【QAあり】大真空、通信・民生向けは直前四半期比で2桁増収 材料価格高騰の影響継続を鑑み、通期業績予想を修正
2026年3月期 第2四半期実績(前年同期比)

長谷川幸平氏(以下、長谷川):株式会社大真空、取締役常務執行役員管理統括の長谷川です。本日はご多用の中、当社の決算説明会にご出席いただき、誠にありがとうございます。それでは、当社の2026年3月期第2四半期決算のご報告と、今後の展望をご説明します。よろしくお願いします。
まず、2026年3月期第2四半期決算の実績をご報告します。売上高195億9,100万円、営業利益1億7,900万円、経常利益がマイナス9,100万円、当期利益がマイナス3億2,000万円となりました。前年同期比では増収減益という結果です。
為替レートは、1USドルあたり前年度の152.78円に対し、今年度上期は146.02円と円高になりました。経常利益以降の赤字の主な要因は、為替差損の発生です。
マーケット別販売実績(前年同期比)

マーケット別の販売実績です。前年同期比で市場別に示しています。スライドの下段から、通信、車載、民生、産業の順に構成されています。
通信は、前年同期比で7パーセント減少しました。主な要因は、マシントラブルによる供給不足です。これにより販売が低迷しました。特に、当社が注力しているフォトリソ分野におけるマシントラブルが、売上減少の主要な要因となりました。
一方、車載では前年同期比で7パーセント増加しました。北米以外での需要が主に増加し、市場全体としても堅調に推移した結果です。
民生は1パーセント減少しました。産業ではFAやロボットが長期低迷していましたが、前期からは回復基調にあると感じています。
営業利益 増減分析(前年同期比)

営業利益の増減分析です。前年実績は4億4,300万円でした。そこから、為替影響を含む価格変動により13億3,000万円減少しました。
一方、限界利益の変動として8億4,000万円増加しています。これは、主に生産数量が伸びたことによる稼働益の寄与によるものです。スライド下段に記載のとおり、材料の高騰や為替変動、マシントラブルによる減益要因を乗り越えての増加となっています。
材料については、主に金の高騰が大きく影響しています。為替変動については、当社の台湾子会社が米ドルに対する台湾ドル高の影響を大きく受けました。
その後、製造部門の固定費や販管費の減少を経て、最終的に1億7,900万円の営業利益で着地しました。
2026年3月期 第2四半期実績(直前四半期比)

第2四半期実績の前四半期比です。売上高は102億1,400万円、営業利益は1億900万円、経常利益は4億4,900万円でした。この増加要因は、先ほどご説明した営業利益の減益とは逆に、為替差益の影響によるものです。前四半期比で伸びた結果、最終的な当期純利益は1億1,900万円となりました。
前提としているUSドルの平均レートは、第1四半期の144.59円に対し、第2四半期は147.46円と円安が進んでいます。
マーケット別販売実績(直前四半期比)

マーケット別の販売実績を前四半期比で示しています。構成は4ページと同じです。最下段にある通信で20パーセントの増加が見られ、大きく伸びました。これは主に季節要因によるものですが、先ほどご説明したマシントラブルの影響が続いており、本来であればさらに伸ばせた可能性のある市場です。
車載は2パーセント増加し、堅調に伸びています。しかし、一部で生産能力以上の受注に対応できなかったため、こちらもさらに伸ばせた可能性のある分野です。民生と産業についても、基本的に季節要因によるものです。
営業利益 増減分析(直前四半期比)

営業利益の増減分析です。前四半期との比較となります。第1四半期の営業利益実績は7,000万円でしたが、為替影響を含む価格変動により800万円減少しました。ただし、為替影響自体はプラスでした。
また、限界利益の変動として1億4,000万円減少しました。生産で稼働益効果はあったものの、スライド上部に記載の生産要因によるマイナス影響を受けました。この生産要因は、先ほどご説明した材料費としての金の高騰が大きく影響しています。
製造部門の固定費と販管費の減少を含め、最終的に1億900万円で着地しました。
棚卸資産推移

