【QAあり】フィンテック グローバル、事業承継M&Aを中心に事業展開し増収増益 地域に必要な投資銀行として成長を加速
本日のご説明内容

玉井信光氏(以下、玉井):フィンテック グローバル代表取締役社長の玉井です。本日はよろしくお願いします。さっそくですが、当社についてお話ししたいと思います。
今日お話しする内容については、目次のとおりです。まず、会社概要と本年度までの業績について、主に投資銀行事業を中心にお話しします。その後、当期第32期の業績見通しについてご説明し、最後に株主還元などについてお話しします。
FGIの事業

会社概要です。当社の業務は、投資銀行業務、投資業務、投資運用業務の3つを主軸としています。非常に多くの個人投資家のみなさまから「投資銀行とは何か」というご質問をいただくため、まずは、実際に何を行っているのかについて、具体的にお話しさせていただいたほうがよいかと思います。
投資銀行業務

前後しますが、こちらのスライドで具体的にご説明します。投資銀行業務については、証券業の一部と考える人もいれば、銀行と証券の中間の業務であると見る人もおり、さまざまです。基本的には金融業の1つとして、資金面で困っている方々やお金が原因でプロジェクトがうまく進まない状況に対して支援を行い、目的達成を目指す仕事です。
1番の鶴岡のプロジェクトを具体例として挙げると、鶴岡市は庄内平野の中心に位置する中核都市の1つであり、駅前にはバスターミナルがあります。そのバスターミナルが耐震補強を必要としており、ターミナル内にはホテルや結婚式場など、地域にとって非常に重要な施設が含まれています。
しかし、この補修には数十億円の費用がかかるため、庄内で最も大きな会社が、唯一の地方銀行である庄内銀行から資金を借りて補修を行う場合、その会社にとっては非常に大きなリスクとなります。
そこで、私たちのような会社が関与し、所有権をSPC(特別目的会社)に移し、資金を調達する方法を提案します。この際、銀行も資金を貸し出し、また「エクイティ」と呼ばれる出資金については、地元のみなさまから資金を集めるかたちをとります。
関係者が応分にリスクを共有しながらクローズしていくことをもって、成立したプロジェクトです。
3番の長岡のプロジェクトについては、長岡市の駅前で大規模な開発が行われたものです。こちらは長岡市役所からご依頼いただいた仕事ですが、市役所としては何十億円もの資金を出すのが難しく、さらに所有することによる将来的なメンテナンス費用など、後世に負担を残すことを避けたいとの意向がありました。
そのため、まさに証券化の手法を活用して、プロジェクトを推進したいというご依頼を受けました。これも同様に、地元の有力金融機関が資金を提供し、残りの出資金については地元や市などのさまざまな方面から資金を集めて成し遂げたというプロジェクトです。
6番の「ムーミンバレーパーク」については、写真はないですが埼玉県飯能市にあり、総額150億円規模のプロジェクトです。1社で負担するには大きすぎるため、地域の鉄道会社やエンタテインメント会社、建設会社など、さまざまな企業が資金を出し合い、応分にリスクを分かち合うかたちで、地域のためにプロジェクトとして完遂していく取り組みが進められました。
このプロジェクトにおいても、当社は単に資金を提供するだけでなく、仕組みを構築し、リスクをマネジメントしました。そして、各関係者が応分にリスクを分担しながら案件を進めていくかたちを取りました。
地域で困った問題は、おそらくみなさまの地域でも見られるのではないでしょうか。ちなみに私は広島県呉市出身ですが、現在、呉市も日本製鉄の撤退による影響で非常に厳しい状況です。
こうした問題について、新たな取り組みで雇用を創造しなければならない場合、1社だけの努力では解決できません。町や地域、あるいは我々のような金融を補助する会社が一体となり、プロジェクトを完遂してなんとか目的を達成することが重要です。
このような取り組みが、我々の主業務である投資銀行業務の一環であり、なかでもストラクチャードファイナンス(仕組みを活用した金融)という仕事を行っています。
FGIの事業

