2017年 第2四半期決算ハイライト

濱田賢司氏:まず、決算ハイライトからご覧ください。第2四半期の売上収益は国内において、主に飲料や食品事業が予想を上回る増収となりました。

それに加えて、国際事業において、西洋を含む既存事業の成長に4月から連結した、中東欧の事業が上乗せとなりました。トータルでは前期比20.4パーセント増収の、9,374億円となりました。

年間予想につきましては、ビール類の販売数量を修正したことにより、酒類事業は下方修正いたしました。主に、中東欧事業の通年効果を2,120億円上乗せしたことにより、トータルでは2兆300億円に上方修正しております。

次に、事業利益につきましてご説明します。国内産事業が、すべて予想を上回る増益となったことに加えて、中東欧事業の寄与により、トータルでは前期比36.6パーセント増益の、745億円となりました。

年間予想につきましては、既存の全事業を上方修正するとともに、中東欧事業の通年効果268億円を加えまして、トータルでは年初予想を230億円上回る、1,880億円に上方修正しております。営業利益以下の詳細は、最後にご説明させていただきます。

次のページ以降は、各事業について記載しておりますが、詳細は後ほどご確認いただきます。私からは簡単に、ポイントのみをご説明いたします。

酒類事業(ビール類販売数量)

まず、ビール類の販売数量につきましては、上半期は市場全体が1パーセント程度縮小するなか、当社は主に『クリアアサヒ』ブランドの大幅な伸張などにより、ほぼ前年並みの実績となりました。

年間予想としては、主に上期のビール未達分と、下期以降の市場縮小リスクなども鑑み、トータル販売数量を200万箱、下方修正しております。

酒類事業(売上収益)

資料の中段に記載している、ビール類以外の売上収益においては、上半期はRTDや洋酒に加えて、アルコールテイスト清涼飲料が予想を上回って推移しております。実績にともない、年間予想もそれぞれ上方修正しております。

酒類事業(事業利益)

こうした売上収益の進捗を受けまして、事業利益については、上半期ではビール類の数量効果がマイナスとなりました。しかし、ビール類以外の増収効果に加えて、広告販促費を含むコスト全般の効率化により、2.2パーセントの増益となりました。

年間予想では、下期のビール類の数量効果は、年初予想を下回ります。しかし、ビール類以外の売上拡大や、さらなる広告販促費の効率化などでカバーし、年初予想を10億円上回る1,230億円を見込んでおります。

飲料事業(販売数量)

飲料事業につきましては、販売数量では「ウィルキンソン」や「カルピス」などが牽引し、トータルでは市場平均を上回る1.9パーセントの増加となりました。年間予想では、140万箱上方修正しております。

飲料事業(事業利益)

事業利益につきましても、数量増効果や、品種・容器ミックスの改善に加えて、広告販促費をはじめとしたコスト全般の効率化により、予想を大幅に上回る35パーセントの増益となりました。

下期には、昨年後半から好調に推移している「ウィルキンソン」や「カルピス」の数量増が一巡することや、ブランド同士の拡大などを予定しておりますが、年間では年初予想を42億円上回る、371億円を見込んでいます。

食品事業(売上収益・事業利益)

食品事業につきましては、上半期は主力ブランドの好調により、3.9パーセントの増収となりました。事業利益につきましても、広告販促費の効率化などにより、25.8パーセントの増益となりました。

下期は一部、経費の期ずれなどを見込んでおりますが、上方修正した計画の着実な達成を目指していく方針です。

国際事業(売上収益)

こちらでは、国際事業について記載しております。まず、中東欧を除く既存の国際事業ベースでは、オセアニアが売上収益・事業利益ともに計画を上回り、年間予想を上方修正しております。

一方で、東南アジアのマレーシアは、市場全体の縮小や原材料の高騰などにより、大幅な減益となり、こちらは年間予想を下方修正しております。ただし、既存事業ベースでは下半期のマレーシアの挽回に加えて、西欧やオセアニアの上方修正でカバーし、年初予想は確実に達成していく方針です。

欧州事業(売上収益・事業利益)

