個人投資家向け会社説明会

李太煥氏(以下、李):みなさま、こんにちは。株式会社NITTAN 代表取締役社長の李です。本日は大変お忙しい中、当社の説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。昨年度に続いての開催となりますが、本日はどうぞよろしくお願いします。

当社は、内燃機関(ICE)の最重要機能部品であるエンジンバルブとその周辺部品、精密鍛造歯車を主力製品として生産・販売している会社です。多くの自動車部品がそうですが、当社の製品も車の奥深いところに隠れていて、一般のユーザーが目にすることはほとんどありません。ゆえに、世の中にはあまり知られていない会社、製品とも言われています。

そこで、本日はみなさまに当社についてアピールしたいと思います。

0. 講演者プロフィール

はじめに自己紹介をします。私は、韓国・ソウルで生まれ育った韓国人です。親の勧めで日本に留学経験があり、日本が大好きで、「日本人よりも日本人らしいね」とよく言われます。

前職は、韓国の自動車メーカーであるKIA自動車でエンジン設計を行っていました。韓国初の独自開発エンジンを設計するのが当時の使命でした。スライドの右下の写真は、すべての耐久テストをクリアしてエンジン開発が完了した時の記念写真です。2列目の右から2人目が私です。

私はこのエンジン開発期間中に、バルブリフターという部品開発のために何度かNITTANを訪問していました。それがNITTANとの運命的な出会いの始まりでした。

当時のNITTANの仕事ぶりを振り返ると、非常に真面目で、正確で、信頼できるものでした。しかし、スピード感が不足していたと記憶しています。

その後も、私は順調にエンジニアとしてのキャリアを積んでいましたが、1994年頃にKIA自動車が経営的危機に直面したため、KIA自動車を退社して、日本での留学経験を活かすために日系企業への転職を考えるようになりました。そのように悩んでいる時期に、NITTANから誘いをいただき、それまでの信頼関係もあったため快く引き受けました。それが1995年3月のことです。

晴れて日本企業の社員になってから最初の仕事は、韓国合弁事業を成功させることでした。本当に忙しくて、3年間はほとんど休めず苦労しましたが、その後は合弁事業も順調に進み、子会社を3つほど持つグループ会社に成長させることができました。その後は「日本で活躍してほしい」と言われ、2007年に韓国日鍛からNITTAN本体に移籍し、現在に至ります。

現在は還暦も過ぎましたが、趣味はゴルフ、スキー、バイクとまだまだアクティブに活動しています。見た目も日本人とあまり変わらないですし、日本語もしゃべっていますので、外国人らしくは見えないかもしれませんが、違った目線や感覚、切り口で会社の発展と日本社会へ少しでも恩返しができるように日々努力していく所存です。今後ともよろしくお願いします。

目次

本日はスライドのような5部構成でお伝えします。1部、3部、5部は李からご説明を行い、2部と4部については執行役員経営企画部担当の村山からご報告します。

1-1.株主優待制度の導入

第1部「何が変わった?」についてご説明します。昨年3月の会社説明会から変わったトピックスについてです。

変化の1つ目は、株主優待制度の導入です。昨年度の説明会でお伝えしたとおり、株主優待制度の導入検討を始め、1月31日の取締役会で決議し、開示しています。

日頃のご愛顧に感謝の気持ちを込めるとともに、より多くの株主のみなさまに当社の株を保有していただけるよう制度設計を行い、保有株式数に応じて「QUOカード」を支給するものです。1年以上の保有期間などの条件を設けてはいますが、初回である今年3月末日まではこの条件を適用しない設計となっています。

スライド右下のとおり、2月27日現在の株価を反映した当社の配当と今回の優待を合わせた利回り率は5.11パーセントです。このように、配当金と合わせてより充実した株主還元を実現しました。今後もさらに充実した株主優待制度の検討を進めていきます。

私どもは、これからも株主のみなさまとともに持続的な成長を目指し、企業価値の向上に努めていきます。今後ともよろしくお願いします。

1-2. 配当金の推移

2024年度の配当はすでに発表したとおり、中間で6円、期末で6円、年間で計12円を予定しています。株主還元の強化は最重要経営課題と捉えており、株主還元と投資のバランスをしっかり見極めながら、安定配当の継続と総還元性向の向上を進めていきます。