元のスライドに戻ります。今お話ししたような仕事を成し遂げるために、まずはスライド中央にある投資銀行業務を行います。これは、プロジェクトのリスクを分析し、アレンジを行い、銀行を招聘して金融の仕組みを作る業務です。
そして、スライド左側にある投資業務では、自分たちで資金を出さなければならない場面、例えば資金がどうしても不足し先に進まない場合や、リスクを引き受けなければ事業がうまく進まない場合に、私たち自身が自己資金を用いて投融資を行っています。
スライド右側の投資運用業務は、地域のみなさまからお金をお預かりしてそのプロジェクトに投資することや、出来上がったバスセンターなどの不動産そのものを受託し、お預かりして運用する業務です。
このように、投資運用業務を含む3つの業務を通じて、私どもは投資銀行事業を展開しています。
これまでの歩み

次に、当社の成り立ちと沿革についてご紹介します。ここで注目していただきたい点は、リーマンショックをきっかけとして、業務内容が大きく変化したということです。
当社は約30年前、1994年に設立され、当初は投資銀行業務(アレンジメント)を柱としてスタートしました。2005年には上場を果たし、そこで得た資金を活用して自己投資が可能となりました。その後、2008年までは順調に発展し、2本柱の事業でうまく成果を上げてきました。
2008年のリーマンショックを迎えた当時、当社の資産規模は、自己資本300億円、投融資残高約1,000億円、借入金は800億円近くという状態でした。
この時期、みなさまも厳しい状況に直面されたかもしれませんが、私どもも投融資債権や自己資本にかなりのダメージを受け、約450億円の損失を被りました。自己資本300億円に対し450億円の損失ではマイナス150億円となって倒産する計算ですが、幸いにも、子会社への投資や子会社の売却益などを通じて200億円の利益を得ることができました。
結果として、すべての借入金を銀行に一切迷惑をかけることなく完済し、収益も200億円プラスにした上で、手元に50億円を残すことができました。この50億円をベースにスタートしたのが2009年から2010年であり、ここから現在のフィンテック グローバルへと移行していきました。
ここで方向性を考える中で気づいたのは、地域にとって本当に必要で大切な会社にならなければ、支援を得ることができないということでした。
私たちは、800億円の借入金を返済しつつ、450億円の損失をなんとか回避しようと単独で動いていました。ふと周りを見ると、地方にとって非常に重要な、ゼネコンのような企業が顧客として存在していましたが、金融の視点から見ても明らかに倒産の危機に瀕している会社が数多くあり、厳しい状況が広がっていました。
それでも、地元の金融機関を一生懸命助け、まさに身を削って支援する取り組みをされていました。その姿を見て、私たちも「地元や社会にとって本当に必要な会社にならなければ生き残れない。地元にとって重要な存在にならなくてはいけない」という思いをリーマンショックの時に強くしました。
では、どのような方向に進むべきかについて考えた時、やはり地方で先ほど述べたような案件に取り組むべきだという結論に至りました。こうした案件については、メガバンクやインベストメントバンクは、利益を見込めないために取り組まない傾向があります。
一方で、地方銀行については、投資運用業や金融商品の販売事業などに必要なライセンスを保有していないため、これらの事業を進めることが難しい現状があります。しかし、私たちはこれらのライセンスを有しているため、私たちが参画することで、地方で取り組んでいなかった案件や停滞していた案件が生き残れる可能性を作り出しました。
このことがきっかけで、地方市場への進出を決断しました。利益はあまり大きく出ませんが、それでも地方市場に進出するというのが、リーマンショック以降のこの十数年間、私たちが取り組んできたことです。
財務書類作成、公共施設マネジメント支援

