ハイライト

武田睦史氏:みなさん、こんにちは。CFOの武田でございます。ご多忙の中、オリンパス株式会社2021年3月期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。まず、私から2021年3月期の連結決算概況および2022年3月期通期業績見通しについて、ご説明いたします。

スライドの3ページをご覧ください。2021年3月期の連結業績における主なポイントでございます。

売上高でございます。下期から回復基調となり、特に第4四半期は内視鏡事業、治療機器事業ともに2桁成長を実現し、大幅な増収となりました。年度後半の顕著な回復を受け、通期連結売上高は2月公表の見通しを上回り、3パーセントの減収に留まりました。

通期の営業利益率は11.2パーセントとなり、見通しを上回っております。第4四半期は事業成長と効率性向上に向けた投資や施策を実行しながらも、増収を主要因に増益となりました。配当につきましては、1株あたり10円予想から2円増額し、12円といたします。

続きまして、2022年3月期の通期業績見通しでございます。売上高は市場環境の回復を受け、全事業で増収。10パーセントの成長を見込んでおります。

営業利益は前年から約50パーセント増の1,260億円。営業利益率は約16パーセント。当期利益も890億円と、いずれも過去最高となる見通しでございます。配当につきましては、前年比2円増額となる14円を予定しております。

2021年3月期 通期実績 ①連結業績概況

それでは、2021年3月期の連結業績および事業概況について、ご説明申し上げます。スライド5ページをご覧ください。こちらは連結業績の概況になります。

4月30日に適時開示発表のとおり、連結全体で事業が堅調に推移したことにより、売上高、各段階利益は2月時点の見通しを上回りました。当期利益は法人税費用が想定以上に減少したこともあり、こちらも2月時点の見通しを大幅に上回っております。

通期の連結売上高は7,305億円です。上期に新型コロナウイルスの影響を受けたものの、下期から市場環境の回復が見られ、特に第4四半期は内視鏡事業、治療機器事業とも2桁成長となりました。その結果、3パーセントの減収に留まっております。

売上総利益は4,595億円でした。新型コロナウイルスの影響による操業低下に加え、内視鏡製品や処置具の自主回収費用を計上するなど、原価率を押し上げる要因がいくつかありましたが、減少率は年度後半に向かって大幅に改善しております。

販管費は3,570億円でした。活動の制約があったことに加え、引き続き厳格な管理や効率化を進める一方で、必要な投資や施策も実行した結果、販管費率は48.9パーセントと、50パーセントを切る水準となりました。

その他の費用、増加しております。通期予想に含まれておりますが、主に第4四半期に社外転進支援制度に伴う費用を約120億円計上したためです。なお、第4四半期はこの費用を吸収した上でも増益となっております。

営業利益は820億円、営業利益率は11.2パーセントでした。わずかですが、2月時点の見通しを上回っております。継続事業の当期利益は657億円でした。映像事業の譲渡に関連して法人税費用が大きく減少し、通期で前年比8パーセントの増益となりました。継続事業と非継続事業を合わすと、当期利益は130億円でした。

映像事業の譲渡契約締結に伴う損失約500億円を計上したものの、2月時点の見通しを大きく上回りました。期末の配当につきましては、安定的かつ継続的に増配していくという方針のもと、直近の好調な業績もふまえ、2月公表の10円から2円増配となる12円とさせていただきます。

月次売上高推移(2020年1月~2021年3月)

スライド6ページをご覧ください。月別の売上高の状況について、ご説明申し上げます。このグラフは前年売上高を100パーセントとして、事業別の月次の売上高推移を示すものでございます。

期初には非常に厳しい通期業績も覚悟せざるを得ない状況でしたが、月を追うごとに回復し、下期、第4四半期ともにプラス成長となりました。特に3月は、前年同期比で内視鏡事業は23パーセント、治療機器事業は28パーセント成長を実現しております。

2021年3月期 通期実績 ②内視鏡事業

次に、スライド7ページでございます。各セグメントの概況について、ご説明いたします。まずは内視鏡事業です。通期の売上高は4,195億円でした。後半の市場回復を受け、為替を除く実質ベースで1パーセントの微減に留まりました。

地域別では英国、東欧が好調に推移した欧州と中国で増収となり、製品別では先端キャップ着脱式十二指腸内視鏡、気管支内視鏡の売上が増加しました。第4四半期は第3四半期に引き続き、大幅な増収です。市場環境の回復傾向は継続し、中国、北米、日本で2桁成長となりました。

