2024年3月期第2四半期 決算サマリー
米倉英一氏(以下、米倉):みなさま、こんにちは。スカパーJSATホールディングスの米倉です。本日はお忙しい中、決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。
初めに、本日のポイントをお伝えします。業績は引き続き、前年同期比増収増益となりました。足元の業績は好調であり、今回のメディア事業における特別損失を踏まえても、期首に掲げた通期業績予想150億円を達成し、さらに上乗せをすることを目指したいと考えています。
宇宙事業は「Superbird-9」のプレセールスを開始し、第1弾として、パナソニック アビオニクス社に航空機向けのインターネット回線を提供する契約を締結しました。
衛星フリート計画の柔軟性を飛躍的に向上させる、軌道上衛星延命サービスの調達も決定し、さらに先を見据えた衛星調達の検討を開始しています。
また昨日10月31日、私どもが出資しているQPS研究所の上場が承認されました。引き続き連携しながら、ビジネスインテリジェンス分野の需要を獲得していきたいと思います。
メディア事業はFTTH事業の再送信サービス世帯数が堅調に増加するとともに、提携ケーブルテレビ局が16局に拡大しました。
ESGにおける事業活動においては、カーボンニュートラルの達成を2030年から2025年度末に前倒しすることにしました。
株主還元は、「5年間にわたって400億円の株主還元を行う」というキャピタルアロケーションプランに基づき、9月の取締役会で決定した50億円の自己株式取得を実行中です。今後も積極的な還元を行いたいと考えています。
ここからはCFOの松谷より、第2四半期の業績概要についてご説明します。
連結業績概況
松谷浩一氏(以下、松谷):松谷です。まずは連結業績の概況をご説明します。
2023年度第2四半期の連結営業収益は、前年同期比プラス4.3パーセントの604億9,800円、営業利益は前年同期比プラス20.2パーセントの134億100万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比プラス11.1パーセントの85億5,500万円となりました。
メディア事業において投資有価証券評価損の計上があったものの、宇宙事業がグローバル・モバイル分野、国内衛星ビジネス分野ともに堅調に推移した結果、連結では前年同期比で10パーセントを超える二桁増益となりました。
四半期連結業績推移(FY2022/1Q - FY2023/2Q)
四半期ごとの業績トレンドを棒グラフで示しています。
セグメント別業績概況:宇宙事業
各事業セグメントについてご説明します。まずは、宇宙事業セグメントです。営業収益は、「JCSAT-1C」や「Horizons 3e」の移動体通信分野での利用拡大や、国内衛星ビジネス分野での回線利用・機器販売等の拡大により、前年同期比プラス29億円の310億円となりました。
機器販売収入に連動して一部原価も増えましたが、減価償却費の減少も寄与し、営業利益は前年同期比プラス28億円の111億円となりました。セグメント利益は、前年同期比プラス21億円の77億円となりました。
セグメント別業績概況:メディア事業
メディア事業セグメントです。営業収益は前年同期比マイナス6億円の342億円となりました。こちらは、「スカパー!」の累計加入件数の減少による減収、接続世帯数の増加によるFTTH事業収入の増加、リアルイベント関連の収益計上によるものです。
営業利益は、2022年10月末に閉局した「BSスカパー!」関連費用の減少などにより、費用を削減した結果、前年同期比マイナス5億円の27億円となりました。
セグメント利益は、投資有価証券評価損の計上の影響により、前年同期比マイナス12億円の11億円となりました。
2030年に向けて
スライドは再掲となりますが、私どもは2030年に向けて、既存事業の基礎収益力向上を図るとともに、新領域へ2,000億円以上の投資を行い、既存領域の拡大と新領域への積極的な展開を図っていきます。
2030年に向けて
そして、グループミッション「Space for your Smile」のもと、2030年に250億円を超える当期純利益を目指すとともに、社会的価値を創出していきます。
キャピタルアロケーションの進捗(FY2022~FY2026)
キャピタルアロケーションの進捗状況についてご説明します。2023年度の投資は、現時点で360億円を見込んでいます。増配・自己株取得の株主還元を含め、2年間の投資ならびに株主還元の累計は700億円強となる見込みです。
先を見据えた衛星調達の検討を開始しており、その他の計画についても引き続き検討を進めているところです。
