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Kudan株式会社4425

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※当記事は速報版です。スライド情報は割愛している他、数値などに誤りが含まれる可能性がございます。正確な情報は決算短信・決算説明資料などの正式な開示資料、または追って公開予定の確定版記事にてご確認ください。

2026年3月期決算説明

項大雨(以下、項):Kudan代表の項です。2026年3月期通期決算についてご説明いたします。

本プレゼンでは、業績説明だけではなく、
・「フィジカルAI」という大きな潮流の中で、Kudanがどのようなポジションを取ろうとしているのか
・どのように収益性改善や中長期成長につながると考えているのか
についてもお話ししたいと思います。

フィジカルAI時代の空間知覚プラットフォーム

:まず最初に、Kudanが今、どこを目指しているのか、全体像からご説明します。

現在、AI市場は大きな転換点に入っています。これまでのAIは、文章・画像・コードなどを扱う「身体性のないAI」が中心でした。例えば、生成AIが文章を書いたり、画像を作ったり、業務を効率化する世界です。

一方で、今後急速に拡大すると考えているのが、「身体性のあるフィジカルAI」です。つまり、AIが実際に現実世界の中で、空間を理解し、行動し、継続学習し、自律的に作業する世界です。

ここで重要になるのが、Kudanが取り組む「空間知覚」です。私たちはこれを「機械の眼」と表現しています。人間で言えば、目が見えなければ、歩くことも、物を運ぶことも、環境を理解することもできません。フィジカルAIにとっても同じで、現実空間の中に存在するためにはまず「空間を理解する能力」が必要になります。

Kudanは、この空間知覚をコアに、デジタルツイン、移動ロボットを応用先とした技術提供を行っており、そして今は単なる要素技術の企業ではなく、フィジカルAI時代の空間知覚プラットフォーム企業へ進化しようとしているフェーズです。

Kudanはこの数年間で、技術実績の蓄積、ソフトウェア(以下、SW)からハードウェア(以下、HW)やソリューションへの技術領域の拡大をすすめ、前期である26年3月期にはフィジカルAI市場の勃興を背景に、売上成長を実現しました。

そして今期である27年3月期は、収益最適化により赤字縮小を進め、来期以降には高い収益性を伴う事業成長を目指していきます。

業績サマリー

:それでは、業績サマリーについてご説明します。

まず前期、26年3月期の振り返りです。通期業績は、売上・利益ともに業績予想を上回って着地しました。

売上は12億円となり、前年の5.2億円から約2.3倍に拡大しています。背景としては、これまで進めてきた技術領域の拡張や市場開拓が成果として現れ始めたことに加え、フィジカルAI市場の立ち上がりに伴う案件拡大が寄与しています。

営業利益については、前年差で2.1億円改善し、マイナス5.9億円となりました。特に、売上成長による利益改善効果は大きく、営業利益改善の中心的な要因となっています。

次に、今期27年3月期の見通しです。今期は、「量」よりも「質」を重視する転換期と位置付けています。具体的には、高粗利のソフトウェア事業への集中を進め、収益性改善を加速させていきます。

その結果として、売上は一時的に小幅減収となる見込みです。これは、より利益率の高いソフトウェア中心の事業構造へ移行する過程で発生する、一過性の変動と考えています。

一方で、「質の向上」によって、営業利益はむしろ大きく改善する見込みで、営業赤字は、前期のマイナス5.9億円から、今期はマイナス3.4億円まで縮小する計画です。このうち、ソフトウェア集中による改善効果だけでも約3.5億円を見込んでいます。

そして、一連の業績の流れをまとめますと、前々期までは、技術領域の拡張や市場開拓を優先し、売上成長を重視するフェーズでしたが、その結果、前期は売上を大きく伸ばし、フィジカルAI市場の立ち上がりを捉えることができました。

そして今期は、その成長を単なる売上拡大に留めず、収益性の高い事業構造へ転換するフェーズになります。売上規模だけでなく、利益率や継続性を重視した形へ、事業ポートフォリオを最適化していきます。

