2020年3月期決算説明会

有働敦氏(以下、有働):東邦ホールディングス株式会社代表取締役社長、有働です。

馬田明氏(以下、馬田):東邦薬品株式会社代表取締役社長、馬田です。

有働:本日は、東邦ホールディングスの2020年3月期決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。

開催に先立ちまして、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられましたみなさまと、そのご家族、関係者のみなさまに謹んでお悔やみをします。また、罹患されたみなさまに心からお見舞いしますとともに、1日も早いご回復を心よりお祈りします。また、医療従事者のみなさまをはじめ、感染拡大防止のために日々尽力をされているみなさまに、深く感謝します。

本日の内容ですが、はじめに私と馬田より決算の概要と事業戦略につき、ご説明をさせていただきます。また、当社ホームページにプレゼンテーション資料とデータブックを掲載しています。

2020年3月期決算の概要

馬田:それでは、2020年3月期の決算概要をご説明します。当期については、がん治療薬などの新薬、スペシャリティ医薬品や希少疾病用医薬品の売上の伸長、初診受付サービスや自動発注機能搭載の薬局本部システム「ミザル」をはじめとした、当社独自の顧客支援システムの契約拡大、流通ガイドラインに基づく個々の製品価値に見合った単品単価交渉徹底などの要因により、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも前期実績を上回りました。昨年11月に上方修正した通期業績予想に対しても、売上高はほぼ計画どおり、営業利益および当期純利益は過達となりました。

東邦HD 連結 P/L

連結の損益計算書です。当期の売上高は1兆2,637億800万円、営業利益は175億9,000万円、経常利益は237億3,200万円、当期純利益は162億3,000万円となりました。昨年11月に上方修正した計画に対する達成率はスライドをご覧ください。

売上高は99.74パーセントとほぼ計画どおりで、営業利益と当期純利益はそれぞれ102.87パーセントおよび106.78パーセントと過達になりました。また、前期比では、売上高は3.4パーセント増、営業利益、経常利益、当期純利益は順に、11.45パーセント、10.63パーセント、17.07パーセントと増加しました。

東邦HD 連結 B/S

連結の貸借対照表となります。資産については、6,708億2,700万円と2019年3月末より71億円増加しています。負債については、4,398億1,800万円と100億6,000万円の減少。純資産については、2,310億900万円と171億6,000万円の増加となりました。ご覧の表の右端に、主な増減要因を記載していますのでご参照ください。

医薬品卸売事業 P/L

セグメントの業績をご説明します。まず、医薬品卸売事業の損益計算書です。売上高は1兆2,140億3,000万円。売上総利益は817億2,100万円、売上比6.73パーセント、販売管理費は637億1,000万円で売上比5.25パーセント、営業利益は180億1,100万円で売上比1.48パーセントとなりました。

対計画達成率は、売上高では99.67パーセントとほぼ計画どおりでしたが、販売管理費を98.62パーセントに抑制した結果、営業利益は105.33パーセントと過達となり、前期比では、売上高が約3.3パーセント増となり、営業利益も約12パーセント増でした。

スライドの左下に、薬価ベースのカテゴリー別売上構成比を掲載しています。前年に比べ、新薬創出加算対象品が増加している一方で、長期収載品が減少しています。また、右下に期末の妥結率を掲載しています。ご覧のとおり、2020年3月末は、金額ベースで99.7パーセント、軒数ベースでも99.8パーセントとなっています。

調剤薬局事業 P/L

こちらは、調剤薬局事業の損益計算書です。2018年4月の調剤報酬改定から2年目となる当期は、売上高が961億2,400万円、売上総利益は334億9,300万円と売上比34.84パーセントでした。販売管理費は307億9,200万円で売上比32.03パーセント。営業利益は27億円で売上比2.81パーセントとなりました。対計画達成率については、売上高は100.88パーセントと計画を達成しましたが、販売管理費が102.3パーセントと計画を超えたため、営業利益は87.1パーセントと未達となりました。