2030年に目指す姿を達成するために、直近の取り組みについて、各担当取締役よりご説明します。
宇宙事業ビジョン
福岡徹氏(以下、福岡):宇宙事業担当の福岡です。宇宙事業では、超スマート社会の実現に貢献することを目指した「宇宙事業ビジョン」を掲げています。私から、最近のトピックスや取り組みについてご説明します。
衛星通信サービスの拡大
スカパーJSATは、通信環境の整っていない地域、航空機、海洋エリアでの通信需要や、BCP対策のための非常時通信などの需要に対応するため、静止軌道衛星による通信サービスを提供してきました。
このたび、低軌道衛星によるブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business」の提供開始を決定し、衛星通信サービスのラインナップを拡大することとしました。
加えて、本サービス拡販のため、NTTドコモ社とNTTコミュニケーションズ社を通じたサービス提供も予定しています。サービスの開始は年内を予定しています。
従来の静止軌道衛星による通信サービスに加え、低軌道衛星による高速かつ低遅延のブロードバンドインターネットサービスも提供することで、より多くのお客さまの通信ニーズにお応えし、利便性の向上に努めていきます。
多層的な通信ネットワークUniversal NTNを構築
未来社会に向けては、自動運転や空飛ぶ車などの新たなユースケースに対応する、通信ネットワークの構築を進めていきます。
GEO(静止軌道衛星)、LEO(低軌道衛星)、HAPS(高高度プラットフォーム)などを加え、多層的な通信ネットワーク「Universal NTN」を構築します。GEO、LEO、HAPSそれぞれの特徴を活かしながら、地上や海、空を問わず、お客さまに対してシームレスかつ最適な通信ソリューションを提供していきます。
繰り返しになりますが、「Universal NTN」は「いつでも、どこでも、誰ともつながる」という意味でのUniversalになります。この実現に向けてはLEO事業者をはじめ、さまざまなパートナーとの連携も推進していきます。
グローバルモバイルビジネスの拡大強化
既存の衛星通信事業についても拡大強化を進めています。パナソニック アビオニクス社との間で、フルデジタル衛星「Superbird-9」による航空機向け大容量帯域のインターネット回線の提供について、契約を締結しました。2027年上期の運用開始を予定していますが、打ち上げ前の契約獲得により、早期の収益化を実現しました。
「Superbird-9」は、当社史上最大の通信容量を提供可能とする次世代型の衛星であり、かつ軌道上で柔軟に衛星カバーエリアなどを変更することが可能な「フレキシブル衛星」です。本衛星により、航空機や船舶などの移動体における多様な通信ニーズにも応えていきます。
宇宙統合コンピューティング・ネットワークの実現に向けて
宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の実現に向けた、Space Compassの事業の進捗についてご説明します。
2023年9月、Space Compassは三井物産社が取り組む、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」後継機の事業化調査の一部を受託しました。
Space Compassは、この調査業務のパートナー企業の一社として、「きぼう」後継機と地球間の光通信事業、「きぼう」後継機内におけるデータ処理に必要な軌道上データセンタ事業を検討し、新たな価値の創出を目指していきます。これはまさに、宇宙データセンタ事業のサービス実現に向けた取り組みです。
オープンイノベーションの推進
宇宙事業のビジョンの実現に向けては、既存事業の延長線上にとどまらない新たな事業を開発し、事業領域を拡大していくことも重要です。
新規事業開発の推進力を高めるための取り組みについて、当社は2018年3月および2023年9月、これまでに60社を超える宇宙スタートアップへの投資実績がある米国ファンドSpace Capitailが運営するファンドへの投資を実行しました。
この投資を通じて得られる情報とネットワークを活かし、海外宇宙スタートアップとの協業を進めるとともに、国内においてもスタートアップ、宇宙ファンドへの投資・協業を強化していきます。
これらの取り組みを推進するため、10月1日付で組織改編を行いました。新たに「投資・協業促進CFT(クロスファンクショナルチーム)」を立ち上げ、プロジェクト体制に移行しました。多様な経験やスキルを持った社員が組織の垣根を越え、積極的かつフレキシブルに新規事業開発に関与し、主体的に活動することにより、新領域事業の展開を加速していきます。
