい銘柄を探すときは「四季報」は見ます。あとはチャートを見ています。新高値でスクリーニングして、チャートから入ったりすることもあります。あとは「株探」といった情報サイトで決算が出たときに決算を読むというかたちです。「四季報」「チャート」「決算」この3つは必ず見ます。

秋元:なるほど。逆に「四季報」で引っかからないものは、もうあまり注目されないということですか?

kenmo:いえ、そのようなことはなく、例えば身の回りで流行っているものや展示会で見かけた人だかりのようなことから、「四季報」やチャート、決算にまだ現れていないような変化を実体験で探したり見つけたりするということはあります。

一瀬:キリンさんやお多福さんはいかがですか?銘柄を知るきっかけは何が多いですか?

キリン:私の場合もkenmoさんと近いのですが、四季報は発売のたびに、ひととおり目を通すようにはしています。四季報の紙面で知ることもあるのですが、それだけで購入の決定をするわけではなく、基本は日々の適時開示情報を見て、四季報を辞書代わりに使って、開示情報と照らし合わせながら、意思決定している流れが多いです。

一瀬:なるほどですね、お多福さんはいかがですか?

お多福:私もkenmoさんと同じですね。他に政治的な動きがあったときは、法務省のホームページを見に行っています。

一瀬:そのようなところもご覧になられているのですね。

お多福:そうですね。今後どのように方針や方策、法改正が行なわれるのかという部分には注目しています。

kenmo:投資歴2年で、法務省のページまで行く人はなかなかレアだと思います(笑)。

キリン:僕はそこまで行ったことがないです。

kenmo:私もなかなか法務省まではいかないです。

お多福:総務省について、私は子どもがいますので、やはり教育や今後の働き方がどのように変わっていくかという部分で、やはり、あらかじめ自分たちも予想して動かないと、のちのち困る部分があるかと思いますので気にして見ていました。

一瀬:それによって、この産業が伸びるのではないかという予想や仮説を立てられるわけですね。

お多福:そうですね。

秋元:みなさま、今回の結果にも出てはいますが、「Twitter」「YouTube」などのSNSはどうされていますか? kenmoさんはいかがですか?

kenmo:私は逆になるべく見ないようにしています。ついつい見てしまうのですが、間違った情報が入ってくる場合もあるため、なるべくそのような情報よりも一次情報にあたるように努めています。

秋元:見てもそれに左右されずに、ちゃんと情報ソースを見に行くという感じですか?

kenmo:そうですね。なるべくそこを意識しています。

秋元:ありがとうございます。キリンさんはいかがですか?

キリン:「Twitter」は見ますが、そこで書かれている銘柄は、すでに株価が上がっていることが多いため、投資判断にはほぼ影響しないですね。

秋元:なるほど、「YouTube」はいかがですか?

キリン:「YouTube」は最近、kenmoさんが始めたことがきっかけで見始めたぐらいでして、最近、ここ一年の間に株を始めた方などは「YouTube」から入る方も多い気がしますが、僕と同じ5年ぐらいの投資歴の方は「Twitter」世代が多い気がしますので、「YouTube」は新しいなと感じています。

秋元:わかりました。ありがとうございます。お多福さん、ここ1年から2年ということで、お多福さまは今のキリンさんのお話しに合致すると思うのですが、「YouTube」はご覧になられますか?

お多福:見ていますね。主にその企業が出している製品を使っている動画を見ています。いろいろなプロダクツがあるため、本当は使えれば一番いいのですが、縁遠いような企業であれば、それを使っているユーザーの方たちが流している「YouTube」を見て、どんな利便性があるかなどを吟味したりします。

秋元:わかりました。ありがとうございました。一瀬さん、他にご質問はありますか?

一瀬:そうですね、いろいろ聞いてみたいので名残惜しいですが、先々のコンテンツもありますので次に進みましょう。

あなたにとって「良いIR」とは?(195回答)①

秋元:こちらも事前にアンケートで出てきたものなのですが、上から読み上げさせていただくと、「事業内容をわかりやすく説明している」が83.6パーセント、「共感できる長期ビジョンを掲げている」が43.1パーセント、「社長による説明がなされている」45.1パーセント、「財務情報やKPIが明確に明示されている」が62.6パーセント、「非財務情報が開示されている」が9.2パーセントという結果です。

一瀬:非財務情報はまだまだ少ないですね。

秋元:そうですね。このあたりは企業との考え方の違いがありそうですね。

一瀬:そうですね。ラージキャップになってくると、やっぱりESGやSDGsの対応などにはやはり積極的に取り組まれている流れはありますが、まだ少し個人投資家の方々の欲する情報とは少しギャップがありそうだと思います。

秋元:そうですね。こちらについてはお3方からそれぞれご意見をいただいているので、そちらをおうかがいしていきましょう。

あなたにとって「良いIR」とは?(195回答)②

一瀬:こちらは、ほかにはこんな意見がありました、というものです。資料はのちほど展開しますので、先に進みましょう。

あなたにとって「良いIR」とは?

