ハッチの米国株教室#5
【S&P500】米国株初心者が初めての注文で迷わないために 7,000%の利益を逃したプロの大失敗に学ぶ
【7,000%の利益を逃した…】マイクロソフト株の上昇を逃したプロの「大失敗」に学ぶ米国株の買い方

荻野仁美氏(以下、荻野):フリーアナウンサーの荻野仁美です。
岡元兵八郎氏(以下、岡元):マネックス証券のハッチこと岡元兵八郎です。
荻野:この番組では「ハッチの米国株教室」と題し、米国株投資についてわかりやすく解説していただきます。
今回は、「投資判断の実践的アプローチと、最初の注文で迷わないために」というテーマでお届けします。米国株を初めて注文する際に投資家のみなさまが悩むポイントやその解消法について、岡元さんから教えていただこうと思います。
注文前に考えるべきこと
荻野:この番組では米国株の投資の重要性や銘柄のご紹介などをしていただきましたが、実際に米国株を買ってみようと取引画面を開くと、株価・数量、指値・成行など、いろいろな項目が出てきて戸惑うかもしれません。これらは、どのように考えて決めていけばよいのでしょうか?

岡元:とても基本的なお話をすると、注文する前に一番大事なのは、「この金額だったら安心して持てるか」という判断です。
これまで投資をしたことがない人が、突然大きな金額を投資するとします。株価が上がっているうちは気にならなくても、当然、下がる日もあります。「株だから下がることもあるよね」と思っていても、実際には毎日のように株価が下がっていく局面もあります。そのようになると、人によっては不安で眠れなくなってしまうこともあるわけです。
私自身はマーケットを40年近く見てきましたので、株価が大きく乱高下する局面も数多く経験しています。1日でニューヨークダウが2割下がるような日も経験しましたし、個人的に保有している銘柄が一時的に2割、3割と下がる局面も見てきました。
そのため、株価がそれほど大きく下がることもあると理解している人は良いのですが、そのような値動きをまだ経験したことがない方もいらっしゃいます。
では、どうすればよいのでしょうか? 米国株のいいところは、日本株が通常100株単位で取引されるのに対し、原則として1株から買えることです。そのため、数千円、数万円と比較的少額からでも、AppleやMicrosoftのような世界的な企業の株主になれます。

したがって、最初から大きく勝負する必要はありません。最初は「仮に投資した金額が一時的に半分になったとしても、生活にはまったく影響がなく、夜もぐっすり眠れる」という金額から始めることが大事だと思います。3万円や5万円で十分ではないでしょうか。
投資は1回きりではなく、資産形成のためにこれから継続していくものですので、最初の投資はいわば「勉強代」と考えるのがよいでしょう。いきなり大きく賭けるのではなく、とりあえず1株買ってみて、株価の値動きに慣れることが大切です。
やはり自分で投資をしないと、数字を見ているだけでは実感が湧きません。1株だけでも保有すれば、保有株の評価額が10セント、20セント増えることもあれば、反対に1ドル下がることもあります。そのような値動きに慣れることが大切だと思います。
また、米国株はドル建てで取引されるため、ドル建ての株価の動きに慣れることも重要です。

数量はどう決める?日本円での支払額を意識しよう
岡元:数量、つまり株数も、初心者の方が迷いやすいポイントだと思います。日本株は通常100株単位で買うことが多いため、株数のイメージがつきやすいのですが、米国株は1株単位で、しかもドル建てです。

そのため、「何株買うか?」ということだけではなく、「日本円に換算するといくら払うことになるのか?」を確認する必要があります。例えば、1株150ドルの株があったとします。為替レートが1ドルあたり150円だった場合、150ドルに150円を掛けると、1株あたり2万2,500円になります。
注文画面では株価がドルで表示されているため、「1株だから安そうだ」と思って買ってしまうと、実際には日本円で2万円、3万円といった金額になることがあります。
そのため、特に初心者の方は、注文ボタンを押す前に「この注文が実際に執行された場合、日本円に換算するといくらになるのか?」を確認する癖をつけたほうがよいと思います。
荻野:初心者の方は、特に少額から、日本円に換算した金額まで考えた上で始めたほうがよいということですね。
岡元:ゼロから始めるわけですから、慣れないことをする上では、やはりこのような基本的な確認が必要だと思います。
注文方法は「成行」か「指値」か
荻野:成行注文と指値注文については、どのように考えたらよいのでしょうか?
岡元:これについては私の考え方なので、みなさまが真似をする必要はありません。1つの考え方として聞いていただきたいのですが、私は銘柄を買うと決めたら、値段よりも「その銘柄を持つこと」を優先します。

