目次

奥村晋一氏(以下、奥村):株式会社オーケーエム代表取締役社長の奥村晋一です。本日は、2025年3月期の決算および第2次中期経営計画についてご説明します。

本日は、「01.」から「05.」に分けてご説明します。「02.」と「03.」については、管理統括本部長の木田がご説明し、それ以外は私が担当します。

PURPOSE 存在意義

まず最初に、「オ―ケーエム」についてご説明します。当社のパーパスは「いい流れをつくる。」です。この言葉には、3つの思いを込めています。

1つ目は「独創的な技術によって製品やサービスにおける『いい流れ』を生み出すこと」、2つ目は「お客さま、仕入れ先、株主、社会との良好な関係を築き、社会全体に『いい流れ』を広げること」、3つ目は社内に関することで、「働きやすい職場環境を整え、社内にも『いい流れ』を作ること」です。

これらの思いを込め、「いい流れをつくる。」をパーパスとしています。

社是

次に、社是についてです。当社では、4つの社是を掲げています。

1つ目は「独創的な技術」、2つ目は「最高の品質 最低の資源消費」、3つ目は「余裕ある生活と豊かな心」、4つ目は「地域社会への貢献」です。

1つ目の独創的な技術を活かし、2つ目から4つ目までを実現する、いわば「三方よし」を目指した社是となっています。

オーケーエムについて

オーケーエムについて簡単にご説明します。当社は工業用バルブの製品開発を行っており、標準製品に加えて、カスタマイズを強みとするバルブメーカーです。

社名「オーケーエム」の由来は、旧社名である奥村製作所にあります。1993年、新たな可能性を広げる企業としてイメージを刷新する思いから「OKM」としました。ロゴの中の「M」には5本の赤い線があり、モラール、マーク、メカニクス、マーケット、マネジメントの5つの「M」を「OK」にするという意味が込められています。

オーケーエムが扱う“バルブ”

当社が取り扱うバルブは、流体、すなわち流れるものを確実に流し、確実に止め、さらに絞る・調節するといった機能を持つ機器です。

使用される場面としては、船舶や工場設備、発電所、高層ビルなどの建築物が挙げられます。こうしたインフラや配管のある場所、つまり私たちの生活や産業を支えるあらゆる場面で、オーケーエムのバルブが活躍しています。

主要製品

当社の主要製品についてご説明します。まず、バタフライバルブです。これは、輪の中に配置した円板を90度回転させることで、流体を止めたり、流したり、あるいは中間の位置で絞って調節する機能を持ったバルブです。バタフライバルブは、グローブバルブなど他のタイプと比較して非常にコンパクトで軽量なのが特徴です。

次に、ナイフゲートバルブです。輪の中のプレートを出し入れすることで、流体を流したり止めたりします。

続いて、ピンチバルブはゴムチューブを押しつぶして流体を止め、開放することで流体を流します。ナイフゲートバルブやピンチバルブは、粘度の高い液体や粉体など、いわゆるヘビーユースに適したバルブです。

これらの工業用バルブは、直径25ミリメートル(2.5センチメートル)から2メートルまでの配管に取り付け、さまざまな流体を制御します。対象となる流体も、液体、気体、固体、さらにはスラリー状のドロドロしたものまで多岐にわたります。

また、当社では標準品に加え、お客さまのニーズに応じたカスタマイズバルブの提供も行っています。

競争優位性

当社の競争優位性、すなわち特徴は大きく3つあります。

1つ目は、時代や市場のトレンドに合わせ、ニーズを的確に捉えてきた点です。過去から現在に至るまで、多様な流体に個別対応できるバルブの開発・設計・提供を行ってきました。その結果、幅広い業界のお客さまから流体制御に関する多くの情報を収集・蓄積することができました。これらの情報は次の製品開発に活かすだけでなく、他のお客さまにも提供することで、満足度の向上につなげています。

2つ目は、カスタマイズバルブの開発体制です。お客さまごとの流体や使用環境をできる限り再現し、テストを重ねて開発を行っています。検証によって得られたデータを蓄積し、次の開発に活用することで、より精度の高い製品を提供しています。

3つ目は、多様な条件に対応できる製品展開です。扱う流体はさまざまで、低温・高温、低圧・高圧といった幅広い条件に対応できるよう、カスタマイズ製品を提供しています。

当社の製品は、ベースとなる機種は約20種類ほどですが、サイズ、構成素材、操作方法(手動・電動モーター・空気圧)などを組み合わせることで、多品種化を実現しています。こうした多様な組み合わせにより、短納期での提供を可能にしている点が、当社のビジネスモデルの強みです。

