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特種東海製紙株式会社3708

東証プライム

パルプ・紙

財務情報|連結業績(前年同期比)

木村隆志氏(以下、木村):代表取締役社長を務めます、木村隆志です。本日は当社の決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。

これより私から、2026年3月期第2四半期決算概要を含む財務情報、および最終年度を迎えている第6次中期経営計画において実施してきた施策や、直近のトピックスなどの進捗状況についてご説明します。

まずは財務情報です。2026年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比13億3,800万円増の479億1,000万円、営業利益が前年同期比4億8,600万円増の23億5,900万円、経常利益が前年同期比2億6,800万円増の33億2,700万円となりました。

また、親会社株主に帰属する中間純利益は23億700万円で、前年同期比2億1,100万円の増益となりました。

当社グループは現在、第19期を進行中ですが、この第2四半期の売上高と経常利益は、19期中で第1位となっています。

財務情報|セグメント情報

続いて、売上高と営業利益の増減要因について、セグメントごとにご説明します。

産業素材セグメントでは、主にチップなどの原燃料価格の高騰が続く中、コスト上昇分を売価に反映させ、日本製紙との共同販売会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ(NTI)に販売していますので、売上高は前期比6億600万円の増収となりました。

営業利益については、前期は水力発電所の水流制御装置の故障により1.5ヶ月間稼働停止しましたが、今期は順調に稼働していることなどが主な要因となり、前期比で2億4,300万円の増益となりました。

なお、本セグメントの段ボール原紙・クラフト紙事業では、当社および日本製紙ともに、コストと等しい売価で共同販売会社であるNTIに販売しているため、両社が得た収益はすべてNTIに収斂されます。

当社では、この利益は持分法による投資損益として経常利益に反映されるため、営業利益には含まれていません。後ほど経常利益の部分でもご説明します。

特殊素材セグメントでは、2024年下期からの特殊印刷用紙を主とした販売価格改定が期初から寄与しました。しかし、製造工程で使用される特殊機能紙において、お客さまの生産に減速感が見られたため、当社製品の販売数量が減少しました。この結果、売上高は前期と比較して6億2,300万円減少しました。

営業利益については、販売価格改定の効果が数量減少によって相殺され、さらに人的資本コストの増加も影響し、結果として1億1,100万円の減益となりました。

財務情報|セグメント情報

生活商品セグメントでは、販売価格の改定が期初から寄与し始め、数量も比較的堅調に推移したため、売上高は3億6,200万円の増収、営業利益は1億700万円の増益となりました。

環境関連セグメントは当社が注力する事業であり、先期から連結子会社となり、先期は3ヶ月間の取り込みであった貴藤の売上高を今回6ヶ月間取り込んだことや、トーエイ・駿河サービス工業・特種東海フォレストなどグループ各社の売上が順調であったことが要因となり、売上高は前期比7億6,400万円の増収となりました。

営業利益については、貴藤や駿河サービス工業といった産業廃棄物の収集・運搬・処理を主な業務とする子会社の業績が回復したこと、特種東海フォレストの土木工事の増加、先期に計上された貴藤取得に伴う一過性のデューデリジェンス費用がなくなったことなどが要因となり、2億6,000万円の増益となりました。

財務情報|利益の増減要因(前年同期比)

セグメントごとの説明は以上となりますが、この利益要因について、連結ベースの階段グラフを用いてあらためてご説明します。

まずは営業利益についてです。先期の営業利益が18億7,300万円だったのに対し、今期の営業利益は23億5,900万円と増益となりました。

特殊素材セグメントでは、先期10月からの価格改定効果が期初から現れましたが、特殊機能紙の数量減によってその効果が相殺されました。一方で、生活商品セグメントでは、ペーパータオルやトイレットペーパーの価格改定効果が期初から反映されたことに加えて、堅調な数量に支えられた結果、数量・価格要因により5億4,800万円を押し上げました。さらに、引き続きの資材関係のコスト増加による3億6,800万円は吸収しました。

また、労務費の増加を主な要因とする固定費の増加が3億8,000万円ありましたが、環境関連セグメントにおける利益増の2億6,000万円、そしてその他要因としての3億5,200万円があり、営業利益は23億5,900万円に増加しました。