秋元:では、お一人ずつ聞いていきたいと思うのですが、お多福さん、「個人投資家にも理解しやすい工夫がある」というところについて、お話をおうかがいできますか?

お多福:はい。業種によっては専門用語が多く、その用語を調べて理解するまで時間を要することがあります。用語解説などがあると、理解しやすいです。

秋元:やはりBtoBの企業の専門用語はけっこう難しいと思うのですが、BtoBでこのような工夫をされていると、やはり印象が良くなりますか?

お多福:そうですね。BtoBの場合では専門用語がやはり多く、直接個人が手にすることはないと思いますが、日常生活でどんなところに関わっているのかを説明しているIRは「いいIRだな」と思います。

一瀬:専門用語の解説にとどまらず、それが何につながっているのかや、お客さまのどのニーズにひも付いているかという接続の部分がわかりやすいと良いということですね。

秋元:次に「良いことも悪いことも適時開示してくれる」ということですが、キリンさんお願いします。

キリン:我々投資家が最もメインとして見るのは決算の数字になると思います。それが3ヶ月に1回四半期ごとに出るということなのですが、その間に起こるいろいろな環境変化や、最近の話で言うと、新型コロナウイルスもそうですが、災害があったときの会社への影響やインパクトをわかる範囲でタイムリーに出していただけると、決算の数字の予測といったところにつながっていきます。

それがなく、急に決算を迎えると想定外のサプライズが起きて、認識のギャップが生まれることがあると思っています。それがあまりに大きいと、なかなかその会社に手を出しづらいと思わざるを得ない場面もあるため、適時開示がまめな会社はよいと思います。

一瀬:サプライズは、あまりうれしくないですよね。

キリン:とくに、よろしくない方向のサプライズの場合はなおさらですね。

一瀬:少しつっこんだご質問なのですが、新型コロナウイルスの状況下で多くの企業がダメージを受けて、情報開示の方法を少し変えていたりすると思います。業績予想を出さない会社も多いと思うのですが、そのあたりで気になっていることや思うことはありますか?

キリン:このタイミングでは、まだまだ業績予想の数字に落とし込めないことがあると思うのですが、何かしらの要素は欲しいと思っています。そこを推察するために、定性的な部分でも情報を小出しに提供してほしいと思います。「予測できません」では、こちらも「そうですか」としか言えないところもあります。

秋元:kenmoさんは、「社長の声と顔が見られる動画が充実」ということですね?

kenmo:お多福さん、キリンさんがおっしゃったことももちろん重要で、非常に重視しているのですが、私は社長の声と顔が見られる動画がある会社は非常によいと思っています。

私は2012年から投資を始めたのですが、そのころの情報は文字ばかりで、社長の動画はそれほど多くありませんでした。どういう方がこの会社を経営されているのかが全然わからないまま、ただ数字だけで投資するのは、けっこう不安な部分があります。

その会社を引っ張っている方がどういう性格で、どういう雰囲気の方なのかを知るという意味でも、社長の声などはとても大事だと思います。

最近になって、ようやくいろいろな動画サイトが充実してきて、社長の声と顔が見られるような会社が増えてきました。今後も、どんどん動画が充実してくると非常にありがたいです。

秋元:どちらかというと、業績の説明よりも、その方の人となりが見えるような動画があったほうがよいということでしょうか?

kenmo:結局、数字だけでは見えない部分があると思っています。今回の新型コロナウイルスのようなことがあった際に、数字の情報だけでは不安になって、その株を投げてしまうわけです。

ただし、社長の顔が見えたり、この大変な状況でどういう方ががんばっているかが想像できると、もう少し応援してあげようと考えるわけです。そして、逆に株価が安くなったところで買いにいける材料にもなります。ですので、そのようなところは非常に大事だと思います。

あなたにとって「悪いIR」とは?(195回答)①

秋元:では、次は「悪いIR」についてです。事前のアンケートでは、開示情報が少ないというところや、頻度が低い、スピードが遅いといった意見が出ています。また、社長やIR担当者の露出が少ないという回答もあります。

あなたにとって「悪いIR」とは?(195回答)②

秋元:その他にもさまざまな回答が寄せられました。

あなたにとって「悪いIR」とは?

秋元:お多福さんは、「情報量が少ないと投資判断ができない」というところですね。

お多福:リリースされたとしても、今後、それがその企業にとってどれだけポジティブなのかが理解しがたいようなIRでは、投資判断が鈍ると思っています。

秋元:その後のストーリーをきちんと説明してほしいということですね。

一瀬:情報の量と頻度、また質という観点もあると思うのですが、とくに大事にしているポイントはありますか? おそらく、この配信を見ているIR担当としては「情報を拡充しなければ」と考えていると思うのですが、「どういった情報を出せば喜んでもらえるのか」と、けっこう迷われると思います。そのあたりはいかがでしょうか?

