Agenda
引屋敷智氏(以下、引屋敷):みなさま、こんにちは。代表取締役社長の引屋敷です。本日はご視聴いただきありがとうございます。それでは2025年2月期の決算説明を始めます。本日のアジェンダはスライドのとおりです。
業績ハイライト(連結)
はじめに業績ハイライトです。売上は47億6,800万円です。2025年2月期からベトナムの子会社が連結の対象となりました。そのうちシステムインテグレータ(SI)単体が46億7,600万円で、ベトナム子会社の売上は親会社との取引が半分くらいあるため、そこで相殺となっています。
私どもは付加価値として粗利・粗利率を重視しています。売上総利益である粗利は15億4,900万円となります。営業利益が2億7,100万円、そのうちSI単体は2億8,000万円で、減少分は子会社株式の取得費用が計上されたものです。
粗利に関しては、先ほどお伝えしたように粗利率をKPIとしています。粗利15億4,900万円で利率32.5パーセント、このうちSI単体で31.8パーセントとなっています。
2025年2月期から連結対象となったのが、ベトナムの子会社キーストーン社です。もう1つのデジタルガレージ社と共同出資で設立したDGコマースについては、2025年2月期には持分法適用関連会社となっていましたが、現在はすでに保有株式40パーセントをすべて譲渡し、デジタルガレージ社の100パーセント完全子会社となっています。
SI単体での売上高および粗利率の推移
SI単体での売上高および粗利率の推移です。スライドのグラフではデジタルガレージ社へ事業譲渡したEC事業を除外し、純粋に現在持っている事業でどのように成長しているかを示しています。
したがって2024年2月期まではEC事業の数字を含んでいましたが、2025年2月期はこれを除いたかたちで、約41億円から約46億円に売上が成長しています。
2025年2月期は事務所の移転や製品開発投資が発生した関係で粗利率が若干落ちていますが、金額としては増えています。
当社のMVV
事業の概要です。私どもは、自社のパッケージを世の中に送り出すことをミッションとしています。当社のパッケージやサービスが働く人たちに時間を与え、生産性と効率化に資するものを付加価値として提供しています。
事業概要
一番大きな事業はERP事業です。ERP事業では企業の基幹システムや基幹業務を支えるソフトウェアを提供しています。従来は、私どもが企画開発した「GRANDIT」がメインでしたが、2025年2月期からSAPを事業として加えました。そのほかに製造業向けに特化したスケジューラや生産管理システムも加えました。
「GRANDIT」の中にもERPとして製造業向けのサービスを持っていますが、工場などの生産現場のシステム化に特化した生産管理システム「mcframe」や、生産スケジューラ「Asprova」などをソリューションとして事業を開始しました。
さらにObject Browser事業では開発ツールの「Object Browser」やプロジェクト管理を行う「OBPM Neo」を展開しています。AI事業では、新規事業としてAI外観検査をすでに6年ほど続けてきました。
インキュベーション事業では、プログラミングスキルを自動判定するサービスとして「TOPSIC」を提供していました。「TOPSIC」については、もともとテストコンテンツを提供してくれていた、ITエンジニアの中ではかなり有名なイベントで競技などを企画しているAtCoder社へ、今年2月に事業譲渡を完了しました。
これにより、現在はERP事業、AI事業、開発ツールのObject Browser事業の3つが、当社の主力事業となっています。
私どものパッケージやサービスは、フロー型ビジネスとストック型ビジネスに分かれます。フロー型はお客さまが買取で導入するモデルで、ストック型は月額料金を支払う、いわゆるSaaSモデルです。一部クラウド上での利用もありますが、基本的にはフロー型ビジネスとストック型ビジネスの2つで成り立っています。
2025年2月期 決算 損益計算書(連結)
決算の状況です。ハイライトでもご説明したとおり、2025年2月期の売上は47億6,800万円で、業績予想の45億800万円を2億円強上回っています。
営業利益は、さまざまな大型投資を予定していた関係で予想は低く抑えていましたが、粗利や生産性などをアクションプランにして、1パーセントの改善に向けてプロフィットやコストを大幅に改善したことが功を奏し、予想に反して大きく上振れています。