1-3. M&Aで完全子会社化したNITTAN恵那金属の概要

変化の2つ目は、M&Aに関するお話です。前回の説明会でも、当社の中長期経営ビジョン「NITTAN Challenge 10(NC10)」を成功させる手段として、M&Aを積極的に検討する旨をお伝えしました。その検討が実を結び、去る2024年10月2日に恵那金属製作所の発行済み普通株式をすべて取得して、完全子会社化しています。

その後、2025年1月1日付で、社名をNITTAN恵那金属に変更しました。同社は岐阜県中津川に本社を構えており、創業は1946年と当社よりも2年ほど先輩です。従業員数は国内110名、海外75名、トータル185名で、年商は26億円です。

主な事業内容は機械加工業、表面処理業、不動産賃貸業です。特に機械加工業においては、難易度の高いタービンハウジングの切削加工で市場から非常に高い評価を得ています。また、中国の江蘇省昆山市に子会社があります。

1-4. NITTAN恵那金属のコア技術とM&Aの狙い

このM&Aの狙いは、互いに保有しているコア技術と経営資源を統合することで、既存事業の付加価値を高めるとともに、新規事業への参入を容易にすることです。

具体的に言うと、NITTAN恵那金属が保有している切削加工技術は、当社の舶用部品である弁座の加工や設備用部品の生産に活用できますし、設備用部品の生産性改善にも大きく役立ちます。また、表面処理技術は当社の舶用エンジンバルブのクロムメッキ工程の生産能力や加工面で大きなシナジー効果が期待できます。

一方、NITTAN恵那金属側のメリットは、NITTANを通じて容易に海外展開できることです。このようなシナジー効果を活かして、2026年までには売上高を現状の倍である50億円に引き上げることを目指していきます。

1-5. 組織改革について

変化の3つ目として、2025年2月1日に会社の構造改革のために大幅な組織変更を断行しました。モノづくり企業にふさわしい製造体制に改め、生産性向上と品質改善にさらに力を注ぐとともに、全社員が利益へのこだわりを持つ企業体質に変えるのが主な目的です。また、開発の体制も改めて、スピード感の向上と効率的な新商品開発を目指しています。

以上の3つが、前回のご報告から変わったトピックスです。いずれも成果を出して、次回の説明会ではその効果をアピールできるように努めていきます。

2-1. 会社概要

村山誠治氏(以下、村山):経営企画部担当の村山です。第2部「NITTANってどんな会社?」についてご説明します。

まずは会社概要です。本社は神奈川県秦野市と東京都新宿区の二本社制をとっています。設立は1948年で、今年で創業77周年を迎えています。

グローバル製造拠点数は、M&Aにより2拠点が増えて18拠点となりました。売上高は、2024年3月期で494億円です。前年比18パーセント増となり、ようやくコロナ禍前のレベルに戻すことができました。

肝心なことですが、当社は日本で初めてエンジンバルブの量産化に成功した会社です。スライド右下にあるように、今も国内トップシェアを維持しています。

2-2. 国内工場の所在地(神奈川県秦野市)の紹介

1つ目の国内製造拠点がある秦野市についてご紹介します。神奈川県の湘南地域北部に位置する人口16万人の市で、地域の湧水は環境省の「名水百選」に選ばれるほど自然豊かにもかかわらず、東京から1時間程度でアクセスできる利便性の高い地域です。

当社はCSRの一環として、複合スポーツ施設である「おおね公園」のネーミングライツを取得しました。現在は「NITTANパークおおね」として地域の方々に親しまれています。この「NITTANパークおおね」での当社主催イベント事例については後ほどご説明します。

2-3. 国内工場の所在地(山口県山陽小野田市)の紹介

2つ目の国内製造拠点がある山口県山陽小野田市についてご紹介します。私は山口県下関市出身で、実家から会社まで15分で到着します。山口県はかの有名な日本酒「獺祭」で知られますが、山陽小野田市は県南西部に位置し、秋吉台や角島、関門海峡などの有名な観光地も近くにあります。海鮮も大変おいしいですし、みなさまも山口県にお越しの際は、ぜひ観光や温泉、食事を堪能してください。

