2022年3月期決算説明会

松岡典之氏(以下、松岡):みなさま、こんにちは。株式会社マツオカコーポレーション代表取締役社長の松岡典之でございます。みなさまには平素より大変お世話になっており、大変感謝申し上げます。

当社グループは2017年12月に東証一部に上場を果たし、今年は5年目という節目の年を迎えました。その間、当社グループの主要な取引先であるアパレル業界を取り巻く環境変化やコロナ禍もあり、2019年3月期からの3年間を計画期間とする前中期経営計画は目標を達成することができませんでした。

この期間は当社グループにとっても大きな苦境ではありましたが、事業部の統合を含む組織再編を進めるとともに、経営幹部人材の育成を図ることで内部体制強化に取り組みました。また、同業2社の事業譲受により、バングラデシュでの生産体制の強化、独自の商品企画提案力の強化を図ることもできました。

長期化するコロナ禍と経営環境の変化のなかで、事業の業績そのものは非常に厳しい状況で推移しましたが、体質強化という面では、当社グループ一丸となって取り組んだ成果が、今、着実に表れ始めたと感じています。

これらの取り組みによって、受注活動や生産活動における当社グループの優位性が高まり、強みが引き出されつつあることを実感しています。このような足場固め、基盤づくりを着実に行っていくことで、新たな2022年3月期からの5年間を計画期間とする中期経営計画を力強く推進し、目標達成できるものと確信しています。

2023年3月期においては、当社グループのビジョンである「あらゆる服づくりの舞台裏に私たちがいる」のもと、基幹事業の着実な成長を支えるべく、より一層のグループ一体経営を推進していきます。また、組織統合および取締役の権限集約によって経営執行のさらなるスピードアップを図り、より一層の企業価値向上を目指して邁進してまいります。

この後、2022年3月期の通期決算概要、および2023年3月期の業績予想と合わせ、2021年5月に策定した中期経営計画「ビジョン2025」についてもくわしく説明します。本日はどうぞよろしくお願いします。

会社概要

金子浩幸氏(以下、金子):当社グループ、株式会社マツオカコーポレーションは、海外の縫製工場における衣料品の生産を中心に事業を展開しています。中国、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアに自社工場を展開しており、2022年3月期末時点では、日本の本社を含めグループ全体で働く従業員は16,434人です。2017年12月の上場後、2022年3月期で5回目の決算を終えました。

それでは、2022年3月期決算の概要をご説明します。2022年3月期は、新型コロナウイルスの影響が色濃く残り、想定以上に厳しい結果となりました。一方で、そのような環境下においても、アフターコロナを見据えて、工場投資などの将来への準備を進めた期でもあります。

連結損益計算書

連結損益計算書です。スライド真ん中のオレンジの文字が当期の業績となります。5,400万枚の製品を生産販売し、売上高510億円、経常利益10億円、親会社株主に帰属する当期純利益5億円、経常利益率は2.0パーセントとなりました。

決算ハイライト(業績予想対比)

2021年11月12日に発表しました、業績予想との比較による決算ハイライトです。売上高は業績予想に対してプラス2.1パーセントと若干上回ることができました。経常利益については、営業利益が予想をわずかに下回りましたが、外貨決済取引からの為替差益が増加し、想定を107.6パーセント上回りました。親会社株主に帰属する当期純利益については、経常利益が想定を上回ったことと、海外子会社で繰延税金資産を計上したことなどから、想定を86.3パーセント上回りました。

決算ハイライト(前期対比)

前期対比によるハイライトです。売上高については、前期にあった布製マスク生産がなかったことに加えて、新型コロナウイルスによる行動制限が生産面に影響をおよぼしました。ベトナム政府の感染拡大防止策から主力工場の稼働制限があり、お客さまのオーダーをしっかりと受けられない時期がありました。

一部のアイテムで需要の回復が見られたものの、これらの影響をすべて補うには至らず、28億円の減収となりました。経常利益は、減収とそれに伴う工場固定費負担の増加から、30億円の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の減益要因も同様です。

売上高(品目別・生産地域別)

