2025年3月期決算説明
曾我英俊氏:フジ日本代表取締役社長の曾我英俊です。当社は2024年10月、商号をフジ日本精糖株式会社からフジ日本株式会社へ変更しました。
70年以上にもわたる精糖の歴史を大切にしながらも、精糖メーカーからフードサイエンスカンパニーへの転換を目指し、社名から「精糖」という文字を取りました。
「食を科学し、世界をパワフルに!」というパーパスを基に、長期ビジョン「NEXT VISION 2040」達成に向けて新たにスタートした第一次中期経営計画「CHANGE 2028」を進めていきます。
本日は、2025年3月期の決算実績と主なトピックについてご説明します。
1 事業内容 報告セグメント
事業内容についてご説明します。2025年3月期の連結売上高構成比率は、精糖事業が48.9パーセント、機能性素材事業が47.8パーセントとなっており、この2つの事業が当社の両輪です。非精糖事業が売上構成の50パーセント以上まで成長しました。引き続きフードサイエンスカンパニーを目指して非精糖事業を推進していきます。
各セグメントの主要製品として、精糖事業は精製糖、液糖、砂糖関連製品等があります。なお、今後は新規参入したタピオカでん粉事業も推進していきます。
2025年4月1日付で組織名を変更し糖類事業部として新たなスタートを切っています。
機能性素材事業では食品添加物、機能性食品素材、天然添加物素材等の販売を行っています。また、不動産事業については賃貸等により安定収益確保に貢献しています。
なお、2024年4月1日付の組織変更に伴い、機能性素材に含めていた切花活性剤、及び従来報告セグメントに含めていたその他食品を、報告セグメントに含まれないその他セグメントに移管しています。
2 2025年3月期決算概要 決算サマリー
物価上昇が続く中、消費者の買い控えやコスト環境の悪化による影響が懸念された1年でありましたが、当社グループにおいては、おかげさまですべてのセグメントで増収・増益となりました。連結業績は売上高282億900万円で前年比プラス9.0パーセントとなりました。
営業利益は32億3,200万円で前年比プラス48.7パーセントとなりました。
2 2025年3月期決算概要 連結損益計算書(P/L)
連結経常利益は、関連会社の収益改善による持分法投資利益の増加もあり、前期比14.0パーセント増の36億5,100万円となりました。
連結ROEは、前期10.5パーセントから11.9パーセントと上昇しています。
2 2025年3月期決算概要 売上高・営業利益の四半期推移
次に四半期ごとの売上高の推移をご参照ください。毎年第3四半期にクリスマス、年末年始の需要を受けて売上がピークとなります。
国内においては、精糖事業はインバウンド需要により順調に推移し、機能性素材事業は子会社ユニテックフーズがグミ需要の増加等で順調に推移しました。海外においては、東南アジア向けのイヌリン販売が好調に推移したことで売上が順調に推移しました。
なお、営業利益も順調に推移していますが、毎年第4四半期に主に精糖事業の原料価格の季節的要因により営業利益率が低下する傾向にあります。
2 2025年3月期決算概要 セグメント別状況
セグメント別営業利益の状況をご説明します。精糖事業は、インバウンド需要により好調に推移したものの、天候不順や価格高騰により販売数量は前年同期比減となりましたが、適正な販売価格の浸透を図ったこと、また、安定した原料調達でコスト削減に努めた結果、増収増益となりました。
機能性素材事業は、日本向け付加価値商品への採用増、東南アジア向けの販売数量が好調に推移し、増収増益となりました。連結子会社であるユニテックフーズも天然添加物素材の販売が好調に推移し増収増益となっています。
不動産事業は、旧本社跡地に建設した「東横INN茅場町駅」が安定稼働した結果、増収増益となりました。なお、東京都、神奈川県、長野県所在の3物件を資本効率向上の一環として売却処分しています。
2 2025年3月期決算概要 海外事業経常利益比率