中国では前年同期比、新型コロナウイルスの影響を受けていたため、特に増収幅が大きく、北米では市場環境の回復に加え、スコープの拡販を進めました。また、日本では補正予算を受けた公立、国立病院を中心に設備投資が活発化し、増収となりました。

製品別では「EVIS X1」システム、スコープに加え、十二指腸内視鏡、気管支内視鏡も売上の増加に寄与しております。

通期の営業利益は1,047億円。為替を除く実質ベースの営業利益率は25.8パーセントとなりました。内視鏡の自主回収費用約60億円や、社外転進支援制度に伴う費用約40億円を計上するも、売上回復等により、為替を除く実質ベースで前年並みの水準を確保しました。

第4四半期は社外転進支援制度に伴う費用を計上しましたが、前年同期に十二指腸内視鏡対応費用104億円を計上していることもあり、為替を除く実質ベースで61パーセントの大幅増益となりました。

2021年3月期 通期実績 ③治療機器事業

スライド8ページです。治療機器事業でございます。売上高は2,060億円でした。治療機器事業も、下期からの回復を受け、為替を除く実質ベースでマイナス4パーセントと減少幅が大きく縮小しております。第4四半期は市場環境の回復を受けて、特に大幅な増収となっております。

すべての地域でプラス成長となり、特に前年同期にコロナウイルスの影響を受けた中国が好調に推移しております。製品別では、呼吸器処置具と泌尿器科製品の売上拡大が牽引しております。

通期の営業利益は246億円。為替を除く実質ベースの営業利益率は12.6パーセントとなりました。

減収に加え、処置具の自主回収費用約20億円等を計上し、売上総利益は減少しましたが、販管費の抑制、前年まで計上されていたジャイラスの無形資産の償却が本年度から計上されなくなったことによる効果等により、為替を除く実質ベースの営業利益率は前年比0.5ポイントの改善となりました。

第4四半期は、社外転進支援制度に伴う費用約15億円を計上しましたが、売上の回復を主要因として、為替を除く実質ベースで26パーセントの大幅増益となっております。

2021年3月期 通期実績 ④科学事業

続いて、科学事業。スライド9ページをご覧ください。売上高は959億円でした。年度後半に向けて回復傾向にあり、為替を除く実質ベース、マイナス8パーセントと減少幅は縮小しております。

中国で生物顕微鏡や工業用顕微鏡が好調に推移した一方、航空産業等での設備投資意欲の減退や販売活動の制約を受けております。一方、第4四半期は増収でございます。市況の回復に伴い、予算執行および設備投資状況に改善が見られ、生物・工業用顕微鏡、蛍光X線分析計が堅調に推移しました。

通期の営業利益は49億円。為替を除く実質ベースの営業利益率は6.2パーセントとなりました。減収および生産拠点の操業度低下による売上総利益の減少が、主な要因です。

第4四半期は、社外転進支援制度に伴う費用約10億円を計上した一方、売上が前年並みまで回復したことに加え、販管費の効率化を進め、為替を除く実質ベースで17パーセントの大幅増益となりました。

財政状態計算書

スライド10ページをご覧ください。2021年3月末の財政状態でございます。新型コロナウイルスに対応した追加の資金調達等により、現預金が増加しました。また、Veran Medical Technologies(ベラン・メディカル・テクノロジーズ)社等の買収を実施したことにより、のれんと無形資産が増加しております。

有利子負債の増加により、自己資本比率は前期末比で3.1ポイント減少し、33.4パーセントとなりました。

連結キャッシュフロー計算書

スライド11ページをご覧ください。キャッシュフローの状況です。営業キャッシュフローは業績回復に伴う利益水準の改善を背景に、前年との減少幅がさらに縮小し、1,241億円となりました。

投資キャッシュフローは、M&Aの実施による約450億円の支出、映像事業譲渡に伴う約280億円の支出等がありましたが、仮にこれらを足し戻すと、フリーキャッシュフローは前年並みの水準でございます。

財務キャッシュフローは、長期借入や社債発行による調達により603億円の増加、408億円となりました。期末の現金および現金同等物残高は548億円増の2,175億円となりました。

通期業績見通し ①連結業績

次に、2022年3月期の業績見通しについて、ご説明申し上げます。スライド13ページをご覧ください。2022年3月期の通期業績見通しです。業績見通しの前提となる想定為替レートは1ドル108円、1ユーロ130円としております。

売上高は市場環境の回復と新製品の成長等により全事業で増収し、10パーセントの成長となる見通しでございます。販管費は前年比で増加する見込みです。工夫をしながらも、活動はより活発になるという前提のもと費用が増加することに加え、運営基盤強化や収益性改善に向けた投資も計画しております。