品目別・生産地域別の売上高の内訳です。品目別では、前期の特殊要因である布製マスクを除くと、カジュアルウェアがわずかに減少した以外は総じて増加しています。布製マスク以外の従来のアイテム全体では約40億円の増収です。生産地別では、ASEAN諸国等への生産地シフトが進行した結果、中国生産が減少し、バングラデシュ生産とベトナム生産が約35億円増加しました。

売上高(生産地域別比率)

売上高の生産地域別比率を示したグラフです。ASEAN諸国等での生産による売上高の比率は、前期の43パーセントから50パーセントと7ポイント増加しました。特にバングラデシュ生産の売上高比率は、新工場の貢献もあり、プラス8ポイントとなりました。

経常利益の変動要因(対業績予想比)

経常利益の業績予想からの変動要因分析となります。円安による為替差益の増加からプラス3億円、国際物流の混乱への対応が遅れていた一部のアイテムがありましたが、そちらのオペレーションの改善が進んだことによりプラス2億円、業績予想から5億円増の10億円となりました。

経常利益の変動要因(対前期比)

経常利益の前期実績からの変動要因分析です。前期に利益を上げた布製マスクがなかったことや、ベトナム政府の新型コロナウイルス感染症対策による主力工場の稼働制限から、売上総利益が41億円の減益となりました。貿易決済における為替差益の増益や前期に計上した持分法投資損失がなかったことが、営業外ではプラスに働きましたが、売上総利益の減益の影響が大きく、経常利益は30億円減の10億円となりました。

連結貸借対照表(前期比)

連結貸借対照表です。ここに当期に進めた工場への投資が表れています。総資産が前期の430億円から518億円と88億円増加しました。流動資産は、棚卸資産と現金預金が増加しており、現金預金の増加には、期末近くに調達した未投入の工場建設資金も含まれます。固定資産の増加は、主にベトナム工場新設と中国の生地加工工場移転への投資によるもので、有形固定資産は金額ベースで約36億円、前期に対して36パーセント増加しました。

負債についても工場建設資金などで借入金が増加しており、B/S全体として、工場建設を進めたことが表れています。純資産については、株主資本は微増でしたが、円安進行により為替換算調整勘定が約26億円増加しました。

連結キャッシュ・フロー計算書

連結キャッシュ・フロー計算書です。税引前利益が減少したことや前期の利益から計算された法人税等の支払額が増加したことなどにより、営業キャッシュ・フローは8億円にとどまりました。投資キャッシュ・フローは工場建設及び移転による設備投資などから28億円の支出、財務キャッシュ・フローは工場建設資金などの借入金純増により35億円の収入と、ともに工場建設に関する収支が大半を占めました。円安進行による換算差額12億円のプラスもあり、期末の現金及び現金同等物は、前期に対して約23億円増加し、152億円となりました。以上、2022年3月期決算の概要についてご説明しました。

外部環境の変化と顧客要請の高まり

先日5月24日に開示しました、中期経営計画の概要についてご説明します。これは、2021年5月14日に開示した中期経営計画「ビジョン2025」を、この1年間のビジネス環境や当社グループ、お客さまの状況の変化を織り込み発展させ、かつ定量目標を設定したもので、2023年3月期単年計画の前提となるものです。

まずは、外部環境の変化と当社グループに対するお客さまからの要請の高まりについてです。ご存じのとおり、ビジネス環境においてはさまざまな不確実性が高まっています。具体的には、コロナ禍と、それに伴う国際物流の混乱、貿易問題や戦争、紛争等といった地政学的リスクなどがあげられます。加えて、社会的な要請として、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが企業に求められています。また、消費者の方々においても、コロナ禍によるライフスタイルの変化があり、サステナビリティへの意識が向上しています。

このような環境の変化から、当社グループのお客さまにおいては、変化への対応力があり、信頼できる縫製工場へのニーズが高まっていると感じています。コロナ禍や地政学的リスクにより、世界の生産背景が変化し、縮小傾向にある一方で、国際物流の混乱に対応できるマネジメント力や多元的な生産背景が期待されています。ものづくりとデリバリーが難しい時期だからこそ、「欲しいときに欲しいものを欲しい量、調達したい」というニーズが高まってきています。