既存ビジネスの基盤強化
既存衛星通信ビジネスの拡大に向けて、既存事業基盤の強化も進めています。Intelsat社との共同衛星「Horizons-4」は、日本時間の8月3日に打ち上げに成功し、「Horizons-1」の後継機として、10月よりサービス提供を開始しました。
「Horizons-4」の運用開始に伴い、従来の衛星「Horizons-1」は軌道位置を西経127度から西経150度へ変更し、移動体向け通信需要が見込まれる北東太平洋エリア向けに、11月中旬よりサービス提供を開始する予定です。
また、新たな宇宙技術の採用も積極的に検討を進めており、静止軌道上で衛星の寿命延長を行う、軌道上衛星延命サービスの調達も決定しました。
軌道上衛星延命サービスとは、スライド右下のイメージ図のように、すでに軌道に投入されている静止軌道に延命用の衛星をドッキングし、延命させるサービスです。このサービスの活用により、衛星フリート計画の柔軟性をより高めていくことができると考えています。
衛星フリート図
先ほどご説明したとおり、スライドの衛星フリート図で示している「Horizons-4」は、10月より西経127度においてサービスを開始しました。これにより衛星の数は1機増え、計17機となりました。また「JCSAT-12」は、「JCSAT-5A」の後継機として東経132度へ移動し、新たに「JCSAT-5B」として運用を開始しました。
なお、スライド左下の参考情報にあるように、今回より衛星の設計寿命などの情報を加えています。衛星の償却は、設計寿命に基づき約15年で行いますが、実際には運用を効率的に行うことにより、設計寿命より長く運用できる場合もあります。先ほどの「Horizons-1」がその一例です。
スライド右下には、他事業者との共同保有衛星を記載しています。最新技術を取り入れた次世代型衛星の投入や他事業者とのアライアンスにより、衛星フリートを強化し、今後も競争優位性をアップしていきます。
メディア事業ビジョン
小川正人氏(以下、小川):メディア事業担当の小川です。ここからはメディア事業についてご説明します。スライドに示しているのはメディア事業のビジョンです。「人と人、企業、社会をつなぐプラットフォームとして、多様で創造性豊かな社会の実現に貢献する」ということで、ファンの体験を起点に、その先の体験領域を拡張していきます。
FTTHパススルー事業(2022年11月より開始)提携ケーブルテレビ事業者を拡大
具体的な取り組みについてご説明します。FTTH事業で使用している仕組みを活用し、衛星通信と視聴制御機能を提供するケーブルテレビ事業者向けの映像伝送サービスが拡大しています。
このたび、三重県四日市市のケーブルテレビ統括運営会社、株式会社CCJ(コミュニティ・ケーブル・ジャパン)との協議がまとまりました。現在、サービスを開始したケーブルテレビ局が8局、サービス開始前のケーブルテレビ局が8局と、合計16局でこのサービスを使用することになっています。
このケーブルテレビ事業者とは、当社の「スカパー!」の番組配信の普及促進やCTV(ドングル)戦略等、アライアンスの強化、事業拡大を目指していきたいと考えています。
マンション向けFTTH再送信の導入
収入ならびに加入世帯数が堅調に増加している再送信事業については、つなぐネットコミュニケーションズとともに、大規模な複合施設「麻布台ヒルズ」の住居1,412戸に、スカパーJSATが提供する光回線テレビを提供することが決定しています。
光回線経由で地上波、BS/CSを視聴できるサービスで、CS放送などの有料チャンネルもアンテナの設置は不要と、契約手続きのみですぐに利用を開始することができます。テレビとインターネットをそれぞれ専用回線で伝送しているため、速度低下の心配がなく、快適な通信環境と高品質なテレビ視聴環境の提供が可能となっています。
今後も引き続き、マンション、戸建て向けに本サービスの提供を拡大させていきます。
web3市場への参入に向けたトライアル
昨今、注目されているweb3市場への参入に向けたトライアルを、アイドルジャンルで行っていきます。アイドルイベントを開催して、その中でファン投票を実施し、投票チケットやデジタルアイテムなどの配布・販売を行っていきます。
ブロックチェーンなどの新しい技術を活用し、ファンの体験価値を重視したサービス展開を目指していきます。
スカパー!秋口施策「熱狂フェス」実施中(10月~11月)
現在開催中の「スカパー! 熱狂フェス」についてご紹介します。放送はもちろん、配信やバーチャル空間、リアルイベントでファンのみなさまに楽しい体験をより拡張していただけるよう、熱狂できるコンテンツを多数揃えたキャンペーンです。テレビだけでなく、配信・イベント・グッズなども含めてお楽しみいただきたいと考えています。