最終的な親会社株主に帰属する当期純利益は、前期にDGコマースをデジタルガレージ社に譲渡した関係で大幅に減っています。
全体の概況については、引き続きDX市場において基幹業務システムなどの情報基盤を堅固に作るというニーズが底堅く、ERP事業全体に対する需要が非常に多いことから順調に推移しています。
その反面、積極的な社員採用によるスペースの問題や、それに伴う新規事業や新規人材育成、研究開発に投資を行ったことで、利益率としては若干下がっています。
2025年2月期 決算 貸借対照表(連結)
貸借対照表です。スライド右側にイベントを特記しているとおり、関係会社の株式売却や事務所の移転増床に関する投資などが主要因となっています。現金および預金の増減はあるものの、純資産としては前期末に比べて4.5億円強増えています。
事業セグメント別実績①ERP、OB
各事業セグメントの実績です。ERP事業は非常に好調で、売上は前年比で大幅に伸びています。対してセグメント利益は、積極的な人材投資により売上ほど伸びていません。
ERPは業務知識や製品知識、業界知識などさまざまな知識が必要となるため、人の育成や戦力化までに3年程度はかかります。人材投資にコストが投下され、利益は売上ほどの伸び率にはならないものの、順調に増えています。
現在積極採用している人たちが戦力化されてくるにつれ、次第に利益生産高が上がってくると考えています。
先ほどお伝えしたとおり、2025年2月期からERPだけでなく、製造業に特化した生産管理システム「mcframe」の新規展開をスタートさせました。こちらは中堅・大手企業向けとなっており、日本国内で大きなシェアを持っています。
また、2024年2月期に提供開始した「SAP S/4HANA」は、パブリッククラウドと呼ばれカスタマイズが一切できないモデルです。そのため、システムに業務を合わせていく導入方法となりますが、開始早々に受注や引き合いをいただき、導入が最終フェーズに来ています。
Object Browser事業については、現在は、どのような会社や事業でも、何かを進める際にはプロジェクトを組むことが通常になってきており、我々の業界でも進捗管理、コスト、人のアサインなどが重視されています。そのような中で「Object Browser」は非常に多くの引き合いをいただいています。導入要員が間に合わないケースもあるほど、売上・利益とも順調に伸びています。
事業セグメント別実績②AI、その他
AI事業については、画像技術を使った外観検査を開発してきました。しかし、画像のデータがまだ日本の企業にないことと、AIによる画像技術が人の手による品質検査に追いついていないことから、導入までのリードタイムが長く受注確率が高くないという課題がありました。
みなさまもご存じのとおり、「ChatGPT」やそれに追随するAIの出現によって、生成AI技術を使った外観検査以外のユーザーニーズが高まっています。
当社でも4月16日にプレスリリースしたとおり、私どもは今までAIエージェントを使ってERP開発に取り組んできた経験から、お客さまの企業の業務にどのような抜け漏れがあるか、どのようなところでミスをしてしまうかを把握しています。それらを活かし、今後は業務に視点を当てたAIエージェントをサービス化していくための準備を始めました。まずは製造業の領域で製品化を進めています。
その他事業に関しては、「TOPSIC」を2月末でAtCoder社へ事業譲渡しました。こちらも事業開始以来なかなか黒字化しませんでした。そのため昨年から経営方針として、業務システムとAIと開発ツールに事業を集中することを決定し、「TOPSIC」は譲渡しました。
AIに関しては、2025年2月期はまだ赤字の状態ですが、これをピボットし、なんとか黒字化に持っていく計画を立てています。
[補足] ストック型ビジネスの現況
先ほど、当社のビジネスにはフロー型とストック型があるとお伝えしました。一般的にはSaaSモデルが安定収入になることから、ストック型ビジネスをどのように増やしていくかが私どもの業界でも課題になっています。
私どものサービスは、基幹業務ではお客さまに10年程度使っていただくため、その保守と運用は非常に大きなストックビジネスとなっています。それ以外にも、開発ツールやSAPのようなパブリッククラウドで、月額型で継続的に提供していくサービスもストックビジネスの要素になっていきます。
現在のストック比率は30パーセントほどですが、今後は積極的に増やしていき50パーセント程度まで上げていきたいと考えています。
長期ビジョン⇒2033年2月期