お多福:例えば、「少し弱いセグメントをもう少し強化して、今後は売上、営業利益も伸ばしていきたいと思っているため、類似する企業をM&Aしました」といった情報などが欲しいです。「このような部分を補完します」といったように、今後が予測できるかたちのIRは、投資判断として活用できるかなと思います。

一瀬:経営の意図や経営判断の背景などがあればよいということですね。

秋元:キリンさんは、「業績変化の理由が分からない…」ということですね。

キリン:主に決算のタイミングでのお話になるのですが、数字が出て、例えば増収増益だったことは短信でわかると思うのですが、その説明が不十分な会社は判断が難しいなと思うことが多いです。

業績がよくなる、悪くなる、そのどちらのケースにしても、中身が重要です。個人的には、何がどうなってこの数字になったのかの説明がしっかりなされている会社が好みですね。例えばセグメント業績で、その会社の姿が変化するタイミングを捉えたいと思っていますので、数字を分解していただけるとありがたいと思っています。

また、売上と利益といった数字以外も、各社の主なKPIに関する情報が充実していると、今後の見通しを立てる材料になるかと思いますので、そのような情報もいただけるとありがたいです。

一瀬:その情報はどういったソースを参照されることが多いですか? 決算短信の中の文章なのか、決算説明会の資料なのかについて教えていただけますか?

キリン:決算説明資料を開示している会社であれば、決算説明資料が一番わかりやすいため、そちらを読み込むことが多いです。

秋元:kenmoさんは「株主優待制度の再考を!」ということですね。

kenmo:賛否両論あるかもしれないのですが、個人的には「株主優待によって株価を上げる」というIRはあまり好きではないですね。もし株主優待が自社製品であれば、自社製品のファンになってくれるという意味ですごくよいと思います。

しかし、QUOカードや商品券、カタログギフトといった株主優待になると、結局それはコストとなってしまいます。例えば3,000円分の優待を出す場合、それに対するコストは5,000円以上になってしまうわけです。

中には、「優待のタダ取り」と言って、その株を1日で買いと売りを入れて、まったく値動きのリスクを取らずに優待だけをもらうような人たちもいるため、その会社の株を中長期的に保有している人たちからすると、タダ取りをする人たちに優待として会社の利益が奪われるわけです。

短期的には、優待でQUOカードを出して株価が上がることもあるため、1つの戦略として使うのはよいと思うのですが、そのような短期的な値動きを気にする人たちからの「優待でQUOカードを出せ」といった圧力に負けて株主優待を出すのはできれば我慢して欲しいです。会社側の気持ちはすごくわかるのですが、そこはグッとこらえて、中長期的な成長や利益につながるかたちで還元してほしいと思っています。

秋元:ここは、企業とお話ししている中でも出てくるところですね。言葉を選ばずに言うと「ちょっとドーピングだよね」といったお話が出てくることもありますが、株主数を増やしたり、短期的に株価を上げてインパクトを出したいということかと思います。ただし、一度それを実施してしまうとやめられないということで困っている企業も多いのかなと思います。

kenmo:戦略的に株主優待を出さないと決めている会社もありますが、個人的にはそのような会社の方が好きですね。

今後、IRに期待したいことは︖

一瀬:パネルディスカッションの最後の質問ですが、今後、IRに期待したいことについてうかがいたいと思います。アンケートの結果はこちらのとおりです。

あなたにとって「今後、IRに期待したいこと」とは︖

秋元:それでは、お一人ずつお話をうかがっていきたいと思います。お多福さんは、「もっと対話できる機会が欲しい」ということですね。

お多福:社長の話し方も含めてですが、今後のビジョンが一番の投資判断になっています。企業説明会やIRへの電話等の様子で印象が変わることがあります。企業側も大変かと思いますが、投資をするうえで、もっとコミュニケーションをとりたいと思っています。

秋元:キリンさんは「機関投資家との情報格差解消を!」というところですね。

キリン:最近はだいぶ解消されつつあると思っているのですが、機関投資家向けの決算説明はされていても、個人投資家向けには情報が開示されないケースもゼロではありませんので、個人投資家も大切にしていただけるとありがたいと思います。

秋元:これは「情報の量と質とスピード」のすべてに関してですよね。

キリン:おっしゃるとおりです。

秋元:その部分は、私たちログミーFinanceもがんばらなければいけないところだと思っています。そして、kenmoさんは「個人投資家と対話する上で……」ということですね。

kenmo:お多福さんもおっしゃったように、対話できる場があるとよいと思います。最近になってようやく動画が普及し始めてきました。そして動画の次はなにかというと、今回のようなZoomなどのツールが一般に普及してきていますので、ぜひ対話する機会を設けていただけるとありがたいと思います。

「対話する機会」という点では、私やキリンさん、またほかの方も主催している個人投資家の勉強会をもっと活用いただければと思います。我々はボランティアで取り組んでいますが、我々としても企業のお話を聞けるのはすごく有益ですし、企業側にも絶対にメリットがあると思います。ぜひ活用していただけるとうれしいですね。

秋元:本日視聴されている企業の中で「勉強会に興味がある」という方は、アンケートの自由記述にご記入いただければ、キリンさん、kenmoさんにおつなぎしますので、よろしくお願いします。

事前質問:印象に残っているIR施策や、よく利⽤する情報収集⼿段

一瀬:ここからはQ&Aになります。みなさまから寄せられたご質問にお答えいただきたいと思うのですが、その前に、まずは事前に用意している質問がありますので、そこからスタートしたいと思います。