棚卸資産の推移です。2026年3月期上期末の棚卸資産実績は207億円で、前期末比で27億円増加しました。このうち、3億円は為替の影響によるものです。
製品・商品は微減となっており、基本的に増加していません。一方、主な増加要因は原材料の増加です。これは以前からお伝えしている部材や金の高騰が大きく影響しています。
設備投資/減価償却費/研究開発費

設備投資・減価償却費・研究開発費の実績です。第2四半期累計の設備投資は11億2,900万円で、前年同期比48億7,000万円の減少となりました。これは前年度の新本社竣工に伴う設備投資があったための特殊要因です。減価償却費は20億600万円、研究開発費は9億7,400万円でした。
四半期単位で見ると、設備投資は5億6,500万円、減価償却費は10億1,100万円、研究開発費は4億5,300万円という実績となっています。
2026年3月期 通期業績予想

今回の決算発表にあわせ、通期の業績予想の修正も発表しました。その修正内容をお伝えします。
売上高は400億円で、期初計画に対してマイナス10億円、営業利益は10億円で、期初計画に対してマイナス10億円、経常利益は5億円で、期初計画に対してマイナス5億円、当期純利益は3億円で、期初計画に対してマイナス2億円となっています。
設備投資は、当初の期初計画では90億円を見込んでいましたが、一部見直しを行い、82億円と8億円を圧縮しました。なお、減価償却費および研究開発費に関する修正はありません。
この修正発表に伴い、USドルの平均レートを期初計画の140円から、足元の市況環境に鑑み、146円に修正しています。
今回の修正に至った背景は、上期の材料価格の高騰です。さらに、この高騰傾向が下期も継続すると想定されるため、通期の業績修正に至りました。
営業利益 増減分析(下期業績予想)

営業利益の上期・下期の推移予想です。2026年3月期上期の営業利益実績は1億7,900万円でした。為替レートは1USドルあたり146円を想定しており、為替の影響はありません。価格変動はほぼ同程度のため、純粋な価格変動としてマイナス1億3,000万円を見込んでいます。
また、限界利益の変動としてプラス11億4,000万円を見込んでいます。この背景として、下期も引き続き材料価格の高騰が進むと予想しています。
一方、上期に発生したマシントラブルは下期には解消されています。これにより、歩留ロスが改善され、フォトリソ工程でのトラブル解消に伴い、フォトリソ製品の出荷が増加する見込みです。その結果、製品ミックスと原価率の改善が期待されます。
製造部門の固定費の増加と販管部門の費用増加を考慮し、下期の営業利益は8億2,100万円を想定しています。上期と合わせた通期の営業利益は10億円を見込んでいます。
為替変動リスク抑制

為替変動リスクの抑制に向けた取り組みです。当社は従来から、事業規模に対して営業外の為替感応度が非常に高いという課題を認識しています。その解消を目的として、この下期にはスライドに記載のスキームに基づき、感応度を低減する取り組みを進めています。
為替感応度が高い主な要因は、本社である日本サイドと海外の販売子会社との間で、日本サイドから見た外貨建ての売掛金や債権が為替影響を受け、連結での為替感応度を大きく押し上げている点が挙げられます。
今回、本社側から販売子会社に増資というかたちで資金を提供し、その資金で親会社に対する債務を支払います。つまり、買掛金のサイトを短縮することで為替感応度を低減します。従来は1円あたり約7,000万円の営業外の為替感応度がありましたが、これを実行することで約3,000万円まで軽減できる見込みです。
これにより、経常利益や当期純利益のボラティリティが低下し、損益の安定化につながると考えています。
以上が決算の実績です。ここからは、今後の展望についてお話しします。
注力すべきドメイン-光トランシーバー向け差動発振器

当社が成長戦略のコアに位置づけている「Arkh(アーク)」シリーズの進捗です。ついに本格的な稼働フェーズに入ったため、その内容をお伝えします。
まず、我々が「Arkh」シリーズで注力すべきドメインとして設定しているのが、スライドに記載している光トランシーバー向けの差動発振器です。
従来、光トランシーバー向け差動発振器では156.25メガヘルツと呼ばれる高周波の発振器が使われてきました。この時点で対応可能な水晶メーカーはかなり限られていましたが、スライド左側のグラフのとおり、2025年を起点に倍の周波数である312.5メガヘルツの市場が立ち上がってきています。我々は、今後これが主流になっていくと見ています。
312.5メガヘルツになると、対応できるサプライヤーがさらに限られます。このような市場環境において、コスト競争力があり、高周波対応に適した発振器「Arkh.2G」の拡販を進めるチャンスが到来したと考えています。「Arkh.2G」の優位性については、次ページ以降でご説明します。
超高周波数帯におけるArkh.2Gのコスト優位性

