売上収益(公表ベース)

クリス・カーギル氏:CFOのクリス・カーギルです。それでは、当期9ヶ月の業績概況について、私よりご説明します。今期は会計基準日を12月31日に変更したことにより、経過期間である当期9ヶ月間の業績と、前期開示ベースの12ヶ月間の比較が影響を受けます。当期の業績をご理解いただくために、会計監査を受けていない参考数値として、試算ベースの業績概要を補足資料に記載しています。

それでは、スライドの4ページをご覧ください。当期9ヶ月の売上収益は、前期12ヶ月比で40億8,300万円減少し、28億7,200万円となりました。この減少は、主にマイルストン収益の受領時期の違いによるものです。

グラフのグレーの部分の「マイルストン(に関する)収益」は、前期比で35億円減少し、3億4,000万円となりました。この減少は、当期には既存提携先からの重要なマイルストン収益がなかったことによるものです。

前期には、Allergan社から1,500万ドル、AstraZeneca社から1,200万ドル、Teva社から500万ドルと、既存提携先からの重要なマイルストン収益がありました。これは2018年5月10日に行った2018年3月期の決算発表で、業績見通しとしてご報告したとおりです。一方、当社グループは「オラビ®(錠口腔用 50mg)」の国内製造販売承認取得に伴い、富士フイルムファーマ株式会社より、マイルストンを受領しています。

グラフの青緑色部分の「ロイヤリティ(に関する)収益」は、前期比で4億5,700万円減少し、21億400万円となりました。この減少は、決算期の変更により、ロイヤリティの計上期間が前期と比較して3ヶ月短かったことによるものです。

グラフの薄い青色の部分の「その他」の収益は、第一三共株式会社やその他のパートナーより受領したもので、4億2,800万円となりました。これは、当社のプラットフォームビジネスのリサーチに関する提携が進捗していることを反映しています。

現金支出費用(公表ベース)

スライドの5ページをご覧ください。当期9ヶ月の現金支出費用についてご説明します。グラフのグレーの部分の「研究開発費に係る現金支出」は、前期12ヶ月比で3億6,900万円増加し、51億8,700万円となりました。

この増加は、主に日本におけるレビー小体型認知症の患者さまを対象とした第Ⅱ相試験の準備によるものです。この試験は、2018年9月18日より自主的に中断しています。

当社はこのほかにも、独自の開発プログラムやプラットフォーム技術、トランスレーショナルサイエンスにも継続的に投資しています。

グラフの青緑色の部分の「一般管理費に係る現金支出」は、前期(12ヶ月)比で13億6,100万円減少し、16億1,100万円となりました。この減少は、主に株式報酬に関連した英国の社会保険料の未払い費用の減少、会計年度が短かったこと、および一般管理費をより厳格に管理したことによるものです。

非現金支出費用および金融費用(公表ベース)

スライドの6ページをご覧ください。当期9ヶ月の非現金支出費用および金融費用についてご説明します。非現金支出費用は、前期12ヶ月比で5億5,700万円減少して、10億7,000万円となりました。これは、主に株式報酬費用の減少によるものです。有形固定資産減価償却費の増加は、2018年8月に英国ケンブリッジに開設した最先端の研究開発施設への投資によるものです。

金融費用は、前期比で1億7,900万円減少し、9億5,500万円となりました。この減少は、主に企業結合による条件付対価の減少、および日本円・米ドル・英ポンドの為替レートが前期に比べ安定していたことによるものです。また、金融費用にはMiNA Therapeutics社の株式追加取得の独占的オプション権不行使に係る評価損11億2,100万円が含まれます。

連結財政状態計算書

スライドの7ページをご覧ください。昨年(2018年)12月末のバランスシートは、十分な資本を有しています。現金および現金同等物は187億6,100万円となりました。

2018年度は業績見通しより良い結果で着地(2018年12月までの9ヵ月)

スライドの8ページをご覧ください。2018年12月期9ヶ月間の実績と、2018年11月の第2四半期決算発表時に公表した業績見通しとの比較です。3つの指標すべてで、業績見通しよりよい結果で着地しました。

研究開発費に関しては、研究開発プログラムへの資本配分を、引き続き注意深く行っています。その理由は、投資対象となるアセットがビジネス上の観点から有望かどうかを確認するためです。このような慎重なアプローチにより、支出のランレートを引き下げました。また、当期業績見通し公表後に、一時的な会計上の控除がありました。