ここからは将来についてお話しします。長期ビジョンとしては、私が社長に就任した年から10年後の2033年に、現在の売上高約50億円から120億円、営業利益20億円を目標としています。
2年経営計画 目指すゴール
私どもの目指す姿です。製造業も含め、私どものようなIT企業など、なにかしらのものを作っている企業のビジネスの業務プロセスを本当の意味で変革していくため、さらなる生産力をつけ、効率化を進めていきたいと考えています。
日本はいまだデジタル化が遅れています。ITの力で日本のものづくりの力をなんとか再起させたいと考えています。そのためにも、時間を与えるソフトウェアをミッションに基づいて創り続けます。
また私どもは自社開発したパッケージを持っているため、どうしてもプロダクト志向になりがちですが、お客さまの課題解決のために、社名のとおりシステムやいろいろなソリューションの真のインテグレータになることを目指しています。
そのような姿を描きながら、この2026年2月期は売上55億円、営業利益4億5,000万円を目指しています。
私どもは2年経営計画を策定しており、来期は売上63億円、営業利益6億円を目指しています。この間に事業基盤や収益基盤を安定させ、よい再現モデルを作っていきます。
また私どもの日々の開発作業や間接業務においてAI活用を積極的に進めていきます。今回の2年経営計画の中でも社内でAIファーストの大号令をかけ、いろいろな事業や業務改革に取り組んでいます。
それ以降は事業の独立組織を尊重し、先ほどお伝えした業務システムやAIビジネス、開発ツールの技術などを主力にして競争環境を築いていきたいと考えています。
2年経営計画方針
スライドの図は、2年後の姿に向かって各事業をどのように伸ばし高めていくのか、そして今はまだない事業をどのように作っていくかを示しています。ドメインとして集中していくのは「業務システム×AI×開発ツール」です。
「GRANDIT」「OB」「OBPM」が現在の3本柱となっていますが、これに関してはさらに次の世代を見越した未来の製品やサービスを作っていこうと考えています。製造ソリューションについて「mcframe」や、新しい取り組みであるSAPを基盤事業にしていきたいと思っています。
AIについてはまだわからない状況ですが、世の中の技術がどのように動いていくかや、どのタイミングでどのようなソリューションを作ればよいのかのタイミングを見計らい、伸ばしていきたいと考えています。
私どもは昨年度、キーストーン社を連結対象としました。そして期末には、大阪で生産管理を極めているシステム開発研究所という会社をM&Aしました。このような積極的な投資により、私どもと一緒に働いていただけるリソースをどんどん増やしていきたいと思います。
収益改善も、利益を10パーセント上げるのはなかなか難しいですが、1パーセントを常に意識して少しずつ上げていくことが、2025年2月期も目標値を上回ったという結果に表れていると思います。
未来人材投資は、今までいろいろな教育を行ってきましたが、AIがここまで入り込んできている中で、「人間は何をすればよいのか? 何を知っていればよいのか?」を再考し、2年後、3年後、あるいは5年後を描きながら、投資や教育、育成を行っていきたいと考えます。
これらをガバナンスに基づいて行い、株主さまへのトータルの還元を目指していきたいと考えています。
2年経営計画方針(1/2)
今後は、1パーセントの改善への意識やドメインの集中、AIファーストを実現していきます。日々の業務の中で、AIができることはAIにすべて任せ、人間が行うことは何かを真に考えるような姿勢とマインドセットを社員に意識づけし、実行していきたいと考えています。
またSAPや製造業向けに特化した事業も、新たな基盤事業にしていきたいと考えます。現在はERPが非常に大きな売上の軸になっていますが、この2つの事業で売上20億円を早期に実現したいと考えています。
2年経営計画方針(2/2)
新規事業に関しては、もともと自社製品を作っていくことが私どものミッションであるため、年間売上高の3パーセントから4パーセントは継続的に投資していきます。この投資案件は常に動いており、そこから次なる製品やサービスを生み出していきたいと考えます。
そして2026年2月期も、単純に人数を増やし単価を掛けて売上を伸ばすのではなく、私どもの事業ドメインの強みをさらに向上させるための機能補強を目的とした事業提携として、M&Aや合弁出資を戦略として積極的に進めていきます。
事業セグメント別業績予想①ERP