その他要因として3億5,200万円と申し上げましたが、主な内訳としては、来期に予定している特殊素材セグメントでの製造設備の一部更新工事に備え在庫の積み増しを開始したことで、固定費の一部が在庫に滞留したことによるものです。

しかしながら、経常利益は30億5,900万円から今期は33億2,700万円と、営業利益ほど大幅な増益には至りませんでした。これは主に、持分法による投資利益が1億5,000万円減少したことが要因です。

持分法による投資利益については、先ほどご説明したとおり、主に産業素材セグメントにおける日本製紙との共同販売会社であるNTIで構成されています。この日本製紙との提携により獲得する利益は、NTIに集約されています。

産業素材セグメントでは、チップなどの原燃料価格の高騰が続く中、需要全体が弱含みで推移したため、NTIの利益が減益となりました。これに伴い、持分法による投資利益も減益となりました。

財務情報|通期業績予想の進捗

2026年3月期の業績予想についてご説明します。期初に発表した業績予想は変更せず、売上高は990億円、営業利益は50億円、経常利益は70億円と、通期において先期に対して増収増益を見込んでいます。

第2四半期の達成率は、おおむね47パーセントから48パーセントと、比較的順調に推移していると考えています。

財務情報|利益の増減要因(前年同期比)

この着地見込みにおける営業利益と経常利益の見通しについてお話しします。数量および価格要因として、需要先の製品が踊り場となっている特殊機能紙の販売数量減少については、第3四半期より回復の兆しが見られるものの、好調だった前期ほどの数量回復は見込んでいません。

特殊印刷用紙と生活商品セグメントにおける価格改定効果、および生活商品セグメントでの堅調な需要に支えられた数量増の影響により、10億7,400万円の増益が見込まれると考えています。

ただし、このプラス影響は、通期におけるコスト増が予想される資材要因による4億100万円のマイナス影響、さらに労務費増加などに起因する固定費増加分の6億9,500万円のマイナス影響の双方により相殺されると見込んでいます。

それを、注力している環境関連セグメントの増益の3億7,900万円で補うとともに、来期の特殊素材セグメントで製造設備の一部更新工事に伴う在庫の積み増しが継続し、固定費の一部が在庫に滞留することなどのその他要因で6億8,600万円を想定しており、営業利益は39億2,800万円から50億円への増益を見込んでいます。

また、経常利益については、営業利益の増加に加え、NTIがすでに公表している10月からの価格改定に伴う持分法による投資利益を反映し、62億2,700万円から70億円への増益を見込んでいます。

以上が、2026年3月期第2四半期の決算および通期業績予想に関する説明です。

財務情報|資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

続きまして、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてご説明します。現在、当社のPBRが1倍を下回る状況が続いており、これを重要な経営課題と認識しています。

根本的な解決に向けては、資本収益力(ROE)の改善が必要であると考えています。現在進めている成長施策を着実に実行することに加え、策定中の次期中期経営計画で提示する施策を推進し、企業価値を向上させることで、投資家のみなさまにご評価いただけるよう努めていきます。

具体的な戦略については、次期中期経営計画の中でご説明しますので、今しばらくお待ちください。

財務情報|資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

一方で、将来に向けた施策立案と並行して、売買代金の改善策や人的資本の面など、着手可能な施策については、今期から着実に実行に移しています。

こちらのスライドは、今年2月に開始したロジックツリーです。ここでは、PBR改善に向けて資本収益性の向上を図るとともに、資本市場との対話を通じた株主資本コストの低減や、売買代金の改善による市場評価の向上に取り組むことを示しました。

このロジックツリーを示してから現時点までの約9ヶ月間において、出来高の増加および人材戦略に関する施策を実施しています。

財務情報|資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 取組みの進捗

まず、売買代金の改善に向けた取り組みとして、より投資しやすい環境を整えるために、1株から3株への株式分割を実施しました。

また、投資家のみなさまとの対話の中で、当社の株式1単元を購入するのに40万円から45万円程度かかるという点から、「購入代金が高い」「流動性が低いので、投資対象として検討しにくい」といったご意見を複数いただいていました。

当社として、市場で適正な株価が形成されるためには、流動性を高め、より多くの投資家の方にご参加いただける環境を整える必要があると判断し、本年10月1日を効力発生日として株式分割を実施しました。

分割後の株主優待については、実質的に据え置きとしていますが、優待制度を含む今後の株主還元については、現在策定中の中期経営計画と合わせて検討を継続しています。そのため、次期中期経営計画の発表と同じ2026年5月に、あらためて開示する予定です。

