外部環境

久世真也氏:みなさま、こんにちは。株式会社久世、代表取締役社長の久世です。平素よりさまざまなご支援を賜り、誠にありがとうございます。さっそくですが、2025年3月期の連結決算の結果についてご説明します。

まず、外部環境についてです。2025年3月期の我が国の経済は、輸出や設備投資が伸びるなど、企業業績は堅調に推移しました。一方で、インフレや経済格差の拡大が進み、米国の関税政策等による世界的な影響も懸念されるなど、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。

当社グループが事業活動の中心としている外食・中食市場については、個人消費はメリハリ消費と節約志向が共存する慎重な状態です。法人需要については首都圏を中心に活性化しており、観光レジャー市場においても、インバウンドはもとより国内の観光需要も高まっています。

一方で、課題としては仕入コストや人件費など、あらゆるコストの上昇が続いているほか、人手不足がますます深刻となっています。このような状況の中、当社グループは外食・中食市場の持続的な発展のため、日々業務に取り組んできました。

連結決算概要

2025年3月期の連結決算概要についてご説明します。売上高は685億6,800万円、売上総利益は157億2,300万円、販売費及び一般管理費は138億7,600万円、営業利益は18億4,700万円、経常利益は21億9,100万円、親会社株主に帰属する当期純利益は17億5,400万円となりました。

新しい物流センターの開設などにより販管費が増加し、営業利益は前期比0.8パーセント減となりました。一方で、物流キャパシティの拡充により、新規のお客さまの開拓及び既存のお客さまへの営業を強化し、売上高は前期比6.4パーセント増となっています。

また、中国のグループ会社2社の持ち分を一部譲渡した影響で為替差益が増加し、経常利益は前期比13パーセント増となりました。なお、当連結会計年度において繰越欠損金が解消し、法人税等が増加した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で減少しています。

売上高の増減要因(前期比)

売上高が前期比で40億9,400万円増加した要因についてご説明します。まず、既存のお客さまの売上増加や原価高騰による値上がりなどで、20億4,500万円増加しました。

また、営業施策としてグループ各社で進めてきた新規開拓や輸出の伸長、高付加価値商品の販売などのプラスオン戦略による増加額は、27億3,900万円となりました。

一方で、お客さまの閉店などの影響で6億9,000万円減少しました。

この結果、前期比で増収となり、連結売上高は685億6,800万円となりました。

営業利益の増減要因(前期比)

営業利益が前期比で1,400万円減少した要因についてご説明します。売上総利益は11億2,700万円増加しましたが、販管費が11億4,100万円増加したことにより、営業利益は1,400万円の減少となりました。

まず、売上総利益の増加要因についてご説明します。売上高の増加に伴う利益の増加が9億2,700万円、高付加価値商品をはじめとする重点商品の販売推進など、粗利率の改善に伴う利益の増加が2億円となりました。

次に、販管費の増加要因についてご説明します。新しい物流センターの開設などにより、物流関連の費用が増加しました。

この結果、営業利益は前期比0.8パーセント減の18億4,700万円となりました。拡充した物流キャパシティを活かし、今後、売上伸長を図っていきます。

四半期別 売上・営業利益の推移

四半期ごとの売上・営業利益の推移についてご説明します。第3四半期までは前期比で増収減益でしたが、第4四半期は増収増益となりました。引き続きコスト管理を強化し、業務改善を図るとともに、増加した費用を上回る利益の確保に努めていきます。

連結貸借対照表

貸借対照表はスライドに記載のとおりです。コロナ禍対応として借り入れた日本政策投資銀行の劣後ローン20億円を完済するなど、借入金の圧縮を進め、有利子負債は前期比60.9パーセント減の17億8,400万円となりました。

当期純利益が順調に積み上がった結果、純資産は79億1,900万円、自己資本比率は前期末の26.8パーセントから7.7ポイント上昇の34.5パーセントとなっています。