次に、欧州事業の内訳についてご説明いたします。売上収益につきましては、上半期が西欧が全地域の増収により、予想を40億円上回ったことに加え、4月より連結した中東欧の817億円が上乗せとなり、トータルで1,426億円となりました。

年間予想では、西欧を年初予想から37億円上方修正するとともに、中東欧の連結効果を上乗せすることで、トータル3,371億円を見込んでおります。事業利益につきましては、上半期は西欧が全地域の増益により、年初予想を12億円上回ったことに加え、中東欧の92億円が上乗せとなり、トータルでは160億円となりました。

年間予想では、西欧を年初予想から10億円上方修正するとともに、中東欧の268億円が上乗せとなり、トータルでは443億円を見込んでおります。なお、中東欧の一時費用につきましては、現時点ですべてのコストを見積もることが難しいため、130億円程度を概算値として織り込んでおります。

また、中東欧の無形資産償却費についても、現在PPA買収価格の資産負債への配分手続をすすめている段階です。4月から12月分の暫定値として、現時点では90億円程度を見積もっているとお考えいただければと思います。

営業利益・親会社の所有者に帰属する当期利益

最後に、営業利益についてご説明いたします。営業利益につきましては、事業利益からの調整項目において、主に昨年の和光堂株式会社本社ビルの固定資産売却益などがなくなったものの、事業利益の大幅な増益により予想を179億円上回る、707億円となりました。

年間予想につきましては、事業利益の上方修正にともない、年初予想を213億円上回る1,673億円を見込んでおります。なお、事業利益からの調整項目に、その他の費用130億円を計上しております。これは国内外の事業統合や、再編関連の費用に加えて、さらなる資産効率化の原資などを概算値として、計上しているものです。

ただし、2月の説明会でもご説明いたしましたように、すべてが確定しているわけではなく、一定の予備費も含めて計上している、とお考えいただければと思います。

次に、親会社の所有者に帰属する当期利益につきましては、主に金融債務の増加にともなう金融収支の悪化や、法人所得税費用などが増加いたしました。しかし営業利益の増益により、予想を73億円上回る433億円となりました。

年間予想についても金融収支の悪化などを見込んでいますが、営業利益の上方修正にともない、年初予想を140億円上回る1,100億円の達成を目指していく方針です。

なお、昨日の決算発表に合わせて、1株あたりの年間配当予想を業績の上方修正にともない、年初の予想を9円上回る、69円としております。当社は中期経営方針において、2018年までに、配当性向を30パーセントを目処として、安定的な増配を目指すことを掲げております。引き続き株主還元の充実に努めていくことにより、株主投資家のみなさまのご期待に応えていく方針です。

以上、簡単ではございますが、私からのご説明を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

エクゼクティブ・サマリー

小路明善氏:私からは、上半期の総括と今後の経営方針につきまして、ご説明いたします。後半では、先ほどちょっと話がありましたが、中東欧事業を含む欧州事業の方針に時間を割いていきたいと思います。本日は、既存事業についてポイントをしぼってご説明させていただきます。

それでは、エクゼクティブ・サマリーからご説明させていただきます。上半期は、ただいま説明がありましたように、決算としては国内3事業における強いブランド基盤の拡大に加えて、中東欧事業の新規連結効果が上乗せとなりました。トータルでは、年初計画を大幅に上回る増収増益を達成できました。

本年2月の説明会では、大変保守的な計画につきまして、みなさんから厳しいご指摘もいただきました。既存事業においても、年初計画を下限値として上方修正を目指します、ということを申し上げていました。これに対して、上期ではその結果が出せたのではないかなと見ております。

こちらに記載のとおり、ビールカテゴリーの更なる活性化・東南アジアの成長戦略など、一部には課題を残しております。各事業会社において、いわゆる「稼ぐ力」を高めているだけではなく、ROIC(投下資本利益率)を重視した経営管理・商品ポートフォリオの見直しなどといった観点でも、着実にグループ全体で成果を上げております。

また、ホールディングスとしては、中東欧事業の連結化によりまして、海外の成長基盤の拡大を図っております。その一方で、中国の持分法適用会社・政策保有株式など、我々の保有資産の見直しにスピード感をもって取り組み、グループ全体で資産・資本効率が向上してきております。

