logmi Finance
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スピーカー名

株式会社東京証券取引所 上場部企画グループ 統括課長 池田直隆 氏
日本金融経済研究所 理事 副代表 (FiNX代表取締役) 後藤敏仁 氏
ログミー株式会社 執行役員/CRO 富山蔵人

登壇者紹介

後藤敏仁氏(以下、後藤):みなさま、こんばんは。日本金融経済研究所理事、副代表兼FiNX代表取締役の後藤です。

本日はログミーFinanceと日本金融経済研究所の共催セミナーとして、「『東証グロース市場改革でIRはどう変わるのか』~2030年基準見直し時代のIR~」というテーマでお話しします。

最初に登壇者をご紹介します。池田さんから自己紹介をお願いします。

池田直隆氏(以下、池田):東京証券取引所、上場部企画グループ統括課長の池田です。東京証券取引所(以下、東証)では長らく上場の企画を担当しており、主にマーケットの上場ルールなど、上場全般の企画を進めてきました。

例えば、コーポレートガバナンス・コードの見直しや市場区分のプライム・スタンダード・グロースへの変更、スタートアップ関連の取り組みなどを担当しています。本日はよろしくお願いします。

後藤:本日は、東証の池田さんが直接お話をしてくださるということで、私もいろいろとお聞きできればと思っています。楽しみにしています。

続いて、富山さんお願いします。

登壇者紹介

富山蔵人(以下、富山):ログミー執行役員CROの富山です。よろしくお願いします。本日は、オンラインとあわせて130名ほどの方にお申し込みいただいています。

本日のテーマはグロース市場についてということで、グロース市場の20パーセント以上の企業の方にオンラインで視聴いただいている状況です。

私も池田さんにいろいろとご質問できればと思っています。よろしくお願いします。

登壇者紹介

後藤:最後に私ですが、FiNX株式会社代表取締役の後藤と申します。富山さんと同じく、日本金融経済研究所の理事も務めており、代表の馬渕とともにIR活動の研究を行っています。

本日はこちらの3名でお届けします。それでは、さっそく池田さんからご説明よろしくお願いします。

今後の取組み

池田:本日はグロース市場がメインテーマになりますが、マーケット全体やプライム・スタンダード市場の動向についても、グロース市場のみなさまに関係があるのではないかと思います。そこで、全体としてどのような動きがあるのか、最初に簡単にご紹介します。

プライム・スタンダード市場の企業では、この3年間「PBR1倍問題」が取り上げられ続けてきました。この問題だけではなく、さまざまな取り組みが進んでいることは、みなさまもご承知のとおりかと思います。「資本コストや株価を意識した経営」に関しては、2023年3月から開始され、今では4年目に入っています。

プライム市場の企業では、93パーセントがその進捗を開示しており、スタンダード市場の企業では50パーセントが開示しています。この3年間で大きな進展がありました。

現在は「フェーズ2に入ったかな」という状況です。4年目に入り、コーポレートガバナンス・コードにも新たに組み込まれていますし、東証の要請もアップデートされるなど、「より具体的に、マーケットにどのようなことを示していくのか」という点にフォーカスしたステージへと移行しているということです。

その中で特に注目されるのは、どのあたりに成長目標を設定し、それを具体的に実行していくかという点です。具体的には、「キャピタルアロケーション」や「キャッシュアロケーション」といったキーワードがよく挙げられます。

「キャッシュをどのように活用していくか」「人的リソースをどのように確保し、どのように配分していくか」を具体的に示した上で、投資家と対話していくというプロセスが、より必要なステージへと進んでいます。

最近では、プライム市場の企業において、投資家から評価が高い企業は、それらを明確に示し、キャッシュの動きを可視化している傾向があります。こうしたステージへの移行が、現在プライム・スタンダード市場で見られる動きです。

これらの内容は、グロース市場のみなさまが「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示をされる際にも関連する話ではないかと思います。全体として、このような動きが進行しているのが1つのトピックです。

特に、機関投資家は「プライムだから」「スタンダードだから」「グロースだから」と、それぞれをあまり区別せずに投資しています。つまり、見方が共通であるという点を踏まえると、これらの動向が重要なファクターになっていることがまず挙げられます。

2つ目はスライド左上の赤線部分に記載したとおり、現在、企業に対してアンケートを実施しています。このアンケートでは、機関投資家との対話において、企業が彼らをどのように見ているかをお聞きしています。

こちらは8月の初旬頃に公表予定ですので、その際にはぜひご覧いただければと思います。また、グロース市場の企業からのご回答も多く感謝しています。

過去数年間にわたり、「投資家は企業をこのように見ています」といった内容を企業のみなさまに共有する活動を進めてきました。その結果、グローバル投資家からも「日本のマーケット全体で企業の取り組みや開示がすごく進んできた」との評価を受けています。

一方、企業が多くの情報を開示している中で、「投資家にここをきちんと見てほしい」「投資家にはこういう対応をしてほしい」といった企業側のさまざまな意見や思いも増えてきている状況です。

これまでは、そうした意見に対して直接的な対応が少なかった部分もありましたが、今回はそれにリーチすることを目指し、6月中旬から7月中旬までの期間でアンケートを行っています。

現在のところ、約400社からご回答をいただいており、非常に興味深い結果が出てきています。また、「この投資家と話してよかった」という具体的な名前についてもお聞きしており、多くの投資家が挙げられています。この内容については、8月に詳細をお知らせしますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

後藤:ちなみに、会場のみなさまの中で「回答しました」という企業はいらっしゃいますか? ぜひアンケートへの回答にご協力をお願いします。

富山:けっこうアンケートの回答数が多いですね。 

池田:このような取り組みをいろいろと進めているのですが、初日や2日目の段階で即レスをくださる企業がたくさんいらっしゃいました。これまでにはあまりなかったことであり、それだけみなさま思うところが多いのだろうと感じています。

富山:投資家に言いたいことがたくさんあるのではないでしょうか?

