お伝えしたいこと

青木信也氏:ニチモウ株式会社代表取締役社長の青木信也です。本日は、ご多用中のところ、ご視聴いただきまことにありがとうございます。

それでは、当社2025年3月期の決算、ならびに、第140期中期経営計画の説明会を開催します。まず、本日の説明会において、みなさまにお伝えしたいことは、スライドに記載のとおりです。後ほど、詳しくご説明します。

目次

本日の説明会は、スライドに記載の目次に沿ってご説明します。

2025年3月期決算のポイント:主要4事業が安定成長、業績は想定通りV字回復

はじめに2025年3月期の決算と、2026年3月期の業績見通しについて、ご説明します。

まず、業績のポイントですが、インバウンド需要は伸長するも、物価上昇が個人消費改善の重石となり、海洋環境の変化による不漁も引き続くなど、引き続き舵取りの難しい外部環境でしたが、最終的に売上高は1,339億円と過去最高を更新し、営業利益も30億円を上回り、前期比で48.6パーセントの大幅な増益となりました。

2025年3月期決算:売上高は過去最高、収益性も大幅に改善

こちらは、連結の損益計算書です。業績が大きく改善した要素としては、主要の4事業がすべて増収増益となる等、安定的に成長した中でも、特に、機械事業において当期中に大型案件の納入が無事に完了したことが、業績を大きく牽引しました。また、過去の不良性資産の整理がなされたこともあり、利益面ではほぼ想定どおりのV字回復となりました。

2025年3月期事業別動向(前期比)

こちらは、事業別の動向となりますが、主要の4事業すべてにおいて増収増益となりました。簡単ですが、要因をご説明します。

食品事業は、助子で苦戦を強いられるも、カニ・ホタテ・北方凍魚を中心とした鮮凍水産物の販売が好調に推移しました。海洋事業は、国内近海の不漁により漁網漁具の販売が低調でしたが、養殖関連資材・餌料の販売が堅調に推移しました。機械事業は、大型案件を含め幅広く受注を重ね、大きく業績に貢献しました。資材事業では、原材料価格高騰の影響を受けるも、採算重視の営業活動に尽力した結果、順調に推移しました。

事業環境と評価(前期総括を踏まえた今期見通し)

今期の事業環境の見通しについて、ご説明します。まず、外部環境について、前期は物価上昇に伴い国内の個人消費が弱含む中、インバウンド需要が引き続き伸長し、内需拡大に貢献しました。今期も、インバウンド需要のさらなる拡大に加え、政府主導の各種政策効果により、個人消費の改善を期待しています。一方、海外は米国の通商政策や経済情勢の変化等により、先行きには注視が必要です。

対して内部環境は、前期までに不良性資産が整理され、主要4事業が堅調に推移するなど、収益性は大幅に改善されました。今期は、新たにスタートした中期経営計画において、収益基盤をより強固なものへと固めつつ、成長領域への投資を加速させながら、事業ポートフォリオの再構築に取り組んでいきます。

2026年3月期見通し:売上高1,350億円(+0.8%)、営業利益33億円(+9.9%)

このような事業環境において、今期の業績見通しは、スライドのとおり売上高1,350億円、営業利益は33億円と、売上・利益ともに、過去最高の更新を視野に入れた見込みとしました。

2026年3月期見通し(事業別)

スライドは、事業別に展開した業績の見通しとなります。売上面については、前期の大型案件による反動減となる機械事業が減収見通しですが、その他の事業は増収を想定しています。利益面は、安定成長により主要4事業のすべてにおいて増益を見込んでいます。

配当金:2025年3月期配当金は、実質7円増配の年間97円

配当金に関するご説明です。2025年3月期の期末配当金は、現中期経営計画でコミットしていた配当性向30パーセント以上を達成すべく、当初予想の45円から7円増配となる52円としました。なお、年間配当金は97円、配当性向は30.3パーセントとなります。2026年3月期の配当は、3円増配の年間100円の計画としています。

