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アニコム ホールディングス株式会社8715

東証プライム

保険業

1.全体像:保険1.0 → 2.0 → 3.0

荒井沙織氏(以下、荒井):みなさま、こんにちは。これより、保険、医療、フードなどを通じて動物の一生を支えるインフラカンパニーであるアニコム ホールディングス株式会社について、小森社長にお話をうかがいます。小森社長、よろしくお願いします。

小森伸昭氏(以下、小森):アニコム ホールディングス株式会社代表取締役の小森です。よろしくお願いします。

従来の保険は、いわゆる保険金支払いに終始していました。私たちはそれを「保険1.0」と呼んでいますが、保険金支払いを受けてうれしい人はいません。なぜなら、それは病気や怪我をした証拠だからです。

私たちはより予防に通じる「保険2.0」、後ほどお話しする「保険3.0」を目指し、新たな保険会社になりたいと考えています。

荒井:それでは、さっそくうかがいます。まずは、創業からこれまでの25年間について教えてください。

小森:当社は創業25年を迎えました。もともと私自身が保険という業態に非常に興味を持っていました。人間はすべてのリスクに対して個人ではなかなか抗しがたいものですが、そのリスクを全員で協力してカバーするのが保険です。

少し大げさな表現になるかもしれませんが、人間同士が助け合い、個人では乗り越えられない困難を支える存在が保険だと思っています。しかし、その保険も保険金の支払いに責任を負っていないところがあります。

例えば「本当はスピードを出してはいけないところでスピードを出してしまった」「本当はタバコを吸い続けていてはいけないのに吸ってしまった」という場合にも保険金が支払われます。これにより、国民の社会的な免疫がメルトダウンしている状況があるのです。

一見すると保険が安心を提供しているように見えますが、保険会社が保険金を支払ってしまうことで「不摂生な暮らしをしていても、スピードを出し過ぎても、保険に入っていればいいか」という状況を引き起こし、結果として保険が不安をあおっている側面があります。

そこで「入って健康になるような予防型の保険を作りたい」という思いから、25年前に当社の事業をスタートしました。

本当は初めから自動車保険や国民基幹的な種目の保険に取り組みたかったのですが、保険業界は資本ヘビーな産業であるため、そのような大きな種目から始めることはできませんでした。

私自身、動物が大好きなこともあり「そういえばペットに保険がなかったな」「ペットの分野から本当にあるべき姿の保険を作りたいな」とふと思い至り、以来この分野で25年間努力を重ねてきました。

そこから見てきたのは、思った以上にワンちゃんやネコちゃんの病気が多い状況でした。特にがんにかかるケースが多く、それをどうにか予防しなければという思いを持つようになりました。

荒井:先ほど「予防」というワードも出てきましたが、この25年間で取り組んでこられた「保険1.0」「保険2.0」「保険3.0」について教えてください。

小森:もともと保険は、なんらかの原因で病気や怪我をした際、その治療のための医療費をカバーするために弁済的に保険金が支払われる仕組みです。これがいわゆる「保険1.0」にあたります。

ただし、実際にはお客さまである飼い主のみなさまが「うちの子が病気になって、保険金がもらえてうれしい」と思う状況にはなりません。

その代わりに「あの保険会社の保険に入ると、がんや病気にならずに済んだ」と免疫を高めて予防につなげていくことが、正しい保険の在り方であり、本当の価値です。これが次世代の「保険2.0」だと考えています。

一方で、先ほどもお伝えしたとおり、私たちはワンちゃんやネコちゃんが病気にかかるケースが確かに多い状況も見てきました。免疫を高めて予防策を講じたとしても、すべての病気や怪我を予防することは不可能です。

万が一病気や怪我を防ぎきれなかった場合に必要とされるのは、より安全で、場合によっては痛みや後遺症が少なく、成功確率の高い手術や治療だと思います。そこで保険会社がより医療と一体になり、医療自体をサポートしていくものが「保険3.0」だと考えています。

1.実績~経済的給付を主とした保険1.0~

小森:私たちは創業から右肩上がりに売上高を伸ばし、それに伴い利益も積み上げてきました。順調な25年間を過ごせたと考えています。

私たちは約10年前にペット保険事業で一定の成功を収めましたが、その後、日本中のほぼすべての生命保険や損害保険の会社がこの市場に参入してきました。「ペット保険は競合が多い」と言われる状況があるものの、当社だけがこの25年間、安定的な経営を継続しています。

1.実績~経済的給付を主とした保険1.0~

小森:実はそれには2つの秘密があります。1つ目の秘密についてお話しする前に、荒井さんは保険募集における「セカンダリー・チャネル」や「プライマリー・チャネル」という言葉を聞いたことはありますか? 

