Sprint 売上高

孫正義氏(以下、孫):それでは、Sprintについて。冒頭にも申し上げましたけれども、このSprintの足元はどういう状況なのかということを、もう少しだけ解説をします。

売上はこういう状況(1パーセント減)ですけれども、ちょうど今反転し始めたところであります。

Sprint コスト削減

経費は、順調に下がっています。

Sprint 調整後EBITDA

結果、(Sprintが)このソフトバンクグループ入りして、EBITDAが倍増しました。

Sprint 営業利益

営業利益は、先ほど言いましたように、上期だけで2,000億円稼ぐような状況になりました。

営業利益を上期だけで2,000億円稼ぐというのは、これは大変なことなんですよ。

つい数年前までは、赤字だったんです。営業利益で毎年赤字という状況が続いていた会社が、これだけ急激に反転してきたと。半年で2,000億円の営業利益が稼げるようになったというのは、大変大きな進化だと、ぜひご理解をいただきたい。

Sprint 純利益

そうは言っても、大きな金利があります。

金利負担に耐えられるのか? ということですけれども、金利を払っても黒字というところまで、ついに反転してきたということであります。

Sprint 平均ダウンロード速度増減(前年比)

その根源はなにかというと、通信のネットワークのインフラが、大幅に改善してきたということ。だいぶ、他社にキャッチアップしてきたと。

ソフトバンクのノウハウを、Sprintに今だいぶ、ネットワークについて移転しています。

この間急激に改善しましたが、さらにここからネットワーク投資を行って、一気に他社に追いつき、あるいは追い越すというところまで(進めていく)。ほとんどの項目で追い越すというところまで今からいけると、我々は見ています。

Sprint 2017年度 見通し

ということで、(ここから)3・4年は、決して楽な戦いではない。経費を削減するというのは、苦しい戦いです。

経費を減らして、それでもユーザーを増やす。これは、決して楽ではない。苦しい戦いを、一生懸命することになる。

しかし、(現時点では)着実に営業利益を半年で2,000億円稼げるような状況まできて、純利益もプラスにきて、という状況であります。

YAHOO! JAPAN 広告収入

さて、もう1つのソフトバンクグループのコアの会社、Yahoo! JAPANです。

このYahoo! JAPANも、検索連動型広告のところ(ピンク色)は横ばいですけれども、ディスプレイ広告のところ(赤色)が、着実に伸びてきている。

YAHOO! JAPAN ショッピング Yahoo! ショッピング 商品数

しかも、ショッピング・eコマースがビジネスモデルとして、我々の社会に欠かすことのできないビジネスモデルになってきたと。

Amazonはeコマースで、いまだに赤字と。クラウドのところで利益を稼いでいますけれども。

それでも、時価総額でもうあれほどの規模になったわけですね。ですから、目先で利益を稼ぐことよりも、ユーザーベースを増やすと。

このeコマースが、これからの社会の人々に欠かすことのできないプラットフォームになったと、すでにビジネスモデルは証明されたと。そのモデルの中で、着実に顧客基盤を増やすということに、我々は戦略を合わせている。

Amazonをはるかに超えて、Alibaba(Alibaba Group)は、膨大な純利益をeコマースだけでも出しているわけですね。もちろん、クラウドも伸びています。

ということで、このYahoo! ショッピングは、急激な勢いで商品数が2.9億個になったということで、国内で圧倒的に多くの品ぞろえにすることができました。

YAHOO! JAPAN ショッピング ショッピング事業 取扱高

結果、取扱高も前年対比39パーセント増です。

日本全体のeコマースが今、年間で11パーセント増です。(それに比べて)我々は39パーセント増です。

ということは、日本のeコマースの中でも、この規模にしてはいちばん大きく伸びているということだと思います。我々はeコマースにおいても、着実に急速に伸ばしてきているということであります。

arm Armベース チップ出荷数

次に、armです。大きな買い物をしました。買ってよかったかというと、たいへんよかった。この1年間で、非常にそのことを確信したと。

(Armベースのチップ出荷)数は、27パーセント伸びております。

arm 売上高

売上も、20パーセント伸びている。

arm HUAWEI

商品はというと、まず、AIについてのチップの開発。

arm QUALCOMM

そして、サーバー向けの商品チップの開発。

arm NVIDIA

それから、NVIDIAとの連携。NVIDIAで、我々がビジョンファンド経由で投資をして、非常に利益を稼いでいるということを申しましたけれども、お互いの2社間の技術においても、続々と業務提携が進んでいるということです。