今後の中長期の配当方針については、後述する新中期経営計画の中で、詳しくご説明します。

ビジネスモデル:水産業をサプライチェーンでサポートするプラットフォーマー

新中期経営計画の詳しいご説明の前に、改めて当社のビジネスモデルおよび沿革について、ご紹介します。当社のビジネスモデルを一言で表すならば、「水産業をサプライチェーンでサポートするプラットフォーマー」となります。

浜から食卓までを網羅する主要の海洋、機械、資材、食品の4事業と、バイオ、物流を加えた全6事業が関わることで、水産物の漁獲・加工・流通・販売のサプライチェーンをトータルにサポートするエンジニアリング会社として、唯一無二のビジネスモデルとなっています。

DNAは、漁業・水産業に関して蓄積されたエンジニアリング力

当社の祖業は漁網や漁具資材の販売を行う海洋事業に始まり、日本一の漁網会社を目指すとの志のもと、1919年、山口県下関市にて、当社はスタートしました。創業メンバーである林田甚八と岩本千代馬が、本場英国にてトロール漁法を学んだ後に日本に導入し、遠洋漁業が大きく発展、水産業の近代化に大きく貢献しました。

以降、100年以上にわたり、日本、そして世界の漁業・水産業の大きな時代の変化に対応しながら、一貫して「漁獲」部分のサポートを行ってきました。この歴史を通じて培った技術、ノウハウが、当社の大きな強みであり、漁獲など、生産の現場へ貢献していくことは、事業が多角化した現在においても、DNAとして脈々と受け継がれています。

「漁網」の供給からスタート、「漁業・水産業を中心に事業を派生的に拡大」

スライドは、事業の多角化の変遷を年表にしたものになります。先にご説明のとおり、海洋事業からスタートした後、1961年に、食品加工工場に水産加工機械を、漁船に対して資材を納入したことを契機として、現在の機械事業、資材事業が立ち上がりました。また1967年には、冷凍すり身の販売から食品事業が派生しました。

現在、世界的に大きな注目を集めている養殖について、当社は1980年から取り組みを開始していますので、今日まで実に40年以上の歴史を積み重ねてきています。1999年に発足したバイオティックス事業も、養殖魚に使われる餌の研究開発が発展したものとなります。また、2010年には物流事業にも進出しています。

社名のニチモウの「モウ」も「網」の字からきているように、当社の歴史は漁網の製造・販売からスタートしていますが、それが1970年代の200カイリ規制をはじめとした、時代環境のさまざまな変化を転換点として、現在のビジネスモデルへとつながっています。

各事業がニーズに合わせて進化・領域拡大:販売からサプライチェーンに展開

このような時代背景を経て主要の4事業を中心とする体制が構築され、各事業の対応領域が拡大したことで、水産物のサプライチェーンをより幅広く網羅する、現在のビジネスモデルへと発展してきました。

海洋事業では、いわゆる獲る漁業から育てる漁業への転換が進む中で、養殖機資材や種苗・餌料の供給、生産魚の加工・販売まで、サービスの幅を大きく広げてきています。

すり身の輸入販売からスタートした食品事業では、仕入販売のみならず、自らが加工機能を有することで、ニーズに応えた高付加価値商品の供給に取り組んでいます。

機械事業では、さまざまな加工工場に対して機械販売を行ってきた経験を活かし、生産効率の高い製造ラインの提案や、新工場の建設まで請け負うなど、総合エンジニアリングサービスへと展開しています。

食品の流通資材からスタートした資材事業では、包装資材の他、住宅向け建装材フィルムなど、取り扱いの幅を大きく広げることで、食卓シーンを支えています。

当社の発展プロセス:水産業・漁業のサプライチェーンをサポートする

これまでご説明した水産業に関するサプライチェーンのトータルサポートは、当社最大の特徴であり、強みですが、現在では各事業がさらにサービス領域を拡大し、スライドに記載のとおり漁業・水産業以外の分野にも進出しています。

