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沢村孝司氏(以下、沢村):日油株式会社代表取締役社長の沢村です。本日はご多忙の中、当社の業績説明会にご参加賜りまして、誠にありがとうございます。また、平素は格別のご高配をいただいていますこと、あらためて感謝申し上げます。

それでは、2025年3月期決算について経営の現況をご説明します。本日ご説明する内容はスライドのとおりです。

2024年度業績概要

2024年度の連結決算についてご説明します。売上高は前期比161億円増収の2,383億円、営業利益は32億円増益の453億円、経常利益は10億円増益の466億円、当期純利益は365億円となりました。

その結果、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益すべて過去最高を更新しました。関係者のみなさまのご支援、ご愛顧の賜物と心から感謝しています。

このような業績をもとに、2024年度の年間配当金は前期から7円増配の45円としています。

連結営業利益の差異内訳

連結営業利益における対前期の差異要因についてご説明します。なお、当社過去資料に記載の棚卸影響は、今回の資料より変動費と固定費に分解し、それぞれの項目に振り分けて集計していますのでご承知おきください。

対前年では、増減販でプラス46億円、変動費でプラス9億円、固定費の増加によりマイナス23億円で、連結営業利益は32億円の増益となりました。

機能化学品事業

セグメント別の概況です。まずは機能化学品事業について前期比較でご説明します。通期売上高は174億円増収の1,509億円、営業利益は78億円増益の298億円となりました。

通期営業利益78億円の差異内訳について、増減販は化粧品関連製品や特殊防錆処理剤が好調に推移したことによる増販でプラス70億円、変動費はスプレッド改善によりプラス8億円となりました。

医薬・医療・健康事業

医薬・医療・健康事業です。通期売上高は前期比60億円減収の480億円、営業利益は49億円減益の157億円となりました。

通期営業利益49億円の差異内訳について、増減販はDDS医薬用製剤原料において、一部顧客による在庫調整による出荷減少など、一時的な需要の踊り場を迎え減販となったことでマイナス43億円となりました。

変動費は機能食品事業などのスプレッド改善によりプラス1億円、固定費は労務費などの増加によりマイナス6億円となりました。

化薬事業

化薬事業です。通期売上高は前期比46億円増収の388億円、営業利益は5億円増益の31億円となりました。

通期営業利益5億円の差異内訳について、増減販は主に防衛関連の製品の増販によりプラス17億円、変動費はマイナス1億円、固定費は労務費などの増加によりマイナス11億円となりました。

2024年度通期 前期比の業績動向(主要製品)

各セグメントにおける主要製品の業績動向についてご説明します。

機能化学品事業についてです。界面活性剤は化粧品関連の需要が好調に推移し増益、特殊防錆処理剤は中国向け自動車関連の出荷が好調に推移し増益となりました。脂肪酸誘導体は、中国における冷凍機用潤滑基材の出荷が低調に推移しました。

医薬・医療・健康事業についてです。DDS医薬用製剤原料は、一時的な需要の踊り場を迎え減益となりました。食用加工油脂・食品機能材は、収益性改善に向けた製品統廃合を進め減収となりました。

化薬事業についてです。防衛関連製品は需要が好調に推移し増益、宇宙関連製品はロケット向け製品の出荷が増加し増益となりました。

2025年度業績予想の概要

2025年度の業績予想についてご説明します。売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべてにおいて過去最高を更新する計画としており、売上高2,520億円、営業利益460億円、経常利益479億円、当期純利益368億円を見込んでいます。

なお、米国の関税政策による影響は、動向が不透明なことから業績予想には含めていません。当該影響の拡大による当社業績への影響については注視していきます。

連結営業利益の差異内訳

連結営業利益における2025年度予想と2024度実績の差異内訳についてご説明します。

前期に対して、各事業の販売増加による増減販でプラス70億円、変動費でプラス5億円となるものの、固定費がマイナス68億円となり、2025年度の営業利益は前期比7億円の増益を見込んでいます。

NOF VISION 2030

「2025中期経営計画」の進捗についてご説明します。

当社グループは、2030年度のありたい姿を「豊かで持続可能な社会実現のため、『ライフ・ヘルスケア』『環境・エネルギー』『電子・情報』の3分野において、化学の力で新しい価値を継続的に創出する企業グループ」と定め、そこに向けて「NOF VISION 2030」を策定しています。

