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フラー株式会社387A

東証グロース

情報・通信業

フラー株式会社は、2025年7月24日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。

山﨑将司氏(以下、山﨑):みなさま、こんばんは。フラー株式会社代表取締役社長の山﨑です。本日はお集まりいただき、ありがとうございます。これより、フラー株式会社2025年6月期の決算説明会を始めます。よろしくお願いいたします。

はじめに、上場のご報告をします。フラーは、2025年7月24日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。2011年の創業以来、多くの方々にご支援をいただき、ここまで来ることができました。

この場を借りて、あらためて心より感謝いたします。本当にありがとうございます。フラーは世界一、ヒトを惹きつける会社となることを目指し、引き続き邁進していきます。今後もご支援のほど、よろしくお願いいたします。

本編に入ります。本日は、初めてフラーを知る方もいらっしゃると思いますので、まずは会社概要をお伝えします。本日お見せする内容は、すでに公開している決算説明資料を再構成したものです。お手元でご覧になりたい方は、決算説明資料をご確認ください。

会社概要

会社概要をご説明します。当社は2011年に創業し、現在の従業員数は約190名です。デジタルパートナー事業を展開しています。二本社体制を採用し、千葉県柏市の柏の葉と新潟県新潟市にそれぞれ本社を構えていることが、大きな特徴の1つです。

経営理念

経営理念についてです。ユメとして「世界一、ヒトを惹きつける会社を創る。」を目指しています。ユメとは、会長である渋谷が創業当時から掲げていたものであり、フラーにはヒトを最も大切にするという文化があります。

フラーという社名とロゴは、フラーレンというC60の炭素原子で構成される分子構造に由来しています。安定しながらも化学反応に富むというおもしろい性質を持つフラーレンのように、安定性と柔軟性という相反する性質を併せ持った会社を目指して、フラーと名づけました。

デジタルパートナー事業

フラーが展開するデジタルパートナー事業は、スマートフォンアプリのデザインや開発を中心に、顧客のビジネスDXを総合的に支援するものです。スライドの写真は、事業の原点である「長岡花火公式アプリ」です。2017年から取り組みを続けており、現在までの8年以上もの間、改善を続けています。

そうした地道な取り組みを外部の団体にも評価していただき、2023年にはグッドデザイン賞を受賞しました。グッドデザイン賞は、通常リリースされたタイミングで受賞することが多いのですが、今回受賞した「長岡花火公式アプリ」は、リリースから6年後に受賞した、非常に珍しいプロジェクトです。

私たちフラーは、アプリをリリースして終わりにするのではなく、ユーザーに価値を届けるためには長期的な改善が必要であると考え、多くの顧客との長期的な関係を目指してきました。こうした取り組みが、グッドデザイン賞として認められた、大きな出来事だったと考えています。

経営陣プロフィール

経営陣のプロフィールをご紹介します。スライド写真の左が私、山﨑で、右が創業者で会長の渋谷です。2人とも、1988年生まれの新潟出身です。私は、千葉県の柏の葉本社に常駐し、経営責任者として業務の執行を行っています。会長の渋谷は新潟本社に常駐し、外交活動やメディアへの露出に注力しています。

経営陣の大きな特徴として、8名中5名が高専卒であり、さらに4名が新潟県出身です。

沿革

沿革です。渋谷が筑波大学出身であることから、つくば市内のアパートで創業し、「App Ape」をリリースした創業期から順調に拡大しました。現在、渋谷は会長となり、私が社長を引き継いで、デジタルパートナー事業を軸に成長を続けています。2年前の2023年には、上場直前で中止を判断し、そこから成長基盤を強化してきました。

大きく強化してきた点が2点あります。1点目は採用の面です。2022年から新卒採用を本格的に開始し、迎え入れたメンバーが順調に活躍しています。2点目は、販売の面です。2024年にヤプリと電通グループと資本業務提携を結び、販売経路を拡大してきました。

こうして、事業が軌道に乗り、フラーの成長性に確信を持てたタイミングで再び上場申請を行い、無事に上場を迎えることができました。ここから、フラーは新たな成長段階を迎えます。

