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THEOの開発を支えるプロダクトマネージャー・梶田氏
梶田岳志氏:本日はよろしくお願いいたします。「THEO」のプロダクトマネージャーを担当しています、梶田と申します。
簡単に自己紹介させていただきたいんですけれど、こういう技術の会社とかFinTechの会社だと、私ももともと経済や技術の出身と思われることが多いんですけれど、私は学生時代は大阪大学で現代思想をとっていました。
家庭用ゲーム業界を経て、2011年にクックパッドというサービスの会社に入りまして、有料会員向けのサービス開発に従事していました。そのあとに弊社に入社したという経緯になります。1982年、京都市の生まれで、僕、将棋が好きでして、好きな将棋の戦法は「ゴキゲン中飛車」と自己紹介のスライドに書かせていただいています。
プロダクトチーム、このTHEOというロボアプリケーションを開発しているメンバーを紹介させていただきます。
プロダクトマネージャー、どういうものを作るか考える人格が私で、ほかの2人、星(竜一)というGoogleから来た者と、加々美(文康)という、こちらはクックパッドでエンジニアをやっていた者を入れた、この3人体制でやっています。
「変わらない日々が続く」強い閉塞感
まず、なぜ今、THEOなのか? なぜ今、こういうサービスを出すのかというところから、お話させていただければと思います。
まずは、私自身の個人的な体験からお話させていただきたいと思うんですが、10年ぐらい前になるんですけれど、自分自身が就職活動をしていた時に、もう少し自分が若かった……若かった時とはあまり言いたくないんですけれど(笑)、その当時、抱いていたのは「なにも変わらない日常が、延々と続くんじゃないか」みたいな閉塞感でした。
大学の時までは楽しかったんだけど、そのあと就職すると、「ここから40年間、ある種なにも変わらない日々が続くんじゃないか」みたいな感覚を、僕は持っていました。ただ、これは僕だけじゃなく、ある程度の一般性を持っていると思っています。
先ほど、(専攻が)現代思想というお話をしましたが、そういう思想的なものが好きで、好きなアニメーション映画に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』というものがあります。
これがどういうものかというと、『うる星やつら』はもしかしたらご存知かもしれないんですけれど、諸星あたるとラムというキャラクターが、文化祭の前日、文化祭の準備をしている日々を延々と繰り返すみたいな話なんですね。
どこかしらで、「これはおかしいぞ」と気付いて、そこから抜けだして現実世界に戻ってくるというところまでを話にしたような作品です。
あるいは1995年に、宮台真司さんという社会学者の方が、『終わりなき日常を生きろ』という、そのものズバリみたいなタイトルの本を出されています。
つまり、今まで高度経済成長の時とかは、「これをやっていれば、明日が来るんだ」というような話があったと思うんですけれど、それが崩壊して、もはやなにも新しいものができない。だから、どこに向かっていいのかわからないというような、そういう閉塞感が僕自身あったかなと思っています。
ただ一方で、「毎日が変わらない」と感じていたということは、この毎日が明日も続くということ自体は信じていたという証拠かなと思うんですね。
社会に頼ることができないという不安
その一方で、私は前職で新卒の人たちと働かせていただく機会がけっこう多い立場だったんですけれど、そうすると、自分の若い時の感覚と、今の人たちの感覚というのはけっこう違うのかな。同じ不安を持ったとしても、その性質はちょっと違うのかなと思っています。
端的にいうと、20代そこそこの人間が、わりと全員が全員、キャリアプランの不安みたいなものを抱えていて、それを自分に相談しに来たりするんですね。
つまり、さっきの私たちは、「日常というのは変わらないけれども、信じていた」という話からすると、もう「そもそも社会に頼れないんだ」みたいな、そういう前提でこの人たちは生きてるんだなと感じていました。
ですので、ふつうにやっていたらよくない方向に行ってしまうんじゃないかという恐怖と、自分はそうはなりたくないみたいな気持ちがあって、そういう発想が出てきたのかなと思っています。
少子高齢化が進み、財政赤字拡大は不可避
前置きが少し長くなったんですけれど、そういう気持ちの変化みたいなものの背景として、こういったような要因があるかと思ってます。
まず、「少子高齢化」と「介護」とスライドに書いているんですけれど、少子高齢化が進んで、低成長が進んでいくなかで、子供とか現役世代とか、あるいは老齢の世代とかに関わらず、社会保障の需要はやはり高まっていると思います。一方で、これが減っていくというのはなかなか考えにくいだろう、と。
「じゃあ、どうするんだ」となると、生活を支えるお金は自分自身で貯める。そういう必要性がますます高まっているのかなと思っています。
「お金は増やしたい。でも投資はむずかしい」
ただ、マイナス金利みたいな話もありますけれど、お金を預金で貯めているだけでは増えない。では、投資をすればいいのかというと、これもむずかしくて。投資への距離感とかはあると思うんですね。
弊社が行ったアンケート調査だと、およそ80パーセントの方がお金に対する不安感を持っていらっしゃいます。
「将来、自分がお金で困ってしまうんだろうか」という不安感を持っていて、60パーセントの方がお金を増やしたいと思っていらっしゃるんですけれど。
例えば、投資信託とか株式をやっている方はどのぐらいいらっしゃるのかというと、それは20パーセントにも満たないような数字でした。
なぜかというと、これは野村総研さんの調査なんですけれど、新規の投資家の方に投資のイメージを尋ねると「素人にはむずかしい」とか、あるいは不安だったり心配だったり、「リスクが高いんじゃないか」というようなネガティブなイメージが上位を占めていました。
