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アステリア株式会社3853

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アステリア株式会社

平野洋一郎氏(以下、平野):みなさま、こんにちは。代表取締役社長/CEOの平野洋一郎です。本日はご多忙の中、アステリアの中間期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。今回は、2026年3月期中間期決算についてご説明します。

まず、当社の決算説明を初めてお聞きになる方もいらっしゃるかと思いますので、会社概要を簡単にご説明します。アステリア株式会社は、一言で言えばソフトウェアメーカーです。同業他社が数多く存在する中で、当社は特に「世界を目指す」「企業向け」という点をキーワードとしています。

日本にはソフトウェア開発会社が数多く存在しますが、その中でも「メーカー」と呼んでいるのには特別な意味があります。当社では「受託開発が一切ない」という概念を採用しており、これにより売上総利益率が非常に高いビジネスモデルになっています。この点については、後ほど詳しくご説明しますが、受託開発とは大きく異なるビジネスモデルとなっています。

アステリア株式会社

企業向けソフトウェアメーカーとして、基本的にノーコードでAI・IoT、さらにはロボット開発支援といった分野をつなぐソフトウェアを提供しています。

特に先端領域ではノーコードやブロックチェーン、新しい働き方であるウェルビーイングといった分野をかたちにして、世の中に提案・提供している会社です。

上場(2007年)からの推移

当社は2007年に東証マザーズに上場し、2018年には東証一部、現在は東証プライム市場へ移行しています。その間、一貫してソフトウェア事業を大きく伸ばしてきました。そして、2025年3月期はソフトウェア事業の売上が30億円を突破しました。2026年3月期はさらに伸ばし、売上収益35億円を予想しています。

主力製品:データ連携ツール「ASTERIA Warp」

当社の主力製品は「ASTERIA Warp」です。データ連携ツールであり、データ連携のスタンダードともいえる商品です。2002年から提供を続けており、ノーコードでデータ連携ができることが特徴です。1万社以上で利用されており、市場シェアは59.2パーセント、19年連続で市場シェアNo.1と圧倒的な数字です。

中間期決算概要

本日の本題である当社の中間期決算についてです。なお、当社はIFRS、すなわち国際会計基準を採用しており、これを前提とした会計や数字であることをご承知おきください。

直近の株価推移(7〜11月)

今回の決算発表で最も注目すべきトピックスは、株価の大きな変動です。前回の決算発表は8月に行いましたが、その直後の8月18日から株価が大きく動いています。一番高いところでは2,510円という数字を記録し、現在も4桁の株価を維持しています。

JPYCというステーブルコインへの期待が集まっていることも要因の1つですが、それだけでなく、当社のソフトウェア事業の業績、事業変革の取り組み、そして将来に向けた活動が評価されていることが背景にあります。

例えば、宇宙分野向けのソフトウェアを発表したり、過去のソフトウェアが「日経コンピュータ」の顧客満足度調査ランキングで第1位を獲得するなどの成果があり、これらが株価が一定値を保つ一因となっています。

プライム上場基準を満たし改善期間終了

これまで当社は、プライム市場の上場基準を満たすために適合計画を実施してきました。具体的には、2023年6月の開示以降、スライド右側に記載している複数の項目を実施してきました。そして、唯一満たしていなかった流通時価総額の基準を、今回ついにクリアすることができました。

これにより、プライム上場基準をすべて満たし、東証からの「上場維持基準(分布基準)への適合状況について」も受領したため、先日「上場維持基準への適合に関するお知らせ」を開示しました。

MikoSea株式会社の買収を発表

次のトピックスとしては、MikoSea株式会社の買収を9月に発表しました。当社にグループインし、100パーセント子会社となります。

MikoSea社は「Click」というノーコードアプリ開発ツールを提供しており、7万を超えるアプリを開発しています。「Click」はノーコードの可能性を大きく広げるものです。

業績ハイライト

ここからは、業績についてご説明します。売上収益は16億1,000万円、営業利益は5億2,000万円で増収・増益となりました。前年同期比623パーセント増、つまり7倍強の大きな伸びを記録しています。また、最終的な中間利益は4億2,000万円となりました。前年同期は赤字でしたが、完全に黒字転換しました。

指標についてもご説明します。売上総利益率は88パーセントとなりました。売上総利益率がこれほど高いのは、先ほどお話ししたとおり、製品に特化したメーカーであることが要因です。

当社では長年、ストック売上比率の向上に取り組んでおり、77パーセントと80パーセントあたりを推移しています。内訳はサブスクリプションやサポートなどで、安定的な成長を実現しています。

自己資本比率は79パーセントとなっています。「3割以上であれば優良企業」と一般的に言われる中、79パーセントという数値は非常に高く、健全な財務状況を示していることがおわかりいただけると思います。

