2023年6月期決算説明

次原悦子氏:株式会社サニーサイドアップグループ代表取締役社長の次原悦子でございます。

当社はPR、ブランディング等を担う事業会社を傘下に持つ、コミュニケーションをデザインする企業です。1985年の創業以来、「まだ知られていないモノ・ヒト・コトを世の中に伝えたい」として、数多くの「たのしいさわぎ」を世の中に送り出してきました。

環境は目まぐるしく変化を続けていますが、「人の心が動けば、行動が変わり、やがて世の中全体が変わっていく」との想いは変わらず、今後もそれを実現する企業でありたいと考えています。

アジェンダ

それでは、2023年6月期の決算について説明申し上げます。本日の説明内容は、「①2023年6月期連結決算レビュー」「②事業状況」「③2024年6月期業績予想」「④中期成長戦略」となります。

エグゼクティブサマリー

2023年6月期の連結業績は、売上高が3期連続増収の189億5,600万円、営業利益が3期連続増益の12億9,600万円となり、いずれも過去最高を更新しました。第3四半期決算発表時に業績予想の上方修正を発表しましたが、第4四半期にPR受注が伸長したマーケティング&コミュニケーション事業を中心に想定を上回って推移しました。

事業の状況につきましては、マーケティング&コミュニケーション事業でコスメ・ファッション、食品・飲料等のPR受注が増加したほか、セールスアクティベーション事業では人気キャラクター等のIP(知的財産)を活用した大手コンビニエンスストア向けの販促企画が好調に推移しました。他の2事業も黒字転換し、全体で利益改善が進みました。

2024年6月期の通期業績予想は、2023年5月公表の「成長に向けた戦略方針」に基づき、売上高前年同期比10パーセント以上、営業利益20パーセント以上の増加を前提とし、売上高210億円、営業利益15億6,000万円を見込んでおります。その達成に向けて、株式交換サニーサイドアップを存続会社とする吸収合併効果を最大化してまいります。

中期成長戦略として、今後3年間は「ブランドコミュニケーション」として再定義する基幹事業の成長に注力いたします。3年から5年、また10年程度の時間軸で、基幹事業の周辺領域に事業を育成しながら、中長期的な成長を実現する計画です。

連結決算ハイライト

それでは、2023年6月期連結決算について説明申し上げます。

売上高は189億5,600万円、営業利益は12億9,600万円となり、いずれも過去最高を更新しました。営業利益率は前期の4.7パーセントより改善し、6.8パーセントとなりました。これは主に増収効果と、2つの事業セグメントが黒字転換したことによるもので、収益性は着実な改善が続いています。

株主還元につきましては、安定的な利益配分と今後の戦略投資のための内部留保等を勘案し、1株当たり年間配当金は前期より3円増配の1株当たり15円とし、2023年9月26日開催の第38回定時株主総会への付議を予定しています。

売上高推移

売上高は、株式会社サニーサイドアップを中心としながらも、株式会社ワイズインテグレーションの子会社化、株式会社フライパンの合弁による新設など、グループ経営体制の構築により順調に伸長してきました。特に2021年6月期以降は3期連続で増収となり、2023年6月期の売上高は過去最高を更新しました。

営業利益推移

2020年6月期にフードブランディング事業を中心にコロナ禍の影響を受けましたが、2020年1月の持株会社体制移行後に行ったさまざまな改革効果もあり、営業利益は着実な改善が続きました。特に、2023年6月期の増加幅が大きくなっています。

業績サマリー

2023年6月期の業績は増収効果が奏功し、営業利益以下の段階利益が増加しました。なお、前期に組合損益分配額と助成金収入を合わせて5億円を営業外収益に計上しており、当期はその反動減の影響を受けましたが、営業利益が大きく増加したため、経常利益段階でも増益を確保しました。

また、親会社株主に帰属する当期純利益は、フードブランディング事業で米国ハワイ州からの事業撤退完了に伴う法人税等負担の減少も影響し、前年同期比で52.2パーセント増加しています。

親会社株主に帰属する当期純利益の増加により、1株当たり当期純利益は前期の38.58円から59.28円となりました。経営効率指標であるROE(自己資本当期純利益率)は、前期の23.4パーセントから28.3パーセントへ上昇しました。

セグメント別業績サマリー

当社グループの事業セグメントは、PRを中心にコミュニケーションサービスを提供するマーケティング&コミュニケーション事業、キャラクターなどのIPを活用してセールスプロモーション施策を講じるセールスアクティベーション事業、「bills」のブランディングおよびライセンシングを担うフードブランディング事業、新規事業の開発を推進するビジネスディベロップメント事業の4つで構成されています。

