見通し

坂本慎太郎氏:よろしくお願いします。20分程度時間をいただきました。本来は、岡三オンライン証券さんのプレゼンセミナーだったのですが、「Bコミくんに内容は任せた」という、懐深いお言葉をいただきました。

今日、このセミナーでは相場の話をすることがあまりないので、それに時間を使いたいなと思っております。

見通しとしては、去年の11月ぐらいから弱気なんですが、理由としては、今まで世界景気と株の上昇を引っ張ってきた2つがピークアウトするんじゃないか、というのが一番の原因です。

「戦略って、何があるんですか?」と言われて「押し目買いだけしておけばいいです」と5年間にわたって言い続けてきました。

右肩上がりで景気が上がってきまして、結局は押し目買いをしておけばよかったわけです。しかし、この戦略がそろそろまずいぞとなってきて、弱気に転換しました。理由は冒頭に申し上げましたとおり、景気のピークアウトと、米国をはじめとした世界的な企業の業績のピークアウト。これらがポイントになるわけです。

裏を返すと、景気がよくて業績もいいから、いろいろな懸念がありましたが、すべて打ち勝ってきたんです。株式相場で投資をしていると「リスクに気をつけなければいけません」という人がたくさんいると思うんですが、僕が「景気と企業業績が強すぎるから、リスクなんて気にしなくていいよ」という話をすると、いろんな人から怒られました。しかし、結果としてはリスクがあったときに押し目買いをしておけば、大儲けできた5年間だったんです。

しかし、さすがにそのパターンが使えなくなっちゃうよという兆候が見えてきました。景気については、まだ判別期間がもう少しあると思います。景気というのは、みなさんが意識されるRSMみたいな短期的な先行指標ではなく、ハードデータと言われている消費や物価、GDP……これらが最低でも3ヶ月連続で後退したときに、そろそろ景気がピークアウトだと判断します。

日本の場合は景気後退の判断になりましたけど、そうなるときには米国は株価も当然ピークアウトしていて、その前に気づかなければいけませんということなので、そろそろそれが見えてくるかなと思います。景気はもしかしたら今年まで持つかもしれないですけど、企業業績は確実に鈍化するでしょう。日本は減益、米国は鈍化と見ております。

米国に関しては、去年、一昨年は20パーセントぐらいの利益が出ていたものが、現状の予想では一桁後半ぐらいに落ち込んでいます。業績が右肩上がりで、20パーセントで上がってくるよと思って株価を織り込んでいた人の動きが鈍化してしまう。その調整があると最初に気づいたのが、去年の10月に高値を付けたあとの調整だったんじゃないかと僕は思っています。

今年は、こうした調整に気を付けなければいけない1年になるでしょうというところです。

日米の株価推移

ポイントとしましては、グラフの青い線が日経平均で、その上の細い線がNYダウなんですけど、日本が全然米国に付いていけていないじゃないかと言う人がいます。ここの原因は業績です。それしかありません。

日本に関しては後からブレイクダウンしてお話ししますが、今期は前期比で業績は減益。実は期初より悪いです。米国の場合は、鈍化はするものの増益するので、僕はここの業績がすべてを表していると思っています。

米国債の金利動向に留意

次が、NYダウと米10年債です。ここは現状、今年は当然、利上げはもうないです。ただ、利下げはあるかもねというかたちになっています。グラフを見ていただくと、3.2~3.4パーセントになったときに調整になって、実際のところ米国金利は今年は利上げがないとされているので、横ばいかなと思います。

リスクオン・オフは何で見る?

そうなりますと、株の調子がいいのはわかるのですが、円高に注意しなければいけません。為替に関しては後から武部さんとお話ししますので、ちょっと飛ばします。

投資家別売買動向

需給のお話をしたいと思います。投資家別売買動向ですが、去年はかなり特徴的な需給のかたちが出ました。外国人投資家が大量に売り込んでいるということです。

これは現物・先物を合わせて12兆~13兆円を売り越しました。現物は6兆円ぐらい売り越しになっています。先物も7兆5,000億円売り越しました。

先物売買動向(外国人投資家)

この先物の部分が注目でして、2012年の頭を1としていますが、これが先物の買い越し・売り越しの外国人の動向です。外国人が去年7兆5,000億円を売り越しました。年の半ばから売り越しが続いていまして、結局のところ過去に類を見ない売り越しになっていました。