増収・大幅増益

詳細をご説明します。売上収益は初めて16億円を超え、16億800万円となりました。売上総利益も初めて14億円を超えて14億1,200万円となり、営業利益は前年同期比で7.2倍の5億2,300万円という結果でした。

売上収益から営業利益まで

売上収益から営業利益までの道筋についてご説明します。当社の収支は非常にシンプルで、売上収益から売上原価と販管費を差し引き、投資事業益等を加えたものです。これらを合計して5億2,300万円という結果になっています。特筆すべきは、営業利益率が非常に高く、32.6パーセントを達成した点です。

営業利益/税引前利益/中間利益(親会社の所有者に帰属する)

営業利益から最終利益に至る中間利益についてご説明します。営業利益5億2,300万円から、金融損失等(主に第1四半期の為替差損)を差し引いた額が4億7,000万円です。そこから税金等を調整し、最終的に中間利益は4億1,800万円となりました。

業績予想に対する進捗率

売上収益と営業利益の業績予想に対する進捗率です。売上収益の進捗率は、通期予想35億円に対して46パーセントです。当社のストック売上は年度後半に向けて増加していく形態のため、進捗率が5割に達していなくても35億円を達成できる見込みです。

営業利益の進捗率は、通期予想8億5,000万円に対してすでに6割を超えています。この結果を受けて「さらに利益が伸びるのではないか?」との声をいただいていますが、現時点では予想の修正は行っておらず、今後精査していきます。

販売管理費の推移 (前年同期比)

ここからは利益についてご説明します。まず、販管費の内訳です。前年同期比でも大きな変化はなく、安定的な構成を保っています。

当社のビジネスモデルでは、個別開発を行わないため、売上の増減は販管費には大きく影響せず、自然に利益へ反映される仕組みとなっています。

財政状態計算書 (2025年9月末現在)

次に、B/S(財政状態計算書)についてです。現預金等は27億円、自己資本比率は79パーセントとなっています。また、東証が「資本コストや株価を意識した経営」でPBR1倍以上を求める方針を示し、話題となっているPBRは、4.05倍となっています。

ここまでが数字の解説でした。

当社製品が満足度やシェアで高く評価

中間期のトピックスについてお話しします。まず、この中間期において「顧客満足度調査」でNo.1を獲得しました。これは会社全体としての成果であり、特に「ASTERIA Warp」が中心的な役割を果たした結果といえます。

また、先ほどご説明したとおり、市場シェア調査でも19年連続でNo.1を達成しています。つまり、「データ連携といえば『ASTERIA Warp』」という地位を築くことができています。

JPYCが円建ステーブルコインとして承認

2つ目のトピックスは、JPYCというステーブルコインについてです。株価や市場を見ている方であれば、ご存じかと思いますが、これはブロックチェーン上で運用されるコインです。スライド左側に記載しているBitcoinの直近の価格の動きをご覧ください。Bitcoinはいわゆる暗号資産で、非常に激しく価格が変動します。この価格変動によって利益を得たり損失を被ったり、投機対象として利用されることがあります。

一方で、同じブロックチェーン技術を使用しながらも、価格が安定しているコインが存在します。それがステーブルコインです。「ステーブル」というのは英語で「安定している」という意味です。スライド右側のとおり安定しているため、ブロックチェーン上のコイン、いわゆるデジタルコインの利点を享受できます。

このステーブルコインの取り組みがいよいよ始まりました。8月18日に認可され、10月27日からJPYCの発行が始まっています。

100以上の接続アダプターで抜群の接続性

「ASTERIA Warp」には、100以上の接続アダプターがあります。スライドに記載している文字が小さいかもしれませんが、「ASTERIA Warp」は主なデータベースや旧来のホスト、さらにWebシステム、クラウドシステム、アプリケーションなど、さまざまなものとつながります。これに「JPYC」が加わると、どのような展開が起こるのかが注目されています。

JPYCアダプターでJPYCの接続先が激増

「ASTERIA Warp」のJPYCアダプターを提供することも発表しています。スライドの中央に「JPYC」がありますが、JPYCがすべての「ASTERIA Warp」の接続先につながることを表しています。つまり、JPYCアダプターによって、JPYCそのものの接続先が大幅に増加するということです。

企業でのJPYC活用の幅が広がる

具体的な構成はスライドのとおりです。JPYCアダプターを「ASTERIA Warp」で使用することで、企業はJPYCの口座にアクセスできます。重要な点は、ノーコードでアクセスできるということです。つまり、プログラムを書く必要がありません。

JPYCアダプターの効能は、先ほどご説明した100以上のアプリケーションやデータベース、サービスなどと接続できます。そのため、単に口座に送金するだけではなく、多彩な活用が期待できます。例えば、ECサイトや最新のDeFi、すなわちネット上の分散型金融などへアクセスすることも可能です。