THEOの役割「お金の不安を解決」
ここで今日の話になるんですけれど、我々のTHEOの役割として、我々は金融の会社なので、やはりお金の不安を解決したいと思っています。
日本だと、だいたい家計のうちの半分ぐらいのお金が円預金で眠っています。
先ほど申し上げたように、日本が抱えるようなマクロ経済的なリスクを考えると、そういった自分が抱いている不安と、円預金で持っているという実際の金融資産の持ち方にはやはり乖離があるわけですね。
なので、こちらを資産運用に動かして、なんとか増やして、そういったことでお金に対する不安を解消できないかなと考えています。
サイトリニューアルのポイント
これは我々のサイトなんですけれど、本日(7月14日)サイトをリニューアルしました。サイトリニューアルのポイントとしては、より多くの方により直感的にわかりやすくと考えて行いました。
ポイントは2つございます。1つ目が親しみやすいデザインに変更したこと。もう1つは、THEOの機能について詳細な説明を追加しました。
この2点というのはどういうことかというと、我々が資産運用について重要だと思っていることに対応しています。
1つ目、資産運用として高機能なものをやはり我々は提供していかなければいけないだろう。ただ、それだけではなくて、ユーザーの感情をくんだ親しみやすいデザインであることが重要だと思っています。
新しいお金の預け方としてTHEOを提案
2つ目について、会場にいらっしゃっている方にはもう説明するまでもないかと思うんですが、金融サービスとしてのTHEOというものをご説明させていただくと、THEOが具体的にやっている資産運用の手法は国際分散投資です。
世界中のさまざまな地域だったり、あるいはそれぞれ異なる種類の資産に投資先を分散させることで、リスクを下げつつ、収益の安定化を狙うという特徴がございます。
では、こうした分散投資を5年でやるとか10年でやるとか、そういった長いスパンで行う長期の国際分散投資というのを、今まで投資をやっていなかった方にもご提案して。それをある種、新しいお金の預け方、もちろん預金ではないんですけれども、ある種の預け方としてご提案したいと思っています。
では、どうやってその国際分散投資のポートフォリオを組むのかということなんですけれど、THEOのサイトにアクセスいただくと、ユーザーに9つぐらいの質問をするんですね。
年齢とかも含むんですけれど、そういった質問をして、その答えに応じて、それぞれの方に適したポートフォリオを組んでいます。
そういったために活用しているツールがETF(上場投資信託)です。こちらのETFというのは市場の動きを表す特定のインデックス、例えば日経平均株価であるとかの値動きに連動する金融商品です。
THEOは、世界中のさまざまなインデックス、例えば香港の株式であるとか、米国の債券であるとか、金とか原油とかですね。そういったさまざまなETFを組み合わせたポートフォリオを構築することで、国際分散投資を実現しています。
例えば、1つ目、地理的な分散で申しますと、THEOの集まっているポートフォリオの投資対象は世界86の国、地域にわたっています。最終的な投資対象というのは11,000銘柄以上になります。
ポートフォリオの平均リターンは3~8%
2つ目がアセットクラスの分散。例えば、同じ株式であっても、先進国株か新興国株で、多少動きが違ったりしますので、そういったアセットクラス分散も行っています。
3つ目、こちらが重要だと考えているところなんですけれども、長期運用により、時間的な分散というのもあるかなと思っています。
資産の値動きには、長期的な価格変動と短期的な変動がございまして、短期的な変動を避けること、これは不可能に近いかなと思っています。
けれども、もし成長分野であって、長い目で見ると値上がりする資産であれば、5年や10年にわたって保有し続けることで、短期的な価格変動の影響を無視できる。つまり、リスクを下げることができると考えています。
こういった分散投資のポートフォリオを組んだ結果、これはシミュレーションになるんですけれど、ここ8年のシミュレーションによる年あたり平均リターンは3から8パーセントになっています。これは世界の経済成長率に近い水準かなと思っています。
投資のエキスパートが集結
そういったポートフォリオを組んでいる人間が、こちらの3名になります。
左から、弊社のアカデミックアドバイザーの加藤康之教授は、今は京都大学で金融工学を教えるかたわら、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとした年金基金の運用に関わっている方で、なくしてはいけないようなお金の運用のエキスパートです。
真ん中は(マルコム・)シュライバーという者です。彼は、コロンビア大学の学部と修士を合わせて3年で卒業したという人間で、学部を2年で卒業したという例は今までないと聞いています。
こちらの東海林(紘)は、USB証券にて当時最も複雑と言われたデリバティブモデルの評価方法を確立した者になります。
つまり、最新の投資理論を研究する加藤教授のようなアカデミアと、シュライバーや東海林という運用経験が豊富な実務家、双方が参加するチーム構成になっています。
「ハックする」思想を使って貢献
今までのお話というのはいわゆる金融のお話です。では、先ほど申し上げたプロダクト、テクノロジーの人間はなにをしているんだという疑問が出てくると思います。
ここでひとつ、Webサービスや、テクノロジーの業界で、重要な基本的な姿勢として扱われる、なにかをハックする、という思想。つまり、すでにあるものを作り変えることで、よりよい感じに変えていくというような思想があるということをご紹介したいんですけれど。
こちらのハックするというのを使って、貢献ができているかなと思っています。
資産運用、長期の資産運用ということに関しては、始めてもらうことと、続けてもらうことが重要だと思っています。
まず、始めてもらうためにどうすればいいのか?
