1.2020年3月期 連結決算総括①

横田信秋氏:代表取締役社長の横田です。みなさまには日頃より羽田空港ターミナルの建設、管理運営など、当社事業の運営にあたり、ご理解とご支援を賜りまして誠にありがとうございます。今回の決算発表を新型コロナウイルス感染症拡大の影響により延期したことで、関係者のみなさまにはご迷惑とご心配をおかけしました。

本日は当社の2020年3月期決算説明会にあたり、私から連結決算の総括、今期の見通し、中期経営計画の進捗、そして中長期の方向性についてご説明します。

それでは2ページをご覧ください。はじめに、前期2020年3月期の連結決算についてご説明します。前期の事業環境は、日本政府観光局の統計による日本全国の訪日外国人旅行客数は、2019年暦年で3,188万人と過去最高を記録し、出国日本人も増加して2,000万人を超えるなど、旅客数の増加傾向が続いていました。

しかし、今年の2月以降は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大により、訪日外国人旅客数が急激に減少し、国内の景気も急速に悪化しています。羽田空港においても、国内線、国際線ともに、上期までの旅客数は増加していましたが、2月や3月の旅客数の急激な減少が要因となり、前年比マイナスとなりました。

各空港の旅客数の増減率や実績は資料のとおりです。このような事業環境の下、3月29日には国土交通省による羽田空港国際線の発着枠の増加を受け、第3ターミナルの拡張に加え、第2ターミナルに国際線施設を整備し、供用しました。

1.2020年3月期 連結決算総括②

3ページをご覧ください。2020年3月期の連結業績については、資料の赤枠のとおり、売上高は2,497億円、238億円の減収です。営業利益は98億円と125億円の減益、経常利益は87億円、当期純利益は50億円となりました。

前年実績との差異の主な要因は資料に記載したとおりですが、とくに営業利益については羽田空港の国際線施設の供用開始に伴う一時費用の発生があったこと、それに加えて新型コロナウイルス感染症の影響で旅客数が減少したことによる売上高の減少などがあったことで、減益幅が大きくなっています。

次に配当についてご説明しますと、前期の配当については、昨年5月に公表した下期の配当予想に対して10円減配し、10円の配当とさせていただきました。

こちらは第3四半期までの業績はおおむね計画通りに推移していましたが、第4四半期に新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な減益となり、当期純利益が計画に対して約40パーセントを下回ったためです。その結果、通期での配当金は32円となり、配当性向は51.9パーセントとなります。ここで配当の基本方針についてあらためてご説明すると、当社は羽田空港ターミナルを運営する特性上、大規模投資が数年に1回発生するため、施設更新工事等の大規模工事を考慮した内部留保を確保していくことが重要となるためです。

それと同時に、株主のみなさまへの還元は経営の重要課題の1つとして位置づけており、安定的な配当を継続して実施することを基本方針として、業績に応じて積極的に利益還元を行なうこととしています。今回の新型コロナウイルス感染症の影響は、当社の業績に大きな影響を及ぼすことになりますが、一時的な要因と考えており、株主還元に関する基本的な考え方を変更する予定はありません。なお、今期の配当については、業績見通しを未定としていることもあり、配当についても未定とします。

1.2020年3月期 連結決算総括③

4ページは通期の連結業績について、TIAT連結子会社化に伴う影響額をお示ししたものです。

1.2020年3月期 連結決算総括④

5ページに直近2年間の四半期ごとの売上高と営業利益の推移をグラフに表しました。この資料では、前期の第4四半期の業績が、売上高、営業利益ともに大きく減少していることをご確認いただけます。

そこで、前期の業績の増減要因をご理解いただく上で重要なポイントとなる第4四半期での減収減益の要因について、もう少し踏み込んでご説明します。

1.2020年3月期 連結決算総括⑤

6ページをご覧ください。第4四半期での減益の要因の1つは、2016年度から取り組んできました羽田国際化投資の完成に伴う一時費用の負担があったことです。投資額1,000億円を計画して取り組んできた羽田国際化投資は、本年3月29日の第2ターミナル国際線施設の供用開始をもって、すべての施設が完成しました。