池田:そう感じています。このような状況を踏まえてグロース市場についての話をします。

グロース市場の発展に向けた今後の取組み

池田:昨年は上場維持基準が見直されたため、さまざまな場面でご説明する機会をいただきました。その後、大きなアップデートがあったわけではありませんが、現在地についてご紹介したいと思います。

今後の取り組みの1つ目として、昨年、時価総額100億円以上という上場維持の新基準を2030年から開始するとの発表を行いました。

この100億円という基準は、機関投資家がぎりぎり購入可能な水準という意味があります。ただし、100億円なら機関投資家が必ず買うかというと、おそらくもっとぜんぜん高い水準が必要だというのが正直なところです。それでも、現状では目安として100億円を基準にしています。

したがって、100億円が必ずしも最終的なゴールではありませんので、それを達成する方法だけを考えるというよりも、より高い成長計画を作成することが全体の趣旨といえます。

これを踏まえ、100億円以下の企業だけでなく、上場企業全体を対象として「高い成長」の実現に向け、どのような成長計画を立てているかを必要に応じて点検し、アップデートしていただくようお願いしています。

現在、約180社がアップデートを実施しており、既存の計画をさらに修正したり、新たにKPIを示したりする動きが顕著になっています。このような動きをまとめてフォローしていきたいと考えています。

今後の取り組みの2つ目として、アンケートを実施し、企業がどのあたりに課題を感じているのかについてお聞きしています。

ご回答いただいた企業が多く大変有り難いのですが、その内容をグロース企業のみなさまと共有しながら、どのようなサポートが可能かをこれから進めていこうと考えています。後ほど具体的にご紹介できればと思います。

今後の取り組みの3つ目は、先ほどのアンケート結果などを踏まえ、グロース企業を成長させてきた経営者やCFO、ユニコーン企業のCEOやCFO、さらにはクロスオーバーを含む長期的な視点で取り組むベンチャーキャピタルの方々との連携を進めていこうと考えています。

また、中小型グロース企業だけでなく、ラージキャップを見ている機関投資家が、どのようなタイミングで購入に踏み切るのか、どのような点に着目しているのか、といった視点をみなさまに共有することも有用ではないかと考えています。

さまざまなステークホルダーの方々にご参加いただき、課題を踏まえた視点や有益な情報を提供し、どのように対応していくべきかを考え、議論を重ねていこうとしています。この議論は今年の夏頃から、さまざまなかたちで進めていく予定です。後日、みなさまにもお知らせできればと考えています。

以上が全体的な方向性となります。

後藤:上場企業のCFOなど、スライドに挙がっている方々に対して、お手紙などが送られるのでしょうか?

池田:ご参加いただく方々には、すでにお声がけをしています。アンケートをもとに、グロース企業のみなさまにどのような視点を持っていただけるか、またどのようなアドバイスがあるか、さらにはさまざまな課題が出てくる中でどのようなサポートができるかといった話を議論していこうと考えています。

後藤:楽しみです。

富山:事前質問にもあったのですが、この100億円というラインには、なにか具体的な根拠があるのでしょうか? 

池田:先ほどのお話と重複しますが、100億円という水準は機関投資家全員が買う水準ではもちろんありません。そうはいっても、最低限それくらいの規模がなければ、流動性の観点から、機関投資家が買いたいと思った時に売ろうとしても売れないことがリスクとなり、結果として買わない選択をされるという問題が生じます。

そのようなリスクを軽減し、ある程度の規模まで成長していただくことが求められるという認識から、基準として100億円を設けたということです。これはあくまで最低水準というイメージで設定しています。

富山:つまり、あくまで基準としての100億円であり、達成すればそれでよいという趣旨ではないということですね。

池田:おっしゃるとおりです。この基準については後ほど話題に出ることがあると思います。他社の動向が気になるという事前質問もあったかと思いますが、100億円を超えるためにスポット的にM&Aを行うことが本質的な解決策かというと、必ずしもそうではないとマーケットでは見られているように感じています。

後藤:とはいえ、「100億円問題」で悩んでいる企業も多いのではないかと思います。

私もよくご相談をいただきますので、まだ100億円に達していない企業がどのように目指していくのか、本日の話を参考にヒントを得ていただければうれしいです。

グロース市場アンケートの結果(概要)

池田:本日は未上場企業からいただいたコメントは割愛していますが、グロース企業のみなさまから、どのあたりに課題があるのかお聞きしたものをスライドにまとめています。

すでに公表済みの内容ですが、こちらを見ながらコメントをいただいたり、深掘りしたりしていければと思います。

現在抱える課題(概要)

池田:上場後間もない企業や10年を超える企業など、幅広いステージの方にご回答いただきました。「100億円問題」を抱える時価総額が数十億円の企業や、1,000億円を超える企業もあり、幅広くご回答いただいていることが前提となっています。

こちらのスライドは「グロース市場に上場し、どのあたりに課題を抱えていますか?」という質問の回答をまとめたものです。

機関投資家のみなさまとの接点や、IRに関する悩みについてのご回答が多かったように思います。また、リソースの話として、人材や資金面での難しさも挙げられていますが、100億円という課題を意識されている中で、一番上に挙げられるのは成長戦略に関する課題です。