海洋事業では、環境配慮資材の取り扱いを強化しています。廃棄漁網を漁業以外のさまざまなものへリサイクルする取り組みや、生分解性資材を用いたブルーカーボンの創出に関する取り組み等が、代表例です。

機械事業では、水産加工機械の枠に留まらず、中華総菜や豆腐製造など、あらゆる食品製造の現場にサービスを展開し、国内に留まらず、北米などを中心に全世界へと進出しています。

資材事業においても、食品関連資材の他、住宅向け、自動車向け等、多種多様なフィルムの取り扱いに加え、生分解性のフィルム等、環境配慮型資材への取り組みも行っています。

このように、水産業のビジネスサポートを主軸にすえ、業界のパラダイムシフトに対応しつつ、より強固で盤石なサポート体制を整えながらも、水産業で培った当社独自のノウハウを異業種分野へも展開し、新しい収益の柱を構築することを、両立させて取り組んでいます。

養殖事業を中心に水産業の成長性は高い

当社を取り巻く事業環境と、その中におけるビジネスチャンスについて、ご説明します。

まず、事業環境についてです。国内では生産量が落ち込んでいる水産業ですが、こちらのスライドのとおり世界的に見ると、生産量は大きく拡大基調にあります。中でも養殖魚は、牛・豚・鶏と比べて温室効果ガスの排出量が少なく、環境に優しいたんぱく源として有望な産業です。直近30年で生産量は約4倍と大きく増加しており、また全体生産量のうち、9割近くをアジアが占めるなど、水産業の成長性は高く、当社にとって追い風となっています。

事業環境と当社のビジネスチャンス:水産物需要へのニーズが益々高まる

これからの事業環境について、国内では、インバウンド需要がより一層増加する可能性があり、世界的には、人口増により安定的なたんぱく質の供給源が求められています。

環境に優しく、持続可能なたんぱく質の供給源として、水産物需要の高まりは社会的要請となっており、この需要を支える多様なサポート分野でビジネスチャンスが一層拡大していくものと考えています。

当社の特徴・強み:「水産業」「漁業」をよく知っている

先ほどご説明しましたように、当社の強みは、創業から115年にわたり水産業を支え続けてきた中で培った、漁業・水産業に関する技術とノウハウです。水産業が、環境に優しい成長産業としてより一層拡大していくために、当社は大きく寄与できるものと考えています。

特に、環境保護とたんぱく質源確保の両立において、次世代型ビジネスである陸上養殖やバイオマス漁網の実用化は、当社の使命であると考えています。また、漁業・養殖の生産現場において知見を発揮しつつ、そこで生み出した付加価値を消費者へとつなぐサプライチェーン全体を網羅する多角化した事業展開により、水産業の価値そのものをより一層高めていきたいと考えています。

当社の事業コンセプト:漁業・水産業を支援することで、社業が発展する

改めて、当社の事業コンセプトは、漁業・水産業を支援することで、社業が発展していくことと考えています。沿革部分でも少し触れましたが、当社の歴史は、水産業界に巻き起こるパラダイムシフトに対し、常に果敢に挑戦してきた歴史がございます。

創業間もない1920年代は、水産業界での革命が進展する中で、トロール漁法を日本へ導入し、水産業の近代化に貢献しました。拠点も全国に展開し、漁船に関わるすべての資材の提供を開始する等、日本の漁業者を手厚くサポートする体制を構築しました。

1970年代に入ると、国際的な漁業規制である200カイリ規制により、遠洋漁業は大きく制限され、日本の漁業は構造改革を強いられた中、当社も海苔養殖の関連機資材を代表例に、沿岸漁業への対応に転換を図りました。また、漁網メーカーから、水産専門商社へと展望を遂げたのもこの頃となります。200カイリ規制による「獲る漁業」の衰退により、魚食に関する国内の旺盛な消費需要に応えるべく、海外から魚を買い付けて国内へ流通させる、現在の食品事業が大きく伸長する契機となりました。

