会社概要
中嶋汰朗氏(以下、中嶋):みなさま、ご多忙の中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。株式会社ROXX代表取締役、中嶋汰朗です。さっそくですが、当社の事業内容から簡単に説明いたします。さっそくの不手際で、印刷がちょっと逆になっていて、大変見にくいかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。
株式会社ROXXは私が大学3年の時に立ち上げた会社で、現在、設立から11年目です。個人的には、もともとミュージシャンを目指してバンドマンをやっていたのですが、周りが売れてくる中、私は取り残されてしまいました。そこから大学の講義をきっかけに、いろいろな起業家の方のお話をうかがう機会があり、始めた会社となっています。
最初は身近な同級生の就職先を探すというところから、このHR(人材)の領域に入り、そこから10年ちょっと、同じ領域でやり続けている会社です。
事業概要
資料の7ページ目になりますが、あらためて、当社のやっている事業をお伝えできればと思います。我々は「ノンデスクワーカー」と呼んでいますが、いわゆる現場のお仕事をされている方々で、非正規の方、ならびに所得で主に年収200万円台の方々にご登録いただいています。採用側は、建設・工場・飲食・介護・物流といった、とにかく人手が必要な企業とのマッチングというところで現在、大きく伸びています。
みなさまも直近だと、例えばタイミーさんなど、比較的低所得な方々に向けた領域というところで、多少関連する部分はありますが、当社の場合、正社員に限ったところでこういったマッチングをやっています。
ROXX at a Glance
8ページ目になりますが、売上成長率に関しては、直近で2期連続70パーセント成長というペースで大きく成長してきています。
一般的な人材会社さんだと、基本的に手数料が中心となる売上構成ですが、当社の場合は6割近くが、いわゆる月額の課金、ストック型のビジネスモデルとなっています。後ほど、事業については細かくお知らせいたします。
社会課題1
11ページ目ですね。みなさまも、労働人口が今後どんどん減少しているということはご存じかと思いますが、2040年に1,000万人以上が足りなくなると言われています。
そのうちの大半が、いわゆる工場であったり販売であったり、物流、建設、介護と、とにかく現場のお仕事。どちらかというと我々の生活を支えているような、そういったところで50万人から100万人近く足りなくなると言われています。荷物が即日届かなくなったり、介護が行き届かなかったり、そういった実生活に影響するところでの人手不足と考えられています。
社会課題2
12ページ目です。今、日本で働いている方々のおよそ半数は、年収が400万円未満という状況です。労働人口の3分の2が非大卒、そして4割が非正規という状況です。
これまでも、キャリアがある方、大学を出てしっかり働く中で、専門性を身につけてキャリアアップをしていく方々に向けた転職サービスはたくさんあったのですが、いわゆるこれからスキルをつけていきたいとか、これから初めて正社員になろうとする方々に向けたところは、実は今まであまり多くありませんでした。
そういったところに注目してから、当社は今、大きく伸びています。
「Zキャリア」の概要
それが「Zキャリア」という、下のページのサービスです。
14ページ目ですね。当社の場合、2つのマッチングの方法があります。1点目は、当社が直接企業を集めて求職者をご紹介していく、という紹介方法です。もう1点は、外部のエージェントとして400社ほどの人材会社さんをパートナーとして囲っていて、こういったいろいろな会社からまとめて人を集める方法です。こういったところが特徴となっています。
採用している企業さんも、「正直、どこからでも人が来てくれればいい」というところで、この「Zキャリア」1本でたくさんのところから人を集められるので、多くご活用いただいています。
メインターゲットとなる求職者の属性
17ページ目ですね。求職者について簡単にご説明いたします。現在、約36万人にご登録いただいており、その大半が年収200万円台です。20代の方々を中心にご利用いただいています。スライドの左上の部分ですね。