前期比では、売上高が3.11パーセント増、営業利益は約89.5パーセントの増益となりました。スライド下の表に、当社グループの調剤薬局店舗数を掲載していますが、連結子会社9社で545店舗、非連結子会社や関連会社を加えると39社778店舗となりました。

2021年3月期の見通し

2021年3月期の見通しについてご説明します。先週の木曜、5月14日に開示した決算短信でご紹介したように、2021年3月期の業績見通しについては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を現段階で判断することが困難なことから、未定としています。合理的な算出が可能となった段階で、速やかに公表します。

配当について

配当については、引き続き将来の収益基盤の強化と市況変動に備えた内部留保の充実に努めつつ、毎期の業績を勘案しながら柔軟な配当政策を実施する所存です。2020年3月期については、中間期末とも普通配当15円に持株会社移行10周年配当の5円を合わせて20円、年間では40円の配当としました。2021年3月期の配当予想については、現時点では業績予想が困難なため未定とさせていただきました。

新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症への対応です。表にあるとおり医療機関の関係者のみなさま、お得意先のみなさまにサージカルマスク2,500万枚を提供させていただき、今後も提供できるよう準備を行なっています。また、政府・都の要請に積極的に対応すべく、ダイヤモンド・プリンセス号や感染症指定医療機関へ医薬品・医療機器等の納入を続けています。

緊急事態宣言下での当社の対応については、現在、時差出勤、在宅勤務、テレワークの実施や、交代制による配送体制、MSは配送業務に専念しています。感染防止策の徹底については、サージカルマスク着用、手指消毒、第三者による検温の実施、薬局における飛沫感染防止シートの設置等の取り組みを行なっています。3月にはパート・派遣・外注社員を含む全従業員1万3,920名に、7月上旬までの必要枚数(1人100枚)のサージカルマスクを配布しています。

コンプライアンスの徹底と体制強化

コンプライアンスの徹底と体制強化として薬機法、独占禁止法の法令遵守とガバナンスを強化していきます。「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」にも対応するため、ホールディングスにはグループ・リスクマネジメント室を、子会社の東邦薬品には販売情報監督室を設置しています。

これにて私のパートの発表を終了します。続きまして、有働社長、よろしくお願いします。

中期的な収益性向上のための事業戦略

有働:馬田から今コロナ対策について話をさせていただきましたが、我々にできる限りの最善策を早い段階から講じさせていただいたこともあり、現在、我がグループから感染者は出ていません。引き続き感染拡大の予防を含めてしっかりと対策していきたいと思っています。

事業戦略については、付加価値サービス型ビジネスモデルへの変革の一層の推進を図っていきます。今回の新型コロナウイルス感染症で、患者さまや医療機関に対して我々に何ができるのか、何を提供することができるのかが大切であると、あらためて考えさせられました。

医療機関の業務効率化、患者さまの抱える課題解決、薬局共創未来との連携、ジェネリック医薬品の選択のあり方と、一層推進を図っていきます。これらのビジネスモデルを支えるのが高機能物流であり、ダイナベース、自動化、PIC/S GDP対応、スペシャリティ・希少疾病医薬品への対応と流通が大切になってきます。これからも我々は安定供給という社会的使命をさらに強化していきたいと考えています。

(1)スペシャリティ・希少疾病医薬品への取り組み

スペシャリティ・希少疾病医薬品への取り組みです。当社の特徴は現物在庫と理論在庫がリアルタイムで一致する高精度なオペレーション、納品温度管理の完全なるトレーサビリティ、価格ロックシステムと書いていますが、何よりも我々の強みと思っているのが、すべてのセンターが東邦ホールディングスの直接の保有になっていることで、全国すべての一元管理が実現できていることです。多くの他社では事業会社が在庫所有を担っているため、一元管理という意味では我々のほうが優れていると感じています。また、「サルム」は病棟までのトレーサビリティを実現したことにより、医療機関やメーカーから大変高い評価をいただいています。