最後に、海水温上昇などの環境変化が顕著化した近代においては、養殖事業の拡大により、水産物の安定的な供給体制の構築を推し進めてきました。また、水産加工や流通を支える主要な4つの事業で、浜から食卓までを網羅しつなぐ独自の事業展開により、生産した水産物の価値の最大化を追求しています。

そして、この先の未来については、水産業界に起きているパラダイムシフトがますます加速していくものと考えています。海洋環境の変化、資源の枯渇が進む状況下において、長年の経験で得た技術とサービスを当社オリジナルのビジネスプラットフォームに乗せて提供し、いつの時代も、歩みを止めることなく、常に挑戦し続けていく所存です。これを当社の使命として、水産業界の発展に微力ながら貢献していきたいと考えています。

前中期経営計画(2023年3月期〜2025年3月期)振り返り

この先は中期経営計画について、ご説明します。まず、前中期経営計画の振り返りです。

前中計では、「浜から食卓までを網羅し繋ぐ」をベースに、未来、事業、そして、人に関する3つの「繋ぐ」を意識した経営を推し進めてきました。成果としては、まず、主要4事業が安定して収益を上げられる体制が整ってきたことがあります。また、食品事業では、北海道の紋別の製造拠点に対し加工設備の増強を進め、海外マーケットを狙う機械事業では、人材投資を強化するなど、未来につながる投資を進めてきました。

さらに、サステナブル経営の推進の旗頭として、近年の注目産業であるサーモンの陸上養殖事業もスタートしました。そして、東証の市場再編への対応については、積極的なIR活動等により、投資家のみなさまに理解浸透が図られ、株価は移行基準日時点から倍以上に跳ね上がり、東証プライムの上場維持基準をクリアしました。

対して、課題としては、陸上養殖事業について、不安定な国際情勢等により、輸入機械の据え付けが遅れた影響もあり、出荷は開始したものの、当初目標の増産計画は次期へ持ち越しとなりました。こちらは、引き続き次期中計でも注力していきます。

また、海外展開についても、機械事業を中心に組織体制の整備や人材投資を進めており、動きを加速させていきます。

前中期経営計画(2023年3月期〜2025年3月期)業績の成果

スライドは、前中計の業績の振り返りです。売上および経常利益ベースでは計画値を上回り、増収基調が定着してきた一方、計画を下回った営業利益とROEの向上が、今後の課題となります。

前中期経営計画における株価の動向

前中計期間における株価の動向です。IR活動の積極化により、当社に対する認知度は着実に高まり、現在では時価総額が約172億円まで向上しました。

前中期経営計画期間におけるプライム市場上場維持基準各項目の推移

スライドは、プライム市場の上場維持基準項目の推移です。収益が安定化してきたこと、積極的な株主還元、決算説明会を中心とした積極的なIR活動により、2023年5月頃からすべての上場維持基準をクリアし、2025年3月末日時点においても、継続的に各基準に適合した状況で推移しています。

経営理念に加えて今回の新中期経営計画でパーパス体系を新たに策定

新中期経営計画の概要について、ご説明します。

今回の新中計の検討においては、従来からの検討手法を大きく変更し、新しくパーパス体系を策定しました。先般ご説明しています、水産業界に巻き起こるパラダイムシフトに対応すべく、過去延長線上の検討ではなく、未来逆算型の検討へ切り替えることを狙いとしています。

具体的には、不変である当社の経営理念を追求していく中で、10年後の未来において実現したい世の中や、ありたい姿をパーパスとして、「浜から食卓までを網羅し、挑戦の歩みを未来へ」と設定し、そこから逆算して詳細な計画・戦略へと落とし込みを行ってきました。

10年後の「ありたい姿(パーパス)」からバックキャスティングで考える

スライドは、10年後のありたい姿をパーパスからバックキャストしたイメージ図になります。

パラダイムシフトが巻き起こり、事業環境の変化が早い昨今において、既存事業の上積みのみでは限界があります。10年後の将来予測からのバックキャストに基づいた挑戦や、大胆な舵取りにより、大きな飛躍を遂げていくことを前提とした中長期の計画となっており、今回の新中計期間は、10年後を見据えた、まずは突破口を開くための3年間と、位置づけています。