2023年度を起点とした「2025中期経営計画」を「StageⅡ 収益拡大ステージ」、「2028中期経営計画」を「StageⅢ 事業領域拡大ステージ」と位置づけ、営業利益の目標として2025年度に460億円、2030年度に600億円を目指し、さらなる成長に向けた事業運営を行っていきます。

売上高の推移

「2025中期経営計画」における連結売上高の推移です。各セグメントの詳細については後ほどご説明しますが、2025年度の連結売上高は前期比で増収を予想しています。2025年度の計画水準に向けて着実に伸長させていきます。

営業利益・営業利益率の推移

連結営業利益と営業利益率の推移です。2025年度の連結営業利益は前期比で増益となる460億円を予想しており、「2025中期経営計画」の目標営業利益の達成を目指していきます。

2025年度予想と2025中計との差異

2025年度の業績予想と「2025中期経営計画」の差異についてご説明します。

「2025中期経営計画」と比較し、機能化学品事業の脂肪酸誘導体や医薬・医療・健康事業のDDS医薬用製剤原料が下振れる見込みであるものの、機能化学品事業の化粧品関連製品や特殊防錆処理剤、化薬事業の防衛関連製品が上振れる見込みです。

これにより、2025年度の営業利益予想は「2025中期経営計画」と同水準の460億円を予想しています。

機能化学品事業

セグメントごとの業績予想についてご説明します。まずは機能化学品事業です。

2025年度も、引き続き化粧品関連製品および自動車関連部品の堅調な推移が見込まれることから、販売が増加し、増減販で22億円の増益となる見込みです。変動費は、原燃料価格の変動に応じた価格改定を進めてプラス2億円となる一方、固定費の増加によりマイナス20億円を見込んでいます。

これらの結果、機能化学品事業の営業利益は前期比で4億円の増益を予想しています。「2025中期経営計画」を上回る営業利益を見込んでいますが、中でも化粧品関連事業が特に大きく貢献しています。

機能化学品事業

近年大きく事業を成長させてきた、化粧品関連事業の戦略についてご説明します。スライドの図は、当社の化粧品原料とODM製品の事業サイクルを示しています。

スライド左側の化粧品原料展開をスタートとし、時計回りに、化粧品原料を使用した配合処方を設計し、ODM製品として展開させ、それにより得た市場情報を解析して、新たな化粧品原料の開発と展開につなげています。

当社は化粧品原料とODM製品を両輪として併せ持つことで、このサイクルを迅速に繰り返し回転させることが可能であり、市場から得られる情報の精度も高くなります。さらに、社内連携で開発の循環を早めることで、化粧品原料およびODM製品の両市場における競争優位性を維持・向上させることを事業戦略としています。

機能化学品事業

化粧品原料とODM製品の状況についてご説明します。

化粧品原料では、当社保有の幅広い素材を活用した市場動向解析からの原料開発力を強みとしています。ヘアケア、スキンケア、ボディケア向けの付加価値の高い製品が伸長し、好調となっています。

ODM製品では、国内トップクラスの原料ラインナップと市場情報から開発した化粧品原料をベースに、顧客要望にあわせた提案が可能です。アンチエイジング、スキンケア製品や美容ヘアケア製品が伸長し、好調となっています。

今後の展開として、化粧品原料は植物由来原料などの環境対応型原料を開発し、顧客に提案していきます。ODM製品は「高自然由来指数化粧品」「高保湿化粧品シリーズ」「高機能UV製品」などを開発し、顧客要望にあわせて提案していきます。

これらにより、引き続き化粧品関連製品として事業成長させていきます。

医薬・医療・健康事業

医薬・医療・健康事業です。2025年度は、DDS医薬用製剤原料でバイオベンチャーの臨床開発遅延が継続するものの、一部顧客の需要増により増減販で18億円の増益となる見込みです。

また、変動費は原料価格上昇の影響があるものの、価格改定を進めてプラス6億円となる見込みです。固定費は、LS愛知工場の減価償却の開始や労務費の増加などにより、マイナス20億円となる見込みです。