最初は「印象に残っている(上手いなと思う)IR施策は?」という質問です。よく利用する情報収集手段は先ほどうかがいましたので、その他、何か印象に残ったIR施策を教えていただきましょう。

お多福:決算説明動画等で、これまでの業績と今後の予想をわかりやすく説明して下さっている企業はいいですね。多少決算が悪かったとしても、対応策を提示している企業は安心感があります。

キリン:お多福さんがお話ししたことと多少かぶるかもしれないのですが、長期的な視点に立って、将来の姿がどうなるのかを描いている会社では、それに共感できるかが長期投資する上でのポイントだと思っています。

最近多いのは「10年後の想定の数字」です。その掲載の有無は企業によってまちまちだと思うのですが、将来、長期的にどういった成長シナリオを描いているのか、その姿が見える会社は応援したくなります。私も、四半期決算でそのシナリオに向けてどう進捗しているかという視点でチェックが進められるため、先々も含めて投資する側が考えられる材料をいただければと思っています。

秋元:「ログミーFinance」が主催している個人投資家向けIRセミナーでも、キリンさんがおっしゃったことはアンケート結果でもはっきりと出ています。複数社が登壇する中で、5年後、10年後のビジョンをきちんと提示されている企業のアンケート結果は非常によいですね。それでは、kenmoさんにもうかがいましょう。

kenmo:絶対数は多くないですが、上場企業の社長でSNSを利用している方がけっこういらっしゃいます。たまに「ボロ」が出ることもあるのですが、SNS上でも経営にコミットされている姿勢が垣間見える会社は、すごく誠実な会社という印象を受けますので、応援したいと思います。SNSを見ていると応援したい気持ちになりますので、今後はSNSやYouTubeを活用したIR施策はとても大事になってくると思っています。

秋元:株式を保有している企業の社長がTwitterなどを使っていたらフォローしますか?

kenmo:必ずフォローします。ブログ等も含めてすべてのSNSをチェックしますね。

事前質問:株式購⼊時に企業のIRサイトをどの程度見るか

一瀬:「投資をする際に、その企業のIRサイトをどの程度見ますか?」という質問ですが、いかがでしょうか?

お多福:Webサイトは必ず見ます。有価証券報告書、四半期決算書、そしてIR動画を出されているところは、必ず社長の顔を見に行きます。

秋元:IRのサイトで必ず見るページ、またはほとんど見ないページはありますか?

お多福:必ず一通り見ています。

キリン:私も、Webサイトで見られる範囲のものは一通り見るようにしています。一通り見るとはいえ数字を中心に判断するため、一番重点的に見るのは数字の部分です。初めて投資する会社となると、その会社の背景や沿革も気になりますので、そのあたりも含めて見ています。

一瀬:例えば、トップメッセージは見ても意味がなかったなど、あまり参考にならないと思うページはありましたか?

キリン:それぞれの会社を知るという意味で、自分の感覚に合う、合わないはあると思いますが、情報を出してくださっているというところで、意味はあるのではないかと思っています。

kenmo:私も、IRのWebサイトは見ています。見る観点は2つあり、1つはIRサイトを開いたときに、社長の顔写真があるかどうかです。やはり社長の顔写真が載っていないと、何か後ろめたいことがあるのではないかと少し疑心暗鬼になってしまう部分がありますし、実際に統計データとして、社長の顔写真があるほうが株価や業績が伸びる傾向にありますので、そこは見るようにしています。

もう1つは、社長の写真が腕組みをしていないかも見ています。腕組みをされている社長の写真が載っていると、やや高圧的な印象を受け、また腕組みするということは恐れているものがあるのではないかと思ってしまいます。

半分オカルトみたいな話なのですが、「腕組みの法則」というものがあり、腕組みしている写真を載せている会社は株価があまり伸びないということで、そこも必ず見ています。その上で、決算資料等は必ず見るようにしています。

事前質問:⻑期的な観点とはどのくらいのタームか

秋元:中長期的な観点で、どのくらいのタームで考えるのかについて、保有期間とフォロー期間の違いということで、実際に株式を保有されている期間と、その間に売買したとしても、その後企業をフォローする期間はどれくらいなのかについて教えてください。

(参考)個人投資家アンケート

秋元:アンケート結果はこのような内容でしたが、みなさまはどうされていますか?お多福さんからご意見をお願いします。

お多福:保有期間に関しては、株式投資を始めたときから保有している企業もあります。売買に関しては、かなり調べてから買ってはいるのですが、予期せぬ悪材料が出た場合は失望して売ることもあります。

秋元:売ってから、またポジションを持ち直すこともありますか?

お多福:ありますね。その企業が方向転換してビッグチェンジを果たし、いろいろと模索しながら新業態を展開するなどして「新たに変わるかな」というときは、ずっとフォローしながら、買うタイミングが来たら購入することもあります。

秋元:一度購入された企業は、手放されたときも中長期で見ているものですか?

お多福:その時の相場環境もありますが、企業によってはフォローしています。

秋元:なるほど、ありがとうございます。キリンさんはいかがですか?