新中期経営計画の基本方針:コアビジネス強化と収益構造の安定化の両立

新中計における基本方針についてご説明します。まずは、コアビジネスである水産業のサプライチェーンに対して、ソリューションパートナーとしてサポートに注力していきます。漁業・水産業のノウハウを活かして、顧客と丁寧に向き合い、シェアや売上規模よりも、収益性を重視した取り組みを展開します。

次に、水産業界から周辺領域への進出も積極的に行っていきます。特に海洋事業における環境保護分野、機械事業における海外での食品加工分野に、大きな商機があると考えており、積極的に挑戦していきます。

最後に、M&Aについても、これらの方針において有力な候補先があれば、当社事業との親和性を確かめながら、積極的に検討していきます。

重視する経営指標:①ROE、②ROIC、③D/Eレシオ

それでは、3年後・10年後における中長期のKPIについてご説明します。

まず、新中計において、重視する経営指標として、従来のROEに加えて、ROIC、D/Eレシオも活用していきます。始めに、ROEですが前中計期間に増資を行ったことにより、低下傾向にありますが、改めて10パーセント以上を継続していくことを意識していきます。ただ、財務レバレッジを利かせるだけではなく、あくまで、資本効率の改善により向上させていくことを前提にしていることをご理解いただければと存じます。

次に、資本効率の観点を重視するためにROIC4.5パーセント以上を目標として設定しました。また、事業別にROICを構築することで、事業の進捗管理を行っていきます。

最後に、D/Eレシオです。当社は、水産物の買い付けを行う食品事業であるため、どうしても有利子負債が膨らんでしまう特性がありますが、適正な財務規律に則り、まずは1倍以内に管理していきます。

中長期 KPI(新中期経営計画、長期ビジョン)

次のスライドは、10年後と3年後の数値目標となります。10年後の目標は、売上高で2,300億円、営業利益で77億円、利益ベースで前期実績の2.5倍以上となります。この大きな目標の達成に向けて、前中計において営業利益30億円台の土台作りが整備できましたので、新中計の3年間では営業利益を40億円台へと一段引き上げ、その後の大きな飛躍へ向けたさらなる足場固めを行っていきます。

新中計最終年度の具体的な数値目標は、売上高1,550億円、営業利益43億円となります。

中長期 KPI(セグメント別)

スライドは、新中計最終年度のセグメント別数値目標です。主要4事業を中心に売上構成比を平準化していくことで、さらなる収益基盤の安定化を図っていく予定です。

当社の課題:事業ポートフォリオ改善の必要性

ここからは中長期の成長戦略のカギである事業ポートフォリオの再構築について、ご説明します。

事業ポートフォリオの再構築を行っていく理由は、業績からの側面と、主要4事業の状況に関する側面の、主に2つの観点がございます。

まず業績からの側面について、全事業それぞれが成長・拡大を推し進め、前中計にて、一定の基盤整備が完了しました。この基盤を新中計にてもう一段引き上げた後に、10年後の目標である営業利益77億円に向けて大きく飛躍させていく計画であり、必然的に利益成長のスピードを加速度的に上げていく必要がございます。

限りある経営資源を活用し、ガバナンスをしっかりと効かせながら、既存事業の成長と新規事業への投資を両立させていくことが、業績面において非常に重要だと考えています。

次に主要4事業の状況からの側面として、まず、営業利益ベースで約半分を稼ぎ出す収益の柱である食品事業においての現状は、季節性のある水産物の買い付けを行う事業特性上、有利子負債が一時的に膨らむ傾向にあり、また、水産物の相場変動の影響を受けやすいといったリスクもあり、収益を安定化させるためにはメーカー機能の強化が必要です。

海洋事業は、長年のノウハウや技術力により、養殖やバイオマス漁網など、大きなアドバンテージとなる事業や商材が含まれており、将来性のある事業です。今後の飛躍において、非常に大きな可能性を秘めた事業ではありますが、確立するには時間がかかるため、中長期のスパンで育てていく位置づけの事業となります。