一般管理費に関しては、厳格なコスト管理が支出のランレート引き下げに寄与しました。また、当社株価の下落に連動した、英国の社会保険料の未払い費用の大幅な減少の影響もありました。以上の結果、現金損失は大幅によい結果で着地しました。

2019年度の業績見通しに変更なし(2019年12月までの12ヵ月)

スライドの9ページをご覧ください。こちらは、2019年12月期の12ヶ月間の業績見通しです。我々は、当社のビジネスを引き続き強化しており、多くの戦略機会を十分に活用していくための体制を整えることができました。

2018年末以降、AstraZeneca社との提携で大きな進捗があり、1,500万ドルのマイルストン受領を発表しました。さらに、世界をリードするMedicxi社とともに、重要なアセットに特化し価値創造を目指す、Orexia社とInexia社の2社を設立しました。我々のStaR®技術と創薬プラットフォームは、これまでにない引き合いをいただいています。

この新規案件の流れは、2019年を通じて続くと考えています。したがって、当社グループの業績は、2019年12月期には改善し、黒字化追求を優先するために、より持続可能な資源と資本のバランスを目指します。

2018年11月に公表しました、2019年12月期の12ヶ月間の業績見通しは変更いたしません。

以上、私からの業績報告とさせていただきます。次に会長兼社長CEOの田村よりご説明いたします。

基盤技術を原動力に、2018年度は重要な成果を上げた

田村眞一氏:会長兼CEOの田村でございます。私からは2018年度12月期の9ヶ月間の業務ハイライトを説明させていただきます。

スライドの11ページをご覧ください。これは2018年12月期の9ヶ月間の主な業務アップデートです。我々は幅広いビジネスを推進し、さまざまな戦略的なチャンスに恵まれました。

まず、2つの基盤技術の提携を開始し、GPCRにおけるリーダーシップを拡大しました。1つはDyNAbind社との提携で、当社の技術の可能性をさらに引き出すことを目指します。もう1つは、当社の創薬過程全般にわたり人工知能を取り入れるための、ケンブリッジ大学との共同研究です。

また、提携および選択的な自社開発の進捗に新たな局面をもたらす、次世代の新薬候補品の波を生み出しました。

昨年(2018年)12月に「mGlu5」が第Ⅰ相臨床試験を開始したことを発表しましたが、他の開発候補品もこれに続く見込みです。

提携プログラムでは、素晴らしい進捗がございました。とくに、AstraZeneca社が進めているA2a次世代がん免疫療法の開発の進展は喜ばしいものでした。また、Allergan社とのM4プログラムも順調に進捗しております。

そして最後に、Sosei Heptaresという新しいコーポレートブランドを採用し、世界をリードするイノベーション拠点であり、またビジネスチャンスを促す環境でもある(英国)ケンブリッジへ、研究開発施設を移転いたしました。

M1プログラムの自主的中断もございましたが、2018年12月期はこのように、2019年度に向かって新たな上げ潮を生み出す重要な期間となりました。

基盤技術(StaR®– 構造)

スライドの12ページをご覧ください。これは、当社の基盤技術部門の主な実績です。先ほども申し上げたように、我々は2つの新しい提携を開始し、技術力におけるリーダーシップの地位を強化しました。

1つ目のDyNAbind社との提携は、同社の最新のDNAエンコードライブラリー技術を、当社のStaR®タンパク質に適用させることを目的としたものです。もう1つの、ケンブリッジ大学との共同研究は、当社の創薬過程全般に人工知能や機械学習を取り入れるためのものです。

これらの提携は、当社が自社の創薬基盤技術を強化するために、常に最先端の技術を追求していることの結果であり、StaR®タンパク質から生まれる長期的な価値を最大化することにつながります。

当社の経験豊富な研究チームの成果は、この1年間を含めて、『Nature』などの著名な科学雑誌に幾度も掲載され、複数のGPCRの高解像度結晶構造を発表しております。このようなかたちで、業界・学会での認知度を高めることは、今後も製薬会社との提携を進めていく上で、重要な要素となります。

最後に、第一三共株式会社、ファイザー株式会社等と技術提携しているプログラムは順調に進捗しており、提携先からの強い支持を得ております。

創薬(SBDD)

スライドの13ページをご覧ください。こちらは当社の創薬部門の主な実績です。現在、第Ⅰ相臨床試験入りを目指している4つの自社開発候補品に加え、がん免疫治療や消化器疾患、炎症疾患などの価値の高い治療領域をターゲットにした、15の新規プログラムの研究を進めております。なお、ここでは自社開発としておりますが、これは暫定的なもので、状況に応じてカテゴリーが変わることもございます。

