【QAあり】日本精化、ウールグリース誘導体の好調な推移により営業利益前年比+24.2%の大幅成長 通期業績予想を上方修正へ
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矢野浩史氏(以下、矢野):日本精化株式会社代表取締役社長の矢野浩史です。本日は、当社2026年3月期の第2四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
それでは、さっそくですが、ご説明内容に移ります。本日は、スライドをご覧のとおり、1から4の項目についてご説明します。
日本精化グループ 事業内容

決算説明に先立ち、当社グループの事業領域についてご説明します。当社グループの主なセグメントは、機能性製品と環境衛生製品の2つです。
機能性製品は、主に3つのサブセグメントに分類しています。化粧品原料を中心としたビューティケア分野、医薬品業界へ展開するヘルスケア分野、電子材料や資源エネルギー材料を展開するファインケミカル分野です。
後ほど詳細をご説明しますが、今回の第2四半期の決算では、ウールグリース誘導体が好調に推移しました。この事業について簡単にご説明します。
ウールグリースは、羊の毛を洗浄する際に採取される油脂です。当社では、このウールグリースを海外から輸入し、工場にてラノリンやコレステロールといった誘導体を製造しています。さまざまな用途で販売しており、ビューティケア分野、ヘルスケア分野、ファインケミカル分野の3分野で展開しています。
この事業は近年、海外の競合企業との価格競争の激化を背景に、現在進行中の中期経営計画では選択と集中を前提とし、生産・販売量を制限した中で、一定の利益を維持し確保する計画でした。
しかし、ビューティケア、ヘルスケア、ファインケミカルの各分野において、市場の需要が回復していることや、数年来取り組んできたコストダウン施策が実を結び、成果が現れてきています。
環境衛生製品は、関連会社のアルボースが展開するハイジーン分野に該当します。決算説明資料では各分野の成績を公表しており、本日はこの4分野の業績についてご説明します。
2025年度第2四半期 連結決算概要

第2四半期の決算概要について説明します。スライドの表は、第2四半期までの連結決算概要を示しており、前年同期比および4月に公表した第2四半期の予想値と対比しています。ご覧のとおり、売上高、営業利益、EBITDA、経常利益、純利益のすべてにおいて、前年および予算に対して増加しました。
前年同期比での実績について、売上高は約174億円から0.7パーセント増の175億円と微増でしたが、営業利益は24億円から24.2パーセント増加し、29億8,000万円となりました。また、営業利益率も13.8パーセントから17パーセントに改善しました。
さらに、親会社株主に帰属する当期純利益は17億9,000万円から25億1,000万円に増加しています。それぞれの要因については、後ほど各サブセグメントの業績スライドにてご説明します。
2025年度第2四半期 連結決算 営業利益分析

全体の営業利益について、要因分析をご説明します。
人件費・固定費の増加による利益の減少はありましたが、工業用ウールグリース誘導体が寄与したファインケミカル分野や、医薬中間体のスポット案件が寄与したヘルスケア分野で販売数量が増加したことに加え、ウールグリース誘導体の生産コスト低減の効果もあり、前年同期比で5億8,000万円の増加となりました。
2025年度第2四半期 連結決算 セグメント別概要

スライドの表は、セグメントごとの売上高、営業利益、償却前営業利益の前年同期との差額と増減率を示しています。
機能性製品については、トレーディング分野において、当初の計画どおり商事子会社の1社が当社グループから離脱した影響により大幅な減収減益となったものの、ヘルスケアおよびファインケミカル分野の販売増加によりカバーし、機能性製品全体では前年同期比で微増の138億6,000万円の売上高となりました。
また、営業利益は前年同期比で27.8パーセント増の26億9,000万円となり、営業利益率は15.2パーセントから19.4パーセントに上昇しました。
ハイジーン分野である環境衛生製品は、前年同期比で売上高が3.1パーセント増の35億2,000万円、営業利益は微増の2億6,000万円という結果となりました。
機能性製品 ビューティケア

各分野の状況についてご説明します。まずはビューティケア分野です。対象品目は、スライド上段に記載されているとおり、化粧品用リン脂質素材や機能性油剤です。美白主剤などの生理活性物質のほか、化粧品用ウールグリース誘導体として、ラノリン、コレステロールも含まれています。
第2四半期までの状況について、海外向けの化粧品用機能性油剤は前期までは好調に推移していましたが、上期は流通在庫の調整期間となり、販売が減少しました。一方、化粧品用リン脂質素材では国内主要顧客への販売が増加しました。
また、化粧品用ウールグリース誘導体であるラノリンは海外向けが好調で、増収となっています。利益率の高い国内向け美白主剤の販売減少が影響し、利益率はやや低下しましたが、約26パーセントという高い水準を維持しています。全体としては増収減益となりました。
機能性製品 ヘルスケア