目先の業績だけでなく、将来的にどのように会社を大きくしていくのか、それを正しく伝える方法の構築が難しいというコメントも多くいただいているのが特徴的です。

後藤:この成長戦略は非常に大きなテーマである一方、誤解も多いのではないかと思います。構想として、売上を何十億円にすればそれでよいという話ではなく、投資家サイドはもう少し高い解像度で見ていることが多いと感じています。個人投資家であっても同様です。

例えば「100億円問題」に直面している企業は、ニッチトップで上場してきた企業が多いような印象を持っています。ニッチトップであることは変わらないものの、さらに大きな成長を遂げようとする際に、市場ドメインで取り得る規模が投資家の期待水準と少しズレてしまい、成長中にもかかわらずバリュエーションが折り合わなくなるケースをよく目にします。

投資家サイドが注目しているのは、「そもそもその市場のTAMは、そんなにあるのか?」といった部分であり、最も重要な前提となっています。「自社のニッチトップ領域は、これ以上伸びないのか?」といったことではないのです。これは、もう少し成長市場に挑戦してほしいという投資家からの裏返しのメッセージでもあると感じています。

また、成長戦略を大きくビジュアライズしたものを出せばいいわけではなく、細かいブレークダウンまできちんと説明できるかという点が、投資家にとっては非常に重要だと思います。

例えば、時価総額100億円に到達するためには、営業利益15億円程度を目指すかたちになるかと思います。その過程で、どのサービスやアイテムをどれくらい販売するのか、どのようにアップセルしていくのか、顧客数をどの程度拡大するのかなど、どのような作戦を取っていくのかを具体的に回答できるかどうかが鍵となります。

また、新規事業を行う場合、どこに参入してどれくらいのシェアを取れるのか、どのような競合他社があり、どのように差別化を図っていくのかということを、スパッと答えられるかも重要です。

そのために必要な人材やリソースをどれくらい確保し、どのような時間軸で取り組んでいくのかといった点を、ブレークダウンして実行していけるかどうかが重要です。一方で、人材不足などの課題も多く、そこまでやり切れていないという企業も多いように思います。そのため、この部分はかなり課題感があると感じています。

池田:本当におっしゃるとおりだと思います。この後のスライドに内容が集約されていると思いますが、今のお話がすべてを物語っているように感じます。

現在抱える課題①

池田:スライドの下から4つ目の項目が先ほどのお話に関連しており、自分たちも含めてこのように見ているという内容が記載されています。

ニッチトップのような状況になっている中で、そこからどのように進むかを明確に示せないと、やはり難しいという話です。この点について課題感を持っている企業も多くいらっしゃるのではないかと思います。

現在抱える課題②

池田:続いて、リソース不足に関する課題についてです。

CFOの方やそれを誰が描くのかも含めて、人材に関する課題感を持っている企業が多いかもしれません。また、M&Aを考えている企業では、推進するための人材が足りないといった話がよくあるように感じます。

さらに、スライド中央の右端に赤字で「多数」と記載がありますが、特に、IRの人員体制やノウハウが不足していること、他の業務と兼務している中で、いかにうまくIR活動を進めていくかが課題だという声を多くいただいています。

この点について、みなさまはいかがでしょうか?

後藤:確かに、兼務されている企業も多いですね。私自身も仕事柄、さまざまなIR担当者やCFOの方と接する機会が多いのですが、自身で投資経験がそれなりにある方と、教科書的に理解している方に分かれていると感じます。

マーケットは必ずしも理論どおりに動かず、毎日の動きが予測しづらいところがあります。しかし、投資家目線を持つことで、IRに対する解像度が上がりやすいのだと思います。

私もよく「他社はどんなことをしていますか?」「他社の良い事例を教えてください」などと聞かれますが、参考になる資料が多く出回っているため、それをヒントにするのはよいと思います。ただし、その会社の投資家に伝えるべきポイントと、自社が伝えるべきポイントは必ずしも一致するわけではありません。

KPIを単にブレークダウンすればよいというものではなく、そもそも投資家が何を求めているのかを追求していくと、より興味深い視点が得られると考えています。多くの情報を開示すればよいわけではなく、特にグロース市場で個人投資家が中心となっている企業の場合には、このような課題があると感じています。

プライム市場の企業であれば、ある程度業績を発表することで、アナリストのカバレッジがつき、機関投資家が1on1の取材に来てくれるため、それらを通じて投資家サイドの理解度を十分に深めることが可能です。

一方で、個人投資家が中心となるグロース市場や、時価総額がさほど高くない企業の場合、1on1の機会がほとんどなく、質問も「配当は出さないのですか?」など、鋭さに欠けることがあります。

個人投資家に対して、資料や説明会を通じてシャープに情報を伝えるためには、逆に言えば、投資家の目線に立つことだと思います。「今、この人たちは何を知りたいのだろう?」といったポイントを押さえることで、情報量を増やさなくても十分に伝わることもあると感じています。

これが、IRにおける人材不足の課題として現れているのではないかと思います。

現在抱える課題③

池田:個人投資家の話題が出ましたので、こちらのスライドをご覧ください。個人投資家へのアプローチを課題として挙げている企業も非常に多いです。

グロース企業からは、なかなか機関投資家と接点がないという話をうかがうことが多いですが、おそらく現在のステージでは、まず個人投資家を念頭に置いたIR対応を進めていくことが重要です。

機関投資家にもさまざまなタイプがいるため、比較的中小型株を注視している機関投資家から、よりラージキャップを見ている機関投資家へと焦点を当てるステージに移行していくと思います。ただし、最初から機関投資家を重視するよりも、まずは個人投資家にどうリーチするかを考えることが、現段階では必要な企業も多いのではないでしょうか。

