~新morichの部屋 Vol.22 株式会社fonfun 代表取締役社長 水口翼氏~

福谷学氏(以下、福谷):本日も「新morichの部屋」が始まりました。5月はなんと2回開催しています。

森本千賀子氏(以下、morich):最近ものすごくうれしいのが、上場会社の経営者の方から「出たい」という逆オファーを受けることが多くなったことです。

福谷:以前、写真を拝見した方々が出たいとおっしゃっているのですか? 来年の予定が埋まってしまいますね。

morich:やばいです。もう3年後ぐらいまでは順番待ちといった、人気ラーメンチェーンのようになってしまいますね。

(一同笑)

福谷:これは「徹子の部屋」も超えていけそうですね。

morich:そうですね! 私の目標はそこですからね(笑)。

福谷:なるほど(笑)。ありがとうございます。本日もすばらしいゲストをお招きしています。

morich:オーディエンスの方もたくさん来ていただいています。

福谷:そうですよね。今日はものすごく楽しみにしてきました。

morich:私もです! 実は何回かお会いしたことはあります。今回も情報のシャワーをいっぱい浴びたのですが、知らなかった過去がけっこうありました。

福谷:「morichシャワー」ですね(笑)。

morich:すでに大ファンになっています。今日はもしかしたら世の中のお母さま、母親のほうが共感するかもしれません。

福谷:そのような面もありつつ、実業家としてもすばらしい方で、いろいろな経験もされており、今後ますます注目されている方ですよね。

morich:そうなのです。世の中にはまだ出ていないような情報を、今日はいっぱい引き出したいと思います。本当に私も大好きな方ですが、より多くの方にファンになっていただきたいと思える経営者です。

水口社長の自己紹介

福谷:それではさっそくご紹介したいと思います。morichさん、よろしくお願いします。

morich:本当にたくさんの肩書をお持ちですが、今日はまず、上場会社という意味でご紹介します。株式会社fonfun代表取締役社長の水口翼さまです。ようこそいらっしゃいました!

水口翼氏(以下、水口):よろしくお願いします。

(会場拍手)

morich:もともと創業されたのが、サイブリッジグループ株式会社ですね。そちらを創業されてから、上場会社をいわゆるTOBされて、そして現在は上場会社の社長でもいらっしゃるということで、今日はいろいろと深掘りしたいと思います。よろしくお願いします。

福谷:上場会社をTOBされるとは、なかなかすごいことですよね!

morich:そうなのですよ! 未上場の会社が上場会社をTOBしたということですからね。

福谷:すごいです。

morich:そのあたりのドラマも聞いてみたいです。簡単に自己紹介をお願いします。

水口:あらためまして、水口です。よろしくお願いします。私は2004年にサイブリッジという会社を作っています。創業のきっかけは青山学院大学在学中の19歳、大学1年生の時に同級生の女の子と学生結婚したことです。

学生結婚をした理由は子どもができたからです。大学在学中に子どもができ、妻と自分の2人分の学費、そして子どもと家族を養うお金を稼ぐために、大学2年生の時に個人事業でホームページを制作する会社を創業しました。

その後、株式会社になり、そこから20年ぐらい外部資本を入れずに、ずっと会社を経営しています。そしてTOBをして、上場会社も買収して、今は両方を兼任しているというかたちです。

福谷:簡単におっしゃっていますよね(笑)。

morich:まず、学生の時ですよ。

福谷:19歳の頃に起業されました。

morich:そもそも、お子さんができたということは、「責任を取る」という話になりますよね。まずそこですよね。実は私の友人にもいるのですが、どちらかが辞めるパターンが多いですよね。やはり女性のほうが中退して、子育てに専念するといったケースが多いです。

しかしながら、奥さまをきちんと卒業させるために、養うために起業しますというのは、なんて素敵な人なのでしょうか。ここは強調したいところです!

水口:がんばりました!

morich:すばらしいです。

福谷:おそらく、そこに原点があるからこそ、今、このようなすばらしい姿になっているのだと思いますよね。

反骨心と知的好奇心が芽生えた少年時代、読書に没頭した日々

morich:本当に聞きたいことはたくさんありますが、まずは、世の中のメディアにはあまり触れられていない幼少期の頃についてうかがいたいと思います。東京都出身ですよね?

水口:東京都八王子市出身です。身内などに経営者は一切いません。サラリーマンの家庭です。

morich:幼少期はどのような少年だったのですか?

水口:そうですね、あまりやる気のない少年でした。

(一同笑)

水口:幼稚園の頃から中学3年生までは剣道をしていました。勉強も別にそこまで好きではないですし、「なんで勉強ってしなければいけないのだろう」「義務教育ってなんのためにあるのだろう」「押し付けられて、なんで勉強しなければいけないのだろう」といったようなことを考えている、小学生の頃から「中二病」のような感じの子でした。

morich:なるほど、親の立場からすると手こずる系のお子さんだったのですね。

水口:そうですね。本を読むことが好きで、小学校2、3年生ぐらいから、日本の歴史などが好きになって、そのようなものをけっこう読むようになりました。そして、母親に対して難しい質問をして「そんなことも知らないのか」という感じの、嫌なガキでした(笑)。

morich:マジですか(笑)。どちらかというと、斜に構えた感じの少年だったのですね。

水口:そうですね。ロジックなどが納得できないと「押し付けられた教育」を感じてしまうような子どもでした。

morich:同級生たちが今の水口さんを見たら、けっこうびっくりしますか? 

水口:いや、そのようなこともないかもしれません。「昔から、ちょっと面倒くさいことを言う人だったよね」という印象はおそらくあると思います。

morich:なるほど(笑)。けっこう知識があって、IQが高めな感じだったのですね。

水口:自分で言うのもなんですが……。私は1982年生まれで、当時はインターネットなどがまだ本当に始まった頃、なかったに近い時期でした。「やはり持っている知識をどれだけ増やせるかが力になる」というようなことをけっこう思っていました。

小学校5年生の時に、担任の先生が「本を1万ページ読んだら、ミスタードーナツ食べ放題」「本を3万ページ読んだら、回転寿司食べ放題」という企画を立てました。私は本を読むのが好きだったので、実際に小学校5年生の1年間に本を3万ページ分、普通に読みました。1冊200ページぐらいの本でいうとけっこうな量です。

2日に1冊ぐらいのペースで本を読んで、それをクリアしました。歴史も好きだったので、歴史関係の本などもたくさん読みました。司馬遼太郎を6年生ぐらいで読んでいました。そのような感じの小学生でした。

morich:えぇ!? そうですか! 将来はこうなりたいといった夢はありましたか?

水口:ないです。何もないです。なんなら今でもないです。

(一同笑)

水口:「人が生まれてきて、生きている意味なんて基本的にはないでしょう」といったような感じの少年でした。

morich:しかし、歴史の本を読んでいるということは、何かそこにロマンを感じるものがあったのですか?