中期経営計画 「ビジョン2025」

そのようなお客さまのニーズに応えるため、当社グループは、2022年3月期から2026年3月期までの5年間を対象期間とする中期経営計画「ビジョン2025」を策定し、「あらゆる服づくりの舞台裏に私たちがいる」ことをビジョンとしています。

中期経営計画の位置付け

基本方針です。2022年3月期から2023年3月期までを、アフターコロナへの準備期間のための第1期とし、コロナ禍においても、工場建設や組織の再編、オペレーションの改善等、基盤づくりを進めています。2024年3月期から2026年3月期までの第2期で、徐々に回復するアパレル需要と第1期で拡大した生産能力をマッチさせ、新たな成長を目指します。

基本戦略

基本戦略として3つの重点取り組みを設定しました。その中でも大きな柱となるのが「サプライチェーンの更なる多元化推進と『良質なものづくり』の一層の強化」です。柔軟で強靭なサプライチェーンを整備することでお客さまのニーズに応えるとともに、中国からASEAN諸国等への生産地シフトで、コスト競争力の強化と地政学的リスクの低減を目指します。また、「新素材開発及び新たな製品開発への取組推進」や「主力OEM事業における営業力の強化」も進めていきます。

サプライチェーンの更なる多元化推進と、「良質なものづくり」の一層の強化

まずはサプライチェーン多元化のための、ASEAN諸国等への生産地シフトを進めながら、生産能力を拡大していきます。スライドの円グラフのとおり、2022年3月期には、売上高ベースで約50パーセントだった中国の生産比率を、最終年度の2026年3月期では約30パーセントにまで減らし、ASEAN諸国等での生産量を約70パーセントとします。中国、バングラデシュ、ベトナムの生産量はそれぞれ約3分の1となる予定です。また、下段にありますベトナムとバングラデシュでの投資計画から約1,500万枚の生産能力を増強し、売上高も2022年3月期の510億円から700億円へ、37パーセント増を目指します。

サプライチェーンの更なる多元化推進と、「良質なものづくり」の一層の強化

生産能力を拡大するベトナムとバングラデシュについてご説明します。当社グループの工場は、良質な労働力の確保と適切なコストが成長の源となっています。また、お客さまや取り扱うアイテムによっては、納品までのリードタイムや品質とのバランスが求められます。これらが期待できるベトナムやバングラデシュへの投資を進めていきます。ベトナムについては、RCEPによる免税メリットも魅力の1つです。

新素材開発及び新たな製品開発への取組推進

次の取り組みは「新素材開発及び新たな製品開発への取組推進」です。新素材開発の中心となるのは、生地加工を行う子会社、嘉興徳永紡織品有限公司です。ラミネート加工による透湿、防水、撥水技術を活かした機能性素材を、アパレルだけでなく、さまざまな分野のお客さまに対して提案し、開発を行います。また、縫製業においても、お客さまのニーズに合わせて積極的に協業し、新たな商品企画に取り組みます。

主力OEM事業における営業力の強化

「主力OEM事業における営業力の強化」です。当社グループの各工場の特徴を整理し、お客さまにご理解いただくことで、中長期的な協働体制につなげます。また、成長が見込める分野のお客さまへの新規提案、海外のアパレル展示会への出展等から、新規顧客開拓を進めます。

定量目標 売上高700億円、経常利益35億円の実現

これらの取り組みを基にした定量目標の、中期経営計画5年間の予想です。最終年度の2026年3月期で売上高700億円、経常利益35億円、2022年3月期比でそれぞれ37パーセント増と250パーセント増を目標とし、新たな成長を目指します。

設備投資の推移

設備投資の計画です。中期経営計画第1期の2年間でベトナム、バングラデシュへの積極的な投資を行い、それを基盤として中期経営計画第2期の成長へつなげます。第1期の2年間で新設する工場は、ベトナムのアンナム工場の第2・3・4期とタンチュオン工場、そしてバングラデシュのIMBD工場の第2期です。