希望職種としては、「特にやりたいことがない」という方がおよそ半分を占めています。一定のキャリアがある方だと、「今やっている職種をベースに次の仕事を探す」というのが一般的かと思いますが、やはり「今やっている仕事をとにかく辞めたい」「とはいえ正社員にはなりたい」という方々が大半なので、自分で何かを探すということができない方々が非常に多いです。
それから、パソコンを持っている方が今3分の1程度を占めています。パソコンを持っていないというケースは、仕事をされているとあまりないとは思いますが、例えばこういったところで、履歴書や職務経歴書を作る部分でつまずいている人。やりたいことが見つからず、書類も作れないという、転職活動の序盤でつまずいている方が多いというところが1点、特徴としてあります。
求人企業
19ページ目ですが、当社の場合は、いわゆる建築、販売、接客、事務、法人営業など、業界として幅広いところに今、マッチングができている状況です。
求人企業の特徴
20ページ目になりますが、当社は、いわゆる大企業とのマッチングに特化をしています。一般的な転職、いわゆる中途採用だと、1つのポジションにあたり、せいぜい採用する人数は数名ですね。営業を毎年200人、300人採る会社も多くはありません。
当社の場合、全国で学歴・職歴を問わず、かつ正社員で、毎年何百、何千人の募集をしているような企業さまを中心に掲載をいただいています。
具体的に言うと、例えばソフトバンクの携帯販売。みなさまの各駅にソフトバンクショップがあると思いますが、ああいったところの採用でご活用いただいています。
求職者は、正社員になってキャリアをしっかり身につけていきたい。企業は、人手不足の中で学歴・職歴を問わずに人手をしっかり確保したい。こういったニーズのマッチングのところで、現在は大きく伸びています。まずは事業全体の概要をご説明しました。
「back check」の事業概要
続いて、資料29ページ目まで飛びます。もう1点、「back check」という事業がございます。こちらはまた別のサービスになりますが、いわゆるコンプライアンスチェックならびにリファレンスチェックと呼ばれる、採用の際のリスクを軽減させるためのツールも提供しています。
例えば犯罪歴、裁判歴、破産歴など、そういったコンプライアンス面のチェックとか、あるいは一緒に働いてきた方々に、簡単なインタビューをWebでやらせていただいて、「どんな働きぶりだったか?」とか、そういったところを聞くサービスです。
雇用の流動性が上がって人手不足な中で、やはり「なるべく人を採りたいんだけれども、とはいえ採用のリスクも抑えたい」というニーズに応えるようなかたちで、こちらの「back check」の提供をしています。
ノンデスクワーカー市場の成長性
32ページ目の部分になりますが、実はホワイトカラーとして働いている方の4倍程度、現場でお仕事をされているサービス業の方、ブルーカラーの方はいらっしゃいます。そういった意味でも市場規模は非常に大きいです。
毎年6パーセントくらいの方が転職されているのですが、そこに当社の単価を掛け合わせることで、6,500億円程度の市場は見込めると考えています。
参入障壁
33ページ目ですね。いわゆる競合他社との差別化です。転職サービスはすでにいろいろあります。年収が高い方に向けたサービス、例えばビズリーチさんとか、当社の株主のパーソルさんとかは、一般的にはキャリアがある方に向けた転職サービスというところで、しっかり展開をされています。
一方、直近の話題はやはりスキマバイトの領域ですね。「非正規」×「スポット」。こういったところが今後バッティングしてくる可能性についてのご質問は、この上場プロセスで、非常にたくさんいただきました。
やはりハイクラス向けにやっているサービスは、どうしても年収が高い方に向けた求人情報であり、コンテンツであり、サービスの設計というのがなされています。
これから初めて正社員になろうという方に求められている情報とはまったく違っていたり、そもそもそういった方は、どうしても人材大手からすると単価が安くなってしまうという問題があります。そういった関係で、今回、株主になっていただいているパーソルさん、マイナビさんとは線引きがなされています。