荒井:なんとなく聞いたことはあります。

小森:例えば、自動車保険では免許を取ったばかりの場合はプライマリー・チャネル、つまり初めてのチャネルになります。そして、車を買い替える時がセカンダリー・チャネルです。

初めて免許を取得したタイミング、そして車を買い替えるタイミングで、「自動車保険に入りませんか?」と自動車保険を販売するチャンスが2回生まれます。

一方、ペットは途中で買い替えることがありませんので、プライマリー・チャネルはワンちゃんやネコちゃんとペットショップやブリーダーを介して出会った時のことを指します。

セカンダリー・チャネルは、例えば動物病院で健康診断を受けた時や、健康に少し不安が出てきた場合などを指します。「うちの子は10歳になったから、そろそろ老後に向けて何か考えないといけない」といったタイミングもセカンダリー・チャネルに該当します。

それでは自動車保険の場合、保険会社としてどちらのほうが利益は出ると思いますか? 

荒井:保険会社としてはセカンダリー・チャネルでしょうか? 

小森:おっしゃるとおりです。セカンダリー・チャネルのほうが圧倒的に利益は出ます。

荒井:それでは、ペット保険はその逆なのでしょうか?

小森:そのとおりです。

1.実績~経済的給付を主とした保険1.0~

小森:今お話ししたような構造の違いを理解していなければ、ペット保険を安定運用することはできません。

自動車保険の場合、免許を取得したばかりの頃は事故を起こすことが多いのですが、徐々に事故が少なくなり、少しよい車に乗り換えようかという段階になると、セカンダリー・チャネルのほうが保険収支は良くなります。

一方で、ペット保険の場合は、セカンダリー・チャネルの時期になると、すでに「うちの子は5歳になったから」「10歳になったから」、もしくは「最近ちょっと下痢をしがちだから」といった状況が出てきます。つまり、セカンダリー・チャネルのほうが病気は濃縮されている傾向があるのです。

荒井:必要性が生じた段階で保険を探しているのですね。

小森:おっしゃるとおりです。したがって、ペット保険において安定的に収支を確保しようとする場合、ワンちゃんやネコちゃんをペットショップやブリーダーから迎えた瞬間が重要です。

そのためにはペットショップやブリーダーに受け入れられなければなりませんが、そこで彼らが何を最も必要としているかを理解する必要があります。

それが何かというと、ペットショップやブリーダーは裏に在庫を抱えていることが多いのですが、その子たちが病気や怪我をしてしまうと商売になりません。彼らはその在庫に対する医療を必要としています。

昔はペットショップやブリーダーが獣医師を雇わず、「自分で切ってしまおう」「自分で薬を投与してしまおう」と獣医師法違反的な行為が横行していました。しかし最近ではコンプライアンスが厳しくなり、獣医師がきちんと治療を行わなければならない状況になっています。これは当たり前のことです。

1.実績~経済的給付を主とした保険1.0~

小森:これが2つ目の秘密に関連しています。小さなペットショップやブリーダーでは、獣医師を安定的に雇用することは非常に難しい現状があります。そのため、結果的に保険金不正といった問題も実際に発生しています。

例えば、みなさまが里帰りの際などにワンちゃんを動物病院に預ける場合、ホテルとして利用すると自費負担になってしまいます。そこで「この子が病気だったことにして」「入院したことにして」とすることで保険が使えてしまうのです。

自動車保険の場合、不正が発覚すると警察沙汰になりますが、ペット保険の場合は金額が小さいこともあり「まあいいか」と見過ごされがちです。その結果、不正の頻度や回数で言えばペット保険のほうが多い可能性があります。

その不正をしっかりと洗い出していかなければ、正直者が馬鹿を見ます。不正保険金をしっかりと査定し、不正であると証明するために、当社はもともと獣医師を多く社内に抱えていました。