もう1つ重要なのは、企業がJPYCやステーブルコインを使う場合、これらのメリットだけでなく、安全かつ安心して利用できることです。そのため、当社はWeb3領域において国内最大の実績を持つTECHFUND社と提携する取り組みを発表しています。つい先日、セミナーも開催しました。

MikoSea株式会社の買収を発表

3つ目のトピックスは、先ほどもご説明したとおり、MikoSea社の買収を発表しました。MikoSea社の開発数が7万を超えるアプリ「Click」が当社に加わることで、世界がさらに広がります。

「Click」は主に個人や中小企業、自治体などで採用されていましたが、当社が得意とするエンタープライズ分野や大企業においても、「Click」のアプリ開発を活用できると考えています。

ノーコード開発ツール「Click」70,000を越えるアプリ開発を実績

「Click」はすでに複数の企業で採用され、さまざまな賞も受賞しています。このため、MikoSea社をアステリアグループに迎えることで、「Click」はさらに幅広いアプリ開発に活用されていくと考えています。

多種多様な企業・団体・個人をカバー

当社はこの開発を「アプリ作成」と呼んでおり、以前から「Platio」というツールを提供しています。「Platio」は現場のDXを迅速に実現でき、現場の人たちだけで操作可能なノーコードツールです。「3日でアプリ」を売りにしていますが、実際には1日や2日で利用されている事例が多くあります。

「Platio」は現場でのアプリに特化しており、現場では必要とされない機能を削ってフォーカスを絞ったサービスであることが特徴です。現場でアプリを作成できることに重点を置いており、成長を続けています。

ただし、特定の機能にフォーカスしたことで、柔軟性や画面設計、PC用アプリといった要素は削減されています。これらを補完するのが、柔軟性に重点を置いている「Click」です。「Click」と「Platio」ブランドを掛け合わせた「Click」のエンタープライズ版として、「Platio Canvas」を9月に発売しました。当社の持つノウハウやチャネルに「Click」の柔軟性を組み合わせたすばらしい製品です。

ClickがJPYCと連携し普及促進へ

「Click」もJPYCとの連携を普及促進していきます。9月の買収発表の際にも触れましたが、コンシュマーアプリ「Click」では、さまざまなアプリを作成することが可能です。「Click」で開発された7万以上のアプリにJPYC決済ができるボタンをつけることで、JPYCの普及促進に努めていきます。

このデモンストレーションを含めたウェビナーを11月19日に開催する予定です。詳しい情報は後ほどWebサイトなどで公開しますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

サブスク伸張し、ストック型への移行が進む

ここからは、ソフトウェア事業の進捗についてお話しします。当社は、サブスクリプションやサポートサービスから構成されるストック型の売上に力を入れています。当中間期におけるストック型売上構成比は77パーセントとなっています。

一方、ライセンスはスライドのオレンジ色で示しています。「ASTERIA Warp」がまだ一定量残っていますが、これは減らさずにストック型をさらに増やしていくことを経営の方向性としています。

製品のトピックス

製品ごとのトピックスをご説明します。まず「ASTERIA Warp」です。「ASTERIA Warp」の当中間期の売上は13億7,000万円となりました。

データ連携需要は拡大しており、高市首相もデータ連携について言及されました。この背景には、AIもデータを収集する必要があることに加え、自治体や中央官庁を含め、さらに多くの拠点・さまざまな場所でデータを連携する必要があることが挙げられます。また、SAPの2027年問題など、レガシーシステムがある程度限界に達していることによる需要の高まりもあります。

トピックスとしては、日本最大のクラウドベンダーであるIIJ社と共同で、8月に満を持して「ASTERIA Warp Cloud」(iPaaS)をリリースしました。サブスクリプション製品においては、「ASTERIA Warp Core」と「ASTERIA Warp」のサブスク版が好調で、前年同期比35パーセントの増収となっています。

次に「Platio」です。さまざまなDX、特に現場のDXに貢献しており、当中間の売上は前年同期比32パーセント増加し、1億円に迫っています。また、ARRは2億円に達する見込みです。

背景としては、人手不足対策にデジタルを活用するニーズが継続して増加しており、スマートフォンやタブレットの利用が現場で求められていることが挙げられます。また、昨今非常に問題化している獣害対策にも対応していることもあります。クマやイノシシなどの獣害対策についても、現場でPCを持ち込むことが難しいため、スマートフォンを活用した情報共有の用途で利用されています。