先日、そのうちのいくつかを、海外で開催された学会で公開しました。消化器疾患を対象とした「GPR35」「EP4」、炎症・免疫療法の分野では「Apelin」「H4」「PAR2」、そして神経疾患を対象とした「OX2」などです。

開発

スライドの14ページをご覧ください。こちらは開発部門の実績のハイライトです。2018年度は、昨年(2018年)12月に「mGlu5」が第Ⅰ相臨床試験入りするという進展がありました。「mGlu5」は、神経疾患を対象としたネガティブアロステリックモジュレーターです。

そのほかにも、内分泌疾患治療薬であるSSTRペプチド作動薬が、昨年(2018年)12月に英国の規制当局と倫理審査委員会の承認を受け、近く第Ⅰ相臨床試験に入る見込みです。 口腔咽頭カンジダ症の治療薬である粘膜付着型錠剤の「オラビ®(錠口腔用 50mg)」は、昨年(2018年)9月に国内製造販売承認を取得し、先日日本で発売が開始されました。

最後に、次世代がん免疫治療薬候補「AZD4635」は、AstraZeneca社において、患者さまを対象とした臨床試験が順調に進んでおります。

その他のビジネスハイライト

スライドの15ページをご覧ください。こちらは、その他の主な業務のアップデートです。Allergan社と開発中のM1プログラムにつきましては、現在も毒性所見の原因究明の調査が続けられており、本年度中に作業が完了し、結果を確認できる見込みです。

一方、我々は、ヨーロッパで進められていた第Ⅰb相臨床試験の中間解析結果が、選択的M1作動薬の仮説を支持するものであることを確認しております。なお、Allergan社は当プログラムに全面的にコミットしております。

MiNA Therapeutics社につきましては、「MTL-CEBPA」と、キナーゼインヒビター(キナーゼ阻害薬)である「ソラフェニブ」との併用試験において、患者さまの登録が順調に進んでいるとの報告を受けております。

グループ全体の組織については、クリス・カーギルがCFOに、そして私自身が会長兼CEOに就任し、経営陣の強化を図りました。

また、チューリッヒの研究施設を閉鎖するという戦略的決断を下しました。これにより、研究開発部門の体制が簡素化され、資本配分が改善されます。StaR®技術を補完するCHESS、SaBREの技術は、ケンブリッジの研究施設に移管されます。

昨年(2018年)秋にお知らせしたとおり、当社研究施設はケンブリッジのグランタパークにあるスタインメッツビルに移転し、それと同時に、Sosei Heptaresという新しいコーポレート代理店を立ち上げ、当社のすべての事業を共有しております。

2019年度の成長戦略

次は成長戦略のアップデートです。スライドの17ページをご覧ください。一部、第2四半期の説明会でご報告した2019年度の成長戦略の繰り返しもありますが……今後、さらに多くのパートナーと提携を結び、研究開発を効率化して、黒字化を目指してまいります。

このスライドは、将来の成長戦略の柱と各部門の目標を示しております。今後とも、当社ビジネスの基礎となる基盤技術を活用してまいりますが、3つの点に重点を置いています。

まず1つ目は、アンメットニーズが高く、当社とビッグファーマ双方にとって魅力的な治療領域に的を絞って、候補薬の開発を進めていくこと。次に、創薬段階で有望な候補薬は、当社の大きな価値となるように、自社独自でさらに開発を進めていくこと。そして最後に、既存の提携プログラムの進捗をしっかりと管理しつつ、新規提携を増やしていくことです。

事業開発の顕著な進捗

スライドの18ページをご覧ください。前回の決算発表で、2019年度には新しいパートナーとの提携を増やしていくことをお約束しました。その約束を遂行すべく、先日、重要なアセットに特化した企業への資金提供を専門とするベンチャーファンドのMedicxi社と、オレキシン作動薬の開発について革新的な提携を結びました。

この提携の一環として、Medicxi社は、神経疾患の新規治療法を開発するために新たに設立された2つの会社、Orexia社とInexia社に最大4,000万ユーロ(約50億円)を投資する予定です。

当社は、両社の株式を保有することになり、研究開発に対する支払いに加え、開発に伴うマイルストンおよびロイヤリティを受領することになります。この提携により、当社の現在進行中の研究や知的財産を、目的に特化したこの2社に託すことができます。

このオレキシン作動薬開発プログラムは非常に有望であり、第三者から集中的な資金調達を得て、当社も株主となる新たな仕組みの中で、新たな価値創造が成せるものと期待しております。