指値注文では、株価が指定した価格まで下がってこなければ、買えないこともあります。そのため、私は通常、成行で買うことにしています。
もちろん、値段にこだわりがある方は指値で買ってもよいと思います。ただ、私の場合は、「買う」と決めた銘柄を持つことを優先しています。
荻野:確かに、欲しい銘柄があっても、指値注文が成立したのかどうか、夜に気になってしまいますよね。
岡元:よく聞くのが、買おうと思ったものの、値段にこだわった結果、買えないまま株価が上がってしまい、その後は買えなくなってしまったという話です。そのため私は、持つことを決めたら、その銘柄を持つという方針で投資をしています。
初心者が悩むポイントと考え方
荻野:次に伺いたいのが、一番難しいとも言える、買うタイミングです。株価が下がったタイミングで買いたいと思う一方で、有望だと思う株がすでに上がっていることもあります。どのタイミングで買えばよいのでしょうか?
岡元:おっしゃるとおり、初心者の方が一番悩むのが、「いつ買えばよいのか」というタイミングだと思います。
これは、はっきり申し上げると、最適なタイミングを完璧に当てるのは非常に難しく不可能に近いと思っています。
これは私だけが言っていることではありません。投資の神様といわれるウォーレン・バフェット氏でさえ、短期的なマーケットのタイミングを当てるのは非常に難しいという趣旨のことを述べています。
おもしろいことに、たまたま1回くらいは、非常に良いタイミングで買えることがあります。いわゆるビギナーズラックというものです。
非常に安いところや底で買えた経験をすると、「自分はひょっとしたらトレーディングの天才なのではないか?」と思う方もいるかもしれません。しかし実際には、毎回最適なタイミングを当てることは、ほぼ不可能です。
「株価が下がっているけれど、もっと下がるかもしれない」などと考え始めると、なかなか買えなくなってしまいます。しかも、それが気になって夜も眠れない、指値注文を出したものの買えているかどうかが気になるというのは、精神衛生上もよくありません。

私は、買うタイミングを当てにいくよりも、最初から何回かに分けて買うようにしています。1回ですべて買ってしまうと、購入価格がその時点の株価に決まってしまうからです。
成行で買う場合でも、何回かに分けて買います。例えば、投資したい金額を3回に分けて、今日は3分の1、少し株価が下がったらさらに3分の1を買う方法があります。あるいは、株価の動きにかかわらず、一定の時間を置いて機械的に3分の1ずつ買う方法もあります。
いわゆるドルコスト平均法に近い考え方ですが、1回ですべて買わず、何回かに分けて買うということです。そのようにすることで、「高値づかみをしてしまったかもしれない」という不安をかなり和らげることができるのではないかと思います。そのような考え方は、投資を長く続けていく上でとても大事だと思います。

繰り返しになりますが、投資で大切なのは、最初の1回で完璧なタイミングを当てることではありません。長く投資を続けることです。そのためには、あまり目先の株価にこだわらないほうがよいのではないかと、私は思っています。
荻野:「直近の高値を下回ったら買おう」などと考え続けているうちに、株価がどんどん上がり、手の届かないところに行ってしまうこともあります。そのように買うタイミングを逃してしまうほうがもったいないと、私自身の経験からも感じます。
岡元:「そんなことはないだろう」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、実際に自分で投資をしてみると、結局そのようになることが多いと私は思います。
荻野:何回かに分けて買う分散購入が、1つのポイントになるということですね。
為替のタイミングは気にするべきか?
荻野:為替についてはいかがでしょうか?
岡元:為替も、多くの方が悩むポイントです。よく聞くのが、「今はドル高だけれど、この後ドル安になったらどうしよう?」といった悩みです。
私は長いこと金融業界にいますが、為替が一番当てにくいと思っています。そのため、あまり為替の予想は気にしないことにしています。株価のタイミングを当てるだけでも難しいのに、ドル円のタイミングまで完璧に当てようとすると、難易度が一気に上がってしまいます。