財務情報|資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 取組みの進捗

株式分割を発表した後、個人投資家向けのIR説明会を実施しました。これまでは機関投資家やアナリスト向けを前提とした情報発信を行ってきましたが、購入単元を引き下げたこともあり、幅広い投資家に投資対象として認知していただくため、個人投資家を対象に絞った初めての試みです。

当社の株式は流動性が低く、大きな資金流入が難しい状況と認識しています。そのため、小型ファンドのポートフォリオマネージャーをはじめ、機関投資家やアナリストへのアプローチを継続しつつ、少ない単元からでも投資いただける個人投資家への知名度拡大にも取り組んでいきたいと考えています。

財務情報|資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 取組みの進捗

人的資本に係る取り組みとして、株主と同じ目線でグループ一体となり企業価値向上を目指すため、従業員株式報酬制度を導入することを決定しました。

この制度では、株式付与ESOP信託という仕組みを採用し、当社が保有する自己株式のうち約29万株をESOP信託に処分します。本制度の対象者はグループ会社の全従業員とし、全従業員が3年後に単元株式を取得することになります。

私は、不確実性が高い世の中において、企業が成長していくために最も重要な経営資源は人であると考えています。

当社グループで働く多様な従業員が、それぞれの個性を活かしながら、同じ目標や方向に向かって持てる力を最大限に発揮することは、将来の成長に不可欠です。

今回の制度導入により、グループ全従業員が株主となり、株主のみなさまと同じ目線に立って企業価値向上を自分ごととして捉えるきっかけになるとともに、モチベーションの向上やグループ一体感の醸成につながることを期待しています。

事業戦略|中期経営計画の道のり

ここからは、事業戦略についてご説明します。

当社グループは、デジタル化に伴う紙市場の変化を受け、紙だけの会社から脱却を図るために、第4次中期経営計画以降、製紙の新たなニーズ開拓だけでなく、紙以外の成長領域の開拓を進め、事業ポートフォリオの改革を推進してきました。

第4次中期経営計画で探索した新事業領域は、第5次中期経営計画で収穫の段階に入り、今年度に最終年を迎える第6次中期経営計画においては、成長に向けた道筋を製紙と環境という両輪であると明確にし、持続的な企業価値の向上に取り組んでいます。

事業戦略|第6次中期経営計画のポイント

当中期経営計画では、利益貢献度と市場成長性の観点から事業を4つの象限に分け、投下資本にメリハリをつけたポートフォリオマネジメントを行う方針です。

スライドの4象限の左上にある基盤分野として位置づけている特殊素材セグメントにおいて、ファンシーと記載する色や風合いをつけた紙は需要が縮小していることから、岐阜工場を閉鎖し、三島工場へ集約することで基盤の強化を図りました。

また、第6次中期経営計画策定時点で育成分野と位置づけていたセルロースナノファイバーを使用したリチウムイオン二次電池向けセパレーターであるフィブリックは、製品として採用されたものの、当該蓄電池の販売状況が芳しくないため、経営資源を継続して投入することは困難であると判断し、撤退しました。

同様に、育成分野としていたパッケージについては拡販に苦慮しており、見極め分野に位置づけを変更しています。

一方で、スライドの図の右上に位置する重点分野であるリサイクル事業については、当中期経営計画期間中に新たに2社をグループ会社化したほか、事業拡大を目的とした設備投資を行い、順調に事業領域を拡大させています。

また、図の右下の育成分野であるウイスキー事業についても、順調に製造が進んでおり、期間損益は想定どおりで、今期から黒字化を果たせる見込みです。

次のスライドでは、主な進捗についていくつかご紹介します。

事業戦略|現時点までの中計施策の進捗 基盤事業

基盤事業に位置付けている製紙事業では、今後の市場環境を見据え、拡販可能な製品構成への入れ替えを進めています。その一環として、巴川コーポレーションが生産・販売を行っていた特殊機能紙の営業権および棚卸資産を同社から譲り受けることとなりました。

事業ポートフォリオの改革は、当社だけでなく、製紙同業他社の間でも進行しています。

巴川コーポレーションは、紙製造設備2台を停止するなど、機能性シート事業および製紙ユニットの事業見直しを進めてきました。今回、さらに追加で紙製造設備1台を停止し、製造・販売を取りやめることに伴い、当該設備で生産していた各種製品の営業権などを、当社が譲り受けることとなりました。