この冬、スポーツコンテンツを無料でお届け
11月末から12月にかけて、当社の放送・配信サービス上で、スライドに記載の2つのスポーツコンテンツを提供します。
スライド左側の「あの夏を取り戻せ」は、新型コロナウイルスの感染拡大によって中止になってしまった2020年夏の全国高等学校野球選手権記念大会を取り戻すべく、当時の高校球児たちが立ち上げたプロジェクトです。当社はこの大会の主旨に賛同し、より多くの野球ファンに楽しんでいただくべく、無料でお届けすることにしました。
スライド右側の中村俊輔氏の引退試合も、より多くのサッカーファンに楽しんでいただくため、同様に無料で配信します。
4Kチャンネル放送終了
10月27日にお知らせしたとおり、2024年3月末にて、スカパー・エンターテイメントが提供している4Kチャンネル放送(9ch)を終了することになりました。対象となるのはスライド下部に記載の4Kチャンネルで、ハイビジョン(2K)で提供しているチャンネルは引き続き視聴することができます。なお、これによる2023年度の業績への影響は軽微です。
CS左旋における空き帯域については、離島を多く抱える地域や中山間地域、受信障害地域といった、条件不利地域における地上波の代替として、活用検討を進めていきます。
ESGの推進状況
米倉:最後に、ESGの推進状況についてご説明します。これまで当社グループでは、「2030年カーボンニュートラル達成」という目標を掲げていましたが、グループでの実質再生可能エネルギー切り替えの進展を鑑み、また世界的に顕在化する気候変動リスクへ迅速に対応するため、温室効果ガス排出量の削減活動を加速し、達成目標を5年前倒しすることを決定しました。これは通信・メディア業界の中でも先駆的な取り組み目標だと自負しています。
また、10月には人権方針を策定しました。これまで役職員が遵守してきた人権意識・ルールをあらためて見直し、国際標準に則った方針へと昇華させたものです。人権尊重に対して、より一層、真摯に取り組んでいきたいと思います。
さらに、サプライヤーサステナビリティガイドラインの策定により、当社ビジネスの安定性を確保・維持するとともに、サプライチェーンに対しても社会的な責任を果たしていきたいと思います。
このようなESGの取り組み、2030年に向けた価値創造については、統合報告書やリニューアルしたサステナビリティWebサイトでもご覧いただけます。今後も株主・投資家さまからのご意見をもとに、情報開示を充実させていきたいと思います。
未知を、価値に。
2023年度は成長の足固めとして、基礎収益力を支える既存事業の強化と新領域への進出に積極的にチャレンジしていきます。加えて、着実に株主還元を実行することで、株主・投資家のみなさまの期待に応えていきたいと考えています。
説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:宇宙事業の増収の要因について
質問者:利益の増減について、事業ごとに教えてください。宇宙事業では第1四半期が16億円の増収、第2四半期が13億円の増収となっています。第2四半期のみの内訳は、グローバル・モバイル分野が6億円の増収、国内衛星ビジネス分野が6億円の増収、放送トラポン収入が2億円の減収でした。
まず、グローバル・モバイル分野と国内衛星ビジネス分野の各6億円の増収の要因を教えてください。また、第2四半期の売上増に為替の影響がどのくらいあったのか、売上の内訳の解説をお願いします。
福岡:宇宙事業担当の福岡です。今、ご指摘がありましたグローバル・モバイル分野への為替の影響については、おおむね4割から5割だと見ています。それ以外の要因として、以前から好調の「Horizons 3e」の回線利用が積み上がってきていることがあります。また、その他アジア地域でも当社の回線利用が進んでいることが実態としてあります。
国内衛星ビジネス分野で第2四半期に積み上がっている部分は、携帯電話事業者向けの機器販売や回線利用増になります。また、官公庁向けの地上施設を整備して提供するという部分も積み上がってきています。
質問者:確認ですが、為替の影響の割合は、グローバル・モバイル分野の6億円の増収のうち、4割から5割でしょうか? また、グローバル・モバイル分野の用途は、通信・航空・船舶などが中心になるのでしょうか?
福岡:おっしゃるとおりです。
質問者:また、第2四半期の減価償却費が減っています。これは続いていくと思いますが、売上増に伴う費用増は、機器の原価などの影響が大きいのでしょうか?
