個人投資家向けオンライン決算説明会
田中譲治氏:一昨年6月に東証マザーズ、現在の東証グロース市場に上場したアイ・パートナーズフィナンシャルの田中譲治です。本日ご参加いただいた個人投資家のみなさまに深く感謝申し上げます。
上場後しばらくして世界的に株価が大きく下落し、当社の業績も低迷した状態が続いています。株主のみなさまには深くお詫び申し上げます。
本日使用する資料は、11月14日に公表した「2024年3月期第2四半期決算説明資料」から抜粋し、作成したものです。詳しくは当社ホームページのIR情報に掲載しています。
会社概要
事業内容について、会社概要からお伝えします。当社は、投資家に対しては金融商品仲介業を基軸としたIFAによる金融サービスの提供を事業として営んでいます。また、当社所属のIFAに対しては、プラットフォームの提供によるIFAの業務支援と成功支援を主な事業としています。
なお、主たる事業が金融商品仲介業である事業者としては、現在、唯一の上場企業です。
経営理念・ビジョンはスライドに記載のとおりです。当社と当社所属のIFAビジネスの大義名分は、顧客の最善の利益を追求することに資してサポートをして、顧客の豊かな人生、ひいては豊かな社会の形成に貢献することです。
【ご参考】米国における独立系アドバイザーを中心とした経済圏
当社のビジネスモデルや成長可能性についてより理解していただくため、米国における独立系アドバイザーを中心にした経済圏についてスライドに示しています。
米国では、ファイナンシャル・アドバイザーの約4割が独立系だといわれています。独立系アドバイザーを中心に、証券業者や運用会社、経営・営業支援機能を提供する各種業者、いわゆるプラットフォーマーで一大経済圏を構築しています。
当社は、金融商品仲介業という事業体で、IFAの営業管理や営業支援、成功支援等を行っています。日本と米国では制度の違いがありますが、スライド右側の赤い破線で囲んだ部分を担っている会社だとご認識いただけば、当社のビジネスモデルや成長可能性についてご理解いただけるかと思います。
IFAとは
IFAについてご説明します。我が国では、金融商品仲介業者に所属する独立系金融アドバイザーを「IFA」と呼んでいます。
当社所属のIFAの特徴についてご説明します。当社と当社に所属するIFAとの契約形態は、雇用契約ではなく委任契約です。そのため、当社は当社所属のIFAに対して、ノルマといった会社都合の営業推進は一切行うことができません。つまり、IFAのお客さまと当社との間に利益相反はなく、当社所属のIFAは、お客さまの立場に立てるファイナンシャル・アドバイザーということになります。
また、開業医や開業した弁護士、税理士などの士業の先生方と同じように、経営基盤はお客さまからの信頼にあります。したがって、お客さまからの信頼を得られない、お客さまからの信頼を失ったIFAは廃業せざるを得ません。そのため、当社所属のIFAは、お客さまの信頼に応えるサービスやアドバイスを提供せざるを得ないのです。
これらの背景により、当社所属のIFAは、お客さま重視を追求することになるわけです。
事業内容
金融商品仲介業とIFAサポート業務についてご説明します。スライド左側の図は金融商品仲介業を説明したものです。金融商品仲介業者とは、証券会社や運用会社等の金融商品取引業者の委託を受けて、取引の勧誘や仲介、申込の受付等を行う業者です。当社は、楽天証券、SBI証券、あかつき証券、東海東京証券、野村アセットマネジメントの業務委託を受けてそれぞれの金融商品の仲介を行っています。
また、当社は当社所属のIFAがファイナンシャル・アドバイス業務に専念できるプラットフォームを提供し、当社に所属するIFAの業務支援・成功支援を行っています。その内容は、スライド右下のサポート体制の図に示しています。
これらのサポートの結果、当社所属のIFAは安心して業務に専念できる環境のもと、顧客の要望に応えて高いサービスを提供することが可能になります。
提供するサービス
当社のIFAがお客さまに提供するサービスについてご説明します。スライド左側の「金融商品仲介サービス」は、独立・中立の立場からお客さまに寄り添った資産運用のアドバイスを行います。
特に昨今、ゴールベースアプローチという「顧客のゴール達成のための人生の伴走者」になるIFAを求める投資家が増えています。当社では、多くの所属IFAがそのようなIFAになれるよう推進しています。