海外事業の経常利益は、前年度から1億1,500万円増の2億9,600万円となりました。全社比率でみると、前期7.1パーセントから、8.1パーセントと1ポイント上昇していますが、中期経営計画目標である海外比率20パーセントという高いハードルをクリアできるよう、海外における既存事業の収益拡大と新規事業開発を加速していきます。
2 2025年3月期決算概要 連結キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書についてご説明します。連結キャッシュフローですが、当会計年度末における現金及び現金同等物は、前年度末に比べ13億7,000万円増加し、66億4,400万円となりました。
営業キャッシュフローは、主に当期純利益により、33億2,300万円増加しました。
投資キャッシュフローは、投資有価証券の売却、有形固定資産の売却による資金確保がありましたが、タイ事業会社2社への増資及びタピオカでん粉製造販売事業会社の株式を取得した結果、15億4,600万円のマイナスとなりました。
財務キャッシュフローは、長期借入金による収入はありましたが、自社株買い等により、3億7,600万円のマイナスとなりました。
今後も中期経営計画に則り、積極的に成長投資と資金確保を実行していきます。
2 2025年3月期決算概要 連結貸借対照表(B/S)
財政状態の概要をご説明します。当連結会計年度末の総資産は、前期比4.1パーセント増加し337億6,100万円となりました。
流動資産は前期比4.6パーセント増加し、176億9,600万円となりました。商品及び製品は減少し現金及び預金が増加しています。
固定資産は、前期比3.7パーセント増加し、160億6,500万円となりました。資本効率向上の一環として賃貸不動産の売却などを進める一方、タイでの投資により増加しました。
負債は、流動負債が前期比10.8パーセント減少し、57億9,500万円となりました。主として1年以内返済予定の長期借入金及び未払法人税等は増加したものの買掛金及び短期借入金が減少したことによるものです。
固定負債は、前期比97.8パーセント増加し、40億9,200万円となりました。繰延税金負債は減少したものの、成長投資のための長期借入金が増加したことなどによるものです。
純資産は、前期比0.1パーセント増加し、238億7,400万円となりました。過去最大の純利益を上げましたが、その他有価証券評価差額金が減少し、また、自社株買いを行ったためほぼ同額となりました。
2 2025年3月期決算概要 業績予想
次期連結業績の見通しです。精糖事業は、インバウンド需要による需要増が期待されますが、加糖調製品や他の甘味料の浸食、少子高齢化などによる砂糖の消費減少傾向は続いています。引き続き営業体制強化を図り、品質管理を徹底して製品の安定供給に取り組むことで顧客満足度を高め、堅実で安定した原材料仕入を図りながらさらなるコスト削減に努めていきます。
機能性素材事業については、イヌリンの国内販売において、肌機能を含めた新たな機能性による既存顧客の深耕及び新規顧客獲得による販売数量拡大、新製品(液状品など)投入を図ります。海外販売は、東南アジアでの商圏拡大と品質強化を進めます。
ユニテックフーズでは、増粘多糖類の拡販、技術力を活かしたODM事業など、新たな付加価値の提供を進めます。
不動産事業については、引き続き、安定収益の確保に努めていきます。
タピオカでん粉事業は、パートナーのThai Wah Public Company Ltd.と連携して、付加価値商品の開発と販売を通じ、企業価値向上を目指していきます。
2026年3月期の連結業績予想は、売上高291億円(前年同期比3.1パーセント増)、営業利益31億円(同4.1パーセント減)、経常利益33億円(同9.6パーセント減)、親会社株主に帰属する当期純利益23億円(同19.2パーセント減)の増収減益を見込んでいます。
3 配当金政策
株主のみなさまへの還元について、当社の考え方をご説明します。当社は、厳しい業界環境下、経営基盤の強化を図りながら、企業価値の向上に取り組んでいます。株主のみなさまへの還元については、中長期的な視野に立っての設備投資及び研究開発のために内部留保の確保を考慮しながら、DOE3.5パーセント以上を目指し継続的な安定配当をすることを基本方針としています。