NASDAQやグローバルなベンチャーマーケットと比較すると、日本のグロース市場は非常に早い段階、小規模な段階でも上場できるマーケットであることは間違いありません。ただし、機関投資家がその段階で株を買うかというと、それはまた別の問題です。ある程度の流動性がなければ、機関投資家が購入することは難しいのです。

したがって、最初は個人投資家を重視するという前提で取り組む必要があります。そのような意識を持った企業も、「個人投資家の方向けにどのように情報発信やIR活動をするのか」といった課題感を掲げている方が多いように感じます。

また、配当を出さない場合、投資家からの関心を得にくいという企業や、先行投資による短期的な赤字で株価が下がるという悩みを持つ企業も多いです。この点に関して補足やコメントをいただければと思いますので、次のスライドをご覧ください。

グロース上場企業に対する投資家の期待

池田:投資家がグロース上場企業に期待していることと、企業側からの見え方には少しギャップがあるという内容をまとめたスライドです。

スライドの左側にあるコメントは、ほとんどがCEOの方からいただいたものです。時価総額100億円という新基準を提示した後に、多くのグロース上場企業の方々と話す機会が増えました。その中で、「本当はこのように思っているが、どうすればよいか」といった話が多く挙がりました。

1番目に挙げたコメントは、「売上や利益は伸びているのですが、ぜんぜん株価に反映されない。どうすればよいか、なかなか難しい」といった内容で、先ほど後藤さんからいただいたコメントに関連している話だと思います。

2番目は「資金調達をしたいが、資金調達をすると希薄化して株価が下がってしまう」というもので、エクイティ・ストーリーの問題と関連しており、このあたりはけっこうギャップがあります。

3番目は「結局、株主還元や配当の話にならないと、目を向けてもらえない」という話です。しかし、グロース市場という成長ステージの企業をきちんと評価するために、少ないキャッシュの中で配当を行うことよりも、いかに成長投資に活用していくかが重要だと、投資家からは期待されています。

この点は、本日特にお伝えしなければならない重要な話だと考えています。

また、4番目の赤字の話も同様です。短期的に利益を出すことよりも、成長投資に重点を置くことが、グロース上場企業として評価されるポイントだということです。

事例6 キャンバス (1/4) 4575

池田:少し特殊な事例になりますが、キャンバスさまの事例を紹介します。

キャンバスさまはバイオベンチャーで、非常に難しいビジネスモデルを有しており、そもそも評価が難しい分野といえます。バイオベンチャーの多くは売上が立っていない企業が多く、キャンバスさまも例外ではありません。

自分たちのビジネスモデルを個人投資家のみなさまにどのように評価してもらえばよいのか、わかりやすくご説明されている事例です。

事例6 キャンバス (2/4) 4575

池田:こちらは現在の業績の進捗について記載されたスライドです。

「◯◯が何パーセント進みました」「薬の開発がどれぐらい進みました」というものが、将来を目指す中でどのような位置づけとなるのか、個人投資家にわかりやすく説明し、将来性をきちんと評価してもらう取り組みを継続していくことが重要です。

バイオベンチャーの場合、配当などはまったく関係のない事業構造であり、そもそも赤字が続くことが一般的です。それでも、個人投資家へしっかりと伝わるよう努力している企業もあるという事例です。ディープテック企業ですので、イメージしづらいかもしれませんが、そのような取り組みをしている企業は比較的多いです。

事例集にもいくつか掲載していますので、参考にしていただければ幸いです。長くなりましたが、この点についてはいかがでしょうか?

後藤:少しお話を戻して、配当に関してコメントします。

グロース上場企業だけでなくスタンダード上場企業でも、新しい企業の場合、みなさま非常に優秀なため、プライム市場の流れにやや引っ張られてしまうことがあります。「WACCがどうだ」「還元がどうだ」という議論になっているケースが、たまに見受けられるのです。

私個人としては、そこはやはり区別してもよいのではないかと思っています。グロース市場の企業では、そもそもネットキャッシュで保有している金額自体がまだ小さい会社も多いと思います。

現金が少ないと投資できる総量が限られ、施策として打てる手も小さくなってしまいます。その状態で大きく成長しようとしても、限界があるため厳しいところがあります。そうであれば、配当よりも、まず財務戦略としてどれくらいのキャッシュを確保するのかを考えてもよいと思います。そうすることで、初めて投資の話につながっていきます。

一方、プライム市場の場合、アセットがヘビーになってしまっていたり、現預金を非常に多く保有していたりするケースでは、還元についての議論が進みやすくなります。

いろいろな投資家がいますが、個人投資家だからといって、成長ステージの企業に対して配当を強く求めているかというと、すべての人がそうではないと思います。配当狙いで投資するのであれば、安定しており配当性向が高い会社のほうが魅力的であり、おそらく多くの方が買いたいと思うのではないでしょうか。

グロース上場企業に関しては、やはり少しボラティリティが高くなる部分があると思います。赤字に関しても同様ですが、感覚的に赤字は好ましくないため、投資を決断するには勇気が必要です。

ただし、短期的な利益にこだわるのではなく、中長期的な取り組みがしっかりと投資家に伝わるのであれば、むしろアンダーバリューと見なせるのではないでしょうか。

赤字によってバリュエーションが下がっている状況が回復するとの見通しが立つならば、今がエントリーポイントとして最高のタイミングとも言えます。そのような状況がわかれば、問題ないと思います。

あまりお行儀よくプライム市場の流れに引っ張られることなく、自社の財務戦略をどのように構築するのか、検討することが重要ではないかと思います。

富山:池田さんにお願いしたいことがあります。事業会社側が「このような対応をします」と示すことも必要ですが、「そもそもグロース市場とは、このようなコンセプトなのです」ということを、投資家に向けてもっと強く伝えていただきたいと思います。