スライド右側の「その他金融サービス」は、子会社のAIPコンサルタンツが提供しているサービスで、主な事業として保険代理店を営んでいます。「顧客のゴール達成のための人生の伴走者」になれるIFAを求める投資家が増えていることもあり、投資家に提供するサービスにおいては、人生のリスク管理のための保険の提供が不可欠です。
AIPコンサルタンツは、現在、証券・保険以外の商品・サービスを提供している50社以上の事業者と提携し、IFAの顧客とそれらの会社とのマッチングサービスを行っています。「顧客のゴール達成のための人生の伴走者」といえるIFAになるためには、証券・保険以外の商品・サービスの紹介もますます重要になってくると思われるため、これらの事業・サービスもさらに拡充する予定です。
事業系統図
当社グループの収益・キャッシュフロー獲得の方法や、それに要する主な費用の内容・構成等についてご説明します。
まず、メイン業務である金融商品仲介業務についてご説明します。IFAの媒介によって、IFAのお客さまが証券会社等に支払った取引手数料に対して、会社ごとに契約で定めた料率によって、証券会社等から当社へ報酬が支払われます。これが当社の売上になります。また、IFAに委任報酬として契約で定めた料率を支払っており、これは当社の売上原価です。
当社には、IFAのサポート業務の売上もあります。IFAは、当社が提供するビジネスプラットフォームへの対価の一部として、月額約10万円のシステム使用料を支払います。これは売上であると同時に、原価がないためまるまる粗利ということになります。
保険募集・マッチングサービスに関しては、現状、当社の連結売上の数パーセントしか占めていません。説明は割愛しますが、今後「人生の伴走者」になるIFAは増え、IFAの保険やマッチングサービス活用の必要性も高まることが予想されます。したがって、今後、この部門の売上は徐々に増えていくと考えています。
損益計算書
2024年3月期第2四半期の決算概要についてご説明します。まず損益計算書です。第2四半期連結累計期間の売上高は前年同期比31.7パーセント増の18億4,000万円となりました。最大の要因は、金融商品仲介業売上が前年同期比36パーセント増となったことです。
営業利益はプラスマイナスゼロですが、前年同期比では6,900万円の改善です。経常利益もプラスマイナスゼロですが、前年同期比で6,800万円の改善となっています。当期純利益は400万円の赤字で、前年同期比で7,200万円の改善となりました。
前年同期比で大幅な改善となった要因としては、この期間の世界のマーケットがおおむね堅調であったことと、当社が媒介する資産残高(AUM)が堅調に拡大したことがあります。また、それらの背景により、IFA1人あたりの取引手数料が当初計画の毎月150万円を上回って約173万円になったことも影響しています。
売上高の推移と内訳
売上高の推移と内訳をご説明します。当社の売上高増加の源泉は、所属IFA数と媒介する資産残高の増加ですが、短期的には金融市場の変動により増減するIFA1人あたりの取引手数料の影響を大きく受けます。
先ほどお話ししたように、第2四半期の売上高は前年同期比31.7パーセント増となりました。その要因は、世界のマーケットがおおむね堅調であったことと、当社のAUMが堅調に拡大したことです。
四半期推移のグラフにあるとおり、第1四半期から第2四半期にかけて売上が増え、少しずつ回復しています。今後もマーケットの影響を受けてある程度の波は発生するかと思いますが、全体的には回復傾向にあると考えています。
重要な経営指標 IFA数の推移
重要な経営指標である、IFA数の推移についてご説明します。9月末の所属IFA数は前年度末から2名減り、206名となりました。
スライド左側のグラフにあるとおり、この数四半期の所属IFA数は若干の減少トレンドが見られます。この背景には、顧客本位の業務運営の強化などによって、期待どおりの収入が上げられなくなったIFAの転職などがあります。いわゆるIFAの淘汰の最中にあるということです。
また、マーケットは落ち着いているものの、これからリテール証券ビジネスが大きく変わろうとしています。その中で、IFAとしての独立を先延ばしする証券マンが多いことも影響すると考えています。
重要な経営指標 媒介する資産残高の推移
重要な経営指標である媒介する資産残高の推移です。第2四半期末における媒介する資産残高は、前年同期比16.6パーセント増の2,783億8,300万円となっています。また、IFA1人あたりの媒介する資産残高は前年同期比22.8パーセント増の13億5,100万円となり、ともに過去最高を更新しました。