主なソリューションと特長

デジタルパートナー事業は、事業開発、デザイン、システム開発・運用、データ分析・「App Ape」の4つの柱から成り立っています。これらすべての分野に注力することが、フラーの大きな強みとなっています。

大きな特徴が4つあります。顧客と並走する事業開発、デザインに対する高い評価、ユーザー体験を重視したプロダクト開発、「App Ape」を用いた独自の分析・企画提案です。

ユーザー体験を重視したプロダクト開発の写真は、アウトドアメーカーであるスノーピークのアプリを私たちが開発した際のものです。プロジェクトメンバーのエンジニアが、スノーピークのプロダクトを実際に体験している場面を収めています。

開発メンバーが自ら体験したことを提案に変え、ものづくりに反映する仕組みが、従業員の当事者意識を生み出し、高い定着率とプロダクトの品質向上につながっています。

アプリ分析サービスの「App Ape」は、フラーが創業当初から手がけている自社サービスです。「App Ape」では、競合アプリや市場トレンドの分析を行い、顧客のアプリ戦略策定を支援しています。2014年のリリース以来、「アプリのフラー」というポジションを築いてきました。

最高のユーザー体験を実現する組織

デザインについてです。フラーは、デザイン会社ではないにもかかわらず、取締役に2人のデザイナーがいるという珍しい会社です。このデザイン力が他社との差別化要因となっています。社内にデザインの考え方を浸透させ、すべてのプロジェクトの提案段階からデザイナーが参加しています。

このデザイン力を活かした提案は顧客からの印象も非常によく、コンペになった場合でも品質面で有利に働くことが多いです。グッドデザイン賞などの賞をいくつも受賞しており、社内外で高い評価を得ています。他のアプリ開発会社が容易に真似できない点がポイントとなっています。

また、私のような作り手の人間が経営陣にいることは、モノを作る人材の採用や定着にも大きく寄与しています。

「フラーのデジタルノート」による情報発信

「フラーのデジタルノート」の紹介です。フラーは、ヒトを大切にしている会社です。ヒトの顔が見えるコンテンツをあらゆるステークホルダーに向けて発信し、ヒトに重きを置いたブランディングを続けています。

こうした発信を通じて、営業活動や人材採用、社員のロイヤリティ向上、ブランドイメージの向上など、事業全般に活用しています。

こうした誠実な情報発信を心がけていますので、「デジタルノート」をご覧ください。フラーの雰囲気や内情をご理解いただきやすいかと思いますので、ぜひ一度お目通しいただければと思います。

「高専のフラー」のブランディング

フラーをご理解いただく上で外せない大きな特徴の1つが、全国の高等専門学校との連携です。

フラーは、会長である渋谷を含む共同創業者4人全員が高専出身です。具体的には、長岡工業高等専門学校出身者が2人、苫小牧工業高等専門学校出身者が2人で、これら4人が創業メンバーとなっています。創業以来、長期的な視野で全国の高専との連携を強化しており、「高専のフラー」として認知されています。

高専生向けのキャリアイベント「高専キャラバン」を継続して実施したり、渋谷が全国の高専卒業生を対象とした同窓会組織「高専人会」を企画したりするなど、フラーは現役の高専生から高専出身の社会人まで幅広い層に高い知名度を持っています。

高専とは、全国にある高校の代わりに通う5年制の理系学校です。ほとんどの都道府県に1校ずつ存在し、若い頃から専門的な学びを提供するため、学生の技術力が高く、現在では各界から注目を浴びている教育機関です。

成長戦略の基本方針

成長戦略についてご説明します。フラーでは、着実にできることを積み上げ、1つでも多くの企業のデジタルパートナーとなることを目指しています。

その上で成長していくための基本方針として、優秀な人材の確保、営業販路の拡大、コアコンピタンスである優れたものづくりの品質をさらに発展させることの3点を掲げています。