こうした総括をふまえまして、国内では引き続き、高付加価値化と併せまして、業界健全化に向けた、アサヒとしてのリーダーシップを発揮していくという方針でございます。

後ほどご説明いたしますが、事業ごとのポイントは、とくに酒類事業ではみなさまご存じの店頭価格の上昇などによる、業界全体の取引の健全化が進んでおります。

当社としても、引き続き需要の拡大に向けたブランドの強化・高付加価値化を図っていくとともに、業界全体のさらなる健全化に向けて、具体的な取り組み拡大をしていく方針です。

また海外では、「強い競争力を持つグローバルなプレミアムビールメーカー」、こういった肩書きのもと、このような姿を目指しております。戦略の推進と事業ポートフォリオの最適化に向けて、さらなる資産の見直しに取り組んでまいりたいと思っております。

中東欧事業の連結において、当社の事業利益の海外比率は、通年ベースでおおよそ3割近くまで高まりました。今後は、欧州事業をいわゆる成長エンジンとしてどう伸ばしていくのかが、連結全体業績の大変重要なポイントになってくると考えております。

欧州事業の戦略と今後の見通しについては、後ほど触れさせていただきます。

さらに、事業ポートフォリオの最適化につきましては、昨年来、国内提携先の株式・海外事業会社の整理を進めました。上期も、康師傳飲品社の全株式を売却でご用意しましたが、こうした取り組みがただ単に、借入金の返済だけを目的としているわけではありません。

欧州ビル事業における優良な成長基盤の獲得をチャンスといたしまして、真のグローバル化に向けた、事業ポートフォリオの再構築に取り組んでいるものです。引き続き、国内外のあらゆる資産をゼロベースで見直していく。そういう方針であります。

酒類事業の概況(1)

次に、事業ごとの明細を記載をしております。資料をご覧いただきながら、ポイントをご説明申し上げます。

まず、酒類事業の概況です。上期はご存じのとおり、新ジャンルの大幅な伸びによりまして、ビールのシェアの拡大をしました。また、RTD(蓋を開けて飲める、割る手間のかからないアルコール飲料)の「もぎたて」が、大変好調に推移いたしました。

また、アルコール清涼飲料が拡大いたしまして、販促費の効率化等と合わせて、利益計画を超過達成することができました。

とくに、新ジャンルとしては、2月に発売した「贅沢0」「プライムリッチ」が好調に推移いたしました。上期の課税数量のシェアは30.9パーセント。新ジャンルでは、初めてトップシェアを獲得するなど、ナンバーワンブランドの育成といった観点でも成果を上げてきております。

一方ビールでは、「スーパードライ」の30周年関連施策などによりまして、スーパードライブランド合計では缶容器を中心に、市場平均を上回ることができました。しかし、酒税改正を見据えて各社がビールのさらなる強化に注力する中、ビールトータルでは計画未達となるなど、一部課題を残しております。

先ほども触れましたように、6月の改正酒税法の施行を見据えまして、スーパーなど安売り業態を中心にビール類の店頭価格が上昇するなど、生販三層の取引の健全化が進んできております。

当社としては、今後もこの流れを生かし、条件競争から価値競争へさらにシフトすべく、高付加価値・過度な広告販促費の抑制などに、さらに努めてまいる方針であります。

下期は店頭価格の上昇にともない、需要に対する一定のマイナスリスクに備える必要もあります。しかし、引き続き各カテゴリーでの強いブランドの育成強化を柱として、非価格分野での需要喚起に努めてまいります。

また、全体のさらなるプロフィットプール拡大に向けて、いわゆる有言実行の改革で、インターシップを発揮していきたいと考えております。

飲料事業の概況

上期の飲料事業につきましては、市場全体が1パーセント程度拡大する中、当社としては「ウィルキンソン」「カルピス」といったカテゴリトップのブランドを中心として、トータルシェアを拡大する。また、コスト全般の効率化によりまして、計画を大幅に超過達成することができました。

