目次

南條博昭氏:本日はお忙しい中、株式会社タクマ2024年3月期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長の南條博昭です。本日はこちらの目次にしたがって進めていきます。

2024年3月期|サマリ

はじめに2024年3月期連結業績についてご説明します。売上高1,491億円、営業利益102億円と、前期比で増収減益となりました。減益の主な要因は、環境・エネルギー(国内)事業におけるEPC案件構成の変化などによるものです。

受注高は、環境・エネルギー(海外)事業や設備・システム事業の受注減少により1,605億円となりました。

2024年3月期|業績ハイライト

その他の項目では、受注残高は4,826億円に増加しました。これは一般廃棄物処理プラント(ごみ処理プラント)の建設・運営事業など、長期O&Mの着実な受注によるものであり、現在、受注残高の約55パーセントは長期O&Mが占めています。

また、経常利益は111億円、親会社株主に帰属する当期純利益は87億円と、いずれも減益となりました。

2024年3月期|利益増減要因

利益の増減要因はスライドのとおりです。EPC案件構成の変化に加え、播磨新工場の稼働に伴う償却負担の増加や、人件費・研究開発費の増加などにより減益となりました。

2024年3月期|セグメント別内訳

セグメント別業績です。詳細については、資料7ページから18ページに掲載しています。

2025年3月期|業績予想

続いて、2025年3月期業績予想および株主還元についてご説明します。市場環境としては、ごみ処理プラントの更新や延命化対策を中心に引き続き堅調な需要が見込まれており、受注高の目標は2021年度の1,922億円を上回る、過去最高の2,300億円としています。

売上高は1,430億円と減収を見込んでいますが、EPC案件構成の変化などから、営業利益は112億円、経常利益は120億円、親会社株主に帰属する当期純利益は88億円といずれも増益となる予想です。

当社の事業の特性として、プラント工事の進捗が年度により異なるため、単年度の業績には波がありますが、市場環境は堅調に推移しています。

人材などのリソース拡充を進め、着実な受注を継続するとともに、ストック型ビジネスへ注力することで、今後も持続的に成長できるものと考えています。

2025年3月期|利益増減要因(想定)

利益については、人件費や研究開発費などの増加を見込むものの、EPC事業やストック型ビジネスの売上総利益の増加により、増益となる見通しです。

2025年3月期|セグメント別業績予想

セグメント別業績予想では、スライドに記載の数値を計画しています。これらの目標を達成できるよう、着実に取り組んでいきます。

人材投資、研究開発、設備投資

人材などの投資については、持続的な成長を実現するために積極的な投資を継続します。

株主還元

株主還元については、今年4月にスタートした第14次中期経営計画より、新たに定量的な還元方針を設定しました。これに基づき、2025年3月期の配当は8円増配の1株当たり年間56円を予定しています。

また、今年5月14日に公表したとおり、2025年3月期は上限を40億円とする自己株式の取得を実施し、今期取得した自己株式はすべて消却します。これにより、総還元性向は95.7パーセントとなる見込みです。

なお、第14次中計においては、今期の40億円を含めて総額120億円の自己株式取得を行い、3ヶ年累計の総還元性向も95パーセント程度となる計画です。詳細は第14次中計の説明の際にあらためてお話しします。

タクマグループの経営理念と長期ビジョン

次に、今年4月より新たにスタートした第14次中期経営計画についてご説明します。

タクマグループでは、2030年を到達点とする長期ビジョン「Vision2030」を掲げています。本ビジョンでは再生可能エネルギーの活用と環境保全の分野を中心に、当社がリーディングカンパニーとして社会に必須の存在であり続けることを目指しており、ありたい利益水準として、2030年度に経常利益200億円を目標としています。

長期ビジョン実現に向けた価値創造プロセス

スライドの図のように、ESG経営を推進することで、当社の持続的な成長を目指すとともに、サステナブルな社会の創造に貢献したいと考えています。

第13次中期経営計画の振り返り|主な取り組みと成果

長期ビジョンの実現に向け、2021年度から2023年度までの3年間、前中計である第13次中期経営計画に沿った事業活動を推進してきました。

前中計においては、さらなる成長への布石を打つという位置付けのもと、お客さまや社会の課題解決に資する事業活動の展開を強化するとともに、人材の確保や育成など、経営基盤の強化に努めました。主な取り組みと成果はスライドに記載のとおりです。

第13次中期経営計画の振り返り|数値目標と実績

前中計では、数値目標に3ヶ年合計の経常利益360億円を設定しました。実績としては364億円を確保し、目標を達成することができました。また、受注に関しても3ヶ年合計で5,213億円となりました。

第13次中期経営計画の振り返り|セグメント別業績

前中計期間のセグメント別業績です。それぞれのセグメントで堅調に推移しています。

事業ポートフォリオ|Vision2030 2030年のありたい姿

スライドは当社グループの事業ポートフォリオを整理した資料です。戦略としては、「成長事業」としてのストック型ビジネスがグループを牽引するドライバーの役割を担います。