156.25メガヘルツや312.5メガヘルツといった超高周波の周波数帯で、「Arkh.2G」のコスト優位性が見られます。
スライド左側にコストのイメージを示しています。従来型の発振器製品は、ICを搭載した後に水晶素子を搭載し、周波数調整を行い、密閉パッケージ化して検査し出荷するプロセスでした。しかし、高周波になるほど、水晶の周波数調整や水晶素子の搭載において難易度が大幅に上がり、歩留が著しく悪化する傾向があります。
我々は、高周波の差動発振器用ICを外部から調達していますが、これが非常に高価なデバイスです。そのような材料構成の中で水晶要因の歩留が影響し、大きなロスを生じることが従来品の発振器における原価特性となっています。
一方、「Arkh.2G」は水晶ブランクではなく、「Arkh.3G」と呼ばれる検査済みの水晶振動子の良品を使用しています。さらに周波数調整も完了しているため、搭載後の歩留は基本的に発生せず、当社の推定値でも99パーセント以上の歩留が確保できると考えています。
これにより、従来品で発生していた水晶要因の歩留による材料ロスを回避でき、他社製品に対しコスト優位性を確保できます。この優位性をもとに、光トランシーバー市場で拡販を進めていきます。
Arkh.2G構造の性能優位性

コスト面以外での性能優位性を整理しています。まず、デバイスにとって基本的な価値であるQuality・Cost・Delivery(QCD)について、各要素に対して構造に起因する優位性があります。また、スライド右側にはエージング特性という性能優位性について記載しています。
従来型の製品は、裸の水晶素子をパッケージ内に内蔵しています。この実装においては有機性の導電性接着剤を使用するのですが、経年変化によりガスが発生します。そのガスが裸の水晶素子に付着することで、質量変動で周波数が低下するという特徴がありました。
一方、「Arkh.2G」の構造では、完全に気密パッケージされた水晶振動子を内蔵するため、導電性接着剤で実装してもアウトガスの影響を受けません。これにより、コストや一般的なQCDに加え、性能要求において唯一のソリューションとなり得ると考えています。
Arkh差動発振器の促進

光トランシーバー向けの差動発振器についてご説明しましたが、差動発振器の市場全体で見ると、光トランシーバー向けの比率はまだ低い状況です。しかし、光トランシーバー自体は年平均成長率32パーセントと非常に高い成長率が見込まれています。市場全体を考えると、光トランシーバー向けの差動発振器も非常に有望なマーケットと位置づけています。
今後は、入口として光トランシーバー市場を重視する一方で、それ以外の差動発振器市場においても、「Arkh.2G」の優位性を活かして拡販し、シェア拡大を図りたいと考えています。
優位性を活かしたArkhシリーズの展開

今後の「Arkh」シリーズの展開について補足します。まず、従来型製品の水晶デバイスは、小型化するほどコストが上昇する原価カーブを描いていました。その理由は、小型化するほど歩留が悪化する点や、外部から購入している直接材料の価格が上昇する傾向があるためです。このような背景から、原価カーブは避けられない状況でした。
一方、当社で「Arkh.3G」と呼んでいる振動子は、ウエハレベルで製造を行うため、従来製品とは異なる原価カーブを描くことが可能です。具体的には、製品の小型化を進めることで、ウエハ1枚あたりの取れ数を増やすことができます。現在は1008サイズの製品ラインアップを整えていますが、今後は0806サイズへ小型化を進める予定です。これにより、ウエハ1枚あたりの取れ数は1.4倍に拡大します。
さらに、ウエハ自体の大判化も進めています。現状は4インチプロセスですが、これを6インチプロセスに移行することで、ウエハ1枚あたりの取れ数が2倍になります。小型化とウエハの大判化を組み合わせることで約2.8倍、つまり乗法的なコスト低減が可能な製品です。
このような製品特性があるため、当社は引き続き技術革新にリソースを投入し、それを実現していきたいと考えています。それにより達成した大幅なコスト優位性を基に、先ほどご紹介した非常に高付加価値な差動発振器だけでなく、ボリュームゾーンである車載用発振器や高周波振動子においても十分な競争力を発揮し、シェアを拡大できると考えています。
Arkhシリーズ 下期に本格稼働へ