2025年3月期の期末配当金については、基本方針を踏まえて検討した結果、1株当たり19円とし、年間配当金の合計は1株当たり34円としました。
なお、次期の配当予想は、減益という厳しい業績見通しではありますが、当期と同額の1株当たり34円、中間配当15円、期末配当19円を見込んでいます。
4 トピックス 中期経営計画「CHANGE 2028」
先ほど冒頭でご説明したとおり、当期は、2040年に向けた長期ビジョン「NEXT VISION 2040」に向けた第1次中期経営計画(2024~2028年度)の初年度でした。おかげさまで定量目標である経常利益及びROEは初年度で達成することができました。
ただし、次期業績予想では経常利益が33億円と減益となっており、まだまだ収益基盤の確立が必要です。また、長期ビジョン達成のためには東南アジアへの事業拡大を進めM&Aを軸とした成長投資を推進する必要があります。
引き続き中期経営計画「CHANGE 2028」に掲げる、重点テーマを推進していきます。
4 トピックス 株主優待制度の拡充
株主のみなさまの日頃のご支援に感謝するとともに、フジ日本の製品へのご理解を深めていただくため株主優待制度を導入しています。また、当社の株式を末永く持っていただくために、優待制度を拡充しました。
500株以上1,000株未満保有の株主さまには5,000円相当、1,000株以上保有の株主さまには1万円相当の自社製品詰め合わせを贈呈します。
4 トピックス バイオインフォマティクスによる酵素開発を⾏う株式会社digzyme社へ資本参画
中期経営計画の5つの重点テーマに基づき、今期のトピックスを4つご紹介します。1つ目は、バイオインフォマティクスによる酵素開発を行うdigzyme社へ出資参画です。
当社は糖質原料からの新規素材の開発及びイヌリンの生産のための酵素に係る共同開発をdigzyme社とスタートさせました。
同社への資本参画も行い、戦略的パートナーとして同社の酵素開発技術の実⽤化を促進しつつ、当社の既存素材のさらなるバリューアップ及び新製品の開発を推進します。
4 トピックス 腸内細菌叢検査サービスを展開する株式会社サイキンソーへ資本参画
2つ目は、腸内細菌叢検査サービスを展開する株式会社サイキンソーとの資本業務提携です。腸内細菌検査事業等に関する協業を通じ、サイキンソー社が有する腸内細菌叢検査システムの開発技術、蓄積された知見、当社の優位性がある素材及びノウハウを掛け合わせることで腸内環境サービスの拡大、認知の向上を進め、「世界の健康な生活づくり」を目指します。
4 トピックス Thai Wah Fuji Nihon Co., Ltdの株式49%を取得実⾏しタイ国での新たな事業を開始
3つ目は、タイ国の食品大手 Thai Wah Public Companyと戦略的協業に合意し、タピオカでん粉及び関連食品の製造・販売事業に参入しました。
合弁事業に49パーセント出資し東南アジア市場の拡大や当社イヌリンを絡めた高付加価値製品の製品開発を進め、持続可能な生物資源から当社の食品開発技術を用いることで新たな価値の創造を目指します。
4 トピックス 2024年度CDP気候変動分野の質問回答にて「B」スコアを取得
最後に、サステナビリティ関連です。CDPはイギリスの慈善団体が管理する非政府組織(NGO)で、グローバルな環境課題の改善を目的に、企業の環境対策のレベルをスコアリングしている団体です。
当社は2024年の気候変動分野において「B」スコアを取得しました。2024年度のSME版スコアにおいては「B」が最高スコアとされ、マネジメントレベルに相当し、環境課題に与える影響を認識した上で、良好な環境管理に関連する「行動の根拠」を提供する回答に対して付与されるものと定義されており、当社グループの気候変動に関する取り組みが国際基準からも高く評価されました。
今後も時代の要請に応えるべく、当社グループの環境方針に則り、関係機関との連携を深めるとともに、環境負荷を抑止する対策を検討します。
以上、ご清聴ありがとうございました。