経営成績
池田孝資氏(以下、池田):本日はご多忙の中、当社決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。代表取締役社長の池田です。
本日は当社2024年3月期連結決算と中期経営計画「VENTURE-5」を踏まえた当期の取り組みについてご説明します。決算の概要については私から、数字の詳細については担当取締役の砂廣からご説明します。
なお、本日は当社および当社グループの概要、また当社のガバナンスやサステナビリティの状況については説明を割愛しますが、本説明会の資料にAppendixとして添付していますので、ぜひご一読ください。
まず、2024年3月期の経営成績についてご説明します。2024年3月期における我が国の経済は、人流の増加によりインバウンド需要は増加しており、雇用および所得環境の持ち直しなど、新型コロナウイルスの5類移行に伴って経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに回復しています。
しかし、円安の進行やウクライナ問題の長期化に起因する原材料価格やエネルギーコストの高止まりなどもあり、厳しい状況で推移しました。金利や為替相場といった金融資本市場の変動リスクや、中国経済の先行き懸念などによる景気減速への懸念もあり、依然として先行き不透明な状況が続いています。
また、記録的な猛暑が続き、西日本を中心に台風の影響等で天候不順があったものの、昨年11月から12月まで暖かい日が続いたことにより、清涼飲料市場ではスポーツ飲料やミネラルウォーターの販売が増加しました。
一方で、値上げに伴いコーヒー製品や無糖茶系飲料などの大型ペットボトル製品が低調に推移し、割安感の高いプライベートブランドが伸長するなどの動きがみられ、清涼飲料市場全体では前年並みの結果となりました。
このような状況の中、当社グループは中期経営計画「VENTURE-5」の2期目である2024年3月期の計画値必達に向け、さまざまな施策に取り組んできました。
その結果として売上高は909億円、前期比では2.9パーセント減となりますが、2023年3月期に実施した飲料缶事業廃止の影響による約53億円を除けば、前期比で3パーセントの増収となります。
営業利益については、価格転嫁が進捗したことや、原材料価格やエネルギーコストが高止まりの状況ではあるものの、想定を下回って推移したことや飲料缶事業廃止等の影響による減価償却費負担の軽減もあったことから43億円となりました。経常利益では前期比で15倍となる50億円を計上しています。
また、特別利益1億円に対して特別損失17億円を計上し、法人税等は5億円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は27億円となりました。
2024年3月期 主な実施施策
「VENTURE-5」の全社戦略に基づき、2024年3月期に決定・実施した主な施策をスライドの表にまとめています。
「人的資源の最適化」「国内事業の再編」「海外事業の拡大」「新規事業の開発」、それぞれの項目において慎重にかつスピード感を持って実施しています。このうち主な施策3件についてご説明します。
2024年3月期 主な実施施策
国内事業の中核となる日本キャンパックでは、自社倉庫の建設を進めています。この背景としては、充填済み製品の滞留日数が増加していることや、ペットボトルの薄肉化などにより、従来よりも保管の際の段積み制限が厳しい製品が増加していることなどを要因として、倉庫の必要坪数が増加していることが挙げられます。
このような理由により、日本キャンパックが所在する群馬地区では近隣倉庫の確保が困難となり、賃料が高騰しているほか、遠方の倉庫も利用せざるを得ない状況にあります。
そのため、外部倉庫費用や輸送費用の削減と、移送中に生じる温室効果ガスの排出量削減などを目的として、工場に隣接する土地に自社倉庫の建設を進めています。まずは倉庫不足の早期解消を目的に平屋倉庫の建設を先行して進めており、2025年1月の稼働開始を予定しています。
このほか、効率の向上を目的として自動倉庫を建設したいと考えており、現在検討を進めています。
2024年3月期 主な実施施策
国内事業の再編についてはもう1点あります。今年3月29日付で株式会社コスメサイエンスの株式を譲渡し、化粧品受託製造事業から撤退しました。
コスメサイエンス社はグループ事業とのシナジーが低く、営業利益も低迷していました。将来を見据えた事業ポートフォリオの見直しに取り組んできたところ、化粧品事業に関わるマーケティング戦略等に強みを持つ譲渡先より打診を受けました。
