第5回 個人投資家向けIRセミナー&講演会(第4部)

上田谷真一氏(以下、上田谷):初めまして。TSIの上田谷と申します。私自身は、今まで主にBtoCの消費財の会社の経営などいろいろ携わってきました。

ご存知の方もいるかもしれないですが、アパレルや小売など、消費財全般……日本を見てみると、世界的に見れば、これだけ中間層が豊かな先進国はありません。バブルがはじけた後、いろいろなことが言われましたが、国内でがんばってしがみついて、人よりも少しうまく仕事ができれば食べていけたのが現実だと思っています。

今後は、まだまだ日本は豊かであり続けるとは思うのですが、さすがにいろいろなことを切り替えていかないと生き残れないだろうと思います。

また、さきほどの話の裏返しで、これだけ中間層が豊かで、いわゆる本当のお金持ちでもなく、本当に最低限の暮らしをしている人たちでもない、我々のように普通に働いて消費している人間がこれだけ豊かな国にいて、その経験を使えないわけがないと考えました。

これは欧米企業にもない、いわゆる途上国出身の企業にもない部分だと思っていまして、僕らはその強みが生きるのではないかと考えて、このような業界の仕事を手がけています。

もちろん、足元の経営をきちんと行うことも大切なのですが、中長期的に見て、どのようにすれば、我々のようなアパレル、ファッション、ライフスタイルといった事業を、10年後や20年後も価値のある業態として残せるのかが、僕らの非常に大きな課題だと思っています。

そもそも、TSIホールディングスという会社はあまり馴染みがなく、例えば大学などで講義を頼まれて講演をして「TSIって知ってますか?」と言っても、だいたい知らないという状況です。ただ、個別のブランド名を言うと、ようやくわかっていただけるという会社です。

ざっくり言うと、70年前に設立した、いわゆる老舗総合アパレル2社が合併してできた会社です。1つが東京スタイルで、これが「TS」です。もう1つはサンエー・インターナショナルで、これが「SI」です。

どちらも複数のブランドを持っていて、もともとは百貨店の婦人服を中心に始まった会社なのですが、こちらが70年の間にどんどん業態を変えてきて、今のような小売りを中心としたマルチブランドを展開する会社になりました。そして2011年に経営統合してできたのがTSIです。

売上は2019年で1,600億円くらい、今期の2020年でだいたい1,800億円くらいを目指しています。買収などもしていますので、それくらいの売上規模の会社です。

我々は、1つの巨大なメガブランドがあって、ほかにもいくつか(小さなブランドが)あるというかたちではありません。基本的には100億~200億円くらいのブランドがいくつも分散して成り立っているような業態です。

これは、いいところも悪いところもあるのですが、徹底的なコスト勝負で効率化を図る方法は向いていません。ただし、我々のビジネスは嗜好性の高いビジネスであり、ブランドごとの個性や癖を出して、そうしたものが好きな人を世界中から集めて商品を買っていただくというビジネスです。よって、ブランドのポートフォリオがいくつか分かれているのは、逆に強みでもあります。

スライドの右側にあるように、TSI HOLDINGSというヘッドクオーターの下に、「XXX」と記載していますが、横並びでいろいろな会社やブランドが並んでいるのが現状です。これはよいところでもあり、悪いところでもあるというのが現状です。

nano・universe

ブランドをいくつか紹介します。この「nano・universe」は、設立が2002年で比較的新しいブランドで、いわゆるセレクトショップと言われている業態の会社です。

男性服と女性服では、男性服のほうが少し多いものの、半々くらいで、基本的にはどちらも合わせてお店を展開しているブランドです。66店舗ありまして、300億円弱くらいの売上です。単体のブランドとしては、これが一番大きなブランドになります。

NATURAL BEAUTY BASIC

「NATURAL BEAUTY BASIC」は、もっと歴史の長いブランドで、20年以上展開しているブランドです。駅ビルやファッションビルといったところを中心に、約100店舗展開しており、売上高150億円くらいのビジネスです。ターゲットは、OLさん向けの通勤服がど真ん中というかたちです。

MARGARET HOWELL

次に、我々の特徴的なブランドでもあるのですが、イギリスのブランド「MARGARET HOWELL」です。イギリスのブランドを日本で展開しているわけではなく、我々がこのブランド自体を持っています。