キリン:個人的には、銘柄によってまちまちです。会社の業績が伸びていればありがたいのですが、一番捉えたいのは「変化が起きるタイミング」ですので、そこを狙って長い間チェックしています。しかし、「保有期間とイコールか」と言われるとそこは違っており、数ヶ月くらいのタームで売買することはあります。また、中には上場来から長年持ち続ける銘柄もあります。

kenmo:キリンさんがおっしゃったとおり、銘柄によってまちまちというのが正直なところです。時価総額で「だいたいこれくらいのライン」というところを目安にしており、まずは300億円、1,000億円を目標にして、そこに到達するにはこのくらいの規模感で、何年くらいかかりそうかなとイメージしているかたちです。数ヶ月だったり、長ければ2年、3年、4年と期間が伸びて行きます。

質疑応答:投資を始めたきっかけやモチベーションについて

秋元:それでは、視聴者の方からの質問にもお答えいただきましょう。「30代から投資をされる方のモチベーションやきっかけはどのようなものでしょうか」というご質問です。

お多福:最近「コロナショック」があり、私のまわりでも20代などの若い人たちが株式投資を始めるようになりましたが、なかなか自分の給与のベースアップが難しいからというのが投資を始める理由だったりします。

私の場合、子どもの教育資金を積み立てて定期にしていたのですが、そのリターンが年数のわりには少ないと感じて、それでいろいろな金融商品を検討するようになりました。そして、株式投資であれば身近な企業と触れ合うことができ、変化も読み取ることができるため、わかりやすいと考えて株式投資を始めました。

キリン:私は5年前からですので、まさに30代から始めているのですが、もともと若いときから株式投資には興味を持っていました。仕事上の制約でなかなか投資ができない期間が続いていたのですが、それが解消されたタイミングで始めました。できれば、もっと早くから始めたかったというのが本音です。

kenmo:率直に言うと、サラリーマンの給料だけではお金持ちになれないと思ったのが最初のモチベーションです。私も30歳の少し手前くらいから投資を始めたのですが、給料だけではこの先も大変だと考えて株の勉強を始めました。「会社が嫌だな」と思ったときも、もう1つの収入源があればと考えたのがきっかけでした。

質疑応答:四季報のどこを見て投資判断するかについて

秋元:「みなさま、四季報をご利用されて銘柄をピックアップされるということでしたが、具体的に四季報のどこを見て投資判断をされていますか?」というご質問です。

お多福:主にチャートと財務分析のところですね。また、売上と営業利益が伸びているかどうかを見ます。

キリン:私は四季報を見て買うということはあまりないのですが、四季報は1つのツールとして使っている認識であり、時価総額が小さいことと、売上が伸びていることの2点でまず選別しています。残りの分析については、他のツールを使うかたちです。

一瀬:時価総額が小さいところからスクリーニングされるというのは、けっこうスモールキャップの上場企業にとっては希望の光かなと思って聞いていました。その時価総額が小さい企業でも、「ここは投資したい」となる次のハードルについて、もしよろしければなにかヒントをいただけないでしょうか?

キリン:先ほど、kenmoさんも300億円というバーとおっしゃったのですが、やはり、そのようなこの先の成長に向けての成長シナリオが自分の中で納得でき、描けるかどうかというところが次のステップになるかと思います。

一瀬:やはり成長ストーリーというところですね。

kenmo:私は四季報は届いたその日にだいたいすべて読んでしまいます。

一瀬:すごいですね。

kenmo:ただ、四季報はきっかけにすぎません。売上の伸びと利益の伸びとROEは当然見ますが、それ以外に四季報だけではわからない情報もものすごくたくさんあります。会社の銘柄を知るきっかけとして四季報を使い、その後の詳細な内容などは会社のホームページに飛んだり、チャートを見たりというかたちです。

質疑応答:株式購入において配当金、株式優待が判断材料になるかについて

秋元:次は、「株式購入においては、配当金、株式優待は判断材料になりますか?」というご質問です。

お多福:あまりそこは意識していません。やはり、企業価値をどれだけ向上できるかが成長ストーリーとつながってくるため、そこに投資するようにしています。

キリン:私もまだまだお金を増やさなければいけない立場ですので、むしろあまりそこはない会社のほうが私の今のゾーンではあります。

kenmo:私もお多福さん、キリンさんと同じような意見です。ただ、勉強会を主催していると、やはり配当や優待をメインに銘柄を選ばれている方もいます。もちろんそのような需要は当然あり、人それぞれかと思います。

秋元:ここはまさしく私どもが企業さんとお話ししている中で出るところであり、年配の方はどうしても配当金や優待ばかり気にされていて、なかなか成長ストーリーが伝わりません。逆に、今回お話しさせていただいたお三方のような現役世代の方たちは、成長ストーリーを見ていますので、そこはすごいヒントになりそうですよね。

一瀬:そうですね。今回お呼びしているお三方が「ファンダメンタルで中長期」という属性であることもありますが、インカムゲインというよりはキャピタルゲインであり、企業が次のステージに上っていくことを本当に期待して選んでいるというのはすごく感じますよね。やはり、そのような熱量で応援していただける個人投資家というのは、上場企業にとってはすごい後押しになるのではないかと思います。

質疑応答:地方上場企業が投資対象かどうかについて

秋元:次は、「地方上場企業は投資対象とされていますか?」というご質問です。

お多福:投資対象にしています。

秋元:もうここは区別されないということでしょうか?