スキマバイトの領域と大きく違うのは、基本的には個人に向けたサポートの体制かなと思っています。当社の場合、「履歴書を書けない」「やりたいことがわからない」という課題に対して、一定のサポートをさせていただきながら、就職先を見つけていくということをやっているので、どちらかというと、個人向けにサービス提供をする中で間に入りながらサポートをしていくというところに介在価値があると思っています。そういったところが、同じ年収帯でも構造としてはだいぶ異なっています。
正規雇用・非正規雇用の違い
35ページ目ですね。実は、こういった学歴・職歴を一切求めない求人も、この5年で3倍くらい増えています。みなさん、やはり人手が採れないので、採れない分、ハードルを下げています。例えば最近も、日本交通さんはタクシー運転手の募集年齢を61歳から71歳まで引き上げました。
つまり、もう応募が来ないので、よりターゲットを増やして人手を確保しようという動きが、いろいろなところで増えてきています。
「大卒が来ないから学歴不問にしよう」とか「年齢もより広く、働き方もより多様に」と、こういったものはすべて、採用ができないというところから派生してきています。今後も、人手不足が深刻になる中で、当社の未経験、経験・学歴を問わない求人は、まだまだ増えてくると見ています。
資料の右側にあるのが、まさにアルバイトと正社員の違いですが、例えば建築業界だと、アルバイトで来た方が業務をやるのはなかなか難しいわけです。やはりどうしても正社員じゃなきゃいけないとか、ドライバーの方も免許がないと当然、大型トラックは運転できないわけです。そういったところに関しては、アルバイトではまかなえない。やはりどうしても、正社員が必要な業界とアルバイト中心の業界は異なってきます。そういった中では、当社の正社員という領域に関しても、まだまだ今後伸びる余地はあると考えています。
成長戦略
最後に成長戦略について簡単にお知らせをできればと思います。
39ページ目をご覧ください。企業さまの採用枠はすでに多分に確保ができています。人がいてももっと採用したいというニーズはすでにあるので、求職者をいかに集めていくかというところが今後当社が成長していく上で非常に重要なドライバーとなると考えています。
来期、当社はテレビCMをやるというところ、マス広告ですね。こちらもすでに準備をしています。具体的には、年明けを開始時期と見込んでいますが、「正社員になるならZキャリア」という認知を世の中に大きく作っていくことで、求職者のご登録を増やしていく。登録さえ増やせば、先ほど申し上げたように企業側のニーズはすでに強くあるので、大きな成長につながっていくと考えています。
AIを2つの文脈で活用
あとは選考のプロセスをいかにAIを使って効率化をしていくかというところに新たな投資をしているというところです。
40ページ目ですね。当社は、AIを2つの文脈で活用しています。資料の左側がスカウトですね。これは中途採用ではもう一般的になりましたが、実は低年収領域におけるスカウトサービスはまだありません。
そういった中で、求職者が登録さえすれば、企業から直接スカウトを受け取れる。ただ、企業の方もわざわざそのスカウトを作るのは非常に大変です。文面を作ってスカウトを送るという一連の業務をすべてAIで自動で完結するようなものや、物理的な面接を、スマホでAIとしゃべるだけで終わらせるという体験の提供をすでに開始しています。
AIだけで判断されちゃうの? と考える方が一般的には多いと思いますが、当社の領域だと、なるべく人と話したくないとか、面接は緊張するという方が非常に多いんですね。あと、現場のお仕事の場合、やはり仕事を休まないと面接に行けないなど、そういったところからも物理的な選考はものすごく高いハードルがあると考えています。
企業さんも、年間2,000人採る会社さんだと8,000回ぐらい面接をやっているんですよね。その日程調整には半端じゃないコストがかかっています。これをAIとの面接に置き換えることで効率化、ならびに決定率、選考そのものも通りやすくなるというデータも得られてきています。
これも収益化はこれからというタイミングです。ひとまず集客を強化していく。AIを活用した選考の効率化と、こういったものを今後展開することで、今足元はまだ赤字ですが、早期に売上100億円、そして営業利益率20パーセントの水準を目指していくことを掲げて、今回発表いたしました。