arm 様々なIoT製品で採用

armは、これからやってくるIoTの中でも、スマートフォンでは世界の99パーセントのマーケットシェアを取りました。

IoTにおいても、すでに圧倒的な世界ナンバーワンのシェアを持っていますが、これが続々と、これから広がっていくということです。

arm 2017年度見通し

armは、本当に買ってよかったと。これから、1兆個のarmのチップの世界がやってくるということであります。

Alibaba Group 売上高

次に、Alibaba Group。先ほど言いましたように、この1年間だけで、我々の持ち株が6兆円から14兆円に増えたと。1年間で8兆円も、持株益・実質益が増えているということです。

このAlibabaはどういう業績かと言いますと、売上がいまだに61パーセント増。これは、3ヶ月間の売上ですよ。3ヶ月の売上が9,000億円で、しかも61パーセント伸びているということであります。

ちなみに、Amazonの売上の数え方と、Alibabaの売上の数え方は異なっています。

Amazonは、Amazonのプラットフォームで売れたものは、すべて売上(とカウント)。

Alibabaは、Alibabaのプラットフォームで売れた売上を、売上としてカウントしてはおりません。あくまでも広告だとか、その他の手数料で入った部分が売上だというかたちになっています。

取り扱い金額は、Amazonをはるかにしのぐ、世界中のeコマースを残り全部足したよりもAlibaba1社の方が多いという、たしかそれくらいの規模になっていたと思います。

圧倒的、ナンバーワンです。

そのAlibabaが売上高において、1年間で61パーセント増と。

Alibaba Group 営業利益

営業利益では、83パーセント伸びていると。

Alibaba Group 純利益(税引後)

純利益では、71パーセント伸びていると。この純利益71パーセントですけれども、(2018年3月期第2四半期の)3ヶ月の純利益が3,600億円です。

つまり年間に直すと、1.5兆円くらいのペースの利益を稼いでいることになります。

すでに年間で1.5兆円規模の利益を稼いでいて、しかもそれは、年間71パーセント伸びていると。どれほどすごい、キャッシュ・マシンになってきたかと。

決してAlibabaは、バブルで株価が上がっているのではないと。バブルで、ソフトバンクのAlibaba株式が14兆円になっているのではないと。

絶対額として、利益がそれだけ稼げる状況になっているということです。

Alibaba Group フリーキャッシュフロー

ネットインカムに対して、フリーキャッシュフローはどうかというと、フリーキャッシュフローも、(ネットインカムと)同額のフリーキャッシュフローが出ていると。

これは税引後・設備投資後のフリーキャッシュフローであります。

ですから、Alibabaは本当に、イメージで株価がいっているのではなくて、絶対額の利益として稼いでいるということであります。

SoftBank Vision Fund

ということで、「SoftBank Vision Fund」です。我々が今まで過去に投資した部分だけではなくて、これからの会社として(SoftBank Vision Fundを掲げています)。「Alibabaはラッキーだったね、よかったね」と。Alibabaを入れてこの18年間、我々の投資IRRは44パーセントです。

毎年複利で44パーセント、我々が持っている株式の価値が増えていると。

この20兆円規模になって、なおかつ(毎年の複利が)44パーセントというのは、世界中どこにもないわけですけれども、18年間それを繰り返しています。

それだけではなくて、新たにAlibabaに相当するような会社を構造的に見つけて、構造的に投資をし、グループを強化するということを、我々はやろうとしているわけです。

その構造が、「(SoftBank) Vision Fund」です。

革新的起業家グループが拡大

このVision Fundで半年間、すでに20社の大型投資を行いました。20社です。平均1,000億円ぐらい、投資しているわけです。

ご存じのようにベンチャーキャピタルは、その1つのファンド全体規模が1,000億円ぐらいです。我々は1案件で、平均1,000億円ぐらい投資しているわけです。もちろん大きいものも小さいものも、いろいろありますけれど、そのぐらいの規模をいっているわけです。

この短期間で、これだけの大型規模の投資をやったことのあるベンチャー投資の会社というのは、地球上に今までなかった。地球上に初めて生まれた、新しい存在・新しい業態の会社がSoftBank Vision Fundだということで、半年間でこれだけの規模の投資を行ったということであります。

slack

例えば、slackです。この中にいる方で、slackをご存じの方、ちょっと手を挙げてください。(会場を見渡して)5パーセントぐらいいます。95パーセントぐらいの人は知らない。でもこれが、アメリカを中心に急激な勢いで伸びているということ。