結果として、当社で扱う独占品の売上も822億円から、昨年は1,080億円まで拡大しました。伸び率は131.9パーセントアップになっています。

(2)顧客支援システムの更なる契約拡大

2020年3月期の顧客支援の実績は60億4,000万円となりました。わずかに計画には未達となりましたが、3月のコロナ感染症の影響で初診受付回数が減少したこと、営業活動が行なえなかったことが影響しました。今期は、お伝えしたとおり当社独自の付加価値サービスをさらに拡大していきたいと考えています。

(2)顧客支援システムの更なる契約拡大:重点項目

患者さま視点で、医療機関の課題解決を目指し、信頼関係を構築していきたいと思っています。とくに現在、増患対策におけるニーズが非常に高まっているため、初診受付サービスのさらなる展開、医薬品冷蔵庫の温度記録の自動化と廃棄ロスの削減、省人化に貢献する「オントレイシス クラウド」の展開、動認識技術の病院内での活用の実用化も目指していきます。

地域においては「どこシル伝言板」をさらに展開していきたいと考えています。「どこシル伝言板」は、現在106の市町村で採用をいただいています。また、リモートディテーリングのエンタッチとの協業も強化をしていきたいと考えています。

(2)顧客支援システムの更なる契約拡大:オンライン診療・オンライン服薬指導への取り組み

こちらは今非常に話題になっているオンライン診療システムのことですが、我々は顧客支援システムの開発で培ったノウハウを活かし、現在、オンライン診療システムの開発を進めています。

厚労省から5月11日にオンライン診療実施医療機関は1万624軒であると公表されましたが、実際に患者さまや一般の方々からすると、「どうやってオンライン診療を受ければいいのか」「どうやって申し込みをすればいいのか」「自分に合った症状の医療機関はどこか」「自分の処方の内容が知りたい」「どういう医療機関にかかればいいのかわからない」という声が非常に多くなっています。

当社には毎月1,200万人を超える方々が病院検索をしている「病院なび」があるため、このようなニーズがある方々が「病院なび」から、ニーズに合ったオンライン診療実施施設を検索し、受付、予約までできる仕組みを提供したいと考えています。

また、「e健康ショップ」は我々のもつ薬局共創未来の薬局情報を利用し、患者さまがあらかじめ最も近い薬局の情報やかかりつけ薬局を登録をしていただくというかたちになっています。かかりつけ薬局がない方については、「e健康ショップ」から薬局共創未来の薬局を登録していただくことで、一気通貫にサービスを提供できるようにしていきたいと思っています。

また、「アルファリア」の決済機能を活用して、医療機関、薬局までの決済を一気通貫で実現していきたいと思っています。こちらは初診受付サービスで、現在毎月5万人以上の方にお使いいただいていますが、科目別の問診票の評判が非常に高いため、この問診票を最大限活かしていきたいと考えています。また、先ほどお話ししたオンライン診療実施施設1万624軒ですが、このうちの3,850軒がホームページを持っていません。そのため、今後は「病院なび」においてホームページを提供していきたいと考えています。

(3)共創未来ファーマ製品の拡充とジェネリック医薬品の集約化

共創未来ファーマ製品は、薬価ベースではありますが前期は71億4,000万円まで成長し、約40パーセントアップの伸び率となっています。現在では507軒の大病院でご採用いただくまでに成長しました。今期は大型製品の特許切れを控えているため、さらに集約を進めていきたいと思っています。

(4)社会的使命を果たすための物流イノベーション

一昨年は、TBC広島を稼働しましたが、いよいよ本年9月にTBCダイナベースの運用をスタートします。国交省や東京都とも連携しており、災害時広域輸送基地としての役割を全うしていきたいと考えています。これはメーカーが独占流通卸を選択するときに、大きなアドバンテージになると考え、パラピッキング自動化率90パーセント以上を目指し、効率化や生産性アップを実現していきます。我々からの説明をこれで終了します。