福岡:先ほどお話ししたとおり、携帯電話事業者向けの機器販売や官公庁向けの施設整備については、当然その程度の費用が増えるとご理解ください。
質疑応答:第2四半期の航空機向け回線の売上状況について
質問者:為替はレート次第ですが、今後も特に大きなトレンドの変化はなく、海外および国内での案件を積み上げていくかたちになるというお話だと思います。しかし、日本航空やANAホールディングスの決算を見ると、国内線はコロナ禍以前の9割程度まで戻ってきており、海外線も6割、7割まで戻っているということでした。アビエーション会社を通した航空機向けの第2四半期の売上状況について、教えてください。
福岡:基本的には、パナソニック アビオニクス社のような航空機向けのサービスプロバイダーに対するビジネスのため、第1四半期や第2四半期といった3ヶ月間で大きな変動はありません。しかし国内線は前年度・前々年度と比べて、ご指摘のとおり搭乗者も復活しています。したがって、国内線にかかわる衛星回線の需要も、コロナ禍以前の程度にまで回復してきています。
加えて、先ほどご説明したとおり、新たな航空機回線の引き合いもあります。これは「Superbird-9」のプレセールスですが、こちらにつなぐ段階でも回線の拡大が見込まれています。
質問者:「Superbird-9」はプレスリリースを見ると「増強」と書いてありますが、既存の契約の中での帯域の拡大ということでしょうか? また、新規事業において画像の販売益が伸びているというお話がありましたが、そのあたりの状況を教えてください。
福岡:私どもにとっての大きな意味合いは、「Superbird-9」第1号のお客さまが決まったことです。「Superbird-9」自体のサービス提供開始は2027年上期の予定ですが、お客さまから「待てない」という意見があったため、既存の衛星帯域を提供し、提供する容量を増やしていくかたちとなりました。
また詳細の説明は控えますが、官公庁向けの衛星画像販売サービスで従来を大きく上回る商談が成立しました。今期後半、もしくは来年度に向け、利益および収益が上がると考えています。
質疑応答:「Horizons-1」および「Horizons-4」の運用について
質問者:「Horizons-4」が10月から西経127度でサービス開始、「Horizons-1」が西経127度から西経150度へ移動するというお話でしたが、「Horizons-1」のお客さまを「Horizons-4」に引き継ぎ、「Horizons-1」で新規顧客を獲得するということでしょうか? また、「Horizons-4」についても新規顧客が増えているのでしょうか?
福岡:おっしゃるとおり、「Horizons-4」は「Horizons-1」の顧客を引き継ぎ、「Horizons-1」は新規顧客を獲得します。
「Horizons-4」は、現時点では「Horizons-1」の顧客を引き継いだ状態です。しかし、新たに太平洋エリアに向けたビームも積んでいるため、当然新たな顧客拡大を目指していきたいと考えています。
質疑応答:軌道上衛星延命サービスについて
質問者:軌道上衛星延命サービスが実現すると、コストパフォーマンスが非常に高くなると思いますが、マーケットで実際に行っているのはノースロップ・グラマン社くらいではないかと思います。御社はそのような米系の企業と提携されているのでしょうか?
福岡:軌道上衛星延命サービスは事情により、具体的な回答を控えさせていただきます。
質疑応答:QPS研究所株式の保有比率について
質問者:先ほど社長からQPS研究所の上場のお話がありましたが、目論見書を見ると御社の出資比率は10.95パーセントと公表されています。今回売り出しをしないということは、10.95パーセントを所持するといった理解でよいでしょうか?
福岡:質問の趣旨とは違うかもしれませんが、QPS研究所については、当然のことながら、出資比率はIPOに取り組む中で変わってくると思います。
質疑応答:「きぼう」後継機案件の寄与について
質問者:全体のプロジェクトを見ると、「きぼう」には、いろいろな方が参加されています。メーカーの寄与が大きいと感じるため、Space Compassへの売上寄与はそこまで大きくないのではないかと考えていますが、いかがでしょうか?