成長の基盤となる「ヒト」の確保

フラーにおける成長には、特にクリエイティブ人材の確保が欠かせません。これが成長の鍵となっています。

フラーでは、クリエイティブ人材をエンジニア、デザイナー、ディレクター、データサイエンティストなど、ものづくりに携わる人材と定義しています。上場後のブランド力を活用し、人材採用を積極的に推進しており、数年以内に300人体制を目指しています。

スライド右側のグラフに示されているとおり、新卒採用に注力しており、若手を中心とした年齢構成となっています。この若い世代が成長することで、フラーも中長期的に成長を遂げると考えています。

開発パートナーの活用

開発パートナーの活用です。社内のリソースを安定的に増やしつつ、リソースが不足する場合には外注を活用して柔軟に対応できるよう、外部のリソースを調達できるパートナーを増やしていきます。社内外のリソースを柔軟に組み合わせることで、規模の拡大を目指します。

外部のサービスを積極的に活用

得意分野に特化するため、自社プロダクトや内製に固執せず、優れたサービスを柔軟に活用します。AIやアプリ業界は、非常に進化の速い分野です。顧客にとってもフラーにとっても、現時点で最適な選択肢を柔軟に提案することを目指します。

よりよい“ものづくり”を実現するカルチャー

よいものづくりに向き合うカルチャーは、フラーのコアコンピタンスです。全社員での勉強会や、さまざまな分野での積極的なAI活用、オンライン及びオフラインでの円滑なコミュニケーションなど、社員全員のボトムアップによってソリューション能力を向上させていきます。

規模を拡大しながらも、高い品質のものづくりをさらに発展させることを、フラーは目指します。

販売ルートの拡大

販路の拡大について、スライド2ページにわたりご説明します。「アプリのことならフラーにおまかせ」を実現するために、最良の2社との提携を実現しました。ヤプリと電通グループです。

資本業務提携は2024年6月末に完了し、そこから1年ほどをかけて体制を整えてきました。2社から社外役員を迎え入れるほか、共同セミナーやイベントの開催や、共同提案及び相互送客を積極的に行っています。

ヤプリ・電通グループとの資本業務提携

2社との資本業務提携についてご説明します。

ヤプリはノーコードアプリのトッププレーヤーで、アプリ導入実績が900件近くと、非常に大きな数値を誇っています。アプリ業界での認知度も高く、多くのリード顧客を抱えています。ヤプリとは相互送客を行っており、ヤプリ側で提供するサービス内で対応できずに解約となった顧客に対して、私たちフラーを紹介していただいています。

フラー側では、問い合わせがあったお客さまの中で、予算が少なくフルスクラッチを希望しないお客さまに対して、通常では逃してしまっていた案件をヤプリにご紹介しています。すでにお互いに紹介実績があり、今後の売上向上につながる良好な関係を築いています。

電通とは資本業務提携前から連携していましたが、そのつながりは株式会社電通本体のみでした。以前からの電通本体との連携実績が評価され、今回の資本業務提携につながりました。この資本業務提携では、電通本体だけでなく、電通デジタルや電通総研とともに、共同提案を行っています。

電通の案件は要件整理が大変で、商談期間が長いものも多いですが、顧客の規模が大きく、今後の大型案件として取り組むことができる可能性があります。

2社と提携したことで、簡単なアプリであればヤプリ、大規模プロジェクトであれば電通とともに、フルスクラッチを望む場合はフラーが対応する、という座組が整いました。これにより、日本国内のアプリ市場をフルカバーし、共同提案や相互送客を積極的に展開していきます。

これが、これら2社と資本業務提携を行った主な理由です。以上が成長戦略についてのご説明です。

2025年6月期 損益計算書 サマリー

2025年6月期通期業績についてご説明します。損益計算書のサマリーです。2025年6月期は、通期にわたりプロジェクトの受注・納品が順調に推移し、前期に比べて大幅に改善しました。2024年6月期は厳しい時期があり業績が低迷していましたが、そこから増収増益を実現し、2025年6月期は非常に良い年となりました。

