インタビューにご協力いただいた方々のご紹介(順不同・敬称略)

DAIBOUCHOU 氏(@DAIBOUCHO
個人投資家。1973年生まれ。東京都在住。各企業の財務諸表分析を中心とした、割安成長株への超分散投資を得意とする。会社員時代の2000年に200万円の元手から株式投資を始めて、約4年で資産が大膨張して「億り人」になる。ところが、専業投資家になったとたんに、ライブドアショックやリーマンショックの影響で資産が大暴落。その後、安定重視の中長期投資にシフトして、資産10億円を達成。その投資経験や知見を個人投資家に伝え、株式投資の成功者を増やすことがライフワーク。会社四季報オンラインで「DAIBOUCHOU流 超分散投資」を連載中。著書に「DAIBOUCHOU式 新・サイクル投資法」(宝島社)がある。

たけぞう 氏(@noatake1127
元証券ディーラー。証券ディーラー時代は、多い時に約10億円の資金運用を託され、重圧と戦いながら約50億円の収益を上げた。現在は個人投資家兼経営者でラジオやYouTube、TVなどに出演しセミナー講師も勤める。四季報オンライン、MONEY PLUSに記事を寄稿。いろはにマネーにて記事監修。メルマガとコミュニティでは毎日最新の株式情報を配信。

ちょる子 氏(@kabu_st0ck
240万→2億を達成した平成生まれの兼業投資家。大企業営業→同社マーケティング→スタートアップで広報の立ち上げ→PR支援で独立。PR×IR×個人投資家で、企業さまの企業価値向上のお手伝いをしています。

ヘム 氏(@pygmy_hem
京都大学卒業後、総合商社に入社。社会人1年目より投資を始め、投資歴は27年になる。30歳で脱サラをし起業。現在も2社を経営する投資家兼会社経営者。390銘柄保有中、投資時価4.0億円(2025年2月28日時点)。個別銘柄分析&ポートフォリオ構成銘柄&成績をXで公開したところ、アカウント開設後、1年半でフォロワーが3万人突破。本当に価値のある会社に投資する「小型割安株」と「増配期待銘柄」を戦略の軸とし、さまざまなPFで構成した投資戦略。データを重視した投資手法で、その再現性の高さから、株クラ〜投資初心者まで幅広い支持を得ている。

名古屋の長期投資家(なごちょう)氏(@Nagoya_Tyouki
株式投資は95年12月から始めた超分散投資の長期投資家。インカムゲインと配当の成長を重視したPFを組んでいます。(2023年2月末時点では227銘柄保有)


銘柄探しや銘柄分析など、投資活動において現在AIを活用されていますか?

DAIBOUCHOU 氏
はい。活用しています。
たけぞう 氏
いいえ、活用していません。
ちょる子 氏
いいえ、活用していません。
ヘム 氏
はい、積極的に活用しています。
名古屋の長期投資家(なごちょう)氏
いいえ、活用していません。


活用していると回答された方は、具体的なAIツールの名称と、活用方法について教えてください

DAIBOUCHOU 氏
事業の強み、競合他社、シェアなど、会社概要を確認するのにChatGPTを使っています。投資サイト以外の実業系のサイトも情報収集してくれるので、自分がいつも見ない情報ソースも確認してくれます。
ヘム 氏
私の場合、主に銘柄分析の定性分析にAIを活用しており、銘柄探しについてもヒントを得る目的で利用することがあります。
私の投資分析の流れとしては、まず企業の定量分析を行います。具体的には、割安度、過去の業績推移、配当推移、BS(貸借対照表)の推移、業績修正履歴、配当政策などをチェックし、割安かどうかを確認した後に、定性分析に移ります。定性分析の最終的な目標は、対象企業のEPS成長性を確認することです。特に、EPSの成長期待度を判断する際に重視しているのは以下のポイントです。
 