お多福:はい。「いつかは東京へ行こう」みたいな気概を感じる企業は応援したいですね。

一瀬:まさに応援者ですね。

キリン:地方単独上場している会社は個人的にはむしろ好きです。

秋元:個人的にお好きというのはどういった理由ですか?

キリン:先ほどお多福さんがおっしゃったような、東京にこれから向かう可能性があるからという理由です。すべてではないのですが、自分が投資している中にもそのようなところはあります。また、まだあまり認知はされていなくても、よい会社が多いというのもあります。

kenmo:私もまったく同じです。あまり注目されていないところで、まだまだ投資家としては伸びしろがあると判断できることや、いずれ東証に行くということで投資対象にはなり得ます。

秋元:逆に地方企業の場合、知るきっかけが少ないというのはありますか?

kenmo:それよりも、証券会社によっては地方上場に対応していないケースがありますので、例えば、Aという証券会社のアプリではこの会社が売買できない、といった不便を感じることはあります。

質疑応答:株主総会への出席の重要性について

秋元:次は「株主総会への出席は、投資においてどの程度重要なファクターと考えられていますか?」というご質問です。お多福さんは株主総会に出席されますか?

お多福:働いているため、まったく参加できません。ですので、株主総会や決算説明会をぜひ動画で上げていただきたいと思っています。

一瀬:ライブ配信もそうですが、オンデマンドで載っているところもでしょうか?

お多福:はい。やはり前もってお休みを取るのは難しいです。

キリン:私も会社員ですので、基本は平日の昼間は参加ができません。なんとかがんばって1年に1回くらいは行くようにはしていますが、その程度ですので、投資における参加材料というよりは、「せっかく株を保有してるから行ける範囲で行こうかな」というくらいです。

kenmo:私も気になる会社は有給を取って行ったりするのですが、サラリーマンですのですべて行けるわけではありません。お多福さんと同じように、動画で上げていただけるとうれしいです。質問できなくても、どういった雰囲気で開催されたのかがわかるだけでも、ぜんぜん違いますし、ぜひお願いしたいと思っています。

質疑応答:成長期でない企業の個人投資家へのアプローチについて

秋元:次は「成長期にない、よく言えば安定の老舗、悪く言えば停滞企業は投資対象として見られにくいと諦めがちなところがあります。そのような場合、個人投資家の方々に目を向けていただけるにはどうしたらよいでしょうか?」というご質問です。

お多福:いわゆる「オワコン」と思われているような企業でも、企業努力によって利益を伸ばしてきている企業もありますので、私たちもそのような企業はきちんと見るようにしています。

一瀬:企業規模というか、時価総額のサイズもあまり関係なくご覧になられていますか?

お多福:そうですね。時価総額の話が以前出ましたが、私はそこはあまり気にしていません。1つの目安としては持ちはしますが、それで切ったりすると本当によい企業も落としてしまう可能性があります。

キリン:今のご質問に該当されるような企業ですと、おそらく株価が割安で放置されがちな傾向が見られると思っています。ですが、そのような会社も、何か会社の業績の変化が見え始めるタイミングがあれば跳ねる可能性があると見ていますので、どういったところに注力しているかなど、私たちが想像するきっかけがほしいと思います。ですので、もちろん投資対象には得ると思っています。

一瀬:業績の変化が見え始めてから投資しようというのは、多くの人が気付きやすいことろだと思います。できれば、業績が動く前に「おっ、これは変わるかもしれない」という予感が察知できるとすごくよいと思うのですが、そのようなところは何か意識して情報収集されますか?

キリン:予感ができれば一番よいと思うのですが、なかなか僕の力でそこまで読むことは難しいです。しかし、基本的には変化が見えてからでも値幅が得られることのほうが多いと思います。逆に、予感するに足る情報を得るために、IRの方に電話することも多いのですが、そのような情報の引き出し方はむしろこちら側の課題であると捉えています。

kenmo:やはりファンを作ることかと思います。これはもうIR担当者の方のがんばりかと思います。業績が伸びないというところで、ただ割安に放置されている部分もありますし、IR担当者の方がすごくがんばっている会社は応援したくなります。社長もIR担当者も社員もすごくがんばっているというのがこちらに伝わると、中長期的に応援したくなりますので、そのようなファンのほうが長く付き合ってくれるという部分もあります。とにかくファンを増やすというところかと思います。

質疑応答:長期的に保有する株の購入の際の判断材料について

秋元:次は、「長期的に保有する株はどこを判断して購入していますか?」というご質問です。

お多福:企業の成長性がどのくらい続くのかを考えながら投資しています。

一瀬:逆に抜けるタイミングはどういう時ですか?