積極的に採用投資を継続しながらも、売上高、営業利益、経常利益は過去最高となっています。スライドの表をご覧ください。売上高は前期比4億9,100万円増加し、20億800万円となりました。その売上高を2つの項目に分けています。

フラーの事業はデジタルパートナー事業のみの単一セグメントですが、その中でもわかりやすくするために2つに分けています。クライアントワークは、主にアプリの企画、デザイン、開発などのソリューションを提供するものです。冒頭でご説明した「長岡花火公式アプリ」提供も、このクライアントワークに含まれます。

フラーの成長については、クライアントワークが大きく寄与していることが表れています。2025年6月期には、大型案件が開発フェーズに進み収益化したほか、別の大口の新規取引もあり、4億9,600万円の大幅な増収となりました。

アプリ分析サービス「App Ape」についてです。「App Ape」は、分野単体で見ると売上高が減少していますが、「アプリのフラー」というポジションを支える当社独自のサービスとして、事業成長に大きく貢献しています。

どのようなかたちで寄与しているかというと、「App Ape」ではさまざまなアプリデータを確認できるため、顧客だけでなく、フラーのメンバーもクライアントワークでの提案時に活用しています。また、競合他社が開発しているアプリのデータを分析し、それをもとに提案を進めています。

その結果、「App Ape」は他のソリューション企業との差別化要因となり、コンペでも有利に働くことが多いです。

売上原価についてご説明します。内訳は、だいたい人件費が7割、外注費が2割、残りの1割がその他の項目です。人員を増やした分だけ売上原価も増加しましたが、売上総利益も売上の増加に伴い増えています。

販管費については、規模の拡大や上場準備に対応する中で、上場記念賞与の影響を除けば、ほぼ横ばいに抑えられました。この結果、高い営業利益と経常利益を確保し、いずれも過去最高益を達成しました。

表の下部には、当社が重視する経営指標を並べています。売上高総利益率は、42.5パーセントへと増加しました。これは高い稼働率を維持し、新卒採用による下押し影響を吸収できたためです。

この42.5パーセントという数値については、さらに向上できると考えています。一人ひとりの能力を高め、優れたソリューションを提供し、単価をしっかり上げることで、売上高だけでなく売上高総利益率も向上させ、バランスよく成長を目指していきます。

クリエイティブ人材1人当たり売上は現在1,400万円です。付加価値を高めることで単価を引き上げ、中長期的にはさらに高い水準を目指していきます。

2025年6月期 貸借対照表 サマリー

貸借対照表についてご説明します。こちらはIPO増資前のものです。IPOでは6,400万円程度の増資を受けていますが、それが反映される前のものとなります。

主な増減について示します。流動資産について、現金及び預金が大きく増加し、13億5,500万円となっています。これは、今後の積極的な事業展開に向けて安定資金を確保した結果です。

固定資産について、ほとんど変動がありません。増加した項目としては、業務用パソコンや敷金の増加分が挙げられます。従業員が増加していますので、その分の増加分とご理解いただけたらと存じます。

負債について、規模拡大に伴い、支払債務全般が増加しています。また、増収に伴い運転資金が増加しています。これは、大型の請負案件が発生した場合に備えるためです。

基本的には、顧客には準委任契約をお願いしていますが、顧客の都合で請負契約となる場合があります。そうしたケースでは、数ヶ月間入金がないこともあります。そのような案件に備えるための資金を運転資金と呼んでいます。

その他、将来の事業展開に向けて新規借入を実施し、長期借入金は2億円以上の純増となりました。また、純資産は大幅に増加しています。これは、黒字による当期純利益分の計上と、新株予約権の行使による若干の資本金増加が要因です。

配当については実施せず、将来の事業成長に備えて内部留保を拡大しています。借入金の増加により自己資本比率は低下しましたが、それでも50パーセント以上を維持しており、財務の健全性は非常に高いと考えています。

2025年6月期 CF計算書 サマリー

キャッシュ・フロー計算書についてです。営業活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローが寄与し、期末のキャッシュ残高は大幅に増加しました。