配当方針

配当方針です。株主のみなさまに安定的に利益配当することを基本方針としており、利益成長と定量目標の達成度合いにあわせて増配を検討します。

サステナビリティの取り組み –これまでの活動–

当社グループのサステナビリティへの取り組みについてご説明します。当社グループは1990年の中国進出以来、30年余りにわたり、中国やASEAN諸国等で事業を展開しています。各国での事業等での現地雇用を通じ、当社グループ工場で働く人々に経済的な基盤と安心安全な労働環境、教育の機会などを提供してきました。2022年3月期末時点で1万6,000人という従業員数は、2026年3月期には2万5,000人に達する見込みです。

サステナビリティの取り組み –これまでの活動–

何もない土地に縫製工場を建設し、働く人々が集まることは、時として工場の近隣にまちを育むことにつながり、その地域を豊かにするお手伝いにもなりました。これは今後も当社グループが変わらず続けていく取り組みであり、SDGsの第1から6の目標にもつながるものと考えています。

サステナビリティの取り組み –これまでの活動–>

当社グループ工場の労働環境の一例です。清潔で整備された工場の環境だけでなく、託児所や医務室、安全な食事の提供などの福利厚生も整え、快適に働いていただけるよう努めています。

サステナビリティの取り組み –これからの活動–

これまで実施してきたことだけでなく、企業に対するサステナビリティへの社会的要請にも適切に対応していきます。プライム市場上場企業として、TCFD等の対応を進め、みなさまに開示していきます。以上が、中期経営計画「ビジョン2025」の概要です。

2023年3月期定量計画

2023年3月期の定量計画と業績予想についてです。2023年3月期は、中期経営計画「ビジョン2025」第1期の2年目です。引き続き、工場建設を中心に、新たな成長に向けての準備を進めます。今年度はアフターコロナへの準備期間となりますが、その中でも既存工場の操業を維持し、一部の新設工場の生産量を増やすことにより、売上高は前期比9.7パーセント増の560億円を見込んでいます。

経常利益は、新設工場の生産開始における先行コストを見込むものの、生産量増加に伴う増収から、前期比15.6パーセント増の12億円を見込みます。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上した固定資産売却益や繰延税金資産の計上がないため、前期比46.3パーセント減の3億円を見込みます。

2023年3月期の主な設備投資計画

2023年3月期の主な設備投資計画です。引き続き、ベトナムおよびバングラデシュでの工場建設投資を進めます。4つの計画で57億円を投資し、約1,200万枚の生産能力増強を図ります。

質疑応答:2022年3月期決算成績について

司会者:「2022年3月期決算は3期連続減収、2年ぶりの減益でした。このことについて、どのように受け止めていますか?」というご質問です。

松岡:業界全体のサプライチェーンの混乱の中、営業面では好調を維持していましたが、生産面では、コロナ禍による操業制限や国際物流停滞などが、マイナス要因として働きました。これらが正常化すれば、当社グループの生産体制を活かした事業の成長性が十分に見込めるため、業績回復につながる状況は整ってきたと思います。

厳しい経営環境が続きましたが、生産体制の維持、また強化を図り、拡大路線をけん引できる生産背景を整備してきたことで、2022年3月期も黒字で着地できたと思っています。

また、新型コロナウイルス感染症の再拡大や地政学的なリスクにより、生産地の見直しや代替え地での生産を検討するお客さまが増えている中、当社グループの強みである幅広い生産拠点網を活かした生産体制の維持、強化に努めてきました。そのようなこともあり、アジア5ヶ国に生産拠点を有する当社グループの強みが浮かび上がった1年になったと思います。

質疑応答:業績向上の施策について

司会者:「2023年3月期の業績見通しに関して、業績向上の施策について教えてください」というご質問です。

松岡:引き続き、営業面は好調に推移しています。それを下支えする生産面が回復すれば、収益改善は十分に見込める予想です。それを戦略化したものが、2021年5月に公表した中期経営計画「ビジョン2025」です。それに基づいて設備投資を積極的に行います。

