連結業績ハイライト

岩本昌也氏(以下、岩本):管理部長の岩本と申します。本日はよろしくお願いします。

まず、2022年3月期第3四半期連結業績についてご説明させていただきます。数字はグラフのとおり、前年同期と比較して増収増益となりました。特に経常利益は、前年同期比217パーセントの7億4,600万円と大幅な増益となりました。

連結業績の総括

売上高については、コメントにありますように、5G基地局向け電子部品やテレワークの増加によって需要が高まっている家庭用プリンタ向け電子部品、米国での住宅設備向け機構部品の販売が好調に推移しました。

売上、利益の額と率において前年同期を上回ったことや、販管費をほぼ前年並みに抑制できたこと、為替差益の計上によって経常利益が大きく増加しています。また、欄外に記載のように、当期より新収益認識基準を適用し、当社の一部サービスの提供において影響を認識していますが、業績に与える影響は軽微でした。

セグメント業績①

システムセグメントの業績についてご説明します。売上高は前年同期比で1.9パーセント減少し、83億6,300万円となりました。営業利益は粗利額、率の改善によって前年同期比で41.8パーセント増加し、2億6,800万円となりました。

各プロダクトの状況についてですが、リテールソリューションは、 CCTV(カメラ)、小売業向け顔認証システムの大型案件などが好調に推移しましたが、昨年度に携帯キャリア向け大型案件があったことなどから、売上高は前年同期比で3.4パーセント減少し、29億4,500万円となりました。

オフィスソリューションは、データセンター向け入退室管理システムが好調に推移したものの、昨年度に新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及したことにより、非常に好調だったリモートアクセス商品の販売が減少し、売上高は前年同期比で10.2パーセント減少し、20億2,000万円となりました。

グローバルでは、昨年度大きく減速したタイの防火システムの売上が堅調に推移し、売上高は前年同期比5.0パーセント増の18億8,600万円となりました。

サービス&サポートプロダクトは、MSPサービスというサブスクリプション型のネットワークサービス販売が好調に推移し、売上高は前年同期比5.7パーセント増の15億1,000万円となりました。

今後の取り組みについては、リテールソリューションでは好調に推移しているGMS向けのCCTVや小売業向け顔認証システムの拡販、オフィスソリューションではデータセンター向け入退室管理システムの販売強化、サービス&サポートではクラウドシステム商品のさらなる拡販に注力していきます。

セグメント業績②

デバイスセグメントの業績についてご説明します。売上高は前年同期比で8.6パーセント増加し64億2,000万円、営業利益は前年同期比で67.1パーセント増加し3億5,300万円となりました。

電子プロダクトは、5G基地局向けやテレワーク需要増加による家庭用プリンター向け、半導体製造装置向け電子部品の販売が好調に推移し、売上高は前年同期比7.6パーセント増の32億3,100万円となりました。

産機プロダクトでは、米国住宅設備向けのソフトクローズ部品や産業機器向け通信ケーブルなどの販売が好調に推移し、売上高は前年同期比9.7パーセント増の31億8,900万円となりました。

今後の取り組みとしては、電子プロダクトは、受注残の確実な取り込み、半導体製造装置やアミューズメント機器向け半導体の拡販を目指します。産機プロダクトは、産業機器やシステムキッチン向けのパワーサプライ品の拡販に注力していきます。

連結貸借対照表

貸借対照表についてご説明します。2021年3月期末との比較です。資産合計は3億4,500万円減少し、191億2,800万円となりました。流動資産は商品及び製品が大きく増加していますが、売掛金などが減少したことで160億2,700万円となり、3月期末と比較して4億8,900万円減少しました。

流動負債は、買掛金の支払いなどで7億円減少し、38億4,700万円となりました。純資産は3億7,200万円増加しています。こちらは、当期純利益5億2,700万円の計上と配当金の支払いによるものです。なお、自己資本比率は75.9パーセントです。

通期見通し

通期見通しについてご説明します。昨年11月に上半期の業績修正を公表した際に、通期の業績は据え置きとしていました。第3四半期の終了時点での通期見通しへの進捗率は表示どおりで、通期計画に対して営業利益以外はおおむね65パーセント以上となっています。

ご参考までに前年同時期の通期業績に対する進捗度を示していますが、今期の利益面での進捗率は例年に比べて高い状況です。なお、現状で半導体関連の商品調達は若干改善しているものの、まだ全体として物流関連も含めて不透明なところが多く、通期見通しは現状のまま変更ありません。