水口:ロマンというか、知識欲求ですよね。戦国武将の名前をひたすら覚えるようなことが好きでした。

morich:すごいですね! 世界史ではなくて日本史なのですね。

水口:日本史ですね。もっぱら日本史でした。

morich:武将や戦国時代などですね。よく、戦国時代の戦い方などが、ある意味経営に活かされるなどと言いますよね。

水口:そうですね。こじつけかもしれないですが、けっこう活かされている部分もあるかもしれません。

morich:剣道と両立させながらということですね。

水口:そうですね。中学校時代もそのような感じで、本をたくさん読んでいました。文武両道と言いますか、剣道部にいながら本も読んでいました。オタクトークになってしまいますので割愛しますが、けっこう長めのSF小説も好きで読んでいました。

morich:何巻もあるシリーズものですか? 

水口:そうですね。中にはご存知の方がいるかもしれません。『グイン・サーガ』という1人の日本人作家が書いた、一番長い小説があります。おそらく130巻ぐらいで作者は亡くなってしまいました。

morich:それを読もうと思う方は珍しいですよね。

水口:もともと家にあったのです。父親もけっこうオタク気質だったので家にありました。そのようなDNAは受け継いでいます。また、『宇宙英雄ペリー・ローダン』という、ドイツの何百冊とあるようなSF小説などですね。

morich:うなずいている方が何人かいるので、お仲間かもしれないです(笑)。

水口:お仲間がいるかもしれないですね。うれしいです。そのようなものを読んでいました。

morich:読むのにけっこう時間がかかりますよね?

水口:学生には時間がありますからね。高校も「高校受験する意味ってなんだろう」と思っていて、推薦で一番近くの高校に入ることができたので、楽して入りました。高校時代は一応生徒会長をしていました。

morich:すごいじゃないですか!

水口:いや、生徒会長なんて立候補すれば誰でもなれますからね。

morich:いやいや、そもそも立候補しようと思ったのはなぜですか?

水口:なぜだったのでしょうね。少し目立ちたかったのかもしれないですね。

morich:正義感ですか? 

水口:正義感はないです。

morich:0.3秒ぐらいで答えが返ってきましたね(笑)。志や「日本を変えるぞ」的なものもなかったのですか?

水口:ないです。

morich:ここまで言い切る経営者は、なかなかいないですよね(笑)。

福谷:なかなかいないです(笑)。

水口:生活に変化が欲しかったという感じですかね。

morich:人気者でもなかったのですか? 

水口:高校は剣道部ではなく吹奏楽部でした。剣道は臭いし熱いしですからね(笑)。高校ではモテたいという理由もあり、女子が多そうな吹奏楽部に入りました。

morich:なるほど。トランペットなどですか? 

水口:ファゴットというマニアックな木管楽器を担当していました。

morich:聞いたことがないです。

水口:オーケストラなどでも音が小さいので、あまり聞こえない楽器です。

morich:そうなんですか(笑)? なぜそれを選んだのでしょうか?

水口:それはもう、残った楽器がそれだったので「君はこれだね」となりました。

morich:本当に「吹奏楽部に入っています」という勲章よりは、女子もいっぱいいるしといった感じだったのですか? 

水口:どちらかというと、吹奏楽部は文系の中でも体育会系に近い感じがしますよね?

morich:そうですよね、青春は青春ですよね。

水口:体育会系のように外で走ったりはしませんが、やはりビジネスをしていく上でも、きちんとコツコツ練習をして、成果を積み上げていくスタイルは、けっこう経営のベースになっているところがあります。

morich:生徒会長をされていたということですので、目立たない子でもなかったけれど、何かすごいビジョンを持っていたわけでもなかったのですね?

水口:ないです。むしろ「世の中で生きていくために何もない」と思っているような感じでした。

morich:なるほど。大学は受験されて入ったのですか?

水口:そうですね。大学も「本当になんで行く必要があるのだろう」と思っていて、「ホームレスで良いではないか」と思っていました。要は「中二病」です。

morich:母親からすればややこしいですね(笑)。

水口:「なんのために就職する必要があるのだ」と思っていました。収入もなく、納税もしていない人たちが、普通にホームレスをしており、政策的にはきちんとNPOからご飯なども与えられる、これだけセーフティネットができている国で、わざわざ目的意識もない中で、「働く意味ってなんだい?」と思っていました。

morich:本気で思っていたのですね。

水口:本気で思っていました。しかしながら、本気でそれをするほどの勇気もありませんでした。

morich:なるほど。確かにそちら側に走ってしまう人は一定数いますからね。

水口:別にそこまでやる気がなかったわけでもなかったので、高校3年の夏、秋ぐらいに「受験するか」ということで、そこから受験勉強を始めました。

morich:地頭が良いですからね。

水口:そうですねと言うとあれですが、塾にも行かず、私立の文系なので3教科受験でした。国語と歴史と英語です。歴史は得意でしたし、本を読むので国語も得意でした。

したがって、英語さえできれば大丈夫と思っていたのですが、英語だけは偏差値が低かったのですよ。「なぜ日本人が、わざわざ英語を義務教育で勉強しなければいけないのですか」「これは、日本が戦争で負けたからですか」などと中学生で言ってしまうタイプでしたので、納得できませんでした。

morich:英語の先生的には言い返せないですよね(笑)。

水口:受験では「英語だけ勉強すればどこかしら受かるな」と思いました。

morich:一応勉強しておこうということですね。それでは、ストレートで大学に行かれたのですか?

水口:そうですね。

迷うことなく父親になることを決断 19歳で学生結婚へ

morich:まだ、その時は奥さまとは出会っていませんでしたか? 

水口:大学に入って出会いました。4月に入学して、6月ぐらいからお付き合いを始めました。

福谷:けっこうすぐですね。

morich:同じ大学でということですね。

水口:そうです。同じ大学、同じ1年生でした。

morich:ひとめぼれですか?

水口:ひとめぼれと言いますか、青学には「合コンでモテる」と書いてあったから入ったのですよ。

morich:ちなみに高校生の時はモテたのですか? 

水口:高校時代はわからないですね、ぼちぼちではないでしょうか。大学は「合コンでモテる」と書いてあったにもかかわらず、合コンを1回もせずに彼女とお付き合いを始めてしまいましたので、楽しいはずのキャンパスライフが……という感じです(笑)。

これは妻も言っていることですので、お互いさまなのですが。

morich:そうですよね、お互いさまですよね(笑)。そこからずっと一途でいらっしゃいますね。

水口:そうですね。6月ぐらいからお付き合いを始めて、結果的には10月ぐらいに受精をしました。

福谷:展開が早いです(笑)。

morich:1年生の10月ぐらいに、もう妊娠が発覚したのですか?