「MARGARET HOWELL」本人は、今でもロンドンでコレクションをしていて、イギリスやヨーロッパで売っており、アメリカでは、比較的高級なセレクトショップ等に卸して売っています。

さすがにイギリスのサイズや素材そのままでは日本だとなかなか(販売が)難しいため、デザインや世界観はそのままに、日本人がちゃんと着られるように……イギリスと違って日本は湿気が多くて暑いため、そのようなところでもきちんと着られるような素材の厚さやフィット感にリアレンジして、日本で生産して売っています。

いわゆるグローバルブランドですが、こちらもだいたい売上高が150億円弱くらいのブランドです。

「グローバルブランドは、意外とあまり大きくないのかな」と思われるかもしれません。実は、このような嗜好性の高いブランドは、そんなに巨大ではありません。

もちろん、有名なラグジュアリーブランドのように、お財布を世界中で売ったり、バッグを世界中で売ったりといったような、あのクラスであればけっこうな規模になり、売上高も1,000億円超えてきます。

しかし、グローバルブランドとはいえ、何千億円も売上があるようなものはなく、数百億円のところが多いです。

営業努力の問題もあるかもしれないのですが、嗜好性が高いからでしょう。「MARGARET HOWELL」はべらぼうに高くはないですが、別にすごく安いわけでもありません。

この「MARGARET HOWELL」も、お嫌いな方は別に興味はないと思います。非常にナチュラルで、クラフトマンシップがあって、シンプル。その代わり、好きな人にとってはたまらないブランドです。逆に、やたらと規模を大きくするよりは、ブランドの個性を大事に守って、その代わりに好きな人にファンになっていただき、買い続けていただく、その代表的なブランドになります。

PEARLY GATES

こちらも我々の看板事業の1つで、ゴルフウェアです。「PEARLY GATES」というブランドで、アメリカのブランドのように見せているのですが、実は日本で30年前に立ち上げたブランドです。

柄のシャツを見てもわかるとおり、かなりクセがあります。昔のゴルフウェアというと、おじさんの休日服みたいなイメージがあったのですが、これを立ち上げた人が「ゴルフをやりたいけれど、かっこ悪い服は着たくないな」という思いでブランドを立ち上げました。とにかくゴルフをかっこよくしたい、かっこよくゴルフをやりたいという思いで作ったブランドで、今やトップブランドになっています。

こちらも、日本のほかにも韓国で100億円くらいの(売上を誇る)ビジネスになっています。また、アメリカでも少しずつ展開を始めています。

ゴルフ人口がこれだけ多い日本だからこそ始められたビジネスだと思います。ヨーロッパでは本当にお金持ちのビジネスですし、アメリカではTシャツや運動着でゴルフをするため、そこそこかっこつけながらゴルフを楽しもうというマーケットが国内にあったからこそ、始められたブランドです。このようなスポーツ系も、我々にとっては大きな柱になっています。

ROSE BUD

この「ROSE BUD」は、20代~30代を中心に人気のブランドです。路面店もありますが、駅ビルやファッションビルにも入っていて、これもセレクトショップ業態です。

半分くらいが世界中から買い付けてきた服や雑貨で、半分くらいが当社のデザイナーがデザインして作っているオリジナル商品です。女性向けのけっこうエッジのきいたブランドで、好きな人は好きですし、興味のない方は興味がないという類のブランドではありますが、非常に個性が際立っているブランドです。

STUSSY

また、当社はストリートウェアとしても日本で最大のグループになっていまして、その最大のブランドが「STUSSY」です。こちらは残念ながら、我々は日本のビジネスだけを手がけているのですが、本国はアメリカです。「STUSSY」自体は日本が中心になって世界で大きくなったブランドなのですが、いわゆるストリートウェアの看板ブランドになります。

HUF

こちらは、「HUF」というブランドです。「STUSSY」に比べればまだ知名度は低いのですが、アメリカのロサンゼルスで始まったブランドです。(ブランドのオーナーで)伝説のスケーターであるKeith Hufnagel(キース・ハフナゲル)さんの「HUF」がブランド名についています。

ストリートウェアは、ファッションではあるのですが、ルーツが大事です。スケートボードのようなカルチャーや音楽などがルーツになるのですが、「HUF」は本当に伝説のスケーターが始めたブランドです。

我々は2017年にそれを買収して、グローバルブランドとして展開しようとしています。今はアメリカが中心ですが、日本はもちろん、中国やアジア、ヨーロッパにも展開しようと思っています。