当社としては、この転換によって、来期以降はより高い収益性を伴った売上成長、そして黒字化を実現していけると考えています。

つまり今期は、短期的な売上最大化ではなく、フィジカルAI時代に向けた持続的かつ高収益な成長基盤を整備する重要な1年と位置付けています。

業績概要

:続いて、前期26年3月期の業績の詳細です。まず全体として、技術・事業領域の拡大に加え、フィジカルAI市場の本格化を背景に、通期では売上成長と赤字縮小が進捗しました。

特に、当社が注力している高粗利のソフトウェア領域への事業集中を進める中で、関連するハードウェア売上の前倒し計上も発生し、上方修正後の業績予想をさらに上回る着地となっています。

具体的には、売上高は11億9,700万円となり、前々期の5億1,700万円から大きく拡大しました。期初予想7億円に対しても大きく上振れし、上方修正後の11億円予想に対しても約9%上回る結果となっています。

この背景には、デジタルツイン向けのソフトウェア・ハードウェア案件の拡大や、政府案件など大型案件の寄与があります。また、ソフトウェア事業への集中を進める中で、関連するハードウェア販売を戦略的に前倒ししたことも、売上押し上げ要因となりました。

次に利益面です。営業利益はマイナス5億8,600万円となりましたが、前々期のマイナス8億円から大きく改善しています。上方修正後予想のマイナス6億8,000万円に対しても、さらに赤字幅を縮小しました。

改善要因としては、大きく2点あります。1つ目は、売上成長による利益増加です。売上拡大によって、約2.8億円の利益改善効果がありました。

2つ目は、固定費の最適化です。研究開発や事業体制を維持しつつも、コスト構造の見直しを進め、固定費を一定程度抑制しています。

また、経常利益・純利益については、為替差益の影響もあり、大幅に改善しています。下段の「調整後営業利益」については、欧州におけるR&D補助金収入を加味した、事業収益性をより実態に近い形で示す指標です。こちらも、前々期のマイナス7億5,300万円から、前期はマイナス5億2,800万円まで改善しています。

業績伸長の背景(1/2)

:続いて、前期における業績伸長の背景についてご説明します。まず大きなポイントとして、当社は単にSLAM単体を提供する会社から、フィジカルAI時代に必要となる空間知覚のプラットフォームへ進化を進めています。そのために、ソフトウェアとハードウェアの両面で補完技術を強化し、技術領域と事業領域を拡大して収益機会を広げてきました。

まず上段、SW技術の拡張です。従来、当社の中心技術は、SLAMに代表される直感的な空間認識技術でした。一方で近年は、それに加えて「機械の脳」に相当するAI領域も拡張しています。単に空間を認識するだけでなく、その情報をもとに学習し、判断し、行動につなげる技術領域へ広げています。その結果、右側にあるように、空間知覚技術群を各要素が相互連携する形で拡張しています。

既存領域であるLocalization and Mapping、つまり自己位置推定と地図生成に加え、新たに、空間の意味を理解する、ロボットが移動経路を計画する、現実世界を高精細に再現するといった領域を拡充して進化しています。これにより、フィジカルAI向けの技術群として、提供価値が大きく広がっています。

次に下段、HWパッケージの活用です。当社はソフトウェア企業ですが、事業展開においては、社外ハードウェアとの連携も積極的に活用しています。まず、組込みHWパッケージでは、センサやプロセッサを統合した開発向け製品を提供しています。従来は主に開発用途でしたが、現在は実運用向けのUIやパッケージ提供まで拡張しています。

また、補完HWパッケージでは、自社ソフトウェアと互換性を持つ他社ハードウェアも取り込みながら、エコシステムを広げています。ここで重要なのは、HW自体の販売拡大だけではなく、HWを「呼び水」として使いながら、最終的には高収益なソフトウェアや継続利用へ展開していく構造です。つまり、入口としてHWを活用しながら、最終的には高収益なソフトウェアやソリューションへ展開していく構造です。