これらの結果、医薬・医療・健康事業の営業利益は、前期比で3億円の増益を予想しています。「2025中期経営計画」を下回る見込みであるものの、中長期の成長見通しに変更はありません。

医薬・医療・健康事業

DDS医薬用製剤原料の状況と中長期の成長についてご説明します。2023年度は臨床後期や上市に伴う旺盛な需要により好調だったものの、2024年度は一部顧客の在庫調整などにより、需要の踊り場となりました。

2025年度以降については、一部顧客の需要が徐々に回復し、増加する見通しとなっています。また、後期臨床試験段階のパイプラインが5件以上あり、その他パイプラインも多数抱えている状況に変化はありません。

今後の既存顧客の需要増加と上市を控えたパイプラインの増加に備え、2025年10月にLS愛知工場の営業運転を開始する予定です。

なお、米国における投資環境の回復の遅れによりバイオベンチャーの臨床開発遅延は継続しており、機能性脂質の成長加速は長期を見込む状況となっています。

医薬・医療・健康事業

このような状況における、中長期の成長に向けた施策等についてご説明します。

2030年度に向けた施策として、新規開発パイプライン、バイオシミラーや顧客新規プロジェクトでの需要を取り込むことで、シェア拡大を推進します。これにより、バイオ医薬品の市場成長率10パーセントに近い成長を引き続き目指していきます。

それに向けた開発状況として、先ほどのスライドでもご説明したとおり、複数の臨床案件が進行中です。さらに、大型パイプラインへの成長が期待されるテーマを中心に、初期開発案件の取り込みを推進しています。

また、今後の需要に対応するための設備投資としてLS愛知工場を建設し、2025年度より営業運転を開始する予定です。上市品用製品製造設備のバリデーションには2年から3年程度の期間を要しますので、需要の増加を見据えて設備投資を先行実施しています。LS愛知工場の稼働率は中長期で向上させる予定です。

化薬事業

化薬事業です。2025年度は防衛関連製品での需要増などにより、増減販で29億円の増益となる見込みです。また、変動費の増加によりマイナス2億円、労務費や減価償却費など固定費の増加によりマイナス23億円を見込んでいます。

これらの結果、化薬事業の営業利益は前期比で4億円の増益を予想しています。

化薬事業

化薬事業においては、防衛関連製品の需要増への対応として、早期装備化に伴う関連設備投資を計画しています。日本の防衛力整備計画が大幅に拡充され、早期装備化に向けた取組みが進行しており、当社グループは新たな推進薬製造等の参画要請を受けています。

国およびプライム企業からの当社グループへの製造能力増強に対する期待は大きく、この期待に応えるべく、製造能力の新設・増強を図っていきます。

化薬事業

早期装備化に伴う関連設備投資として、総額1,000億円規模の設備投資計画を検討しています。本設備の投資資金は原則、初度費として顧客より回収します。

初度費とは、特注の防衛関連製品の製造等に際し、設備導入等に必要な初期投資費用のことです。初度費に関する収益・費用の認識について、顧客の要請を満たした時点で初度費は売上高として計上、固定資産は一括償却により売上原価として計上します。

早期装備化に伴う防衛関連製品は、次期中期経営計画期間より納入を開始できるよう対応していきます。また、防衛関連製品の営業利益率の向上にも努めていきます。

設備投資

「2025中期経営計画」期間においては、既存の設備投資に加えて、需要拡大への設備投資や生産性の向上および環境への投資により、「2022中期経営計画」期間実績のおよそ3倍の設備投資額を計画しています。

2023年度と2024年度の実績、2025年度の予定および「2025中期経営計画期間」の累計計画はスライドに記載のとおりです。

設備投資

スライドには、2025年度以降に完成を予定している主な設備投資を示しています。なお、こちらの投資額は2026年度以降の検収分も含んでいます。

製造設備への投資については、先ほどご説明した化薬事業の早期装備化に伴う関連設備への投資額が大きくなっていますが、DDS医薬用製剤原料や化粧品関連製品など、成長が続く分野への設備投資も着実に進めていきます。