営業活動によるキャッシュ・フローについて、業績が良好だったこともあり、大幅に増加しています。税引前当期純利益と営業活動によるキャッシュ・フローに差異があるのは、上場記念賞与の影響によるものです。この費用は2025年6月期に計上しましたが、キャッシュアウト自体は、今期になるためです。

投資活動によるキャッシュ・フローについてです。社員増加に伴うパソコンの購入や、柏の葉本社オフィスの契約更新に伴う追加敷金の差し入れが主な要因となっています。先ほどお伝えした内容とほぼ同様ですので、スライドをご参照ください。

このように、営業キャッシュ・フローと財務キャッシュ・フローが大幅に増加した結果、期末残高が4億6,900万円のプラスとなり、大幅に増加しています。

クリエイティブ人材・採用投資の状況

スライドは、クリエイティブ人材の推移と採用投資の状況を示しています。成長の基盤となるクリエイティブ人材は、直近の積極的な新卒採用によって順調に増加しています。

新卒採用は数年前から本格的に開始し、現在は年間20名程度のペースで継続的に行っています。採用市場の競争が激化している中で、エンジニアを中心とした優秀なメンバーを安定して採用できています。

スライド右側のグラフについて、青色の部分は採用投資額を示しています。採用投資額は、採用人数の増加に伴い増加しています。採用投資額の定義については、グラフの下部に記載されているとおりです。人材紹介手数料や採用広告費、インターンにおける経費、新卒社員の入社後1年間分の人件費、採用部門の人件費を含んでいます。

なお、進行期の見込みが減少しているように見えるのは、2024年6月期に新卒採用が多かったことが要因です。新卒の1年間分の人件費がかかるため、その人数分だけ当該期の費用となっています。

グラフのピンク色の部分が、その年の営業利益を示しています。これらを合わせた数字が当社の稼ぐ力を表しており、稼いでいる利益のおよそ半分を新しい人材の確保に充てていることがおわかりいただけるかと思います。

つまり、本業のキャッシュ・フローがしっかりと上がっていることもご理解いただけるかと思います。

業績が振るわなかった2024年6月期においても、本業での収益をしっかり確保しながら、採用への投資額を緩めることはありませんでした。新卒採用を本格的に開始した2023年6月期に入社したメンバーは、現在、各プロジェクトで活躍しながら後輩の指導にも取り組んでいます。

こうした新卒採用の取り組みは、開始当初は苦労もありましたが、入社したメンバーがしっかりと定着し活躍していることで、今後のフラーの成長に大きく貢献してくれるものと考えています。

2026年6月期業績予想 P/Lサマリー

2026年6月期の業績予想についてご説明します。2026年6月期の損益計算書では、売上高と利益水準の堅実な成長を継続する計画です。また、中長期的な事業成長を見据え、積極的な採用投資を継続していきます。

売上高についてです。2026年6月期は、大型案件のリリースを予定しているほか、ヤプリや電通グループとの業務提携を推進し、新規案件の獲得に注力することで、売上高は22億3,200万円を見込んでいます。

ここ数年の新卒社員数の増加などの影響によって、クリエイティブ人材1人当たりの売上高はほぼ横ばいとなる見込みです。

売上高の伸びについては、前期と比較すると小さく見えますが、その要因として、2024年6月期が低迷していたため、2024年から2025年にかけての伸びが大きく見えていたことが挙げられます。

2026年6月期は上場初年度であることから、体制整備に注力していきたいと考えています。売上高は、堅実な予想として約11パーセント増を見込んでいます。

営業利益及び経常利益については、増収の一方で、人件費や外注費、その他の諸経費、さらに上場の影響による費用増加が重なる見込みのため、ほぼ横ばいとなる見通しです。

当期純利益は、繰越欠損金の利用が進み、繰延税金資産の取り崩しを想定していることから、今期より減少して1億6,000万円を見込んでいます。

重視する経営指標の実績と見通し

重視する経営指標の実績と見通しについてご説明します。クリエイティブ人材数についてです。この人数は、フラーの売上増につながります。中期の成長計画として、毎年20人から30人程度、将来的にはそれ以上の採用による純増を目指し、事業成長の基盤となる人材確保を進めます。