マーティング&コミュニケーション事業とセールスアクティベーション事業の合計売上高は全体の8割を占めており、この基幹事業の伸長が全体の伸びへと繋がっています。セグメント利益は、マーケティング&コミュニケーション事業で人員体制の強化等を行った結果、僅かに減益となったものの、全体の利益を下支えしています。

2023年6月期はフードマーケティング事業で米国ハワイ州からの事業撤退完了に伴う損失解消に加え、国内の収益改善が進み、事業全体で黒字に転換しました。ビジネスディベロップメント事業も黒字化し、全事業セグメントで黒字を確保しました。

営業利益変動要因

営業利益の変動要因を構造別に見ると、前期より費用が3億4,200万円増加したものの、増収効果により6億5,200万円、フードブランディング事業の改革効果(米国ハワイ州からの事業撤退完了)で2億1,900万円の利益を改善しており、営業利益は前期より5億2,800万円増加しました。

セグメント別では、フードブランディング事業で国内の改善を合わせて4億4,300万円、ビジネスディベロップメントで1億7,100万円を改善するなど、2つの事業の改善幅が大きくなりました。

四半期業績推移(売上高)

売上高は特に、第1四半期、第2四半期を中心に好調に推移し、上半期累計売上高は初めて100億円を超えました。イベント需要やインバウンドの回復等も追い風となり、良好な事業環境が続いたほか、日本展開を検討するグローバル企業からの問い合わせが急増するなど、新たな事業機会にも恵まれました。

好調な売上高を背景に、第3四半期は次期を見据えた企画提案等の活動に軸足をシフトして減収となったものの、第4四半期にはPR受注の増加により、前年同四半期比21.0パーセント増収となりました。

四半期業績推移(営業利益)

営業利益は売上高同様に、上半期を中心に改善が進みました。第3四半期に減益となったものの、例年利益の出方が弱い傾向にある第4四半期も利益を改善することができました。

マーケティング&コミュニケーション事業 業績推移

次に、3つの事業の状況について説明申し上げます。

マーケティング&コミュニケーション事業には、株式会社サニーサイドアップのほか、日本・韓国のアーティストやプロスポーツ選手のキャスティングを行う株式会社クムナムエンターテインメント、人気タレントを起用したCMや記者発表のPR等を担う株式会社エアサイド、ファッション関連のPRやイベントを手掛ける株式会社ステディスタディが含まれています。

マーケティング&コミュニケーション事業では、コスメ・ファッション、食品・飲料に加え、商業施設・ホテルの開業およびスポーツイベントの開催に伴うPRを順調に受注し、売上高は前年同期比6.0パーセント増加し、82億700万円となりました。営業利益は19億1,700万円で、人員体制の強化等により、僅かに減益となりました。なお、セグメント利益率は23.4パーセントとなっています。

マーケティング&コミュニケーション事業 23年6月期ハイライト

2023年6月期は人流回復を背景に、商業施設の開業やイベント開催に伴うPRを受注しました。また、グローバルに活躍するプロスポーツ選手やタレントのキャスティングも手掛けました。

セールスアクティベーション事業 業績推移

セールスアクティベーション事業には、株式会社サニーサイドアップ(コンテンツ関連部門)と株式会社ワイズインテグレーションが含まれ、消費者とのコンタクトポイントにおいて購買・成約の意思決定を促すためのソリューションを提供しています。

同事業においては、人気キャラクター等のIPを活用した大手コンビニエンスストア向けの販促企画が大きく伸長し、売上高は前年同期比30.8パーセント増加の71億7,800万円となりました。営業利益は前年同期比10.3パーセント増加の3億8,000万円となり、セグメント利益率は5.3パーセントとなりました。

フードブランディング事業 業績推移

フードブランディング事業では、オーストラリア・シドニー発のオールデイダイニング「bills」の国内におけるブランディング、韓国におけるライセンス管理と店舗運営を行っています。国内では直営7店舗、韓国では2店舗を展開しています。

売上高は前年同期比22.9パーセント増加し29億100万円、営業利益は7,600万円となりました。この利益改善は、国内の収益改善が進んだことに加え、米国ハワイ州からの事業撤退に伴う損失解消が寄与しています。