・対象企業のビジネスモデルの把握
・同業他社に対する競争優位性
・競争優位性を支える参入障壁
・マーケット全体の成長期待
・シェア拡大の可能性

こうした分析は時間がかかる作業ですが、生成AIを活用することで、情報収集の効率が大幅に向上しました。
 
私が現在活用している生成AIは、ChatGPT Plus(GPT-4)(ChatGPT内のツール「日本株分析くん」を含む)とGrokです。
 
例えば、ある企業(A社)を調べる際、AIには以下のような質問を投げかけます。

1.A社のビジネスモデルについて説明して
2.A社の競合他社に対する競争優位性は何か?
3.A社の競争優位性を支える参入障壁には何があるか?
4.A社が成長するために重要なマーケットの成長性や将来性は?
5.A社のシェア拡大の見込みと、そのためのポイントは?
6.A社が抱える主な事業リスクとは?
 
このような質問を通じて大まかな分析を行った後、自分でも情報を精査しながら定性分析を進めるようにしています。生成AIを活用することで、情報の網羅性が増し、定性分析の深みと精度が向上しています。
 
現時点での生成AIは、企業分析において非常に有用な部分がある一方で、完全に信頼できるわけではありません。特に、情報の要約能力は高いものの、誤った情報を生成する(ハルシネーション)可能性があるため、常に裏取りが必要です。
しかし、AIは投資家のリサーチを補助するツールとしては十分に機能しており、今後さらに精度が向上することは確実でしょう。生成AIをうまく使いこなすことは、投資家としての競争力を高める重要なスキルだと考えています。
 
近い将来、情報収集の多くの部分は生成AIが担うようになると予想されます。ただし、最終的な投資判断や情報の取捨選択は人間の役割として重要であり続けるはずで、「生成AIが進化したから投資家の実力は投資成績に影響を及ぼさなくなる」などということにはならないと思っています。むしろ、情報活用能力の差(投資家としての実力の差)が及ぼすリターンの差は拡大するのではと思っているぐらいです。
 
銘柄探しの面でも、生成AIは強力なサポートツールになり得ると考えています。例えば、私は先日AIに「適格基準を満たしていない上場企業に投資する戦略を考えて」と依頼してみました。すると、以下のような投資戦略が提案されました。
 
・適格基準改善狙い戦略
・TOB期待戦略
・MBO(経営陣による買収)期待戦略
・悪材料出尽くし狙い戦略
・配当利回り狙い戦略
 
このようなアイデアは、まだ粗削りな部分もありますが、予想以上に的を射た戦略が多く含まれていました。AIが完全に最適な投資判断を下すレベルには遥か遠いと思っていますが、思考の幅を広げるためのヒントとしては非常に優秀なツールです。

生成AIは、投資家自身が使い続けることで、質問の仕方が洗練され、より的確な情報を引き出せるようになるという特性があります。生成AIを活用できる投資家とそうでない投資家の差はますます広がっていくと感じています。ただし、しつこいようですが現時点ではAIに「儲かる銘柄を教えて」と頼んで、そのとおりに投資するだけで成功するレベルにはまったく到達していません。あくまで、投資家の意思決定を補助する「優秀なアシスタント」という位置づけです。
 
今後、生成AIがどこまで進化するかは未知数ですが、投資家としてAIをうまく使いこなす能力を高めることが、これからの時代の競争力につながると確信しています。


活用していないと回答された方は、その理由などについて教えてください

たけぞう 氏
今後は活用を検討しています。
ちょる子 氏
ChatGPTにより検索はしましたが、今の投資スタイルが基本的に今年来るであろうテーマを決めて、そのセクターで時価総額の一番大きいところを2銘柄ほどPickUPするだけなので、あまり活用の方法は見出せずです。
AIを活用するよりも、ニュースやマクロ経済と業界の見通しに関するニュースを見に行きますし、グラフも見たいので、AIは今のところ活用できていません。
名古屋の長期投資家(なごちょう)氏
ChatGPTやGrokを試したことはありますが、自分の知ってる知識などで検証した感じでは精度がイマイチで、出てきた内容を信用できませんでした。


今回は凄腕投資家のみなさんに、投資活動におけるAIの活用状況についてうかがいました。ログミーFinanceでは幅広い業界の決算説明会やIRセミナー、株主総会などの書き起こし記事を掲載していますので、ぜひご活用ください!