まとめますと、前期は単なる案件増加ではなく、フィジカルAI時代に向けて、空間知覚技術群を多層化し、HWとSWを組み合わせた事業構造を強化したことが、売上成長と事業拡大の背景となっています。

業績伸長の背景(2/2)

:続いて、業績伸長の背景の2点目として、市場環境の変化についてご説明します。ここでのポイントは、技術需要の次世代シフトが進む中で、当社の方向性と市場ニーズが合致し始めている点です。

まず現在、「デジタルツイン」と「移動ロボット」の領域で大きな変化が起きています。デジタルツインでは、フォトリアル技術やAI活用が進み、単なる3D表示ではなく、現実空間を高精度に理解・解析する用途へ拡大しています。加えて、センサやスキャナの低価格化も進み、実用化が加速しています。

移動ロボット領域では、フィジカルAIの発展により、ロボットが現実世界で自律的に行動する時代へ進み始めています。特に脚型・人型ロボットの進化に伴い、それを支える高度な空間認識やナビゲーション技術の重要性が高まっています。

こうした市場環境においては、当社の先進性と希少性が強みとなって需要を獲得しやすくなっています。先進性については、当社はフォトリアル技術、AI活用、高度ロボティクスなど、次世代領域に早期から取り組んできました。

また希少性についても、SW・HW・ソリューションを一貫提供でき、さらにデジタルツインとロボットを横断して技術展開できる点に技術的な相互作用が高く、価値が発揮できます。

つまり当社は、空間を理解し、デジタル化し、ロボットを動かす、という一連の流れを統合的に扱える点が強みです。前期の業績伸長は、こうした市場構造の変化と、当社の技術ポジションが噛み合い始めたことが背景にあります。

業績伸長の詳細

:こうした背景による前期の売上成長の詳細についてご説明します。前期は、デジタルツインとロボットの双方で、売上が多角的に伸長しました。

当社はHWパッケージの活用とSW技術の拡張を進め、それをデジタルツインと移動ロボットの事業成長につなげました。

デジタルツインでは、スキャナ機器などのHWパッケージに加え、設備管理向けソリューションであるKudan PRISMの提供が進みました。この領域では、短期的な収益を確保しながら、SW・HW・ソリューションを組み合わせた多層的な成長が進んでいます。

一方、移動ロボットでは、政府案件や建設大手との取り組みを通じて、ロボット開発を牽引しました。こちらは短期的な売上だけでなく、中長期の競争力や開発体制の強化にもつながる取り組みです。

売上成長の内訳としては、デジタルツイン領域の成長が大きく寄与し、さらに移動ロボット領域の成長も上乗せされました。一方で、過去案件の凍結・停止によるマイナス影響もありましたが、それを上回る成長を実現しています。

まとめますと、前期の売上成長は、一過性の単発要因だけではなく、デジタルツインでの短期収益確保と、移動ロボットでの中長期競争力強化が同時に進んだ結果です。この成長を今期以降の高収益なソフトウェア中心の事業構造へつなげていきます。

コスト構造の改善

:また前期は、売上成長だけでなく、コスト構造改善が進んだことで、収益性改善も大きく前進した1年となりました。

当社は前々期、フィジカルAIに向けた新技術領域への拡張を進めるため、開発体制を大きく強化しました。その結果、一時的に固定コストは増加し、年間換算では約9.7億円から11.7億円まで拡大しています。

ただし、これは将来成長に向けた戦略的投資であり、特に新規技術へ対応するためのケイパビリティ強化が中心でした。

そして前期は、その拡張フェーズを経て、コスト最適化を通期で実行しました。具体的には、組織最適化による固定費削減、非コア技術領域の凍結や外注化による開発費最適化を進めた結果、固定コストを年間換算で約9.5億円まで削減しています。