2-4. NITTANが培ってきたコア技術の紹介

NITTANのコア技術についてご説明します。当社は設立の趣旨にもあるように、「鍛造技術」が1番目のコア技術です。主に熱間鍛造技術ですが、複雑な形状を精密に鍛造成形する技術が自慢のポイントです。

2番目のコア技術は、過酷な使用環境で要求される材料特性を持つ金属を溶かして、必要な部位に溶着させる「盛金技術」です。これは当社が最も得意としている分野とも言えます。

3番目のコア技術は、コストや機能を満足させるために異なる性質を持つ金属を接合して一体化させる「接合技術」です。4番目のコア技術は、製品を企画寸法に正確に仕上げる「加工技術」です。

この4つのコア技術を駆使して、NITTAN特有の製品を世に送り出しています。また、この4つのコア技術にNITTAN恵那金属の切削加工技術と表面処理技術が加わることにより、さらなる強みを発揮できるものと判断しています。

2-5. 当社のルーツ

当社のルーツについてご説明します。当社の前身である恩加島鉄工所は1924年に設立され、今年で創業101周年を迎えています。

恩加島鉄工所は、「日本の鍛造業を立派なものにしたい」という志を持っていた柴柳新二により大阪府大阪市に設立され、日本で初めてエンジンバルブの量産化を成功させました。その後、1937年に日本鍛工が設立され、恩加島鉄工所と合併しています。

そして、1943年に日本鍛工は秦野工場を設立して、航空機用エンジンバルブの製造に踏み切るようになりました。当時は戦時中だったため、時代的な背景により作られた工場だと理解しています。

2-6. 当社の成り立ち

当社の成り立ちです。終戦後の企業再建整備法により秦野工場が分離・独立され、日鍛バルブ製造となり、ここから当社の歴史が始まります。1961年に日鍛バルブに商号変更し、2022年までこの社名で事業を続けてきました。

その後、世の中の電動化の動きに真摯に向き合う決意を込めて、社名をNITTANに変更して本日に至っています。社名変更に込めた思いを形にすべく、エンジンバルブに限らず、電動化領域や異業種にも果敢に挑戦していきます。

2-7. 事業領域(主な生産品目)

当社の事業領域の主な生産品目をご説明します。以前は5つの事業領域で構成されていましたが、PBW事業から撤退したため、スライドのように4つの事業領域に変更しています。

その他事業にはリフター事業、生産設備事業がありますが、水耕栽培によるアグリ事業は昨年11月末をもって撤退しています。より資本コストを重視し、事業再編を行った結果です。

2-8. 連結売上高及び事業領域(セグメント)別比率

連結売上高および事業セグメント別比率です。2024年3月期の連結売上高は494億円となりました。その中で、小型エンジンバルブ事業の割合が84パーセントと依然として高い状況です。

後ほどご説明しますが、当社の中長期経営ビジョン「NC10」を着実に進めることで、事業の多角化を目指していきます。

2-9. 当社主要製品の搭載箇所

こちらのスライドは、当社製品が車のどこに使われているのか、その搭載箇所を表した資料です。エンジンバルブとバルブリフターは、エンジンの上部シリンダヘッドに組み込まれています。精密鍛造歯車は、自動車後輪の間のリヤーデフケースの中や、オートマチックトランスミッションの中に組み込まれています。

いずれも一般ユーザーが目にすることはほとんどない箇所に潜んでいます。しかし、これらの部品が1つでも欠けたら車は一切動くことができない最重要機能部品です。

2-10. グローバルシェア 〜エンジンバルブ当社推定シェア〜

当社のグローバルシェアについてです。各事業領域においてトップシェアのお客さまと取引できており、その結果が表れていると言えます。また、競争が激しい四輪向けバルブにおいては、国内メーカー3社の中でトップシェアを維持しています。

2-11. NITTANグループ生産拠点(国内,海外)

NITTANグループの生産拠点については、NITTAN恵那金属が加わり、国内3拠点、海外15拠点となりました。

2-12. 主要お取引先様の紹介

主な取引先についてです。NITTANグループは、自動車メーカー、オートバイメーカー、舶用エンジンメーカーなど、グローバルで180社のお客さまと取引を行っており、相互信頼関係を深めています。