その際には、地方自治体との親密な関係を築き、地域が抱える本質的な課題を明らかにすることを目的に、地方自治体への積極的な営業活動を展開しました。
このスライドには、現在の地方自治体とのお取引実績を示しています。当社は、400を超える500近い自治体を取引先としており、かつ都道府県を中心とする大規模自治体や政令指定都市、特別区など非常に多くのお客さまとお取引しています。
これはもともと、約20年前、北海道夕張市が財政破綻した当時、旧自治省(現総務省)の関係者には、自治体の財政状況を把握する手段がありませんでした。民間企業で言う財務4表、すなわちB/SやP/L、キャッシュフロー表も存在しなかったため、それを整備しようという取り組みから始まりました。
この事業が進められ、実際に内容を確認したところ、やはり想像どおり自治体が保有する資産の大半は固定資産であり、その割合は90パーセント以上、多い場合には95パーセント以上に達していました。
固定資産について詳しく見てみると、それが古いものなのか新しいものなのかが明確ではありません。自治体では減価償却の考え方が存在しないため、減価償却累計額がない状況です。そのため、物件が古いのか新しいのかを会計的に把握することができなかったのです。
こうした背景の中で起きてしまったのが、非常に悲しい事故ですが、中央自動車道のトンネル崩落事故のような事例です。このような問題を受けて、国や自治体に対して、保有する固定資産に関する精査を行うべきだという動きが生じました。どれほど老朽化が進行しているのか、それを改善するためにはどの程度の費用が必要なのかを精査しなさい、という指示が出されたのです。こうした経緯を経て、固定資産台帳の整備が開始されました。
さらに、それを改善するのか、撤去するのか、あるいは建て替えるのかといった選択を含めた総合施設管理計画を策定するよう求める動きが、現在財務省や総務省を中心に起こっています。強靱化計画といった取り組みがまさにその趣旨に基づくものです。そのような計画を通じて、1つずつ状況を確認していきなさいという動きが、現在進行しています。
そのような流れの中で、当社が会計のコンサルティング業務を開始したのは約20年前です。それ以降、この流れが継続し、現在では最大のシェアを持つ企業となっています。
現在、自治体で最も困っている課題はなにかわかりますか? 今朝の新聞でも取り上げられていましたが、それは人手不足です。特に技術者の不足が深刻です。
技術者がいないとはどのような状況かというと、例えば小学校の整備やメンテナンスが必要な場合、ある政令指定都市の自治体では、数十校に及ぶ小学校や中学校の整備をしなくてはならないとなった際に、メンテナンスを行う専門業者を選定し、それを監督する仕事が庁内で必要ですが、その監督する人材が不足しています。
その結果、どのような要件で募集し、入札を受け、そしてそれを監督し実行させる業務自体をアウトソーシングする流れになっています。人手不足の状況下で、パブリック・マネジメント・コンサルティング(PMC)のような会社に業務をお願いする、そうしたアウトソーシングの時代になっているのです。
つまり、その地域の問題を目の当たりにでき、代わりに解決するという役回りをこの会社が担うわけです。その中で、駅前の開発や学校の耐震化、体育館の建て替えといったプロジェクトが生まれた際には、ファイナンス面では親会社である当社が対応するという流れができることを目指しています。
このように、リーマンショック後は、地方自治体向けのビジネスを展開してきたことをご理解いただければと思います。
FGIグループ会社・事業セグメント

こちらは当社の業務推進体制およびグループ会社の構成図になります。大きく分けると、スライド左側にある投資銀行事業は、すべて100パーセント子会社の中で行っています。
こちらについては、先ほどもお話ししたように、地銀各社が当社と取引する理由の1つがライセンスの問題です。FAM(フィンテック アセットマネジメント)は、不動産の投資運用業務のライセンスを持つ会社で、FGICP(FGIキャピタル・パートナーズ)は、有価証券等の運用ライセンスを保有している会社です。
このような会社を地銀各社が保有しているケースは少ないです。大手メガバンク各社は当然すべてを保有していますが、地方の利益が見込めない領域にはなかなか進出しないため、当社がそうしたビジネスのきっかけを見いだしている、ということです。
投資銀行事業の右側に示されている公共コンサルティング事業(紫色の部分)は、先ほど述べたようなコンサルティングを自治体向けに提供しています。これら2つの部門を中核とする会社です。
また、スライド一番右側のエンタテインメント・サービス事業には、私どもの会社よりも知名度が高い「ムーミンバレーパーク」が含まれており、その運営会社である株式会社ムーミン物語(以下、ムーミン物語)が当社の連結子会社となっています。当社はこの会社の株式を84.6パーセント保有しています。
ただし、この事業については冒頭に触れたように地域に根ざした事業であり、会計上は連結されていますが、地域のために行っている事業として位置付けています。そのため、バランスシートには含まれていますが、債務保証等は一切行っておらず、独立した事業として理解していただければわかりやすいと思います。
したがって、当社の中核事業は投資銀行事業と公共コンサルティング事業であることをご理解いただけると助かります。「ムーミンバレーパーク」については、後ほど詳しくご説明します。
業績推移 -投資銀行事業が業績牽引 5期連続増収増益