機械事業は、人手不足による機械化に対する設備投資意欲が国内外で高まっており、国産機械の優れた性能と、当社独自のエンジニアリング力の訴求により、商機は大きいものと考えています。一方で、案件受注が顧客企業の設備投資サイクルに依存する側面があり、安定受注の確保がポイントとなります。今後は海外への進出を加速することにより、業績の安定化と拡大を並行して進めていく計画です。

資材事業は、主要4事業の中では、年度における大きな波の少ない安定した業績推移が特徴です。商材のラインナップはフィルム関連を中心に、食品向けから、住宅や自動車向け、環境系資材など、裾野の広い営業展開を行っており、今後も一定の安定した収益を維持したうえで、新たな市場や加工技術の確立に取り組んでいきます。

以上のとおり、グループ全体での収益の成長スピードを上げていく中で、各事業のおかれた状況はさまざまであり、今まで以上に全体バランスを見ながら管理を徹底していくべく、事業ポートフォリオの再構築を推し進めていきます。

事業ポートフォリオ再構築に向けた考え方

こちらのスライドは、各事業および成長領域にある事業・商材を、マトリックスで分類したものです。

まず右下の、食品・資材の両事業が区分される収益安定化の領域は、成熟した事業であるものの、収益貢献度が高く、それを引き続き安定化させていくことが、対応方針となります。対して左上の、海洋・機械が区分される収益性向上の領域は、今後の成長性が高く、さらに収益性を向上させていけるポテンシャルが大きい領域です。積極的な投資の検討対象として、成長速度を加速化させていく方針です。

一方、左下のバイオティックス、物流の両事業は、体質強化領域となります。まずはコストの見直しを進めながら、他の事業とのシナジー効果の創出により、収益性の向上を検討する方針です。

全事業の中でも、特に注力する事業および商材が、成長領域に区分した「養殖」、「環境系資材」、「機械事業を主軸とする海外展開」、の3つとなります。10年後の目標達成において、非常に大きなカギを握る領域であり、資金や人材投資の最優先対象となります。

以上の考え方に基づいて、適切なポートフォリオマネジメントを推し進めていきます。

中長期 営業利益構成変化イメージ

スライドは、事業ポートフォリオの再構築により、営業利益構成が変化していくイメージを表しています。新中計最終年度である3年後は、ご覧のような構成イメージとなっていますが、10年後の目標は営業利益を現状から2.5倍以上に引き上げることを目標にしています。

現在、利益構成の約半分を食品事業に依存している状況から、養殖・環境系資材を中心とした海洋事業、海外展開を積極化する機械事業のそれぞれの拡大により、食品・海洋・機械のバランスの取れた3本の柱で構成するかたちへと、変革を進めていきます。

事業ポートフォリオ再構築へのプロセスと方向性(セグメント別)

事業ポートフォリオ再構築のプロセスと方向性を示したものが、こちらのスライドです。

バルーンの大きさはセグメントごとの営業利益額をイメージしたものになりますが、3年後、10年後と、ステップを踏みながら、特に海洋と機械の各事業が次期中計以降に大きく収益を拡大し、10年後には、食品と並び3本の柱として、同規模の利益水準となる計画です。

10年中長期キャッシュ・アロケーション・イメージ(2026年3月期〜2035年3月期)

投資計画、キャッシュ・アロケーションおよび配当政策について、ご説明します。

スライドは、10年間の中長期のキャッシュ・アロケーションのイメージです。まず、全体の構成は、営業キャッシュ・フローと借入金を活用しながら、積極的な成長投資や株主還元を行っていくことを描いています。

事業特性上、季節性のある水産物の買い付け資金として、全体のキャッシュ・インのうち、2割程度を運転資金として活用することを見込んでいますが、D/Eレシオを1倍以内にコントロールするよう財務の健全性にも努めていきます。