2-13. 国内・海外 主要お取引先様比率(連結売上高)

こちらのスライドは、国内と海外の主な取引先別のシェアを表したものです。国内では系列に属さない強みが表れています。海外では特定顧客の比率が高い面もありますが、すべてのお客さまの現地調達化ニーズに応えています。

2-14. カーボンニュートラルに向けての活動状況について

当社のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みについてです。「NITTANカーボンニュートラル(NCN)」というグローバル方針を制定し、海外子会社も含めて愚直に展開しています。

主な取り組み内容は、再エネ活用と省エネ活動の展開です。年度ごとのCO2排出量削減目標値は、スライド左側のグラフのとおり定めています。2024年度の削減実績は29.8パーセントであり、目標をクリアしています。

2-15. カーボンニュートラル達成に向けた取り組み

主な取り組み内容である再エネ活用では、太陽光発電を積極的に推進しています。気候的にも恵まれているタイでは、使用電力の約3割を太陽光発電で補っています。少々遅れ気味の日本でも挽回を図っていきます。

2-16. 地域貢献活動『第32回NITTANピーナッツカップ』

当社の地域貢献活動の事例をご紹介します。2025年2月15日、16日に、当社がネーミングライツを取得している「NITTANパークおおね」にて、少年サッカー大会「第32回NITTANピーナッツカップ」を開催しました。スライドの写真は、当日の模様です。全16チームが参加して、熾烈な競技を繰り広げました。小学生ながらも本当にサッカーがうまかったと好評でした。

ちなみになぜ「NITTANピーナッツカップ」なのかと言うと、秦野がピーナッツの生産地でもあるからで、郷土愛から決めた大会名です。

3-1. 当社グループのパーパスについて

:第3部「中長期経営ビジョン」についてご説明する前に、NITTANグループのパーパスについてお伝えします。

私たちは「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」をパーパスに掲げています。このように決めた理由は、ICE部品メーカーであっても、さまざまな持ち前の技術を駆使することで、モビリティ業界のカーボンニュートラル実現に貢献できるものと確信しているためです。

3-2. “NITTAN Challenge 10”

当社の中長期経営ビジョン「NC10」についてです。スライドに記載の4つの柱をもって進めています。

VISION Ⅰは、既存ICE部品の付加価値をより高め、事業の拡大を目指すものです。VISION Ⅱは、電動化領域および異業種への積極的なアプローチで、新たな事業を開拓することです。そしてVISION Xは、「愉快な開発」をテーマに、従業員の自由な発想からユニークな製品の開発を目指すものです。現在はSDGs関連アイテムやゴルフパターの開発を進めています。

「NC10」では、スライド上段に示したように明確な数値目標を掲げています。売上高1,000億円以上、営業利益100億円以上、営業利益率10パーセント以上と、すべて10の倍数であることから「NC10」と呼んでいます。

なお、今回のM&Aにより完全子会社化したNITTAN恵那金属は、VISION Ⅱの成長事業と位置付けています。

3-3. 主要自動車市場の規制動向

「NC10」を進める上で、自動車業界の規制や販売動向を熟知しておく必要がありますので、そちらについてご説明します。世界におけるICEの販売規制や排気ガス規制の状況は、スライドのとおりです。

2035年からICEの販売を禁止する規制が多い中、北米ではTier4排気ガス規制の緩和もあり、各自動車メーカーはその規制をクリアするICEの開発に力を注いでいる状況です。また、米国カリフォルニア州、イギリスを含む欧州、中国では、2035年以降の販売規制においてプラグインハイブリッド(PHEV)の販売を認める方向で規制の修正がされています。

3-4. 自動車メーカー 電動化の動向

こちらのスライドは、各自動車メーカーの電動化戦略を表した図です。バッテリーEV(BEV)の販売鈍化に伴い、ハイブリッド(HEV)やPHEVの数を増やす戦略に変更されているように見えます。

3-5. 世の中のSDV動向

全世界的に見ても、BEVの販売は一服感を否めません。その反面、中国が主導しているソフトウェア定義型車両(SDV)はその勢いを増しています。そして、おそらくはこれが新たな競争の軸になるものと予測しています。