上期の世界のマーケットが堅調だったことも1つの要因ですが、当社の資金・資産導入が従来同様に堅調だったことも影響しています。
スライド右側のグラフは媒介する資産残高の商品別割合です。詳細はスライドをご覧ください。
金融商品仲介業における資金導入金額の推移
資金導入金額の推移です。当社の重要な経営指標である媒介する資産残高の増減要因は、入出金差引額(資金純増額)・入出庫差引額・資産評価額の増減です。
スライド左側のグラフは四半期ごとの入出金合計と入出金差引額です。第1四半期・第2四半期ともに入出金差引額は堅調に推移していました。入出庫差引額も着実に増えていますが、これについての正確なデータは手に入らないため数字の公表は控えます。
スライド右側のグラフは、媒介する資産残高の推移と資金純増額累計の推移を表しています。詳細はスライドをご覧ください。
取引手数料の内訳推移
取引手数料の内訳推移です。ご注目いただきたいのは、スライド右下のストック手数料の推移です。若干の波はありますが、この数年で着実に増えており、特にこの上期においては急増しました。
売買等のフロー手数料はマーケットの影響で大きく変動しますが、ストック手数料はその影響をあまり受けません。今後も売上の安定化につながるストック手数料の着実な増加を推進したいと思っています。
販売費及び一般管理費の推移と内訳
販売費及び一般管理費の推移と内訳です。四半期ごとの販管費については、上場準備で管理体制強化のために販管費が増えた後は基本的に横ばいで推移しています。
システム使用料と収益構造
システム使用料とその収益構造です。スライド左側のグラフにあるとおり、人件費とオフィス費用を合わせた固定的費用の約3分の1を、システム使用料によってカバーしています。
スライド右側上段の図は、当社の売上増加のメカニズムを表しています。IFA数の増加がシステム使用料の増加につながります。そして、IFA数の増加だけが要因ではありませんが、それが取引手数料の増加に影響し、当社の委託業務報酬の増加につながり、売上高が増加します。
スライド右側下段のグラフは、収益増加のメカニズムを表しています。横軸がIFA数、縦軸が費用と収益です。青い線で示されているように、所属IFA数が増えると粗利が増えます。
また、黄色い線で示されているように、人件費の増加は所属IFA数の増加よりもなだらかです。さらに、オフィスの増強を図ると販管費が階段状に増えます。いずれにしても、所属IFA数が増加することで粗利が増加し、営業利益が高まるという構造です。
貸借対照表
貸借対照表です。配当金の支払いや自己株式の取得によって、純資産が前期末比で1,500万円減少しました。しかし、流動比率は247.2パーセント、自己資本比率は61.6パーセントとなっており、財務の安全性や健全性に懸念はないと考えています。
2024年3月期計画
今期計画と成長戦略についてお話しします。今期計画については、期初に公表した計画から変更はありません。上期は計画を上回って進捗しているものの、先行きが不透明なため、今期の予想は据え置きとします。
2024年3月期計画の前提条件
今期計画の前提条件です。こちらも期初に公表したものから変更はありませんが、あらかじめご理解いただきたいのは、当社の業績は内外のマーケット環境に大きく左右されるため、業績予想を非常に立てにくいということです。
前提として、当社は期初に、予想されるIFA数と予想されるIFA1人あたりの月間取引手数料をもとに計画を立てています。所属IFA数については市況環境の改善が見られることに加え、月間純増数の過去実績、候補者からの問い合わせ等を勘案した結果、新規契約は22名、解約は4名の純増18名で、今年度末の所属IFA数は226名としました。
また、過去の実績からIFA1人あたりの月間取引手数料は150万円とし、今年度末のAUMは前期末比約300億円増の2,700億円として計画を立てていました。
この計画に対する上期の実績として、IFA1人あたりの月間取引手数料は173万円と大きく上回りました。AUMもすでに2,700億円を上回っています。一方、所属IFA数は純増18名の計画に対して、9月末の段階で若干の純減になっています。
現在、証券業界が業績予想を公表しない中、当社は上場時から計画の前提条件を公表した上で業績予想を開示してきました。しかし、現在はその前提条件自体がマーケットに大きく影響されることから、来期以降については、業績予想に代わって何らかのKPIを随時公表するなど、投資家のみなさまによりわかりやすいディスクロージャーの方法を模索しています。