求職者、未経験を採っている企業さまへの認知を作り、そして世の中的に実はこういった領域がまだまだ空いてるという部分も、当社のIPOを通じてみなさまにお伝えできればと考えています。
よろしければ、みなさまからのご質問にもお答えしながら、補足もできればと考えています。
質疑応答:キャリアアドバイザーにおける育成戦略について
質問者1:3問うかがいたいと思います。キャリアアドバイザーは何度もオペレーションを行っているということですが、何か独自の育成戦略とか、そういったシステムがあるのかどうかをうかがえればと思います。
中嶋:当社の場合は、いわゆるキャリアアドバイザーという、求職者の転職相談に乗る人員が大きく増えているというのが一番ですが、実はここが1つポイントで、いわゆるキャリアがある方に向けた転職支援だと、一定のその業界の知識や何らか専門性がないと、みなさんも相談しようとは思えないわけです。
一方、当社の場合、そもそも正社員になるメリットであったり、その仕事のいい部分、悪い部分を伝えるというところが非常に大事になってくるわけですね。
業界ごとの専門性というよりは、これから正社員になろうという方々に向けたデータがあるので、当社の場合は、ある意味、新卒で入社した方も中途と同じぐらいにキャリアアドバイザーとしてのパフォーマンスが出せてきています。どういう方が来た時にどういうふうにご支援をすれば最も転職しやすくなるかというデータがあり、実績をもとにしてすべてパターン化されてきています。
質疑応答:ダイレクトリクルーティングにおける効果について
質問者1:わかりました。2問目です。今後の成長戦略として、ダイレクトリクルーティングを活かしていこうということだと思いますが、事業の中の位置付けや、どういった効果が得られるのかをうかがえればと思います。
中嶋:今後はマッチングを大きく伸ばすことで売上成長させていくというのが主な戦略の柱になっていますが、どうしても現在は、人が間に入ってご支援をしているので、当社の人数とともに制約も増えている状況です。
一方、スカウトサービスは、人を介在せずに、企業からのスカウトによって求職者が応募して選考が進んでいきます。いわゆる人が間に入らないで伸びていくというところは今、足元で制約が徐々に出始めてきているのですが、ここは、プロダクトのアップデートによって成約率が上がってきます。
なので、今後の売上計画は、当社の人員の増加とともに比例するかたちで引いていますが、スカウトサービスによる制約が増えてくれば、計画は上ブレするようなかたちで売上利益に直結してきます。
今、足元は赤字ですが、いわゆる間の人件費がなくなることで、1件当たりの収益性もより上がってくると見込んでいます。
質疑応答:高年収帯向けにサービスを提供する可能性について
質問者1:わかりました。事業が大きく成長して来る中で、仮に高年収帯とか、ほかがやっているところに進出していく可能性はあるのでしょうか。
中嶋:現状は、ターゲットの年収を上に拡大させるというのは正直まったく考えていません。当社の場合、やはり所得を上げるというところを今この事業、この会社をやる理由の1つとして僕も捉えています。
やはり仕事に困っている方の中には、生活そのものに困っている方が非常に多いんですね。例えば当社の場合、交通費がなくて面接に行けないとか、内定をもらったんだけど健康診断を受けるお金がないから辞退しますとか、最初の給料日までお金がもたないですとか、実は転職先が決まっていたけど行けないみたいなケースが本当にあるんですね。
そういう方々が、少し余裕を持てるようにするというところを目指しています。後半のスライドにも簡単な記載があるのですが、例えば39ページ目に、アイフルさんとの提携というのを書いています。これはお金を借りてくださいというわけではなく、逆に今お金借りてる方に、転職して給料上げませんかという取り組みをしています。
いわゆるお金に関する問題だったり住む場所に関する問題だったり、そういった生活水準を上げるような取り組みなど、そういった横の展開を中心に広げていきたいと考えています。
質疑応答:初値が公開価格を下回ったことについて
質問者2:公開価格を下回る初値になりましたが、そこについてどのように考えられていますか?