(グローバル化も)我々の戦略の1つです。国内だけに限定したビジネスを増やすよりは、グローバルに戦えるビジネスを展開していったほうがいいと思っています。この「HUF」はアメリカのブランドですが、アメリカでも我々が経営しているブランドになります。

HUMAN WOMAN

「HUMAN WOMAN」は、百貨店に入っているフレンチトラッドの代表的なブランドです。これも固定ファンが多く、3分の2くらいがロイヤルカスタマーで、毎年毎年買ってくださる方で成り立っているようなブランドです。

PROPORTION BODY DRESSING

「PROPORTION BODY DRESSING」は、ファッションビルに入っているブランドになります。

JILL by JILLSTUART

「JILL by JILLSTUART」では、「JILLSTUART」というコレクションブランドも展開しているのですが、いわゆるディフュージョンブランドで、駅ビルなどで展開しているものです。OLさんなどをターゲットにしたブランドになります。

以上が代表的なブランドで、「nano universe」など比較的ターゲットが広いブランドもありますが、クセがあってもいいから個性を出して、その代わりにそれが好きな世界中の人に着てもらうという戦略を取っています。

過去業績サマリー ①販路別売上高の推移

過去業績についてです。2013年からずっと売上が減ってきて、2018年で底を打ったように見えています。日本はオーバーストアで、店やブランドが多すぎるという問題があり、競争力がなくても「今、このような服が流行っている」となるとみんなで作って、みんなで店に出すというやり方でしたが、それをやり尽くした結果です。

この売上の減少は、どちらかというと、マーケットが厳しいといったこともあるのですが、不採算店舗の閉鎖を中心に、能動的に減らしてきました。また、今儲かっていても将来的には競争力がないであろうと思われるブランドを閉じてきました。

とくに、百貨店のミセス系ブランドやファッションビルに入っているOLさん向けのブランドなどを中心に閉じていきました。

その結果、(2013年2月期に)1,855億円あった売上が、2018年2月期で1,555億円までへこみ、底を打って今は少し伸びています。

伸びてきている理由は、買収や事業開発により新しいブランドが入ってきており、店舗の閉鎖もだいたい一段落したかなというところです。

また、グラフの上がEC比率で、2番目が非百貨店、3番目が百貨店となっているのですが、顕著なのは、我々はもともと百貨店ブランドから始まりましたが、今は百貨店が15パーセントになっています。逆に駅ビルやファッションビルなどの非百貨店やECが大きくなり、ECは21パーセントと、百貨店よりも大きくなりました。

もともと百貨店が花形だった時期は、我々もとにかく百貨店中心にビジネスを展開してきました。そのあと、駅ビルやファッションビルが登場してきたときに、そこに自主的にターゲットを切り替えていきました。そして、ECが伸びてきたときに、また積極的にECを伸ばしていきました。

祖業となっているブランドやその販路に固執するよりは、その時々で最適なチャネルで、最適なブランドで勝負していくというのが、我々の歴史みたいなところです。

今後ですが、百貨店はそろそろ下げ止まるかなと思っています。我々は、主に都心型百貨店で商売をしておりますが、都心の百貨店は今も集客力は強いです。例えば阪急の梅田、新宿の伊勢丹などには日本だけでなく、世界中からお客さまが集まっていらっしゃいます。駅ビルで新宿のルミネにしても、六本木ヒルズにしても、集まるところにはしっかり人が集まります。

我々は、そのような都心型の店は維持していきます。また、これも良し悪しですが、採算が難しい郊外店は諦めて、その分をECで取っていくという戦略でチャネルを切り替えています。

過去業績サマリー ②営業利益の推移

営業利益です。統合後はなかなか利益が出ずに苦しんでいたのですが、5年くらい前からなんとか黒字基調に乗せられるようになったのですが、いかんせん、2,000億円近く売っていながら20億円しか利益が出ていないということで、この収益性の低さが一番の課題だと思ってます。

これをもう少し引き上げていくということと、10年経ったら違う業態になっていなければいけないため、土俵をずらしていくための活動を行っているところです。

前期業績総括

何度も言っているのですが、我々自身はメガブランドがありません。それは、会社としての個性みたいなものです。

いわゆる価格競争やマスマーケットに出ていくと、今の時代は好む好まざるにかかわらず、体力勝負になります。他より1円でも安く、みたいな勝負になってきて、「うちのほうが質がいいんだ」「かっこいいんだ」と言っても、マスマーケットに生身で乗り込んでいっても非常に厳しくなります。