前々期から前期の流れで重要なのは、単純なコストカット増減ではなく、成長に向けた戦略的な構造変革である点です。

つまり、前期は将来競争力に直結するコア技術への投資は維持しながら、優先順位の低い領域を整理し、より効率的な開発体制へ移行しました。そのため、今期以降は、過渡的な構造改革フェーズを終え、収益性と成長のバランスを取りながら、持続可能な開発体制の維持・強化へ移行していきます。

今期の成長戦略

:それでは、今期27年3月期の成長戦略についてご説明します。今期は、前期までの方針を継続・発展させながら、「高粗利SWへの集中」と「フィジカルAI向けデータ技術の提供」を新たに加えた三つの方針を推進します。

まずAの高粗利SWへの集中です。これまで当社は、HWパッケージを活用しながら市場開拓を進めてきました。今後は、そのHW販売を「呼び水」として活用しつつ、より収益性の高いソフトウェア販売へ注力していきます。つまり、入口としてHWを提供しながら、最終的には継続性・粗利率の高いSW収益を最大化していく方針です。

次にBのSW技術・ソリューション拡大です。これは前期からの継続です。ロボットとデジタルツインの両領域において、引き続き技術開発と事業拡大を進めます。特に、空間知覚・ナビゲーション・フォトリアル技術など、当社のコア技術群を活用しながら、ソリューションとしての提供範囲を広げていきます。

そして今期の新たな取り組みが、Cの「フィジカルAI向けデータ技術の提供」です。フィジカルAIでは、ロボットが現実世界で学習・行動するために、大量の空間行動データが必要になります。当社は、ロボットとデジタルツインの両領域を持つ強みを活かし、その交差領域でデータ構築技術を提供していきます。

これは単なるデータ販売ではなく、ロボットから現実データを取得し、デジタルツイン上で拡張・検証し、AI学習へ活用するという、フィジカルAI時代の基盤技術として位置付けています。

業績予想詳細

:今期27年3月期の業績予想についてご説明します。今期のポイントは、低粗利のハードウェア売上から、高粗利のソフトウェア売上への転換が本格的に進む点です。

その結果、売上高は前期比で一時的に減少する見込みですが、収益性は大きく改善し、赤字縮小はむしろ加速する計画です。具体的には、売上高は10億3,000万円を見込んでいます。前期の11億9,700万円からは減収となりますが、これは主にハードウェア売上の減少によるものです。

一方で、ソフトウェア売上は引き続き成長を見込んでおり、前年差では約3.6億円の増加を想定しています。つまり、売上構成そのものが、より利益率の高い形へ転換していくイメージです。 利益面では、この構造転換の効果が大きく現れます。

営業利益は、前期のマイナス5億8,600万円から、今期はマイナス3億4,000万円まで改善する計画です。これは約2.5億円の赤字縮小となります。特に、SW集中による利益改善効果だけで約3.5億円を見込んでいます。一方で、将来成長に向けた研究開発投資などは継続・拡大する方針であり、その影響として固定費は約8,000万円増加する想定です。

つまり今期は、単純なコスト削減による利益改善ではなく、将来投資を継続しながら、事業構造そのものを高収益化していくフェーズになります。

今期は売上規模よりも収益性改善を優先する転換期であり、HW主体からSW主体へ移行することで、来期以降は、より収益性の高い売上成長と黒字化につなげていきます。

高粗利SWへの集中

:今期の戦略方針を一つずつ説明します。1つ目は「高粗利SWへの集中」についてです。当社は、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせながら事業展開していますが、中長期では、コアとなるソフトウェア技術の普及を前提とした収益最大化を目指しています。

そのため、ハードウェア単独で利益を追うというより、市場開拓や導入促進の"呼び水"として活用し、その先の高粗利なソフトウェア収益につなげる戦略を取っています。

これまでの事業フェーズでは、まずソフトウェアの有効性を市場実績として証明し、その後HWパッケージを活用した市場開拓を進めてきました。その結果、26年3月期はHW売上比率が高まり、粗利におけるSW比率は56%まで低下しました。