株主還元について

株主還元についてご説明します。当社は、3月に創業70周年を迎えます。昨年12月に公表したとおり、創業70周年にともない、1株当たり15円の記念配当を実施する予定です。

2022年3月期の期末配当は、業績の見通しや配当性向などを総合的に勘案し、1株当たり23円にさせていただくことを12月に公表しております。中間配当12円をすでにお支払いしていますので、業績に応じた年間配当は35円となり、創業70周年の記念配当と合計すると年間配当は50円と、前年度実績の2倍になる予定です。

私からの第3四半期決算概要の説明は以上です。

AGENDA

井出尊信氏(以下、井出):続いて、井出より新中期経営計画についてご説明します。よろしくお願いします。アジェンダは3つで構成しており、最初に前中計の振り返りと課題について、次に新中計のコンセプトと戦略について、最後に新中計を支えるESGについてご説明します。

新中期経営計画の位置づけ

まず新中期経営計画の位置付けについてです。企業価値の最大化を目指し、「創造へのチャレンジ」をキャッチコピーに新たな企業価値の創造を目指します。対象期間は2022年度となる今年4月から2024年度までの3ヶ年です。プレゼンの中で「前中計」や「現中計」という言葉が出てくると思いますが、これは今年度3月までの今現在の中計となります。

業績の総括

それでは前中期経営計画の振り返りと課題についてご説明します。業績と戦略の両面から総括しますが、まず業績の総括についてです。

前中計の最終年度の数値目標は、売上高を260億円から217億円、経常利益を18億円から11億円と下方修正しました。これはタイの防火システム事業の停滞、新型コロナウイルスの影響によるグローバルビジネスやオフィス、小売関連市場の減速、ECビジネスやRFID事業など、新規ビジネスの実績化の遅れが原因です。

ROEは上昇傾向ですが、当初見通しの8パーセントに届かない結果となりました。一方で、株主還元は連結配当性向40パーセント以上を実行して、当年度は従来の24円から50円への増配を予定しています。

基本戦略の総括 ①付加価値による競争力強化と収益力向上

戦略の総括についてご説明します。まず、基本戦略の1つ目、付加価値による競争力強化と収益力向上についてです。2018年度比での売上目標25億円増の計画に対しては、21億円増と若干計画に届かない見通しです。

ロイヤルカスタマー戦略による売上成長率は22パーセント増となっています。

マネージドサービス事業は計画水準で推移しています。

なお、低収益事業に対してはスリム化を実施したものの、収益の改善までには至らず、課題を残しました。

基本戦略の総括 ②新規ビジネスによる収益基盤の創出

基本戦略の2つ目、新規ビジネスによる収益基盤の創出についてです。2018年度比での売上目標36億円増に対し、1億円減と大きく計画を下回りました。先ほどの業績の総括でもお話ししましたが、タイ、中国事業、新規事業の低迷が要因です。

よかった点は、米国向けの産機商品のシェアが拡大したことやベンチャーキャピタルへの投資を実行したことです。有望なベンチャー企業との代理店契約が締結できたことなど、一部成果が出てきています。

基本戦略の総括 ③事業構造改革と生産性向上

基本戦略の3つ目、事業構造改革と生産性向上についてです。新人事制度の導入などを機に、組織改革なども進めて業務の共有化や効率化にも成果が出ました。IT投資によるマーケティング機能の強化から、新商品投入スピードのアップなどの効果も表れています。

また、社内インフラのクラウド化も進んだことにより、新型コロナウイルスの拡大に対して非常にスムーズにテレワーク環境に移行できるなど、働き方改革も大きく前進しました。一部、業務系プロセスの効率化については、次期中計においても改善を図っていきます。

構造改革における成果

現中計での構造改革における成果についてです。事業ポートフォリオの最適化の取り組みにおいて、一部子会社の本社統合、低成長事業から成長事業への人材リソースの移動、海外子会社の収益性の改善などを行いました。

クラウド型の商品において、サブスクリプションモデル化によって新たな収益基盤を創出することにも成功しています。中でも「Cisco MERAKI(シスコ・メラキ)」のMSPビジネスは大きく成長しました。