池田:それは確かに取り組んでいかなければならないと考えています。「グロース市場は、還元などではなくて成長を優先するステージの企業が集まっているマーケットなのです」と東証が発信することで、投資家の見方も変わるかもしれません。

このようなご要望も多数いただいていると認識していますので、並行して進めていければと思います。

先ほどお話いただいたように、プライム市場とすべて同じようにすべきというわけではありませんが、プライム市場ではアロケーションなどを示していくことが増えてきています。グロース市場の企業でも同じことが当てはまると思いますので、今回のお話はそこにつながっているのではないでしょうか。

事例9 BuySell Technologies (1/5) 7685

池田:BuySell Technologiesさまの事例をスライドにまとめています。グロース上場企業でこのようなかたちで情報を公開している企業はそれほど多くないかもしれませんが、何にお金を使ったのかがわかるようになっています。

TAMなどを示し、どの領域を狙っているのかという点が比較的明確に示されています。

事例9 BuySell Technologies (2/5) 7685

池田:また、それを具体的にどのように進めていくか、KPIを含めて説明しています。

事例9 BuySell Technologies (3/5) 7685

池田:さらに、将来的にどれくらいの売上や利益を出していこうとしているのか、具体的に記載されています。

事例9 BuySell Technologies (4/5) 7685

池田:加えて、目標に向かって具体的には何にお金を使っていくかが記載されています。

余った場合は返せばよいとは思うのですが、先に配当を行ってから投資という話ではありません。ガバナンスコードでも同様の話をプライム市場の企業に向けてお伝えしています。

事例のように具体的に示し、それをわかりやすくすることは、先ほどの後藤さんのお話から考えても重要なポイントではないかと思います。

後藤:説明が納得できるものであれば、個人投資家も比較的受け入れていただけることが多いと思います。マーケットの性質上、短期的に株価が下がることも当然ありますが、赤字であっても戻ってくるケースもあります。

個人投資家の中には納得感を持って、「よく理解できたし、わかったから応援するよ」とおっしゃる方も多くいらっしゃると聞いています。そこまで恐れる必要はなく、逆に言えば、しっかりと考え抜くことが求められているのではないかと思います。

IRの重要性について社内理解が進まないという悩み

池田:本日の参加者はIRのご担当者が中心とおうかがいしています。

スライド下段の部分に関連して、IRの重要性について社内での理解が進まないことにより、人員を増やしてもらえないなどのお悩みを抱えている企業が多いという話をよく聞きます。この点について、なにかコメントはありますか?

富山:これは本当にどの会社もリソース不足の状況にあります。グロース市場の企業はそれほど多くありませんが、プライム市場やスタンダード市場の企業では、経営陣が依然としてIRに対して積極的ではないという課題が見受けられます。

本日、あらためて池田さんにお願いしたいのは、東証から経営陣に一定の外圧をかけるようなセミナーを積極的に実施していただきたいということです。

池田:経営陣が十分にリソースを割いてくれないという問題を肌感覚として感じているということですね。

後藤:これはなかなか難しい課題ではありますが、投資家との面談を積極的に活用しようという意思があれば、「その市場ドメインを投資家がどう見ているのか?」などと尋ねることも可能です。

「ここの市場環境をどのように思いますか?」と聞くと、実は投資家サイドは非常に詳しく調べている場合が多いです。機関投資家であればプロフェッショナルとして当然よく理解していますし、個人投資家についても意外に細部まで知っていることがあります。

オーディエンスの立場で素直に尋ねてみることも、有効な活用方法と言えるかもしれません。例えるなら、無料で優秀なコンサルタントに助言を求めている感覚があると言えます。1つの意見として、そのように意見を聞いてみるのも有効な手段ではないかと考えます。

事業成長しているのに、なぜか株価が上がらない

池田:続いて、非常に多くの悩みとして取り上げられる内容を記載しています。

スライドの中段あたりに記載がありますが、売上や利益がある程度成長しており、配当も実施しているものの、株価がそれに見合って上がらないという点が、特に多くの悩みとして挙げられていると思います。

さらに、事業自体は成長しているものの、株価が割安のまま放置されているというお話もあります。「IRなどは定期的に実施しているが、なかなか自分たちが満足いくような株価になっていない」といったお話は、特にグロース市場の企業から非常によくうかがいます。

この点について、後藤さんはどのようにお考えでしょうか? 

後藤:これも本当によくあるケースで、私自身も「こんなに良い会社が、こんなに低評価で放置されていて、どうなっているのかな?」と感じることも非常に多いです。

一方で、投資家の目線に立つと、買う理由が見当たらないといったこともあります。「良い会社であることはわかるが、何をもってこの会社を買えばよいのかは、いまいちよくわからない」というわけです。

業績が良くても、参加者がいない状態では、購入しても売ることができません。まずは流動性の問題を解決する必要があると考えます。

また、「投資家にずっと持っていてもらってうれしいですか?」という考え方があります。確かに、売買を促進することで流動性が生まれ、ロングホルダーが美徳として評価されるという側面もあります。しかし、株主総会で議決権に問題が生じないのであれば、どんどん売買してもらったほうがよいという考え方もあります。

みなさまIR担当者やCFOとして、心のうちで自分の会社についてしっかり考えてほしいのですが、「第何四半期の決算でエントリーして、第何四半期の決算でエグジットしたら、うちの株はリターンが取れそうか?」といったことは、みなさまならなんとなくわかるはずです。投資家はそれが一番気になっており、聞きたくても聞けないことなのです。

