目次
秋永吉男氏(以下、秋永):経営管理本部副本部長兼管理部長の秋永です。中越パルプ工業株式会社の2024年度決算説明を始めます。
2024年度の連結決算概要、2025年度の連結業績予想、中期経営計画2025の取り組み状況、トピックス、参考資料の順で説明します。
連結業績概要
2024年度の連結決算概要についてご説明します。売上高は、1,110億900万円で、前年同期比31億8,300万円の増収となりました。その主な要因は、紙の販売数量の増加などです。国内では、クラフト紙や印刷用紙、衛生用紙の販売数量が1万9,000トン増加しています。
輸出では、アジア地域を中心に拡販したことにより、販売数量は9,000トン増加しています。パルプについては、数量は若干減少したものの、円安や市況の回復等により販売金額が増加しています。
営業利益は、48億4,300万円で、前年同期比13億2,900万円の減益となりました。販売数量の増加や工場の効率改善といった増益要因はあったものの、原燃料価格や物流費の上昇、修繕費の増加などのコスト上昇が大きく、減益となりました。
経常利益は、51億1,400万円で、前年同期比17億600万円の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、17億6,100万円で、前年同期比19億4,000万円の減益となりました。連結子会社の中越エコプロダクツ株式会社が保有する固定資産等の減損処理を行ったことにより、純利益が減少しました。
年間配当金は、2023年度は通期で60円でしたが、2024年度は10円増配し、70円としています。
自己資本利益率(ROE)は、純利益の減少の影響により、3.1パーセントで、前年同期比3.8ポイント減となりました。
減価償却費は、61億6,500万円で、前年同期比2億3,900万円の増加となりました。
期中平均為替レートは152円41銭で、前年同期比8円47銭の円安となりました。
ドバイ原油価格は、1バレル当たり81ドルで、前年同期比3ドル安となりました。
連結子会社数、持分法適用会社数については、変更ありません。
セグメント別損益
セグメント別の損益です。
紙・パルプ製造事業については、2024年度の売上高は1,014億700万円で、前年同期比45億8,100万円の増収となりました。セグメント損益は36億6,300万円で、前年同期比18億4,900万円の減益となりました。
発電事業については、売上高は56億2,200万円で、前年同期比14億1,700万円の減収となりました。これは売電単価の下落に伴い、一部の発電設備を停止した影響によるものです。セグメント損益は5億4,700万円で、前年同期比1億3,700万円の増益となり、固定費等のコスト削減等によって売上高の減少をカバーしています。
その他の事業については、売上高は170億5,100万円で、ほぼ前年同期並みでした。セグメント損益は5億4,400万円で、前年同期比2億6,500万円の増益となり、主な要因としては紙・パルプ取扱量の増加等が挙げられます。
セグメント間取引の調整額を含めた合計は、売上高1,110億900万円、セグメント損益48億4,300万円と、増収減益となりました。
連結営業利益増減内訳
連結営業利益の増減内訳をご説明します。
営業利益は、2023年度は62億円、2024年度は48億円で、14億円の減益の要因をスライドに記載しています。
減益の一番大きな要因としては、原価で15億円悪化しました。15億円の内訳としては、修繕費や労務費を含む固定費の上昇で11億円、木材チップ配合の悪化等により変動費で4億円となりました。
原燃料価格は、古紙で4億円、燃料等で2億円、合わせて6億円悪化しました。
販管費は、物流費の増加等により4億円悪化しました。
王子製紙との合弁事業会社であるO&Cアイボリーボード株式会社(以下、OCIB)は、トラブル等によるコスト高の要因が大きかったことから、2億円悪化しました。
これらの他に、製品受払差等で2億円の悪化があり、合計で29億円の減益要因となりました。
一方、増益の要因です。増益の一番大きな要因は、販売価格の上昇です。販売価格は8億円改善しました。内訳としては、紙は構成差等により1億円悪化しましたが、パルプは市況の回復などで9億円改善しました。
販売数量は、6億円改善しました。スライド下部に記載しているとおり、紙が前年同期比2万8,000トンの増販、パルプが前年同期比3,000トンの減販となりました。これに伴い、紙の生産数量も増加しました。
売電事業は、1億円の改善があり、合計で15億円の増益要因となり、2024年度の営業利益は、差し引き14億円の減益となりました。
連結有形固定資産増減明細
連結有形固定資産の増減内訳です。