水口:発覚したのは2月か1月ぐらいですね。1年生の後期試験の直前ぐらいに、妻から告げられました。エコー写真を見せられました。

そこで、水口青年は考えたわけですよ。「これで自分の何もない、変哲もない、つまらない人生がわくわくしたものになるのではないか」と思いました。

morich:素敵じゃないですか!

水口:変化のない自分の人生が楽しくなるのではないかと思ったのです。

morich:迷いはなかったのですね?

水口:迷いはなかったです。

morich:これは素敵ですね。

水口:そして、妻に「産もう」と説得しました。

morich:奥さまはどちらかというと迷っていたのですか? 

水口:迷っていたというか、もうぜんぜん堕ろす気でした。

福谷:そうなのですか!

水口:私は「お腹にいる自分の子どもを守らなければ」と思いました。少し脚色しているかもしれませんが、おそらく記憶ではそのような感じです。

morich:本当にドラマにしたいぐらいですね! 逆に奥さまを説得し、一緒に産もうという決断に至ったわけですね。

水口:「大丈夫だ。なんとかなる」と説得しました。

morich:それで、結婚したのですか?

水口:結婚しました。1年生の3月、春休み中に結婚しました。

福谷:それも早いですね。

morich:ご両親はいかがでしたか? 

水口:うちの両親は、なんだかんだでOKでした。しかし、向こうのご両親は、最初はやはり駄目だということでした。最終的に「きちんと卒業する」ということを条件に、結婚を許してもらいました。

それは、やはりきちんと卒業できなければ就職もできないですし、就職ができなければ子どもに安定した生活をさせてあげられないという意図もあり、その条件で結婚を許してもらいました。

morich:そうですか。とはいえ、子どもを育てながらの学生生活ですよね。

福谷:親からすると怖いですよね。

morich:もし、自分の息子がそのように言ってきたらどうしていただろうと思いますよね。

福谷:今同じくらいの年齢ですよね。

水口:19歳のうちに子どもが生まれて、大学1年間、2人で一緒に大学を休学しました。

福谷:本当にドラマですね。分岐点ですよね。

水口:そうですね。当時はやはり、自分自身が本当に必死に働かなければいけないという状況下にいました。一番アドレナリンが出ていたのがその時期になります。

創業の原点は「家族」の生活を支えるため

morich:最初に行った事業はなんだったのですか? 

水口:最初はホームページ制作です。パソコンでホームページの作り方のようなものは高校生ぐらいからかじっていましたので、これを仕事にできるのではないかと思い、個人事業で創業しました。

morich:その時はあまり将来のビジョンなども考えていないですよね。

水口:もうビジョンの話ではないです。どうすればお金を、日銭を稼げるかという話で、なおかつ外に出ることもなく、家で子どもの面倒を見ながらできる仕事をと思ったのです。もちろん、どこかで働くという選択肢もあったのですが、結局どこかで働くと、誰かの意志決定で自分の人生や、子どもの人生が左右されてしまうと思いました。

他の人の会社に入って、その会社が潰れるとなった場合、その会社の経営者の意志決定で会社が潰れるわけですよね。

福谷:確かに。

水口:一方で、自分で創業した時にうまくいかなかった場合は、自分の意志決定で結果的に失敗するということですので、そちらのほうが納得できます。そうであれば、きちんとリスクを取って、きちんとチャレンジしようと思ったのです。

morich:その時はまだ「会社」というかたちではなかったのですよね?

水口:個人事業の時はそうですね。

morich:最初のお客さまはどのような方でしたか? 創業者の方に必ず聞いていることなのですが、どのように何もない状態から最初のお客さまが来たのでしょうか?

水口:大学休学中は1年間アルバイトのような感じで、そのような仕事もしていました。並行して、自分が大学に復学した時に単位が取りやすいように、大学の講義情報の口コミサイトも作っていました。

morich:すごいですね(笑)!

水口:どのようなことかというと、自分で青山学院大学の学生ポータルのようなものを作りました。当時はまだ、そのようなものがありませんでしたので、大学生のみんなが「この学校のこの授業は単位が取りやすいよ」といった、口コミを集めるポータルサイトを自分で作りました。

そうすれば自分も使うことができるし、そこで広告収入も取れると考えました。最初から広告収入を得ることや、そこで捕まえたお客さまから展開できるようなものに取り組んでいました。誰が最初のお客さまだったかは、実は覚えていないですね。

morich:なるほど。そこである程度、日銭は稼いでいたのですね。

水口:ホームページを1つ作れば15万円から20万円ぐらいになります。大学のOBの集まりなどに行って「頑張ってやっています」と、名刺交換をしました。

morich:学生で子どももいてと言えば、確かに応援してくれますものね。

水口:そうなのです。ホームページ1つにつき15万円から20万円で、かつ個人で作っているため原価がかかっていません。丸々粗利になりますし、本当に2週間ほどでできますので、月に2件でも仕事が取れれば十分食べていけて、学費も払うことができます。

morich:それを卒業後もそのまま続けられていたのですか?

水口:私は、実は卒業していません。

morich:そうですか!

水口:個人で事業を始めて、初年度には400万円ぐらいは稼げていたと思います。もう1,000万円を超えそうな感じでしたので、株式会社にしました。大学2年生、3年生、4年生となり、4年生の時には、私はほぼ学校に行っていませんでした。

学校に通えるようにと大学の近くにオフィスを借りていたのですが、私はぜんぜん通っていませんでした。妻はきちんと真面目に通っており、妻が卒業する頃には、会社の年商もおそらく3,000万円から5,000万円ほどになっていましたので、そもそも水口家を養える状態が確保できていたのです。

morich:なるほど、確かに。

水口:もう就職する必要もないですし、卒業する必要もないということもあり、いったん中退しました。ただ、妻の両親との約束は「卒業すること」ですので、死ぬまでには卒業しようと思っています。

福谷:約束はまだ果たせていなかったのですね!

水口:いったんペンディングになりました。

morich:なるほど。そのままその会社を続けられているということですね。

水口:そうですね、サイブリッジ社をずっと経営しています。

ストック志向の経営哲学により着実に事業を拡大

morich:ターニングポイントはどこにあったのでしょうか? そのようなホームページ制作会社から始まり、今でこそM&Aなどもされていますのでお聞きしたいです。

水口:ターニングポイントと言いますか、やはりもともとは水口家を養うために作った会社ですので、どうすれば会社が潰れないかということには、かなり注力していました。ホームページ制作は自転車操業と言いますか、フロー収入になります。なるべくストック収入を増やしていくということに関しては、本当に会社を作り始めた頃からすごく意識しています。

最初はホームページ制作でしたが、毎月の保守更新費用をきちんともらっていきます。さらに単価がもっと高いシステム開発へと拡大していきました。先ほど講義情報の口コミサイトのお話をしましたが、その後も、そのようなメディア事業、例えば、求人サイトや類似する口コミサイトなども並行しながら作っていきました。

そのようにして、ストック収入となるような事業ポートフォリオをなるべく分散させました。特定の事業に特化してすごく伸ばす会社などもあると思いますが、私はもともと会社を伸ばすことを意識して作っていません。なるべくポートフォリオを分散して、特定の産業の分野で不況が来ても大丈夫なように、お客さまもなるべく薄く広くしています。

ずっとこのスタイルで経営してきましたので、創業してから資金繰りなどで困ったことは一度もないです。

morich:先ほどおっしゃっていましたが、ずっと自己資本で経営されているということですよね?