私たちはその獣医師の専門性を活用し、ペットショップやブリーダーが必要としていた、在庫のワンちゃんやネコちゃんの診療を行っています。このように、医療と保険の相乗効果によって保険収益を安定的に確保しています。

他のペット保険会社では、獣医師を十分に雇用していませんので、ペットショップやブリーダーが必要としている医療を提供できず、ペットショップやブリーダーといったプライマリー・チャネルに十分に参入することができなかったのです。

プライマリー・チャネルに参入できなければ収支は悪化します。私たちが25年間にわたりペット保険でNo.1を維持できた理由は、このような部分にあるのではないかと考えています。

保険事業にとどまらず、獣医師を雇用することで保険不正を抑制しながら、ペットショップやブリーダーが必要とする医療を安定的に供給することが、私たちのペット保険での成功の秘訣でした。

荒井:飼い主とペットが出会う前の段階から関わっているからこその、御社の強みなのですね。

1.実績~経済的給付を主とした保険1.0~

小森:実はワンちゃんやネコちゃんはペットショップやブリーダーのもとに行く前から努力を重ねています。昔、足が動かなくなって車椅子に乗っているワンちゃんをたくさん見かけたことはありませんでしたか?

荒井:見たことがあります。

小森:最近は減ったと思いませんか?

荒井:見たことはありますが、確かに以前よりも減っていますよね。少し珍しい子だからこそ、SNSなどでみんなが応援しているような印象があります。

小森:「笑う犬」と言われるほど非常に笑顔がきれいで、お尻もまるでプリプリ笑っているようなウェルシュ・コーギーという犬種をご存じですか?

荒井:まるで食パンのようだと話題になりますよね。

小森:この犬種には残念ながら変性性脊髄症という重篤な遺伝病が多く見られます。高齢になるにつれて脊髄の神経が膠着し、後ろ脚が動かなくなって車椅子を必要とするワンちゃんが昔は多くいたのです。

しかし現在では、この病気はブリーダーが遺伝子検査をして、その結果を基に掛け合わせを避けることで防ぐことができるとわかっています。私たちはこの25年間、日本中のブリーダーにそれを伝え続けてきました。その結果、最近ではほとんどこのような掛け合わせは行われていません。

ようやく日本でウェルシュ・コーギーの変性性脊髄症をほぼ根絶することができました。この成果がお客さまや飼い主のみなさま、同じ業界で動物を愛する方々に伝わり、ブランドの形成につながったと考えています。

荒井:目に見えないところでも、御社は活躍されているのですね。

2.今後の課題(短期的)~入って健康になる保険2.0~

小森:スライドの表をご覧ください。ワンちゃんやネコちゃんには非常にがんが多いことがわかります。「がんは病気であって病気ではない」というお話をご存じですか? 

荒井:初めて聞きました。

小森:一般的に病気は「自分ではないもの」「他者」として捉えられがちです。しかし、がんは自分自身の細胞が暴走することで起こるため、どこまでいっても自分の細胞である点が特徴です。つまり、病気であると同時に、自分自身の暴走でもあるということです。

生まれた瞬間、赤ちゃんの時からがん細胞は体内に存在していますが、若い頃は免疫がそれを見つけて退治しているため、がんは発症しません。その後、加齢とともに免疫機能が低下することでがんが発症することが多くなります。

そのため、がんは通常高齢期に発症する病気とされています。運悪く若い頃にがんになる子もいますが、ワンちゃんやネコちゃんの診察日当日の保険金請求事由の状況を見ると、がんが最も多いことがわかります。

本来であれば、若い頃には加齢に関連する病気で死亡することは少ないのですが、がんが原因で若くして亡くなるケースがあります。

さらに興味深いことに、嘔吐や下痢も上位に入っています。若くして嘔吐や下痢で亡くなるのは衝撃的ですよね。

荒井:イメージが湧きません。「ちょっとした体調不良」のような印象があります。

小森:これらの謎が25年間で徐々に解明されてきたのです。初めはまったくわからないままでした。人間、イルカ、ゾウ、キリンなど、多細胞生物は若くしてがんになりにくいとされています。もちろん偶然や運悪く発症することはありますが、生物群としての全体的な確率は非常に低いのです。

しかし、ワンちゃんやネコちゃんは、なぜか若くしてがんになるケースが多いのです。先ほどもお話ししたように、がんは病気であって病気ではないとも言えます。先ほどもお話ししたように、がん細胞はそもそも0歳、つまり赤ちゃんの頃から体内に存在しているのです。

荒井:誰もが持っているのですね。

小森:したがって、ある意味では、がん細胞は常にどこかに存在しているわけです。ただし、それを免疫細胞が常に排除しているため、がんを発症しないのです。

では、なぜがんになるのかというと、なんらかの理由で免疫が低下し、がん細胞を排除できなくなったために発症します。そのため、「がんになった」というよりも「免疫が低下した」と表現する方が医学的に適切だと言えます。要するに、若くして免疫が低下しているということです。

ところで免疫の低下はどこで一番起こると思いますか? 