トピックスとしては、先ほどご説明した、リリースしたばかりの「Platio Canvas」があります。

新規Warpアダプター続々と

「新規の『ASTERIA Warp』アダプターは100以上ある」と先ほど述べましたが、さらに増加しています。Box AIアダプターや「カオナビ」とつながるアダプター、「Databricks」に関する新しい領域のデータアダプターなど、続々と提供を開始しています。

展示会やイベントを通じた販路拡大と認知度の向上

秋ということもあり、展示会やイベントを通じた販路の拡大に取り組んでいます。これらはパートナーの方々と共に実施しており、認知度の向上を目指しています。「データ連携といえば『ASTERIA Warp』」というイメージをさらに確立し、浸透させるための活動を続けています。

協業による新市場開拓の推進

新しい領域の製品となる「Gravio」では、協業による新しい市場の開拓を推進しています。スライドは、パナソニックネットソリューションズ社が提供する「ArgosView」という、シェアNo.1の監視カメラおよび監視システムです。「ArgosView」との連携により、需要がどんどん増加しています。

監視業務の対象は、人間だけでなく、先ほど例に挙げた動物を含めて増え続けています。しかし、人がすべてを判断するには限界があります。そのため、AIを活用して自動化と効率化を図る必要があります。この自動化と効率化を「Gravio」と「ArgosView」で実現しています。

新領域での展開:宇宙&ロボティクス

新たな領域での展開として、今年は宇宙領域への進出を発表しました。当社は、宇宙で活躍するロボットのためのソフトウェアを提供しています。このプロジェクトでの製品名は「Artefacts(アーテファクツ)」です。ぜひ名前を覚えていただければと思います。

また、「Artefacts」を活用し、オーストラリアの月面ロボットを開発する企業と当社のAI専業子会社 アステリア Artificial Recognition Technology(アステリアART)の連携も発表しました。この他にも、宇宙開発分野での技術展開を進めており、特に人が直接行ってテストを行えない環境でのシミュレーション技術を得意としています。月面では人がテストを行うことはできませんし、地上でも人が立ち入れない危険な場所はたくさんあります。こうした場所のシミュレーションをAIとともに行います。

新領域での展開:住宅産業でのNFT基盤の開発

スライドは、住宅産業におけるNFT基盤の開発についてです。上場企業であるLib Work社と業務提携しました。

同社の3Dプリンター住宅の設計はすべてデジタルデータ化されていますが、この設計データの真正性を、当社のブロックチェーン技術とノウハウを活用してプラットフォーム化するという取り組みを推進しています。さらに、この仕組みでは支払いをJPYCで行うことまで踏み込んでいます。

このように、まったく新しい2つの領域に踏み込んでいます。

新領域での展開:TECHFUNDとJPYC監査で連携

スライドは、先ほどご説明したJPYCについてです。企業が安心・安全にJPYCを扱えるようにするための監査、特にセキュリティ監査の部分において、TECHFUND社と業務連携を発表しました。

このように、当中間期だけでも多くのトピックスがありました。本日取り上げていないトピックスもまだ多くありますが、主なものをご紹介しました。

IR活動の強化

現在、IR活動を強化しています。北海道や東京、福岡に加え、山形、広島、鳥取、兵庫などの地方でも活動を行っています。スライドの写真は、広島でのIR説明会になります。また、国内だけでなくシンガポールでも私が説明を行い、多くの投資家や株主の方々にご参加いただきました。

IR活動の強化によって、株主数は大きく増加しています。2025年3月末時点の1万人強から、今回はなんと1万7,000人を超えています。

当社は動きが早い企業です。このような活動を積極的に進め、投資家や株主のみなさまに広く理解を深めていただきたいと考えています。今後もIR活動の強化を引き続き進めていきますので、みなさまにもぜひご参加いただければと思います。

新政権の方向性は追い風か?

最後に、政治環境や国の状況が大きく変化している中で、当社の事業や取り組みに関して「どのような影響があるのでしょうか?」「追い風でしょうか? 向かい風でしょうか?」というご質問をいただくことがよくあります。

結論から言うと、いくつかの追い風が吹いていると考えています。スライドに記載している内容は、高市首相の所信表明演説を抜粋したもので、その一節に「『世界で最もAIを開発・活用しやすい国』を目指して、データ連携等を通じ、AIを始めとする新しいデジタル技術の研究開発及び産業化を加速させます」とあります。

当社が取り組んでいることが、この1文だけでもいくつも散りばめられています。一例を挙げると、AI専業子会社のアステリアART社や、当社が進めているデータ連携です。高市首相のAIの一節にデータ連携がどのように関係しているのかについて、業界の方はもちろんご存じかと思いますが、AIはベースとなるデータがないと学習することができません。つまり、AIが賢くなるためにはデータが必要不可欠です。