水口:そうですね。人のお金を預かるのは怖いですからね。

morich:今なんて、本当に「資金調達がすべて」という感じのスタートアップが多いですものね。

水口:自分の家族を養うために事業をしていますので、人さまのお金まで預かってもリスクを負うだけですからね。

morich:それではデットファイナンス、金融機関からの借り入れもしていないということですか?

水口:金融機関からの借り入れはしていました。しかし、銀行からの借り入れは創業してだいぶ経ってからになります。

morich:そうですか。それでは本当にずっと自己資本で経営されているのですね。

水口:そうですね。資金は特に必要ないビジネスになりますので、借り入れは後になってからでしたね。

morich:組織も大きくされていかれたのですか?

水口:創業から少しずつですね。実は最初の採用は新卒採用でした。創業した頃は私自身が若かったので、自分より年上の人は雇わないというポリシーだったのです。

中途採用はせずに、基本的には新卒採用をしています。要は人を雇って、前の会社の方針などで意見対立するのも、マネジメント上で手間がかかるだけですので、基本的にはそのようなものに染まっていない人たちを雇うという方針にしていました。

morich:マネジメントコストがかかってしまいますからね。そのような理由から、基本的に新卒採用だったのですね。

水口:若手や新卒などの年下を採用していて、少しずつ自分の年齢が上がるとともに採用年齢も上がっていくというのを4、5年続けていました。

morich:今でこそM&Aの累計が50件ぐらいということですが、M&Aに踏み切られたのは、どのようなタイミングだったのですか? 

水口:2004年創業ですので、6年目にあたる2010年に日本M&Aセンターから、同業種のホームページ制作会社をM&Aしたことが1件目のM&Aになります。

M&Aの売上は1億円ほどでした。インターネット業界と言いますか、1990年代ぐらいにCD-ROMなどがマルチメディアと言われた時代から続く会社を事業承継のようなかたちで、オーナーから2010年に買いました。

時代的にはまだすごく早い時期に1件目のM&Aをしました。大日本印刷の売上が1億円ぐらいある中で、その7、8割を占める会社でした。したがって、商流が特定のところに依存しており、彼らとしてはそこにリスクがあったのですが、当社としては逆に大日本印刷のようなところを事業のポートフォリオの中に組み入れられるというメリットがありました。

メンバーも入ってきて、実際にうまく事業をしていました。これは15年前の話になりますが、今でも当時そこで働いていたメンバーもいます。その時一緒に入ってきてくれた番頭代わりだった女性も、実は現在もfonfunで役員として活躍しています。

morich:それでは1件目で成功されたのですか? 

水口:成功といえるのかはわかりませんが、非常にうまくいきました。そこからM&Aという手法を自分たちの事業の中でも取り入れられるとわかり、いろいろな会社に対して取り組むようになりました。

失敗から導かれたカルチャーと再現性を重視するM&A

morich:水口さんなりのポリシーと言いますか、どのような判断軸でM&Aをしているのですか? たくさん申し込みがありますよね?

水口:たくさんあります。これもいろいろな失敗を繰り返してきた結果です。今とあの頃は少し違いますよね。

morich:そうですよね。

水口:失敗した話のほうが話としてはおもしろいと思うので言いますね。もともと自分よりも若い人しか雇わないというぐらい、自分のところのカルチャーをけっこう明確にしている会社でした。今はけっこう緩いのですが、例えば、エンジニアもWebデザイナーも全員スーツでした。

morich:えぇ!? そうなのですか? 

水口:若手ベンチャーでしたが、「きちんとしよう」という意味合いも含めてのスーツ着用で、けっこう独自カルチャーでした。

M&Aをすると、相手側は別カルチャーですので、自分たちが守ってきたものを押し付け過ぎると、そこの価値が失われてしまいます。結果的に、M&Aをした時に自分たちの独自カルチャーのようなものは、逆にどんどん薄まっていきました。

morich:自分たちのカルチャーを押し付けるような会社もありますよね。

水口:中には買収した後に、最終的に全員が辞めたようなM&Aもありました。そのようなM&Aなども経た結果、今は、きちんとその相手側の会社が大事にすることを尊重しています。fonfunもM&Aになりますが、私自身が意識しているのは、やはり一緒に働くということで「同じ釜の飯を食う」といったことをすごく大事にしています。

自分もそこの会社に行って働いて、仕事内容などをしっかりと把握します。ほったらかしにすると「自分たちはほったらかされている」と思ってしまいますので、そうならないためにも、きちんと会社を見に行って、一緒に働くことはけっこう心がけていることです。

morich:そうですよね。「放置されている」となりますよね。M&Aする前に、買う時にまず「あ、この会社だ!」と判断される軸というのはありますか?

水口:基本的にはものすごく人に依存している会社などは買わないです。やはりちゃんと仕組みが出来上がっており、ある程度再現性があって、大きな問題や仮にM&Aによって異文化に対するハレーションが起きても収益性が大きく損なわれない会社を選びます。ストック性が強い、なるべくそのような会社を買うようなイメージが多いですね。

morich:なるほど。ビジネスモデルを重視しているのですね。

水口:これは言い方が難しいのですが、自分自身が経営者として入っていったことで、シナジーが大きく取れたり、ものすごくバリューアップできたりするかというと、それはもう、ものすごく労力がかかります。

morich:労力が要りますね。

水口:リスクとリターンのところでいうと、投資やM&Aということでお金を使うのであれば、基本的には確実性がより高いものに使うほうが良いという投資判断があるため、そのような軸でM&Aは判断しています。

morich:それでは、どちらかというと本当に事業投資というよりも、金融的な考え方に近いところですか?