他社さまと比べても仕方がないのですが、総合アパレルと言われている他社さまに比べると、ファッションが好きなお客さまが多い会社だと思っています。今は、べらぼうに高いものは売れないのですが、マスマーケットでボリュームを稼ぐよりは、値下げしなくても売れるビジネスの集合体にしてこうというのが、我々の今の戦略になっています。

スライドは去年の業績の反省ですが、ずっとある課題でもあります。だいたいの商品がセールにかかり、粗利が取れなくなって、値下げしなければ売れなくなることがよくありました。逆に今までは、たくさん作ってセールで売ればいい……もっと言うと、セールにかけても儲かるように、最初からすごく安い原価で作って勝負しているようなモデルです。当社だけでなく、ファッションビジネスがずっとこのモデルでやってきました。

例えば百貨店や駅ビルなどの商業施設の方はテナントの売上に応じて収入が入るビジネスモデルなので、売上全体が上がればいいのですが、我々のようなブランド商売を行っているところは、ブランド価値をどんどん痛めてしまいます。

一番いけないのは、定価で買ってくれたお客さまが馬鹿を見るということです。我々が一番大事にしなければいけないファンのお客さまに、一番損な買い物をさせることになるため、セール前提のビジネスは無理だと思っています。

「隣が20パーセント引きなら、うちは25パーセント引きだ」ということをしていても切りがない。基本的にはここから足を洗おうと思っています。

また、セールを前提に安い原価で作ったものは、それを見透かされて、やっぱり売れないわけです。よって、いくつかのブランドで先行して原価を上げようとしています。原価を上げても、定価で売れる比率が上がれば、我々の利益は増えるという戦略でいくつかのブランドで実施してみたら、やはりそうでした。

逆に、値段も下げて原価も下げたブランドは、どんどん定価で売れなくなって、ひどいことになりました。そこで、これからの戦略は、原価を上げてでも定価で売り切るというかたちです。

トレンドの流れについてですが、ストリートが流行ったり、ビッグシルエットが流行ったり、また私も滅多にスーツを着なくなりましたが、普通の格好でみんなが仕事をするようになり、カジュアル化が進んだりと、トレンドの流れはいろいろです。自分たちでは完全にコントロールできないため、ブランドを分散することで対応していこうというところです。

そして、これは当たり前なのですが、お店が強い、お客さまをしっかりとつかまえられるブランドが強かったなと思います。

中期経営ビジョン

我々の中期経営ビジョンは「The Brand Builder」です。さっき言ったとおり、我々がきちんと支援すれば、世界中できっちり称賛されて生き残れるブランドになります。我々はそのような存在になりたいと思っています。

すごくいいデザイナーや、すごくいいアイデアを持っているブランドを、我々が自力で開発してもいいですし、買ってきてもいい。それを丁寧に育て上げて、グローバルブランドにしていきます。これは「MARGARET HOWELL」でとった手段ですが、そうしたやり方でいこうというのがグループ全体のビジョンです。

戦略の方向性

さきほどお話ししたようにメガブランドがなく、文鎮型で、いくつも会社やブランドが並んでいるかたちです。ホールディングスの下に、会社で言うと30社くらいあり、ブランドで言うと50ブランドくらいあります。これは効率が悪すぎるため、ある程度グループとして効率化を図っていきたいなと思っています。

なお、スライドの上から2つ目の「プロパービジネス」というのは、「定価で販売するビジネスにしましょう」ということです。

それから3つ目が、グローバル化というよりは多国籍化です。イギリスの「MARGARET HOWELL」はイギリス人が経営していますし、アメリカの「HUF」はアメリカ人が経営しています。中国にある我々の会社は中国人が経営しています。

また、先ほど言ったEC比率が高まるだけではなく、今後は最初からEC専業で売り、その代わりにフルカスタマイズができて、受注生産するようなものがどんどん増えていきますので、デジタル化が大きな柱になります。既存店舗のビジネスはあまり増えず、ECが増えて、さらに海外や新しい事業で業績を伸ばしていきます。

中期経営目標

さきほども言いましたが、我々の収益性があまりにも低いため、まずは3年以内に営業利益を3パーセント台まで持っていきます。そのうえで、最終的には5パーセントくらいの営業利益を出せる会社になりたいと考えています。