フードブランディング事業 23年6月期ハイライト

フードブランディング事業では、季節に合わせたメニューの提供やインバウンド向けのプレス試食会等を実施しました。初の試みとなる「bills house日本酒」の日本国内店舗での提供が好評を博したため、グローバルプロジェクトとして、オーストラリア、韓国、イギリス版「bills」でも導入を予定しています。

2024年6月期 通期業績予想

2024年6月期業績予想について説明申し上げます。

2024年6月期の通期業績予想は、2023年5月公表の「成長に向けた戦略方針」に基づき、売上高は前年同期比10パーセント以上、営業利益は20パーセント以上の増加を目指し、売上高210億円、営業利益15億6,000万円、経常利益15億4,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益9億3,000万円を見込んでおります。この達成に向けて、株式会社サニーサイドアップを存続会社とする吸収合併効果を最大化できるよう、注力いたします。

成長への戦略投資を行いながらも、株主還元の拡充を図り、1株当たり年間配当金は前年同期より5円増配の20円(中間配当金5円、期末配当金15円)を予定しております。

事業別業績見通し

今後の業績見通しとして、3つの事業の売上高と営業利益の方向性について説明いたします。

基幹事業を再定義したブランドコミュニケーション事業は、グループ3社の統合効果によって売上高・営業利益ともに増加する見込みです。

ビジネスディベロップメント事業は、株式会社アジャイルの株式譲渡により売上高が減少しますが、前期に同社で計上した損失は解消されます。ただし、株式会社サニーサイドエックスでXR事業へ参入し、設備投資を行うことから、事業全体として利益が減少する見込みです。

フードブランディング事業の売上高は、国内の復調傾向が続くとともに、前期にリニューアルの休業期間があった1店舗が通年営業となることから増加する見込みです。利益につきましては、前期のような改革効果はないものの、国内を中心とした改善により増加する見込みです。

ブランドコミュニケーション市場の創出

最後に、中期成長戦略について説明申し上げます。

まず、今後の成長機会として捉える市場とその規模について説明させていただきます。コミュニケーションのあり方が大きく変わる中、従来からの広告、販促、広報といった垣根がなくなる一方、AIの急速な普及等に伴い、テクノロジーの重要度が増しています。

当社グループの事業ドメインは狭義のPR市場にとどまらず、コンサルティングや広告市場を包含した7兆円規模の市場へと広がっています。この大きなブランドコミュニケーション市場を捉えていくため、基幹事業を「ブランドコミュニケーション」と再定義し、ビジネスを拡大させたいと考えています。

成長のための事業ポートフォリオ

成長への事業ポートフォリオについて、まず、2024年6月期からの3か年は、中核の「ブランドコミュニケーション」を強化し、成長を図る予定です。同時に、基幹事業を取り巻くテクノロジーを「ブランドテック」として投資を開始し、基幹事業の強化に繋げながら、3年から5年で次の成長の柱に育成したいと考えています。

さらに10年程度の長期では、女性のヘルスケア、キャリアとの両立など、ライフデザインを啓発するプロジェクトに長年取り組んできた経緯から、社会的課題をテクノロジーで解決する「サステナブルテック」へ投資しながら成長を実現したいと考えています。

「ブランドコミュニケーション」「ブランドテック」「サステナブルテック」の各領域の詳細につきましては、後出のスライドにて説明申し上げます。

中長期の事業成長イメージ

中長期的な事業成長を図で表すと、最初の3か年は「ブランドコミュニケーション」を中心に成長し、3年から5年で「ブランドテック」を次の成長の柱として育成し、10年程度の長期目線で「サステナブルテック」事業を創造していくというように、それぞれの成長を積み重ねて大きな成長に繋げるイメージです。

次の時代へ、まず構造改革を断行

基幹事業としての「ブランドコミュニケ―ション」の強化、成長に向け、まずグループ3社の統合効果の最大化に注力します。株式会社サニーサイドアップを存続会社として、2023年7月1日を効力発生日とする株式会社スクランブルの吸収合併が完了し、2023年9月1日を効力発生日とする株式会社ワイズインテグレーションの吸収合併が予定されています。

当該3社はマーケティング&コミュニケーション事業とセールスアクティベーション事業の主軸を担うことから、本合併により経営資源を集約して経営効率を改善するとともに、各社が持つ知見・ノウハウを共有し、事業の強化に繋げる予定です。

更なるグループシナジーの発揮

当該3社に限らず、企業間連携を推進し、さらなるグループシナジーを創出します。事業戦略に関する会議体を設けるなど、知見・ノウハウの共有を促す体制も併せて整備してまいります。