新中計でのポイントとしては、10年後の飛躍に向けた事業投資を加速していく方針であり、追加で借り入れによる外部資金の調達を予定しています。事業投資は、主に設備投資等への成長投資と、M&A資金で、比率はほぼ1:1を想定しています。これらに加えて、新中計でも積極的な株主還元策を実施していきます。

また、ROEの向上施策として自社株買いの是非を検討します。

投資計画:新中計の設定枠を長期ビジョン終了時まで継続予定

こちらのスライドは新中計での投資計画の明細です。成長領域の事業と商材を中心に、積極的な設備投資とM&Aを実施予定であり、各項目は記載のとおりです。

新中計期間においては、総額120億円の投資枠を設定し、設備投資・M&Aをそれぞれ60億円の配分としています。M&Aの対象は、食品・機械事業の関連企業を中心に想定していますが、その他事業においても有望な対象がありましたら、積極的に検討していく予定です。

中長期における配当政策(3年後→10年後に向けて)

3年後、10年後に向けた、中長期の配当政策について、ご説明します。まず、新中計期間は、従来どおり安定配当を基本方針としつつ、新中計でも実質累進配当政策は継続し、3年後の2028年3月期までに、配当性向35パーセント以上へ引き上げるとともに、株主優待についても実施を検討していきます。

中長期的な視点に立った株主還元策については、業績の動向にもよりますができる限り早いタイミングでの配当性向40パーセント以上、DOE4.0パーセント以上を目指して、積極的な株主還元を行っていきます。

主要4事業の戦略:水産業を、需要促進・拡大支援、生産性向上の観点からサポート

新中計における各事業の戦略について、ご説明します。主要4事業の戦略はスライドの記載のとおりです。

各事業のポイントとしては、食品事業は、水産物の需要を促進します。

海洋事業は、水産業の拡大を支援します。

機械事業は、食品製造の生産性を向上させます。

資材事業は、食品包装を通じて販売を加速させます。

4つの事業が相互に連携し、水産物のサプライチェーンをサポートすることが、当社最大の特徴であり、他社に真似のできない強みとして、磨きをかけていきます。

食品事業戦略:高付加価値な水産物(ホタテ・カニなど)に特化して収益性を強化

食品事業の戦略です。「ニチモウオリジナルの『安心・安全で高品質・付加価値の高い水産加工品を提供』」が基本方針となります。設備投資を進めてきた北海道紋別市の2大加工拠点を活かして、北海道ブランドであるカニやホタテといった高級水産物を、インバウンドや通販、高級志向の顧客などに販売を行っていきます。

海洋事業戦略①:バイオ漁網など環境系資材の提供・拡販

海洋事業です。「環境変動に応じた次世代型水産業の構築」を基本方針として、大きく2つの事業戦略を掲げており、まず1つが、バイオマス漁網などの環境系資材の提供・拡販です。

100年以上にわたって漁業に携わり培ってきたブランド力と高い業界知名度、そして、漁業や藻場造成に活用できる独自開発のバイオ・生分解性素材のほか、廃棄漁網のリサイクル等、幅広いソリューションを提供していきます。また、環境意識が高まってきている中、温室効果ガスの排出量削減や炭素固定機能がある利点を訴求し、資材供給のみならず、コンサルティングも合わせた営業を展開していきます。

海洋事業戦略②:養殖業(陸上・海面)のエンジニアリング強化

海洋事業におけるもう1つの戦略が、養殖業におけるエンジニアリングの強化です。長年にわたり蓄積してきた養殖に関するノウハウを武器に、陸上・海面にこだわらず顧客のニーズに合わせて、トータルサポートを行っていきます。

注目を集めている陸上養殖では、グループ会社のフィッシュファームみらいを通じて、陸上養殖に関するデータが蓄積されてきており、オペレーションは今後システム化していく計画です。

また、陸上養殖設備の内製化に向けた検討もスタートしており、これが実現できれば、養殖資材の提供、コンサルを海洋事業が、陸上養殖に必要な設備やシステム構築を機械事業が、成魚製品の流通に必要な包装資材を資材事業が、そして、成魚販売を食品事業が担うかたちとなり、主要4事業の連携によるシナジー効果を、最大限活用していきます。