業績についてご説明します。スライドには約7年間の業績が掲載されています。マイナスからプラスに転じていますが、このマイナスの要因はムーミン事業に起因するものです。特にムーミンは新型コロナウイルス禍(以下、コロナ禍)の影響により厳しい状況にありました。
当初、当社はムーミン物語に対して40パーセント台の出資をしていましたが、現在では84パーセントを出資しています。このムーミン物語には、地元の鉄道会社などさまざまな会社から出資をいただいています。また、多くの金融機関からも資金提供を受けていました。しかし、正直なところ、この事業の主体となりたいと名乗り出た企業はほとんどいませんでした。
過去には地方ごとにさまざまなテーマパーク事業が存在していますが、最初からうまくいっているものはほとんどありません。リスクをとりたくないという思いがある一方で、地域のために協力しようという流れの中で、当社が主人公にならざるを得なかったので、結果として40パーセントを出資することとなりました。
しかし、準備段階である2019年の時点ですでに従業員が500人おり、その影響でマイナス16億円という損失を計上しました。さらに、2020年および2021年には、みなさまもご存じのようにコロナ禍により、大きなダメージを受けました。
ダメージを受けただけでなく、本来本業に充てるべきだった資金を、地域のためという理由で増資というかたちでムーミン物語に資金を投入したことにより、本業にも影響が出てしまいました。また、ムーミン物語の運営も非常に厳しい状況に陥りました。
しかしながら、ムーミン物語は私たちの看板事業であり、地域における重要なプロジェクトであるため、なんとしても継続させる必要があると判断しました。そして、苦しい状況の中で歯を食いしばりながら維持し続けたのが2020年から2022年の間です。
その後、2022年頃から状況が徐々に回復し始め、本業に資金が回せるようになりました。「米屋にも米が戻ってきた」とも言えるように本業に注力した結果、利益が出るようになり、昨年は最終的に大幅な黒字を達成することができました。
投資銀行業務

投資銀行事業について1つずつお話しします。スライド右側には、事業承継案件の地域別組成累計額が示されています。
これについては、果実となった部分です。一方、スライド左側には、なかなか利益を出すことが難しい地域のためのプロジェクトや、自治体との連携による問題解決を通じて、地域の地方金融機関との非常に強い関係が構築されていることを示しています。
地方や首都圏における大きな課題の1つに、事業承継の問題があります。この事業承継の問題に関しては、仲介に入るM&A会社が多数存在しますが、難しい案件や小規模な案件では、買い手がなかなか見つからないのが現状です。
そのような状況において、当社は広範な分野に対応できる投資家として、事業承継の買い手となっています。こうした実績が示されているのが、こちらのデータです。
投融資残高(最近5年間)

こちらは先ほどの投資事業、投資先への資金状況です。自己資金で投資している金額は、現状79億3,000万円となっています。この金額は期中で上下に変動します。
事業承継投資

これは今お話しした事業承継を行う際に、当社が自己資金だけではなく、買収事案ごとにファンドを立ち上げているものです。銀行から資金を調達するケースや、米国系の投資銀行と共同で資金を出す場合もあります。このように案件ごとに組成を行い、それが毎年の組成実績となっています。
ちなみに前期の第31期(2025年9月期)においては、約520億円のファンドを組成し、事業承継事案の買収を行いました。
投融資残高(最近5年間)