ご紹介した「Arkh」シリーズは、冒頭でお伝えしたとおり、ついに本格的な量産段階に入ります。すでに量産化は進めていますが、マーケットがボリュームゾーンに移行してきたことを受け、大きな変化点としても期待しています。大規模な受注は来年度以降を見込んでいますが、今年度後半から生産を立ち上げます。
その背景として、先ほどご説明した312.5メガヘルツの分野では、当社はまだ量産実績がありません。そのため、先行して取り組むことで経験曲線を活用し、原価低減や生産の安定化を図りたいと考えています。今年度下期から生産を立ち上げ、売上への貢献は来年度以降を見込んでいます。
実証:単位面積当たりの生産効率向上

現在、当社の徳島事業所で「Arkh.2G」の生産ラインを構築しています。既存製品のラインがある中で、レイアウトを一部変更し、「Arkh.2G」のラインを新たに導入しました。その結果、徳島事業所の単位面積当たりの生産数が約7倍に向上しています。
「Arkh」シリーズにおける単位面積当たりの生産性向上は、当社が当初から掲げていた非常に重要な目標です。この向上が重要な理由は、水晶市場が数量ベースで引き続き拡大していく傾向にあるためです。
例えば、生産数量が倍になった際に工場を新たに1つ建設すると、固定費が大幅に増加します。加えて、間接コストやインフラコストも増大します。固定費が大幅に上昇する中で、受注が比例して増加するとは限らず、増産によって損益が悪化する事態は避けられないと考えています。
しかし、単位面積当たりの生産数をここまで飛躍的に向上させることで、新工場を建設せずに済み、固定費の大幅な増加を回避しつつ、市場の需要に応えていくことが可能になります。このような取り組みは、今後の水晶市場の拡大フェーズにおいて、ますます有効なソリューションだと考えています。
以上が、今後の展望を含めた2026年3月期第2四半期の決算説明になります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:マシントラブルの原因と解決状況について
質問者:マシントラブルが昨年度の上期あたりから発生しているとのことですが、すでに約1年半続いているということでしょうか?
私の記憶が確かであれば、昨年の秋の説明会では「下期には改善する」とご説明され、今年の春の説明会では「今期からは問題が解消する」とお話しされていました。トラブルの内容が変わっているのだと思いますが、具体的には何が起こっていたのでしょうか?
また、先ほど「この下期は問題が発生しない」とおっしゃっていましたが、その言葉を私たちはどのように確信すればよいのか、その根拠を教えてください。
長谷川:当社がマシントラブルの影響をお伝えしたのは、私の記憶では昨年の下期以降です。今期に発生しているマシントラブルも同じフォトリソ工程での事象ですが、内容は異なっています。したがって、昨年度の問題が継続しているわけではありません。
今年度のマシントラブルはすでに上期のうちに解消しています。その後、フォトリソという水晶チップの加工工程を改善し、11月以降にアセンブリ工程へインプットした段階で問題は解決されています。これは当社の実績として確認済みです。
質問者:確か、露光機に問題があるとおっしゃっていたと記憶しています。当時は問題を把握しているので解決できるとのことでしたが、この春にそうお話しされていたにもかかわらず、解決できなかった理由は何でしょうか?
長谷川:発生した事象が我々の想定していたものとは異なる問題だったということです。
質問者:現在の状況をもう一度確認させてください。正常に動いており、歩留は元に戻っているということでよろしいでしょうか?
長谷川:そのとおりです。
質問者:それはいつ頃からですか?
長谷川:アセンブリの歩留は、11月から正常な水準に戻っています。
質問者:10月はまだ影響が少し残っていたものの、11月からの投入分は問題ないという理解でよろしいでしょうか?
長谷川:おっしゃるとおりです。10月の投入分は、上期に製造したチップ部分の投入が残っており、その影響を受けていました。
質疑応答:光トランシーバー市場と生成AIサーバー分野におけるビジネスチャンスと競合優位性について