2024年3月末の有形固定資産の合計額は541億5,200万円で、そこから54億9,200万円増加し、減価償却60億4,800万円と、連結子会社の減損を実施したことによる除却等27億200万円を差し引き、2025年3月末の合計額は508億9,400万円で、前年度末比32億5,800万円の減少となりました。
固定資産の主な増加の内訳については、東京本社の再開発で5億円、高岡工場の4号発電機の回転子更新で4億円、富山新港浚渫工事に伴うバイパスコンベアの設置で4億円、川内工場の2号マシンのヘッドボックス更新で3億円です。
参考として、スライド右下に、設備投資額の推移を記載しています。2024年度は55億円、2025年度は現時点で57億円を見込んでいます。
連結キャッシュ・フロー計算書
連結キャッシュ・フローの計算書です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、103億6,000万円で、その主な内訳は、減価償却費62億円、税金等調整前当期純利益18億円、減損損失27億円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、60億1,300万円で、その主な内訳は、有形固定資産の取得64億円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、60億1,200万円で、その主な内訳は、長期借入金の減少45億円、配当金の支払8億円となりました。
連結業績予想
2025年度の業績予想です。
売上高1,120億円、営業利益49億円、経常利益52億円、親会社株主に帰属する当期純利益35億円と、増収増益で計画しています。
売上高9億9,100万円増加の要因をスライド左側に記載しています。印刷・情報用紙、カップ原紙等の製品価格の改定効果については、2025年度に寄与する見通しです。販売数量については、衛生用紙の販売数量増を織り込み、紙で4,000トンの増販を計画しています。販売数量増の内訳は、国内で3,000トン、輸出で1,000トンです。パルプについては、円高・市況悪化等により、販売金額は減少する計画です。
営業利益は、前年同期比5,700万円の増益となる計画です。その主な要因は、引き続き物流費や人件費の上昇によるコストアップはあるものの、販売・生産数量の増加や効率の改善、価格改定や円高の影響等の増益要因を織り込んでいます。
経常利益は、前年同期比8,600万円の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比17億3,900万円の増益となる計画です。
ROEは、6パーセントで前年同期比2.9ポイント増加となる計画です。
減価償却費は前年同期とほぼ変わらず、61億円となる計画です。
期中平均為替レートは147円、ドバイ原油価格は1バレル当たり70ドルの計画です。
参考として期中平均為替レートとドバイ原油価格の感応度を、スライド左側に記載しています。為替1円の円安につき、年間1億500万円の減益要因となります。また、ドバイ原油価格は、1ドル上昇につき、年間6,000万円の減益要因となります。
連結子会社数は6社で、2024年度の7社から1社減っています。これは、中越エコプロダクツ株式会社を本年6月末を目途に解散することによるものです。
参考として2025年度の工場長期休転時期を掲載しています。2025年度の工場の長期休転については、第1四半期と第3四半期で、各工場の定期メンテナンスによる一斉停止を計画しています。
連結営業利益増減内訳(計画)
連結営業利益の増減内訳です。2024年度は48億円、2025年度の計画は49億円で、1億円の増益を計画しています。
まず、増益の要因です。OCIBは、5億円の改善となります。OCIBは、2024年度はトラブルが続き、コストが増加しましたが、2025年度は改善し、原価で3億円、販売価格で1億円、増販・増産で1億円の改善となります。
原燃料価格は、2億円の改善となります。その主な要因は、円高の影響により原木チップで6億円の改善を織り込みますが、古紙、燃料等は高騰が続いており、古紙で2億円、燃料他で2億円の悪化を織り込み、2億円の増益要因と計画しています。
数量は、増販・増産の計画です。スライド下部に記載しているとおり、販売数量は、紙で4,000トン、パルプで3,000トンの増販を計画しています。生産数量も、紙で8,000トン、パルプで4,000トンの増産を計画しています。これらの効果により数量差で、1億円の改善を織り込んでいます。
一方で、減益の要因です。販売価格は、4億円の悪化となります。紙は、4億円の改善を織り込んでいますが、パルプは、8億円の悪化を織り込んでいます。
運送費等を含む販管費は、3億円の悪化を織り込んでいます。
原価は、工場の効率改善、パルプコストの改善などにより、変動費で3億円の改善を織り込んでいますが、労務費、修繕費等の固定費の増加により、原価はプラスマイナスゼロの見通しです。