中嶋:そうですね。非常に残念というか、我々がまだ力不足だったと考えて受け止めています。一時的には公募価格を少し上回るかたちで推移をしていたかとは思いますが、まだまだ成長プロセスというところ、かつ赤字というところに関しては、非常に厳しく受け止められるということを、あらためて今回我々としても非常に深く理解することができたと捉えています。
当社の場合は、「正社員になるならZキャリア」。こういった領域をまずしっかり取ることで、今後5年、10年大きな成長が本当にできると考えているので、しばらくまだ赤字が継続する可能性もあります。
なるべく多くの情報や進捗をみなさまにしっかりお伝えをする中でこの領域をやることで、日本全体の活性化にもつながると考えています。真摯に受け止めて、今後もしっかり対話を重ねていきたいと考えています。
質疑応答:ノンデスクワーカー市場の未来について
質問者2:ノンデスクワーカーの市場が今後どのようになっていくのか、あらためて教えてください。
中嶋:スライドで申し上げると32ページですね。今後人手不足がどんどん深刻になっていくというのを冒頭でご説明しましたが、ここから異常なスピードで人が足りなくなっていきます。
そこにAIをどう活用するかみたいなお話もありますが、やはり現場のお仕事は、どうしても人と接したり物を運んだりと、完全に機械だけで自動化できるものではなかったりします。
そういった中で、今でさえホワイトカラーの4倍の人口がいて、そのうち6パーセントの方が実際毎年転職をされている。この人数、この割合自体も大きく上がってくる。
一方で、やはり人が採れないと、よりよい求人が増えてくるというのも実際に問題としてあります。つまり今までよりもいい条件を出すことで人手を確保しようという企業が増えてくることによって、前より転職活動する方の割合は増えていく。
これから正社員になる、なろうかなと思った時にすぐに使えるサービスとして、当社の認知をしっかり作っていくのと、さらに人手不足が深刻になっていくところで市場自体も今後拡大をしていき、当社の認知が上がっていく。この2つによって、まだまだ大きく成長できると考えています。
質疑応答:黒字化の展望について
質問者3:今後の展望について、営業利益率20パーセントを目指すということですが、どういう状況になったら黒字化になるのか、もう少し詳しく教えてください。
中嶋:先ほど、マス広告をやりますというところを成長戦略としてお話ししましたが、実はこの大きなマス広告、いわゆる認知のための広告を除けば、すでに黒字化できている状況になっていて、足元の第4四半期に関しては、実際に黒字化を業績予想として出しています。
しっかりと人員の増加、並びに構造の改善が進んできているので、来期にかけては、基本的には黒字化できていますが、一方で、それ以上に認知に対して広告費をかけていくというところで、極めてコントローラブルな赤字になってきている状況です。
したがって認知の部分ですね。当社が毎月必要とする求職者の獲得に対する広告費を別途取った上で、黒字化できている。それ以上に、単に「正社員になるならZキャリア」という認知を作るための、純粋なマス広告の広告費という部分を入れてしまうと、来期はまだ若干の赤字が残るかなというところではありますが、先ほどのダイレクトであったり、AI面接だったり、そもそもCMの効果も、現状は計画にはほとんど入れずに進めています。こういった効果がしっかり出てくれば、より前倒しでの黒字化、そして営業利益率の改善も見込めると考えています。
質疑応答:これからの競争であり得るシナリオや時期について
質問者4:すでに一定の競争優位性を築いたこと、競合があまりないという説明がありましたが、あらためて、これだけ人材プラットフォームの会社がある中でなぜここまで築けたのかと、これからの競争であり得るシナリオや時期など、もしお考えがありましたら教えてください。
中嶋:少し人材業界全体の話にはなってしまいますが、やはり人材紹介業は、キャリアがある、ある程度年収の高い方をマッチングして、高い手数料を取っていくというところからそもそも始まっています。
