ご説明の流れ
ダイワボウホールディングスの⻄村でございます。2022年3月期決算内容についてご説明申し上げます。本日はこちらの項目に沿ってご説明いたします。
ダイワボウホールディングス株式会社
当社の概要についてまとめましたのでご覧ください。3つの事業を有するグループですが、IT関連機器の専門商社であるダイワボウ情報システムが売上の約90パーセントを占めていることから、東証プライム市場での業種も卸売業となっています。
連結決算ハイライト
それでは、2022年3月期決算についてご報告します。当期は、⻑引くコロナ禍を背景に事業環境にも大きな変化がありました。
特に、世界的な半導体不足による製品供給の減少や納期遅延などは、主力のITインフラ流通事業に大きな影響をもたらしました。また、これも世界的な問題である原燃料の高騰は、繊維事業、産業機械事業に影響が出ました。各事業の状況については後ほどご説明します。
2022年3月期 売上高
2022年3月期の売上高は7638億円です。昨年4月より収益認識基準を適用しており、その影響額は約648億円でした。この分は売上ではなく純額計上となっています。なお、新基準にて昨年度比較を見た場合は、21.6パーセントの減収となりました。
2022年3月期 営業利益
当期の営業利益は240億円です。特需があった2020年、2021年3月期からは減益となりましたが、過去3番目の実績となっています。
収益認識に関する会計基準の適用について
当期から適用している「収益認識に関する会計基準」の影響について、あらためてご説明します。大きく影響したのは、ITインフラ流通事業における保守・保証サービスやソフトウェアの継続課金による販売です。それらの一部が、会計上の代理人取引に該当するため、これまで売上計上していたものが、仕入額を差し引いた純額を計上することとなりました。
これによる通期の影響額は約648億円となり、従来の会計基準で比較した場合には、20.6パーセントの減収となっています。なお、営業利益率としては収益認識基準適用により、0.2ポイント改善しています。
(補足)ITインフラ流通事業の「取扱高」について
次に、ITインフラ流通事業における「取扱高」の記載について補足します。従来の会計基準における「売上高」については、取引規模を示す上で重要な指標となるため、「取扱高」として継続して活用していきます。当期より、「取扱高」から「収益認識に関する会計基準」の影響額を差し引いた金額が「売上高」となります。
2022年3月期 連結経営成績
連結の売上・利益の実績をまとめたものです。ROE、ROAはご覧のとおりです。4月15日に業績予想の修正を発表していますが、発表時よりはわずかに上振れとなっています。
2022年3月期 連結財政状態・キャッシュフロー
こちらは連結財政状態とキャッシュフローのサマリーとなります。
2022年3月期 セグメント別業績
セグメント別業績はご覧のとおりです。当期より収益認識基準を適用しているため、売上高の増減および前期比は非表示となっています。
セグメント構成割合
セグメントの構成割合はご覧のとおりです。売上高・営業利益ともにITインフラ流通事業が約9割を占めています。それでは、セグメントごとにご説明します。
ITインフラ流通事業
まずは、ITインフラ流通事業です。収益認識基準の適用による売上影響額は約648億円で、従来基準での前期比では22パーセント減少となります。半導体不足の影響で、IT機器全般で納期遅延が発生し、特にサーバーやネットワーク関連製品をはじめとしたシステム商談におけるセット販売に大きな影響が出ました。
また、文教市場においては、前期のGIGAスクール構想に伴う販売の反動減が大きく影響しています。コンシューマ向け市場では、テレワーク・オンライン学習の関連需要は底堅いものの、前期と比較するとPCや周辺機器の販売が減少しています。
一方、期の後半は企業向け、官公庁、自治体向けのIT需要に回復傾向が見られ、市場全体では、クラウド環境構築やサブスクリプション型サービスへのIT支出は伸びています。
国内PCマーケットシェア・商品カテゴリ構成
こちらは国内PC出荷台数における、当社のマーケットシェアとカテゴリ別の売上高推移です。2022年3月期のPCシェアは、全体で24.5パーセント、法人向けの市場で見ると33.9パーセントとなりました。