ヘルスケア分野についてです。対象品目はスライドに記載のとおり、主に5つです。医薬品用高純度リン脂質、リポソーム化およびリピッドナノパーティクル化(LNP化)などのCDMO開発支援、医薬品用ウールグリース誘導体、医薬品原薬の中間体、グループ会社における薬理・安全性試験が対象となります。
第2四半期の業績は、売上高・営業利益ともに前年同期比で大幅な増加となりました。
医薬用ウールグリース誘導体については、海外向けのラノリン、コレステロールの販売が増加したことに加え、医薬品中間体では以前からご説明しているとおり、上期にスポットでの受託案件が業績に寄与しました。
また、医薬品用高純度リン脂質の海外向け販売が好調で、新プラントも順調に稼働し、業績に貢献しました。ギリアド・サイエンシズ社向けの新プラントは、計画どおり安定稼働しています。その結果、前年同期比で増収増益となりました。
機能性製品 ファインケミカル

ファインケミカル分野の説明です。この分野の対象品目として記載している5つの品目があります。
主力商品は、電子材料や資源エネルギー素材の原料となる各種酸クロライド、ペロブスカイト型太陽電池用素材、樹脂添加物として利用される脂肪酸アマイド、飼料用コレステロールを含む各種ウールグリース誘導体、そしてコーティング剤です。
第2四半期の業績は、売上高・営業利益ともに前年同期比で大幅な増加となりました。注力しているペロブスカイト型太陽電池用素材については、社会実装が着実に進展しており、順調に進捗しています。
ウールグリース誘導体については、生産効率化によるコスト削減が寄与し、さらに潤滑防錆剤などの工業用ラノリンの販売が増加しました。加えて、脂肪酸アマイドは適正価格による販売が業績に貢献しています。
コーティング剤については、海外向けでの拡販が遅れ、マイナス要因となりましたが、全体としては大幅な増収増益を達成しました。
環境衛生製品 ハイジーン

環境衛生製品についてご説明します。この分野では、フードビジネス分野、医療・介護分野、手洗い石鹸液や手指消毒剤などのアメニティ分野の3つに注力しています。
第2四半期の業績について、フードビジネス分野では濃縮中性除菌洗浄剤など新製品の上市が遅れる一方、食品工場向け衛生用品の販売が増加しました。アメニティ分野では、感染対策意識の低下に伴い手指消毒剤の販売が減少しましたが、業務用ハンドソープの販売が増加しました。
一方、原料であるパーム油の価格高騰が続いている状況を受け、製品価格への転嫁やコストダウンの強化を図りました。その結果、売上高は前年同期比で微増の35億2,000万円、営業利益は横ばいの2億6,000万円となりました。
2025年度第2四半期 連結貸借対照表

連結貸借対照表およびキャッシュフロー計算書の概要をご説明します。資産は前年度末比2億4,000万円減少し、595億6,000万円となりました。
投資有価証券の含み益で15億円、売掛債権の増加で6億8,000万円といったプラスの要因がありましたが、現預金は自己株式の取得20億円の影響で11億8,000万円のマイナスとなりました。
たな卸資産で7億6,000万円のマイナス要因もあり、結果として2億4,000万円の減少となりました。
負債は借入金などの減少により11億円減少し、96億2,000万円となりました。1株当たり純資産は、前年度末比約118円増の約2,259円です。
2025年度第2四半期 連結キャッシュフロー計算書

営業キャッシュフロー計算書に関する補足です。
営業キャッシュフローは、税引前利益の増加などによりプラス33.4億円となりました。一方で、投資キャッシュフローは、有形固定資産取得などによりマイナス18.5億円となりましたが、フリーキャッシュフローは14.9億円のプラスとなりました。
財務キャッシュフローは、5月から9月までの自己株式取得などによりマイナス29億3,000万円となり、現金同等物はマイナス14億1,000万円となりました。
2025年度上半期 トピックス

スライドは、上半期のトピックスをまとめたものです。
4月末に中期経営計画の見直しを公表し、それに合わせて化粧品用機能性油剤プラントCIP新設の計画も発表しました。上期には82万2,700株、20億円分の自社株を取得しました。そして、先日10月31日に公表したとおり、自己株式155万株を11月20日に消却する予定です。
子育てサポート企業の認証である「くるみん」を取得しました。6月には、今年度版のTCFDレポートを公表しています。また、9月には、EcoVadis社のサステナビリティ調査において、上位15パーセントに与えられるシルバー評価を獲得しました。
2025年度通期 連結業績予想