また、各社に特化したAIやカスタマイズされたAIを作るためには、企業内のさまざまなデータ、現在のデータだけでなく過去のデータも含め、それらがいろいろなシステムから集められ、学習に活用される必要があります。したがって、AIとデータが密接に関わっているということは、非常に明確であるといえるでしょう。

さらに、当社では、子会社を通じて2019年からAIについて取り組み、データ連携に関しては2002年から一貫して行っています。そのため、データ連携のスタンダードと自負しています。

一方、所信表明には「サイバーセキュリティ」や「宇宙」といったワードも出てきます。このうちサイバーセキュリティについては、当社自身はサイバーセキュリティ製品を持っていないものの、各製品におけるセキュリティは非常に重要だと考えています。そのため、当社は6月からサイバーセキュリティの大手であるトレンドマイクロ社の副社長、大三川氏を社外取締役として迎え、サイバーセキュリティ分野をしっかりと強化する取り組みを進めています。

宇宙については、「Artefacts」を中心に、人が行けないような場所でも対応できるロボットのためのソフトウェアに注力しています。

次に、ステーブルコインについてです。新しいデジタル技術、これはまさに最右翼といえるでしょう。ステーブルコインは、社会やお金の新しいかたちを作り出すものです。JPYCだけでなく、大手メガバンクも参入を表明していることから、デジタルコインは世界に広がっていくことは間違いないと見ています。現在はドルが先行し、JPYCが追随していますが、それ以外の通貨でもステーブルコインが普及していくでしょう。

また、高市政権の非常に重要なポイントとして、「経済安全保障」が挙げられます。現在では、国土を守るという観点が実際にはサイバー空間、つまりインターネット上に移行してきています。

ネット上で行われることとして、盗み見られたり攻撃されたりするリスクが挙げられます。そのため、安全保障、特に経済安全保障という文脈では、国産のソフトウェアやハードウェアが非常に重要となります。

もちろん、当社は鎖国を目指しているわけではなく、日本の技術を活かし、攻撃に耐えたり、同盟国や同調する国々と連携を取ることで、この経済安全保障が当社のビジネスにも追い風になると考えています。

最後に、「責任ある積極財政」「大胆な投資促進」という点です。これらは新しい領域に対して、簡単に定期的や定常的にリターンが得られるものではなく、未来に向けた投資という意欲が大きく表れています。

これはまさに、当社が創業以来行ってきたことです。大胆な投資促進を通じて、当社が目指している未来に向けたソフトウェアやその環境が、より明確に、より早く実現することにつながると感じています。

全体として、いくつもの追い風を感じていることをご報告します。

アステリア(3853)中間期 まとめ

最後に、当社の中間期についてまとめます。1つ目は、業績については増収増益を達成しました。特に営業利益は中間期で過去最高となる5億2,000万円を記録し、前年同期比で7倍以上の増益となりました。

2つ目は、プライム市場の維持基準についてです。この2年間、株主のみなさまにはご心配をおかけしましたが、維持基準をクリアし、改善期間が終了しました。

3つ目のM&Aについては、MikoSea社を買収し、ノーコード製品の領域を拡大していきます。

4つ目は、ステーブルコインについてです。社会変革を促すステーブルコイン「JPYC」をはじめ、その他のステーブルコインも続々と登場しており、それらへの対応を進めていきます。また、普及を促進することで市場を創造し、社会に大きなベネフィットとメリットを提供していきたいと考えています。

以上をもちまして、アステリアの2026年3月期中間期決算説明を終了します。ご清聴いただき、誠にありがとうございました。

質疑応答:メガバンクによるステーブルコイン共同発行のインパクトについて

司会者:「3メガバンクのステーブルコイン共同発行について、金融庁が支援対象に採択したと報道がありましたが、このニュースは御社にとってどのようなインパクトがありますか?」というご質問です。

平野:メガバンクのステーブルコインについては、本日も『日本経済新聞』で取り上げられています。当社にとっては非常に歓迎すべきことです。

ステーブルコインそのものが社会に広がることが極めて重要です。3メガバンクが広げていくのは異なる性格を持つステーブルコインではありますが、多くの人が利用するようになることは非常にすばらしいことだと考えています。また、金融庁がステーブルコインを支援する動きも、これからの市場拡大にとって追い風になると考えています。

質疑応答:メガバンクによるステーブルコインのアダプター開発について

司会者:「3メガバンクで検討されているステーブルコインが今後リリースされた場合も、JPYC同様にアダプターの開発を行う予定でしょうか?」というご質問です。

平野:一言で言うと「イエス」です。当社は、さまざまなデータをつなぐデータ連携において、これまで多くのERPや会計ソフトの間で連携を行ってきました。それが競合するものであっても、当社の使命はデータをつなぐことです。