生産性向上への投資

生産性向上への投資については、自動化・省人化の促進による業務効率の改善、生産・営業におけるデータ利活用拡大への投資を進めています。引き続き、生産性の高い業務運営を行える体制を整備していきます。

環境対応への投資

環境対応への投資については、製造設備におけるフロン規制への対応、CO2削減に寄与する製造設備の省エネルギー・エネルギー効率化への投資を進めています。2050年のカーボンニュートラル達成に向け、今後も積極的に投資を行っていきます。

研究開発

研究開発についてご説明します。当社と産総研グループにて「日油-産総研 スマート・グリーン・ケミカルズ連携研究ラボ」を設置しました。

この連携研究ラボでは、当社と産総研グループが保有する基盤技術やノウハウを融合することで、環境調和型の化学品製造プロセスの開発を進め、脱炭素と生活の豊かさに資するスマート・グリーン・ケミカルズの創出を目指しています。

これにより、化学の力で新しい価値を継続的に社会へ提供するとともに、サステナブルな化学産業の実現とその発展に貢献していきます。

研究開発

研究開発の効率化にも取り組んでおり、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の活用を進めています。スライドには、活用例としてライフサイエンス研究所によるデータ解析を掲載しています。LNP最適処方設計に応用するなど、研究開発の効率化を進めています。

研究開発

「2025中期経営計画」期間におけるセグメント別研究開発費についてです。2024年度はグループ合計で79億円となりました。2025年度はグループ合計で88億円を予定しています。今後も、事業領域拡大を目指して研究開発を進めていきます。

人的投資

人的投資についてご説明します。ワークエンゲージメントの高い多様な人材を生み出す施策として、従業員の自律的な成長の促進や働きやすい職場環境づくりの推進などを進めるとともに、DX人材育成、推進や海外における事業活動の支援強化など、人材確保や人材育成のための人的投資を進めています。

人的投資

従業員持株会への「特別奨励金スキーム」の導入についてご説明します。従業員の中長期的な企業価値向上へのインセンティブの付与、株価を意識した経営への参画意識の向上などを目的に、従業員持株会に加入している当社従業員へ、毎年20株相当の当社株を付与することとします。

このスキームの導入により従業員と株主のみなさまとの価値共有を進め、より一層の企業価値向上に努めていきます。

政策保有株式

政策保有株式についてです。2024年度は7銘柄を売却し、2025年3月末時点で56銘柄となりました。

その他の銘柄の一部売却を含めた2025年3月末の連結純資産比率は、2024年3月末より3.9パーセント減少の14.8パーセントとなり、「2025中期経営計画」の期間中に連結純資産比率を15パーセント以下とする目標を達成しました。

2025年度以降も引き続き、政策保有株式の縮減を進めていきます。

株主還元 配当性向

配当性向についてご説明します。2024年度は中間配当21円、期末配当24円、配当性向29.2パーセントとなりました。2025年度は中間配当24円、期末配当24円とし、年間配当は対前年で3円増配となる48円、配当性向は30.5パーセントを予想しています。

2009年度以降は累進配当を継続していますが、今後も安定的な配当の維持継続を基本とし、中長期的に累進配当を目指していきます。

株主還元 総還元性向

株主のみなさまへの利益還元を経営上の最重要課題の1つとして認識し、「2025中期経営計画」期間の総還元性向の目標水準を50パーセント程度と定めています。

2024年度末のネットキャッシュの水準、今後のフリーキャッシュフロー水準の見通し・ROEなどを鑑み、2025年5月に2024年度分として追加100億円の自己株式取得を発表しました。これにより、2024年度は合計200億円の自己株式取得を実施することとなります。

2025年度においても、「2025中期経営計画」の目標水準とともに、資本効率向上に向けた機動的な自己株式の取得を検討していきます。

ROE

ROEについてご説明します。当社は重要な経営指標として、「2025中期経営計画」における2025年度のROE目標を12パーセント以上としています。2024年度はROE13.4パーセントを達成しており、2025年度においても2024年度水準の維持を目指していきます。

2025年度は「2028中期経営計画」を策定していきますが、資本効率向上に向けて、ROE目標値のさらなる引き上げも念頭に進めていきます。

ご説明は以上です。今後もさらなるご指導、ご鞭撻をたまわりますようお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。