2025年6月期の実績について、16人増にとどまりました。この数値の背景には、新卒採用と中途採用が進む一方で、退職や休職の影響があることが挙げられます。フラーでは、全社員が育児休業を取得しており、育児休業は予測が難しいものの、こうした一部の要因が結果としてマイナスの数字に表れています。

また、当社の平均年齢は比較的若いため、一定の影響は避けられないと考えています。今期は上場を機に、新卒採用だけでなく中途採用にも引き続き注力し、24名の純増を目指します。

クリエイティブ人材1人当たり売上高についてです。中長期的には、1人当たり1,500万円の水準を目指しています。2025年6月期は売上が好調で、大幅な増加を達成しました。今期については、堅めの予想として体制整備に注力するため、ほぼ横ばいの水準としています。

第1四半期には大型案件が一段落し、一時的に稼働が下がる影響を受ける見込みです。しかし、第2四半期以降に大型案件の開始を見込んでいるため、結果として全体的にほぼ横ばいとなる見通しです。

売上高営業利益率についてです。中長期的には、売上高営業利益率を10パーセント前後で継続確保することを目指しています。前期は売上と利益水準が急回復した結果、目標値に近い9.4パーセントを達成しました。

今期は0.4ポイント下がり、9.0パーセント程度の見込みですが、上場に伴う一時的な費用の影響を除けば、ほぼ横ばいの水準です。

今期は人員を増やし、体制基盤を整備することで、着実な規模拡大を目指します。

資本業務提携先との取り組み

2025年6月期通期のトピックをお伝えします。

資本業務提携先であるヤプリ及び電通グループとの取り組みについてです。「アプリのことならフラーにおまかせ」を実現するために、ヤプリと電通グループ各社と2024年6月末に資本業務提携を実現してから、この1年間にわたり業務提携を推進してきました。

共同セミナーやイベントの開催、ヤプリとの相互顧客紹介、電通グループとは新たな提携ブランドを掲げ、多くの顧客への共同提案を積極的に行ってきました。この1年を通じて大きな手応えを感じており、今後よい報告ができると考えています。ぜひご期待ください。

新卒採用・採用活動のご紹介

新卒採用を含めた採用活動全般についてご紹介します。スライド左側には、2025年4月1日に入社予定の新卒社員との取り組みが掲載されています。今年入社した新卒社員は21名で、内訳はエンジニアが17名、データサイエンティストが1名、総合職が3名です。

新卒社員21名のうち、9割以上が柏の葉勤務ですが、はじめの1週間は全員が新潟本社に滞在し、入社式を開催しました。また、フラーのお客さまであるアクシアル リテイリングさまや藤田金屬さまの職場訪問も行いました。

これは、フラーが支援しているプロジェクトにおいて、実際にどのような方々と取り組んでいるのかを知り、顧客の話を直接聞きながら体験する企画です。その後、具体的な研修が始まり、はじめの研修は3ヶ月ほどで終了します。

6月末に研修の報告会を行い、現在はそれぞれが実際のプロジェクトにアサインされ、実践に取り組んでいる最中です。

スライド右側には、中途採用を含めたフラー独自の採用活動の内容を一部掲載していますので、ぜひご覧ください。

制作事例のご紹介

2025年6月期にフラーが携わったプロジェクトの中から、2件をピックアップしてご紹介します。

1件目は、アクシアル リテイリングさまの「原信ナルスアプリ」です。新潟県を中心に展開するスーパーマーケットのフルリニューアルを支援しました。店舗利用者の目線を大切にしながら、リニューアルに取り組んでいます。

2件目は、トラストバンクさまが運営する「ふるさとチョイス」のアプリに関する企画・デザインプロジェクトです。もともと存在していたアプリに対し、当社がデザイン面で共創し、体験設計や画面デザインを手掛け、アプリの魅力を最大化するために着実な改善を進めています。

