第3四半期累計実績ハイライト
橋本宗之氏(以下、橋本):本日は、当社の決算説明会にご参加いただきまして、ありがとうございます。CFOの橋本でございます。それでは、2021年5月期第3四半期の実績についてご説明します。
まずは、第3四半期累計実績のハイライトについてです。5ページをご覧ください。連結売上高、連結営業利益ともに前年同期比で好調な成⻑率となり、通期業績見通しに対しても順調な進捗となりました。また、グループの中⻑期的な成⻑を牽引する新たな事業として期待しているクラウド請求書受領サービス「Bill One」は、高成⻑が継続しました。
連結実績の概況
6ページをご覧ください。第3四半期3ヶ月間の連結業績についてです。今年1月に一部地域で緊急事態宣言が発出されたことで、多少のマイナス影響が生じたものの、売上高は総じて堅調に推移し、前年同期比21.9パーセント増の約41億1,600万円となりました。
営業利益は売上高の増加に伴って利益率が改善し、62.1パーセント増の約1億3,600万円となりました。経常利益は営業外費用の増加に伴って減益となりましたが、親会社株主に帰属する四半期純利益は、特別損失の減少等により黒字額を計上しました。
連結営業利益の増減要因
7ページでは、連結営業利益の増減要因についてご説明します。成⻑戦略であるSansan事業の営業体制の強化や、「Bill One」でのマーケティング活動の強化等によって、主に人件費や広告宣伝費が増加しました。しかし、それ以上に連結売上高が堅調に成⻑したことで、営業利益は前年同期比約5,200万円の増益となっています。
セグメント別実績の概況
セグメント別実績の概況は8ページのとおりです。詳細は順にご説明しますが、Sansan事業、Eight事業ともに増収増益となりました。なお、調整額のマイナスが拡大している主な理由は、以前より進めてきた採用強化によって、各セグメントに属さない部門の人員数が増加していることに加え、2021年2月より「Bill One」のテレビCM放映を行ったことによるものです。
現在、「Bill One」に係る売上高および一部の原価は社内で設定したルールに基づき、各セグメントに配賦して計上していますが、当該事業に係るそれ以外の原価やすべての販管費は、各セグメントに配賦しない全社費用として計上する方法を採用しています。
Sansan事業の概況
9ページをご覧ください。まず、Sansan事業の実績についてです。売上高は前年同期比19.4パーセント増の約37億5,100万円となりました。一部地域における緊急事態宣言の影響もあり、第2四半期と比較するとやや成⻑率が鈍化しましたが、総じて堅調な実績となりました。営業利益は、売上高の増加や広告宣伝費の減少等によって利益率が改善し、前年同期比49.1パーセント増の約16億7,400万円となりました。
Sansan事業:ストック売上高
10ページは「Sansan」のストック売上高についてです。「Sansan」の契約件数が前年同期からの1年間で順調に積み上がっていることや、コロナ禍においても解約率が低水準にあること等から、前年同期比22.9パーセント増となり、セグメント全体の売上高よりも高い成⻑率となっています。
なお、その他の売上高が減収となっているのは、前年同期の3ヶ月間だけで比較した場合、コロナ禍において新規契約の獲得数が鈍化したことや、契約上定めるデータ化枚数を超過するケースが減少したことによるものです。
Sansan事業:「Sansan」契約件数・契約当たり月次売上高・従業員数
11ページは、「Sansan」の契約件数と契約当たり月次売上高、そして従業員数についてです。第3四半期末の契約件数は、前年同期末比14.2パーセント増の7,523件となりました。四半期の後半にかけては、一部地域における緊急事態宣言のマイナス影響が多少生じたものの、当四半期で純増293件となり、回復傾向が継続しました。
一方、契約当たり月次売上高は前年同期比2.5パーセント増の約16万7,000円に留まりました。これは、先ほどご説明したストック売上高以外であるその他の売上高が、コロナ禍で低調に推移したためです。なお、ストック売上高のみで契約当たり月次売上高を算出した場合は、前年同期比6.7パーセント増となります。