競争優位性を発揮した成功事例

当社は、各時代のニーズに応じたカスタマイズ製品を提供してきました。

1950年代には、製紙・紙パルプ業界向けにナイフゲートバルブを中心とした製品を提供し、お客さまから高い評価をいただきました。

1980年代には、建築設備分野、特に空調設備向けに対応しました。冷水と温水をうまくミックスして冷暖房を実現するための、電動制御によるバタフライバルブの開発に成功し、こちらも高く評価されています。

2000年代以降は、造船分野において、さまざまな船種に対応したカスタマイズバルブを提供し、引き続き評価をいただいています。

近年では、同じく造船分野において、船舶エンジンの排ガス処理に使用される専用バルブの開発に取り組み、高い評価を得ています。

2025年3月期 トピックス

木田清氏:管理統括本部の木田です。2025年3月期の決算概要についてご説明します。

2025年3月期のトピックスについてご説明します。

1つ目は、脱炭素社会に向けた製品開発を推進したことです。未燃アンモニア除害装置用バルブの実証運航が完了し、アンモニア燃料供給装置用バルブの陸上実機試験も実施しています。

2つ目は、2026年3月期を初年度とする第2次中期経営計画を策定し、収益性を重視した方針で進めることです。中期経営計画に関してはこの後、社長の奥村からご説明があります。

3つ目は、通期連結業績予想と実績に差異が生じたことです。利益面では、連結海外グループ会社との期ズレ補正の影響により、2025年2月に公表した業績予想値と実績に差が出ました。

2025年3月期決算サマリー

2025年3月期の決算サマリーをご報告します。連結売上高は前年同期比9億5,400万円増の104億3,800万円となりました。営業利益は7億8,300万円、経常利益は7億4,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は5億5,300万円で、前年同期比8.3パーセント増となっています。売上高は過去最高を記録しましたが、利益面では原材料価格や輸送費の高騰、人件費の増加などにより厳しい状況となりました。

配当金については、2025年2月14日に公表したとおり、1株当たり年間45円とします。

売上高・営業利益の推移

売上高と営業利益の推移についてご説明します。売上高は堅調に推移しました。営業利益は対前年度比で、期初の予想にほぼ沿った結果となりましたが、今年2月に公表した予想とは差異が生じました。

経常利益増減分析

経常利益の増減分析についてご説明します。陸用向け売上高は前年同期比で6.4パーセント増加し、舶用向けは13.7パーセント増加しました。

売上高は、新造船の堅調な需要により舶用分野で増加しましたが、原材料価格や人件費の上昇、システム関連通信費の増加、為替差損などが利益を押し下げています。

売上高構成(市場、業界別)

売上高の構成比についてご説明します。陸用と舶用の構成比では、舶用が52パーセントを占め、前年同期比で1.7パーセント増加しました。

また、単体の業界別では、鉄鋼・金属分野が製鉄所向けの大口案件により大きく増加しました。一方で、前年に大口案件のあった石油化学や電力・ガス分野は今期減少しています。

売上高構成(地域別)

地域別の売上構成についてご説明します。日本では舶用分野がけん引役となりました。中国では、機械装置や工場向けの案件が低迷したものの、半導体工場向けの水処理案件が増加しています。

売上高、受注高、受注残(市場別、単体)

売上高、受注高、受注残についてご説明します。陸用案件は小口化が進み、受注および受注残は陸用で減少しています。一方、舶用は増加傾向にあります。

貸借対照表

貸借対照表についてご説明します。資産合計は前連結会計年度末と比べて5億6,500万円増加しました。主な増加要因は、現金および預金が6億6,500万円増加したことに加え、原材料および貯蔵品が1億7,800万円、売掛金が1億7,500万円増加したことです。

一方、負債合計は1億3,100万円減少し、純資産合計は6億9,600万円増加して103億1,200万円となりました。自己資本比率は78.3パーセントです。

キャッシュ・フロー

キャッシュフローについてご説明します。営業活動によるキャッシュフローは4億9,200万円増加し、11億2,100万円となりました。投資活動によるキャッシュフローは前年同期比で1億2,000万円減少し、財務活動によるキャッシュフローは前年同期比で2億7,100万円減少しました。結果として、現金および現金同等物は前年同期比で7億1,800万円増加しています。

2026年3月期 業績予想サマリー

続いて、2026年3月期の業績予想についてご説明します。2026年3月期の売上高は107億円、営業利益・経常利益はいずれも6億8,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は4億5,000万円を見込んでいます。1株当たりの年間配当金は40円を予想しています。