また、サービス&サポートの業績推移は、営業利益が全社の約40パーセントを稼ぐカテゴリーに成長しています。

当社経営課題と改善に向けた方策

以上のような分析をもとに、当社における経営課題と改善に向けた方策をまとめました。グラフは、連結・単体の売上高と純利益の過去10年間の推移で、水色が単体、紺色が連結となります。純利益の推移を見ると明らかですが、過去10年のうち7年間で、連結純利益が単体の純利益よりも低く、単体で利益のほとんどを稼いでいるような状況でした。

特に、2016年から2019年の4年間は、買収したタイの防火事業・RFID事業ののれん代の減損を計上したことにより、連結純利益が大きく棄損しました。これは、連結対象の関連会社の業績の低迷に加え、グループ会社のPMI、グループ経営の管理にも課題があったと思っています。

グループ全体における事業ポートフォリオとシナジーの見直し、収益性の向上を図ることが経営上の大きな課題と考えています。その対策として、事業ポートフォリオの管理機能を強化していきます。具体的には、その役割を担う投資委員会を設置し、この会を通して企業買収実行時の監督・審査・モニタリング機能を強化していきます。

前中計期間において、成長・収益期待を上回ることのできなかった事業について、関係会社を中心に各種検討を進め、当社の戦略に合致する収益性の高い新規ビジネスの確立およびそれによる新たな収益基盤を創出します。

以上が、前中期経営計画の振り返りと経営課題となります。これに基づき、新中期計画のご説明に入ります。

当社の企業ビジョン

まず、当社の企業ビジョンについてお話しします。「技術商社として『創造』を事業活動の原点に据え」が当社の企業理念となります。これは経営陣から社員までが共通認識し、日々の活動のベースとなっています。

ニューノーマル時代を迎え、さまざまな価値の変化も起こっていますが、お客さまが抱えているさまざまな課題、気候変動や災害、防犯などの社会の課題などに対し、当社の強みである世界の優れた商品の提案、マーケティング力や技術力、それに裏打ちされたコンサルティングや開発設計サービス、アフターサービスなどを通して課題を解決し、お客さまや社会に対して貢献していきます。

新中期経営計画では、豊かな社会の実現、社会問題やお客さまが抱える問題を持続的に解決していくべく、新たな事業変革に向け「創造」へのチャレンジを推進し、新たな価値創造を実現していきます。

その実現に向けた基本コンセプトは、新たな価値を生む「事業戦略」の推進、自己資本を積み増さない最適資本構成を目指す「資本政策」の推進、プライム企業としてふさわしい「ガバナンス」の実践となります。

新中期経営計画の全体像

新中期経営計画の全体像です。中期スローガンは、次の100周年に向けて「Toward 100th anniversary ニューノーマル時代における新たな価値創造へ」となります。

スライドの図で示したピラミッドの底辺にあるガバナンスの強化を通じ、事業戦略、資本戦略をやりきることで企業価値、ひいては株主価値の向上を目指します。

ガバナンスでは、投資を適切に実行するための投資委員会および指名・報酬委員会を設置し、役員報酬に資本効率性のKPIを定め、株主目線での経営を推進していきます。

事業戦略については、成長戦略としてロイヤルカスタマー戦略の推進、サービスビジネスの成長、将来のコア事業の創出を掲げ、同時にそれを実行するための経営基盤の強化も行います。また、3年間で総額30億円を戦略投資枠として設定し、成長力と生産性の向上を加速するために使用していきます。

KPIは、ROE3期平均8パーセントに置き、資本戦略については自己資本を積み増しせず、また、資本コスト抑制のために有利子負債の活用も検討していきます。

経営目標(2022年度~24年度)

経営目標です。「変革に向けた高付加価値事業への集中」と、「経営基盤強化による新たな価値の創造」を基本方針に掲げ、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指していきます。

中計最終年度の数値目標については、売上高260億円、経常利益20億円、純利益14億円、また、ROEは8パーセントを必達とし10パーセントを目指します。配当性向は、当年度の記念配当を入れた57.8パーセントから、ROEが3期平均で8パーセント以上となるまでは100パーセントを継続します。

ご参考:流通株式時価総額100億円達成への考え方

流通株式の時価総額100億円達成への考え方についてです。当社試算では流通株式数に変動がない場合、PBRは1.08倍で100億円を達成する見込みです。

スライド下の図のように、PBRとROEの間には一定の相関性があります。また、当社はROE3期平均8パーセントを達成するまでは自己資本を積み増さないため、利益を着実に上げていくことにより、ROEとPBRの改善、および流通株式時価総額100億円を実現していけると考えています。