今回ご紹介した「原信ナルスアプリ」や「ふるさとチョイス」のアプリは、作ってリリースして終わりではなく、現在も改善を続けています。ぜひお手元に取ってご覧ください。

フラーのアプリ調査レポートほか

フラーのアプリ分析サービス「App Ape」のデータを使用したレポートについてです。定期的に配信を行っており、多くの方々にご利用いただいています。フラーのメンバーも提案時に利用しており、提携先のヤプリや電通グループにもご好評いただいているものです。

「App Ape」では、データの販売だけでなく、アプリレポートを公開するシンクタンクとしての役割を果たすことで、「アプリのフラー」という認識を多くの方々に持っていただくことに大きく寄与しています。

前期の実績としては、17本以上のレポートを公開しました。このように、ものづくり能力だけでなく、シンクタンク的な立ち位置を持つソリューション企業は非常に少なく、フラーの大きな強みの1つとなっています。

以上で、フラーの決算説明を終了します。ご清聴いただき、ありがとうございました。

質疑応答:人材採用と教育における競争と強みについて

「ヒトを大切にする文化とのことでしたが、人材採用や人材教育が強みということで合っていますか?」というご質問です。

人材採用や人材教育については、人材採用市場が非常に競争が激化している中、多くの優秀なメンバーを採用できていることが挙げられると思います。これが、当社の大きな強みであると認識しています。

質疑応答:グロース市場の上場維持基準への対応について

「上場維持基準について、現在の対応策を教えてください」というご質問です。

宮毛忠相(以下、宮毛):フラー株式会社取締役CFO兼経営管理グループ長の宮毛です。上場維持基準について、グロース市場の上場維持基準が時価総額100億円になるという件を指していると理解しています。

この問題については、現在、東証を中心に議論が進められている最中のものと認識しています。内情を少しお伝えすると、上場審査の途中で、この件がニュースなどで取り沙汰され、驚いた部分もありました。

ただ、上場は創業以来、当社が長年目標としてきたものですので、この件が当社の方針に影響を与えることはありませんでした。一方で、上場した以上、このような制度が設けられる場合には高いハードルが課されると認識しています。

当社としては、グロース市場上場企業としてこれを真摯に受け止め、5年で時価総額100億円という水準を実現するために、先ほど山﨑からご説明した成長戦略を推進していく方針です。

質疑応答:M&A戦略について

「M&Aの可能性はあるのでしょうか?」というご質問です。

時価総額100億円を達成するプロセスにおいて、M&Aのような戦略は、他のグロース市場の企業も積極的に取り組んでいます。当社として現時点でお伝えできる内容はありませんが、あらゆる可能性のひとつとしてM&Aについても検討を進めていきたいと考えています。

こうした成長戦略の推進、さらにはM&Aなど、いわゆる飛び道具的な方法も含め、グロース市場での時価総額100億円という目標の実現をまずは目指すというのが現状の方針です。

質疑応答:競合他社に負けない3つの強みについて

山﨑:「競合他社に負けない強みを教えてください」というご質問です。

内容は大きく3つに分かれます。アプリ分析力、デザイン、そして顧客満足度の高さです。

1つ目のアプリ分析力についてです。「App Ape」では、データを販売するだけでなく、提案に際してフラー社内のメンバーでも活用しています。このように、競合他社の状況を調査した上で提案を行うため、コンペ時に顧客から支持を得られることが多いのが特徴です。

2つ目のデザインについてです。冒頭の資料でご説明したとおり、当社全体でデザインが浸透していることもあり、私たちは開発会社でありながらデザインでも強みを持っています。このため、コンペにおいて品質面で非常に有利に働くことが多い点が、もう1つの大きな強みです。

3つ目の顧客満足度についてです。私たちは、単にアプリを作って終了するのではなく、リリース後も継続的に改善を行っています。こうした活動を続けることで、私たちが手掛けるアプリには、ユーザーからレビュー評価が付くという特徴があります。