水口:そうですね。金融や不動産投資などの投資パフォーマンスの考え方に近いような感じで考えています。

morich:それだけおそらく難しいということですよね。シナジーを出していくということなどは……。

水口:難しいですね。

morich:私も社外取締役を何社かやらせていただいていますが、そのような案件のジャッジメントをする時は本当に難しいです。いくらデューデリをしても、やはり見えないものがいっぱい出てきます。

水口:デューデリなどで出てくるものというのは、おそらくその後どうにかできるものなんですよ。そうではない部分、書式などヒアリングだけでは出てこないポイントを、どのくらい早い段階でつかんで手当するのか、補充して改善できるかというのが、やはりM&Aでは重要ではないかとは思っていますね。

morich:あとは先ほどおっしゃったように、本当にビジネスモデルとして、ある意味オーナーが代わっても、人が多少変わっても残せるものがあるかですよね。

水口:そうですね、そこはすごく重要視していますね。

morich:何か思い出深いM&Aはありましたか?

水口:思い出深いM&Aですか……。どれもM&Aは思い出深いですけどね。

morich:本当にそうです。M&Aの仲介を行っている私の友人などは、もう本当にお見合いのような、結婚のようなものだそうです。

水口:お見合いの話でいうと、自分の行ってきたM&Aは、なるべくお見合いではないパターンで行っています。どのようなことかというと、例えば経営者の方が残るパターンのM&Aは1回もやっていないのですよ。

福谷:そうなんですね!

水口:理由はけっこう簡単で、もうどっちを向けばいいかわからなくなってしまうじゃないですか? ずっとオーナー経営でやってきているので、どっちを向けばいいかわからなくなってしまいます。ましてや、そのキーパーソンがオーナーの方というのは、やはり売却された後に……。

morich:創業者だったりすると、いろいろと複雑な思いがありますね。

福谷:確かに、ありますよね。

水口:そのような案件は基本的にはやったことがないです。したがって、お見合いではないですね。

morich:そうですか。モチベーションも、やはりオーナー次第ですしね。

水口:里子を取るような感じですね。

morich:なるほど。確かにオーナーも、気持ちもありますしね。

水口:そうですね。オーナーが今まで行ってきた成功体験などもあります。再生案件などで、うまくいっていなかった状況から引き取るパターンでは、残るパターンもありますが。

morich:なるほど。これはもう、これからも継続していきたい感じですか? 

水口:そうですね。

8人の子どもたちがもたらす幸福度の高い生活

morich:ビジネスの話をもっと聞いていきたいのですが、実はみなさまに聞いていただきたい話がもう1つあるんですよ。おそらく上場会社の経営者で、これだけの人数のお子さんがいらっしゃるのは……。

福谷:なるほど。確かに。

morich:プライベートに触れてしまっていいですか? 

水口:もちろん大丈夫ですよ。

morich:1人目は大学の1年生の時に妊娠がわかって、生まれたのは2年生の時ですか? 

水口:大学休学中なので、1年生か2年生のどちらかです。

morich:つまり実質19歳の時ですよね。

水口:19歳です。

morich:その時にお生まれになったお子さんが、今は?

水口:22歳ですね。

morich:うちの息子と同じくらいです。

水口:大学を卒業しました。もう社会人です。

福谷:なるほど。そして今、一番下のお子さんがいらっしゃるということで……。

morich:一番下のお子さんが3歳ですかね? 

水口:そうですね。3歳です。

morich:その間に、6人ですか? 

水口:はい。合計8名いるので。

福谷:すごいですね(笑)!

morich:すごいですね。もう、8人ですよ(笑)! うちも2人いますが、2人で本当にひぃひぃですから。

福谷:ひぃひぃですよね。うちも2人なのですが。

morich:産むだけでも大変ですから。奥さまの立場で言うと。

水口:そうですね。私は1人も産んでいないので、すべて妻のおかげです。

(一同笑)

morich:それも1人の奥さまがですよ。たまに子だくさんのパパはいますが、ママが違うということもありますから、すごいです!

福谷:8人のお子さんです。

morich:それは結果としてですよね、もちろん。最初から計画していたわけではなくて。

水口:計画していたわけではないですね。3人目の子どもくらいからなのですが「やはり子どもが増えてくるのって楽しいよね」と。軸がいくつかありますが、経営だと目標達成ってなかなかハードルがあるじゃないですか? 一方、子どもの数は比較的達成しやすい……。まぁ、目標ではないのですが増えていきます。

(一同笑)

morich:「次いこう!」というような。もう産まれたら「次いってみよう!」のような感じでしょうか。

福谷:幸せがまた1つ増えていきます。

水口:やはり、まだ見たことのない景色のようなものを見るのが好きですので。

morich:いや、もう想像つかないです!

水口:生活に変化ってあまりないじゃないですか? だからビッグイベントなんです。新しい命が生まれるというのは大きな変化です。

morich:確かに! そうか、夫婦円満のコツかもしれません。

福谷:確かにそうかもしれないですね。

水口:子はかすがいとはまさにこのことですね。

morich:もうまさにそれですよね(笑)。

水口:それから、やはり家に赤ちゃんがいる状態は一番幸福度が高いということがあります。

morich:それは存在そのものがウェルビーイングですから。本当に。

福谷:ウェルビーイング(笑)。そうですね。

水口:そうですね。脳内分泌物質は、やはりホモサピエンスは新生児をかわいがったりすることで出てくるので、やはり家に常に赤ちゃんがいる状態がよいです。

morich:それだったのですね!

水口:妻ががんばってくれて。

福谷:なるほどなぁ。がんばるかな、私も(笑)。

水口:赤ちゃんが産まれると、やはり赤ちゃんの匂いなど……。

福谷:ある! ありますね。

morich:求めたくなると聞きました。私の友人のところにも子どもが6人いますが、やはり寂しくなってしまうらしいんですよ、大きくなると。

水口:そうですね。4歳くらいになってくると自我が生まれて、もう人間です。

(会場笑)

morich:そうすると、やはり乳児がなんだか懐かしくなるといいます。

水口:そうです。家にいないと寂しいです。

morich:ちなみに、それぞれ何歳かわかります? 

水口:わかりますよ! わかります(笑)。

福谷:それはさすがに(笑)。

morich:お子さんの名前と年齢は一致しますか?

水口:一応、男の子が3人、女の子が5人います。妻が大学を卒業してから2人目なので、そこからはだいたい2年おきくらいに産まれています。奇数番の子どもは私が名付けて、偶数番の子は妻が名付けます。決めているのは3文字で、水口なので、名前に「み」が入るという命名規則です。

福谷:全員「み」が入るのですね!

水口:はい。法則、ちゃんとアルゴリズムで付けています。

(一同笑)

福谷:アルゴリズムで付けるのですね。

水口:はい。名前は伏せますが。個人情報ですので。

morich:なるほど、そうですか。そのようなルールを決めているのですね。

水口:ルールを決めないと、子供の名前にはもう無限の組み合わせがありますので。

福谷:確かに。今、8人が家の中にいらっしゃるんですよね?

水口:家の中に全員いますね。

福谷:社会人になった子も含めて?

水口:そうです。今も実は同じ部屋で全員寝ています。

福谷:いやぁ、すごい!

(一同笑)

morich:22歳の子もですか?