市場評価が追いついておらず、アンダーバリューとして評価されている場合、例えば「進捗は25パーセントと出ているが、実はこれはすごく強めに出ていて、第1四半期で25パーセントは、めちゃくちゃ強いです」という話があったとします。

誰も気づいていない中で、1人の投資家が「実はめちゃくちゃ強めに出ている」と気づいてしまうと、そのタイミングでエントリーするというのが投資家の思考です。このようなことがもう少し投資家に伝わるようになれば、1つの解決策として流動性の問題が改善されるでしょう。

また、マーケットはテーマを探しているため、個社のファンダメンタルズが非常に良い、あるいは悪いというだけでは買う理由にならないこともあります。したがって、マクロ政策や世界的な経済の流れの中で、「どこに自分の会社がリンクしているのか」といったテーマがもう少しナラティブにつながると、評価につながりやすいと思います。

これは業績とは関係ありませんが、全体のマーケットの流れにどのように自社を接続させるかは、IR担当者の腕にかかっている部分が大きいと感じています。解決策としてはこの2つの視点があるのではないかと思います。

個人投資家がフォローできる3、40社に入るために

富山:ログミーFinanceでは、事業会社側がどのような投資家にアプローチするか、個人投資家のターゲティングが重要だと考えています。

多くの方がイメージする個人投資家は、証券会社が保有しているデータベース上でボリュームゾーンとなる70代くらいの投資家かもしれません。しかし、そのような投資家にアプローチしても、おそらく購入には至らないでしょう。そのような投資家はリスクを取ることが難しく、株主優待や配当を重視する傾向があります。

一方で、最近では現役世代でリテラシーが高く、一定の運用資産を保有している投資家にアプローチすることが、株価に影響を与える鍵となると考えています。

打ち合わせを通じて強く感じるのは、アプローチがまったく足りていないということです。事業会社側では「やっている」と認識しているようですが、上場企業が3,800社もある中で、個人投資家のフォローリストに入る企業はせいぜい30社から40社程度です。

「個人投資家がフォローできる3、40社の中にどう入るか」という観点から見れば、露出が圧倒的に足りていないと感じます。この点は事業会社の感覚とギャップがあると思います。

池田:ご指摘はまさに的を射ていると感じます。上場企業はプライム市場に1,600社、スタンダード市場に1,600社、グロース市場に600社と分かれています。同程度の成長率である企業は目立つ活動を行わない限り、露出の多いプライム市場の企業に投資家が流れるのは現実だと思います。

また、一点付け加えたいのが、先ほど流動性について話がありましたが、これは個人投資家だけでなく機関投資家の目線でも重要なポイントです。流動性とは、マーケットでの売買代金という意味だけでなく、自社株の公開性という意味合いもあります。

グロース市場の企業は、上場時の基準比率が他マーケットに比べて低いため、オーナーが多くの株式を保有していても上場可能となっています。その状態が継続している場合が多く、結果として公開性が低いと見なされることが一般的です。

この点は機関投資家が株式を購入する際の重要な判断基準となり得ます。例えば、SpaceXなどいろいろな企業が種類株式を採用していますが、オーナーが強いリーダーシップを発揮して上場するスタートアップ企業に投資する投資家もたくさんいらっしゃいます。

しかし、それほど突出していない場合、機関投資家はなにか問題が起きた時に自らの意見が議決権を通じて経営に届くかどうかをリスクコントロールの観点から重視します。そうした観点からも、オーナーの持ち株比率が高い企業については注意が必要です。

さらに、TOPIXへの浮動株時価総額での組み込みについても言及したい点があります。今後、グロース市場の企業もTOPIXに含まれるようになりますが、浮動株時価総額の観点で評価されるため、時価総額が高くとも浮動株が少なければTOPIXに含まれない可能性があります。これもぜひ意識していただきたいポイントです。

後藤:確かに、株主構成を整理することは、自社の現状を把握する上で非常に興味深いと思います。

例えば、定義上は流動株に含まれていても、実際には関係者であるために売却されない株主もいるでしょう。そのような状況では、市場で流通する株式が少なくなり、取引板に十分な流動性が確保されない可能性があります。

1,000株ほど注文を入れようとすると、上下に広がった注文に食われてしまい、なかなか投資しづらい状況があります。100株単位でしか約定しなかったり、スプレッドが大きく広がってしまったりという場合もあり、いざ自分が投資しようとすると、かなり悩ましく思います。

そもそも、現在の自社の資本構成や株主構成を踏まえて、「正味どれぐらいの人たちで構成されているのか」ということを考えてみるのは興味深いかと思います。

これは一長一短で、成長を大いに期待していたり、株主優待が良いと思っていたりする株主は手放さないため、板がますます薄くなってしまうという特殊な状況が生まれます。悩ましいテーマではありますが、考え始めると非常におもしろいです。

株式分割のメリットとデメリットを冷静に考える

池田:少し話は変わりますが、企業によるとは思いますが、地味に存在するのが投資単位の話です。現在、最も投資単位が高い企業では、1単位を購入するのに1,000万円かかる企業があります。普通の個人投資家には購入できませんよね。

企業によるとはいえ、個人投資家が購入しやすいよう株式分割などを通じて買いやすい水準に調整するという話も、十分にあり得るのではないかと思います。

後藤:まさにその話をうかがいたいと思っていました。以前、最適な投資単位として5万円から50万円のレンジを提示されていましたが、最近その水準を下げましたよね。

池田:それは下げたというお話ではありません。「50万円ぐらい」というお話は、実はかなり以前からあるもので、50万円を意識して分割していた企業が多いのです。

最近は株価の変動が激しいですよね。この3年から4年で、2回実施した企業も見受けられますが、3,600社のうち延べ約760社の企業が分割を行ったというのは、非常に大きなことだと思います。