新たな事業変革に向けた成長への取り組み ➤ セグメントの変更

事業戦略について説明します。まず、新たな事業変革を推進するため、セグメントを変更します。新中期経営計画期間より、成長性と収益性の観点から、クラウド型のサブスクリプション型サービスビジネスおよび保守事業を「成長事業」として位置づけ、システムセグメントから切り出します。

新たな事業変革に向けた成長への取り組み ➤ 基本戦略の再構築

基本戦略については5つになります。スライド上の3つの戦略は各セグメントで行っていきます。ロイヤルカスタマー戦略は、システムおよびデバイスセグメントです。サービスビジネスは、新設するクラウドサービス&サポートセグメントです。また、将来のコア事業の創造については、事業開発室を中心に新規事業プロジェクトを設置し、推進していきます。

2024年度の売上高は260億円と、本年度の売上見通しから43億円の増加を計画しており、ロイヤルカスタマー戦略で26億円増、サービスビジネスで17億円増を目標にします。なお新規事業については、主にサービスビジネスに含まれます。

基本戦略 ①ロイヤルカスタマー戦略の推進・深化

ロイヤルカスタマー戦略については、当社が付加価値を提供し、ご満足いただけるお客さまを創出し、環境、関係の強化を目指す戦略と定義し、さらなる推進を行っていきます。

その目標指標は、年間3,000万円以上の売上のお客さま数としました。2018年度の87社から2024年には130社以上に拡大させていきます。

長年培ったお客さまとの信頼関係をもとに、お客さまの潜在的ニーズを把握し、当社の強みである情報力と技術力により新たな付加価値を生み出し、お客さまの課題を解決していきます。また、会社・組織の枠を越えたグループシナジーの最大化も推進していきます。

具体的には、当社事業の内、高収益・成長力のある事業に注力していきます。

システム系ではリテール、オフィス、データセンター、工場、物流市場に対し、企業経営や事業運営の最適化を図れる、省人化・スマートストアソリューションや映像認識、AI技術を備えた映像監視システムなどの各種ソリューションを強化していきます。

デバイス系については、エレクトロニクス企業、デジタル機器、住宅設備、車載、米国およびアジアのグローバル市場に向けて、お客さまのモノづくり、製品の高付加価値化を行う、複合提案・モジュール化や機構部品のユニット化などの各種ソリューションを提供していきます。

基本戦略 ②サービスビジネスの成長

サービスビジネスについてです。「モノ売り」から「コト売り」へとスライドにもありますが、具体的には、単なる製品の売り切りによる販売から、サービスの一体化、サブスクリプションなどによる価値提供型の販売に変えていきます。

サービスビジネスの2024年度の数値目標は、全体に占める売上比率を現在の10パーセントから15パーセントへ、全社に占める営業利益比率を現在の40パーセントから、45〜50パーセントへ引き上げていく計画です。

当社の場合は、サービス向上のために開発投資を実施し、クラウド上に蓄積されるデータを活用してサービスを改善し、お客さま満足度を上げ、継続的に価値を提供するカスタマーサクセスサイクルを作り上げることで、持続的な成長を果たしていきたいと考えています。

具体的には、好調に推移するクラウド型MSPサービスの種類を増やしたり、新規のアプリケーションを追加していきます。さらに、当社独自のマルチクラウドサービスのTKエコシステムを開発、統合サービスプラットフォームを構築し、そこに各種システムを連携させながら一元的に管理できる新たなサブスクリプションモデルへと進化させたいと思っています。

基本戦略 ③将来のコア事業の創造

将来のコア事業を創造するための新しい事業について説明します。こちらは現在推進中の事業となります。1つ目は、クラウド型防犯情報サービス「EMLINX(エムリンクス)」です。主に小売業向けに企業、業界の垣根を取り払い、犯罪情報を共有するシステムです。

2つ目は、クラウド型映像システムです。クラウド上で画像の確認、AI映像分析が可能なシステムとなります。

3つ目は、サーバー・端末が不要なクラウド型のRPAソリューションです。

新たな新規事業の種としては、昨年9月に米国に開設したシリコンバレー・イノベーション・センターとベンチャーキャピタルなどからの情報網を活用し、サイバーセキュリティ、気候変動、ロボット分野などの新商品および新規事業を開発していきます。