水口:22歳もそうですし、3歳もそうです。布団を並べて同じ部屋で、仲良く今でも寝ています。

morich:そうですか! めちゃめちゃ仲良しじゃないですか!

水口:ただ、もう本当に狭いんですよ。

(一同笑)

福谷:いや、狭いですよね、それは(笑)。

morich:私はどんな豪邸だろうと思ってしまったのですが(笑)。

水口:そんな豪邸ではないです。そんな贅沢はできません。別にお金もないので家は賃貸です。

morich:そうなんですね。この間、Facebookで一番上の長女さんの投稿を拝見しました。長女さんが就職されて、初給与でみんなにですね……。

水口:見てもらったんですね! シャワーで(笑)。

morich:見ますよ!

福谷:見ました、見ました。

morich:みんなにケーキを買ってきたそうです。

水口:そうなんですよ。

morich:ケーキといっても、お子さんが8人ということは……。

福谷:10人分ですからね。

(一同笑)

水口:そうですね。長女はまだ研修中じゃないですか。「まだ1円もお金を稼いでないのに、お給料をもらっているのか?」という話をしたんですよ(笑)。「なんなんだ? 給料泥棒か?」と言ったのですが「でもパパ、初めての給料だから、ちょっとケーキ買ってきてあります」って。

福谷:うれしいですよね。

水口:うれしかったですね。

morich:そりゃうれしいですよ!

水口:うれしかったです。その日はケーキに間に合うように早く帰って、一緒に食べました。

すでに孫がほしい!? 水口家の将来の姿とは

morich:ちなみに教育学というか、水口家はご夫婦で話し合っているところで何かありますか? 

水口:そこはすみません。子どもが多くて、オペレーション的に追いつかないので……。

(一同笑)

水口:やはり最初の子どもの頃などはお金がそこまでなく、裕福ではなかったのでけっこう難しいところです。逆に他のご家庭にも聞きたいのですが、上の子も公立だったので、きょうだいでずっと公立に通わせているんです。ですから、下の子だけ急に……。

morich:私立に通わせると……。

水口:「私立の慶應に」などとなると、将来はきょうだい格差が……。

morich:「なんで俺だけ?」となりますね。なるほど、平等だということですね。

水口:そのような可能性があるというのを懸念しています。平等と思って、何もできていないということがあります。これは課題ですね。

morich:そうですか。しかし逆にそのようなポリシーなわけですよね? 

水口:ポリシーというか、結果的にですね。本人たちに強い意志があれば、もちろんそれを応援したいとは思っています。ちゃんと論理的に説得してくれれば「じゃあ投資しよう」となるのですが、そのような感じでは誰もないです。

morich:なるほど。きょうだい間のやり取りなどでは何かありますか? 例えば喧嘩はもう放置なのでしょうか?

水口:喧嘩はもう、1個ずつ構っているともう……。

morich:大変ですものね。「自分たちで解決して」と。

水口:はい。1番目と2番目、3番目と4番目のような感じで、年齢が近い同士がだいたい小競り合いをしています。

morich:もう、それじゃあ本当に「子どもの中で解決してね」ということですね。

福谷:いや、しかし奥さまがすごいと思います。

morich:本当ですよ。ですからこれ見よがしにね。たまに「自転車で送ってくるぞ」のようなことをされるのですね(笑)。

水口:これ見よがしではないですよ(笑)。本当に毎日やっていますよ!

morich:違うんですね。まぁ、やらないとね! 8人ですから!

水口:昼間は働いているので、子どもを幼稚園に送っていくことや、土日に連れて出かけるぐらいしか、やはり時間は取れていません。

morich:でも、幼稚園に連れて行くっていっても、自転車はもう2人だけしか乗せられないですものね。

福谷:確かになぁ……。いやぁ、奥さますごいですね!

morich:もう想像がつかないです。本当に。奥さまとの関係性のところで、何かマイルールのようなものはありますか? 

水口:いや、特にないですね。

morich:特にないです? 仲良くする秘訣的なものですかね。

水口:私は仕事をしていますし、妻は家庭で専業主婦をずっとしているので、マイルールというか……、何かあるかな? 特にないかもしれないですね。

morich:例えば、私の友人で6人のお子さんがいる女性は仕事をしているんですよ。やはり子育てのいろいろなことって、マネジメントでもあるじゃないですか。それが「すごく仕事に活きる」というようなことを言っていたのですが、何かありますか? 経営者としてという視点では?

水口:妻のオペレーションに関しては、そこまで口出しはしていないですね。もっと効率的にできることはいっぱいあるのではないかと思っていますよ。例えば靴下は全員同じでいいのではないかと思います。

morich:スティーブ・ジョブズ的に(笑)。

水口:そうです。わざわざ分けるせいで洗濯の効率も下がっているので「同じにしたらいいんじゃないか?」などと言いますが、「じゃあ自分でやってよ」と言われます。

福谷:そうなりますよね(笑)。

水口:「そこまでしてそうしたいなら自分でやってください。私はこれが良いと思ってやっているんです」と言われるので「じゃあお願いします」と。あとは「家政婦みたいな人を雇って、やってもらったらいいんじゃないか?」と言っていますが、やはり家に他の人が入ることには抵抗があるようです。

morich:それでは、自分でやられているんですか? 

水口:自分で洗濯物もご飯も全部です。

morich:お手伝いさん的な人はいないのですか!?

水口:週に何回かだけ、少しだけ来てもらっていますが、それがもう許容範囲のギリギリのところです。

福谷:すごいですね!

水口:でも、そのようなものの手配もまた大変ですからね。

morich:それも大変ですけれどね。でも奥さまが本当にすごいです!

水口:本当にがんばってくれていますね。

morich:「将来、水口家としてこうありたい」というようなものはありますか?

水口:孫はたくさん欲しいです。いや、もう今の時点でも、もう孫が欲しいんですよ。

(一同笑)

morich:自ずとおそらく、もう8人×何人のような感じになっていますからね(笑)。

福谷:確かに(笑)。

morich:DNA的に子だくさんな感じはなんとなくするんですよね。

水口:将来は大きな部屋で、お年玉などは漫画のような感じで配りたいです。

morich:子どもたちを並ばせてお年玉を配るんですね(笑)。

福谷:1人に2人お子さんができたら、もう倍になりますもんね。

水口:2人では足りないんですよ……。

福谷:足りませんか(笑)。

morich:いや、3人でも24人ですからね(笑)。

福谷:24人ですよ!

morich:もうすごいです。私がお子さんの立場だったら、お年玉をいっぱいあげなければいけないじゃないですか? 伯父さん、伯母さんの立場だと大変ですよね。

水口:そうですね。親戚からすると迷惑な感じです。

(一同笑)

morich:水口家のご親戚にとっては、確かにそうですよね。

水口:そうなんですよ。逆にこちらが気を遣って「そういうのはもう大丈夫です」と、年末年始などの集まりは遠慮しています。

morich:確かに親戚の人たちは遊びに行くと大変ですね。「お年玉を何個用意しなきゃいけないんだ?」みたいな。

水口:はい。ですから「大丈夫です」と、もう事前に言っておきます。

morich:おじいちゃん、おばあちゃんも大変ですよね。

福谷:大変ですね。

morich:しかし、みんなで出掛けようと思ったら、もう車1台じゃ足りないですよね?