質問者:光トランシーバーについてのお話があり、成長が非常に期待できると感じました。例えば、今期の御社の売上にどの程度のインパクトがあるのか、来期にはどのくらい増えるのか、イメージがあれば教えていただきたいです。
また、光トランシーバー以外に、生成AIサーバーが盛り上がる中で、どのようなビジネスチャンスがあるのか、それが光トランシーバーと比べてどの程度の可能性があるのかについても教えてください。
長谷川:昨年度も少しご紹介したかもしれませんが、光トランシーバー市場および差動発振器市場における当社のシェアは低い状況です。そのため、現状の売上への貢献度は非常に限定的だと考えています。ただし、312.5メガヘルツのデザインインが進行中であり、そちらではお客さまからの評価が非常に進んでいる状況です。
また、生成AI分野への売上貢献についてですが、特にサーバーにおける水晶デバイスの活用については、当社のマーケットシェアはそれほど高くありません。しかし、製品は揃っているため、現在は拡販を進めている段階です。
水井淳氏(以下、水井):営業本部の水井です。私から補足します。先ほど長谷川がご説明したとおりですが、正直に言って、光トランシーバーの今期の売上高はあまり多くありません。現在の主力周波数は156.25メガヘルツですが、次世代光トランシーバーでは800ギガから1.6テラの領域に拡大するため、312.5メガヘルツの開発を終え、その拡販を進めている段階です。売上への寄与は来期から始まり、その後も大きく成長すると考えています。
質問者:MEMSプロセスの部分が競争力を持つとのことですが、そこに対して御社、あるいは水晶の強みがあればご紹介いただけますでしょうか?
長谷川:MEMSに関してですが、基本的にはPLLという技術を用いて周波数を生成している製品と理解しています。このPLLによる周波数生成の過程で、当社のジッター性能、いわゆるノイズセーブの性能は非常に優れています。この市場では周波数がますます高くなっており、お客さまがジッターノイズを低減したいという要望を持つため、これらの性能に非常に敏感なマーケットとなっています。
したがって、当社のジッター性能における優位性はMEMSに対して確固たるものと言えます。ただし、高周波化が進むと、水晶では対応が難しい領域も出てくるという現実もあります。
具体的にどの周波数帯以上が難しくなるかは、今後の当社および業界全体の開発動向次第となります。しかし、このような水晶の課題についてはユーザー側も理解を深めつつ、部品選択や将来の方向性を検討していると考えています。
現在の156.25メガヘルツや312.5メガヘルツといった周波数帯では、対応できるプレイヤーは限られますが、水晶としてまったく対応できない分野ではありません。そのため、最終的には純粋に性能の優れた水晶が選ばれると考えています。
質疑応答:「Arkh」の稼働率向上とマーケット拡大が見込まれる分野について
質問者:この下期から「Arkh」の設備を増強しており、来期には稼働率が上がるというお話がありました。先ほど「今までは比較的マーケットが小さかった」とご説明されていましたが、設備増強に伴うマーケットの拡大や御社のお客さまの拡大について、具体的な注文があると理解しています。差し支えない範囲で、どのような分野で使用され、売上が増えるのか教えてください。
長谷川:具体的な顧客や特定のアプリケーションについては控えますが、まず先ほど触れた312.5メガヘルツの光トランシーバーを確固たる製品の1つとして考えています。
それ以外の分野でも、現在デザインインが多く進行しています。ボリュームゾーンでは、民生分野のデバイスにおいて、月に100万個単位のオーダーが目前に見えている状況です。
また当然ながら、それ以外の分野でもデザインインが進行中です。しかし、最終的な受注確度については、現在、来年度の事業計画を取りまとめている段階であり、現時点で具体的な水準をお伝えするのは難しい状況です。ただし、これら2つのアプリケーションについて、かなりのボリュームゾーンで作業が進展しているというのが我々の実感です。
質疑応答:営業利益の引き下げについて