はじめは低い評価が付く場合もありますが、長期的な改善によりレビューが向上し、これが顧客満足度の向上につながります。そうした取り組みを継続することが当社の大きな強みとなっており、顧客から再発注をいただくことも多くなっています。

以上が、競合他社に負けない当社の強みです。

質疑応答:ヤプリ及び電通グループとの資本業務提携による影響について

「ヤプリと電通との資本業務提携について、現在の業績への影響はどのような感じでしょうか?」というご質問です。

詳しくお伝えすることはできませんが、先ほど資料でご説明したとおり、ヤプリ及び電通グループとの資本業務提携は順調に進んでいます。現在、多くの顧客にアプローチを進めている最中です。近い将来、よいご報告ができるものと考えていますので、ご期待いただければと思います。

質疑応答:株価の考え方と今後の対策について

「現在の株価について、見解を教えてください。いわゆる初値天井となっていて、今後の株価対策を聞きたいです」というご質問です。

まず、私たち発行体は株価を決められる立場ではないと考えています。今期の業績予想については、投資家のみなさまからの厳しいご評価を十分に理解しています。今後は、業績を着実に向上させることで、投資家のみなさまの期待に応え、株価を着実に上げていくことを目指します。

質疑応答:競合他社について

「競合と認識しているところはどこでしょうか?」というご質問です。

競合として認識しているのは、主に私たちのようにアプリを中心とした開発を行っている企業です。具体的には、上場企業ではアイリッジなどが挙げられます。また、非上場企業ではチームラボなどが該当すると認識しています。

質疑応答:配当方針と今後の検討について

「配当は出す予定でしょうか?」というご質問です。

宮毛:配当については、開示資料でも「検討中」と記載しています。当社は、先ほどのキャッシュ・フローのご説明にもありましたとおり、少なくとも現時点では多額の投資を行う業態ではなく、黒字企業であるという状況です。

稼いだ利益を再投資する用途がないのであれば、一般論として配当などに振り向けるべきとの考え方があるかと思います。当社としても、配当については今後も前向きに検討していきたいと考えています。

質疑応答:電通の大規模プロジェクトとフルスクラッチの違いについて

山﨑:「電通の大規模プロジェクトとフルスクラッチの違いは何ですか?」というご質問です。

電通の大規模プロジェクトとフルスクラッチの違いですが、いずれもフルスクラッチです。

その上で、どのように区別しているかというと、特に電通グループ経由でいただく案件に関しては、規模が非常に大きく、ステークホルダーが多く関与するため、アプリを作ること以外の領域でも協力が求められる内容となっています。そのような理由で、大規模プロジェクトとしています。

したがって、アプリの作り方としてはどちらも同じであるということです。

質疑応答:新規事業について

「新規事業として、何か取り組まれていることはありますか?」というご質問です。

新規事業に関しては、現在詳しくお伝えすることはできません。ただ、私たちフラーが現在取り組んでいるものの中で、今後、資本業務提携先となんらかの取り組みが可能になることがあるかもしれません。

質疑応答:AIの活用とエンジニアへの影響について

「ローコードやノーコードなどがAIに淘汰される未来をよく耳にしますが、AIの進化に対する考えをお聞かせください」というご質問です。

フラーでも現在、AIを積極的に採用・活用していますが、このAIに関して最も大きな影響を受けるのはエンジニアだと考えています。

積極的にAIを活用していますが、フラーが手がけるプロダクトは複雑なものが多く、ゼロから10まですべてをAIで完成させることはなかなか難しいのが現状です。その中でも、工程ごとにAIを活用している場面があり、効果的に活用できていると考えています。

一方で、みなさまもご存じのとおり、AIの進化は非常に急速で、大きく変化しているため、簡単な業務を行うエンジニアがAIに仕事を奪われるという現状も見受けられます。そのような中で、フラーのエンジニアには、AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使いこなす側のエンジニアになってほしいと考えています。

積極的に活用機会を提供し、サービスを柔軟に取り入れることで、機動力の高いエンジニア組織を引き続き目指していきたいと考えています。

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