また、当社はJPYCの株主でもあるため、つなぐだけでなく、普及を促進する活動も行っていきます。

質疑応答:JPYCアダプターの利益貢献について

司会者:「JPYCとの連携を深める中で、どのような利益が御社にもたらされると考えていますか?」というご質問です。

平野:ASTERIA Warpがすでに1万社以上の企業で活用されており、さまざまな企業システムと連携しています。当社が発表しているJPYCアダプターはこのような状況の中で、多くの企業が「JPYCを使おう」と考えた場合、一番確実で最も早いソリューションとなります。

したがって、JPYCの普及および企業による利用のスピードに依存しますが、私自身、企業での利用をさらに促進していきます。また、JPYCのメリットを訴求し、企業が活用する場面を広げる活動をさらに進めていきたいと考えています。

質疑応答:JPYCアダプターのリリース予定について

司会者:「JPYCアダプターのリリースはいつの予定でしょうか?」というご質問です。

平野:「ASTERIA Warp」は年に2回、6月と12月にアップデートを行っています。このJPYCアダプターは12月のアップデートに合わせてリリースを予定しています。

質疑応答:JPYCの利用料について

司会者:「JPYCアダプターの利用料はいくらでしょうか?」というご質問です。

平野:現時点では未発表です。リリース時に発表しますので、お待ちください。

質疑応答:JPYCの個人利用について

司会者:「JPYCアダプターは個人でも使うことができるのでしょうか?」というご質問です。

平野:「ASTERIA Warp」を個人で利用されている方はほとんどいませんが、「ASTERIA Warp」をご利用いただければ個人でも利用が可能です。

質疑応答:JPYCの収益モデルについて

司会者:「JPYCによる御社の収益は、アダプター収益のみなのでしょうか?」というご質問です。

平野:当社はJPYCを推進する立場にあります。JPYCアダプターを普及させるために、アダプター料をいただくのではなく、トランザクション量に基づき課金するなど、さまざまなオプションを現在検討しています。

質疑応答:JPYC導入企業における「ASTERIA Warp」アダプター利用見込みについて

司会者:「JPYC導入企業のうち、『ASTERIA Warp』のアダプターの利用が見込まれる企業はどれぐらいを想定していますか? 逆に、『ASTERIA Warp』の既存顧客のうち、JPYCアダプターの利用が見込まれる企業はどれぐらいを想定していますか?」というご質問です。

平野:JPYC導入企業には、当社のデータ連携シェアの割合程度は活用していただきたいと考えています。

逆に「ASTERIA Warp」既存顧客におけるJPYCアダプター利用については、JPYCの普及度合いに依存するため、現時点で当社が想定することはできません。したがって、JPYCそのものの普及に向けて活動を進めていくことを考えています。

質疑応答:AIエージェント活用の展望について

司会者:「Deep ResearchなどのAIを活用した検索技術が急速に高度化していますが、社内サーバー等に蓄積された独自データとAIエージェントを連携させたいというニーズも、今後さらに広がると見ています。活動事例や導入実績はありますでしょうか?」というご質問です。

平野:非常に最新の情報をカバーされているご質問だと感じます。AIエージェントを積極的に活用するには、社内データの連携が不可欠です。この分野には、今後大きなニーズがくると考えています。いずれはAIエージェントを使用しない企業が存在しないというほどの状況になるでしょう。また、その発展形として、多様なサービスやMCPサーバーへのアクセスを可能にするためのデータの集約や分析が重要になります。

ただし、具体的な活用事例や導入実績について、現時点で発表はしていません。当社が想定するモデルや、PoC(概念実証)といった実験的な利用を進めている段階です。

質疑応答:「ASTERIA Warp」の成長余地について

司会者:「『ASTERIA Warp』は市場の約半数のシェアを獲得していますが、今後のさらなる成長余地はどの領域にあると考えていますか?」というご質問です。

熊谷晋氏(以下、熊谷):クラウドファーストの流れが続く中でリリースした「ASTERIA Warp Cloud」、いわゆるiPaaSと呼ばれる領域があります。

また、2025年3月期から「ASTERIA WarpCore++」や「ASTERIA Warp サブスクリプション」を追加するなどして、「ASTERIA Warp」の階段モデルというものを作ってきました。

これにより、中小規模や部門利用といったところで、最初は小さく導入し、そこから大きく育てていくことが可能になりました。このSMBマーケットを広げ、段階的にアップグレードしていくことで収益を生むという戦略を、今後の成長領域として考えています。

質疑応答:サブスクリプション伸長の背景について

司会者:「『Platio』や『ASTERIA Warp』のサブスクリプションが3割以上の伸びを記録していますが、この背景を教えてください」というご質問です。

熊谷:「3割以上の高い伸び」とのことですが、堅実な伸びと表現したほうが適切かと思います。「Platio」および「ASTERIA Warp」は、法改正などの大きな追い風を受けて伸びているわけではなく、堅実にお客さまのニーズを捉えていることが背景にあると考えています。