お多福:言っていたことと会社のIRの記事で内容が違っていたりして、少しがっかりするような時などは抜けます。

キリン:長期保有になるかどうかは、結果的にそうなることが多いです。僕の投資歴ではそのくらいの認識です。やはり、この先も成長が続くかどうかだと思いますので、そのようなところを見て、結果的に成長すれば、というかたちであると思っています。

kenmo:私もキリンさんと同じで結果論です。やはりすごくいいなと思って安いところで買っても、その会社が短期的に5倍、6倍になってしまったら「割高だな」と思って売ってしまいますので、中長期的に見て割高になりすぎず、業績も安定して伸びているところが結果的に長く持てると思います。

質疑応答:新型コロナウイルスによって変化した投資対象企業への判断材料について

秋元:次は、「コロナショックを受けて、これまでと投資対象企業への判断材料が変わった部分はありますか?」というご質問です。

お多福:やはり、コロナ後の世界を見据えて、いろいろ工夫をし、いち早く会社が変化し始めたような企業に注目するようになりました。

一瀬:会社の変化というのはどのようなところで感じますか?

お多福:具体的に言うと、例えば、飲食関連では3密を避けることが難しいため、テイクアウトに注力しているような企業などです。

キリン:私はほぼ変わりません。当然、新型コロナウイルスの影響の多さというのは企業によってまちまちだと思います。それを受けた今後の業績がどうなりそうかという数字から入る方ですので、影響度合いに応じて保有株や対象先は変わってくるのですが、考え方のベースは基本的には変わらないです。

kenmo:新型コロナウイルスを機に、個人投資家の裾野がすごく広がったことが肌感覚としてあります。というのも、やはりみな家にいる時間が多いため、株価もものすごく安くなったこともあり、そこで株を始められた方がすごく増えたように思います。

そのような方々は、最初はチャートやテーマから入るのですが、そのような中で私は決算資料をより深く読むようになりました。新しい人はなかなか決算を読まないため、そのようなところで差別化したいなと思います。ですので、これまで以上にIR資料を重要視するようにしています。

質疑応答:アナリストレポートを参考にするかどうかについて

秋元:次は、「アナリストレポートは参考にされていますか?」というご質問です。

お多福:一通り読みます。

一瀬:上場企業が出す、統合報告書やアニュアルレポートはいかがですか?

お多福:それも一通り読みます。

キリン:私はアナリストレポートはあまり読みません。企業が出してる情報に人の目が入って加工されていますので、生の情報の方を重視しています。そのため、見る機会が少ないというのもあるのですが、あまりそこは気にしてはいません。

kenmo:私はあれば当然読みますというかたちです。ただ、なかったとしても特段そこの会社の投資判断には影響しないと思います。より企業を深く知るというツールとして使うことは当然ありますが、あったからといって投資するというわけでもないです。

秋元:最後は、「今後注目している業界、業種はありますでしょうか?」というご質問です。

お多福:リモートワークが進み、情報通信系、巣籠ということで小売やそれに伴ったサービス業といった業界は注目して見ています。

秋元:それに伴うBtoBはなかなか見つけづらいと思うのですが、そのようなところもやはり注目されていますか?

お多福:そうですね。そこのところを解読するのが有価証券報告書やビジネスモデルですので、書いてある内容を自分で図式化して、KPIなどを鑑みつつ、「今後どれぐらいこの会社は成長していくのだろう」という推理を立てていきます。

キリン:私も、お多福さんがおっしゃった情報通信などは厚めに見ているつもりですが、新型コロナウイルスの感染が拡大する前からあまり自分の傾向は変わっていませんので、引き続きフォローしているという状態です。

kenmo:私は、注目する業界や業種というのはそこまで意識はしていません。どちらかというと、どんな業界でも伸びている会社や大きく変化している会社はありますので、業界や業態を問わず、コロナ禍、アフターコロナという中で、積極的に変化して良い方向に進みそうな会社をすごく意識して見るようにしています。

お多福氏、キリン氏、kenmo氏のご挨拶

秋元:最後に、一言ずつでよいので、今後企業に期待されることなど、一言お願いいたします。

お多福:投資歴は浅いのですが、世の中がどのように回っているかや、自分の暮らしがどういう人たちに支えられているかなどに気づかせてくれたのが株式投資です。頑張っている企業はすごく応援したいと思っています。

キリン:個人投資家が企業の情報の中身を深く知ることはなかなか難しいところがあるため、先ほどのお話でも言った対話の場を作ることができればと思っていますので、ぜひみなさまに、神戸投資勉強会にお越しいただければと思います。

kenmo:今日はありがとうございました。IR担当者の方は、日々の仕事がすごく大変だと思います。ステークホルダーの方からのプレッシャーや、株主からけっこう辛辣なことを言われることももしかしたらあるかもしれません。そのような中で、今日この場に参加していただいたことに非常に感謝しています。

今、アメリカ株がけっこう人気が出ており、日本株は「オワコン」のような風潮もあったりするのですが、まだまだ日本株も捨てたものではないという意識は個人的にはありますし、ぜひもっともっと盛り上げていけるといいなと思っています。今後とも応援していますので、よろしくお願いいたします。