既存の提携案件における進捗

スライドの19ページをご覧ください。既存の提携プログラムを進捗させることもまた、2019年度に取り組むべき重要な課題です。今年はじめに、次世代がん免疫療法の提携プログラムの進捗により、AstraZeneca社から1,500万ドル(約16.5億円)のマイルストンを受領したことを発表しました。

これは、2015年に同社と独占的ライセンス契約を締結して以来、4度目のマイルストンとなります。AstraZeneca社は「AZD4635」について徹底的に治験を行い、現在は複数のがんを対象とした2本のプログラムが進行中です。「AZD4635」の単剤療法と、Anti-PD-L1の「デュルバルマブ」およびAnti-CD73の「オレクルマブ」の併用療法です。

腫瘍微小環境で出現する高濃度のアデノシンは、免疫システムを抑制することが前臨床試験で証明されており、腫瘍モデルの前臨床データは「AZD4635」の単剤、またはほかの免疫療法との組み合わせを支持するものでした。今後のAstraZeneca社における開発進捗を楽しみにしております。

事業開発の推進により黒字化を目指す

スライドの20ページをご覧ください。今年に入ってからのこの2つの発表が示すように、我々は2019年度の黒字化に向けて、成長戦略を一つひとつ実現していっております。また、新規および既存のパートナーシップをさらに推進するために、当社は今後も、基盤技術・研究開発・事業開発において、着実かつ強力に成長を続けてまいります。

そして、すでに本年度の財務ガイダンスに反映されておりますように、研究開発費・管理費を効率化し、徹底的な費用管理を実施いたします。少ないコスト構成で事業を展開していくことは、急成長の中であっても価値創造を加速させ、黒字化を追求するための最善策と考えております。

安定的に見込めるロイヤリティ収入も黒字化に寄与

スライドの21ページをご覧ください。当社のロイヤリティビジネスは堅調です。そして、今年「オラビ®(錠口腔用 50mg)」が日本での販売を開始したことで、より一層強固なものとなります。

また来年には、Novartis社の「QVM149」がヨーロッパで上市する見通しで、当社のロイヤリティビジネスは飛躍的に前進し、ビジネスを推進していくためにも最適な体制となってまいります。

2019年度は以下の実現を目指す

スライドの22ページをご覧ください。我々は、何を成すにも、まずは患者さまと株主さまのことを第一に考えております。

これから実行していく2019年度の成長戦略で期待していただきたいことは、基盤技術での新たな提携。価値の高いパイプラインの開発をさらに優先して進めていくこと。(自社)開発候補品を臨床入りさせること……なかでも、まずはSSTRペプチド作動薬を、近く第Ⅰ相臨床試験に進めること。新規創薬パートナーとの提携。そして、既存提携プログラムの開発を突き進めることです。

価値創造のアプローチに新たな枠組みを導入

スライドの23ページをご覧ください。限られた新薬候補品の研究開発に多大な投資を行う既存のモデルは非効率的であり、持続不可能であることがますます明白になってきております。当社は新体制のもと、新たなパラダイムでの価値創造を目指します。

投資回収が不明確な研究開発に対しての過大な投資は控えて、StaR®技術の生産性を最大化し、ビッグファーマおよびバイオ企業が強い興味を抱くような新規ターゲットを創出していきます。

早期の投資回収を図り、経費と開発リスクのかなりの部分を提携によって低減させる方針です。そして、次から次へと次世代の新規ターゲットを作成し続ける研究開発能力を維持して、新たな提携を重ねて収益を追求してまいります。これが当社の新たな価値創造方針の骨子でございます。

創薬の加速・改良のためAIを活用

スライドの24ページをご覧ください。当社はケンブリッジ大学との間で、創薬過程の全般にわたり人工知能を適用する共同研究を行っております。当社は、この共同研究で、有用な創薬ターゲットおよびリード化合物を効率よく同定するために、人工知能と機械学習を用います。

人工知能は創薬過程を効率化し、研究に要する時間と経費を低減させ、研究開発全体の生産性を向上させます。当社は、創薬候補品創成において、すでに業界平均を上回る生産性を誇っていますが、人工知能・機械学習を適用することで、生産性のさらなる向上が期待できます。

人工知能の適用により、GPCR分野でのリーダーシップがさらに強固なものとなり、魅力的なターゲットを創出して、今後数年にわたり、次々と提携数を増やしていけるものと確信しております。

以上でございます。