今年はどうなっているかと言うと、年始からずっと買い戻し続けています。現状、2兆円ぐらい買い戻しています。

でも、現物は実は売り越しじゃないかということですが、それはそうなんです。現物はずっと売り越しているのですが、先物は買い戻している状況なんです。

多分、主体が違うんでしょう。去年先物を売り越した人たちは誰ですかと言うと、多分グローバルマクロと言われているファンドでしょう。このグローバルマクロは、日本だけではなく、世界で「どこどこの国より、どこどこの国が買い」というかたちで売り買いを国ごとに決めて、マクロ経済に基づいて投資するという、資金が大きいファンドです。こちらも米国株を買って、日本と欧州を売って、ポジションを組んでいると推測されます。

先物は限月があるから、その限月になると信用取引みたいに買い戻さなければいけないじゃないか、決済しなきゃいけないじゃないか、と思う方もいると思いますが「ロール」と言って、また次の期までポジションを繰り越すことができますので、それをずっと繰り返しているのが現状です。それを今年に入って少し買い戻しています。

もう1点。実際に買い戻しているのですが、ポイントは相場がよくないだろうと。2兆円も先物を買い戻すんだったら、すごくいい相場だとおかしくないなと。どうして米国に負けているんだと言うと、これは多分、上値を買っていないからなんです。

彼らの買い方が、やっぱりうまいんです。急いで買い戻さなければいけない資金ではないので、買い戻しもある程度の下値で限定して買っている。あとは、現物の売りが続いています。これも、需給的には米国ほどパフォーマンスがよくない部分がありますので、その隙を見て買い戻している状況なのかなと思います。

この買いが止まってしまうと、日本だけまた横ばいから下がっていく危険性がありますので、ここの先物動向は非常に注意したほうがいいかなと思います。この先物動向は、自分で集計するのはけっこう面倒くさいんです。ネット上にもあまり出ていないですし。

現物に関しては、こうした数値はたくさん出ていますが、これはあまり出ていない。僕も、これを作るのはいつも面倒なんです。

投資家別売買動向 (MRF・MMF資金滞留動向)

個人投資家のMRFの推移です。これは証券口座に入っているお金です。何が言いたいかと言うと、「日本株は底堅い」と言いたいんです。これはみなさんの証券口座に入っているお金で、証券口座に入れているお金は何ですかと言ったら、チャンスがあったら買いたいというお金です。

株なんかやりたくないと思う人は、銀行でお金を引き出すじゃないですか。でも、証券口座に入っているお金ですから、チャンスがあったら買いたいと思っているお金なんですよ。これがたくさん入っていて、日本は割とフレキシブルに出てくるんです。

過去には、外国人投資家が5,000億円を現物で売っても、個人で5,000億円買ったりした月もあったんです。日銀は1日に800億円前後のオペレーションですが、個人投資家はそれを1日で買うことができる。フレキシブルに、安いと思えば出てくるお金なんです。

去年も下値では個人投資家の買いが漏れ出てきましたので、ここも日銀とともに買う1つのポイントじゃないかと思っています。

期初からの業績予想の変化

業績について、おさらいしておきます。業績は、期初は前期比でけっこう儲かっていて、プラス23パーセント程度の利益でした。前々期と比べて、半分ぐらい米国の法人税の影響があったんです。今期は期初から減益予想です。

この理由も円高でしたね。去年の今頃は為替が円高になってきて、4月ぐらいに105円を付けてきた時期がありました。それをもとに業績等を作ったので、当然減益だね、仕方がないねとみんなが思っていた。そのあと円安になってきたため、この分の為替の上方修正もあるかなとみんな思っていたんです。

そして、期初が前期比でマイナス4.2パーセント、第1四半期でマイナス3.6パーセントと少し上方修正して、第2四半期の段階でマイナス2パーセントになったんです。さらに、第3四半期、第4四半期で上方修正して、第3四半期はトントンぐらいで第4四半期は最終的に5パーセントぐらいプラスで上方修正して終わるかなと、みんなが思っていたんです。

ところが、蓋を開けてみるとトヨタは下方修正するわ、各社が下方修正するわで、集計が終わってマイナス5.4パーセントで、実は期初より悪い。為替が円安になったのに悪いんです。日本の業績は相当悪いねと評価せざるを得なくなっちゃったんです。

この前、みずほの下方修正の報道がありました。みずほは最終利益で約5,000億円とかなり下方修正していますので、ここからさらに悪くなっているんです。みずほだけで数値を2パーセントぐらい押し下げています。

ということは、やっぱり日本の業績は相当悪いね、となるんです。ただし、米国は今年も悪いと言えども増益。でも、日本は減益。そうなると株のパフォーマンスが下がっても仕方がないというのが結論です。

セクター別最終益予想 (日経平均採用銘柄)