一瀬:秋元さん、いい話がたくさん出てきましたね。感動しました。

秋元:企業のことを知ったあと、その企業のことを本当に真剣に考えて好きになって、ファンになっているというのを感じました。

一瀬:おそらく、登壇いただいたお三方の言葉で救われた気持ちになられた視聴者、IR担当の方もいるのではないかと思います。やはり、経営陣からのプレッシャーや、物言う株主からのプレッシャーなど、いろいろあると思います。現場の巻き込みなども苦労されている方はすごく多いです。しかも、IR担当の方は成果が見えにくいです。どこまで頑張ったらどうなるかというところも見えないものがありますので、このようなフィードバックは後押しになりますよね。

秋元:そうですね。前回のセミナーでもありましたけれども、今日ご登壇いただいたお三方のような株主をきちんと獲得していこうという、ターゲティングは大事だと思いました。

一瀬:まさにファン株主のみなさまからのお言葉でした。

ログミーFinanceの取り組み

一瀬:大幅に時間が伸びていますが、最後にお知らせだけさせていただいて終了したいと思います。

秋元:簡単に弊社サービスのご紹介をさせてください。私どもは、「ログミーFinance」という決算説明会を全文書き起こしで掲載するメディアを行なっています。

投資家が見るようなデータベースや四季報、「みんなの株式」のような投資情報サイト、スマートニュースのような一般のニュースサイトなど、あらゆるところに配信しています。ぜひ、ご興味ある企業さまがいましたら、アンケートにご記入いただけますと幸いです。

また、今回ご登壇いただいた個人投資家の方たちを集めたIRセミナーを行なっています。今回のような個人投資家の方々と今後いろいろな接点を持っていきたい、という方がいましたらご相談していただけると幸いです。

ログミーFinanceの取り組み「Zoom導入無料支援」

秋元:今回はZoomウェビナーで開催していますが、決算説明会などのIR系のイベントもこのZoomウェビナーを使って開催することが可能です。使い方がわからないため導入できていない企業も多い中、私どもはZoom導入を無料で支援させていただいています。

具体的には、Zoomウェビナーの設定方法やイベントに合わせた台本の作成、最終的にそのZoomウェビナーの内容を動画編集し、決算説明会動画を作らさせていただくなどの内容になります。すべて無料ですので、ぜひ、今後オンライン化を考えている企業さまがいましたら、アンケートでご記入いただけますと幸いです。

リンクコーポレイトコミュニケーションズの取り組み

一瀬:当社からも少しご案内をさせてください。リンクコーポレイトコミュニケーションズは、主に統合報告書やアニュアルレポートを制作するのですが、決算の動画配信やオンラインの配信もさせていただいています。

その中で、個人投資家のみなさまにオンラインでプレゼンテーションをするという、オンライン説明会をサービスで提供しています。今ご登壇いただいたような若手層、30代、40代、50代の方にご案内して見ていただいます。

リンクコーポレイトコミュニケーションズの取り組み「ダイアログ」①

一瀬:オンライン説明会を開催する時に、リアクションボタン、平たく言うと「いいねボタン」を設置し、視聴いただいた実際の個人投資家の方々のリアクションのエンゲージメント曲線を出しています。

リンクコーポレイトコミュニケーションズの取り組み「ダイアログ」②

一瀬:実際に投資家が「このようなことを思っていますよ」「これは全然響いてないですよ」「これはキラーメッセージかもしれませんね」と思っていることを、上場企業のみなさまにフィードバックして、今後のIR活動のPDCAを回していただくことをサービスとして提供しています。対話という意味の「ダイアログ」というソリューションになります。ご興味があれば、ぜひお声掛けいただきたいと思います。

アンケートご協力のお願い

一瀬:ウェビナーが終了しましたら、アンケートにぜひご回答いただきたいと思います。ご回答いただいたみなさまには、追加で情報を提供させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

次回予告

一瀬:シリーズということで、第3回も企画しています。今度は、対談形式にしたいと思っており、今ご登壇いただいたような若手の個人投資家の方に加えて、上場企業のIRのご担当の方にも出てきていただき、直接語り合おうと思います。

「『みんなが嬉しい』個人向けIRとは」というテーマを今のところ考えています。何かコミュニケーションの施策を打つ時に、受けても嬉しいし、上場企業も嬉しいということで、そのような「win-win」なコミュニケーションがどんどん増えればと思っています。

今の上場企業のIRの開示の在り方や個人投資家の在り方などについて、いろいろお話できれば、アレンジしたいと考えています。乞うご期待ください。

大変長い時間ご覧いただきましてありがとうございます。このIRという業界は、個人向けの施策に少しでも気づき、学びを得て、よりよいIRがどんどん増えたら日本はもっと元気になるのではないかと思っています。また、オンライン上でこのようなコンテンツ、チャレンジをしていきたいと思います。

秋元:次回が楽しみでしょうがないです。

一瀬:またぜひ企画しましょう。それでは、「個人投資家の実態―現役世代の投資家は何を見ているのか―」のウェビナーを終了させていただきます。ありがとうございました。