2020年3月期はWindows更新需要、2021年3月期はGIGAスクール構想の特需により、PCシェアが一気に伸び、今期はその反動もありましたが、シェアは高い水準を維持しています。また、カテゴリ別の実績ですが、PCだけではなく、ソフトウェアや周辺機器・サービスなども、3ヶ年平均成⻑率で見ても順調に成⻑しています。
サブスクリプションビジネス実績
こちらはサブスクリプションビジネスの実績です。サブスクリプションに区分している商品・サービスの取扱高としては、前期比4.1パーセント増の708億円となりました。スライド左側の⻘いグラフで示しているとおり、継続課金による取り扱いの規模は着実に拡大しています。
また、DISのオリジナル管理ポータルであるiKAZUCHI(雷)ですが、取り扱いベンダー数やサービスメニューの件数も増え、2022年3月期の販売パートナーへの販売総額は、前期比31.8パーセント増の147億800万円となりました。3ヶ年平均成⻑率はプラス58.8パーセントとなっており、引き続き高い成⻑率を保っています。
繊維事業
繊維事業です。合繊・レーヨン部門では、環境負荷の少ないレーヨン素材が堅調に推移しましたが、除菌関連向けの商品や不織布の販売は、前年の需要反動が影響し減少しました。
産業資材部門では、電子部品メーカー向けのカートリッジフィルターの需要は旺盛であるものの、テント・帆布などの重布関連商品において、各種イベントの中止や建築工事の減少による低迷が続きました。
衣料製品部門では、米国向けインナーの受注が増加しましたが、外出自粛などの影響によりカジュアル・ブランド製品は苦戦が続きました。また、事業全般に原燃料費高騰の影響が出ており、利益面で低迷しました。
産業機械事業
産業機械事業は、工作機械部門において、主力の航空機、鉄道業界の回復は遅れているものの、中国向けは設備投資に活発な動きが見られ、受注を牽引しました。自動機械部門では、顧客の設備投資に慎重な姿勢が続いていますが、受注は回復傾向にあり、先期から注力しているサービス売上の強化により、利益面での改善も見られます。
2022年3月期 連結貸借対照表(決算短信P5-6)
貸借対照表について補足します。総資産は、受取手形及び売掛金の減少などにより、前期末に比べて275億円減少の3,562億円となっています。純資産は、利益剰余金などの増加により、前期末に比べ68億円増加の1,361億円となっています。
2022年3月期 連結損益計算書(決算短信P7)
次に、損益計算書について補足します。純利益としては、前期比33.9パーセント減少の169億円となりました。販売費及び一般管理費は売上高の減少に伴い、販売費を中心に前期比67億円減少の400億円となりましたが、販管費比率については前期の4.5パーセントから5.2パーセントとなっています。特別利益については、投資有価証券売却益約4億円が含まれます。決算説明については以上です。
2023年3月期 通期業績予想
2023年3月期の業績見通しについてご説明します。売上高は8,300億円、営業利益は273億円を予想しています。セグメント別ではいずれも、2022年3月期の実績を上回る見通しとなっています。
中期経営計画と業績予想の差異
こちらは中期経営計画で発表した2年目の計画と、今期の業績予想について、各事業の営業利益の差異を表したものです。ITインフラ流通事業については、売上増収を見込むものの、⻑引く半導体不足の中で、代替提案などの営業交渉による影響が前期同様に継続することを想定し、営業利益予想は計画どおりとしています。
繊維事業は原燃料価格の高騰が続くことと、コロナ禍からの需要回復が想定以上に遅れていることもあり、利益水準の見通しを引き下げています。産業機械事業についても、原材料の高騰や自動機械部門における前期の受注状況を精査して、営業利益の見通しをわずかながら引き下げています。
ITインフラ流通事業の重点施策
次に、各事業における2023年3月期の重点施策についてご説明します。まずは、ITインフラ流通事業です。
既存のビジネス領域の拡大とあわせて、クラウドをはじめとした成⻑分野におけるマーケットの創造と、サプライチェーン全体につながる生産性向上に取り組みます。半導体不足などの市場環境に適切に対応することで、需要を獲得し着実な成⻑につなげていきます。
iKAZUCHI(雷)
ITインフラ流通事業では「クラウドディストリビューター」を目指す戦略を掲げていますが、その中核を担うiKAZUCHIについてご説明します。