質疑応答:今後の有望製品やテーマについて

司会者:「今後の有望製品やテーマがあればコメントをお願いします」というご質問です。

熊谷:やはり「Platio Canvas」が挙げられます。特にこれまで展開してきた「ASTERIA Warp」ビジネスの上に「Platio Canvas」を展開していく予定です。

「ASTERIA Warp」はバックエンドの連携を行う製品ですが、それに対して「Platio Canvas」はフロントエンド、例えば画面やモバイルニーズに対応可能であることから、お客さまのトータルソリューションを実現できると考えています。

質疑応答:「Platio Canvas」の大規模マーケティングの予定について

司会者:「『Platio Canvas』については『Click』とのシナジーという触れ込みでしたが、9月29日にひっそりとリリースされています。今後、大々的なマーケティングなどの予定はありますか?」というご質問です。

熊谷:ひっそりとリリースしたつもりではありませんが、ちょうど中旬にMikoSea社とのM&Aについて発表がありました。また、「Click」は小規模のお客さま向けのBtoC領域で使用されており、フリープランもご利用いただける形態としています。

したがって、当社が目指しているエンタープライズ領域においては、コンテンツ面でも不足があるため、静かな立ち上がりと見られているのかもしれません。

大々的なマーケティングについては、今後しっかりと実施していく予定です。コンテンツもそろってきていますし、私が注力しているELG(Eco-system Led Growth)の販売網に「Platio Canvas」を組み込んでいくことを考えています。

質疑応答:「Platio Canvas」の進捗について

司会者:「『Platio Canvas』の進捗を教えてください」というご質問です。

熊谷:パートナーさまからの反応は非常に良好です。これからのビジネス展開に向けて、パートナー協議を含めた取り組みをしっかりと進めていきたいと思います。

質疑応答:「Artefacts」の国内事例について

司会者:「『Artefacts』のオーストラリアでの月面探査に関する採用事例が公表されましたが、国内事例またはその他の引き合い状況はいかがでしょうか?」というご質問です。

平野:「Artefacts」の発表について、ピックアップいただきましてありがとうございます。国内事例についてはいくつかあるため、発表をぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

質疑応答:「Artefacts」の2026年3月期決算への寄与について

司会者:「『Artefacts』の2026年3月期決算への寄与はどの程度でしょうか?」というご質問です。

平野:2026年3月期決算への寄与については、まだ大きくありません。この新しい領域は、現時点で当社が持つ大きな柱と比較すると、規模が小さい状況です。

質疑応答:自社株買いの方針について

司会者:「今年の夏は、JPYCとの連携発表などで株価が上がり、プライム維持基準クリアにもつながったと思いますが、今後は自社株買いなど、株価向上に寄与する株主還元施策のお考えはありますか?」というご質問です。

平野:自社株買いは実施したところです。今後も、株主還元の一環として、機動的な自社株買いを継続的に検討していく予定です。

質疑応答:決算と株価の関係について

司会者:「好決算と感じ取れましたが、株価は下落しています。これに関して、どのような見解をお持ちでしょうか?」というご質問です。

平野:長年の経験上、決算が株価にストレートに反映されることはあまり多くありません。

株価はマーケットの状況にも大きく関係しています。現在、日経平均株価は5万円を超えた後に再び5万円を下回る動きがあり、全体のモメンタムや投資家心理にも影響を与えています。そのため、決算の影響は突然ある1日だけではなく、今後の株価の推移にしっかりと影響していくものであると考えています。

質疑応答:株主優待について

司会者:「QUOカードではなく、JPYCに関連した株主優待を検討してください」というご質問です。

平野:こちらはすでに検討を進めています。検討のポイントとして、JPYCは法律上、現金等価物とされています。つまり、円を配布することに近い性質を持っていることから、QUOカードを配布する場合とは異なり、法律上の構造や規制を確認する必要があります。しかしながら、JPYCの普及促進という観点からも引き続き検討を重ねていきます。

質疑応答:JPYCの株式増加の可能性について

司会者:「JPYCがIPOするまでの間に、JPYCの株を増やす予定はありますか?」というご質問です。

平野:JPYCの株を増やすということですが、JPYCはご存じのとおり上場していない会社であるため、勝手に購入することはできません。これは今後のJPYCの増資や資金調達の予定次第ということになります。