2025年度は増益要因が8億円、減益要因が7億円で、営業利益は差し引き1億円の増益となる計画です。
中期経営計画2025 取り組み状況:概要
牧迫重信氏(以下、牧迫):経営管理本部事業戦略推進室長の牧迫です。中期経営計画2025の取り組み状況についてご説明します。
中期経営計画の策定にあたって、「ビジョン2030」として、「既存事業の発展・環境ビジネスの発展・イノベーションにより、森林資源の有効活用を通した循環型社会の構築と持続可能な未来を実現する」というビジョンを掲げています。
森林資源を既存事業と環境ビジネスにおいて、素材原料やバイオマス燃料として活用していきます。
既存事業においては、省エネや新規利用・開発に取り組み、環境ビジネスにおいてはセルロースナノファイバー(以下、CNF)など新素材としての活用を狙いイノベーションを図ります。カーボンニュートラルの達成に向けては、エネルギー部門においてバイオマス発電やメガソーラーでの発電事業を通し再生可能エネルギーを供給、また脱プラスチック、脱化石燃料、エコ素材の供給により社会に貢献することを目指しています。
さらに、リサイクルを進め資源を有効活用し、また森林保全や植林を通してCO2の固定を図ります。このサイクルを回すことにより循環型社会の実現を目標に取り組んでいます。
中期経営計画2025では、既存事業の構造転換において紙に占めるグラフィック用紙の比率低減として、紙パルプ事業の生産体制再構築の実施、グループ関係会社事業の選択と集中による収益力強化に取り組み、またもう1つの柱として森林資源を活用した環境投資・環境ビジネス推進の取り組みを進めています。
収益目標としては、営業利益は40億円、ROEは5パーセント以上を掲げています。2024年度実績は営業利益が48億円、ROEが3.1パーセントでしたが、2025年度の営業利益は49億円、ROEは6パーセントを計画しています。
2030年度の環境目標として、「カーボンニュートラル社会の実現に向け、製造工程における化石燃料由来のCO2排出量を、2030年度までに2013年度比で50パーセント削減する」という目標も掲げています。
2024年度の実績については、CO2排出量が21万3,000トンとなり、2013年度比での削減率は48.2パーセントと、順調に環境目標の達成に向けて取り組みを進めています。こちらについては、トピックスで後ほど詳細をご説明します。
中期経営計画2025 取り組み状況:スケジュール進捗①
中期経営計画の取り組み状況として、スケジュールの進捗についてご説明します。まず、既存事業の構造転換の進捗です。
高岡工場6号マシンを停機し、停機後に家庭紙マシンの新設を行いました。2024年2月に営業運転を開始した家庭紙マシンについては順調に稼働しており、品質においても好評いただいています。今後も、より一層の品質向上と生産効率向上に努めていきます。
事業領域拡大においては、パルプの増販に取り組んでいます。2024年度の外販パルプ販売量については、2020年度比で90.6パーセントの増加という実績です。その他、脱プラ需要による紙の新規利用の拡大については、継続的に取り組みを進めていきます。
関係会社収益力強化については、2021年度から2022年度に取り組みを完了しています。
中期経営計画2025 取り組み状況:スケジュール進捗②
次に、森林資源を活用した環境投資・環境ビジネス推進の進捗です。
CNFの実用化・開発加速については、化粧品原料への新規採用やエレクトロニクス分野での利用拡大が進んでいます。エレクトロニクス分野では、松尾ハンダ株式会社様が製造販売する、当社のCNFを配合したソルダペーストを採用する動きが多くの企業で進んでいる状況です。CNFについては、後ほどCNFの特集のページでご説明します。
合弁事業会社である中越エコプロダクツ株式会社は、共同出資会社である株式会社環境経営総合研究所が破産手続き開始決定を受けたことにより、解散の予定です。今後は、新たな事業の可能性を模索するとともに、新たな形態での事業化に向けた検討を進めていきます。
バイオマス発電の検討については、外部環境も見ながら検討を引き続き進めていきます。既存ボイラーの脱石炭については、石炭の使用量削減の取り組みとして、2024年度の実績は石炭使用量が2020年度比で65パーセントの削減、CO2に換算すると1万6,750トンの削減実績となりました。
植林事業については、2030年度までに1,000ヘクタールを目標に実施しています。2022年度より着手し、順次拡大を図っています。
中期経営計画2025 取り組み状況:事業ポートフォリオ(売上高構成)