その後、慎重に協議を重ねた結果、譲渡先が経営権を持って成長戦略を推進することが、当社グループおよび譲渡会社の双方にとっても望ましいという結論に至りました。なお、譲渡価格については、譲渡先との契約により非開示としています。
2024年3月期 主な実施施策
海外事業については、インドネシアの市場拡大による既存顧客からの増産要求や、新たな引き合いの増加に対応するため、ホッカン・インドネシア社で清涼飲料の無菌充填ラインを増設することとしました。
2026年5月の稼働開始に向けて準備を進めており、現行の2ライン体制から3ライン体制に拡充することで、大手顧客の需要を取り込んでいきたいと考えています。
以上が、2024年3月期の決算および実施施策の概要となりますが、ここでもう1点ご説明します。今年4月11日に公表した、連結子会社である昭和製器株式会社の元社員による不正行為についてです。
今年5月10日にも公表したとおり、外部の弁護士や公認会計士を含む内部調査委員会による調査結果を踏まえ、不正行為による損害額として認定された約3億円の特別損失を計上しました。
調査報告書によれば、本件は当該元社員個人による不正行為であり、昭和製器株式会社の組織的関与や社内協力者の存在は窺われないという結論でした。しかし、事業規模が小さく、人材不足の中、経理知識の豊富な当該元社員への過度の信頼と権限の集中により、監督・決裁・監査の機能不全が生じていたという報告が上がっています。
当社としては、このような事件が発生することになり、株主のみなさまをはじめ、多数の方々にご心配とご迷惑をおかけしたことについて深く反省し、経理処理に関わる制度の見直しや監督体制の強化を柱とする再発防止策を着実に実行していきます。
それとともに、すべてのステークホルダーから信頼される企業集団であり続けるため、グループ一丸となって、内部統制およびコンプライアンス、コーポレートガバナンスの強化に努めていきます。
セグメント別売上高および営業損益
砂廣俊明氏(以下、砂廣):経理部および経営企画部を担当している砂廣です。セグメント別の売上高および営業損益についてご説明します。
容器事業の売上高は、前期比11.2パーセント減の316億円となりました。先ほど池田からお伝えしたとおり、2023年3月期末で飲料缶事業を廃止したことにより、売上高約53億円がなくなったことが要因です。
営業損益は、飲料缶事業の廃止により売上原価が大幅に減少し、16億円の営業利益となりました。
充填事業の売上高は、前期比1.6パーセント増の381億円となりました。エネルギーコストが2023年3月期に比べて落ち着いたことに加え、加工賃の値上げの影響により、営業利益は前期比76パーセント増の29億円となりました。
海外事業では、インドネシアの経済回復を受け、売上高は前期比10パーセント増の170億円、営業利益は前期比64.9パーセント増の12億円となりました。
機械製作事業を含むその他の売上高は、産業用機械等の大型案件の受注が減少したことにより、前期比17.7パーセント減の41億円となりました。しかし、価格転嫁の進捗等の影響を受け、3億円の営業利益を計上しました。
売上高の増減要因
売上高の増減要因です。容器事業では、売上高が前期比39億円減少しました。要因は先ほどからお伝えしているとおり、北海製罐での飲料缶事業の廃止によるものです。
このほか、食品缶詰用空缶やエアゾール缶が低調に推移したものの、飲料用PETボトルはリサイクル材を使用した小型プリフォームが好調に推移し、一部ブランドからの受注増などもあったことから前期比で増加しました。
充填事業では、売上高が前期比5億円増加しました。ホットパックライン廃止の影響を受け、小型PETボトル製品を除いて製品売上高は減少したものの、有償支給材の代金相当額等、収益認識会計基準調整の20億円により、最終的な売上高が増加しました。
海外事業では、インドネシア経済の成長に伴い、売上高が前期比で15億円増加しました。これらの結果として、2024年3月期の連結売上高は前期比で27億円減少し、909億円となりました。
売上高の推移
スライドのグラフは、過去3年間および2024年3月期における四半期ごとの売上高の推移を示したものです。
当社グループの主要事業である飲料充填や飲料容器製造は、例年、天候、特に気温の影響を受けて売上高が増減します。当社グループでは特に清涼飲料市場の割合が多いため、下期よりも上期のほうが売上規模が大きく、特に第2四半期に伸びる傾向にあります。