ですから、特に米国株を始めたばかりの方は、米国株を買う時に、そのタイミングで円をドルに換えて購入する方法でよいと思います。これは、いわゆる「円貨決済」という方法です。
口座にある日本円の残高を使い、証券会社が定める為替レートでドルに換算して、米国株を買います。この方法であれば、事前に日本円をドルに換えておく必要はありません。
日本円で資金を用意しておけば、そのまま米国株の注文ができるため、非常にわかりやすい方法です。初心者の方にはこの方法がよいのではないかと思います。
しかし、もしご自身が為替の動きについて強い考えをお持ちであれば、その考えに基づいて、円高・ドル安になった時に円を売ってドルを買っておき、将来の米国株投資に備えることもできると思います。
ただ、基本的には、銘柄を買うと決めた時に、その時点の為替レートで円をドルに換えるというスタイルでよいのではないかと思います。
失敗談や成功談から学ぶ「判断の軸」
荻野:ここまで取引のタイミングについてうかがってきました。岡元さんのご経験やご存じのエピソードの中で、取引のタイミングに関する失敗談や成功談はありますか?
岡元:失敗は本当にたくさんあります。この質問を受けてまず思い出すのが、投資した会社が倒産したことです。
アメリカの景気が悪化し、当時、ダウ・ケミカルやデュポンといった化学業界の景気敏感株が大きく下がった局面がありました。業界を調べてみると、当時、ライオンデル・ペトロケミカル(現ライオンデルバセル・インダストリーズ)という会社があり、その会社の株価が化学業界の中で最も大きく下がっていました。
私は、景気が回復すれば、下がった分だけ最も大きく上がるだろうと考え、その会社に投資しました。しかし、結局その会社は倒産し、持っていた株式の価値はゼロになりました。
この時に得た教訓は、投資をするのであれば、その業界のトップ銘柄を選ぶことが大切だということです。

もう1つ、ここ数十年間で一番の失敗だと思っていることがあります。1990年代、私はかなり頻繁に株を売買していました。問題は、よい銘柄を買っても、株価が1割、2割上がると売ってしまっていたことです。
1990年代には、MicrosoftやAppleの株も実際に保有していたのですが、売ってしまいました。仮に1995年末に買い、その後も持ち続けていたとすると、収録時点までのMicrosoftの株価上昇率はどのくらいだと思いますか? 約7,000パーセントです。Appleであれば、なんと約10万パーセントです。
この話から得た教訓は、私がいつもお伝えしている「Stay Invested(ステイ・インベステッド)」、つまり投資を継続することです。
長期的に有望な銘柄を買ったのであれば、株価が1割、2割上がったところで売り、「自分は株式投資の天才だ」などと思わないことです。簡単に売ってはいけないということです。これが、私の投資の歴史の中で最大の過ちだったと思っています。
荻野:1株でも持ち続けておけばというくらいの上がり方ですね。
岡元:先ほどは失敗談をお話ししましたが、今度は成功談をお話ししたいと思います。私は、いろいろな投資手法を試すのが好きです。
私が尊敬する投資家の1人に、ジョン・テンプルトン氏という方がいます。彼は1960年代半ば、当時、海外投資家からあまり注目されていなかった日本株に本格的に投資し、大きな成功を収めたファンドマネージャーです。
ジョン・テンプルトン氏は若い頃の1939年、アメリカの株式市場が大きく下落していた時期に、証券会社に「1米ドル以下の銘柄を100株ずつ買ってほしい」と注文を出したそうです。
いわゆるボロ株のような、株価が非常に低い銘柄です。彼は104銘柄を購入し、投資額は合計で1万ドルほどだったといいます。それが4年後には、約4万ドルになりました。
私はその話をずっと覚えていました。そこで、リーマンショックによる世界金融危機で銀行株が暴落した際に、同じような投資を試してみたのです。当時は、実際に経営破綻する金融機関もありました。
その時、米国の地方銀行株を30銘柄ほどまとめて買いました。投資額は1万ドルか2万ドルだったと思いますが、正確には覚えていません。
その後もマーケットは下がり続け、「世界が終わるのではないか?」と思うほどの局面もありました。そのような状況で地方銀行株を買ったところ、3ヶ月間で投資額が3倍になりました。
これは逆張り的な発想です。ウォーレン・バフェット氏の有名な言葉である、「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲であれ」という考え方の一例だと思います。私自身、このようなものを含めて、いろいろな投資手法を試してきました。
まとめ

荻野:貴重な投資経験についてお話しいただき、ありがとうございました。初心者の方は、まず少額から始め、何回かに分けて購入することがポイントだと感じました。
今回は、米国株で最初の注文をする際に投資家が悩みやすいポイントと、その悩みの解消法について教えていただきました。岡元さん、ありがとうございました。
岡元:ありがとうございました。