ただし、これは戦略的な過渡期の動きです。今期27年3月期からは、先行して拡大したHW案件を、より継続性・収益性の高いSW収益へ転換していくフェーズとなります。その結果、粗利におけるSW比率は、今期89%まで大きく改善する見込みです。

さらに来期以降は、90%以上の水準を維持しながら、ソフトウェア中心の継続収益モデルへ移行していく計画です。

つまり今期は、単なる売上拡大ではなく、事業構造そのものを高収益型へ転換する重要なタイミングと位置付けています。

こうした戦略方針による、今期の売上見通しの影響について、もう少し詳しくご説明します。

まずポイントとして、今期に想定していた一部のHWパッケージ売上が、SW集中戦略の実行に伴い、前期へ前倒しで計上されています。具体的には、今期からSW集中による利益改善への移行を前期から計画しており、その前提では、今期売上は微増となる約11.3億円規模を想定していました。

一方、実際の進捗では、前期末にSW集中戦略を前倒しで実行したことで、関連するHW販売の一部が26年3月期へ前倒し計上され、その影響が約9,700万円分あります。結果として、前期売上は計画以上に伸長した一方、今期売上はその反動影響を受け、10.3億円の計画となっています。

したがって、これは事業悪化ではなく、売上計上タイミングの変動による一過性の影響であり、重要なのは、SW集中による収益構造改善がすでに前倒しで進んでいる点です。今期はその構造転換をさらに進め、来期以降は、より収益性の高い売上成長と黒字化につなげていく考えです。

SW技術・ソリューションの拡大 ー デジタルツイン

:つづいて、二つ目の戦略方針であるSW技術・ソリューション拡大のうち、まずデジタルツイン領域についてご説明します。当社は、デジタルツインソリューションである「Kudan PRISM」を中心に、継続的な顧客基盤と収益の拡大を進めています。

PRISMは、設備管理の生産性向上を目的としたソリューションで、従来課題であったデータ精度や運用実用性の問題を解決できる点に特徴があります。特に、左下のイメージにあるように、現実空間を高精度に3D化し、人間の代わりに空間内でさまざまな知能タスクを実行できる点が、フィジカルAI時代における強みになります。

前期の成果としては、まず顧客基盤については、顧客数が前年比で約200%増加しました。また、展開国数も3カ国まで拡大し、製造・物流・建設・インフラ・エネルギー・設備管理など、多様な業界へ導入が進んでいます。

さらに、PoCや効果検証段階から、実運用フェーズへ進む案件が増加しています。その結果、SW基盤での継続収益モデルが確立し、27年3月期への継続率は100%となっています。

加えて、最新の市場ニーズに対応する先進機能を実装し、SW・HW・ソリューションを組み合わせた包括的な技術提供体制も強化しています。

そして今期の計画としては、顧客数をさらに約150%拡大し、展開国数も10カ国規模へ広げていく計画です。また、不動産・通信・公共分野など、新たな業界への展開も進めていきます。

さらに重要なのは、単なる導入拡大だけではなく、実運用による継続収益の拡大を目指している点です。加えて、今期から推進する3つ目の戦略方針である「フィジカルAI向けデータ技術提供」とも連携し、将来的にはロボット領域への展開も強化していきます。

すなわちPRISMは、単なるデジタルツイン製品だけではなく、今後のフィジカルAI向けデータ基盤へつながる重要なポジションを担っていると考えています。

SW技術・ソリューションの拡大 ー デジタルツイン(PRISM詳細)

:このKudan PRISMの特徴についてご紹介します。まずPRISMの背景として、設備管理やインフラ点検、防災分野は、社会的需要が高い一方で、従来技術では実運用に課題がありました。 従来は3D点群データが中心でしたが、AI精度の限界、データ容量の大きさ、システム連携の難しさなどから、現場での活用が限定的でした。

それに対してKudan PRISMでは、人間の知覚と同等の空間表現、セマンティック3D認識などの現実理解AI、データ連携の効率化等を組み合わせることで、現実空間をAIが理解・活用しやすい形へ変換しています。