営業利益は前年から約50パーセント増の1,260億円。営業利益率は約16パーセントとなり、また、当期利益も890億円と、いずれも過去最高となる見通しです。配当につきましては、安定的かつ継続的に増配していくという方針のもと、業績予想もふまえ、2円増額となる14円に増配する予定でございます。

通期業績見通し ②セグメント別業績

私からの説明は最後のスライドです、14ページをご覧ください。セグメント別の業績見通しです。内視鏡事業は消化器内視鏡システム「EVIS X1」を中心に拡販を進め、増収増益となる見込みです。

治療機器事業は、症例数の回復による増収に加え、買収した企業の売上等により大幅な増収増益となる見通しです。科学事業は、市場環境の回復と中国の売上成長に加え、販管費の効率化を進め、営業利益率は約10パーセントを達成する予定です。

全社・消去につきましては、前期発生した映像事業譲渡関連費用、社外転進支援制度に伴う費用が減少する等、大幅に改善する見込みです。

このあとはCEOの竹内から、2021年3月期の振り返りおよび2022年3月期の経営方針につきまして、ご説明申し上げます。私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

事業の持続的成長と持続可能な社会の実現のために

竹内康雄氏:みなさん、こんにちは、CEOの竹内でございます。武田がご説明申し上げましたとおり、2021年3月期は新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態に直面をしましたが、年度後半にかけて売上が大きく回復して、売上高、利益ともに、2月に上方修正をいたしました見通しを達成することができております。

また、真のグローバル・メディカルテクノロジーカンパニーを目指し、さまざまな施策を実行に移した1年でもございました。私からは先期の振り返りと今期の経営方針につきまして、ご説明を申し上げます。

まず、真のグローバル・メドテックカンパニーへの転換に向けて、オリンパスが目指す方向性について、あらためてご説明申し上げます。スライド17ページをご覧ください。

まず最初に、ESGの取り組みについてご説明いたします。オリンパスは経営理念に基づき、責任ある企業活動を通じて世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現に努めており、2019年11月に発表しました経営戦略においては6つの重要なESG領域を絞り込み、4つの重要課題、マテリアリティを定めております。

今回、この環境視点の、社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献、こちらを加えて、オリンパスの5つのマテリアリティを特定いたしました。事業を通じて、これらの社会課題の解決に取り組むことにより、オリンパスの持続的成長と持続可能な社会の実現を目指してまいります。

また、昨日のニュースリリースでもお知らせいたしましたとおり、オリンパスはTCFDの提言に賛同を表明するとともに、2030年までにカーボンニュートラルを実現する目標を設定いたしました。今後もCO2削減の取り組みの強化や、気候変動がもたらすリスクと機会の分析に焦点を置いた透明性の高い情報開示に注力してまいります。

そして、カーボンニュートラルの目標の達成に向けて、製造改善活動や省エネ施策などを引き続き推進するとともに、2030年までに自社の事業所における全消費電力を再生可能エネルギー由来に段階的に切り替え、CO2削減の取り組みを加速させてまいります。

戦略目標と業績指標

スライド18ページをご覧ください。次に、経営戦略でお示しをしました戦略目標と業績指標について、改めて触れたいと思います。オリンパスは世界をリードするメドテックカンパニーへ成長し、革新的な価値によってすべてのステークホルダーにベネフィットをもたらし、世界の人々の健康に貢献することを戦略目標としております。

この考え方に基づき、グローバル・メドテックと同水準である年率5~6パーセントの売上高成長率、20パーセントを超える営業利益率を実現し、持続的に成長していくことを宣言いたしました。この目標に向けて、引き続き着実に改革を推し進めてまいります。

環境認識

それでは、ここからは経営戦略の初年度である2021年3月期について、振り返りたいと思います。スライド20ページをご覧ください。このスライドは昨年の6月、新型コロナウイルス感染症の影響により、通期見通しの公表を延期した際にお示ししました環境認識のスライドです。

新型コロナウイルスの感染拡大は、大きな価値観の転換をもたらすと認識していた一方で、長期的な医療ニーズの拡大は不変と捉え、2021年3月期を持続的な成長に向けて、真のグローバル・メドテックカンパニーへの転換を加速させる好機だと位置付けました。

企業改革の断行

スライド21ページをご覧ください。先ほどの環境認識のもと、経営といたしまして、2021年3月期はこちらにあります5つの施策を実行することを表明いたしました。

こちらに記載のとおり、すべての施策をやり抜き、持続的な成長に向けて、真のグローバル・メドテックカンパニーへの変革を加速させた1年でございました。1つずつ振り返ってみます。