なお、米国による関税措置の影響については、当社グループは米国との直接取引がないため、現時点では影響は軽微と見込んでいますが、今後の動向を注視して対応していきます。

経常利益予想 増減分析

2026年3月期は、基幹システムの導入に着手しており、人件費をはじめとする販売管理費の増加が見込まれます。ただし、システムの早期立ち上げにより生産性と効率の向上を図り、業績の改善につなげることで、株主のみなさまの期待に応えていきます。

以上が、2025年3月期の決算概要および2026年3月期の業績見通しです。

中長期ビジョン「Create 200」

奥村:続いて、成長戦略以降は再び奥村がご説明します。

まず、先期で第1次中期経営計画が終了したため、その振り返りを行います。当社は、中長期ビジョン「Create 200」、すなわち2031年3月期に売上高200億円を目指すことを掲げており、第1次中期経営計画では、このビジョンの第1フェーズとして、変革期と位置づけ、計画を展開してきました。

第1次中期経営計画の基本戦略

この第1次中期経営計画では、脱炭素やクリーンエネルギーへの移行、環境対策の推進に注目しました。これらの新たなニーズに対応するために、新商品の開発や、工場を含むものづくりと販売体制の確立を基本とし、4つの戦略を展開してきました。

業績目標と実績値

その結果はご覧のとおりで、売上高・利益ともに目標には届きませんでした。背景としては、近年需要が伸びている船舶排ガス用バルブにおいて、海外メーカーとの競合による価格競争が激化し、計画どおりに販売が伸びなかったことが挙げられます。また、利益面では販売単価への価格転嫁を行ったものの、原材料価格の高騰がそれを上回り、利益を圧迫しました。

第1次中期経営計画 成果と課題

成果と課題のまとめです。4つの戦略を展開してきましたが、まず戦略Iとして、アンモニアを燃料とする船舶エンジン用バルブの開発を進めてきました。燃料供給ライン用バルブのプロトタイプは完成し、すでにお客さまへ納入しています。また、アンモニア燃料エンジンの排気ガス処理用バルブについては、実際の船に搭載し試験を行っています。課題としては、すでに販売しているLNG用バルブにおける品質の安定化とコストダウンへの対応が挙げられます。

戦略IIでは、品質の安定と生産性向上を目指し、既存製品の生産工程の見直しや仕組みの再設計を進めるためのプロジェクトを立ち上げ、本格的に取り組んでいます。課題としては、プロジェクト内で部門間の進捗に差が生じている点があります。外部知見も含め、サポート体制の強化に努めています。また、PDCAサイクルを迅速に回し、最終システムを確立することも課題です。

戦略IIIについては、ご覧のとおりです。

戦略IVでは、教育・育成システムの見直しの一環として社内アカデミーを開始しました。社内講師がものづくりの精神を取り入れながら若手社員に講義を行い、人材育成をさらに進めています。課題としては、体系的な教育・育成システムの整備を推進する必要があります。

第2次中期経営計画 経営目標サマリー

ここから第2次中期経営計画のご説明に移ります。まず、目標値の概要を示します。最終年度である2028年3月期には、連結売上高132億円、営業利益率10パーセント以上、そしてROE10パーセントを目指します。

グループ経営方針

計画全体の構成についてご説明します。頂点に「いい流れをつくる。」というパーパスを置き、その下に社是、中長期ビジョン、基本戦略を配置しています。第2次中期経営計画の基本戦略は3つあり、1つ目は既存領域の拡充、2つ目は海外市場の展開、3つ目は新領域への挑戦です。

第2次中期経営計画の位置づけ

中長期ビジョンを踏まえた第2次中期経営計画の位置づけについてご説明します。

中長期ビジョン「Create 200」は、第一次中期経営計画では売上高200億円のみを目標にしていましたが、第2次中期経営計画では売上高200億円に加えて営業利益20億円を新たに設定しました。

売上の拡大だけでなく、収益性をより重視して取り組みます。注力する領域や事業、市場を厳選し、リソースを最適に配分していきます。これにより、変革の段階から成長の段階へとフェーズを移していきます。

外部環境認識

オーケーエムを取り巻く外部環境についてご説明します。

世界のバルブ市場は、2024年から2034年にかけて年平均成長率が4.7パーセントと予測されています。世界的なクリーンエネルギーへのシフトに伴い、LNG、アンモニア、水素の需要が増加しています。さらに、船舶分野では環境規制の強化やクリーンエネルギーへの移行が急務となっています。老朽化した船の更新や輸送量の増加を見据え、新規造船の需要も高まっていると認識しています。