iKAZUCHIは、DISが販売パートナー向けにご提供しているオリジナルのサブスクリプション管理用ポータルサイトです。DISの販売パートナーであれば無料でご利用いただけます。3月現在で88ベンダー、181サービスを取り揃え、月額・年額課金、従量課金などのさまざまな自動更新型のクラウドサービスを共通のプラットフォームで提供することができます。
サブスク販売は、契約管理や請求処理が煩雑になりがちです。それらに伴う販売パートナーの工数を大幅に削減することで、販売パートナーのサブスクリプションビジネスを強力に支援します。iKAZUCHIを利用した販売が増加することで、メーカー、販売パートナー、当社のいずれも安定的な収益基盤を確立することができます。
iKAZUCHI(雷)
スライド左側のグラフは、2018年3月期を基準とした場合の成⻑率を表しています。緑色のグラフは、iKAZUCHIを契約済みの販売パートナー数で、この4年間で2倍以上増えました。
さらに、契約件数は約15倍、ユーザー社数は約12倍拡大しており、販売パートナー1社あたりの契約数が前期と比べても安定して伸びていることがわかります。これはクラウドサービスの普及が進み、利用が拡大していることに加えて、複数のサービスを組み合わせて提案できるマルチベンダーの強みを発揮できている成果と考えています。
今後もサービスメニューの提案力を高めることはもちろん、全国の営業網を駆使したコーディネート、また契約管理機能のさらなる強化により、iKAZUCHIをさらに充実したプラットフォームに成⻑させて、単独ベンダーでは実現できない付加価値を生み出していきます。
取扱高については、2024年3月期までの3ヶ年で2.5倍以上の成⻑を目指しており、前期実績147億円に対して今期の目標は200億円としています。
戦略的商材による優位性の確保
続いて、ITインフラ流通事業における戦略商材の確保についてご説明します。昨今のIT業界では、半導体不足などによる部材の供給懸念により、サーバーやネットワーク関連をはじめ、幅広いIT製品に対して品薄感や納期の⻑期化などの影響が表れています。
その一方で、需要面では、デジタル市場の拡大、IT人材不足、クラウドの活用などにより新たなIT投資の必要性が高まっています。当社は全国の営業拠点から得た販売パートナーからのニーズを踏まえて、各メーカーとの連携をしっかり取ることで、オリジナルモデルや売れ筋商材の確保による安定的な供給体制を整えています。
オリジナルモデルとは、DISとメーカーの共同企画によりDISが販売する限定仕様のモデルのことで、継続的な協業体制の中で業績に寄与しています。引き続き、ITディストリビューターとして戦略的商材を調達・提供することで流通機能を強化し、優位性を確保していきます。
営業効率化とローコストオペレーション
営業効率化とローコストオペレーションです。当社は取り扱い規模が拡大する中で、商社としての適正な粗利率の水準を保ちながら、販管費比率を低減させていくことで利益体質の強化を図ってきました。
今後も継続的なシステム投資による営業活動強化、電子商取引の拡大によるメーカーや販売パートナーを含めた生産性の向上、さらに全国をカバーする物流センターの効率化など、絶えず業務改革に取り組んでいきます。
あらゆるITビジネスを支え続ける企業として
ITインフラ流通事業では、「あらゆるITビジネスを支え続ける企業として」を標榜しています。ITニーズの変化、技術の広がりに対応していくこと、全国のエリアをカバーできる当社ならではの強みを活かし、従来のパートナービジネスをより進化させていきます。
また、メーカー、当社、販売パートナーそれぞれの連携をより強くすることで、ITによってエンドユーザーの目的を実現する新たなビジネスモデルを構築していくことを目指しています。
繊維事業の重点施策
繊維事業です。 市場環境としては、厳しい状況が続いていますが、コーポレートガバナンスの強化により体制を整えた上で、研究開発機能の拡充、経営資源の最適配分を徹底して、持続的な業績貢献に向けて取り組んでいます。
【繊維事業】継続的な構造改革
構造改革も計画的に進めています。分野ごとの研究開発体制の統合や、産業資材部門の工場集約、事業会社の再編など、引き続き、ガバナンスの強化と資本効率の改善を重視した経営を徹底していきます。特に、研究開発については、環境・安全・健康の3つの開発キーワードを軸に、開発成果の最大化と持続可能な社会への貢献に取り組みます。
産業機械事業の重点施策