中期重点領域_1 グループ構造の見直し

グループ構造の見直しは難しい課題です。「30社もあれば、もう全部合併しちゃえばいいのではないか?」といった簡単な話ではありません。ファッションは嗜好性が高いため、買収した会社をなんでもかんでも取り込んでいくと、嫌になって人が辞めてしまいます。そして、つまらないものができる。「同じ工場を使え」「同じようなモノづくりをしろ」「デザインルームを共用にしろ」となると、ブランドの強みがなくなってしまうため、我々はその部分は手は加えません。

その代わり、スライドに書いてあるように、経理・システム・物流といったものや海外展開をグループで統一化していこうと考え、組織を見直しているところです。今期中くらいに目処をつけて、2年くらいかけて実行していきます。

中期重点領域_2 プロパービジネス化①

またさきほどお話ししたプロパービジネス化……価格帯ですが、マスマーケットでは「もう勝負しません」ということです。我々は高価格帯のラグジュアリーブランドではなく、真ん中からアッパーミドルくらいのポジションです。(アパレルは)真ん中あたりがきついと言われていますが、開き直ってそこで展開していきます。その代わり、ブランドの個性を立てるわけです。

中期重点領域_2 プロパービジネス化②

実例として、我々が持っているブランドで「ADORE」というものがあり、「エフォートレス・エレガンス」というカテゴリなのですが、30万円くらいのコートが真冬になる前の9月には完売するのです。非常に評価されていて、好きなお客さまにきっちりいい物を作ってお届けすれば、定価で売れるわけです。

また、「MASTERMIND」というブランドは定価での販売比率が9割を超えています。全部が全部というわけではないのですが、(定価販売は)やってできないことはないと思っています。

「Apuweiser‐riche」は、一般の店頭でのセールはほとんどゼロです。もちろん余ったものはアウトレットやフラッシュセールで消化しますが、店頭は常に最新の商品だけが並んでいます。

中期重点領域_3 多国籍企業化①

多国籍企業化については、先ほどお話ししたように、最終的にはアメリカ、ヨーロッパ、中国と、それ以外のアジアで、それなりの規模でオペレーションしていきたいと思っており、だいたい3分の1くらいを海外で売り上げるようになりたいと考えています。

中期重点領域_3 多国籍企業化②

「MARGARET HOWELL」というイギリスのブランドや、「HUF」というロサンゼルスのブランドがあるため、それらを中心に展開してみたり、またスライドの右下にある「PEARLY GATES」も、日本発ですが韓国でも盛況で、今年アメリカでPGAというゴルフの展示会にも出て好評のため、アメリカにも進出しようと思っています。

中期重点領域_4 デジタル企業化

デジタル化のところですが、まずはECの比重を高めていくということに加えて、先ほど申し上げたとおり、今までのようにお店中心ではなく、最初からECでお客さまと会話をして、お客さまのサイズに合わせたものを、必要な量だけ作って届ける……フィッティングなどの細かいところは最寄りのお店に来て見ていただくというビジネスモデルがどんどん増えてくると思いますので、買収も含めて、その方向にかなり投資をしています。

中期重点領域_5 新規事業/ブランド創出①

また、どんどん中身が入れ替わること自体は悪いことではないため、新規事業などを通じて入れ替えていきます。

中期重点領域_5 新規事業/ブランド創出②

スライドを見ますと、今でもだいたい5年以内くらいに始めたブランドの売上構成比が15パーセントくらいですが、もう少し高くてもいいかなと思っています。よって、新規事業にはかなり投資しています。

中期重点領域_6 CSR

CSRの観点で言うと、環境負荷がかかっている一番の原因は作り過ぎていることだと思います。セールで叩き売るために、無駄なものを作って無駄に動かしているわけです。ですので、今後は作り過ぎず、動かし過ぎないようにします。

店頭に大量に置いて、すぐに引き上げて、また別の店舗に持っていったりアウトレットに持っていったりというのは、無駄以外の何物でもないわけですので、我々は必要な量だけ作ります。

物流に関しては、競合であるワールドさまと一緒にお店への配送などを始めました。お店へ配送する物流は、我々の競争力の源泉でもないですし、差別化にもならないため、業界で効率化できるのであれば効率化したほうがいいだろうということで、取り組んでいます。