事業ポートフォリオの売上高構成です。2024年度の実績は、スライド中央の円グラフになります。2024年度については、外販パルプの増販や衛生用紙上市の影響などにより、2020年度比9パーセントの紙パルプ事業領域拡大となりました。
エネルギー事業については、2020年度の実績から4パーセント減の5パーセントとなりますが、これは、総売上高の拡大や一部の発電設備停止の影響等によります。2025年度の見込みをスライド右側の円グラフで示していますが、今期の計画を反映して記載しています。
中期経営計画2025 取り組み状況
坪井国雄氏(以下、坪井):開発本部長の坪井です。当社セルロースナノファイバー「nanoforest」の実用化、高機能CNF研究開発の加速についてご説明します。まず、新規分野への「nanoforest」の展開として、エレクトロニクス分野への「nanoforest」の利用についてご紹介します。
ソルダペーストと呼ばれる、プリント基板などへの電子部品の接合に利用されるクリーム状の「はんだ」には、高い品質特性が要求されます。スライドの写真のような電子基板の半導体と、基盤をくっつけるところの材料になります。
松尾ハンダ株式会社様では、ソルダペーストに当社の竹由来CNFを配合し、外観形状の良化、欠陥率の低減、接続信頼性の向上といった、さまざまな品質を向上させた新商品を販売しています。
近年各社で、こちらのソルダペーストを採用する動きが加速しています。このナノファイバー配合のソルダペーストは、2020年11月にプレスリリースしていますが、販売当初からボイドと呼ばれる内部欠陥が激減することが確認されていました。しかし、そのメカニズムが不明だったため、なかなか普及に至らないという状況でした。
そこで松尾ハンダさまでは、神奈川県立産業技術研究所や富山大学と共同研究を行い、これらの品質向上メカニズムの解明を進めています。弊社も微力ながらナノファイバーの知見から協力しています。さらに、展示会出展や神奈川工業技術開発大賞の受賞などの成果もあり、現在多くの企業で採用が進んでいると聞いています。
さらなる普及拡大を目指し、当社としてもナノファイバーの視点から後押ししていきたいと考えています。
中期経営計画2025 取り組み状況
続いて高機能CNFの取り組み状況についてご説明します。高機能CNFは、「nanoforest-S(高解繊CNF)」「nanoforest-M(疎水化CNF)」「nanoforest-CMB (CNF成形体)」の3つを指します。
高解繊CNFについては、川内工場に設置した実機設備での検証テストをほぼ終え、現在は製品およびサンプルの製造を行いながら、安定操業やコスト低減に向けた取り組みを行っています。
高岡の研究室で検証テストを行っている疎水化CNFおよびCNF成形体についても、高解繊CNF同様、製品とサンプルの製造販売を行い、お客さまからのフィードバックを品質や製造方法に反映させながら進めています。ただし、こちらは少し時間がかかっている状況です。
昨今、社会情勢が刻々と変化しており、お客さまからの要求品質も変わってきています。現行の検証設備における製造販売を通して利用拡大を図るのは当然ですが、状況の変化に柔軟に対応しながら進めていきたいと考えています。
トピックス サステナビリティ(ESG)活動 –環境–
牧迫:次にトピックスとして、サステナビリティ(ESG)活動についてご説明します。環境への取り組みとして「ビジョン2030」の実現に向けて、当社ではサステナビリティ活動を推進しています。
カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、TCFDについては、TCFD提言に沿って事業への影響分析を行い、重要なリスク・機会を開示、GHG排出量についてはScope1、Scope2の連結ベースでの開示を行っています。
また、2024年度にはGXリーグに新規参画し、2050年度カーボンニュートラル達成に向けたロードマップを策定し、省エネやボイラー燃料等の非化石燃料、低炭素燃料への転換等を推進しています。
このスライドは、カーボンニュートラル達成に向けたロードマップです。グループ環境目標として、2030年度までに製造工程における化石燃料由来CO2を2013年度比50パーセント削減の目標を掲げています。2050年度に向けては、さらなる削減を図りカーボンニュートラルを達成する目標を策定し、政府目標に合わせ当社の取り組みを進めていきます。
取り組み内容については、現在は各工場での省エネ案件の掘り起こしや、二塚製造部の3号ボイラーにおける脱石炭の取り組み、南九州地区および富山地区における植林を進めています。その他、非化石燃料や低炭素燃料への転換や、パルプ工程で使用している石灰焼成キルン燃料の低炭素燃料との混焼化なども検討を進めていく予定です。
2030年度以降は、ボイラー燃料の脱化石燃料化や、FITが終わった発電設備については、卒FIT電源の有効活用として検討、またCO2フリーの燃料の専焼化に向けても検討を進めていく予定です。