産業機械事業です。需要の見込める業界や市場にしっかりとフォーカスした提案を行うと同時に、サービス関連のビジネスを拡大することで収益力向上に取り組み、従来の主力であった航空機分野の需要回復に備えて体制を強化していきます。
中期経営計画(2021/5/13発表)
続いて、昨年5月に発表した中期経営計画について振り返りたいと思います。当社グループでは、この3年間を「将来にわたる発展を見据えた転換期」と位置づけ、ビジネスモデルの変革やESG視点での事業運営、人材育成に注力しています。
中期経営計画の進捗状況<収益指標>
経営指標に対する進捗状況をご説明します。初年度である前期の実績は、売上高・営業利益ともに当初計画を下回ることとなりました。
2年目となる今期については、当初計画に対して売上は計画どおり、営業利益は減益の見通しを立てています。売上高の推移をグラフで表していますが、2021年3月期までの集中的な端末需要や、収益認識基準適用の影響を除いた、グラフの土台の青い部分を着実に成⻑させることで、最終年度の目標に向けて取り組んでいきます。
中期経営計画の進捗状況<グループ経営指標>
次にグループ経営指標のROEとROICについて、初年度の実績を振り返りたいと思います。ROEの2022年3月期の実績は12.9パーセントとなりました。こちらは、最終年度に14パーセント以上という目標の達成を目指しています。
また、ROICについては、11パーセントから12パーセントの水準を3年間維持することを目標としており、2022年3月期には若干目標を下回る結果となっていますので、これまで以上に資本効率を意識した経営を徹底することで改善を図っていきます。
中期経営計画 キャッシュ配分方針
キャッシュ配分方針に変更はありません。1株あたり60円の安定配当、機動的な自己株式の取得など株主還元の充実化を適切に図っていきます。
株主還元
ダイワボウホールディングス設立以降の、1株あたりの配当金および当期純利益の推移はご覧のとおりです。繰り返しになりますが、2022年3月期の期末配当については30円を予定しており、中間配当と合わせて年間60円となります。
また、先日発表しましたが、今期も自己株式の取得を行います。約30億円を予定しており、総還元性向は46.2パーセントの見込みです。
グループガバナンス
続いて、グループガバナンスについてご説明します。当社グループでは、各社の責任と権限を一段と明確にすることで、ダイワボウ情報システム、大和紡績、オーエム製作所の3社が、それぞれの事業の中核として迅速な戦略決定と強力な業務執行の推進を担っています。ダイワボウホールディングスは、大局的見地からグループ全体を俯瞰して、グループ戦略の立案など、監督機能の強化を図っています。
また、当社の取締役会は、独立社外取締役が4名、うち女性取締役が2名、社内取締役が3名で構成されており、独立性および多様性を確保できています。さらに、本年6月の定時株主総会の決議を前提に、取締役に対する株式報酬制度を導入する予定です。これにより、中⻑期的な企業価値向上に向けて、より一層のグループガバナンスの強化を図っていきます。
サステナビリティ
ESGへの取り組みについてご説明します。当社はESG推進委員会を設置しており、私が委員⻑を務めています。
まずは、今年1月に2030年度までのCO2削減目標を開示しました。4月には新組織としてESG推進室を設置し、より課題解決に取り組む体制を整えました。
ホームページ上にてニュースリリースも行っていますが、TCFD賛同を表明し、TCFDコンソーシアムにも加盟しました。上期中には、TCFD提言に基づく情報開示も進める予定です。
今後も、ESGデータの情報開示を推し進めるとともに、CO2削減への取り組みや、ダイバーシティへの取り組みなど、SDGsが示す社会課題がもたらすリスクを認識し、社会課題の解決を新たな事業を創出する機会ととらえ、グループとしての取り組みをさらに加速させていきます。
中長期的な成長イメージ
最後に今後の成⻑イメージをあらためてお伝えしたいと思います。この3ヶ年は、需要反動や供給不足の環境を乗り越え、新たな飛躍と持続的な成⻑につなげることで、グループを挙げてステークホルダーのみなさまから⻑く信頼いただける会社を目指してまいります。今後もご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
説明は以上となります。ご清聴いただき、ありがとうございました。