また、採用が順調に進んだことから、Sansan事業部の従業員数は前年同期末比で97名増加し、478名となりました。
Sansan事業:「Sansan」直近12か月平均解約率
「Sansan」の直近12ヶ月平均の月次解約率は12ページのとおりです。コロナ禍は解約率が上がりやすい環境ではありますが、各種の取り組みにより、引き続き1パーセント以下の低水準を維持しています。
Sansan事業:「Sansan」顧客規模別収入構成(ストック収入)
「Sansan」の顧客規模別の収入構成は13ページのとおりです。第2四半期と比較すると、1,000人以上のセグメントの構成比や成⻑率がやや上昇しましたが、それほど大きな変化というわけではありません。
Eight事業の概況
14ページをご覧ください。Eight事業の実績についてご説明します。売上高はBtoBサービスの拡大が成⻑を牽引し、前年同期比55.3パーセント増となる約3億6,600万円となりました。営業利益は、売上高の増加に伴って赤字額が約6,800万円減少し、マイナス約1億7,900万円となりました。
また、BtoBサービスの1つである「Eight 企業向けプレミアム」の契約件数は前年同期末比57.5パーセント増の2,132件となり、引き続き順調に拡大しています。
Eight事業:売上高・「Eight」ユーザー数
15ページは、売上高の推移および「Eight」ユーザー数についてです。BtoBサービス売上高は、子会社化したログミー株式会社の業績寄与等により、前年同期比81.4パーセントの増収となりました。
第2四半期と比較すると減収となっていますが、これは、第2四半期において大型のビジネスイベント「Climbers」を開催したことが業績に寄与したものの、当四半期では開催していないためであり、想定どおりの内容です。なお、第4四半期においては、5月に「Climbers」を開催する予定です。
「Eight」のユーザー数は前年同期末比で20万人増の286万人となり、順調に拡大しました。
クラウド請求書受領サービス「Bill One」:サービス概要
続いて、事業トピックスとして、「Bill One」の進捗についてご説明します。17ページをご覧ください。
あらためて、クラウド請求書受領サービス「Bill One」の概要についてお話しします。「Bill One」は、多数の拠点や部門に、紙やPDFといったばらばらのフォーマットでばらばらに届いていた請求書すべてをオンラインで受領することが可能となるサービスです。
紙の請求書は、「Bill One」のスキャン代行センターが代理で受領し、99.9パーセントの精度で短時間でデータ化します。また、メールに添付されたPDF等の請求書は、専用のメールアドレスで「Bill One」が受領した後、同じくデータ化します。
したがって、請求書を受け取る企業は、受け取り先を「Bill One」に指定するだけで、あらゆる請求書のオンライン受領が可能となります。加えて、発行する側の企業に対しては、ただ送付先を変えてもらうだけで、従来どおりの形式で請求書の送付を続けていただけるため、負担がかかりません。
コロナ禍において、リモートワークへの移行は企業の喫緊の経営課題となっている一方で、請求書関連業務に関しては、紙媒体を受領・処理するために出社が強いられている等、大きな課題があります。このような環境も追い風となり、「Bill One」は非常に高い成⻑性を秘めた事業であると捉えています。
クラウド請求書受領サービス「Bill One」:契約件数・潜在市場規模
18ページは、「Bill One」の実績および潜在市場規模についてです。「Bill One」の契約件数の実数開示は控えますが、第2四半期末と比較すると86.5パーセント増という高い成⻑を継続しており、2022年5月期末までに契約件数1,000件を目指しています。
次に、TAMの考え方についてです。「Bill One」は、請求書の発行企業が導入する・しないに関わらず、受け取り企業側のニーズさえあれば利用できるユニークなサービスです。そのことから、企業の業種や規模を問わず日本国内のすべての企業に使っていただけるサービスであると考えています。