通期業績予想についてご説明します。スライドの表は、10月末に公表した業績予想の修正や2025年度の予想、対前年実績、さらに4月に公表した予想値との対比を示しています。
売上高は前年比で微減ですが、営業利益、EBITDA、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益については、前年比および予想との対比で増加する見通しです。
売上高は期初予想の342億円に対して2.3パーセント増の350億円、営業利益は期初予想の50億円に対して10パーセント増の55億円、親会社株主に帰属する当期純利益は期初予想の40億円に対し12.5パーセント増の45億円を見込んでおり、業績予想の修正を公表しました。
各要因の詳細については、後ほど各サブセグメントの業績を示したスライドでご説明します。
2025年度通期 業績予想 セグメント別

セグメントごとの概況についてご説明します。機能性製品全体では、商事子会社が離脱した影響が大きく、売上高は前年比3.8パーセント減の273億6,000万円を予想しています。一方で、営業利益は前年比12.4パーセント増の48億5,000万円を見込んでいます。
サブセグメントでは、ヘルスケアおよびファインケミカル分野が増収増益の見込みです。ハイジーン分野である環境衛生製品は、売上高が前年比5.8パーセント増の74億円、営業利益が前年比11.7パーセント増の5億8,000万円と予想しています。
機能性製品 ビューティケア

セグメントごとに詳細をご説明します。
スライド左側には、外部環境と下期の見通しについて記載しています。当社事業への影響はプラス要因とマイナス要因で表示し、活動方針には下期の主な活動内容を示しています。スライド右側には、過去2期間の実績および今期通期見込みの経営指標を記載しています。
ビューティケア分野についてご説明します。外部環境としては、国内市場の緩やかな拡大、特に高付加価値化粧品の伸長、欧米ブランドからのサステナブル素材への需要拡大、そして世界の化粧品人口の増加が挙げられます。これにより、グローバル市場は今後も拡大すると予測しています。
中国市場では、ローカルブランドのシェア拡大が見込まれます。その中で、下期の見通しとしては、主に海外向けの化粧品機能性油剤の需要拡大が継続し、下期後半にかけて流通在庫の緩和が進むと予測しています。
化粧品用リン脂質素材は、上期に回復してきた国内顧客を中心に販売増加が見込まれています。一方で、営業利益率が高い美白主剤などの生理活性物質の販売は減少する見込みです。
ビューティケア分野全体では、売上高95億円、営業利益23億5,000万円を見込み、今期は増収減益となる見通しです。
当社では、さらなる顧客獲得を目指し、昨年4月に開設した化粧品用オープンラボにおいて、お客さまとともに商品を創り出す場を設け、当社の化粧品原料をより多くの方々にご理解いただけるような施策を実施していきます。
また、サステナブル素材への対応を引き続き行っていきます。さらに、今後の需要増を見込み、生産能力の強化を目的に新プラントの建設計画を進めていきます。
機能性製品 ヘルスケア

ヘルスケア分野です。外部環境として、競合の参入や再編による競争激化が予測されますが、核酸医薬品など成長モダリティにおいて、当社の医薬品用脂質が応用可能です。また、医薬品開発のCDMO、すなわち分業化により、当社のリポソーム化やLNP化サービスが医薬品開発に貢献できると考えています。
下期について、新プラントでの医薬品用高純度リン脂質の生産は計画どおりに稼働する見込みであり、特に海外向けの販売増を見込んでいます。また、ウールグリース誘導体についても、海外向けコレステロールの販売増加を予測しています。
一方、医薬品中間体については、当初計画どおり上期のスポット受託品がありましたが、その反動で減少する見込みです。ヘルスケア分野全体では、売上高76億円、営業利益13億円、EBITDAは前年比3億円増の20億9,000万円を見込んでいます。
活動方針としては、新プラントの安定供給体制の拡充、湘南ラボでのオープンイノベーション推進、リポソーム化やLNP化のテーマ獲得を引き続き進めていきます。
機能性製品 ファインケミカル