福岡:詳細がわからないため、想像も交えて1つお話しできることは、「きぼう」後継機について、さまざまな運用のあり方を検討するプロジェクトの中での話だということです。したがって、そもそも機体をどのようなかたちにするのかは、メーカーが役割を担う部分が非常に大きいと思います。
その中で、地上局間での光通信とデータセンタ事業にかかわる部分になるため、Space Compassへの売上寄与はそれほど大きくならないと考えています。
質疑応答:メディア事業の売上について
質問者:メディア事業についてお聞きします。3ヶ月の売上を拝見したところ、9月末の契約数は良かったと思いました。その背景を教えてください。
また、FTTHの売上増は第1四半期で1億円とありましたが、第2四半期の3ヶ月ではどのくらいだったのでしょうか? リアルイベントの売上と費用が両方立っているため、利益インパクトは中立だったと推測します。前年同期はこの費用があまりなかったため、第2四半期の広告宣伝費・販促費が正常な水準なのか、そのあたりを確認させてください。
小川:契約者数については、第2四半期が終わった時点で2022年度と比べると改善していることがわかると思います。新規加入者も前年対比で増加し、解約者数も抑えることができました。
私どもは、「スカパー!プロ野球セット」を主力商品として販売しています。今年度は人気球団が非常に好調な成績のまま推移したことで、8月末から9月末に退会するお客さまが少なく、解約が抑止できたことが2023年度上期の数字につながったと認識しています。
また、FTTHの売上は毎月同水準で順調に増えています。そのため、第1四半期と第2四半期の増加分はほぼ同額です。スライドに増加額は1億円だと記載していますが、それが第1四半期と第2四半期に半分ずつ寄与しているとお考えください。
リアルイベントについては、売上と費用が同額となっています。「あまり見たことがない」という話がありましたが、この多くは7月29日に開催した「ブンデスリーガジャパンツアー」のサッカーイベントに起因するものです。昨年度は、このイベントを11月に開催したため、その分が上期との差となります。
広告宣伝費ならびに販促費については第1四半期、第2四半期にコストコントロールをかけながら実施しています。
参考資料の顧客獲得費用総額(SAC)を見ると、昨年度より若干少ないと思われるかもしれません。しかし、これはキャンペーンの時期等々によっても増減があるため、ほぼ同等の販促を行っているとお考えください。
質疑応答:4Kチャンネルの終了について
質問者:4Kチャンネルの終了についてです。終了の影響は軽微だとのお話でしたが、実際は来期に大きな影響があると思います。それについて、どのようにお考えですか?
小川:4Kチャンネルの終了が視聴者の方々に大きな影響を与えることは、十分認識していますが、左旋の受信環境がなかなか整いません。テレビだけでなく、4Kチャンネルもアンテナや配線などの受信環境を整えるのに時間がかかります。また、4Kならではの差別化できるコンテンツの充実がなかなか進まないことなど、採算性の観点から直近で大きく改善することは難しいと考え、終了を決断しました。
松谷:基本的に、来期の連結業績における利益に対するインパクトは軽微だと考えています。
質疑応答:「Starlink Business」について
質問者:「Starlink Business」についてです。今後、どのように事業化を行っていかれるのでしょうか? また、今回NTTコミュニケーションズとNTTドコモという会社名が入っていますが、さらに拡大する余地はあるのでしょうか?
私の理解が正しければ、KDDIも「Starlink」とタイアップしているため、そのあたりについて教えてください。
福岡:Starlink社は、「Starlink」のサービスを自らエンドユーザーまで提供できるかたちにしています。今お話があったように、KDDIもすでに取り扱っていますが、私どもも基本的にはそれと同様の再販事業です。法人のお客さまは直接申し込むこともできると思いますが、いろいろと不便な点もあるため、日本の販売事業者が間に入るかたちです。
したがって、私どもは端末の在庫などを揃えた上で、お客さまに「Starlink」のサービスを快適に提供していきたいと考えています。もちろん、何か問題があった時にお客さまの声が聞けるよう、アフターケアも充実させたいと思います。
またNTTコミュニケーションズ社、NTTドコモ社との関係について、まずは私どもがStarlink Japanと再販契約します。その一部をNTTグループへ卸的に提供し、さらにNTTドコモ社などにおいて、その先のエンドユーザーに提供します。
質問者:基本的には再販事業者としての取り組みだと思いますが、中長期的な目線で見ると、Starlink社は御社のパートナーでもありますが、競争相手の可能性もあると思います。今回のタイアップは、そのあたりを考慮していると理解してよいのでしょうか?
福岡:Starlink社に限らず、低軌道サービス事業者は、私どもにとって競争・競合と、協力していくという両面の関係があると思っています。
実体として、私どものお客さまでも、使い道によっては「Starlink」のサービスを直接使うほうがベターなケースがあります。そのようなお客さまには、再販事業を行うことによって、私どもから「Starlink」のサービスを提供します。
今回はそのようなかたちですが、いずれにしても先を見据え、多くの事業者との協業などをさらに追求していきたいと考えています。