トピックス サステナビリティ(ESG)活動 –環境–
紙パルプ製造工程における化石燃料由来のCO2排出量は、2024年度実績で2013年度比48.2パーセントの削減となりました。化石燃料ボイラーの停止や省エネの推進、既存ボイラーの脱石炭の取り組みなどで、順調に化石燃料由来のCO2排出削減を進めています。
このグラフでは2030年度の政府削減目標はNDC水準46パーセント削減として記載しています。2024年度のNDC水準は29.7パーセント、当社実績は削減率48.2パーセントとなりますので、2024年度の政府目標を達成しています。今後も、当社の目標の達成に向けてCO2排出削減の取り組みを推進していきます。
トピックス サステナビリティ(ESG)活動 –社会・ガバナンス–
秋永:続いて、ESG活動の社会・ガバナンスについてご報告します。人権尊重に関する取り組みです。サプライチェーンにおける人権尊重の取り組みについて、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた、中越パルプ工業グループの人権方針を2025年3月に制定しました。
この方針に基づき、人権尊重の取り組みをより実効的なものにするとともに、グループ従業員への周知教育を徹底します。「中越パルプ工業グループ人権方針」は当社Webサイトにて掲載しています。
次に人的資本の取り組みについてです。「人材育成に関する方針」「社内環境整備に関する方針」を定め、2033年3月までに管理職に占める女性労働者・中途採用者の合計割合を25パーセント以上、また、2026年3月までに育児休業取得率を男女ともに100パーセントとする目標を設定し、取り組みを進めています。
管理職に占める女性・中途採用者については、2023年度実績が15.2パーセント、2024年度実績は16.5パーセントで1.3パーセント上昇しました。育児休暇取得率は2023年度実績は42.9パーセントに倍増し、2024年度実績は86.7パーセントとなりました。男性の育児休暇取得率は、2023年度実績は38.5パーセントと低かったのですが、2024年度実績は80パーセントと大きく上昇しています。女性の育児休暇取得率は昨年度に引き続き100パーセントとなっています。
質疑応答:CNFの化粧品以外への活用について
質問者:先ほどナノファイバーについてもご説明いただきましたが、新素材の拡大に取り組まれており、化粧品以外の製品についても非常に手応えを感じられているかと思います。今後の事業拡大に向けて、どのような活用をしていくのか具体的なプランを教えてください。
坪井:現在、畜産、農業、化粧品、樹脂・ゴム分野への展開に注力しています。畜産分野は環境改善資材として鶏舎での利用を中心に展開を進めてきましたが、現在は、豚舎や牛舎へも範囲を広げ、さらなる利用拡大を進めています。
農業分野に関しては、農水省が進めている「みどりの食料システム戦略」に資する農薬代替資材として、化学農薬の使用量削減を目的に、県の農業試験場や大手農業法人、農家などで検証を兼ねたトライアルを進めています。また、現行農薬では対処が難しい難防除病害への適用についても検討を進めています。
化粧品分野に関しては、先日プレスリリースした日焼け止めUVミルクをはじめ、少しずつですが採用実績が増えてきている状況です。
樹脂・ゴム分野では、CNFを粉末状に加工したPDPを中心に展開を進めていますが、性能と使い易さを向上させた新処方品の開発に加え、製造工程の見直しによるコスト削減を織り込んだ改良品の提供を行い、利用拡大を図っています。
さらに、自社でPDPと樹脂・ゴムへの混練が難しいという客先には、客先が指定した樹脂・ゴムにPDPを高濃度で混練したマスターバッチを当社で製造し提供しています。これらの効果もあり、すでに採用している客先や、採用に近い段階まで検討が進んでいる客先もいるという状況で、今後も利用拡大に注力します。
<補足事項>当社CNFの特徴について
当社では、紙の原料であるパルプを、水中対向衝突法という薬品を使わず水の力だけで微細化を行う環境に優しい手法を用いてCNFを製造しています。この製造方法は薬品フリーという安全面だけでなく、水にも油にも馴染みやすいという他のCNFには見られない特徴をCNFに付与することが知られています。この特徴を活かし、樹脂やゴム等への補強材としての利用を進め、脱プラによるCO2削減等への貢献にも力を入れています。
また、当社では木材以外に、国産の竹を原料にしたパルプからもCNFも製造しています。原料である竹は、工場がある鹿児島県を中心とした九州圏内から集荷しており、森林保全や放置竹林問題の解決の一助になっています。このような取り組みを通じ、環境や社会に役立つ開発を進めています。