最終的な投資額は950億円となり、第4四半期では、投資規模では最大の第2ターミナル国際線施設の完成に伴い、修繕費や備品、不動産取得税等の一時費用29億円が負担増となり、それに加えて減価償却費も前年比で25億円増加しました。

また、これらの投資に伴う減価償却費の負担は、今期は93億円を見込んでいます。残念ながら現時点では、航空需要の一時的な減退によりこの拡張した施設は活用されていませんが、航空需要が回復した後には、当社グループの収益拡大に大いに寄与するものと期待しています。

1.2020年3月期 連結決算総括⑥

7ページをご覧ください。第4四半期の減収減益のもう1つの要因は、ご承知のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響です。資料では、旅客数の対前年同期比の推移をお示ししており、その影響の大きさをご理解いただけるものと思います。

前期の業績への影響額としては、売上高で約210億円、営業利益で約70億円と見ています。主な要因としては、国内線・国際線旅客数の減少による施設利用料収入の減少と、免税売店を中心とする商品売上や飲食売上の減少です。

前期の業績は、昨年5月に業績予想をお示しした時から、羽田空港国際化投資による一時費用の計上で前年を下回るとご説明してきましたが、その負担に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響による旅客数の大幅減が、さらに減益幅を押し下げています。

2.2021年3月期の見通し①

8ページをご覧ください。次に、今期2021年3月期の業績予想ですが、すでに6月4日時点でお示しのとおり、業績予想は未定とさせていただいています。足元の事業環境として、政府による緊急事態宣言は5月25日に解除されましたが、航空会社の発表によると、国内線は6月中旬までは70パーセント以上の旅客数の欠航が続くこと、国際線も90パーセント以上の欠航が続くことが予定されており、航空需要の回復の見通しを見極めることが困難な状況にあります。

直近4月の旅客数増減率の速報は資料のとおりです。羽田空港の旅客数は第2四半期以降段階的に回復するものとみていますが、前期の水準までの回復には至らないと見ています。そのため、売上高の回復も厳しい見通しとなることからコスト削減を進めるものの、今期の連結業績を営業黒字とすることは難しい状況にあるとみています。

なお、今期の業績予想については、今後合理的に算定することが可能になった段階でお示ししたいと思います。

2.2021年3月期の見通し②

9ページをご覧ください。ここでは今期の主な取り組みについてお示ししています。まず、事業運営では厳しい環境にありますが、ターミナルビルの維持管理業務に注力するなど、前期から取り組んでいる空港利用者の利便性向上に関連する取り組みについて、引き続き推進します。

新型コロナウイルスの感染症拡大防止策では、緊急事態宣言期間中に入居テナントに休業を要請しましたので、4月から6月までの家賃減免措置を実施するなどの取り組みを進めています。その他にも、感染症拡大防止のためのハード面、ソフト面の対応を着実に進めていきます。

事業継続の取り組みでは、売上減少に伴う資金不足を補うための資金調達の取り組みを進めています。既存の借入枠90億円に加えて、取引先銀行との間に200億円の短期借入枠を設定していまして、さらに減少影響が長期化した場合に備えて、長期借入の準備も進めているところです。

その他に、現在役員報酬の一部を返上していますが、固定的費用や外部委託費用の削減など、経費削減策も進めていきます。

2.2021年3月期の見通し③

10ページでは、旅客数の減少が当社の業績に与える影響をセグメント別にお示ししています。

3.中期経営計画の進捗

11ページでは、現在の中期経営計画の進捗状況について、当社が取り組んできた内容をお示ししています。

とくに、英国のSKYTRAX社の評価では、5スターエアポートを6年連続で獲得しています。また、2020年の部門賞についても、空港の総合評価の部門で2年連続で2位を獲得し、さらに空港内の清潔さや快適さなどの3部門において、昨年と同様に世界第1位の評価をいただいています。

中期経営計画のガイドライン、目標指標として3つの数値指標と連結営業利益250億円以上を掲げていきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、前提としていた事業環境が著しく変化しましたので、見通しについてのご説明は控えさせていただきたいと思います。

4.中長期の方向性①

12ページをご覧ください。次に、中長期の方向性についてご説明します。まず旅客需要の見通しですが、IATA(国際航空運送協会)が5月13日に発表した見通しによりますと、旅客需要が2019年レベルに回復するのは、国内線では2022年、国際線では2024年と予測されています。