ただ、これだけ株価が上がっていると、実は高額の会社があまり変わっていなかったりするため、イタチごっこのような状況になっています。

50万円という水準は、以前実施した個人投資家へのアンケートに基づいて設定されたものです。しかし、一般の方々にとっては50万円でも簡単には手が届かない水準ですよね。したがって、実際には10万円ぐらいが最低だと意識していただけるとよいのではないかと思います。最近ではそのような企業が増えています。

後藤:ここは非常に悩ましい問題です。10万円という基準が示されましたが、株主数が増えすぎることで株主コストがかかる点があります。信託報酬など、さまざまなコストが増加してしまうという問題です。

そのため、「株主をたくさん増やすことがすごくよいことなのか」ということも課題となります。株主が増えること自体は歓迎されるべきことですが、それに伴って対応コストやオペレーションコストが増えます。

IRに携わる人材が不足している中で、株主の問い合わせが増えるなど、業務が煩雑化してしまうことも指摘されています。やはり「自分たちの会社にとって何が最適か」ということについて、検討する必要があると思います。

池田:おっしゃるとおりです。特に値がさ株の企業において、IRの方々から「分割はなかなか難しい」といったお話を聞くことが多いです。

もちろん、信託銀行にかかるコストが増えることなどもありますが、それ以上にIR部門の業務として増えるのが個人投資家の対応です。「高齢の個人投資家から電話がかかってきて何時間も説明することになるのであれば、機関投資家とのミーティングが1つできたはず」という状況になり、担当者にとって非常に苦しいという話も聞きます。この点もよく考慮するべきだと思っています。

後藤:簡単に答えが出る問題ではありませんが、メリットとデメリットを「自社だったらどうするべきか」を突き詰めて考えることが重要だと思います。「分割したら上がるぞ」「あの会社も分割しているぞ」といった単純な理由だけで行動するのは避けたほうがよいと感じています。

分割を検討するきっかけとして、社長やCFOの提案で「分割しましょうか」という流れになることもありますが、冷静にメリットとデメリットを考え、「自分たちの株主構成をどうしていくべきか」を検討することがとても大切だと思います。

結論を導くのは難しいですが、「平均売買代金はどれぐらいあるのか」「日々の出来高はどれぐらいあるのか」「どのパラメーターをいじると、どう変わっていくのか」などとしっかり考えることで、自社にとって最適な状態に近づけることは可能だと思います。

今後、スタンダード市場も上場維持基準が上がるのか?

池田:続いて、「スタンダード市場は今後どうなるのか?」という内容について補足します。

グロース市場の上場維持基準において、2030年から時価総額100億円以上と設定されています。ただし、その基準が達成できなかった場合には、スタンダード市場への変更が可能であるというルールが定められています。

一方で、「今後のスタンダード市場はどうなるのか」といったテーマは非常に注目度が高くなっています。特に多くいただくのは「スタンダード市場も上場維持基準が上がるのですか?」というご質問です。

また、スタンダード市場は、グロース市場と比べると「普通」というイメージが強く、その点について何かコンセプトを変えていくのかなどのご質問もいただくことがあります。

まず、「スタンダード市場における上場維持基準が今後引き上げられる予定があるのか」というご質問に関して、その予定は基本的にありません。

後藤:よかったです!

池田:それぞれの市場に良し悪しがあるとか、どちらが上か下かという話ではありません。基本的には、プライム市場がグローバルな投資家を意識したマーケット、グロース市場が高い成長を目指すマーケット、それらとは異なりベースとして存在するのがスタンダード市場です。

現時点で、この基準全体に関する変更事項があるかというと、そのような話はまったくありません。逆に言えば、スタンダード市場はその名のとおり標準的な市場であり、これ以上の特徴を付加することも基本的にないと思います。

また、スライド下段の「その他」に関連して、最近では時価総額の大きな企業の経営者の方々から「そのままグロース市場にいるべきなのか、プライム市場に移るべきなのか悩んでいる」などのご相談をよくいただきます。

マザーズがあった時代は、マザーズに上場した企業がいかに早く東証一部へ進むかが話題になっていました。しかし、それはナンセンスであり、現在ではプライム市場、スタンダード市場、グロース市場が並列で存在するマーケットになっています。

TOPIXについても、過去は東証一部上場企業でなければ組み入れられませんでしたが、現在ではグロース市場の企業も組み入れ対象となっています。

自社がグロース市場に適していると考えるのであれば、グロース市場に居続ければよいですし、逆にプライム市場の企業で「グロース株として見られたい」ということであれば、グロース市場に移ることをご提案しています。

このようにして、グロース市場のマーケットを活発化させていきたいと考えています。

ブランドの周知活動についても先ほどの話と関連しますが、「グロース市場は、配当や株主還元というよりも成長にフォーカスされたマーケットである」といった部分が不足していると感じています。その点を強調しながら、設計を進めていきたいと考えています。

後藤:私もスタンダード市場は最後に閉鎖されるのではないかと思っていましたので、安心しました。

「良し悪し」とは一概には言えないアクティビスト

富山:IR担当部署の設置など、昨年あらためて方針が出されたと思いますが、そのような意味では「スタンダード市場にいれば別に何もしなくてよい」ということではないと理解してよろしいでしょうか? 