そして、スライドの左下です。我々は値札をつけるタグでトップシェアの会社を持っているのですが、値札やタグを全部、生分解性プラスチックか紙で作っています。

中期事業計画

こちらが、中期的にどのような数字を目指すかを示したものです。

株主還元方針

最後に、株主還元のところです。我々は今のところ、1株当たり17円50銭くらいの配当を安定的に続けています。利益がぶれても、それだけは続けています。

我々には過去の先輩たちが作ってくれたアセットがあり、今はそのアセットを海外展開やデジタル化への投資に振り向けています。キャッシュがあるのはものすごい強みで、M&Aや、デジタルへの投資、海外への投資も可能です。

今までは収益性が低く、赤字配当に近いようなことも行っていた時期もあったのですが、今後はしっかり利益を出して、そこから配当するようにしていこうと思っています。ただし、キャッシュに余裕があるため株主還元はしていこうと思っていますし、自己株買いも機動的に実施しています。

株主優待についてですが、飲食店ほど一般的ではないものの、我々はこれだけの数のブランドがあるため、気に入ってもらえるものもあるだろうということで、20パーセントオフのクーポンのようなものを株主様に提供させていただいています。株主の3人に1人くらいの方に、実際にお使いいただいております。

このクーポンだけで何かしようということはないのですが、ファンになっていただきたいというつもりで提供しています。以上になります。

坂本慎太郎氏より質問

叶内文子氏:ご説明ありがとうございました。それでは、ここから質疑応答に移らせていただきます。まずは坂本さんから、機関投資家目線で気になるのはどのあたりでしょうか? 

坂本慎太郎氏(以下、坂本):本日はお話をありがとうございました。今日は男性が多く、なかなかブランドのイメージが難しいかなと思ってましたので、非常に詳しくお聞かせいただき、理解が深まったと思います。

そのブランドのなかでも、御社は売上が100億円を超えるブランドが4ブランドもあるということですが、ちょうど伸び盛りのブランドを教えていただければと思います。

上田谷:伸び代で言うと、ストリート系ですね。ストリートウェアはまだまだ伸びると思っています。しかも、日本だけではなく世界中で伸びると思います。今、ちょうど中国進出の話があり、中国の大きなところとパートナーを組もうと思っているところです。中国には、今までスケートボードというカルチャーがなかったのですが、それが今出てきているため、グローバルでまだまだ伸びると思っています。

また、「MARGARET HOWELL」は、アメリカではまだ卸でしか展開していなかったのですが、アメリカでも、直営店を含めて本格的に展開していこうと思っています。

「MARGARET HOWELL」は、日本とヨーロッパだけで有名なブランドのような状況ですので、アメリカでの伸び代がかなりあるかなと思います。やはり、海外に出ていけるブランドは伸び代が大きいかなと思っています。

坂本:また、先ほど店舗のスクラップ&ビルドの話がありましたよね。不採算店をある程度閉じているということで、月次の数値も出されていますが、2018年11月ぐらいからかなり好調そうです。その原因と要因分析をお願いします。

上田谷:1つは、不採算店を閉じたのが大きいです。無駄なお店はいらないと思っていたため、不採算店を閉じた影響があるかなと思います。また、その(好調になる)前までは、ずっとクーポンを乱発していましたが、定価で売る戦略に切り替えた影響もあります。クーポンをやめた瞬間はかなりキツいのですが、ようやくそこから抜けたというところです。

坂本:最後に、ECの展開についてもう少しお聞かせください。やはり、いきなりECで売りますというのは難しいと思うのですが、御社の場合は実店舗がかなりたくさんあるため、それをECに振り向けられると思います。これからECに力を入れますというところで、どのようにして実店舗にいる人をECに持ってくるのでしょうか?

実店舗とECの使い方については、先程お話があったとおり、実店舗でフィッティングをしてECで買うということでしたが、もっとたくさんの人をECに振り向けるような施策や、たくさんあるブランドをZOZOTOWNさんみたいにモール化して買い物してもらう、といった施策があれば教えてください。

上田谷:おっしゃるとおりで、下着や機能性のものだけであれば完結するかもしれないのですが、ファッションはECだけではなかなか完結しません。そこで考えているのが、1つは、お店で買ってもECで買っても、お客さまにとっては遜色ない(体験を提供することです)。例えば、会員カードもアプリにして、どちらでも使用できますよといったかたちや、返品・配送も全部シームレスにできますよといったかたちです。