アフターコロナに向けて回復するアパレル需要を十分に受け止め、さらなる成長の軌道に乗せるための準備期間としての2023年3月期は、年内にベトナム、バングラデシュの新工場を完成させ、生産体制強化を進めます。中期経営計画「ビジョン2025」の着実な実行と、さらにその先の成長の基盤づくりに向けて進んでいく所存です。

質疑応答:大型設備投資の回収の見込みについて

司会者:「大型設備投資をしているが、回収の見込みはいかがでしょうか?」というご質問です。

松岡:業界全体でサプライチェーンが大変混乱しています。その中で「つくり場」の減少により当社グループへのニーズ、生産へのニーズは高まってきています。お客さまからの引き合いも強く、工場のキャパシティはほぼ埋まっている状況です。

当社グループは顧客の要請に応じて工場の増強を行っています。さらに中国の縮小計画も着実に進み、中国からベトナムやバングラデシュの新工場に生産地を入れ替えて収益を改善し、投資回収に結び付けていきます。ご期待に沿う業績を達成するためにも、この中期経営計画第1期で生産基盤を盤石にし、体制を強化していきたい所存です。

質疑応答:中期経営計画達成の可能性について

司会者:「前回中期経営計画に対する結果は期待に沿うものではなかったが、今回の中期経営計画は達成可能でしょうか?」というご質問です。

松岡:前回中期経営計画は、コロナ禍や地政学的な諸問題の影響を大きく受けたこともあり、株主のみなさまの期待に沿う業績を上げることができませんでした。一方で、厳しいサプライチェーン環境の中で、アジア5ヶ国に生産拠点を有する当社の強みが浮かび上がってきたと感じています。

中国からベトナムやバングラデシュの新工場に生産地を入れ替えることにより収益改善に結び付け、アフターコロナに向けて回復するアパレル需要を十分に受け止めることにより、今回の中期経営計画の達成を確実なものとしていきます。

質疑応答:急激な円安の影響について

司会者:「急激な円安は、業績に影響がありましたか? また、今後の影響はいかがですか?」というご質問です。

金子:当社グループにおいては、お客さまにより為替リスク対応に関する取引上の約束が異なっています。多くの場合、当社グループは為替リスクを直接は負わないため、円安の影響はそれほど大きくありません。ただし、実際に受注してから納品までの間に急激に円安が進んだ場合には、影響を受ける場合があります。

当然ながら、日本経済全般においては、原材料の値上げなどを含め円安による影響を受けており、消費マインドを低下させる原因ともなっています。こちらについては、当社グループにおいても懸念材料です。

今後も進める工場建設や設備購入においては、外貨での支払いが発生するため、円安の影響を受ける可能性がありますが、これに対しては為替予約で一定のヘッジを行っています。

質疑応答:経営層変更の理由と目的について

司会者:「先日、役員異動のプレス発表があり、経営層の変更が頻繁に行われている印象を受けました。今回の異動の理由や目的についてお聞かせください」というご質問です。

松岡:先行きが不透明な経営環境の中、経営執行のさらなるスピードアップを図るため、組織をスリム化し、私自身がCOOを兼務することにしました。今後も引き続き、指名・報酬委員会からの客観的な答申も踏まえつつ、中長期的な経営戦略に基づいたバランスの取れた役員人事を行い、取締役会の実効性を高め、ガバナンス体制の強化を図ります。

質疑応答:ASEANへの生産シフトの評価と見通しについて

司会者:「中国からASEANへの生産シフトが進んでいるが、これに対する評価と今後の見通しについてお聞かせください」というご質問です。

松岡:2022年3月期における生産国別比率は、中国が49.7パーセントに対し、中国以外のASEAN諸国等の比率は合計で50.3パーセントとなり、前年同期と比較すると7.1ポイントの増加となっています。今後の目標としては、現時点で中国が約50パーセントと中国以外が約50パーセントですが、3年から4年をかけて、中国が約30パーセント、中国以外が約70パーセントにする予定です。コスト競争力の高いASEANや東南アジアでの生産比率を拡大します。