池田:そのとおりです。「スタンダード市場にいれば別に何もしなくてよい」ということではまったくなく、むしろガバナンスコードが存在することもあり、少しステージや中身が変わるというイメージです。

後藤:スライドの「その他」に挙がっている中で、私が1点言及したいのがアクティビストの話です。近年、アクティビストの活動が非常に活発化しており、提案件数も増えています。

以前は、いわゆるプライム市場や時価総額1,000億円以上の企業が最初にターゲットとなっていました。現在もその傾向に大きな変化はありません。

しかし、アクティビストの提案件数が増え、活動が活発化しているため、彼らが目をつける「おいしい」企業へ順番に進出している状況です。そのため、最初のターゲットをある程度巡ると、時価総額帯が小さい企業にもどんどんアプローチしています。

企業側がアクティビストに堂々と説明できればよいとは思いますが、「どう考えるべきなのか」など注意が必要です。アクティビストは必ずしも悪いわけではありません。中にはよい提案をされている会社もあるため、必ずしも反対的な存在とはいえません。

キャッシュアロケーションやキャピタルアロケーションに関する話題に戻りますが、「そのアセットを使ってどうしたいのか」と、明確に説明できる準備をしておかないと、強く問い詰められる可能性があります。

さらに、アクティビスト側も非常に本気で取り組んでおり、予想以上に詳細に調査を行っています。例えば、社長の人物像やさまざまな情報を徹底的に調べているようです。そのため、IR担当者としては、このような状況にどう対処するか、株主構成やBSの構造などを精査し、どの部分が指摘を受けやすいかを常に把握しておくことが重要です。

「当社にも来るのか」と驚くようなケースが、以前よりも少し増えているという感覚があります。

池田:私の周りでも話題となっているのが、アクティビストの話です。非常に話題になっていますし、政府でもアクティビストへの対応を議論するプロジェクトチームのようなものが設けられています。

先ほどのお話と同様、我々もアクティビストを一括りに「良い・悪い」と捉えているわけではありません。マーケットや企業について深く調査・分析し、「こうすべきだ」といった話を真剣に考えているのも彼らだからです。

成長を目指すマーケットにおいて、これは必要なことです。もし、特定の企業が私物化され、取締役会が機能しない状況にある場合、外部からの圧力によってそれが是正されることもあり得ます。その中でアクティビストの力が必要とされる局面もあるでしょう。

そのため、「良し悪し」は一概には言えないものだと思います。

後藤:正していく際には必要な機能ということですね。

池田:おっしゃるとおりです。おそらく定義の問題だと考えています。その定義をした際に、「どこまであの人はアクティビストなのか」というだけの話かと思います。

実際、中には企業を乗っ取り、自らのために利用しようとするような投資家もいます。その場合は間違いなく悪い投資家に分類されるでしょう。しかし、それ以外にもさまざまなタイプのアクティビストやエンゲージメントを行う多種多様なファンドがあります。そのため、多角的な視点で見るべきだというのが、現在の一般的な考え方だと思います。

とはいえ、アクティビストが来ると大変です。「大変な時にどう準備しておけばよいか」といえば、先ほどのお話がすべてだと思います。「自社が何にお金を使おうとしていて、何にリソース使おうとしているのか」と、あらかじめ市場に提示しておかないと、アクティビストが来てしまいます。

プライム市場では頻繁に起きていることですので、「自分たちがどうしていきたいか」と、事前に市場へ説明しておくことが最も重要だというお話は、すごく同意できます。

後藤:ありがとうございます。IR担当者やCFO、あるいは社長がアクティビストの動向を深く把握することは、なかなか難しいのではないかと思います。

そのような時には、池田さんのような方や、私たちのようなところにご相談いただければと思います。私自身はこのような領域をよく研究しており、「どこのアクティビストが何を狙っているのか」「どのような傾向があるのか」といったケースもすべて研究しています。ぜひ外部をうまく活用していただき、社内のリソース不足を少しでも補っていただければと思います。

最後に一言

後藤:そろそろお時間となりました。最後に一言ずついただいて終わりにしようかと思いますが、池田さんからお願いできますか?

池田:最初の話に戻りますが、昨年、時価総額100億円以上という話を出した際、いろいろな企業が課題感をお持ちであると感じました。

本日はご紹介できなかったのですが、成長戦略はなかなか難しいテーマですし、IRのリソース不足という課題も難しいかもしれませんが、機関投資家との接点に関する話などであれば、私どもがお役に立てる余地はあるかと思います。

また、個人投資家へのアプローチについて、「あの企業のこのような資料が見たい」というお話があれば、資料を作ることも可能です。先ほどお話したように、関係者のみなさまを集めて、さまざまな意見交換や話し合いをしていきたいと考えています。

ぜひ「こんなサポートが欲しい」「このような材料があると社内で経営者を説得しやすい」など、忌憚なくお知らせください。いただいたお話は、多くの方に共通するものだと思いますので、いろいろなかたちでサポートしていければと考えています。

後藤:それでは、富山さんお願いします。

富山:中盤でも申し上げましたが、時価総額100億円以下の企業のIR担当者が特に悩んでいることは、経営陣をどれだけ本気にさせるかに尽きると思います。そのためには外部の声を代弁して経営者にしっかりと伝える必要があるのではないかと感じています。

東証の力もお借りし、経営陣をIR強化の方向に説得できるようなかたちで、引き続きサポートをお願いしたいと思います。本日はありがとうございました。

後藤:最後に私から一言申し上げます。本日はグロース市場のみなさまを中心に、アンケート結果に基づいてディスカッションを行ってきました。アンケートを通じて多くのご意見をうかがいながら、みなさまのお役に立てるよう活動を続けていますので、ぜひ積極的にコミュニケーションを取っていければと思います。

東証はもちろん、投資家のみなさまともより深く知り合い、共に盛り上げていけるよう努めていきますので、引き続きよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。

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