荒井:やはりお腹などでしょうか? 

小森:そのとおりです。免疫とは、自分自身を健康に保ち、自分が自分でいられるために働く機能です。自分以外のものが侵入してきた際に「あっち行け」、もしも入ってきた場合には「食べちゃうぞ」と反応します。実は、免疫は消化吸収と密接に結びついているのです。

お腹の中は免疫の塊であり、食べてはいけないものに対しては下痢や嘔吐などの反応を起こし、反対に食べても問題のないものに対してはそれらを自分の一部にしてしまいます。つまり、相手を排除しながら消化を行う仕組みになっています。

したがって、免疫反応が最も顕著に現れるのはお腹であり、免疫の要だとも言えます。ワンちゃんやネコちゃんが若くして免疫の低下によるがんを発症しやすいこと、嘔吐や下痢によって命を落としていることから、つまりワンちゃんやネコちゃんには免疫低下のリスクがあるということです。

私たちがこの25年で得た発見は、医学的には解明されていないものの、ワンちゃんやネコちゃんはあれほど大事にされているにもかかわらず、人間と比べて発症に十分な免疫低下が起きているために、若くしてがんになったり、通常では命に関わらないはずのお腹の不調で亡くなったりしていることでした。

そこで次に浮かぶ疑問は「免疫低下の観点から、人間の暮らしとワンちゃんやネコちゃんの暮らしでは、何が違うのか?」ということです。ここに関しても私たちには推論があり、それが「保険2.0」にもつながっています。

荒井:人間の場合、やはりストレスや疲労が影響しているように思いますが、ワンちゃんやネコちゃんは、基本的にはかわいがられていることが多いはずですので、ストレスは少ないのではないでしょうか? 食事でも、むしろ人間よりも良いものを与えられている場合もあると思います。 

小森:今指摘された点は非常に重要です。我々人間がなんらかの重篤な病気になる原因として、最も多いのは過度な飲酒、喫煙、ストレス、偏食といった「何かのしすぎ」が挙げられるといわれています。

しかし、ワンちゃんやネコちゃんの場合はそのような要因がありません。私はミーアキャットという特殊な動物を飼っていたのですが、彼らが酒を飲んだりタバコを吸ったりするところなどは見たことがありません。基本的には3食の総合栄養食、適度な運動、冷暖房完備、昼寝付きの環境で過ごしています。

荒井:非常に大切にされていますよね。

小森:そのように考えると、病気の原因が見当たりません。免疫が低下する理由が思い当たらないのです。ではいったい何が免疫低下の原因なのでしょうか? 人間の暮らしといったい何が違っているのでしょうか? 

2.今後の課題(短期的)~入って健康になる保険2.0~

小森:ここで先ほど触れた免疫がまた登場します。結局、免疫は自分そのものなのです。人間の身体は食べたものや飲んだものによって出来上がっており、免疫も同様に食べたものや飲んだもので形成されています。つまり、免疫低下は、食べたものが悪いとしか考えられません。

荒井:動物にとっても、やはり食事は大切なのですね。

小森:おっしゃるとおり、動物も医食同源で、食べたもので出来上がっています。

そこで、人間とワンちゃんやネコちゃんで何が違うかといえば、人間は毎日さまざまな食べ物を選びますが、ワンちゃんやネコちゃんは毎日カリカリ、今日も明日もずっとカリカリを食べています。これが問題なのです。

2025年は大阪大学の坂口先生が免疫に関わる制御性T細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を共同受賞されましたが、免疫には栄養とカロリーだけでは不十分であることがわかっています。栄養とカロリーは骨や肉や血など、体の物質的な部分を作りますが、免疫という多様な敵に対応するシステムは構築していません。