質問者:数字について質問します。営業利益を20億円から10億円に引き下げた一方で、為替を140円から146円に見直されています。為替の感応度を含めて、「為替でこのぐらいプラスになる」「金の価格上昇でこのぐらいマイナスになる」など、定量的にご説明いただける部分があれば教えてください。
長谷川:為替の感応度は、1円あたり売上ベースで年間1億5,000万円程度だと考えています。期初計画の140円に対して146円となっているため、本来であれば大きな追い風を受けています。
一方で、一番大きな要因として材料価格の高騰、特に金の価格上昇が影響しています。本日はその影響額を定量的に示すのは難しいですが、今回の減益、すなわち期初計画からの減益分10億円の大部分が、この材料価格の上昇によるものとご理解いただいて差し支えありません。
質問者:念のため確認ですが、1円あたりの売上感応度を教えていただきましたが、営業利益の感応度も教えていただけますか?
長谷川:営業利益は1円あたり5,000万円です。営業外の部分については、先ほどご説明したとおり、現状7,000万円を見込んでいますが、下期には減少する見込みです。
質疑応答:限界利益の変動の背景について

質問者:説明会資料12ページの上下で見た場合の増減益の分析について質問します。11億4,000万円の限界利益の変動が比較的大きいと感じています。特に、生産数量を伸ばして増益を図られていると認識していますが、期末の在庫水準の見通しや、この11億4,000万円の中で生産数量による増益分がどの程度を占めているのかを教えてください。また、生産の具体的なイメージについてもお聞かせいただけますか?
長谷川:11億4,000万円の限界利益の増加の背景についてですが、下期も上期と同様、材料高騰の影響を受けます。そのため、実質的にはこの11億4,000万円よりも稼働率の効果のほうが大きいという点がまず挙げられます。稼働率だけでなく、原価率の改善も進んでいます。その背景として、上期にフォトリソ分野でマシントラブルがあったことが挙げられます。
このトラブルによってアセンブリ工程で歩留が大きく低下しました。歩留が低下した結果、稼働率も低下し、減収要因となりましたが、下期ではこれが改善します。そのため、歩留や稼働率低下による減収要因がプラスに転じて戻ってくる見込みです。また、上期と比較してフォトリソ製品の比率や製品ミックスが改善することで、原価率も改善されると見込んでいます。
残りの部分については、ご指摘のとおり、生産増による影響が最も大きいと考えています。売上ベースでは、上下期で約8億円の成長が見込まれ、その限界利益の増加が要因の1つです。また、ご指摘のとおり、下期から来年度にかけて在庫を積み増す方針です。
在庫水準については、具体的な金額ベースでは控えますが、過剰な在庫を積むのではなく、現在の在庫逼迫状態を適正な水準に戻すための措置です。フォトリソ製品において、TCXO、サーミスタ付振動子、音叉型振動子などがひっ迫している状態を是正し、適正在庫数に調整する中で、一定の在庫増はやむを得ないと考えています。このような生産増に伴う稼働率の効果も加味しています。
質疑応答:光トランシーバー向け発振器の市場進展と競争状況について
質問者:「Arkh」と光トランシーバーの領域は、いずれも御社を含めた複数の日系水晶メーカーが競合している分野だと思います。競合の説明会では、一部の半導体メーカーから312.5メガヘルツの発振器の承認を得たというコメントがありました。これに対し、御社における現在の承認取得の進捗状況やペースについて教えてください。
また、来期の光トランシーバー向け水晶振動子の発振器市場での御社のシェアの見込みや、来期に期待される業績への寄与について、もう少し具体的にお聞かせいただければと思います。
長谷川:足元の採用状況は、営業担当の水井からお答えします。