当社の領域って求人広告の世界なんですね。みなさんご存じのとおり、リクナビ転職、マイナビ転職とか、いわゆる求人媒体です。自分で探すようなものはありました。
ただこれもこの10年で、業界構造が大きく変わりました。やはりindeedの登場以降、各媒体の集客力は、みなさん年々弱まってきているんですね。つまり検索の上位をindeedに全部取られてしまった。それまでのように求人広告が売れなくなる、かつ人口も減ってきて、媒体に出しても人が採れない。
そういった世の中の変化、市場環境の変化から、当社のように成果報酬型かつ、低年収領域というところが、ここ数年で大きく出てきたと考えています。そこに人手不足が相まってきているというところです。
じゃあ低年収領域にみんなが入ってくるかというと、先ほどあったように、ハイクラスとまったく同じオペレーションをすれば転職が決まるわけではないんですね。やはり求職者の課題もまったく違います。企業側のニーズも、ハイクラスをたくさん採る会社と、当社のノンデスクワーカーのお客さんはまったく構造が違います。企業の業態も違う、お客さまもそもそも違うというところで、大手の参入は現状はまだ大きくはない状況です。
パーソルさんも過去何度かは参入を試みているのですが、毎回うまくいかずに終わっているんですね。ハイクラスと同じようにできるかと思うと、実は求職者のニーズがまったく違って、横展開ができないゆえに新しく立ち上げなきゃいけないという必要性が出てくる感じです。
質疑応答:タイミー社の決算について
質問者5:最近、タイミーの決算がありました。予想よりちょっと成長率に陰りがあったという見方もありますが、それをどう見ていますか?
中嶋:スキマバイトの領域は手数料商売で、競争においては手数料の比較が極めて大きいと考えています。スキマバイトの領域は、今日働きたい場所で働きたい時間に仕事があるかどうかがすごく大事になってきますね。今日は6時から空いているから、6時から行ける場所に仕事があるというのがすごく大事になります。
案件の数がたくさんあるほうが勝ちますし、手数料をなくしたほうが案件が集まるので、後続勢はそういったかたちで今、どんどん参入してきています。まさにディップさんも新たに入ってきています。
すごく競争が激しくなっていますが、当社の場合、一定程度どうしても労働集約性というのがあります。つまり人と企業を増やしただけ勝手にマッチングするかというと、求職者の多くは「やりたいことがわからない」というところからスタートするので、面接の仕方など、ある程度サポートしないとマッチングしない、というところがあるんですね。
タイミーほどの急激な成長はできずとも、逆に言うと競合が入ってきた時に、そのオペレーションの細かい部分までそっくりそのままできるかというと、当社の領域はそうではありません。どちらかというと、タイミーはプラットフォーム、かつWebのサービスという側面があります。そこは似たようなターゲットであっても、サービスの構造が大きく違うところです。
誤解を恐れずに言うと、当社のメインクライアントの方々は、一般的に少し不人気の業界なんですよね。建築、ドライバー、飲食店など、みんながみんな応募して、そこで働きたいと思っているかというと、「ちょっとブラックな感じがするな」とか「やはり体力仕事なんじゃないか」とか、いろいろな懸念が持たれてる業界が基本的にはすごく多いです。
ただ実態としては、当然企業もそういった部分の懸念をなくすためにいろいろな努力をしていますし、実はいい会社はたくさんあるわけです。「だったら応募してもいいかな」という動機を形成する部分は、やはり間に人が入って直接伝えているからできている部分だと考えています。
質疑応答:成約単価の上昇について
質問者6:KPIについてですが、成約単価の上昇という部分に関して、どういった指標やどういった外部要因を見て判断されているのかを教えてください。
中嶋:成約単価のところですね。こちらも毎年、少しずつ大きくなってきています。今、足元は約60万円弱となっていて、2年前と比べるとだいたい10万円程度上がってきてるんですね。