そして、現在は、施設・設備管理、インフラ点検保守、スマートシティ・災害対応、など幅広い産業DXに展開しています。特に、従来DX化が難しかった現場業務に対して、自動化・効率化・遠隔化を実現できる点が強みです。

加えて、労働力不足や老朽インフラ、防災需要の拡大も追い風となっており、今後さらに需要拡大を見込んでいます。

SW技術・ソリューションの拡大 ー 移動ロボット

:続いて、移動ロボット領域についてもご説明します。当社は前期から、ロボット向け自律移動の基盤技術を強化しており、今期も継続的に売上・案件規模を拡大しています。

背景として、これまでロボットの自律移動は数理的手法が中心でしたが、一方で現在は、AIモデルを活用したフィジカルAI型のアプローチが急速に発展しています。当社は、このフィジカルAIモデルの導入を先行して進めており、将来的には、数理手法による安定性とAIモデルによる汎用性を組み合わせ両立させた、ハイブリッド型へ進化していく考えです。

前期の成果として、まず技術面では、コアSWから技術群へ拡張し、ロボット向け自律移動の基盤技術提供を開始しました。案件面では、政府案件を中心に、自律移動SW基盤開発を主導しています。また、建設業界なども含め、移動ロボット実用化に向けた事業連携も進展しています。 加えて、高精度・高速・安定性を持つ独自アルゴリズムと、補完技術を最適に統合することで、競争優位性も強化しています。

今期の計画においては、知覚データ主導の基盤技術、つまりフィジカルAIモデルの提供を本格的に開始します。移動ロボット領域では、世界的にもかなり先行した取り組みになると考えています。

また、売上規模についても前年比で約100%増加を見込んでおり、政府案件など大型案件の継続・拡大を想定しています。

さらに、3つ目の戦略方針である「フィジカルAI向けデータ技術提供」とも連携し、デジタルツイン活用を含めた独自優位性を強化していきます。つまり当社はSLAM提供から、フィジカルAI時代のロボット知能基盤へ進化しようとしている段階にあります。

SW技術・ソリューションの拡大 ー 移動ロボット(市場背景)

:移動ロボット市場の背景についてもう少し詳しくご説明します。まずポイントとして、移動ロボット市場そのものは非常に巨大であり、今後も大きな成長が見込まれています。一方で、実用化に向けた技術課題はまだ多く、そこに対する需要が高まっています。

左上にある通り、従来技術で実用化できる領域は、全体の3〜5%程度に限られていましたが、これは今まで比較的単純な環境を前提とした技術が中心だったためです。

しかし実際の市場では、右下にあるように、より複雑な環境への対応が求められています。例えば、頻繁に環境が変化する倉庫や工場、屋内外が混在する空間、建設現場のような複雑な立体構造、人や移動物が多い環境、特徴の少ない長い通路、広大なオープンスペースなどです。

こうした環境では、従来型のロボット技術だけでは安定運用が難しく、次世代の環境認識やフィジカルAI技術が必要になります。

そのため、2040年には約300兆円規模へ成長すると見込まれる移動ロボット市場の多くは、こうした高度技術を必要とする領域になると考えています。

その中で当社は、SLAMをはじめとする空間知覚技術をグローバルで商用化してきた実績があり、複雑環境向けの移動ロボット分野でも優位性を保てると考えています。つまり当社は、単純環境向けロボットではなく、「本当に難しい現場」で使われる次世代ロボット市場をターゲットにしている、という点が特徴です。

SW技術・ソリューションの拡大 ー 移動ロボット(既存案件詳細)

:移動ロボット領域における既存の政府案件についてご説明します。本案件は、経産省や建設業界大手が推進するロボット向けSW開発事業であり、当社は開発リーダーとして参画しています。

日本では深刻な労働力不足を背景に、政府と産業界がフィジカルAI・ロボット施策を強化していますが、特に建設現場のような難易度の高い環境では、自律移動技術の高度化が不可欠になっています。

