円安メリット銘柄8選、海外売上比率7割超から9割の業績押し上げ期待株【前編】
円安環境が追い風に、海外売上比率の高い8銘柄を紹介
「円安メリット」は定番とも言える投資テーマですが、仕組みをきちんと押さえておかないと「なんとなく輸出企業が良さそう」で終わってしまいます。ここでは、為替と日本株の関係を整理した上で円安局面で注目すべき企業の傾向を解説し、最後に具体的な銘柄を紹介します。
高市政権で円安は続く?
ドル円相場は、2020年前後の1ドル100円台前半から、2022年には一時150円台と約30年ぶりの歴史的な円安となりました。その後も米国の高金利と日本銀行の緩和継続が意識され、2024年には160円台をつける場面もありました。2025年12月時点でも1ドル150円台後半と、依然として円安圏にあります。足元ではこうした円安局面が輸出関連株の業績・株価を支え、日経平均やTOPIXの過去最高値更新に寄与していると指摘されています。
2025年10月には高市内閣が発足し、「責任ある積極財政」の名のもとで財政出動と賃上げを通じた名目成長率の引き上げを掲げていますが、その裏側では国債増発への警戒から長期金利や為替のボラティリティが高まりやすい局面にあります。日米金利差と政策期待がドル円の中期トレンドを左右することを踏まえると、現時点では金融緩和と積極財政の組み合わせが意識されやすく、総じて円安が続きやすい環境だと考えられます。
円安が株価の追い風になる3つの理由
円安は主に3つのルートを通じて株価への追い風となります。ひとつは、海外で稼いだ売上や利益を円に直すときの影響です。たとえば企業が通期計画を1ドル120円で組んでいたところ、実際には1ドル150円で着地した場合、ドル建て売上が同じでも円換算では約25パーセント増え、営業利益やEPSの上振れ要因になります。
加えて、円安は海外市場での価格競争力も高めます。現地通貨建ての販売価格を引き下げても、円に戻したときの利益を維持しやすくなるため、受注拡大やシェア拡大につながりやすくなります。
さらに、外貨建ての資産や設備を多く保有している企業では、円安によってそれらの評価額が押し上げられ、バランスシート上の評価差益というかたちで企業価値が高まる場合もあります。
円安メリットを受けやすい企業の特徴
このため円安の恩恵を受けやすいのは、海外売上比率が高く、コストの相当部分を国内・円建てで負担している製造業やインフラ関連企業です。自動車・電機・機械・化学・素材といった輸出型製造業、世界展開している建設機械やプラント関連、高付加価値の半導体材料・製造装置などが典型例として挙げられます。
加えて、外貨建ての資産や貸付を多く保有する金融機関なども、評価差益の面では円安メリットを受けやすいケースがあります。
一方で、海外売上比率が高くても、生産も海外・外貨建てで行っている企業では「現地通貨で売って現地通貨でコストを払う」構造となり、円安の効果は限定的になります。円安メリット銘柄を検討する際には、「どこで売上を上げ、どこでコストを払っているのか」というビジネスモデルを分解して見ることが重要です。
円安メリットを享受できる8つの銘柄
ここからは、足元の業績押し上げ効果が出やすい企業や、中期的に円安メリットが拡大すると期待される企業など、8銘柄について事業の概要と為替との関係を整理します。
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執筆者プロフィール
執筆:西田哲郎ライター・コンテンツディレクター。投資歴15年。『神の手』の某社で大きな損失を出したことをきっかけにイナゴを卒業、ビジネスモデルとファンダメンタルズ重視の手法に切り替える。業界紙やスタートアップを経てフリーで投資情報メディアやM&A情報サイトの立ち上げに関わり、現在は主に週刊誌で投資や経済関連の記事を執筆。
※記事内容、企業情報は2025年12月5日時点の情報です。
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