今後、SDVによる今までの車とはまったく違う次元の価値を提供する車が注目を浴びると思われます。SDVにおいては、エンジンなのかモーターなのかといったパワートレインの多様性が維持される見込みであり、ICEには有利な市場動向とも言えます。

3-6. 乗用車 パワートレイン予測 -2020〜2040-

乗用車向けパワートレインの長期予測です。変動が激しく、現時点で正確に予測することは困難な状況とも言えます。将来的にBEVが主流になることには変わりないと思いますが、当面はICEの割合が維持される見込みです。

3-7. 商用車 パワートレイン別販売予測 -2020〜2040-

商用車向けパワートレインの長期予測です。大型商用車はICEが主流であり、小型商用車で電動化が進む見込みです。

3-8. 自動2輪 パワートレイン予測 -2020〜2040-

自動2輪車向けパワートレインの長期予測です。スクーター系は街乗りがメインのため電動化が進むと予測されていますが、趣味の世界であるスポーツ系バイクはICEが一定量残ると予測しています。

3-9. 船舶 パワートレイン燃料予測 -2020〜2040-

船舶向けパワートレインの長期予測です。電動化の動きよりは温室効果ガス(GHG)フリーの対応技術がメインになると予測されています。

3-10. パワートレイン動向予測 まとめ

こちらのスライドは、すべてのパワートレインに関する2040年の予測をまとめたグラフです。業界によっては依然としてICEがメインになる予測もあります。そこで当社は、中長期経営ビジョン「NC10」達成のための開発を通じて、ICEとBEVの両方のニーズにしっかりと応えていきます。

3-11. NC10開発のターゲットアイテム

「NC10」達成のための開発のターゲットアイテムは、スライドのとおりです。VISION Ⅰでは、底面鏡面化バルブやハイパー中空バルブを開発していきます。これらはICEの燃費改善に役立つアイテムです。また、舶用中空バルブやGHGフリー対応バルブは、ICEが最も長く残るであろう船舶業界のために、積極的に開発に取り組んでいきます。

VISION Ⅱでは、電動化向けのヘリカルギアや減速機、燃料電池用のローター、そしてまったくの異業種である設備用精密空圧部品などの開発を進め、達成を目指します。

3-12. VISION I(ICE有効活用領域)の開発状況

VISION Ⅰアイテムの開発状況です。ハイパー中空バルブは温度低減効果が認められており、北米での燃費規制Tier4に対応するために必要不可欠なものとなっています。そのため、多くのお客さまから引き合いをいただいています。

また、舶用中空バルブとGHGフリー対応バルブは2025年以降の量産化を目指し、お客さまと共同開発を進めています。

3-13. VISION II(xEV・異業種領域)の開発状況

VISION Ⅱアイテムの開発状況です。設備用部品は昨年から量産を開始しており、受注品目が増えて増産傾向にあります。また、これらの部品は海外子会社での生産にもトライしており、グローバルでの展開も計画しています。

燃料電池(FC)用電動過給部品は新規顧客からの引き合いもいただいており、さらなる増加が予想されます。

3-14. 電動自転車向け減速機(Nixtroid)について

電動アシスト自転車向けの減速機「Nixtroid」についてご説明します。これは、VISION Ⅱアイテムの中でも目玉商品と言える製品です。

トロコイドタイプの減速機を、NITTAN独自のアイデアで改良した製品で、その由来から「Nixtroid」と名付けました。コンパクトで高トルク仕様の開発を目指しています。

現在はモーターとの組み合わせによるドライブユニットの開発段階まで進んでいます。1日でも早く量産化できるように、開発のスピードを上げていきます。

3-15. AGV向け減速機(Nixtroid)について

「Nixtroid」は電動アシスト自転車だけではなく、電動自動二輪や小型モビリティ、無人搬送車(AGV)など多様な市場でのニーズが予想されています。

そこで日本トムソン株式会社とタッグを組んで、ユニークな機構のAGVを共同開発し、「機械要素技術展」に出展しました。このように新しい発想でイノベーションを起こし、次の製品につないでいきます。先日も具体的な商品化を議論したばかりです。