本プロジェクトは、建設現場を起点とした「建設RXコンソーシアム」を中心に、業界横断で推進されています。当社は、これまでの技術実績を評価され、ロボット自律移動のコアとなるソフトウェア基盤開発という、中核的技術リーダーとして推進を担当しております。

この技術は建設分野だけでなく、将来的には物流・製造・インフラ管理など、より幅広い産業への展開も期待されています。

これは単なる個別案件以上に、日本における移動ロボット・フィジカルAI基盤技術の社会実装を進めるポジションと考えており、今後も政府との継続的な連携を通じて、大型政策や産業基盤整備とも連動していく可能性があります。

つまり当社は、単なるロボットベンダーではなく、日本のフィジカルAI・ロボット産業基盤を支えるコア技術プレイヤーとしてのポジションを強化している段階にあります。

フィジカルAI向けデータ技術の提供

:つづいて、今期戦略方針の3つ目として、新たな取り組みである「フィジカルAI向けデータ技術の提供」についてご説明します。

従来のAIは、文章・画像・コードなど、デジタル空間上のデータを扱い、「考える知能」が中心でした。一方、フィジカルAIは、ロボットのように現実空間で行動するAIです。そのためには、空間や位置、人や物体の動きなど、現実世界に関する大量のデータが必要になります。

つまり、フィジカルAIでは、「どれだけ現実空間データを構築できるか」が競争力に直結します。そこで当社が提供するのが、空間知覚を活用したデータ技術です。

具体的には
・ロボット自律移動によるデータ取得の自動化
・デジタルツインとロボットを融合したデータ品質検証
・デジタルツイン活用によるデータ拡張
などを通じて、フィジカルAI向けデータ基盤を構築していきます。

ここで重要なのは、当社が「ロボット」と「デジタルツイン」の両方を持っている点です。ロボットから現実データを取得し、デジタルツイン上で再現・検証・拡張することで、より高品質で大規模な学習データを生成できるようになります。

つまり、データ技術は、ロボット技術とデジタルツイン技術の交差領域にある、新たな事業領域と位置付けています。

また、こうしたフィジカルAI向けデータ市場は、2035年には約20兆円規模へ成長する可能性があると考えています。

当社としては、この領域で一貫した技術提供を行うことで、フィジカルAI時代における競争優位性と長期収益性を強化していきます。

案件一覧(一部抜粋)

:現在進行中の案件例を一部ご紹介します。デジタルツインとロボットの双方で、複数市場かつグローバルで横断的に技術展開している点が特徴です。

また、デジタルツインを中心に実運用を前提とした案件が増加しており、単なるPoCではなく、商用サービス化や基幹システム連携など、本格導入フェーズ(サービス)へ進む案件も増えています。

幅広い案件で得られる知見やデータが相互に技術強化へつながり、フィジカルAI時代に向けた競争優位性の蓄積につながっていると考えています。

中長期の成長イメージ

:最後に、中長期の成長イメージについてご説明します。

当社はこれまで、SLAMを中心としたコア技術提供を軸に、技術実績と顧客基盤を積み上げてきました。その結果、21/3期から26/3期まで、売上は年平均で約57%成長しています。

そして現在は、そのコア技術をベースに、SWソリューション、HWパッケージへと事業領域を拡大しており、特に短期的には、デジタルツイン事業の拡大や、ロボット案件の大型化を進めながら、多角的な売上成長と収益性改善を重視しています。

その一環として、今期は高粗利SWへの集中を進めており、一時的に売上は減少するものの、粗利改善によって赤字縮小を加速させる計画です。

そして中長期では、フィジカルAI市場そのものの本格拡大に合わせて、商用技術の普及とSW販売拡大による高収益成長を目指しています。

特に今後は、ロボットの知能化、自律移動、デジタルツイン、空間データ活用など、ソフトウェア比率の高い市場が拡大していくと考えています。

その中で当社は、空間知覚を中核に、ロボット・デジタルツイン・データ技術を横断して展開できることを強みとして、フィジカルAI時代の基盤技術企業として成長を目指していきます。

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