またこれも大事なのですが、お客さまはもちろん、お店や販売員の人も忘れてはいけません。販売員の人が一生懸命にお店で勧めて、結局在庫がなくてECで買うと言われるとガッカリしてしまいます。そういうことが起きないように、お店で在庫がない場合は、その場でECの在庫を取り寄せてお客さまの家に直送するやり方もあります。

そうすれば、販売員の販売実績にもなりますし、例えばファッションビルであれば、そのファッションビルのレジも通すわけです。その分のコストなどは施設と交渉したりしながらになりますが、要はお店で買わずにECで買っても、販売員やお店の業績として残るようにということで、一部のブランドで始めたのですが効果がありました。これで、お店も販売員もお客さまも、どこでどういう買い方をしても損はしませんよというかたちです。

そこでもう1つ大切なのが、(買う場所によって)値段が同じであることです。例えば、「他社サイトだとクーポンが出ているから、そこで買えば500円安かった」みたいなことは好ましくありません。500円安くなるのが悪いわけではないのですが、基本的にはどこで買っても損をしない……Appleさんのようなかたちが理想ですが、それに近い状態がいいと思っています。

割高ではなく、リーズナブルな価格にする代わりに、「いつ、どこで買っても同じ値段なので、心配せずに気に入ったときに好きなチャネルで買ってください」というところを目指しています。

坂本:ありがとうございました。

質疑応答:前期比で大きく伸びているハーシェル・ユニオンについて

質問者1:よくお店にも行くので、すごく勉強になりました。質問なのですが、32ページ目のところです。

ライセンスの「ハーシェル・ユニオン」が、すごく強いように見えます。前月比が3788.7パーセントというのはすごいですよね?

上田谷:これは新しいもので、前年の数字がほとんどなく、新しく始めたために大きな数字が出ているだけです。おそらく、前年実績がゼロではないけれど、1ヶ月程度の数字しか影響しなかったためだと思います。

これは、モード服のセレクトショップのようなお店ですが、非常に支持されています。この数字は、そのような特殊事情によるものです。

質問者1:もう1点なのですが、このスライドの一番下の「飲食事業」は、何をやられているのですか?

上田谷:一番大きなものでいうと、アースカフェです。原宿や代官山、湘南テラスモールなどで展開していて、LAのオーガニックのカフェになります。

質疑応答:今後は、自社ECとモールのどちらに力を入れていくのか?

質問者2:ECの部分でもう少しお聞かせください。御社の場合、ECモールでもすごく強いブランドをたくさん持っていらっしゃると思うのですが、今後、自社ECとモールでのECと、どちらに力を入れていくのでしょうか?

上田谷:自社ですね。先ほどお話ししたとおりで、自社ECであればお客さまと直接つながれますし、お店で買ってもECで買っても全部同じ体験ができますというのは、やはり自社ECが一番やりやすいわけです。

それこそ、一部の他社サイトでいろいろな問題が起きたように、モールはモールで集客したいため、クーポンを配布したりするわけです。そうすると結局、モール側が(その費用を)負担するとはいえ、お店で定価で買った人が「他社サイトのほうが安く売ってる」といったかたちで苦情が来たりもします。

ですので、モールよりは自社ECのほうが望ましいと思っています。

一方で、最初からネットで当社のサイトに来てくれる人ばかりではありません。集客力のあるモールはもちろん無視できないため、モールはモールのビジネスで、なるべく定価で売れるような方法で進めていきますが、自社ECに重点を置くことになります。

質疑応答:社長に就任した理由について

質問者3:社長の説明が非常にわかりやすく、感銘を受けたのですが、経歴を確認させていただくと、コンサルティング会社からいろいろな業種を経て、2018年5月に今の会社の社長になられていますよね。なぜ、今回社長を引き受けられたのでしょうか? また、社長の在任中は、このお話のとおりに進んでいくのかなと思うのですが、中長期投資家としては、社長がどのくらい先まで続けられるのかが気になります。差し支えなければ、そのあたりも教えていただきたいと思います。

上田谷:当社はキャッシュが多いため、アクティビスト・ファンドから割と狙われやすいのです。当社の大株主は日本政策投資銀行さまなのですが、そうした事情もあり、ホワイトナイト的に国が株主でいてくれています。

もう1つの大株主は創業家なのですが、創業家から頼まれて、まず社外取締役をやりました。そして社外取締役をしているうちに「社長をやってくれ」と頼まれたというのが経緯です。