自己投資の勘定です。先ほどお話ししたファンドの部分について、何がどこから入っているかというと、棒グラフの緑色の部分、プリンシパルインベストメントとなります。現状の残高は22億4,900万円です。この金額には、ファンド内で出資金を提供し、最後に責任を果たす立場として必要なお金が含まれています。この自己投資に加え、ファンドを組成し、他社のみなさまとリスクを分担しながら運用しているのが、先ほどお話しした約520億円です。
プリンシパルインベストメントの部分は、期中に変動があります。四半期ごとの報告や決算説明資料をご覧いただければ、どのように推移しているかがわかりますが、ここは非常に回転率が高い部分です。
棒グラフの一番下に示された、不動産等の約45億円に関する部分が継続的に固定されていますが、これはムーミン事業の1つです。市が土地を一部保有し、公的な場として公園のように利用されているエリアにある、「ムーミンバレーパーク」の横にある「メッツァビレッジ」というショッピングモールのような施設です。当社は自己資金でそこに建物を建設し、賃貸人として家賃収入を得るかたちで運営しています。
本来であれば、コロナ禍の影響がなければ、速やかに流動化を進める予定でした。しかし、ムーミン事業が安定してきたことから、ようやく不動産部分についても流動化を進める段階に入りました。今期以降、この流動化を加速し、バランスシートの圧縮および利益の顕在化を進める方針です。
投資運用 預り資産残高(最近5年間)

次に投資運用の預り資産残高についてです。スライド右端の棒グラフにあるように、現在1,617億円余りの資産をお預かりしています。このうち、株式等に回している現金の受託は51億3,000万円と非常に少額です。
大半は不動産であり、私どもが組成した地方の案件やプロジェクトで使用した不動産を自らアレンジして受託しているケースのほか、外資系保険会社が保有している不動産を運用者として当社が受託し運用しているケースが非常に大きな割合を占めています。
これらの合計が現状で1,610億円を超える規模となっていますが、投資運用の預り資産残高としては、まだ小さな会社であると言えます。
財務書類作成、公共施設マネジメント支援

公共コンサルティング事業についても、順調に伸びており、深化しています。また、内容が変化しており、コンサルティングからアウトソーシングや人材派遣へと移行してきています。
メッツァについて

エンタテインメント・サービス事業について、もう少し詳しくお話しします。少し前後してわかりにくかったかもしれませんが、「メッツァ」という名前で「ムーミンバレーパーク」を運営しています。「メッツァ」の中には、「ムーミンバレーパーク」と「メッツァビレッジ」という、まさに入場無料で誰でも入ることができる場所があります。
主に「ムーミンバレーパーク」は、地域のみんなで作ったムーミン物語という会社が運営主体となっており、「メッツァビレッジ」については、当社が大家として事業に参画している構造です。
エンタテインメント・サービス事業の業績

「ムーミンバレーパーク」は2019年にオープンし、同年の来園者数は100万人を超えて120万人に近い数字を記録しました。しかしその後、コロナ禍の影響で厳しい状況に陥りました。
コロナ禍が明けても客足はなかなか戻らず、2020年から2023年の一部に至るまで非常に厳しい期間が続きましたが、ようやく前期にあたる2025年9月期には通期で黒字に回復することができました。
現場でのさまざまな努力や、株主である鉄道会社のご支援など、非常に厚いサポートのもとでなんとか盛り返し、現状では黒字化を達成した事業です。
連結業績予想

今期、2026年9月期の業績見通しについてお話しします。今期もこれまでの成長スピードが大きく落ちることなく、順調な成長が続くと見込んでいます。売上高は182億円、営業利益は42億円、経常利益は40億円、当期純利益は27億円を見込んでいます。
2026年9月期の見通し