しかも売上が、今まで上場していたいろんなDropboxだとかLinkedInだとか、Salesforceだとか、いろいろありますけれども。そういうどの会社よりも早く、短期間で売上を稼ぐ会社になっているということ。これは素晴らしい会社であります。ここにも、我々は投資をしました。

mapbox

mapboxです。Google map以外の、つまりGoogleと競合している会社の大半が、これを今使い始めています。さまざまなTwitterだとかその他のユナイテッドネイション等、いろいろな会社が、続々と使い始めている。

Flipkart

Flipkartです。これは、インドで最大のイーコマース。インドでのイーコマースマーケットのシェア6割ということで、ナンバーワンであります。(インドにおける)Amazonよりも大きい。(ここまで)シェアが大きいというのは、その国々では、なかなかないのです。

中国では、我々がAmazonに勝ちました。Alibaba Groupが、圧倒的ナンバーワンになりました。少なくとも私は、中国に次ぐ大きな市場はインドだと思っておりますが、このインドにおいては6割のマーケットシェアをもっている。グッドスタートだと思っております。

paytm

paytmです。中国ではAlipayが非常に大きな存在・事業モデルとして成功しておりますが、そのAlipayとソフトバンクが両方でサポートしているのが、paytmです。こちらにも我々が、Alibaba Groupに次ぐ大株主として入りました。これも、共同戦線の1つです。

Fanatics

Fanaticsです。同じイーコマースでも、スポーツ用品に特化した、スポーツのそれぞれのブランドです。アメリカのフットボールだとか、メジャーリーグだとかバスケットボールだとか、いろんなゴルフだとか。独占的にそのファンに向けてグッズを売るイーコマースの権利をもっている会社、これがFanaticsです。今、急激に伸びています。

アメリカで、一般的なイーコマースでAmazonに対抗するのは大変ですけれども、このように専門に特化したカテゴリーで、独占的なポジションをもっている会社は、新しい角度として非常におもしろいと、今急激に伸びています。

ROIVANT

ROIVANTです。たいへん若い、30代そこそこの創業者ですけれども、この3年間ぐらいで3社ぐらいIPO(株式公開)をしている。それを率いる筆頭の創業者がまだ30代そこそこの頃、この会社を興しました。ここにも我々はAIを使って、データを一気に集めて、薬を創る「創薬」ということで、急激に進化しております。

Vir

Virです。流行病(の対策に最先端科学・データサイエンスを使う会社)です。感染症には、インフルエンザだとかB型肝炎だとか、いろいろあります。こういう感染症の病気に、最先端のAIを使って、ワクチンや薬を用意・開発するということです。この会社にも投資を行いました。

众安保険①

众安保険(ぞんあんほけん)です。Alibaba Groupの物を出荷すると、ちゃんと届くのかと。届かなかったら保険で払いますということで始まったのが、众安保険です。これはもうすでにユーザーが5億人を超えて、契約件数は82億件です。

ほんの4、5年でまったくのゼロから始まった、急激に成長している会社。これが香港市場に先月(2017年10月)上場いたしました。そのときに、我々がアンカーインベスターということで、入ったわけです。

众安保険②

この会社と、これから海外展開をいろいろやろうと思っています。

主な投資先

ということで、Vision Fundは、中国・インド・米国・その他、IoT・ロボット・AI・EC・ライドシェアと、それぞれの分野・地域ごとに、我々のそれぞれのファンドマネージャー・専門家を用意し、戦略的にシナジーを出していくと。

この(資料の)丸の大きさは、後で物差しで測っても、「ああ、これは(SBGグループ企業及びSVFからの累計投資額が)どのくらい」と(わかるほど)、そこまで厳密な丸の大きさにはしていません。

ですから、物差しで測っても意味はないのですけれども、おおむねこんな感じのイメージです。大中小のイメージでいくと、大きな投資のものはこれぐらい、というイメージでこれを描きました。おおむねのイメージは、わかっていただきたいと。

だいたいの地域と、そのテーマを(このように展開している)ということで、我々としては非常にグッドスタートだと思っているわけです。

情報革命を加速

ということで、我々は情報革命を加速すると。ソフトバンクの本業は、情報革命業であると。従来的な投資会社でも通信会社でもない情報革命をするのが本業で、それを群戦略でやる、新たな業態の会社であると。