なお、2022年3月期の期首より収益認識会計基準等を適用しているため、それ以前とそのまま比較することはできませんが、参考としてグラフ中では2022年3月期からの売上高のうち、収益認識会計基準等の影響額を紺色で記しています。
営業損益の増減要因
スライドには、営業損益の主な増減要因を事業別に示しています。容器事業では前期比で29億円増加しました。北海製罐で売上高が37億円減少したものの、飲料缶事業の廃止に伴う原材料や電力・燃料費等の減少により、売上原価が60億円減少したこと等が主な要因です。
充填事業は前期比で12億円増加しました。日本キャンパックにおいて売上高が6億円増加したことに加え、電力量・燃料費が前期比で減少したことに伴い、売上原価が11億円減少したこと等が主な要因です。
海外事業では前期比で5億円増加しました。インドネシア所在の2社の合計で売上高が17億円増加した一方で、売上原価が10億円、販管費が1億円増加したこと等が主な要因です。
営業損益の推移
スライドのグラフは、過去3年間および2024年3月期における四半期ごとの営業損益の推移を示したものです。当社の連結営業損益は、夏季の清涼飲料需要の影響を大きく受け、上期に偏る傾向があります。
2024年3月期の状況としてはコスト高や円安は継続したものの、価格の適正化が進捗したことに加え、2023年3月期の飲料用空缶事業廃止および減損損失計上による減価償却費負担の軽減により、営業利益は大幅に改善しました。
連結貸借対照表
連結貸借対照表です。2024年3月末日時点での資産合計は1,340億円で、2023年3月末日から48億円増加しています。現金・預金の増加額26億円や、投資有価証券の増加額22億円が大きな要因となっています。
負債合計は731億円で、2023年3月末日から11億円減少しています。設備関係未払金の増加額5億円や借入金の増加額3億円等があったものの、未払金の減少額11億円や未払法人税等の減少額8億円等があったことによるものです。
純資産合計は608億円で、2023年3月末日から59億円増加しています。親会社株主に帰属する当期純利益27億円を計上したほか、その他有価証券評価差額金の増加額16億円、為替換算調整勘定の増加額12億円等があったことによるものです。
キャッシュ・フロー
2024年3月期の連結キャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが73億円の増加、投資活動によるキャッシュ・フローが38億円の減少、財務活動によるキャッシュ・フローが12億円の減少となりました。
この結果として、現金及び現金同等物は前期比で26億円増加し、2024年3月期末では128億円となりました。フリー・キャッシュ・フローは前期比で98億円減少し、35億円となっています。
設備投資
2024年3月期の連結設備投資についてご説明します。2024年3月期は総額52億円の設備投資を実施しました。
容器事業では空缶製造設備の更新等に22億円、充填事業ではペットボトル充填関連設備の取得等に10億円、海外事業では飲料用パッケージ製造設備の取得等に17億円の投資を行っています。減価償却費は63億円を計上しています。
2025年3月期通期には、容器事業では空缶製造設備の取得等に35億円、充填事業では自社倉庫の建設等に38億円、海外事業では清涼飲料用充填設備の取得等に42億円など、総額121億円の設備投資を予定しています。減価償却費は63億円となる見込みです。
2025年3月期 通期予想
2025年3月期の見通しについてご説明します。国内経済はインバウンド需要が活発化し、各種政策の効果もあり緩やかな回復が続くことが期待されます。
一方で、世界的な金融引き締めや中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが国内景気に影響を与えることが懸念されます。また、中東情勢や物価上昇、円安傾向の続く為替動向等、先行きは不透明な状況が続くものとみられます。
当社グループを取り巻く環境は、消費者物価の上昇による家計引き締めが懸念される状況下において、サプライチェーン全体の労務費等の上昇を受けた適正な価格変化等の対応が求められる難しい局面が続いています。
また、少子化の進行により人材確保がますます困難になる中、価値の創出に貢献できる多様な人材の確保・育成、気候変動への対応等、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが求められる、厳しい状況が続くものと思われます。