また、ストック型ビジネスの前提となるEPC事業をグループの「コア事業」と位置付け、リーディングカンパニーとしてのポジションの維持・拡大を図ります。

環境・エネルギー(海外)事業は、中長期的にグループ事業の柱の1つへと育成する「将来事業」と位置付けています。

民生熱エネルギーおよび設備・システム事業は、引き続き着実に収益を拡大していく「継続事業」と位置付けています。

第14次中期経営計画|位置付け・基本方針

あらためて前中計を振り返ると、成長への種まきを行う期間として、従業員の採用拡大や播磨新工場の設備投資など、経営基盤の強化に取り組みました。

これらを踏まえ、本中計となる第14次中期経営計画では、一般廃棄物処理プラントの更新や基幹改良案件の受注を着実に増加させるために、経営資源を優先的に投入します。これにより、成長ドライバーであるストック型ビジネスの収益モデルの確立を進めます。

前中計で経営基盤を強化し、本中計で受注を拡大することにより、その次の第15次中期経営計画では、いよいよ売上や利益面における成果の実りを獲得し、2030年度に経常利益200億円を達成する成長ストーリーを描いています。

第14次中期経営計画|財務目標数値(サマリ)

本中計では、3ヶ年合計の受注高6,000億円という新たな目標を設定しました。前述のとおり、一般廃棄物処理プラント事業に経営資源を優先的に投入し、達成を目指していきます。

経常利益は3ヶ年合計で380億円を目標としています。当社のビジネスモデル上、受注の増加がすぐに利益に貢献するわけではありませんが、本中計期間にストックを拡大し、収益力を確実に育成することで、2030年度には単年で経常利益200億円という大幅な成長を実現したいと考えています。

また、新たにROEの目標も設定しました。収益力を強化するとともに、自己株式の取得などを通じてバランスシートの効率化を進め、本中計の最終年度である2027年3月期にROE9パーセント以上、2031年3月期には12パーセント以上の必達を目指します。

第14次中期経営計画|利益増減要因

本中計期間の利益の増減については、リソースを確保するための人件費、また、当社の環境・エネルギー事業に欠かすことのできない脱炭素技術の研究開発費など、販管費の増加を見込んでいます。

一方で、コア事業であるEPC事業や、成長ドライバーであるストック型ビジネスは堅調に推移すると想定しており、3ヶ年累計の経常利益は前中計と比べて増益となる見通しです。

第14次中期経営計画|財務目標数値 セグメント別計画値

セグメント別の財務目標数値はスライドのとおりです。本中計期間より、新たにセグメント別に年度ごとの計画を開示しました。各セグメントで計画値を達成するため、しっかり取り組んでいきます。

第14次中期経営計画 事業戦略|市場環境

続いて事業戦略についてご説明します。市場環境についてはスライドのように認識しています。

特に、一般廃棄物処理プラント事業については、更新や延命化の需要の継続や、運営事業の需要増加など、当社にとって良好に推移するものと見込んでいます。

第14次中期経営計画 事業戦略|基本方針①②

次に、主力となる環境・エネルギー(国内)事業に関する基本方針です。

基本方針の1点目は、EPC事業での市場ポジション維持・拡大です。特に、一般廃棄物処理プラントの更新と基幹改良に関しては、前中計期間に比べて受注件数を2倍程度に増加させる計画です。

また、エネルギープラント事業では、当社が得意とする中小型バイオマス発電プラントの受注を着実に獲得していきます。

2点目は、ストックを最大限活用した収益モデルの確立です。運転管理・メンテナンスや長期O&M案件の受注継続・拡大を目指すとともに、データの活用によるコスト低減や品質向上を図ります。

第14次中期経営計画 事業戦略|基本方針③④

3点目は、民生熱エネルギー、設備・システム事業における着実な収益拡大です。汎用ボイラを扱う民生熱エネルギー事業では、低炭素・脱炭素向けの商品ラインナップを拡充し、更新案件の受注継続を目指します。

4点目は、国際事業における将来に向けた実績づくりです。現地法人を有するタイならびに台湾を拠点とし、東南アジアの国々を中心として、廃棄物発電プラントやバイオマス発電プラントの受注獲得に努めます。

第14次中期経営計画 事業戦略|基本方針⑤ M&A・アライアンス、新規事業

5点目は、M&A・アライアンスや新規事業の積極的な検討です。特に環境・エネルギー(国内)事業について、既存事業の強化や人員の拡充、周辺事業の拡大につながる案件の検討を進めます。