機械事業の具体的戦略:海外向け営業を強化

機械事業の戦略です。「世界の食のニーズを叶える」を基本方針に、収益のさらなる拡大を目指していきます。国内での各種食品加工機械の提案営業もさることながら、海外で需要が増加傾向にある日本製食品加工機械やラインの拡販に注力していきます。

また、海外営業に特化した販売スタッフの強化も進めており、今後、有力機械メーカーのM&Aも積極的に検討しながら、海外ネットワークの構築や展示会への出展などを通じ、積極的な海外展開を推し進めていきます。

資材事業の具体的戦略:新たな市場への開拓

資材事業です。「資材を通して人々の暮らしと環境に貢献する」を基本方針としていく中で、特に新たな商材と、加工連携先を発掘し、収益の最大化に努めていきます。従前の食品工場向けから、現在では住宅・家具、自動車、農業向けなど、幅広く展開を行っており、商材とマーケットに関する多くの知見を基に、新たな市場の開拓を進めていきます。

また、海外も含めて有力な加工連携先を新たに発掘することにより、提案力と幅を今まで以上に拡大していくこともポイントとなります。

ESGへの取り組み

非財務価値への取り組みについてご説明します。

始めに環境ですが、GHGガスの排出量削減に関する世界的な課題に対して、海洋事業におけるバイオ・生分解性素材を用いた海藻養殖などの取り組みに優位性が見られており、ブルーカーボンの創出により環境保護に貢献していきます。

社会については、多様な人材の活用に向けて、誰もが働きやすい環境を目指しています。具体的には、子育てサポートの充実に向けて「くるみんマーク」の資格取得も視野に入れながら、仕事と子育ての両立支援のための行動計画を策定し、目標達成に向けて日々取り組んでいきます。

最後に、ガバナンスについては、当たり前のことですが、企業不祥事を防ぎ、長期的な成長を支える重要基盤として内部統制の強化を推し進めていきます。

まとめ

ここまで、新中計の内容について、ご説明してきましたが、最後にまとめとして、重要なポイントを振り返らせていただきます。

前期業績は、主要4事業が順調に利益成長したことにより、営業利益は30億円台に到達し、収益は過去最高の水準で安定化してきており、さらなる成長へ向けた体制を整えることができました。

新中期経営計画では、この3年間を10年後の目標達成へ向けた突破口を切り拓くための助走期間として位置づけ、利益水準を営業利益40億円台に一段引き上げて、安定的なものへと進めていきます。

また、主要4事業に対してポートフォリオマネジメントを通じて、食品偏重の利益構成から、海洋・機械の拡大により安定化を進める等、全体の収益構造の変革を進めていきます。併せて、成長領域を中心に積極投資を行い、未来の利益拡大の種まきも進めていきます。

10年後の大きな飛躍へ向けたキーワードは、挑戦です。これまで幾多の困難を挑戦によって乗り越えてきたことは、当社の歴史にも深く刻み込まれており、このチャレンジスピリットを、今一度パーパスとして掲げることとしました。今、水産業界に巻き起こる新たなパラダイムシフトは、当社が100年以上にわたり積み上げてきたノウハウの結集により、新たなソリューションを生み出すための大きなチャンスであると考えています。

このチャンスに、大きな挑戦マインドを持って挑むことに加えて、ROIC、D/Eレシオ等の客観的な経営指標を活用して、適切な事業管理を行っていきます。

最後に、株主還元については、PBR1倍達成を念頭に置き、投資と還元の配分に注視しながら、積極的に検討していきます。10年後に掲げる挑戦的な業績KPIの達成に向けて、必要な投資の実行を加速しつつ、収益化部分を還元へ回す好循環なサイクルへと、つなげていきたいと考えています。

以上をもって、ニチモウ株式会社の決算説明会を終了します。ありがとうございました。