このような中で、当社グループでは人流の活発化に加え、猛暑・残暑が続き計画を大幅に上振れした2024年3月期の反動が想定されます。しかし、お客さまのニーズに速やかに対応できる体制を整えることで、売上の増加およびシェアの拡大を図り、連結売上高927億円の予想としています。
利益面では円安傾向が続き、物価上昇、輸送費の上昇やサプライチェーン全体の労務費の上昇が見込まれるほか、計画中の設備投資にかかる減価償却費の増加等を受け、前期比では減益を見込んでいます。
このような厳しい経営環境ではありますが、外部環境要因によるさらなるコスト増に対しては、適正に価格転嫁ができるように努めていきます。
それとともに、さらなる経費削減への取り組みなどにより収益を確保し、2025年3月期の計画値である営業利益35億円の達成を目指して取り組んでいきます。
またこれらを踏まえ、経常利益は38億円、親会社株主に帰属する当期純利益は19億円を見込んでいます。
中期経営計画について
池田:中期経営計画「VENTURE-5」の現状についてお伝えします。
当社グループは2022年5月に「VENTURE-5」を策定しました。しかし、その後の厳しい外部環境の変化や飲料缶事業の廃止など、計画の前提条件が大きく変化したことから、昨年5月にローリングを実施し、2023年度から2026年度までの計画を見直しました。
スライドの右側にローリング実施後のグループ連結経営指標を記載しています。2027年3月期の目標値として、営業利益61億円、営業利益率5パーセント超、DEレシオは0.6倍以下、ROEは6.5パーセントとしています。
また、株式関係指標として、2025年3月期での増配の実現、2027年3月期の年間配当額を100円以上としています。
「VENTURE-5」期間中の配当政策について
「VENTURE-5」期間中の配当政策についてご説明します。当社では、長らく株価が1株当たり純資産額を下回る状況が続いており、早期に改善を図る必要があると認識しています。「VENTURE-5」の施策を着実に実行することで業績が改善できれば、株価の上昇が期待されます。
しかし、当社としてはさらなる株主価値の向上を図るため、株主還元に注力していきます。具体的には「VENTURE-5」期間中の配当政策を連結配当性向35パーセント以上、かつ1株当たり年間配当金を45円以上としています。
これを前提として「VENTURE-5」のグループ連結経営指標には配当額の項目を設けましたが、2024年3月期については「VENTURE-5」施策の効果に加え、人流の回復や記録的な猛暑の影響、またエネルギーコストが想定を下回ったこと等により、実績が計画値を大きく上回りました。そのため、2025年3月期での増配の実現については、1年前倒しで実現することとなりました。
先ほど2025年3月期の通期予想として、親会社株主に帰属する当期純利益は19億円だとお伝えしました。人流の増加や猛暑の影響などの不確定要素による大幅な上振れが継続しなければ反動減が想定されるほか、物価上昇への対応や人材確保による労務費の上昇、設備投資による減価償却費負担の増加等もあり、前期比では減益を見込みますが、「VENTURE-5」施策を着実に進捗させることで計画数値を確保していきます。
この配当政策により、安心して株式を継続保有していただきながら、「VENTURE-5」を必達することで、2027年3月期には年間配当金100円以上を目指し、株価の向上につなげていきます。
以上の配当政策を踏まえ、2024年3月期の期末配当金については1株当たり55円とすることを決定し、今年6月13日にお支払いを開始する予定です。
また、2025年3月期の配当については、中間配当金を1株あたり23円とした上で、期末配当金については決算を踏まえ、2025年5月に開催する取締役会において決定する予定です。
政策保有株式について
最後に株式の政策保有に関する方針についてご説明します。政策保有株式については、取引先から株式保有の要請を受けた場合、今後も取引先として継続していく企業、新たに事業戦略上関係を強化すべき企業等に限定します。
また、当社では年に1回以上、取締役会において各株式を保有する合理性を検証し、合理性がないと判断した株式については、順次売却するなどの手続きを行っています。2024年3月期には上場株式1銘柄を処分しました。
しかし、当社が保有する銘柄数は減っているものの、BS計上額は、最近の株価上昇に伴い、112億円にまで増加しています。
このため当社は政策保有株式の保有基準を見直し、「VENTURE-5」期間において政策保有株式のさらなる縮減を推進していきます。