内容についてはこちらのスライドのとおりです。世の中では事業承継を希望する声が多い一方で、後継者がいない、引き継ぐ人がいないという理由から清算を希望する声も多く、本当に大変な状況だと思います。
それらを1つずつ対処するのは非常に時間がかかりますが、事業承継の案件が途切れることなく順調に進んでおり、私どもの業績向上にも寄与しています。また、社会のお役にも立っていると考えており、この分野には人員を増強して対応を続けていく方針でがんばっています。
大和証券をはじめとする証券会社各社との案件の連携については、非常に濃密に進めることができています。この事業承継の分野は今後も問題が解決するということは考えにくく、引き続き私どもの主力事業になると感じています。
また、公共コンサルティング事業についても深刻な人材不足が課題となっており、アウトソーシングの引き合いが非常に多くなっています。そのため私どもも、会計のコンサルタント業務だけでなく、現在では一級建築士事務所としての役割を果たすまでになっています。
技術者を多く雇用し、それを派遣や受託するかたちの業務が現在増加しています。このような状況から、公共コンサルティング事業はますます深く広がっていくと考えています。
エンタテインメント・サービス事業については、現場が引き続き好調で、努力を重ねています。このまま来園者の増加が続けば、増収増益を達成できる見通しを持っています。
投資銀行事業と公共コンサルティング事業の融合

以上のことをふまえて、中長期的な展望について少しお話ししたいと思います。構図として、当グループは投資銀行事業のライセンスやノウハウをすべて活用し、地方自治体との関係性を基に問題の抽出を行います。
そこから出てきた地域プロジェクトについては、さまざまな手法を用いて、ファンドの設立や、投資家市場に向けてブロックチェーンを活用したセキュリティトークンによる証券化商品の売却、さらには、地方金融機関との連携などを通じて支援を行うなどの活動を地道に続けることを模索しています。
ですから、なにか大きな1つのプロジェクトに頼るのではなく、このような機能を活用し、さまざまな問題や商品に対応して収益を上げていくことで、社会にとって不可欠な金融機関となることを目指すと、この段階になってやっと、自信を持ってみなさまの前でお話しできる状態になったと感じています。
ROEの推移

ROEおよび株主還元についてお話しします。
私どもは上場以来20年間、基本的にROE20パーセントを維持することを目標として掲げてきました。大きな波もありましたが、この目標達成のために資本政策を展開してきた会社です。今後も引き続き、ROE20パーセントを目標として維持していきたいと考えています。
当社の株価は一時期2桁台まで低迷しました。また、もともとの発行株数が多く、2億株あります。したがって、株式市場における流動性が過多であるという傾向があります。さらに、1口当たり数万円で投資できるため、ごく少額の資金でも株価が大きく変動する状況がありました。
この状況を需給のバランスを含めて調整したいと考え、さまざまな選択肢を検討しました。その中で、株式の併合も検討しましたが、3年前の株主総会において、当社は正攻法で臨む方針を株主のみなさまにお伝えしました。
具体的には、しっかりと収益を上げることで成長を鈍化させず、成長後には配当を実施するなど、地道に株価を上昇させていく。また、株価が低水準であれば、自己株式を取得していくといった正攻法でもって需給バランスを整え、安定した株価水準にすることを目指して、この3年間取り組んできました。今期も同じ方針を継続しており、利益の大幅な上振れを見込んでいます。
株主還元