3-16. 電動過給部品について

電動過給部品は、FCやPHEV、HEV市場での需要が増えているアイテムです。当社のコア技術とNITTAN恵那金属が保有する技術のシナジー効果によって、より高精度な回転ローターとその軸受けをお客さまにお届けできるよう努めていきます。

3-17. NC10目標の現在値(24年9月基準)

「NC10」の目標値に対する現在の実績値についてご説明します。今のところ、単純に積み上げるだけでは売上高目標の1,000億円には届かない状況で、NITTAN恵那金属のM&Aを含めても700億円弱となる予想です。そのため、引き続き新規製品の開発に力を注ぐとともに、新規M&Aの準備も進めていきます。

現在も金融機関や専門会社の協力を得ながら、国内外を問わずシナジー効果が期待できる対象企業の調査を続けています。また、「NC10」のVISION ⅠやVISION Ⅱの目玉商品となるハイパー中空バルブや舶用中空バルブ、そして「Nixtroid」の量産環境を確実に立ち上げることで、売上高1,000億円の必達を目指していきます。

4-1. 2025年3月期通期業績見通し総括

村山:第4部「業績動向」についてご説明します。まずは2025年3月期の通期見通しです。

第2四半期決算の結果を踏まえ、10月30日に開示したとおり下方修正をしています。下半期については、想定どおり推移するものと見込んではいますが、上半期で予想値を下回った部分をカバーできるほどの回復は見込めないものと保守的に判断しました。

なお、通期見通しで使用している為替レートは2024年9月末時点のものです。よって、現在の円安が続けば業績にはプラス影響が見込まれます。

4-2. 中期経営計画

中期経営計画についてです。2026年3月期以降は、NITTAN恵那金属のM&Aによる効果を踏まえ、目標値の更新を行っています。その後も堅調な売上高を予測するものの、2027年3月期の目標においては、主要顧客の見直し計画が未だ反映されていない保守的な内容になっています。

ただし、過去にないスピードでグローバル拠点において事業変化が発生しています。その中で既存事業の収益性や投資効率の改善が見られるため、日本国内および北米の安定化を図り、ROEは8パーセントを目指していきます。

また、既存事業の安定的な営業利益を「NC10」への投資に回し、収益性および投資効率を高めることでPBRの改善にも努めます。中期経営計画における「NC10」アイテムが占める割合は18パーセントですが、さらなる新規商品の開発と新たなM&Aを検討していきます。

4-3. 連結売上高および連結営業利益の推移

スライドのグラフは、連結売上高および営業利益の推移を2021年度から表したものです。新型コロナウイルスのパンデミックや半導体不足から徐々に脱却し、市場の回復を見込んではいますが、主要顧客のICE生産計画に不透明感があるため、2026年以降は保守的な計画となっています。

そこで当社としてはさらなる成長を目指し、「NC10」活動により力を注いでいきます。

4-4. 今後の経営改革について

今後の経営改革についてです。先ほど李からお伝えしたとおり、当社は2月1日付で組織改革を行いました。その目的は既存ビジネスの収益拡大であり、狙いは間接部門のスリム化と製造部門の競争力強化です。

また、「NC10」開発のスピードアップのために部門集約を行い、新規事業では資本コストを上回るリターンを生み出すことで企業価値の向上を進め、長期的な視点に立って持続可能な経営を実現していきます。

さらに、株主さまへの開示や対話を充実させるため、経営企画部にIR戦略グループを設置しました。経営資源の適切な配分に対しても、投資効率の強化、政策保有株式の見直し、配当性向からDOE指標への転換を進めていきます。

5-1. 配当金の推移

:第5部「株主還元」についてご説明します。配当はすでに発表しているとおり、中間6円、期末6円の計12円を予定しています。繰り返しになりますが、株主還元の強化は最重要経営課題と捉えており、投資とのバランスをしっかりと見極めながら、安定配当の継続と総還元性向の向上を検討していきます。

5-2. 株主優待制度の導入

冒頭でお伝えしましたが、当社は長期的な投資に魅力を感じていただくために、株主優待制度の導入を実施しました。今年も株主のみなさまから信頼され、ともに成長できる企業を目指していきますので、ご指導のほどよろしくお願いします。

本日のご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。