第2次中期経営計画基本戦略

第2次中期経営計画では、3つの基本戦略が業績にどの程度寄与するかを示しています。既存領域の拡充として現在のバルブ事業を基盤に構成しています。これに加えて、国内だけでなく海外市場の開拓を強化し、業績を上積みします。さらに新領域の開発を進め、業績にさらなる上乗せを目指しています。

基本戦略I 既存領域の拡充(1)

第2次中期経営計画の基本戦略の1つ目は既存領域の拡充です。船舶排ガス用バルブの販売を拡大します。第3世代の改良製品「Mark III」を開発し、品質の安定とコスト低減を実現して市場に投入します。

LNG用バルブのサイズラインナップも拡充します。また、海外仕様への対応やバリエーションを増やし、販売を拡大していきます。

さらに、排ガス用バルブやLNG用バルブのメンテナンス需要が今後増加するため、これらを確実に取り込み、販売をさらに伸ばしていきます。

基本戦略I 既存領域の拡充(2)

スライド左側については、引き続きアンモニア用バルブ、二酸化炭素用バルブ、液化水素用バルブの開発を推進します。右側に示しているように、生産性と収益性の向上も進めていきます。

当社のカスタマイズ力を活かしつつ、製品仕様の組み合わせを整理整頓します。お客さまからはカスタマイズされた特殊なラインナップに見えますが、社内では標準化とシステム化を進めています。受注から出荷までの工程を整理し、最終的にはシステムで統合します。

さらに、お客さまの情報共有と活用を強化し、的確で迅速な提案を提供していきます。

基本戦略II・III

基本戦略IIは海外市場への展開です。国内外の重点市場をグループ全体で攻略し、販売体制を強化します。また、各国の顧客ニーズに合わせたカスタマイズ製品を生産・供給し、お客さまの満足度を高めていきます。

基本戦略IIIは新領域への挑戦です。バルブを中心に製品単体からシステム化を進め、お客さまの課題を解決するソリューションを開発します。M&Aや事業提携も積極的に活用し、既存事業の拡充と新領域の拡大を推進します。

戦略や取り組みについての考え方

現在は変化の激しいVUCAの時代と言われています。このような外部環境に対応し、先を見越すために、戦略や施策、KPIをローリング方式で見直していきます。スピーディで実効性のある取り組みを展開していきます。

業績目標

業績目標を棒グラフで示しています。今期は変革の施策にさらに取り組み、その後は成長に向けて一気に進んでいきます。

現状分析

続いて、「企業価値向上に向けて」をご説明します。

当社の現状についてご説明します。PBRは2021年5月に1倍を下回って以来、継続して1倍を下回っています。ROEは2021年3月期の11.2パーセントをピークに低下しており、2025年3月期に若干改善したものの、依然として利益率の低下が大きな課題と捉えています。

また、投資家のみなさまには当社の脱炭素やGXに関わる戦略や取り組みが十分に伝わっていないと考えています。さらに、オーケーエム自体の認知度が低いことも課題として認識しています。

PBR改善に向けた今後の取り組み

PBR向上を課題とし、ROEやPERの改善を目指します。そのために、新製品やサービス、高付加価値製品の販売強化を通じて利益率の向上に努めます。B/Sマネジメントの施策を展開し、資本効率も高めていきます。加えて、引き続き積極的にIR活動を行い、企業価値の向上に取り組んでいきます。

キャピタル・アロケーション

資本配分の見直しを進めています。事業活動で生み出すキャッシュに加え、売上債権や棚卸資産の圧縮などでキャッシュ・インを改善していきます。生まれたキャッシュは投資に回し、成長を加速させます。

株主還元方針

株主還元の方針についてご説明します。持続可能な成長を目指し、研究開発や設備投資を充実させながら、財務バランスを考慮し、継続性と安定性を重視して配当を行います。

第2次中期経営計画では、40円をベースにさらに向上を目指し、安定的な配当を続けていきます。事業の成長と企業価値の向上に努め、積極的なIR活動を通じて株価の向上にも取り組みます。

結びとして、オーケーエムはお客さまの流体制御のニーズに細かく応えることで事業を発展させていきます。事業の発展を通じて、お客さま満足度、社員満足度、株主満足度の向上を図り、持続可能な社会に貢献していきます。

以上で、決算説明並びに第2次中期経営計画のご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。