そのため、1株当たりの配当金については、2025年9月期の3円から2026年9月期は5円に増額することを予定しています。
株主還元については、株価が安くなれば従来と同様に自己株式の取得を行い、株価が安定していれば2025年9月期のような大量の自己株式の取得は行わないという柔軟な方針を取っています。安定的な成長に見合った株価の上昇を目指し、配当性向と自己株式の取得については、このような方針で進めています。
2026年9月期の配当は1株あたり5円を予定していますが、現時点で自己株式の取得に関しては発表していません。状況に応じて臨機応変に対応していきたいと考えています。
質疑応答:固定資産に関する相談の増加について
司会者:「地方自治体の財政状況について、徐々に悪化しているところが多くあると聞きます。公共コンサル事業について、どのような相談ごとが多いのでしょうか?」というご質問です。
玉井:総じて言いますと、先ほどから何度もお伝えしているとおり、人手が不足しているということに尽きます。ただ、これまでは主業務である財政に関連した業務、特にバランスシートやP/L、場合によっては資金調達に関するご相談が中心でしたが、最近は「ハコをどうするのか」という物に関する案件が増えています。
すべてを建て直していたら大変になるため、取捨選択を行いながら、5年後、10年後、さらには30年後の修繕計画まで求められるというのが、中央官庁から求められている自治体の宿題です。そのため、現在は固定資産に関するご相談が増加しており、一緒にその対応を考えています。
質疑応答:人材育成と社員定着に対する取り組みについて
司会者:「御社の人材育成について、現在注力されている点はどのようなところでしょうか?」というご質問です。
玉井:当社は人によって支えられている会社です。金融業は基本的にお金の規模で収益が左右されますが、そのお金をどう使うかを決めるのは人であり、人材の育成が最も重要な課題となっています。
これは創業以来、私にとって最大の悩みの種で、社員にはできるだけ長期間在籍してほしいと考えています。そのため、大量採用して半分が辞めていってもしょうがないといったやり方はまったく考えず、一子相伝のように1人ずつが成長していくスタイルで運営しています。
それでも定着率がなかなか向上しない時期もありましたが、昨今ではおかげさまで退職者は少なくなりました。新卒採用も多く取りすぎないようにしており、非常に良い状態になっています。
人を大切にし、この会社を人によって生き延びさせることを目指して、教育も含めて取り組んでいます。
質疑応答:エンタテインメント・サービス事業への注力の方向性について
司会者:「御社は投資銀行事業の会社ではありますが、なじみのない人には、『ムーミンバレーパーク』を運営しているエンタメの会社と思う人もいると思います。会社の知名度向上の1つとして、さらにこの分野に力を入れていくことは可能でしょうか?」というご質問です。
玉井:可能です。金融業というのは虚業だと私は思っていまして、実業家の方たちを助けるのが虚業家の役目だと思っています。そのため、常に主役は存在していましたが、「ムーミンバレーパーク」の場合は自分たちで主役を作り上げたということです。自分たちの子会社とは思っていないものの、ユー・エス・ジェイやオリエンタルランドから人を集め、主役を作り上げた会社です。
これまで、この会社を育てたり、苦しい時には励ましたり支援したりしてきました。その中でふと気づいたのは、これは実業であり、実業とはやはり非常にすばらしく、楽しくておもしろいものであり、やりがいがあるということです。
ですから、個人的には大いに伸ばしたいと思っています。ただし、本業は投資銀行事業、いわゆる虚業ですので、困っている方々を助けに行くことが主な業務だと認識しています。そのため、やりたいですし可能ではあるものの、現時点では少し難しいと考えています。
質疑応答:競合他社の有無および自社の優位性について
司会者:「同業他社にはどの会社を認識されていますか? また、他社との優位性は何でしょうか?」というご質問です。
玉井:オンリーワンだと思っています。地方に行き、地方の金融機関と連携し、地方金融機関では手が届かないライセンスなどを活用しながら協力して取り組み、かつ、自己投融資も行える会社は私どもしかいません。
やろうと思えばメガバンクや大和証券も可能だと思います。ただ、それらの企業はおそらく利幅が薄いところには手を出さないと考えます。その意味では、実績が示しているように私たちしかいないと言え、競合他社は存在しないと思います。
むしろ、競合というよりも協調他社という意味で地方銀行を強く意識しています。当社の取引銀行には地方銀行が多いのは、そのような背景があるからです。年々地方銀行の取引先は増加し続けています。