このような事実が、ワンちゃんやネコちゃんの食事にも重要であることが明らかになってきており、それが「保険2.0」につながっています。

ワンちゃんやネコちゃんは、ブリーダーのもとにいる時から離乳食として、カリカリフードをふやかしたものを食べています。そして、ペットショップに着くと「この子はブリーダーのところでもこのフードを食べてきたから」と同じものを与えられます。

そしてお客さまに販売する際にも「ペットショップでこのフードを食べていたからまたこれを食べさせてくださいね」と同じものが提供されます。

つまり、ワンちゃんやネコちゃんをかわいがりすぎた結果、問題が生じたのです。「かわいい子には旅をさせよ」ということわざがあるように、毎日少しずつ異なるものを食べさせることが免疫のバージョンアップにつながります。

荒井:これまで大切だと思って取り組んでいたことが、免疫力を低下させる原因だったのですね。

小森:そこで私たちは「保険2.0」として、毎日少し異なるフードを食べさせる取り組みを展開しています。

また、それ以外に原因となっていたのが、歯磨きです。今のフードはドライタイプのカリカリフードなどがありますが、これらが唾液に触れると粘土状になります。歯と歯肉の間には隙間、いわゆる歯周ポケットが必ずあり、そこに食べかすが入り込んでしまい、歯磨きをしないと歯周病になる恐れがあります。

まさかワンちゃんやネコちゃんが歯周病になるなどとは多くの方が思っていなかったため、十分な口腔ケアが行われていない状況がありました。

実は、歯周病菌は非常に問題です。かつては口腔内だけの病気とされていましたが、現在では人間の場合でもアルツハイマー病の原因の1つとして注目されています。さらに、大腸がんやお腹の中のがんも歯周病が原因の1つだと考えられています。歯周病は「お口の中のばい菌」に留まらず、全身に影響を及ぼすものなのです。

特にワンちゃんやネコちゃんの歯は磨かれることが少なかったことから、お腹の免疫も弱っている上に口からばい菌が入る、二重の要因で病気のリスクがさらに高まります。

「保険2.0」ではワンちゃんやネコちゃんの口腔ケアをしっかり行い、さらに毎日多様なフードを食べさせることで免疫を強化することを目指しています。

荒井:お腹のコンディションを整え、歯周病のケアをすることで、健康寿命が大幅に延びる可能性がありますね。

小森:従来、ワンちゃんやネコちゃんの寿命は10年ほどでしたが、現在では20年、さらには30年と長生きするようになっています。これからさらに寿命が延びていくことでしょう。

3.今後の課題(中長期的) ~より痛み・後遺症が少なく、成功率の高い手術等 保険3.0~

小森:先ほどおっしゃっていただいたように、食べ物の改善や口腔ケアで病気が減り、長生きもできます。しかし、長生きするとやはり老化に伴う病気は避けられません。すると難病が増えていき、その結果として高度な医療が必要となります。

高度医療は一般的に高額な医療となります。そこで想定されるのは「お金がないから治療を受けられない」という状況です。それは最悪の状況だと言えるのではないでしょうか?

荒井:飼い主にとっても、それは非常に辛いことだと思います。

小森:保険会社としても「何のための保険なのか?」という話になります。高度医療が進むにつれてコストが高額化すると、保険会社自身が立ち行かなくなる可能性もあるのです。そこで、長期的に見ると保険会社が持続的に機能するためには「保険の保険」を作る必要があります。

人間にも言えることですが次第に長寿化が進み、それに伴い医療が高度化・高額化します。その結果、人間向けの保険会社でさえ経営破綻に陥る可能性があります。

では、高度医療の高額化は当たり前のことなのでしょうか? 医療が難しくなる要因がそこにありますが、さまざまな産業はこのような難題をどのように乗り越えてきたのでしょうか? 農業、漁業、林業などの産業は、ある施策を実施することによって、このような難問を乗り越えてきたのです。

荒井:道具を変え、次の段階へと自動化を進めていくのではないでしょうか?

小森:そのとおりです。どの産業においても高額化する理由は、人手が不足しており、人が働いている部分が多かったからです。

すべての産業が発展した理由は、肉体労働の機械化にあります。機械が導入されると、電気で動かすモーター化が進み、さらに電子化が進んで、最近ではAI化まで至っています。

3.今後の課題(中長期的) ~より痛み・後遺症が少なく、成功率の高い手術等 保険3.0~

小森:ところで、みなさまの頭上を飛んでいる飛行機は、どの程度が自動運転だと思いますか? 