まず、事業ポートフォリオの選択と集中につきましては映像事業の譲渡を行い、固定費の構造改革につきましては、日本において社外転進支援制度を実施いたしました。

いずれも長期の当社の経営課題であり、経営陣としては大変厳しい決断ではございましたが、真のグローバル・メドテックカンパニーを目指し、パフォーマンス志向の組織へと変革するためには避けて通れない施策であると考え、実行をいたしました。

また、2020年の上期には欧州、アジアの一部地域、そして日本におきまして、待望の消化器内視鏡の新製品「EVIS X1」をローンチいたしました。各国の医師のみなさまからは非常に高い評価をいただいており、今後のオリンパスの業績を牽引していくと確信しております。

今後の成長を牽引する製品開発への着実な投資継続につきましては、医療分野の成長に向けて複数のM&Aを実施いたしました。買収した企業の製品ポートフォリオや技術のシナジーを高めることにより、持続的な成長に貢献することを期待しております。

最後に、効率的な研究開発につきましては、フロントフェーズでのコンカレントエンジニアリングを強化する取り組みを進めてまいりました。この4月より、従来の製品別の開発組織から技術別の組織に再編し、効率的かつ迅速な製品開発を実現してまいります。

売上高*:底堅い医療需要に基づく業績の回復

スライド22ページをご覧ください。業績につきましても、振り返りをしたいと思います。期初の段階では、世界的なパンデミックという未曾有の事態によって、業績を見通すことも困難な状況であり、売上高、利益が大きく落ち込む、極めて厳しい1年になると想定をしておりました。

しかし、結果的には第3四半期には前年同期比でプラス成長に転換し、第4四半期には前年同期比で12パーセント成長を達成することができております。この第4四半期の実績はパンデミック前の2019年3月期の実績をも上回る水準であり、早期診断、低侵襲治療に対する底堅い需要に支えられた結果だと考えております。

それでは続いて、2022年3月期の経営方針について、ご説明をいたします。スライド24ページになります。経営として、グローバル・メドテックカンパニーとしての深化を今期のテーマに掲げ、昨年実行した企業変革の継続と定着に取り組んでまいります。

FY2022重点施策

それでは続いて、2022年3月期の経営方針について、ご説明をいたします。経営として、グローバル・メドテックカンパニーとしての深化を今期のテーマに掲げ、昨年実行した企業変革の継続と定着に取り組んでまいります。

スライド25ページをご覧ください。今期の重要施策はこちらの4点でございます。先期はさまざまな企業変革を断行いたしましたが、今期も変革の手をゆるめることなく邁進してまいります。

現在のオリンパスは、これまで進めてきたグローバル・メドテックカンパニーへの転換から深化を図るフェーズに入っていると捉えております。オリンパスは約70年前にはじめて実用的な胃カメラを開発してから、医師との二人三脚で製品や手技を開発し、消化器内視鏡の高いシェアに支えられて成長してまいりました。

医師との信頼関係に基づいて製品やソリューションを創出し、高い付加価値を提供するという最大の強みを生かしながら、今後も持続的に高い収益性を伴った成長を実現するためには、経営戦略でお示しした考え方に沿って医療ビジネスの戦略をもう一段深化させる必要があると考えております。

こちらにお示しした4つの重点施策への取り組みを着実に進め、今期も決算発表をはじめとした各社IRイベントを通じまして、みなさまにご報告をしてまいりたいと思います。

なお、医療ビジネスの戦略につきましては、現在社内で検討を進めてございます。こののちのスライドでご紹介する「INVESTOR DAY」にてご説明をさせていただく予定でございます。

Upcoming Investor Events

スライド26ページをご覧ください。今後のIRイベントについて、お知らせいたします。今年は、3年ぶりに「INVESTOR DAY 2021」を開催する予定です。日時や内容等の詳細につきましては、決まり次第、改めてお知らせいたします。ぜひとも、ご参加をお願いいたします。

最後になりましたが、2021年3月期は新型コロナウイルスの感染拡大という前例のない厳しい状況においても企業改革を必ず断行するという強い意志をもって臨み、さまざまな施策を決断、実行した1年でした。

今年、2022年3月期は先期に行った数々の施策を成果へと結びつけ、パフォーマンス志向の文化を定着させる上で重要な1年になると位置付けております。我々経営が先導し、全社一丸となって企業変革をさらに推し進めてまいります。

引き続き、ステークホルダーのみなさまからのご支援を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。私からの説明は以上です。ご静聴、ありがとうございました。