質疑応答:TECHFUND社との資本関係について

司会者:「TECHFUND社との資本関係はあるのでしょうか?」というご質問です。

平野:TECHFUND社との資本関係はあります。

質疑応答:敵対的買収への対策について

司会者:「敵対的買収があった際の対策はあるのでしょうか?」というご質問です。

平野:敵対的買収について、特定の買収策は導入していません。基本的にはガバナンスを確立し、株主のみなさまとの信頼関係を築き、当社の経営に賛同していただくことを目指しています。さまざまなアクティビストがくるような状況があっても耐えられる経営をすることが基本です。

ただし、今後の環境次第では、なんらかの策を講じる可能性を否定しているわけではありません。基本的には、株主平等をできる限り重視していきたいと考えています。

質疑応答:MikoSea社の買収に関する情報開示について

司会者:「買付額や自己株の利用など、MikoSea社買収にかかる情報が未公開なのはなぜでしょうか?」というご質問です。

平野:全体的には会社の総資産を基準として、この事業がどの程度の位置づけになるかが開示の基準として定められており、その基準に達していないため、開示していません。世の中にはM&Aで開示されていない事例が多数あると思いますが、それと同様に、特定の基準以下であることから、基本的に開示していないということです。

ただし、自己株の利用に関しては開示対象となります。そのため、本日、「第三者割当による自己株式の処分に関するお知らせ」で今回使用した自己株について開示しています。詳しくはそちらをご覧ください。

質疑応答:MikoSea社との今後の展開について

司会者:「MikoSea社との今後の展開をわかりやすく教えてください」というご質問です。

平野:基本的には、「Click」をエンタープライズ向けに展開していくことが非常に重要だと考えています。

日本のシステムでは多くの機能が求められています。「ASTERIA Warp」はバックエンドのデータ連携において大きなシェアを持っていますが、フロントエンドの画面設計においては、これまでノーコードで優れたものがなかなか存在しませんでした。

そのような中で、非常に自由度の高いアプリケーションを作れることは重要であり、当社は「ノーコードで日本のソフトウェア文化を変える」ために、「Click」を活用していきます。

MikoSea社について補足すると、JPYCの普及においても大きな役割を果たすと考えています。特に、コンシューマー向けのアプリで利用者がJPYCを簡単に使用し、JPYCで決済する仕組みが広がる可能性があります。加えて、MikoSea社はNFTのプラットフォームを保有しており、これが将来的になんらかのかたちで活用できる可能性があると考えています。

質疑応答:JPYCの発行量について

司会者:「本日15時時点のJPYCの発行量は1.31億JPYCですが、発行から11日経過した状況としては想定内でしょうか? それとも少ないとお考えでしょうか?」というご質問です。

平野:当社は発行体ではないため、特定の想定をしているわけではありません。将来的に大きくなることは想定していますが、現時点では特にコメントすることはございません。

質疑応答:JPYCと3メガバンクのステーブルコインの相違点および展望について

司会者:「3メガバンクが共同発行を検討しているステーブルコインとJPYCステーブルコインとの大きな相違点はどのような内容でしょうか? 勝算はあるのでしょうか?」というご質問です。

平野:ステーブルコインという点で類似する部分が多いですが、その発行形式については正確な発表がまだありません。一部では「信託方式ではないか?」とも言われており、この方式の違いが特徴となる可能性があります。

また、勝算については、まだ始まったばかりであり、勝ち負けを論じる段階ではないと考えています。現在のリアル円に対して、ステーブルコインがどの程度利用されるかが焦点となります。そのため、3メガバンクのステーブルコインや今後登場が予想される企業と連携しながら、ステーブルコインの市場を広げていくことが重要です。

したがって、3メガバンクのステーブルコインも歓迎しており、JPYCとともにステーブルコインの分野を拡大させていきたいと考えています。投資家や株主のみなさまにも、ぜひステーブルコインを活用いただければと思います。

平野氏からのご挨拶

本日はアステリアの中間決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございました。ご説明のとおり、中間決算は前年同期と比べ大きく変化しており、営業利益が黒字転換を果たしました。これにより、当社が推進してきた事業改革が奏功していることを数字としてみなさまに示すことができたと思います。

また、以前から取り組んでいたステーブルコインがいよいよ世の中に認められてきました。さらには、次の一手として考えている宇宙やブロックチェーンの領域にも引き続き挑戦し、大きな成果を目指していきます。これらはまだ時間を要するかもしれませんが、将来的に大きな果実をもたらすため、取り組みを継続していきます。

いずれにしても、現状のソフトウェア事業の確かな成長に加え、新たな挑戦領域との組み合わせによって、アステリアの事業、アステリアという会社が非常に大きな発展を遂げ、みなさまのご期待に応えられる未来を築き上げる基盤となっていきます。

これからも投資家のみなさま、株主のみなさまのご指導、ご支援を何卒よろしくお願いします。本日は誠にありがとうございました。

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