荒井:半分くらいでしょうか? 

小森:実は、すでに90パーセント以上が自動運転になっています。(※飛行中に自動操縦が広く活用されている実態を説明した趣旨であり、具体的な使用割合を示す公式統計に基づくものではありません。)

荒井:そんなに高いのですか? 

小森:ほとんどが自動運転となっているのです。ここで何が言いたいのかというと、手術中の風景では、特に機械を使った手術の場合、スライドの図のようにコックピットに座って操作を行います。この動作は、飛行機を操縦する動作とほぼ同じです。

飛行機は300人の命を守りながら飛んでいますが、手術ではある意味1人の命、または1頭の命を守ることになります。手術の自動化は、実は技術的にはすでに実現できています。

すべての産業は、肉体労働の機械化によって人々を豊かにしてきました。そして、機械化は電子化やAI化へと進化し、それによってすべての産業がさらに成長しています。

その中で、最も遅れているのはおそらく医療分野における手術だと思います。遅れている理由の1つとして、法律や規制の存在があります。「もしも自動化した手術でミスが起きたら、誰が責任取るんだ」といったルールが影響しているとも考えられます。

「もしも飛行機の自動運転でミスが起きたら、誰が責任を取るのか?」という問いと同じことですよね。しかし、技術的にはすでに可能になっています。

わずかなミスが全員の命に関わるという点は、飛行機も医療も共通しています。責任問題についても共通する部分があります。したがって、医療分野における機械化や手術の自動化も十分にあり得るのです。

しかし、人間を対象とした手術の自動化には、これまでほとんど進展がありませんでした。そこで、まず動物を対象に始めようというのが、第二期創業期における1つのチャレンジです。

2.高度動物医療「JARVIS Tokyo」について

荒井:今お話があった、第二期創業の象徴とも言える高度動物医療「JARVIS Tokyo」について教えてください。

小森:先ほど、ワンちゃんやネコちゃんに病気が多い理由として、免疫低下が挙げられるとご説明しました。免疫はワンちゃんやネコちゃんの場合でも、食事やお口のケアである程度守ることが可能です。ただし、それですべての病気を防ぐことはできません。

そのため、最悪の事態に備え、より安心できる保険と医療が一体となったような仕組みが必要です。

本来、保険とは経済的な給付だけでなくてもよいのです。例えば、おうちがなくなったらおうちを提供する、車がぶつかったら修理を提供する、病気になったら病気を治療するなど、現物給付でも十分です。

現状ではいちいちお金を支払うのが常識となっていますが、より安心できるかたちで医療そのものを提供することが保険の役割でもよいのではないかと考えています。

荒井:確かに、お金を受け取るよりも、問題を解決してもらうほうがうれしいですね。

小森:そこで、第二期創業では保険会社がより主体的に動き、問題を完結できる仕組みを目指しています。医療保険では、痛みが少なく、後遺症が少なく、安全な医療そのものを提供する体制の構築を目指しています。

特にみなさまが最も不安に思うのは、やはり手術ではないでしょうか。手術がどこで行われているのかわからない、痛みを伴うかもしれない、場合によっては命の危険もあるかもしれないなど、さまざまな不安があるかと思います。

それに対し、保険会社の情報力を活用して、より「見える化」を進め、隠さずにできるだけ痛みが少なく、成功率が高い手術を提供しようとする取り組みが「JARVIS Tokyo」です。

このような意味では、世界初の試みと言えます。手術室の様子を全面的に公開し、手術成績を透明化し、できるだけ痛みや後遺症を軽減し、成功率を高める領域をAIの力と特許で守る仕組みです。

荒井:資料でご覧いただいている病院も、大きく、きれいで立派ですね。

小森:これは8階建てのビルですが、現在使用しているのは1階と2階部分です。需要に応じて最終的にはビル1棟丸ごと、8フロアすべてを動物病院にするのもよいと思っています。

アメリカには非常に大きく有名で歴史的な病院があります。ビル1棟で成り立つ、まさに世界最大の病院です。そこから着想を得て、日本でもそのような取り組みができればと始めたものです。

荒井:写真にあるガラス張りの施設は手術室ですか? 