水井:光トランシーバーについて、確かに同業他社さまはチップ承認を得ています。当社も同様に、メインの光トランシーバーで使用されるチップセットメーカーやモジュールメーカーへの拡販を随時進めています。312.5メガヘルツについては、現在サンプルを提供し、評価を進めていただいている状況です。現時点では承認が確定していませんが、非常に近い状況まで進んでいると考えています。
光トランシーバーのマーケットシェアについて、具体的な数値をお伝えすることはできません。しかし、来期や再来期に向けて、当社はチャレンジャーの立場として、先ほど長谷川がご説明したように、「Arkh.2G」のテクノロジーを活かした競争優位性のある製品を現在開発中です。この製品をもとに、312.5メガヘルツの市場を拡大できると考えています。
また、先ほど他のご質問にもありましたが、MEMS市場や他社が先行している分野についても、当社の「Arkh.2G」のテクノロジーで十分に競争していけると考え、拡販に取り組んでいます。
質疑応答:中期経営計画の進捗と来期計画の確度について
質問者:現行の中期経営計画に対する目線について質問します。来期は中期経営計画の最終年度です。135円ドルを前提に、売上高530億円、営業利益55億円という、多少積極的な計画と認識しています。
今回の下方修正を受けても、その目線は変わらずに攻めていくイメージなのでしょうか? また、来期については、期初の説明会で「130億円ほどの増収予定分のうち90億円ほどはすでに見えている」というご説明があったと記憶しています。現時点での来期の増収額の確度や、期待できるベースについて、コメントをいただけますか?
長谷川:中期経営計画に対する進捗率のご質問だと思います。当社が中期・長期で掲げている成長戦略については、先ほどお話ししたように順調に進捗しています。しかし、単年度の数値に関しては、残念ながら多少の遅れがあることは否めません。その要因としては、「Arkh」シリーズの本格的な立ち上げのタイミングが非常に遅かったという点が挙げられます。
そのため、市場浸透が当初の中期計画立案時の想定ほど進んでいない状況です。要因としては、開発が一部遅れたことが挙げられます。来期の見込みについては、定量的なお話をするのは難しいものの、現時点では約1年の遅れがあるという実感です。数値については現在取りまとめ中で、次回の決算説明会ではある程度明確な情報をお伝えできると思います。
質疑応答:足元の受注状況と売上動向について
質問者:足元の受注状況や売上の動向について、可能であれば用途別に解説いただけますか? また、それが下期の売上計画に対してインラインなのか、好調なのか、それとも遅れがあるのか、その感触もあわせて教えてください。
長谷川:足元の受注状況は非常に堅調です。修正計画との比較の前に、まずその点をお伝えします。今年度の修正計画における売上高400億円に対し、為替影響を除くと前期比で約7パーセントの増加となっています。
今期の売上構成は、ほぼすべてが従来製品によるものです。当社の成長戦略のコア以外の市場でも、これだけの成長が見られるという市場環境だと考えています。
修正計画に対する現在の変動については計画線としか現時点ではお伝えできません。水井より、分野別に特筆すべき点を補足します。
水井:先ほど長谷川よりお伝えした内容を踏まえ、下期の見通しをお答えします。通信分野は非常に堅調に推移すると考えています。また、先ほど話があったマシントラブルも解消の方向にあり、生産が復旧することで市場の要求に応え、引き続き堅調に推移する見通しです。
車載分野については、市場全体で回復し堅調に推移しており、安定した受注が続いています。地域ごとにばらつきはありますが、全体的には非常に堅調です。民生分野においても、アプリケーションによってばらつきは見られるものの、非常に伸びているアプリケーションでは受注が堅調です。
産業分野については、調整局面が終了し、回復に向かっています。全体を見ると非常に堅調に推移していますが、当初の計画に対してはまだビハインドの状態が続いています。ただし、下期および来期に向けて、計画どおりの成長が見込めると考えています。
質疑応答:第2四半期の売上増加要因とマシントラブル影響について