もちろん、メガバンクにもファンドの組成などで多大なご支援をいただいており、大変お世話になっています。ただし、実際に協働して動いているのは圧倒的に地方銀行が多いです。そのため、協調他社という観点で地方銀行が該当するとお考えいただければと思います。
質疑応答:資金の調達先について
司会者:「資金の調達先は主にどのような銀行ですか?」というご質問です。
玉井:運転資金があまり必要のない会社です。したがって、前期に事業承継のファンドで500億円を超えたものを組成したと先ほどお伝えしましたが、これは金融機関が多く関与しています。金融機関からお金を借りて一緒に投資しており、その中でも実はメガバンクが多いです。数百億円の規模で出せるところはメガバンクしかありません。
ただし、地方の案件においては地方銀行と一緒に活動し、すみ分けが一応できているかたちです。
質疑応答:借入金と投資先のバランスについて
司会者:「借入金と投資先のバランスはどのようになっていますか?」というご質問です。
玉井:「ムーミンバレーパーク」に関連する借入金ですが、実は飯能信用金庫や埼玉りそな銀行からの借入金がブロックでいうと60億円ほどあります。これはムーミン物語が借りているお金です。
したがって、先ほどもお話ししたとおり、ムーミン物語は当社が主体となって作り、支援している会社ですが、基本的には会計上で連結しているだけです。このため、極論を言えば、この借入金について当社が債務保証をしているわけではありません。例えば、ムーミン物語が経営的に厳しい状況になったり、最悪の場合倒産したとしても、当社は会計上、影響を受けることがないという立場にあります。
その点をふまえた上でバランスを見ると借入金が多く、ムーミン物語の事業に投資しているように見えるという意見があるのかもしれません。しかしながら、当社としては、投資先や資産、借入金をすべて切り離すことができるということをご理解いただければと思います。
また、今回の決算開示資料の中でも1つの目標としてバランスシートの整理を掲げており、ムーミン物語を地方にお返しすることを含めて検討しています。このようにして、ムーミン物語も独り立ちが可能となったことから、今後について考えていきたいと考えています。
質疑応答:プロジェクト撤退に対する方針について
司会者:「成功事例を聞いている限りでは投資したいと思います。逆に、プロジェクトを撤退する時の基準、またはルールがあったら教えてください」というご質問です。
玉井:鋭いご質問です。撤退は得意ではありません。もし得意であれば、ムーミン事業はとうの昔に撤退していました。しかしながら、当社にとってどうしてもやらなければならない仕事もあります。特に、冒頭からお伝えしているように、地方が困っているようなプロジェクトについては、歯を食いしばってでも取り組む必要があると考えています。
従業員も同じような考えを持っています。儲けや損得ではなく、なんとか助けなければいけないという思いを持っている職員が多いため、最後までやり遂げたいという意識が強いのです。自主的に撤退したケースは、私の記憶ではありません。
つまり、一度取り組んだら最後まで付き合うというスタンスの会社です。少し危険に見えるかもしれませんが、そのような姿勢で臨んでいます。
質疑応答:中途採用、新卒採用の方針とベースアップについて
司会者:「優秀な人材を確保するためには、御社はどのような工夫を考えていますか? また、即戦力として中途採用のケースは多いでしょうか?」というご質問です。
玉井:後半の話でいうと、中途採用についてですが、当社は多くのライセンスを保有している会社です。そのライセンスを維持するためには、必要な人材を中途採用で確保するケースが多い状況です。
基本的には、新卒をイチから育てることが、私たちの会社の方針です。これは私だけでなく、社員全員がそう考えていると思います。そのため、一度入社した人材を徹底的に育てていく覚悟を持って採用しています。
また、2025年9月期には初任給を引き上げました。それだけでなく、全職員の基本給を30パーセントベースアップしました。
株主のみなさまに昨年の総会でお伝えした際、具体的に30パーセントとはお伝えしていませんでしたが、「超大幅に引き上げたい」とご説明しました。人材の流出を避けるため、また、給与面で負けることのないようにという趣旨でご理解を賜り、前期(第31期)に全職員の給与を30パーセント引き上げました。
その影響で販売管理費が2億円以上増加しました。この点についてはやむを得ない措置としてご理解いただければ幸いです。
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