業種を見ていただいてもわかると思います。これは、去年と今年の積み上げです。トピックスを17業種で積み上げているのですが、やはり悪いのは自動車です。僕は、これが上方修正してきて、今年はなんとかなるんじゃないかなと思っていました。自動車の販売台数を見ても、去年は一昨年に比べてよい状況です。

ところが、完成車メーカー……どちらかと言うとトヨタは特損部分が大きいのですが、資材の高騰でパーツメーカーが厳しいこともあり、思いのほか、このあたりの上方修正が狙えないとなり、今期は前期比で減益がほぼ確定してしまったということです。

4つのテールリスクに留意

第4四半期の決算を見ても仕方がない。来期の業績を見なければいけないんです。来期の業績がどうなっているかがポイントになるわけです。

来期は多分、若干の減益になるんじゃないかなと思っています。米中貿易摩擦の部分も保守的ですし、今年の上期のハードルが非常に高い。何を言っているのかと言うと、上期はある程度利益が出てて、下期に減速したことになりますので、みんなが対上期の業績予想を「かなり厳しいんじゃないか」と見る。そう考えると、減益要素になってもおかしくないんじゃないかなと思っております。

減益リスクは考えなければいけません。業績予想を発表する4月から5月の半ばまでに、為替が円高になった場合は、かなり減益になるでしょう。そうなると、外国人投資家は2年連続減益の国のものなんて買いたくないと言って初動売りが出てくると思いますので、上値が重いのが日本の状況なのかなと思っています。

リスクを結構書き出しましたけれども、弱い相場はリスクに注意しなければいけません。でも、日程が決まっているリスクはないです。いきなり来ますので、これらが複合しているときは危ないです。

今年の株式市場

今年の株式市場についてです。全部説明しましたが、ポイントは、米国の業績です。あと、日本は下値が堅いんじゃないかという話についても、ポイントとしてお話ししましたが、需給面に注目です。日銀と個人の買いと信託銀行の年金リバランス部分が、もう四半期は出てくると思います。あとは、円高にも留意しておいたほうがいいでしょう。

GW前後の過ごし方、対処法

ゴールデンウィークの過ごし方です。10連休、10連休と騒がれていますが、10連休のうち、実は海外は6日間営業しており、6営業日、海外は取引されているわけです。この時期は指標ラッシュの時期。月末月初は、よく指標が動きます。

そうなると、何か大きな指標で数値のいい・悪いがありますと、連休明けに大きなギャップになる可能性があるということです。中長期投資家は、実際のところ6日間ぐらい旅行に行っていても気にしない方もいるんですけど、何が起こるかわからない部分もあります。

空白の6営業日の間に相場が変わってしまうかもしれないので、なにか対策をしようかなと考えている方もいると思います。

そこで、対応策としてはポジションを減らす。今まで10持っていたものを5にして、変動率が大きくてもあまり影響がないようにする、つまりヘッジをかけることです。これは保険ですね。1,000万円分の株を買っていたとしたら、1,000万円分ショートしないように、上がっても下がっても大丈夫な状態にしておく必要があるのかなと思います。

今年のGWは10連休、重要イベントが目白押し

繰り返しになりますが、ゴールデンウィークは海外では営業日が6日あります。実際に海外では、これだけたくさんの指標が発表されます。

くりっく株365ならほぼ24時間、祝日でも取引可能!

今日は「くりっく株365」について、東京金融取引所の方からお話がありましたが、スライドを見ていただくとわかるとおり、祝日にも取引できて、ほぼ24時間取引ができます。「クリック株365」でヘッジをしたり、どうしようか迷っている方も、ほぼ24時間動いている相場を見ておくというのでもいいかなと思っております。

日経平均とNYダウの乖離に注目

戦略として、ゴールデンウィークはヘッジをかければいいかなと思ったのですが、気づきのポイントが1個あります。スライドのグラフ、上の青い線がNYダウで、下の黒い線が日経平均で、パフォーマンスの差があるという話をしましたが、この乖離がドル円で4,000ぐらいあるんです。これは過去を見ても一番大きい。

2000年代から見ると二番目ぐらいに大きい乖離なのですが、この乖離が逆に閉じてきた場合、この部分のサヤを獲得できます。一応、NYダウ売りの日経平均買いのポジションは組めることになっていますが、過去の例で何回もねじれ続けていますので、ここの乖離を取るようなトレードは、アイデアとしてはあるのかなと思っております。

相場全体の話と、ゴールデンウィークは休みが多く注意が必要という話をさせていただきました。ぜひ投資戦略にお役立ていただければと思います。