水口:そうですね、車の移動などはもう……。

(一同笑)

morich:バスが要ります(笑)! 旅行に行こうと思ってもね。

福谷:確かにそうですよね。

水口:そうですね。昔は家族旅行も定量目標が欲しいと思って、最初は全国の都道府県の県庁巡りというのを行っていました。47都道府県の県庁の前で家族写真を撮るということをしていました。その後、全国の鉄道に乗ることを家族旅行のミッションにして、一応全国の鉄道路線を制覇しました。

morich:みんなで出掛けるのですか?

水口:そうです。当時はまだ子どもが3、4人ぐらいの頃からスタートでしたが、10年ぐらいかかって、全国の鉄道路線は全部乗りました。始点から終点まで全部です。

morich:えぇ!? 全部行ったんですか!?

(一同笑)

水口:全国の鉄道路線免許を持っている鉄道路線は全制覇しました。乗り鉄と一緒です。

morich:それはお子さんも連れてですか(笑)?

水口:子どももです。妻は定期的に妊娠期間中があったので行けなかった時期もありますが。

morich:そうですか! 奥さまはそうですよね。でも、そのような移動も楽しいですよね。

水口:しかし、移動はどんどんハードルが高くなっていきました。

morich:お子さんに思い出を作ってあげたいという思いもありますよね。

水口:私にとっては、やはり家族あっての仕事です。事業ありきでプライベートがというよりは、やはりプライベートというか生きがいですね。まあ、どちらも生きがいですね。

福谷:最初がそうですからね。

morich:最初からやはり「家族を養うために」というところから始まっていますからね。

福谷:ちなみに、まだ予定はあるんですか? 

水口:私としては、まだいきたいと思っています。

morich:私はラグビーが大好きなのですが、やはりチームができるくらいの、15人くらいはほしいですね。

福谷:ラグビーのチーム分けができるくらいですね。

morich:そうですね、2桁の人数を目指してほしいです。

水口:それはみなさまおっしゃるのですが、年齢差があるんですね。ですから、下の子がラグビーできるようになった頃は、上の子はもうまあまあいい年齢になってしまいます。どのようなスポーツでもそうなんですが、実はチームを作ることはけっこう困難です。おじいちゃん、おばあちゃんの年齢になってからではないと実は作れないと思います。

(一同笑)

morich:みなさん経験されたスポーツなどは、ばらばらなのですか? 部活などはいかがですか?

水口:「お姉ちゃんの影響でバレーボール部に」などはありますが、ばらばらですね。

福谷:今後が楽しみですね。

水口:エビデンスはないのですが、東京証券取引所上場の現役社長の中で、1人の妻で子どもが8人というのは1位なのではないかと……。

morich:私もけっこういろいろな方と話をさせてもらっていますが、さすがに4人でも多いぐらいですから。

水口:やはり個人情報なので「プライベート情報は収集していない」と東洋経済さんも日経さんも、みなさまおっしゃいます。

morich:調べようがないですしね。子だくさんで何か得したことはありますか? 

水口:田舎に行くとサービスなどをしてくれたりはしますが、子どもが5人ぐらいの頃がピークでした。「あ、同じきょうだいなんだな」って認識できる人数は、おそらく5人ぐらいです。そこから増えてくると「何かいわくつきなのではないか?」と、逆に気を遣われて聞かれないという感じはありますね。「もしかしたら何かあるのかな?」という感じです。

morich:むしろ気を使われるのですね。「これはお子さんではないのかな?」など、いろいろありますよね。

水口:「親戚なのかな?」などですね。

morich:旅館側、宿泊施設側もびっくりですよね。「まさか!?」となりますね。

水口:それから、子ども手当などを含めて国がいろいろな政策を増やしてくれています。そのようなものは人数が多い分いろいろもらえるので、「ありがとうございます」と思っていただいています。

morich:あとは本当に枕詞になりますよね。いろいろなところの自己紹介などで。絶対に忘れないですよ。

福谷:忘れないですね。

水口:そうですね。これは語弊がありますが、子どもの人数を増やせる家庭もあるはずですが、意外とみなさまそこまでは増やさないですからね。もちろん増やせない家庭もいらっしゃるので言葉は難しいですが、誰でもPRポイントにできるはずなのですが、意外とみなさましません。

morich:これは確かにそうですね。やろうと思えばということですね。

水口:はい。営業ツールにもなります。

福谷:営業ツール(笑)。

水口:ぜひ、みなさまご検討ください。本当に日本でももっと、いろいろな家庭で子どもの数が増えたらいいなと思っています。

morich:そうはいってもあちこちで、じろじろと見られることないですか? 例えば運動会などではどうですか?

水口:運動会はもう……。

morich:みんな知っていますか!

水口:そうですね。知っているのでそんなに見られないです。「あぁ、あれが水口さん?」というような雰囲気です。

morich:珍しがられる感じですか?

水口:「あ、本当にきょうだいがいっぱいいるんですね」という感じですね。

morich:なるほど。「まさかとは思っていたけど」みたいな感じですね。

投資家目線の経営で日本の中小上場企業の再成長に挑む

morich:これからの水口さんのビジョンを聞かせていただけますか? プライベートもそうですし、ビジネスもそうですし何もかもすべてを手に入れている感じがしますが。

水口:そのようなことはないですよ(笑)。すべてを手に入れているなんて、何も手に入れていないですよ。

morich:いやいや、もう幸せな人生として。

福谷:そうですよね。けっこういろいろとお聞きできたかとは思いますが、もっと深掘りしないとわからない部分もたくさんあると思っています。数十社の企業をM&Aした手法も気になる部分ではありますが、あまりお時間がありませんので、今後どうしていきたいのかをお聞きしたいです。

水口:もともとは、ずっとオーナー経営で会社を運営していました。個人投資家というか、今日のお話では触れていませんが、小型の上場株に対してアクティビスト風なことを行っていたこともありました。

morich:銘柄をしっかりと発見されたり、株主総会にも行かれたりなどですか?