なお、新規事業については、5年後にグループ全体の経常利益5パーセント強を担う事業にするため、戦略投資も活用し実現していきたいと考えています。

基本戦略 ④経営基盤の強化

経営基盤の強化について説明します。大きく4つの項目に分類していますが、経営リソースを注力すべき事業へシフトすること、DX化の推進、人材育成・人材投資の強化、資本効率性のアップになります。

基本戦略 ④経営基盤の強化 ➤ 経営リソースを注力すべき事業へシフト

1つ目の、経営リソースを注力すべき事業へシフトについてです。まずは事業ポートフォリオの管理を強化していきます。

スライド右の図は、縦軸で市場の魅力や成長性を示し、横軸で当社が強みを発揮できる収益性を示しています。4つのカテゴリーに分類しましたが、注力事業に経営リソースをシフトさせ、積極的な投資を推進していきます。

成熟事業については、効率性を高め、収益性をアップさせます。収益改善事業については、付加価値を高め、注力事業へシフトさせます。例として半導体事業がありますが、デバイスソリューション化することで収益性を改善します。全体的な方向性として、左から右へシフトさせることになります。

課題事業については、当社の企業理念に基づき、ベストオーナー視点やシナジー効果、成長性の観点から、企業価値を最大化できない事業を見直しの対象とし、本中計期間において部署を横断しての議論を進めていくことになります。

基本戦略 ④経営基盤の強化 ➤ DX化の推進

DX化の推進についてです。当社では、昨年から全社横断のDX化プロジェクトを立ち上げています。そのプロジェクトの中ではプロモーションマーケティング、営業活動、お取引業務の効率化、アフターサービスの4つのプロセスのデジタル化に向けて取り組んでいます。

加えて、今年度からクラウド型の新基幹システムの運用をスタートしています。運用の定着とSFAツールや周辺システムの連携による社内IT基盤の強化、また、どこでも働ける環境のさらなる整備により、営業効率のアップと運用コストの低減、さらにサービスビジネスの成長に伴う業務効率のアップにより、収益性の向上を継続的に図っていく方策となります。

基本戦略 ④経営基盤の強化 ➤ 人材育成・人材投資の強化

人材育成・人材投資の強化についてです。新人事制度の推進により、DX・グローバル人材の育成、女性の活躍支援、機動的な人材配置を実施し、また持株会強化により従業員の株主化を推進することで、新中期経営計画の達成に向け、推進力を高めていきます。

副業制度や週休3日制の導入、テレワークの推進など、社員が働きやすい環境を整備するとともに、従業員持株会の奨励金を従来の10パーセントから50パーセントに引き上げるなどにより、従業員の経営意識を高める施策を行います。また、次期中計からはROICを部門評価の指標として導入します。

基本戦略 ⑤30億円の戦略投資枠を設定

30億円の戦略投資枠についてです。目的は、新たな企業価値創造であり、成長ドライバーを加速するためにビジネス基盤の強化、新しい事業の創出に活用します。

具体的には、新規事業の早期立ち上げのためのM&A、サービスビジネスの拡販やロイヤルカスタマーニーズに対応するための開発投資で26億円程度、また、社内基盤の強化を目的に、IT投資や人材採用、人材教育、従業員持株会の奨励金などに4億円程度を想定しています。中期計画を完遂できるよう、この枠を利用して企業力を向上させていきます。

セグメント目標

次はセグメント目標です。基本的な方向性としては、成長分野に注力した事業展開とお客さまの課題の解決を実現するソリューションの展開を図ります。

スライド左側の棒グラフは、セグメントごとの営業利益の目標になります。中央の円グラフは、それぞれのセグメント内の各プロダクトの売上構成となります。新設するクラウドサービス&サポートセグメントは、当年度において最も大きい営業利益を上げる見通しですが、新中計の最終年度においても当期見通しの2倍の営業利益と、最も高い利益成長を計画しています。

各セグメントの重点施策についてです。システムセグメントでは、お客さまのDX化を支えるフルスタックITソリューションの提供、また、防犯関連や労働人口減少などのさまざまな社会課題の解決に向けたセキュリティシステムの展開を図ります。

クラウドサービス&サポートセグメントでは、場所を問わないニューノーマルな働き方に合ったクラウド型ソリューションの拡大、また、運用・保守・死活監視が一体となったマネージドサービスにより、お客さまの運用管理の手間の削減と顧客満足向上を目指します。