質疑応答:今春以降の受注傾向について

司会者:「今年の春から国内のアパレル売上は回復傾向ですが、受注が増えている傾向はありますでしょうか?」というご質問です。

松岡:今年の春から、小売りは徐々に回復していると見ています。そのような中で、サプライチェーンの分断状況と中国のロックダウンによる影響が引き続き出ています。

そのため、受注の回復状況と、それを生産面で支えるサプライチェーンの状況がこれから整っていく時期に入ると感じています。その中でカギとなるのは、上海と北京のロックダウンがいつ頃解除されていくかだと思っています。

質疑応答:中期経営計画の成長戦略の根拠や背景について

司会者:「中期経営計画の成長戦略の根拠や背景となるものについてお聞かせください」というご質問です。

松岡:新型コロナウイルス感染拡大などにより、縫製の生産拠点は非常に大きく減少しています。また、地政学的リスク、特にミャンマーの政変によって生産地が減少しています。さらに、国際物流の混乱が長期化しており、アパレル業界全体として、お客さまが欲しい時に欲しいものを欲しい量、確保することが難しい状況です。

そのような中で、私どもは中国・ベトナム・バングラデシュの新工場を含め、生産体制をさらに強化し、お客さまのニーズに対応することで、成長戦略につながると信じています。

質疑応答:サステナビリティに対する具体的な取り組みについて

司会者:「サステナビリティに対する具体的な取り組みについて教えてください」というご質問です。

松岡:当社グループでは、海外工場で働く従業員の生活と雇用の安定を支えています。さらには健康管理指導や職業教育など、SDGsの第1から第6の目標について海外工場設立当初から実践してきました。

このような私たちのサステナビリティへの取り組みについて、これまで社外の方にわかりやすくお伝えすることが十分にできていませんでした。今後は、取り組みを継続しつつ、新たにTCFDを基本的な枠組みとして、情報を収集・分析し、可視化していく予定です。そして、分析結果から数値目標を設定し、事業計画に織り込むことで戦略化し、ステークホルダーへ適正な情報開示を行っていきます。

質疑応答:現時点での工場稼働状況と今後の見通しについて

司会者:「現時点での工場稼働状況と、今後の見通しについて教えてください」というご質問です。

金子:当社グループが工場を展開している各国においては、過去に人数制限や残業制限などはありましたが、大規模な都市封鎖を行わない方向ですので、工場停止のような強制的な指示は現在のところありません。人の動きも戻りつつありますので、新型コロナウイルス感染症の対策はしっかりと継続しながら、各国工場での採用を引き続き積極的に行い、生産能力を増強していきます。

また、直近の2022年1月から3月の生産に関して、ベトナムでは2月と3月に稼働制限があったため稼働率は約70パーセントとなりましたが、こちらも徐々に回復しています。中国では3月に一部の工場の稼働率が85パーセントとなりましたが、それ以外の国ではこのような制限はなく、ほぼ影響はない状況となっています。

なお、中国の一部の地区では3月中旬からロックダウンの指令がかかっています。そのため、物流機能の混乱から素材や資材の調達遅延が発生しており、生産に影響が出ています。この状況が長期化する懸念もありますが、一部報道では上海のロックダウンが6月中旬に解除されるとのことですので、引き続き注視していきます。(注:7月29日現在は既に解除されております。)

質疑応答:中期経営計画1年目の進捗について

司会者:「中期経営計画1年目の進捗はいかがでしょうか?」というご質問です。

松岡:ベトナムとバングラデシュでの生産拠点の拡大を推進しています。生産背景の拡充を進め、アパレル需要の回復に備えています。

ベトナムでは、アンナム工場の2期工事が2022年1月に完成し、第3期・第4期の工場建築にも着手しています。また、タンチュオン工場の建設にも着手しています。

バングラデシュにおいては、IMBD工場の第2期工事にはすでに着手しており、2023年1月の完成を目指しています。

質疑応答:ウクライナ侵攻の影響について

司会者:「ウクライナ侵攻の影響はあるのでしょうか?」というご質問です。

金子:当社グループの中国生産の製品の一部は、陸路でヨーロッパのお客さまへデリバリーしています。そのため、中央アジアから西側への製品輸送に支障をきたしています。この状況が長期化すれば、物流面のみならず、原油価格の高騰とそれに伴う物価上昇などの世界経済への打撃も大きくなり、当社グループの業績にも影響が出てくると懸念しています。