飲料業界では利益重視の流れが継続する中、当社は主力ブランドに集中したミックス改善・広告販促費の効率化に加えまして、カルピスとのシナジーの拡大などにより、利益率は業界トップレベルの、10パーセント近くにまで上昇する見込みであります。

今後も、飲料としては我々の主力6ブランドへの集中はもとより、独自技術を活用した「カラダカルピス」のような付加価値商品や、自動販売機の専用ボトルの拡大といった差別化の戦略によりまして、収益性のいっそうの向上を目指していく方針であります。

食品事業の概況

食品事業の上期につきましては、引き続き錠菓である「ミンティア」「ディアナチュラ」など、主力ブランドを中心とした売上の拡大・ミックスの改善を行いました。それに加えて、通販事業の改革にともなう広告搬送機能抑制などにより、年商計画を食品事業でも超過達成することができました。

統合したアサヒグループ食品として、事業の選択と集中が着実に進展しており、年間計画を上方修正したことで、トータルの利益率を我々の食品事業としては初めて、10パーセントを超える。こういう見通しであります。

今後も引き続き、強い主力ブランドの強化に加えまして、食品事業も機能性表示食品といった高付加価値商品の拡大・さらなる食品事業の事業内のポートフォリオの最適化など、食品事業としてもう持続的な成長に向けた改革に努めてまいりたいと考えております。

国際事業(西欧事業)の概況

次に、国際事業のご説明です。上期の実績としては、既存事業ベースでは、主に東南アジアのマレーシアが想定以上の市場全体の消費の低迷・原価のコストアップにより、計画未達となりました。一方、西洋事業やオセアニア事業が計画を超過達成したことによりまして、国際事業トータルではほぼ計画ラインの進捗になりました。

西洋事業は、英国の「Peroni Nastro Azzurro」をはじめ、母国市場の主力ブランドがそれぞれを好調に推移いたしました。いわゆる第三国輸出を含めた全地域で、増収増益を果たしており、昨年10月の買収完了以降のインテグレーションも、順調に進んできております。

引き続き、母国市場におけるブランド価値に重点を置いた、ミックスの改善・第三国でのプレミアムブランドの拡大展開による、収益性のさらなる向上を目指していきたいと考えております。

国際事業(オセアニア)の概況

オセアニア事業につきましては、資料をご覧いただくとおわかりになると思います。引き続き、ミネラルウォーターやスーパードライなどの成長カテゴリーを中心とした売上の拡大に加えまして、統合シナジーの拡大などにより、収益性が向上しております。

今後も、ブランド資産を活かした成長戦略やさらなるシナジーの創出により、計画の超過達成を目指すとともに、Peroniの販売機能の移管を、このオセアニアを契機として、オーストラリアにおけるプレミアムブランドのいっそうの拡大を図っていきます。

資料に記載はございませんが、国際海外としては課題を残している、マレーシア事業についてお話しします。今年は、製造プロセスの見直しなどの対策を講じた上で、ブランド基盤や収益基盤の再構築を図りまして、来年以降の挽回を図っていきたいと現時点では考えております。

中東欧事業の概要

次は、中東事業の連結化を踏まえた今後の欧州事業の戦略につきまして、ご説明いたします。

これらの中東事業の概要は、既にご案内のとおりです。中東5ヶ国トータルの販売数容量は、日本の箱数には置き換えますと、数量的には2億5,000万箱で、日本国内のアサヒビールの1.5倍程度です。各国の強固な事業基盤を背景として、EBITDAマージンは30パーセントと、高い収益性を持つ事業分となります。

国別主要ブランドと市場概況 (1)

次に、国別の主要ブランドと市場構造・カテゴリー別のシェアなどを記載しております。 各国とも、資料を見ていただくとおわかりになると思いますが、ご説明します。市場全体のボリュームの伸びは限定的となっておりますが、世界的な潮流と同様に、ビールのプレミアムグローバル市場は、着実に拡大してきております。

そうした市場環境の中、売上構成で7割以上を占めるチェコとポーランドを筆頭として、メインストリームだけではなくプレミアム市場でも圧倒的に強いブランドを有していることが、この高い収益性の源泉になっております。