成長戦略
当社の成長戦略についてご説明します。当社の経営方針は「金融商品仲介業における媒介する資産残高の増大により、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図っていく」ことです。
スライド左側の図にあるとおり、直近ではIFA数は増えていませんが、成功支援の効果もあり、当社のAUM及びIFA1人あたりのAUMは着実に増えています。
ここで、成功したIFAとは何かについて、当社の考えを述べたいと思います。まず、成功したIFAとは、顧客からの信頼を獲得しているIFAです。決して手数料を上げているIFAではありません。もちろん、多くのお客さまから信頼を獲得した結果、多くのAUMを保有して、結果的に多くの手数料を得ているような成功したIFAはいます。ただし、それはあくまで多くのお客さまからの信頼を得た結果です。
今後の金融政策、投資家のニーズの変化、投資家の金融リテラシーの向上等を考えると、投資家が支払う手数料は、金融商品の売買時に支払うコミッション型から、残高などに応じて支払うフィー型に徐々に変わっていくと思われます。そして、金融政策における顧客の最善の利益のルールベース化などによって、短期売買などで手数料を上げるアドバイザーは排除されていくと思います。
これを考えると、相当の媒介する資産残高がないとIFAとして生計を立てられないことは十分予想されるわけです。成功したIFAはすなわち多くの顧客の信頼を得たIFAで、その結果多くの媒介する資産残高を保有するIFAになるはずです。そして、当社所属のIFAに成功したIFAになってもらうことで、当社の媒介する資産残高の増加と企業価値の向上につながっていくと考えています。
基本戦略の方向性と成長戦略を実現するための具体的な施策
これまでお話ししたことを踏まえて、基本戦略の方向性と成長戦略を実現するための具体的な施策についてご説明します。
まず、支援するIFAのバックグラウンドについてお話しします。従来は証券会社出身のIFAへの支援を中心に行ってきましたが、昨年から、バックグラウンドが保険募集人やFPなどのIFAの支援も徐々に開始しています。今後もさまざまなバックグラウンドのIFAを支援すべく、支援体制の拡充を進めています。
次に、業務支援・成功支援を行うサポート体制、つまりIFAビジネスプラットフォームの強化についてです。スライド下段の赤枠内は、当社が現在IFAに提供しているサポート体制です。その中でも上段は前期に実施した支援内容です。その赤枠の外が、現在あるいは今後拡充していく予定のものです。国が推進しようとしている資産所得倍増プランに沿ったかたちで、内部管理体制のさらなる充実を図ります。
内容としては、人生に伴走して顧客の最善の利益を追求するIFAを目指してもらうためのIFAへのコーチング、IFAが必要とする営業資料制作、営業ツールの開発、顧客管理の効率化のためのDX投資などを強化します。
また、投資家の金融リテラシーの向上にむけた動画等での発信や、証券・保険以外の商品サービスを提供する会社との提携なども今後も積極的に実行していきたいと思います。業績が落ち着いたら、M&A等も積極的に検討していきます。
内部管理体制のさらなる充実に関しては、資産所得倍増プランの7つの柱があり、そのうちの1つに顧客本位の業務運営の確保があります。当社は現状、専任の内部管理責任者を11人抱えており、金融商品仲介業者の中では突出した内部管理体制を敷いています。ただし、当社ではまだ不十分だと考えているため、さらなる強化を図ります。
モニタリング検証・管理体制について
内部管理体制の延長線で、2023年9月に金融商品仲介業者向けに、当社が実施しているモニタリング検証・管理体制を紹介するセミナーを行いました。他の金融商品仲介業者向けにこのようなセミナーを行っている理由として、当社は、当社が成長するためにはIFA業界の健全な発展が不可欠だと考えています。
セミナーには155業者、244名が参加しました。いかに関心が高いかと驚くと同時に、IFA業界の健全な発展を望む業者が多いことに安堵した次第です。現在は顧客の最善の利益のルールベース化についてセミナーを実施中です。
サステナビリティへの取組
当社はSDGsへの積極的な取り組みが、経営の効率化、ひいては企業価値の向上につながると思っています。当社のサスティナビリティへの取り組みをスライドでご紹介していますので、ご確認ください。