水口:そうです。アクティビストというか、今、自分自身がTOBをして、上場会社を買収して、経営をしています。真面目な話になりますが、時価総額が低い上場会社のあり方として、東京証券取引所の市場再編などを含めて、本質的な事業の価値や投資家から評価されるような企業を作っていくように要請されている最中です。

morich:そのような方針が出されていますよね。

水口:小さな上場会社が、小さなままだというケースはすごく多いです。個人で買うケースは少ないのですが、そのままになっている会社もけっこう多い中で、しっかりとその企業価値が上がっていく状態を作れたら、日本の株式市場の中で停滞している銘柄の中で、すごく良い成功例にもなれるのではないかと思っています。

今はそのような取り組みに力を入れています。業績はTOBする前と比べると3倍から4倍になっており、売上も利益もけっこうしっかりしてきています。株価もTOB前と比べると3倍ほどになっていますが、まだまだ小さな上場会社なので、評価をしっかりと上げていけるように、自分自身がしっかりと経営して、企業価値を上げて、結果を出していきたいというのが、今取り組みたいことですね。

morich:私も日本のこれからの課題だと本当に思うのですが、今、70代や80代の経営者が世の中にたくさんいらっしゃいます。しかしもう、事業承継できなくて倒産するというような社会になっており、社員もいらっしゃる、その社員の家族もいらっしゃる中で、いかにこれを存続させるかというのは大事なことです。

そのような状況では、やはりM&Aになります。水口さんのようにM&Aした後、売上をしっかりと右肩上がりで上げていったり、企業を尊重しながらカルチャーを残していったりされる方々に買っていただいて、本当に存続していただきたいと思っています。

それができる会社もたくさんありますよね。

水口:そうですね。ですから、いろいろな人がたくさんチャレンジしていってほしいですよね。

福谷:そうですよね。後継者のいない方々が6割から7割ほどいらっしゃる中で、最近は上場維持基準も上がっています。おっしゃるとおり、M&Aの価値はかなり上がってくると思います。

morich:M&Aは、された側からすると「された」という表現で、ネガティブな印象があるため、私はもう少し変えたいと思っているんですよね。やはり健全なM&Aも本当にあると思っています。水口さんの例を見ていて、それをすごく感じるんですよ。

福谷:そうですよね。

morich:経営者が売却すると、なんとなく「裏切った」のように見られたりすることもあります。しかしそうではなくて、ある意味自分よりも経営に強みがあるというか、より得意な方に任せたほうが、お互いに幸せだということもあると本当に感じますね。

福谷:そうですよね。多くの事例を見ると、なぜM&Aを行っているのかというと、ある種「日本のためだ」というところもありますし……。

水口:「日本のため」というのは……、ごめんなさい、私はそこまでは考えていないです。

(一同笑)

水口:これは言い切れます。やはり自分がビジネスにおいてチャレンジして結果を出したいという思いです。特に上場会社は、きちんと結果を出していくこと自体が、いろいろな人にプラス要素を届けられる仕組みになっていますので、私ががんばることで何か他のところにも良い効果が出れば、より良いということですね。

morich:本当に、水口さんが見つけなければ、今は存続していないような会社もあるかもしれないですものね。

水口:結果論なのですが、このfonfunという会社も上場廃止のところまでいっていたかもしれないです。

福谷:なるほど。難しい時代になっているかもしれないですが、考え方や捉え方によってはポジティブな時代でもあると思いますね。

水口:そうですね。日本はやはり島国で、その考え方のベースに村社会的なところがあり、どちらかといえば「変化しないほうが良いよね」という時代もけっこう長かったと思います。それ自体も日本の良いところだとは思っているのです。

しかし、変わっていかなければいけないものというのは絶対にあって、それが今までよりは少し実現しやすくなってきています。良い循環となるように、意識しながら行っていきたいと思っています。

morich:時代が追いついたということですね。

水口:「なんでもかんでもアグレッシブに変えて」というようなケースなど、いろいろな事例がありますが、変えればいいというわけではないと思っています。

morich:でも、水口さんの今日のキーワードって「変化」ですかね。やはりお子さんが1人増えると、また景色が変わるというところが……。

水口:そうですね。まだここにない出会いが(笑)。

(一同笑)

morich:景色が変わるというのも含めて、やはり企業としても、ずっと延長戦ではなくて、仲間を入れるなども含めて変化することによって、より活性化していくという話ですよね。

水口:そうですね。

福谷:めちゃくちゃ楽しみですね。もっと詳しく知りたいです!

morich:来年あたり「1人増えています。9人になりました」みたいなこともあるかもしれません(笑)。

水口:妻次第です!

福谷:いや、良いですね。そんなに先の話ではないと思ってはいるのですが、その時にはまたお越しください。

morich:「新morichの部屋」も、これから3周年、4周年と続けていきたいので、ぜひ9人、10人とチャレンジしていただきながら、記録を塗り替えていっていただきたいと思いますね(笑)。

福谷:8月にはようやく我々も2周年を迎えることになります。

morich:そうなんです。今日、告知をしたいのが8月27日のイベントです。2周年記念も兼ねまして、大きな会場を借りて、過去お越しいただいたゲストの経営者の方やオーディエンスの方々もお呼びして、大きくイベントを行おうということになりました。

福谷:「morichの部屋」2周年記念を盛大に行おうかと思います。

morich:もしよろしければ、ぜひその時にお越しいただければと思います。

水口:わかりました。ぜひ、子連れで!

morich:会場のみなさまも、もしよろしければ。

福谷:よろしければ、ぜひお越しいただければと思います。

morich:これまでの経営者の方々から聞いてきた、数々のドラマといろいろなエピソードがあっての2周年です。私たちは本当にすごく得なポジションですよね。毎回このような話をするのですが、ここを1つの区切りとして進めていこうと思います。

福谷:ありがとうございます。一応「morichの部屋」は、出演いただけると株価が上がるといった傾向があったりしますので(笑)。

水口:経営をしている中で、売上や利益などは私の努力で向上できるのですが、株価だけは応援してくれる株主の人たちが作るものです。ここだけは自分の努力だけではできないところなので、やはりファンを増やしていきたいと思っています。

morich:そうですね。応援にはいろいろなかたちがあります。8人のお子さんを育てながら経営者をするという、それはそれでやはりすごく大変なことです。もちろん奥さまも大変なのですが。

福谷:そうですね。奥さまもすばらしいです。

morich:水口さんも本当にすごいことだと思っています。それをちゃんと幸せだと言い切る水口さん、それはすばらしいなと思います。おそらく、個人の応援団もたくさん増えるのではないかと思いますね。

福谷:すばらしいです。増えてほしいなと思っています。

水口:増えてほしいですね。

福谷:今日もいろいろなお話をおうかがいしまして、プライベートから今後のビジョンも含めて、いろいろと勉強になりました。今日も、オーディエンスの方々もたくさんいらっしゃいますので、またいろいろと親睦を図っていただければと思っています。

今日はお忙しい中、お越しいただきまして本当にありがとうございました。

morich:ありがとうございました。

水口:ありがとうございました。