NEOM①

もう1つ。ちょうど先々週(2017年10月24日)、サウジアラビアに行ってきました。

NEOM②

サウジアラビアの皇太子と一緒に発表会に参画し、私も積極的にそこに関わるということです。サウジアラビアの皇太子が50兆円を超える規模の投資を行って、新たな都市を作ると。

この新たな都市が、世界最先端の都市として生まれる。ドバイをもっと最先端にしたようなイメージの都市だと思っていただければ。

サウジアラビア皇太子とのパネルディスカッション

そこに我々が積極的に関与するということで、サウジアラビアの若き皇太子と、そこの隣に私も座って、一緒にこの発表会に行ってまいりました。

ぜひ我々としては、本格的に事業活動をしたいと。その1つとして、サウジ電力という1社独占の会社があります。サウジアラビアの電力の提供を、1社で一手に行っている会社です。

PIFとMOU締結

そのサウジ電力に、ソフトバンクが大株主として経営に参画する、という覚書(MOU)を調印してまいりました。

最終的に何パーセント投資するのか、どのようなかたちで関わるのかということは、これから数ヶ月かけて最終的な調整を行うことになっております。サウジ電力は、従来はオイルを燃やして、火力で電気を起こしていた。サブとしてはガスを使っていた。

いちばんメインはオイルを燃やしていたと。次にガスを燃やして、電力を起こしていた。こんなにもったいない話はないわけです。

サウジアラビアならでは、という状況だったわけですけれども、これからオイルは、むしろ市場の世界のマーケット価格で行って、その補てん金は原則として使わない方向でいこうという方向性が下されました。

ではどうするのかというと、太陽光発電です。サウジアラビアには、世界でもっとも優れた太陽があります。もっとも優れた砂があります。大きな土地があります。

それらを使って、世界最大の太陽光発電の事業を行おうと。そういうことでSoftBank Vision Fundが中心になってこの改革を行うと。

ソフトバンクは3.11の事故の後、積極的にソーラー発電・風力発電、自然エネルギーに取り組んでまいりました。今、合計で30件ぐらいの案件を動かしております。

もうすでにがんがん発電をしています。あわせて、インドに進出しました。インドでも、今すでに大きく太陽光発電を行っています。

この両方のノウハウ・経験をもとに、サウジアラビアでもっと大きく(世界最大の太陽光発電の事業を行って)いこうと。しかも、サウジアラビア国内で設備の生産も行うことで、世界最大の太陽光発電のインフラを作っていこうと。

それにおいて、我々は電力会社に対して納入するソーラー発電について、小さな事業者ではなく、我々が自ら1社独占の電力会社に大株主として、経営そのものに参画する。

サウジアラビア電力そのものを、世界で最も自然エネルギーを使う比率の高い会社にしようと。しかも、太陽光発電を中心に。大型の蓄電装置も、世界で最も進んだ大規模なものをやりたいという方向で、今経営計画を作成している最中であります。

こちらも立派に収益を稼げると思っています。これもVision Fundの延長線の一環・投資先の1つというかたちになります。

つまり、Vision Fundは小さな立ち上げ・小さなベンチャーの案件だけではなくて、滴滴出行(中国の大手ライドシェア企業)だとか、場合によっては今噂されているウーバー・テクノロジーズ。

あるいは、その他のいろんな案件。先ほどからAI・ロボット等、いろいろなものをやっているということを申しました。armにも、Vision Fundが株式を一部持つということになります。そのうえ、こういう電力会社のような大きなものでも、Visionを持ってこれから革新していくというようなところには、投資を行っていくということであります。

さらなる成長へ

ということで、ソフトバンクは1ヶ所にとどまる会社ではないと。群戦略で情報革命・AI革命、これを行っていくと。

先ほどの電力(会社)も、世界で最もIoTとAIを徹底的に使った電力会社の事例として、自然エネルギーに加えて、それをやっていくということであります。我々ソフトバンクグループは、さらに成長していく。1ヶ所にとどまらない。

そういうことなので、冒頭に申し上げましたように、Sprintの経営権を短期的な株価の上がり下がりのことを懸念し、意思決定するのではなくて、5年先・10年先・20年先・30年先を考えて、我々は重要な拠点として経営権を持ち続けるという判断をしたわけであります。

以上が、私の説明です。よろしくお願いします。