始めてもらうことに関して申し上げますと、先ほどの野村総研の調査によると、新規投資家はやはり始める前にものすごく恐怖感を持っていらっしゃる。
一方で、始めたあとに「じゃあ、実際どうでしたか?」とお話を聞くと、例えば「リスクが高い」と感じてらっしゃる人の割合は、投資経験前だと50パーセント程度なんですけれど、経験した後だと10パーセントちょっとに減っているんですね。
つまり、そこで投資を始めるために必要な心の準備というようなものは、合理的な判断というよりも、実際に投資を始めた経験によって作られるという。これはなかなか突破しにくい構造になっているのかなと思っています。
そうすると、我々が提供するプロダクトだと、せめてその心理的なハードルを下げること、極力手軽に、あるいはできるだけ少ないコストで資産運用が始められる必要があると考えています。
弊社のTHEOというサービスだと、10万円から資産運用を始められるんですけれど、この10万円という金額を「これが重要だ!」と提案したのは、ハックするというところの左の3人、プロダクトの人間だったりします。
あとオンラインで始められる。THEOの1つの特徴として、口座を開設して資産運用を始めるまでに、紙でなにかしらの書類を出す必要がないんですね。すべてオンラインで完結できます。
そういった意味でも、始められるというところをハックするという1つになっているかなと思っています。
続けてもらうために解消すべき不安
もう1つ、先ほど、続けることも重要とお話をさせていただいたんですけれど、資産運用は続けるのもなかなか難しいところがあるかと思っています。
つい最近、弊社のデータですと、最近の相場は下がっていたので、下がっていた時に、怖がってしまったのか、解約されて、その後また値段が上がってきた時に買い戻されたお客さんがいらっしゃったんですね。つまり、経済的には損をされているんですけれど、こういうのはよくある話かなと思ってます。
過去のデータを見ると、そういった下げ相場がずっと続くことはないんですけれど、ただ、「いつまで値下がりするんだろう?」「あの時、売ってればよかった」みたいな憂鬱とは定期的に付き合い続けなければいけない構造になっているかなと思っていて、これはどう考えても苦しいだろうな、と。
もし、こういうところが続ける上で弊害になっていて、その結果、経済的にもマイナスになるような資産運用をしてしまうのだとすると、こちらをどうにかハックできないかなと考えています。
感情に沿ったコミュニケーションが解約を防ぐ
1つの例として、この前ブレグジット(Brexit/英国のEU離脱)があった時のお話をしようと思います。ブレグジットがあった翌日に、弊社はそれに対する顧客の不安感を解消するようなメールを送りました。
そうすると、出金や解約はふだんとほぼ同じ。つまり、解約はとくに多くなかった。
一方で、入金が増えました。追加で、「こういった時こそ入金をしてください」というお話をすると、その時に追加で入金が増えたというお話があります。
これはテクノロジーというよりは、ただのメールです。ただ、我々のテックというのは、ある1つのキーみたいなものを見つけると、それをスケールさせるというのがあります。
つまり、今後そういう値下げの原因であるとか、現状を包み隠さずに、お客様が不安に感じられる前にお伝えすることで、値下がりはショックなんだけれども、少し落ち着いて我々の話を聞いてみようかというような運用報告というか、お客さんとのコミュニケーションについては、ある種、自動化もできると思っています。
こういった結果として、長期の運用が実践できる。THEOが、国際分散投資のポートフォリオを組んで、顧客の感情を読み取ったコミュニケーションをすることで、長期に続けられる。そうすると、長期の運用というのが実践できるかなと思っています。
そういった金融的に高水準なサービスを提供するということと、顧客の感情に配慮したサービス、そういうものを提供することで、先ほど一番最初に申し上げた、円預金で眠ってるようなお金を投資に回すことが実現できるのかなと、そういうふうに考えています。
私からは以上になります。ありがとうございました。