デバイスセグメントでは、5G普及、DXによる工場のIT化、ロボット導入など半導体・電子デバイスニーズへの対応、また、デバイス単品販売からソリューション提案ビジネスへの変革を図ります。さらに、米国、中国へのグローバルビジネスの拡大を図ります。

資本収益性の向上

次に、資本政策についてご説明します。当社の財務健全性を総合的に勘案した上で、新たな企業価値創造を実現するため、資本収益性並びに現状のバランスシートの改善に向けた資本政策を着実に実行していきます。

ROE3期平均8パーセントを達成するために収益性を改善し、また自己資本を積み増さずに、資本コストの最適化を行っていきます。

株主還元方針

中期経営計画期間における還元方針としては、恒常的にROE8パーセント以上を維持し、さらに高い水準値を目指していくために、従来の安定配当方針から自己資本を積み増さない、積極的な株主還元を行います。具体的には、ROEが3期平均8パーセントを達成するまでは、配当性向100パーセントを維持していきます。

キャッシュの調達と配分

キャッシュの調達と配分についてです。獲得する営業キャッシュフローと余剰資金については、株主還元と戦略投資に使います。

具体的には、中期経営期間の3年間でのキャッシュ・アウトは、戦略投資枠で30億円、株主還元で30億円から40億円と想定しています。キャッシュ・インは、営業キャッシュフローの25億円から35億円および余剰資金で補うことになり、必要な場合は有利子負債により資金を調達します。

財務健全性を最優先にした今までの経営から、資本収益性を重視した経営への転換を行っていきます。また、資金効率の高いサービスビジネスを強化することで、必要な手元資金のベースも下げていきたいと考えています。

ESG/SDGsの各種取り組み

新中期経営計画を支えるESGについてご説明します。当社のサステナビリティ基本方針については、環境問題や社会課題、企業統治課題の解決を経営方針の重要事項として捉え、「創造」の企業理念のもと、技術商社として、またサプライチェーンも考慮した上で、豊かな未来、持続可能な社会の実現に貢献していく考えです。

当社としては、環境への配慮、社会貢献、ガバナンスの強化と、ESGに関する課題に積極的に取り組み、SDGsを推進していきます。

環境分野への貢献 ➤ 『Verkada』による職場や施設の環境配慮を強化

取り組みについて一部ご紹介します。環境分野においては、こちらの「Verkada(ヴェルカダ)」という商品により、職場・施設環境のセキュリティと健康をトータルサポートし、お客さまの環境配慮対策に貢献していきます。

社会分野への貢献 ➤ 犯罪被害からお客様をお守りするセキュリティサービス

社会分野においては、犯罪被害からお客さまを守るセキュリティサービスにより、サービスの利用者が安心して生活できる環境の創造に貢献したいと考えています。

当社ガバナンス体制の状況

 

当社のガバナンス体制についてです。新中期経営計画の達成に向けた取締役会の運営を行う、当社取締役のスキルマトリクスと各委員会の設置状況を掲載しました。ご参考としていただければと思います。

コーポレートガバナンスの強化(1)

こちらのスライドは、4月に設置する予定の投資委員会についてご案内しています。

コーポレートガバナンスの強化(2)

昨年10月に発足した任意の指名・報酬委員会および取締役の業績連動報酬についてです。ガバナンスに関する今後の検討課題として、女性取締役の登用、グループ・グローバルでの人事制度、評価・報酬制度の再構築について、新中計期間中に検討を進めたいと考えています。

私からの説明は以上となります。長い時間、ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:成長が期待される商品について

司会者:「今回の中期計画で、売上260億円を目指すということですが、具体的に成長が期待される商品には、どのようなものがあるのでしょうか?」というご質問です。

井出:プレゼンの中で、ロイヤルカスタマー戦略についてお話ししたのですが、システムセグメント内の小売業向けについては、省人化ソリューションおよびスマートストアソリューション、さらにAIを備えた顔認証システムなどが期待できる商品だと思っています。

デバイスセグメントに関しては、音響・音声、通信、センサー、電源ソリューションなどの成長が期待できる商品となります。

サービスビジネスについては、継続してクラウド型の無線LAN、「Cisco MERAKI」のMSPサービスや、独自のプラットフォームの開発、クラウド型のトータルセキュリティシステムの「Verkada(ヴェルカダ)」などに注力していきたいと思っています。