小森:手術室です。これまで手術は誰にも見えないところで行われ、何をされているのかわからない状況でした。これ自体が不安を招き、見えないことによって医療従事者の気が緩んでしまう要因にもなります。全員に見られていると、やはりがんばりますよね。

また、医療機器も相当進化しており、昔よりも失敗する手術は減っています。そもそも失敗しそうな手術は行わないという医療の標準化も進みつつありますので、「見える手術」が新しい医療として注目されています。

今は何事も「見える化」や「オープン化」が重要とされる時代です。当然、医療では必ずミスが起こります。しかし、それを隠さないことが重要です。

特にペット医療だからこそ実現できる部分もあるかもしれませんが、手術をオープンにすることで多くの可能性が広がり、結果的に全員の医療技術も向上します。そのような取り組みを行っています。

2.高度動物医療「JARVIS Tokyo」について

小森:おかげさまで大規模な設備投資を行うことができ、重荷も背負いましたが、順調に推移しています。2025年10月の開業以来、2ヶ月と2週間で年商5億円を超えましたので、スタート地点としては大成功と言ってよいと思います。

このまま進めば、東京や関東近郊の高度医療の需要を一定程度集めることができますので、売上高でおよそ50億円を達成できる見込みです。50億円程度に達することで損益分岐点を超えることになります。

高度医療は、装置産業としての性質が非常に強いために、損益分岐点を超えるのはなかなか難しいのですが、一度超えるとそこからの限界利益は非常に高くなります。そのため、投資価値的にもIRRで30パーセントとなり、当社の従来の投資効率よりも良い結果を得られる見込みです。

第一期創業期では、企業のブランド作りや病気の根底に関わる取り組みを行っていましたが、「とりあえず保険金を支払えばよい」と保険金支払いに対する責任を負っていませんでした。

「本当に手術が必要か?」「その治療が効果的か?」といった点までしっかりと関与してこなかった部分を、高度医療を自ら行うことにより、医療の進化にも寄与しています。

高度医療の高額化により、経済的に厳しい人々が医療を受けられないという不安がありましたが、保険会社としてAIを活用した新たな医療を提供することで、新しい価値を見出すことができたと考えています。

アニコムグループと動物医療の未来について

荒井:最後に、アニコムグループと動物医療の未来について、小森社長が大切にしていきたい思いをお聞かせください。

小森:これまでの我々の世界は非常に人間中心だったと感じています。しかし、実際には世界中で技術が進歩し、戦争が起きている中でもペットを飼う人々がいるというのはすばらしいことだと思いませんか?

荒井:確かにおっしゃるとおりです。

小森:例えば、ウクライナから日本に避難される方の中には、ペットと一緒に避難できないのであれば、ウクライナに残りそこで命を落とすと言う方もいらっしゃいます。戦争の状況下でもペットが愛され、高く評価されている状況を見て、私はなぜそのような状況になっているのだろうかと考えました。

世の中が便利になるにつれて人は1人でも生きていけるようになりましたが、その結果、人はとても孤独になりました。その孤独を解消したのが、実はペットでした。

彼らは命の大切さや優しさ、あるいは人を許すことの重要性を教えてくれる存在です。人間はペットがいることで、何か我慢できないことがあってもイライラせず許すことができるなど、さまざまな多様なものがあってがんばれるようになります。

しかし、そのようなペットたちは人間よりも先に逝ってしまう存在です。最近、私はペットたちのことを「心の発電所」だと考えています。

人間の愛情は少しばかり打算的ではないでしょうか? しかしワンちゃんやネコちゃんは「ずっと待っています、飼い主さんのことを信じています」と言わんばかりに、人間に本当の愛を教えてくれているように思います。ペットが持つ無償の愛によって私たち人間は心からがんばることができるのです。

ペットは「心の発電所」のような精神的な支えであり、その存在が世界の平和を作っています。誰が偉い、人間がすごいということではなく、生きとし生けるものはみな共通で、全員で支え合っています。私たちはペット保険の普及を通じて、そのように全員が許し合い、尊敬し合う社会に変えていきたいと考えています。

ペットたちの存在により、人間は心の発電所に気付かされ、心が少し軽くなります。そして、戦争がいけないことであること、そして許すことの重要さに気づかされます。私たちはそのようなペット業界を作っていきたいと考えています。

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