質疑応答:サプライチェーンの混乱による受注増加について

司会者:「サプライチェーンの混乱により、御社への発注が増えるとのことでしたが、もう少し詳しく解説してください」というご質問です。

松岡:現在、コンテナの手配などの物流面や、生産地での新型コロナウイルス感染拡大による操業度低下によってサプライチェーンに混乱をきたしています。私どもは中国・ベトナム・ミャンマー・バングラデシュ・インドネシアの5ヶ国に工場を配備しているため、感染拡大の影響が集中することなく、段階的に生産を再開できるというサイクルを作れています。

感染が集中した国では、ものづくりがほぼできない状況になってしまいますので、その分の生産を、代替え可能な別の生産地で請け負うことで、サポートすることができます。このような多元化した生産背景が、お客さまにとってより安心を保証できるものとなってきており、その点についてお客さまからの評価が上がってきているのだと感じています。

質疑応答:RCEP発行のメリットについて

司会者:「RCEP発行によって、業績によいインパクトはありましたか?」というご質問です。

金子:RCEPにおける関税のメリットは、買い手、つまり当社のお客さまにとってのメリットが最も大きく、そこに魅力を感じるお客さまが実際に活用するケースも増えてきています。

当社グループとしては、RCEPのコスト的メリットだけではなく、リードタイムが比較的短いベトナムでの生産地的メリットを重要視しています。RCEPをきっかけに、関税メリットと合わせて、当社グループのお客さまにも還元できると考えています。これからベトナムで新規工場を建設することによって生産基盤の強化を進めていこうと考えている中で、RCEP発行は少なからず追い風であると捉えています。

質疑応答:新たな地域への進出について

司会者:「次の進出国はどこを予定していますか? アフリカなどのさらなる拠点展開は考えているのでしょうか?」というご質問です。

松岡:エチオピアなどの東アフリカやインドへの進出について聞かれることも多くあります。しかし、当社グループでは、現状、日本向けの商品を主流としているため、リードタイム、輸送を考慮した場合、距離的に遠くなることに加え、地政学的なリスクも懸念されるため、現時点ではなかなか難しいと捉えています。

お客さまのニーズをはじめとして、経営環境に変化が生じた場合、検討の余地はあると認識していますが、今のところはアフリカやインドに進出する予定はありません。当面は、バングラデシュ・ミャンマー・ベトナムでの生産力の強化を図っていきたいと考えています。

質疑応答:足元での物流の状況について

司会者:「サプライチェーンについて、ヨーロッパへの陸路に影響があるとのことでした。その他、足元での物流の状況を補足していただけないでしょうか?」というご質問です。

松岡:中国を中心に進められていた「一帯一路」の方針の中で、中国からヨーロッパまで鉄道輸送がつながりました。これにより陸路でのヨーロッパへの物流が活況を呈していたのですが、ロシアのウクライナ侵攻により鉄道輸送が寸断されてしまいました。

そのような中で、ヨーロッパへの物流を昔のように海上輸送へと切り替えるお客さまが増えてきている状況です。したがって、大陸内での輸送が鉄道ではなく海上輸送へ切り替わっているところなのですが、輸送にかかる日数も大きく変わりますので、そのあたりの影響がやはり心配です。

松岡氏よりご挨拶

本日は当社グループの2022年3月期決算説明会にご参加いただき、ありがとうございました。これからも積極的なIR活動を通じ、適正な企業情報の開示とみなさまとの対話を深めていきたいと考えています。

今後ともご支援賜りますよう、よろしくお願いします。ここまでの時間、お付き合いいただき、誠にありがとうございました。