国別主要ブランドと市場概況 (2)

ルーマニアにおきましても、資料を見ていただきますと、メインストリームで支配的な地位を有しているとともに、急拡大しているプレミアム市場でも、ブランドを確立しつつあります。

また、資料の下段に記載しているように、170年以上の歴史を持つチェコのPilsner Urquellを中心として、母国以外へのプレミアブランドの拡大が、今後のこの欧州事業の成長戦略の柱として着実に現在も進んでおります。

こうした長い歴史に裏付けされた強いブランド群と、プレミアム化の進展、さらにそれらを支える品質技術・人材が、中東技術の大変大きな強みとなります。

中東欧事業の中期戦略と2017年計画

次に、中東事業のスタンドアローンでの成長戦略と、2017年の計画を記載しております。 中東事業は、ただいまご説明したように、チェコを筆頭とした強いマーケットリーダーのポジションを生かし、まずは母国でのプレミアム化とミックス向上戦略を柱として、さらなる収益性の向上を図ってまいります。

さらに、先ほど申し上げましたPilsner Urquellなどの、いわゆるグローバルブランドの第三国でいっそう拡大していく。また、ノンアルコールビール・機能性ビールといった新たな成長カテゴリーにおいても、当社の技術やノウハウを生かして、強いブランドを今後一斉の力で実行していきたいと考えております。

地域別の戦略としては、それぞれの市場特性やポジションによって、きめ細かい対応が必要となります。3ヶ年程度を目処とした年平均の成長率は、資料に記載しております。売上収益で1桁台前半から半ば。また、事業利益では1桁台後半の年益の成長を目指してまいります。

資料の下段には、本年上半期の実績と年間計画を記載しております。前年比は、旧SABミラー時代の概算値と比較した、為替一定ベースでの数値となります。

今年の4-6月期の実績では、ミックス改善を目指した商品ポートフォリオの見直しにより、ポーランドは若干の減収となりました。一方で、チェコ・ルーマニアなどの大きな増収でカバーいたしまして、1パーセントの増収となりました。

事業利益では、先ほど申し上げましたけれども、ミックス改善効果などにより、13パーセントの増益となり、社内計画を大きく上回る好調なスタートを切ることができました。

また、年間の計画でも、主にポーランドの構造改革による減収に加えまして、チェコ国内で屋内での喫煙規制が実施されたこと。そういったものが、ビール消費に少なからず影響が与えられると見ております。このようなところも若干含めて、全体を保守的に見積もりまして、売上収益は前年並みと考えております。

一方、プレミアム化によるミックス改善・各種効率化により、事業利益では10パーセントの増益を目指していきます。先ほどご説明した、来期以降のCAGR(年平均成長率)目標と比較しますと、発射台となる本年2017年は、売上収益の伸びは低調となりますが、事業利益では大幅な成長を見込んでおります。

アサヒグループ入りした本年は、取り組むべき構造改革を含めまして、まずABI(ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ)社からの分離・統合。作業を優先的に進めながら、まずはスタンドアローンの収益基盤を整え、今後のシナジーの創出に向けて、着実にステップアップをしていく方針であります。

欧州事業の成長ガイドラインとシナジー創出

続きまして、西欧事業を含めた欧州事業のビール事業全体の成長ガイドラインにつきまして、シナジー創出も含めて、概略を説明いたします。

すでに発表しておりますように、西欧事業ではグローバルプレミアムビールの、いわゆるパワーハウス、母体ということを目指しまして、CAGRでは売上収益で1桁台後半、事業利益では10パーセント前後の成長を見込んでおります。

また、ただいまご説明したように、中東欧事業では事業規模も大きく、すでに高い収益性を達成していることもあり、西欧事業より成長率は低めとなります。それでも、事業利益のCAGRは、1桁台後半の成長を見込んでおります。

資料に記載のように、それぞれのスタンドアローンの計画に加え、今後5年程度を目処として、100億円以上のシナジー効果を創出していく。これにより、欧州事業トータルでは、事業利益のCAGRで10パーセント前後の成長を目指していく方針であります。