1つ要因としては、人手をなるべく多く確保しようと、他社よりもちょっと高い成功報酬を設定するというところがあります。例えば携帯販売で言うと、大手通信会社、A社、B社、C社があります。業務内容も比較的近い時に、結局「他社が50万円だったら、うちは60万円にしよう」と。当社のみならず、400社の方が常に求人を見て「どこに人を紹介しようかな」と、案件を探しているわけですね。
エージェントからすると、やはりちょっとでも高いほうに紹介をしたほうが、売上が伸びるわけです。そういった中で、同業他社との競争環境ができて、求人の単価が徐々に上がってきているというところはあります。
また、人手不足の深刻化という意味では、例えば飲食店は、コロナの前はだいたい正社員を30万円ぐらいで募集するのが平均でした。今は100万円近くまで上がってきていますね。やはり採れないからこそ高くしようと。採用ができないから単価を上げてでも採ろうというのが結果的に当社の単価向上にもつながってきていると考えています。
質疑応答:事業における季節性について
質問者6:ありがとうございます。あと、売上の推移についてですが、年間の中の季節性はあるのでしょうか?
中嶋:当社の場合は、第3四半期、いわゆる4月5月6月に若干上がりやすくなる傾向があります。これはやはり、4月に入社しようということですね。年明けに転職活動をして、1月2月に内定をもらった方もキリよく4月に入社ということが多いため、第3四半期のみ若干高くなりやすい傾向があります。それ以外はあまり関係なく、推移しているという状況です。
今後の展望とサポートの継続に向けた決意
中嶋:ほかはいかがでしょうか? バンドをやってた時とか、僕自身もそうだったんですが、20代は好きなことをしつつ、自由度高く働ける仕事を選んでいました。バイト、派遣。それこそUberEatsとか、Amazonのドライバーとか、今は手軽に働けるものがいっぱいあります。そういったものを組み合わせれば、実は20万円ぐらいであれば作れるんですよね。
「遊びたい時は遊べるし、責任なくて楽でいいじゃん」と思って、そっちを選ぶ気持ちも僕はすごくわかるんです。ただ一方で、僕も今年で32歳になりました。周りもみんな結婚したり、さすがにバンドを続けていく人間も減ってきました。そういった中で、「どこかできちんと働かなきゃ」とか「彼女との結婚を考えたら働かなきゃ」とか、当社のユーザーにもすごく多いんですね。
自分1人の生活だったらバイトでもいいけど、やはり誰かと一緒にとか、家庭環境、周辺環境の変化によって「将来少し不安だから、安心したい」「でも何がやりたいのかというと、別に特にあるわけじゃない」「何が得意かと言われると、仕事をバリバリしたいとは思っていない」といった方々がすごく多いです。そういった方々と対話をして、かつプロダクトを通じていろいろな求人に出会っていただくことで、一部記載がありましたが、年収250万円の方が、転職後に300万円ちょっとになっている。50万円ぐらい上がっているんですね。
やはり月3万円4万円変わってくると、それだけで生活が少し変わってくる。手取り10万円台というところから、少し余裕が出てくる、そういった中で将来に向けたキャリアアップであったり、自分が好きなことをするでも、友だちと遊ぶでも、そういった余裕が生まれてきて、何かまた次につながっていけばいいなと思っています。
そういった意味では、僕はある意味、この方々に向けて、今後も10年20年やっていこうと思いますし、僕らもそういう時代があって今日ここにいるという意味では、まだまだこれからがんばらなきゃなと考えています。すみません、あまりうまくしゃべれなかった部分はあるのですが、引き続き応援いただければと思います。
何かその上でご不明な点はありますか? もし何かあれば、メールでもお電話でも大丈夫です。いつでも回答させていただければと思います。
今日はお忙しいところ、みなさんお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。