社外取締役を頼まれたのは、当社がBtoCで複数の業態を展開しているため、引き出しが多いほうが強いだろうと考えたからだと思います。私はアパレル一筋のような人間ではなく、そこまで専門性がないのですが、さまざまな事業を経験してきました。

加えて、いわゆる「頭でっかち系」のファンドやコンサルティングみたいなものから、いわゆる「柔らかい系」の事業会社と、どちらの話もできるということで声がかかったのだと思います。

そして、僕が引き受けた理由についてです。今までは、エレクトロニクスと自動車が日本を支えてきました。高度成長期からつい最近まで外貨を稼いで、日本ブランドを大きくしてくれました。もちろん、今もアニメなど、いくつか日本ブランドは出てきていますが、消費財……とくにBtoC系で、これだけ良質な中間層のお客さまがいる日本で鍛えられた我々のビジネスを、どうして海外で展開できないのかと考えたわけです。本当に、一部のブランドしか海外に出ていけないのかと思ったのです。そのときに、やはりチャンスはあるかもしれないなと思いました。

いろいろなアパレル会社があるなか、当社はブランドの個性をかなり大事にしていますし、それらに投資するだけのキャッシュがあり、財務体質がいいわけです。このTSIという器は、日本発のBtoCとして、将来外貨を稼いで生き残っていける数少ない母体になれるのではないかと考えて、今回引き受けました。

それを実現するのが私の仕事です。これまでも、転職したくて転職してきたわけではなく、株主さまが変わったり、ファンドが売却したり、会社が買い戻されたりといったイベントがあって転職してきました。

幸いクビにされたことは今までありませんでしたので、株主さまにクビにされなければ、しばらくは社長でいようと思っています。

質疑応答:40~50代に向けたブランド展開について

質問者4:これから少子高齢化がますます進みますよね。手がけていらっしゃるブランドは、比較的若い方をターゲットにしたものが多いように思うのですが、とくに40代、50代以上の方をターゲットにしたブランドを手がける予定がありましたら教えてください。

上田谷:(当社のブランドのなかで)割と目立つのがストリートウェアや、額の大きい「nano・universe」なのですが、実は40代や50代のお客さまも非常に多いです。「PEARLY GATES」にしても、さきほど30万円のコートも売れるというお話をした「ADORE」にしても、いいものに価値を感じてお金を出してくれる方というのは、やはり40代、50代、場合によっては60代の方が多く、我々もその方向けのビジネスも展開しています。

国内においては、向こう20年ぐらいはこうしたお客さま方に依存することになるかなと思います。今の60代の方は、昔の60代の方と違って10歳以上若いように感じますので、まだまだ消費を続けてくれると思っています。

そうした方たちで基盤を作りながら、一方で若い方や海外の方……必ずしもお金をたくさん使ってくれるわけではないお客さまを今のうちに獲得していくというようなバランス感覚で事業を行っています。

質疑応答:広告宣伝費の使い方について

質問者5:このようなアパレル事業は、流行に左右されるかと思いますが、例えばかなりの広告費を投じたりするものでしょうか? それとも、リピーターを大事にするという御社の主張のように、口コミを大事にしていくのでしょうか?

上田谷:認知度を上げるために、広告宣伝費は必要です。ただし、いわゆるマスメディアにかなりのお金を投じて、テレビ広告や雑誌、新聞広告を展開しても、昔より効果が小さくなっています。

それよりは、例えばゴルフのトーナメントなどを開催し、プロ契約して若い選手を育てて、そのなかでブランドを知ってもらう、いわゆるパブリシティ型、PR型が有効だと思います。

ストリートウェアに関しても、場合によってはスケートボードパークみたいなところでパーティーを開催したりすれば、そういったものが好きな人が集まって、そこから口コミやネットで情報が拡散しますよね。

ですので、広告宣伝費は使っているのですが、マスメディアに広告を出すというよりは、ブランドを好きになるきっかけとなる体験や、口コミのもとになるようなイベントにお金を出すといったかたちが多く、これからもその傾向は続いていくと思います。

マス向けのブランドであれば全国に向けたテレビCMは意味があると思うのですが、ゴルフをしない人にゴルフの話をしても仕方がないですから、今後もそういったイベントや体験にお金を出して拡散するかたちが中心になるかなと思っています。