質疑応答:防火事業における対応について

司会者:「事業ポートフォリオで課題事業として挙げている防火事業について、どのような対応をするのでしょうか?」というご質問です。

井出:防火事業だけではないのですが、23ページのスライドのポートフォリオに示している、左下の課題事業全般が対象です。市場性と成長性、グループシナジーの観点などから、企業価値を最大化できない事業、当社の強みが活かせない事業については、見直しの対象として、この中計期間に部署を横断して議論を進めていきたいと思っています。

質疑応答:ROE目標達成後の配当性向方針について

司会者:「ROE目標達成まで配当性向100パーセントを維持するとのことですが、達成後はどのようにするのか教えてください」というご質問です。

岩本:ROEが3期で平均8パーセントに達成するまで、配当性向100パーセントを維持する方針としていますが、その達成後の見直しについては、達成時点においての流通株式時価総額や業績、事業ポートフォリオ等の状況をふまえて、あらためて資本政策の見直しを行い、新たにROE目標や株主還元を設定していきたいと考えています。

質疑応答:政策保有株への対応と買収防衛策継続の有無について

司会者:「今日の説明にはありませんでしたが、政策保有株への対応と買収防衛策継続の有無について教えてください」とのご質問です。

岩本:政策保有株については、当社のコーポレートガバナンス基本方針に記載しているのですが、当社の利益と投資額等を総合的に勘案し、投資の決定をしています。毎年、取締役会にて政策保有の継続の意義、取引実績、資本コスト等について、経済的に合理性を検証して保有の継続を判断しています。その中で、当社基準に適合しない場合については、必要に応じて解消するなどの判断を行っています。

買収防衛策については、当社は、株主のみなさまをはじめ、従業員、OB、OG、取引先のお客さまなど、たくさんのステークホルダーのみなさまに支えていただいています。その中で、当社グループの企業価値を損ねる恐れがある買収行為があった場合には、株主のみなさまに適切かつ十分な情報を提供して、ご判断を仰ぐための期間と機会を確保することが重要と考えています。このような考えのもとで、買収防衛策を導入しています。現在の買収防衛策は、2年ごとの更新となっていますので、都度継続については可否を検討していきたいと考えています。

質疑応答:30億円の投資枠の運用方針について

司会者:「30億円の投資枠を設定していることについて、投資による売上と利益は御社計画の中に含まれていますか?」という質問です。

井出:30億円の投資枠について、当社にとってはこの枠を使い切ることは目的ではありません。この枠を設定することで、必要な投資を必要なときに実行できるようにすることが目的です。社内のIT投資や人材への投資のほか、持株会などを想定した経費の一部については、今20億円を設定している経常利益目標に含まれています。また、M&Aなどの不確定なものについては売上、利益ともに見込みには入れていません。

質疑応答:部門ごとのROIC評価の導入について

司会者:「部門ごとにROICの評価を導入するということですが、具体的にどうするのでしょうか?」という質問です。

岩本:今回の中期経営計画において、資本効率性の向上を目指すという方針をお伝えしました。当社においては、複数の事業を行っている中で、それぞれがまったく異なる状況になっています。各事業部においてROICを高めていくことを、業績考課の一つとして導入することで、収益性への意識を浸透させていきたいと考えています。

質疑応答:プラットフォーム開発について

司会:「プラットフォームを開発するとのことですが、自社開発するのですか? 方向性としてメーカーになろうとしているのでしょうか?」というご質問です。

井出:プラットフォームについては自社開発の方針であり、20ページのスライドでご案内した「TKエコシステム」がその中心になります。この当社独自のプラットフォームを利用して、いろいろなアプリケーションソフトの連携を検討しています。

例えば、ハイブリッドクラウド型AIカメラなどでは、入退数などが可視化されるのですが、このようなセキュリティ面で有用なアプリを当社のプラットフォームに接続して、独自のサービスを提供するようなシステム、仕組みを検討しています。

当社はメーカーではありませんが、このような開発を中心に取り組み、積極的に作っていきたいと思っています。

質疑応答:中期目標数値の前提について

司会者:「中期目標数値の前提を教えてください。例えば、新型コロナウイルスはどうなっていると仮定しているのか、為替の動きをどう見ているかなどについてです」というご質問です。

岩本:新型コロナウイルスの感染拡大については、回答が難しいですが、現在同様、経済活動は可能な状況であることを想定しています。当社としてはWithコロナを前提に、新しい環境の中でも確実に営業成績が出せるようにと考えています。為替についても概ね現在水準を想定しています。