コア事業の極限までの成長

基幹事業の今後の方向性について、説明申し上げます。

これまでクライアントへの対応は、自ら営業をするというより、先方からの問い合わせに対して提案し、ご依頼いただいた内容に全力で対応することが多くなっていました。吸収合併完了後の新生サニーサイドアップは、クライアントと長期的な関係性を構築していくことをあらためて重視したいと考えています。

提供サービスにつきましては、積極的なクロスセルを実施するなど、3社の知見・ノウハウを集結して幅広く提案し、高付加価値化を目指します。また、経営資源を集約して人員配置を最適化し、生産性の向上にも取り組んでまいります。

ブランドテック投資

基幹事業の強化と同時にスタートする「ブランドテック(ブランド×テクノロジー)」は、3年から5年で次の収益の柱として育成する予定です。当社グループでは、基幹事業との親和性が高いXRの画像処理技術を活用し、自社内にXRスタジオを設置して、3D空間と映像コンテンツを合わせた新たなコミュニケーション手法を提供サービスとして加える予定です。

サステナブルテック投資

当社グループは、女性のヘルスケア、キャリアとの両立など、ライフデザインを啓発するプロジェクトに長年取り組んでおり、これらの課題をテクノロジーで解決する「サステナブルテック」への投資は長期的に取り組むべき課題と考えております。

主にフェムテックを推進する海外スタートアップ企業へ投資し、技術発掘と普及に努めたいと考えています。この時間軸としては、10年程度の長期で収益化を図りたいと考えています。

3か年成長ターゲット

2024年6月期からの3か年は、基幹事業を中心に売上の成長と収益性の改善を目指しており、2026年6月期の連結営業利益目標を20億円と掲げています。その実現に向けて、「ブランドコミュニケーション」事業では、3か年の年平均売上成長率13パーセント、営業利益率16パーセント程度をターゲットとして考えています。

成長への戦略投資

株主還元を行いながら、成長に向けて、テクノロジー、人財、DXへの投資を戦略的に行います。金額規模としては、過去3か年の営業利益合計25億円の6割に相当する15億円を戦略投資枠と考えています。

人的資本経営ガイドライン

企業の成長と同時に大切にしたいのが、サニーサイドアップグループを支える人財であり、目指すべき指針を「人的資本経営ガイドライン」として示しております。

当社グループは、性別・年齢・国籍等の属性に関わらず、機会を等しく提供することを基本方針としており、女性活躍推進に向けて各種施策を講じています。現在、当社の取締役女性比率は33.3パーセントですが、今後も30パーセント超の水準を維持し、さらにグループ管理職女性比率44.7パーセントを今後は50パーセントを目途に高めたいと考えています。

なお、私、代表取締役社長次原悦子は2021年6月より、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)のダイバーシティ推進委員会委員長を務めており、より一層取り組んでいく所存です。

また、先ほどの戦略投資に含まれる人財投資につきましては、3か年で5億円以上を予定し、事業環境の変化に対応できるよう、教育プログラムを拡充いたします。また、グループ再編後には全社員を対象にエンゲージメントを測定し、組織上の課題を抽出しながら解決に取り組んでまいります。

株主還元

成長に向けて3か年で15億円の戦略投資を行いつつ、株主還元につきましては配当性向30パーセント程度を目途に、経営環境等を総合的に勘案した安定的な利益配分を行ってまいります。なお、2024年6月期は配当性向32.1パーセントを見込んでおります。

新経営体制

経営体制の強化のため、経営のプロフェッショナル3名を外部より招聘いたしました。当社最高執行責任者に植野大輔、中核企業の株式会社サニーサイドアップ代表取締役社長にリュウ シーチャウ、XR事業を推進する株式会社サニーサイドエックス代表取締役社長に西谷大蔵を迎え、中長期的な成長を実現するための経営体制を整えています。

市場区分の再選択

当社は2023年8月14日、スタンダード市場への上場選択申請を行いました。当社の経営課題は中長期的な企業価値向上にあり、その実現に向けて経営資源を事業成長に集中すべきであること、また株主さまおよび投資家のみなさまに当社株式を安心して保有・売買いただくための環境を整えることが重要と判断し、市場区分の再選択をする決断に至りました。株主さまおよび投資家のみなさまに今後とも当社をご支援いただけるよう、ここまで説明申し上げた成長への施策を確実に遂行したいと考えています。

株主さま、また投資家のみなさまにおかれましては、サニーサイドアップグループのこれからの活動に引き続きご支援をいただけますと幸いです。ありがとうございました。