質問者:第2四半期と第1四半期の比較における要因分析についてです。資料の8ページについて、第2四半期の売上が前四半期比で8億円から9億円ほど増加している点を考えると、限界利益もある程度のプラスが出ても良い状況かと思います。しかし、現状を見ると、5億円から6億円程度のマイナス要因があったのではないかと推測しています。
先ほどのご説明では、大部分が金の価格上昇による影響とのことでしたが、半期単位で4億円から5億円程度のマイナス要因と考えてよい規模感でしょうか? それとも、マシントラブルの影響がもう少し大きいのでしょうか? 影響の度合いやニュアンスについて、もう少し教えてください。
長谷川:ご指摘の影響額については、非常に鋭いご確認だと思います。ただし、現実としてはそこまでの金額には達していません。半期で4億円から5億円というほどの影響額ではありませんが、それに近い材料の影響を受けています。
質問者:そのような意味では、マシントラブルの影響も数億円規模であったということでしょうか?
長谷川:歩留が大幅に低下したため、減益要因として非常に大きな影響がありました。
質問者:関連する質問ですが、フォトリソ工程の不具合によって、アセンブリで歩留まりが落ちるというのは、どのような仕組みなのでしょうか?
長谷川:フォトリソ工程からアセンブリ工程に払い出す際、「Arkh.2G」の構成では、その時点で良品か不良品かを判断し、良品のみを払い出します。しかし、フォトリソ工程のチップは単純な裸のチップであり、その後に加工を行うため、払い出しの際に全数を検査する工程にはなっていません。
そのため、狙った寸法と異なるチップが後工程に払い出されると、後工程の検査工程で不良品を除去するしかありません。結果として、歩留が大きく低下し、それに伴い直接材料費も増加するという状況です。
質疑応答:「Arkh」の進捗と受注変化について
質問者:「Arkh」についてです。下期からボリュームゾーンに入るというご説明や、変化点といった表現がありましたが、それを裏付ける受注変化やデザインインの進捗が実際にあるのか、少し気がかりに感じています。
今後数年間の御社の方向性を決める上で非常に重要なことだと思いますが、実際のところ進捗はしっかりと進んでいるのでしょうか? 多少の誤差があったとしても、来期に向けて上向きの方向性を期待して見守れる変化が現れているのかどうか、お聞かせください。
長谷川:電子部品の特性上、次年度にミックスが大幅に変わり、売上に急激なインパクトを与えることは難しいと考えています。つまり、売上に占める構成比が急に2桁まで上がっていくような状況ではないと思います。一方で、お客さまの評価を得ている案件や件数が大幅に増えてきているのは確かです。
来年度、つまり半年先の確定注文がすでに入っているわけではありません。あくまでお客さまの評価が進んでいる状況であり、フォーキャストベースでの数字が出てきていると認識しています。案件が出てきている状況です。
質疑応答:配当方針の現状と今後の可能性について
質問者:配当についてうかがいます。御社は安定配当を行っている印象がありますが、社長が代わったことで、今期や来期以降に配当方針が変わる可能性はあるのでしょうか? それとも「今後も28円は出す」という方針で進めていくのでしょうか?
長谷川:配当方針に関しては、現中期経営計画の期間においてはおっしゃったとおり、DOE基準で2.8パーセントをボトムに設定しています。
最終年度である来年度は3パーセントを目指す方針を公表しています。現時点では、この中期経営計画において配当方針を変更する予定はありません。
ただし、将来的に現行の配当方針が引き続き妥当であるかどうかについては、企業として議論を継続している段階です。その選択肢として、株主還元を下げることは考えておらず、その内容について今後議論する余地があると考えています。
つまり、すべてを配当で還元するほうがよいのか、自社株買いで還元するほうがよいのかについては、世間や自社の状況を踏まえて議論すべきだと考えています。ただ、現時点では次期中期経営計画の配当方針についてはまだ明確に定めていません。
質問者:次の中期経営計画では、利益が出なかった場合には減配も選択肢になるという考え方ですか?
長谷川:我々は昨年度をボトムとし、成長回帰を目指しています。現状では確かに配当性向が非常に高くなっていますが、今後、業績局面が変化した際に、どのような配当方針や株主還元方針が適切であるかを議論している段階ですので、現時点では減配といった議論は行っていません。
質問者:利益の回復局面になった場合、配当で報いるだけでなく、自社株買いなどで報いるといった選択肢も考えられますか? 現状、株価がそこまで下がっていないのは、配当が守られているからという印象を持っています。来期以降も28円をある種守る水準として考えているというニュアンスなのでしょうか?
長谷川:来年度の配当方針は、当然ながら今回の中期経営計画の範囲内であり、現時点でこれを修正する考えはありません。
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