連結キャッシュフロー計算書

連結キャッシュフロー計算書についてご説明します。営業活動により6億6,400万円の増加、投資活動により2億1,100万円の支出、財務活動により30億1,100万円の支出となりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は40億800万円となっています。

コロナ禍で毀損した財務体質を改善し、今後のさらなる事業環境の変化や成長へ向けた投資に備えていきます。

2026年3月期連結業績予想

2026年3月期の連結業績予想についてです。売上高は710億円、営業利益は19億2,000万円、経常利益は19億5,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は12億5,000万円を予想しています。

営業利益については、前期に開設した物流センターの費用が今期も影響しています。まずは変化の大きい足元の物流環境の改善に努め、拡大した物流キャパシティを活かし、既存のお客さまとのさらなる関係強化と新規のお客さまの開拓に努めていきます。

また、2025年3月期は為替差益の増加により経常利益率が3.2パーセントでしたが、2026年3月期は経常利益率2.7パーセントを見込んでおり、経常利益及び純利益は前期を下回る見通しです。みなさまにはご理解・ご了承いただきたくお願い申し上げます。

株主還元

株主還元については、2025年3月期は普通配当15円、特別配当27円、合計42円の配当を実施する予定です。

なお、2026年3月期は、普通配当と特別配当の2階建の考え方を普通配当に一本化し、配当性向は10パーセントから15パーセント程度を目標とします。この考え方に基づき、今期の配当予想を42円としています。

今後もさらなる企業価値の向上に努め、株主のみなさまへの還元に尽力していきます。

新しい経営理念

創業100周年に向けた今後の方向性についてご説明します。当社は昨年、創業90周年を迎えました。これからの創業100周年とその先に向け、持続可能な企業を目指すべく、当社社員によるプロジェクトを通じて新たな理念を策定しました。

ミッションは「食の力で、想いをつなぐ。」です。このミッションには、中間流通として生産者のみなさま、メーカー各社のみなさま、物流会社のみなさま、そしてお客さまである飲食店のみなさま、さらにはその先にいらっしゃる消費者のみなさまなどの想いをつなぎたいという意味を込めています。

当社には、商品を運ぶ、届けるだけでなく、相互につなぐ役割と責任があります。「食の力」は、食の魅力や楽しさなど、さまざまなものを含んでいます。

ビジョンは「食を通じて人と人がつながり心満たされる世界。」です。これからの時代、食とコミュニケーションがより大切になると考えています。

デジタル化の進展により、ご家族、ご友人、職場などの相互理解が希薄化する中、食の力で想いをつなぐことを続けた未来には、さまざまな人と人とのつながりが生まれ、賑わいが生まれ、そして世の中のみなさまが元気になっていく、そうした未来に貢献していきたいと考えています。

バリューは「予想を超える楽しさを、提案します。」「時代を先取り、価値を創造します。」「正確で効率的に、届けます。」の3つです。頼れる食のパートナーとして、この3つの価値をお客さまに提供していきたいと考えています。

100周年に向けた長期ビジョン

こうした新しい経営理念のもと、創業100周年とその先に向けた長期経営テーマを「持続可能で質的な成長」としています。

お客さまへの価値ある商品の提供と利便性の高いサービスの向上・維持を続けるため、これからの大きな環境変化に対し、日々の基本を大切にしながら、新たな成長を図っていきたいと考えています。

中期経営計画としては、今期が第1フェーズの最終年度となります。中期目標である、営業利益率2パーセント以上を達成してきました。第2フェーズ以降の中期経営計画は現在策定を進めており、適宜公表していきます。

100周年に向けた長期ビジョン

第1フェーズは「成長への再スタート」をテーマに、事業基盤の再構築を進めています。

第1フェーズの取り組み

第1フェーズの取り組みとして、関東集中、機能強化、プラスオンの3つを基本施策としています。関東集中は、創業以来事業基盤を築いてきた関東への資源集中化と地域密着化を進めています。