ファインケミカル分野です。外部環境として、将来の成長が期待されるペロブスカイト型太陽電池は、今後も社会実装に向けた進展が見込まれます。当社が注力しているサステナブル素材についても、今後さらに活躍の場が広がると予想しています。
一方で、石化プラントでの生産規模の縮小や、海外競合の参入による競争激化が主な事業リスクと考えています。
下期の見通しとしては、ウールグリース誘導体について、潤滑防錆剤など工業用ラノリンの販売増と、生産効率化によるコスト削減が寄与する見込みです。脂肪酸アマイドでは、適正価格での販売による増加、コーティング剤では、新製品による顧客獲得を通じた販路拡大を見込んでいます。
この結果、ファインケミカル分野合計では、売上高58億円、営業利益10億円を見込んでいます。
活動方針として、戦略品目であるペロブスカイト型太陽電池用素材については、社会実装に対応するため、量産体制の確立を目指します。ウールグリース誘導体では、海外競合の動向を注視しながら販売戦略を立案するとともに、効率的な生産による利益確保に努めます。
また、将来の柱となるコア事業の探索・育成に向けた営業活動を強化します。脂肪酸アマイドについては、石化プラントの規模縮小が予想されるものの、生分解性樹脂への応用が進展しており、サステナブル素材としての用途展開を加速します。
コーティング剤では、遅れている新製品の拡販、とりわけ海外での販売拡大に注力します。
環境衛生製品 ハイジーン

環境衛生製品、ハイジーン分野です。外部環境については、プラス要因として、外食産業の市場拡大に伴う衛生用品の使用機会の増加、使用後の医療器具の洗浄を病院以外の外部業者に委託できるよう規制が緩和されることや、介護市場の伸長が挙げられます。
一方で、手指消毒剤については、感染意識の低下により成長の鈍化が見込まれます。
業績の見通しとしては、マイナス要因として引き続き主原料であるパーム油の価格高騰が継続する見通しです。ただし、適正価格での販売やコストダウンの効果を期待しています。また、上期に上市した新製品の寄与や、サステビリティ対応製品の需要増加も見込んでいます。
その結果、売上高は前年比5.8パーセント増の74億円、営業利益は前年比11.7パーセント増の5億8,000万円と、増収増益を予測しています。
活動方針として、フードビジネス分野を最注力分野とし、医療用衛生製品ではSPDを活用した効率的な営業による顧客獲得を目指します。また、原料価格高騰に対しては、適正価格での購入と販売を継続するほか、サステナビリティ対応製品の研究開発を強化していきます。
2025年度通期 連結予想 設備投資

設備投資の状況についてご説明します。2025年度は、4月に公表した化粧品用機能性油剤プラントCIPの新設に関連する費用を建設仮勘定として計上予定で、投資額は、合計で58億円を見込んでいます。減価償却費は14億9,000万円を見込んでいます。なお、新設する化粧品用機能性油剤プラントCIPの稼働開始は2029年度を予定しています。
2025年度通期 連結予想 研究開発投資

研究開発費の推移についてご説明します。2024年度の研究開発費は連結で9億7,000万円となり、売上高に対する比率は2.7パーセントでした。2025年度は、前年比3,000万円増の10億円を予想しており、過去最高の水準となる見込みです。
売上高研究開発費比率は2.9パーセントを予想しています。期首の計画どおり、サステナブル対応製品の開発やフローリアクターのほか、オープンラボや湘南ラボなどでのオープンイノベーションも加速していきます。
株主還元・資本政策

最後に株主還元と資本政策についてご説明します。当社の配当方針は、2022年度よりDOE3.0パーセントを目安としていましたが、2023年度からは3.0パーセントから3.5パーセントに変更し、2024年度には1株当たり74円の配当となりました。
2025年度からはDOE4.3パーセントを目安とし、1株当たり94円への増配を予定しています。先ほど上期のトピックスでもお伝えしましたが、上期に総額20億円、82万2,700株の自己株式を取得しました。155万株の自己株消却については、11月20日に実施する予定です。
中期経営計画で目標としている総還元性向は、2023年度から2026年度の4年間で平均50パーセント以上としています。政策保有株式の縮減については、2026年度までに保有比率を17パーセント以下に縮減することを目標に取り組んでいきます。
引き続き、事業運営の中で得た資金について、事業継続に必要な分を確保しつつ、将来の成長に向けた投資や株主還元にバランスよく配分することで、当社のステークホルダーのみなさまの期待に応えていきたいと考えています。
以上で、私からのご説明は終わります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:ウールグリース誘導体の市場動向について

質問者:ウールグリース誘導体について、収益がかなり伸びているとのことでしたが、この製品は3つのセグメントにまたがっているように思います。販売についても伸びているのか、もし伸びているとすれば、どの領域がどの程度伸びているの
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