第14次中期経営計画 経営基盤の強化|基本方針① 人材の確保と育成

経営基盤の強化に関してご説明します。基本方針の1点目は、人材の確保と育成です。当社の成長を支える柱であるストック型ビジネスとEPC事業におけるリソースを拡充するために、人材の確保に加え、働きがい・働きやすさを向上させる施策の実施により、人的資本を強化します。

第14次中期経営計画 経営基盤の強化|基本方針② ナレッジマネジメント

2点目はナレッジマネジメントの推進です。前中計から引き続き、攻めと守りの両面からDX(デジタル・トランスフォーメーション)を加速し、当社グループの競争力を高めていきます。

第14次中期経営計画 経営基盤の強化|基本方針② ナレッジマネジメント

特に本中計では、技術やプラントに関するデータの見える化やデータ資産の活用に力を入れることで、業務の効率化を図ります。

資本コストや株価を意識した経営

資本政策についてご説明します。当社グループでは、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長を実現し、ステークホルダーのみなさまからのご期待に応えるため、「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた施策を定めました。

資本コストや株価を意識した経営|現状分析(1/2)

まず当社の現状について、株主資本コストは6パーセント程度であると認識しています。その一方で、ROEは8パーセント以上で推移し、PBRも1倍以上を安定して確保できています。

資本コストや株価を意識した経営|現状分析(2/2)

当社は過去15年、経営の安定化と信用力向上を目指し、自己資本を充実させてきました。その結果、ROEが低下している状況となっています。

資本コストや株価を意識した経営|方針と主な取り組み

現状の課題を解決するため、本中計ではスライドに記載の方針を策定しました。利益率の向上に関しては、これまでご説明してきたように、一般廃棄物処理プラントにおけるEPC事業とストック型ビジネスの好循環によって実現を目指します。

資本政策

本中計では、資本政策としてバランスシートの効率化に向けた定量的な方針を新たに設定しました。

1点目は、資本コストを意識したROE目標値の設定です。本中計期間の最終年度である2027年3月期には9パーセント以上、2031年3月期には12パーセント以上を必達目標としています。

もちろんさらに高いROEを実現し、ステークホルダーのみなさまのご期待に添えるよう、グループ全体で意欲的に取り組んでいきます。

資本政策|キャッシュアロケーション

資本政策の2点目として、当社の企業価値向上に向けた取り組みをご理解いただけるよう、適切なキャッシュアロケーションを設定しました。本中計期間では重点項目として成長投資に210億円、また、120億円の自己株式取得を含め、株主還元に260億円を投じる計画です。

特に強調したい点は、成長投資のうち60億円を投じるR&D投資です。当社ではCCUS(二酸化炭素の回収、利用、貯蔵)をはじめ、脱炭素社会の実現に向けた研究を強化しています。本中計期間では、お客さまの施設に実証設備を設置することなどにより開発を加速します。

世界中がカーボンニュートラルの実現に向かっている現在、脱炭素技術の獲得は、当社が環境・エネルギー事業を継続するため、当社が存続するために欠かせないと考えています。社外とのパートナーシップも活用しながら、早期に脱炭素技術を実用化できるよう全力を尽くします。

資本政策|株主還元

資本政策の3点目として、新たな株主還元方針を設定しました。配当については、配当性向50パーセント、DOE(自己資本配当率)4パーセントの両基準で算出した金額のうち、いずれか高いほうを目標として設定します。

また、資本効率向上を目的として、3ヶ年合計で約120億円の自社株買いを実施する予定です。成長投資と併せて株主還元も強化することで、株主のみなさまからのご期待に応えていきたいと考えています。

ESGの取り組み|環境への取り組み

当社が推進するESG経営の取り組みについてご説明します。まず環境への取り組みとして、前中計期間ではタクマ単体を中心としたKPIを設定し、Scope1およびScope2におけるCO2の排出量削減に取り組んできました。

本中計では、新たにScope3におけるCO2排出量の試算と、グループ会社を含めた目標値設定の検討を行うことで、気候変動対策や環境保全の取り組みを一層推進します。

ESGの取り組み|社会および企業統治への取り組み

社会への取り組みとしては、新たに「従業員エンゲージメント」と「顧客満足度」をKPIとして定めました

企業統治への取り組みでは、コーポレート・ガバナンス強化に資する取り組みを継続していきます。以上が今年4月からスタートした第14次中期経営計画に関するご説明です。

当社事業を取り巻く市場環境等については、資料53ページから67ページに概要を掲載していますので、ご説明は割愛します。

最後に

最後に、第14次中期経営計画では「Vision2030」の実現に向け、一般廃棄物処理プラントの受注とストックを最大限活用した収益モデルの確立に優先的に経営資源を投入することで、第15次中期経営計画以降の成果獲得につなげていきます。

引き続き、環境とエネルギーに関する事業を中心に注力し、ESG経営でお客さまや社会とともに持続的な成長を目指していきます。ご清聴ありがとうございました。