こうした予測に対して、羽田空港での見通しとしては、羽田空港は日本の首都の基幹空港であることなど、需要の高い空港であることから、国内線、国際線ともに早い段階での回復が見込まれるものと見ています。

政府の2020年度補正予算で、観光需要喚起の取り組みが進んでいますので、これらも早い段階での回復に寄与するものとみています。

4.中長期の方向性②

13ページをご覧ください。今回のコロナウイルス感染症は、現在、緊急事態宣言も解除され、経済活動が再開されていますが、社会全体で新しい生活様式への移行が進んでいます。また、当社としても、国内線と国際線の航空旅客が数ヶ月間にわたって90パーセント以上も減少するというのは今まで経験したことのない事態でした。

感染収束後のニューノーマルに移行する中で、当社は空港ターミナル事業の運営方法を、従来の枠組みにとらわれない発想を用いて、抜本的に見直していく必要性を認識しています。

今回の経験も活かしながら、国土交通省や航空会社をはじめとする多くの関係者と協議を進め、あらゆる困難な環境下においても、持続的に事業を継続できる体制を確立していく所存です。

現在の中期経営計画でお示ししていたガイドラインや目標指標についても、ニューノーマルに対応した新たな空港ターミナル事業の運営方法を見直す中で、検討を進めていきたいと考えています。

4.中長期の方向性③

スライドの14ページで、今後の取り組みの内容についてお示しします。取り組みの方向性としては、事業継続計画の見直しを進める上で、絶対安全の確立を中心に、人員の効率的活用やロボット活用によりコスト面の強化を図る一方、eコマース等の強化に加え、デジタルマーケティングの強化により、顧客のニーズの変化をとらえた対応を可能とする営業面の見直しを図るなど、旅客数が大幅に減少した状況下でも、事業継続が可能な仕組みの構築を目指していきたいと思います。

絶対安全の確立では、防犯、防災対策に加えて、感染症対策としてのバイオセキュリティーやサイバーセキュリティ対策にも投資範囲を広げていきます。先般、国土交通省から災害や感染症等の対策に係る費用については、旅客取扱施設利用料(PSFC)への参入を認める旨の方針が出されています。

当社も、これらの安全対策投資の実施にあたっては、コスト回収スキームを確立の上進めていきます。人員の効率的活用においては、テレワークを活用した働き方の定着に加え、羽田空港内に新たに導入された業務ロボットの活用により、旅客流動に弾力的に対応できる要因の再配置を検討し、業務のスリム化を図っていきます。

ロボット活用では、業務効率化に加え、羽田空港での導入実績を踏まえて、国内外の空港や施設への展開を目指し、収益事業の1つにしていきたいと思います。営業面では、EC事業の推進にあたり、7月に専門の部署を設けまして、4年後から5年後を目処に、現在の年間商品売上の5パーセントにあたる約70億円の新たな商品売上の創出を目指したいと思っています。

さらには、空港を利用されるあらゆる利用者のニーズに的確に対応し、利便性をさらに向上させるとともに、潜在するニーズを掘り起こし、羽田空港の「場」を活かした新たなビジネスチャンスを創造していきたいと考えています。

こうした事業の推進の基礎となるデジタルマーケティングの取り組みを強化するにあたり、7月に専門の部署を設けて、顧客マーケティングを戦略的かつ組織横断的に推進し、羽田空港に新しい価値創造を具現化していく予定です。

最後になりますが、今回の新型コロナウイルス感染症は、航空業界にも大きな変革をもたらすこととなりました。しかし、中長期のスタンスに立てば、グローバル化の進展もあり、航空需要は今後も着実に伸びていくものと考えています。

当社としては、さまざまなリスクや課題に1つずつ着実に対処して、経営方針の絶対安全の確立を何よりも優先させた上で、羽田空港ターミナルの更なる利便性、快適性、機能性を向上させるとともに、羽田空港自体の魅力をさらに高め、絶え間ない羽田空港の価値創造と航空輸送の発展に貢献することで、当社の企業価値の向上に努めていく所存です。

みなさま方におかれましても、ご理解とご支援を賜りたく、今後ともよろしくお願いします。どうもありがとうございました。