機能強化は、お客さまの利便性の向上のため、「KUZEX」やECの物流受託事業などさまざまな取り組みを進めています。

プラスオンは、お客さまが抱えている課題である価値の向上、収益の向上、そして人手不足に貢献できるよう、私たちの価値のある商品とサービスを提供しています。

強化する市場は、フードサービス、観光レジャー、中食惣菜の3つです。これらの3つの市場を強化することで相互のノウハウを蓄積し、お客さまとのつながり、関係性を強化しています。

また、当社が成長を図る上で重要な人財、物流、情報システムへの投資計画を策定しており、それに向けた収益基盤の強化を進めています。さらに、未来を創る5つの施策として、EC事業、DX化推進、商品開発、海外事業、グループシナジーを推進しています。

2025年3月期の主な実績

2025年3月期の主な実績についてご説明します。まず、主要なお客さまの3PL化を推進し、さらなる成長を図るとともに、新物流センターの開設により物流キャパシティを確保し、売上・利益を伸長できる体制を構築しました。

「新規顧客の開拓」は、関東を中心にフードサービス、観光レジャー、中食惣菜の3市場を開拓するとともにプラスオン戦略を推進し、新規のお客さまの売上高は15億7,400万円となりました。

「業務改革とDX化の推進」では、3月末時点で「KUZEX」を利用されているお客さまを、9月末より36パーセント増やすことができました。また、当社独自のプラットフォーム「Smart Connect」を構築し、営業活動のDX化を進めています。

さらに、生産性と働きやすさの向上を目指し、業務改革プロジェクトで課題の解決に取り組んできました。

「競争優位性のある商品の強化」には、グループ各社で取り組んできました。久世は、プライベートブランドの「メイキット」及び「ドルチェーゼ」より、16の新商品を発売しました。グループ会社のキスコフーズは付加価値の高い新商品を拡充し、旭水産はアジア・北米への輸出を伸長させてきました。

「アライアンス強化」では、中国事業・酒類事業において国分グループ本社との提携を強化し、両社の連携による新たな成長を目指しています。

2026年3月期の主な計画

2026年3月期の主な計画についてご説明します。「関東への資源集中」では、引き続き関東への資源の集中化と地域密着化を進め、新規開拓を強化していきます。

「業務改革とDX化の推進」では、これまで社内に分散していたお客さまの情報を集約するプラットフォーム「Smart Connect」を活用し、営業活動を推進します。

また、お客さまと社員の利便性の向上のため、オペレーション変革を推進していきます。多様化する商品と情報を整理分析し、マーケティング及び仕入先との連携を強化するため、新たな商品データベースの構築も進めています。

「物流受託事業とEC事業」については、冷凍食品の通販需要の増加に対応し、引き続き物流受託事業に取り組むとともに、大手プラットフォーマーとの協業を進めていきます。また、新しい自社ECサイトのオープンを計画しています。

「物流の再構築」では、物流戦略策定プロジェクトで物流ネットワークの最適化を推進しています。また、マテハンなどの試験導入により、今後の庫内業務の正確性と効率の向上に取り組んでいきます。

「人財の活性化と活躍支援」では、ベースアップや働き方の多様化への対応、健康管理支援のための福利厚生の充実など、社員のウェルビーイングの実現に取り組んでいきます。

久世社長からのご挨拶

おかげさまで当社は昨年、創業90周年を迎えることができました。これもひとえにお客さまをはじめ、ご協力・ご支援くださったみなさまのおかげです。心より感謝申し上げます。

社会が大きく変化する中、現代は身近な贅沢の時代であると感じています。このような時代において、外食は最も身近なエンターテインメントとして、私たちに豊かで楽しい時間を提供し続ける産業であり続けてほしいと考えています。

私たち久世は、お客さまへのパッションと、デジタル化・仕組み化された利便性の高いオペレーションを連動させ、多様性あふれる食を効率的につなぐ役割を果たし、持続可能で質的な成長を図っていきたいと考えています。今後もみなさまのご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願いします。

以上で、2025年3月期の連結決算と取り組みについての説明を終了します。ご清聴、誠にありがとうございました。