事業セグメントの業績予想です。やはりSAPや製造業向けのソリューションが含まれているERPが一番大きい事業の母体になっています。売上高は前期の38億5,000万円から約7億円の成長を見込み、45億8,500万円を予想しています。
すでに受注しているものと、引き合いの中から新規の受注を目指すものがありますが、今のところ計画どおり順調に進捗しています。この事業でのセグメント損益は8億7,000万円を目指しています。
事業セグメント別業績予想②Object Browser
「Object Browser」は、開発とプロジェクト管理のツールです。こちらは月額制のストック型のビジネスであるため、そこまで大きく跳ねたりはしませんが、着実に月額の収入が増えています。
セグメント損益が2025年2月期より減っていますが、これはプロジェクト管理に1億円弱を新規に投資するため、その分が利益を減らしているというかたちになっています。
事業セグメント別業績予想③AI
AIに関しては、先ほどお伝えしたとおり外観検査に関してはピボットしていますが、決してやめるわけではありません。非常に引き合いは多いものの、なかなか実用化や導入に至らない状況です。そのため私どもはAIエージェントを使い、製造業向けの効率化を図るためのサービスを展開するための準備を進めています。
そのため2026年2月期の売上高は、前期の9,200万円から1億円と、利益が出るか出ないかという予想を出しています。
AIエージェントで製造業における競争力向上の支援
昨日プレスリリースを出したとおり、やはりまだシステム間で狭間になっており、手作業や、特に製造業の中では職人技を持った匠のような人材がまだ存在して、それが標準化、共通化されないという制約を持った業務が多い状況です。
それらをAIに置き換え自動化していくことを、私どもは積極的に行っていきたいと考えます。そのために来月から第1弾、第2弾と、段階的にAIエージェントサービスをさらに世の中に出していきたいと考えています。
M&A: 2025年3月に取得した子会社について
M&Aです。これは2026年2月期に入ってからになってしまいましたが、先ほどお伝えしたとおり大阪のシステム開発研究所を子会社化しました。これまで富士通の生産管理システムをユーザー向けに受託開発していた会社をM&Aし、私どもが前期から始めた「mcframe」の導入・開発を一緒に行います。
全社員が生産管理や製造業の業務知識に非常に精通しており、私どもで新規に採用してイチから育てるより戦力化が早いということで、M&Aを実施しました。
人材育成:若手IT人財の採用と育成状況
若手人材を積極的に採用しています。ERPビジネスでは非常に広い方面でも知識が必要となります。またお客さまと打ち合わせするにも、かなり複雑な内容を理解して提案していくには、かなりの場数が必要となってきます。
そのような意味でも、育成して戦力化するまでに非常に時間がかかるということは、当社における大きな課題です。これを1年でも2年でも早めるために、いろいろな取り組みを行っています。
その取り組みの結果がようやく出てきています。役割をジョブ型へ変えていくなど、すべて体験させるのではなく得意な分野で育成していくことで、試行錯誤しながら戦力の早期化を図っています。その効果がいくつか出てきているところです。
その効果を評価し、来期以降、大きく体制も変えていきたいと考えます。
株主還元
株主さまへの還元について、私どもは配当性向30パーセントを目標としてきました。その中で、配当も含むトータルの株主さまへの還元を重視していきたいと考えています。もちろん業績や株価をさらに高め、利益還元も含めて株主のみなさまに還元していきます。
今お米が非常に高くなっていますが、私どもはそれに影響を受けることなく、2026年2月期も株主優待として新米をご提供しようと考えます。
SDGsの取り組み
最後にSDGsの取り組みです。本社が埼玉にある上場IT企業ということで、埼玉県の役に立つための取り組みをさまざまに行っています。
スライドに示すとおり、子ども食堂ポータルや近隣の中学生の就業体験などで地域に貢献しています。
質疑応答:ERP事業の体制と手応えについて
司会者:「ERP事業では、広義のERPを含めると一気に取り扱い製品が5つまで増えました。5製品それぞれ営業や開発の体制をどのように整えられますか? またそれぞれの製品では、顧客などからの問い合わせや引き合いといった手応えはいかがですか?」というご質問です。
既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。