対象となるのは滅菌紙、通帳用紙、カード用紙、為替用紙、含浸紙です。これらの製品については、製品ごとに異なるお客さまがいるため、現在、お客さまごとに個別に協議を進めている段階です。

事業戦略|現時点までの中計施策の進捗 リサイクル事業

リサイクル事業についてご説明します。愛知県を拠点とするトーエイと、東京を拠点とする貴藤が、当中期経営計画期間からグループに加わり、廃棄物の収集地域を拡大したほか、幅広い技術で多様な資源をリサイクルできる体制を構築しました。

外部から調達した廃棄物をRPFという廃棄物燃料に加工し、製紙工場のボイラーでエネルギーとして再利用しています。製造業でありながら、このようなネットワークとノウハウを持つことが当社の強みの1つだと考えています。

資源を利用する側とリサイクルする側、双方のニーズを一貫して把握することで、リサイクルの最適な運営が可能となり、また、保有車両や拠点を相互活用することで効率的な廃棄物収集を実現しています。

事業戦略|現時点までの中計施策の進捗 リサイクル事業

廃棄物燃料であるRPFの製造会社として2003年に設立されたレックスは、静岡県内に3つの生産拠点を保有しています。このうち1つの工場は老朽化が進み、さらに手狭になっていたことから、同じ静岡県内に新工場を設置し、来月移転を予定しています。

設備のリニューアルと従来より広い敷地への移転に伴い、工場の勤務体制を2交替から3交替に変更し、24時間体制への移行を計画しています。この生産体制の移行により、フル稼働時には現体制と比較して廃棄物燃料の生産量を約20パーセント増加させる見込みです。

事業戦略|現時点までの中計施策の進捗 リサイクル事業

廃棄物の収集・運搬、中間処理、再資源化、小型家電のリサイクルなど、幅広い事業を展開する愛知県のグループ会社トーエイでは、プラスチックの高純度選別ラインを導入しました。

トーエイでは、長年にわたり家電由来のプラスチックリサイクルに取り組んできました。プラスチックリサイクルに関する法律の施行を契機に、家電以外のさまざまなプラスチックリサイクルへのニーズが増加しています。

従来の設備では、自動車部品や家庭で使用されるおもちゃなど、金属とプラスチックが一体になったものへの対応が困難でした。そのため、より幅広いリサイクルニーズに応えるべく、新たなラインを導入しました。

この導入により、集荷する廃棄物のバリエーションを拡大するとともに、再生原料の販売先の開拓を目指していきたいと考えています。

事業戦略|現時点までの中計施策の進捗 社有林関連

環境関連セグメントに含まれるウイスキー事業については、生産状況が順調であることを踏まえ、2024年7月には熟成庫を増設する予定です。また、昨年より3年物の販売を開始しました。

この事業は2020年の製造開始以降、熟成期間中の計画的な赤字が続いていましたが、3年物の販売開始に伴い、当初の想定どおり今期から黒字化を見込んでいます。

ウイスキー事業の構想としては、長期熟成の12年物をレギュラーモデルに据えています。12年物が完成するまでの期間は、異なるタイプのウイスキーを年2回販売し、南アルプスでしか作れないプレミアムウイスキーとしてブランディングを図る計画です。

事業戦略|直近のトピックス

最後に、足元のトピックスをご紹介します。社有林関係については、「自然を守り、自然を活かす」を基本理念とし、長年にわたり井川山林の保全と活用に取り組んできました。

例えば、ウイスキーを製造している井川蒸溜所では、カーボンオフセットをコンセプトに全量カーボンフリーの電気を使用し、重油使用分については井川社有林のJ-クレジットで相殺しています。

このような取り組みに対してさまざまな評価をいただいており、直近では「世界の持続可能な観光地TOP100選(Green Destinations Top 100)」に井川社有林が選出されたほか、「エコプロアワード」において最高位である「財務大臣賞」を受賞しました。引き続き、豊かな南アルプスの生態系を守りながら、自然との共生に向けた活動を続けていきます。

このような取り組みが評価されたことを大変光栄に思い、うれしく感じています。ご説明は以上です。ご清聴いただき、誠にありがとうございました。

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