シナジーの内訳としては、まずは非常に算段のしやすいコスト面におきまして、100億円程度の効率化ということを推進いたします。

具体的には、東西の両事業を合わせて買収したことによる、いわゆる共同調達。また、IT分野などの機能統合の推進により、効率化をさらに図ってまいります。

また、国内で培ってきたノウハウなども活かしながら、欧州事業トータルでの間接コストの抑制。それから、生産から販売に至るサプライチェーンマネジメント、SCM全般の最適化に取り組んでいく方針です。

資料の下の方の、売上面でのシナジーとしては、スーパードライの欧州での拡大展開に加え、グローバル化で成功しているPeroni Nastro AzzurroやPilsner Urquellの、欧州やアジア、またオセアニア地域での、いわゆるクロスセルの強化により、グローバルブランドの拡大を目指していきます。

現時点では、ブランドごとの定量化まではまだ至っておりません。しかし、主要3ブランドのスーパードライ・Peroni Nastro Azzurro・Pilsner Urquell。これらを、3ブランドの母国以外の主要市場での販売数量は、現在2,000万箱程度であり、5年後を目処として、これを1.5倍以上に拡大することを、目指していきたいと考えております。

英国のPeroni Nastro Azzurroは、2005年にSABミラーに買収される前は、いわゆるピザビールというものに過ぎませんでした。しかし一貫して数量を追わず、ブランド価値を重視した戦略を、ぶれずに展開してきた。10年かかりましたけれども、スーパープレミアム市場のナンバーワンブランドに、成長することができました。

過度な数量目標に縛られることなく、こうした成功事例を実現をしてきた人材・ノウハウを、我々が水平展開しながら中長期的な視点で、グローバルプレミアムブランドの拡大を図っていく考えです。

また、売上シナジーとしては、ノンアルコールビール・機能性ビールのイノベーション商品の拡大展開も、今後目指していきます。

例えて申し上げますと、ビール大国のドイツでも、データを見ますとノンアルコールビールの構成比が6パーセントを超えてきております。また、1人あたりのビール消費量が世界一のチェコでも、ノンアルが3パーセント以上となっております。健康志向を背景に、市場規模は拡大してきております。

こうした分野でも、日本発・アサヒ発の技術や開発力を活かしながら、シナジーの拡大を図っていく方針であります。まずは、先ほども触れましたように、スタンドアローンでの成長。

そして、コストシナジーを着実に創り出していきつつ、順次売上シナジーを積み上げていくことで、欧州事業を核とした国際事業全体の収益性の向上に、つなげていきたいと考えております。

『中期経営方針』のガイドラインと進捗

最後に、中期経営方針のガイドラインについて若干触れます。2016年に設定したガイドラインです。本年の既存事業計画を上方修正したことにより、このガイドラインに記載の本年の達成確度は、高まってきていると考えております。さらに、欧州におけるM&A効果もあり、EPSとROEは、年間を通してガイドを大幅に上回る見通しでございます。

現在の中期経営方針におきましては、3年程度先を想定した主要指標のガイドラインは、事業環境の変化に応じてローリングしていく方針です。事業構造の大幅な変化を踏まえまして、来年からのガイドラインのローリングを、現在検討しているところでございます。

今後は、来年以降の中期戦略につきまして、国内を含めた各事業会社と討議を重ねていくようしております。国内外の事業会社のトップに対して、私は、業績が好調だからこそ、先ほど触れたROICを重視したコスト管理の徹底・低採算ブランドの大胆な見直しなど、市場環境の変化を見据えた次の一手を、しっかりと見定めていくよう話をしております。

また、ホールディングスとしても、冒頭で申し上げた事業ポートフォリオの再構築に加え、財務体質の改善・グローバル戦略の加速など、今後もみなさまの要望も踏まえた経営改革に、スピードを上げて取り組んでいく方針であります。

ご説明は以上です。引き続き中長期的な視点で、建設的なみなさんとの対話によりまして、持続的な企業価値の向上に、私ども経営者は努めてまいります。今後ともご指摘なり、ご指導ご支援をよろしくお願いいたします。長時間、ご清聴どうもありがとうございました。私からは以上でございます。