スライド右側のグラフの⻘色は当四半期末の「Bill One」契約件数、水色は「Bill One」へ請求書を送付した企業数、グレーの大きな四角はターゲットとなる日本国内の企業数を表しています。
ご覧のとおり広大な開拓余地があり、「Bill One」は契約件数の拡大以上に請求書送付企業数が増えるモデルとなっています。そのため、今後は加速度的に企業との接点の増加が見込まれています。
クラウド請求書受領サービス「Bill One」:成⻑に向けた取り組み
19ページをご覧ください。2021年2月後半より、「Bill One」で初めてのテレビCM放映を開始しました。CM放映以降、WEB経由でのリード獲得数が倍以上になるなど、非常によい反響を得ており、今後の契約件数の拡大に効果的につなげていきたいと考えています。
また、昨年12月にBill One事業部を発足して以降、積極的な採用活動を続けており、第3四半期末の従業員数は26名となりました。引き続き採用を強化し、2021年5月末までに40名の体制構築を目指しています。
連結業績の見通し
最後に通期業績見通しについてご説明します。21ページをご覧ください。第3四半期累計実績は通期連結業績見通しに対して順調に進捗しています。中でも、営業利益については予想レンジの下限値を超過する高い進捗率となっています。
ただし、第4四半期において、中⻑期的な売上高成⻑率の加速に向けたさまざまな戦略およびそのための投資を検討・実行していく予定であるため、期初に公表した予想から変更はありません。
以上で、私からのご説明を終了します。続いて、常樂よりデータ統括部門DSOCに関してご説明します。
自己紹介
常樂諭氏(以下、常樂):常樂でございます。本日はデータ統括部門DSOCをご紹介する機会をいただきまして、誠にありがとうございます。DSOCについては、これまで投資家・アナリストのみなさまに対して多くの時間を割いてご説明する機会はあまりなかったと思います。本日は、当社の競争優位性の源泉である仕組みやテクノロジーの詳細を中心にご説明したいと考えています。この機会を通じて是非ご理解を深めていただけますと、大変うれしく思います。
まずは自己紹介をします。2ページをご覧ください。現在、私は取締役としてDSOCを担当しながら、CISOおよびDPOを務めています。Sansanは、CEOの寺田を含めた仲間5人で2007年に創業した会社ですが、私はその共同創業者のうちの1人です。
本日のプレゼンテーションは、データ統括部門DSOCの担当役員としてお話ししますが、CISOとDPOの役割についても簡単に触れさせてください。
当社では、経営において情報セキュリティーとデータ保護を最優先事項として位置づけており、考え得るあらゆる対策を講じています。それを推進するのがCISO、DPOの役割です。具体例としては、ホワイトハッカーを利用した社内システムを攻撃するペネトレーションテストや、社員の個人情報保護士の資格取得についての推進等があります。
次に、私がSansanへジョインした経緯についてお話しします。私のバックボーンはエンジニアです。したがって、正直名刺には興味がありませんでした。ただ、創業当時、EメールやPDFなどさまざまなものが電子化されていく中、紙である名刺に違和感を感じ、そこに可能性を感じていました。
当時も今もITの世界ではアメリカがイノベーションを起こしています。我々は名刺からスタートしているがゆえに、日本から世界へ、人と人の出会いを変えられる、何か新しいイノベーションを起こせる可能性を感じ、創業に参画しました。
ミッションと役割
それでは本題に入ります。本日は大きく3つのパートに分けてご説明します。
まずは、DSOCの概要ついてです。5ページをご覧ください。DSOCの最大の役割は、データ統括部門として、事業成⻑のスピードを押し上げ、市場における競争優位性を生み出すことです。これまで名刺を速く、正確に、低コストでデータ化することに向き合い、事業活動を支える技術を生み出すことで、当社の高成⻑を支えてきました。
創業時から、名刺という、ビジネスで人と人が出会った証しに向き合ってきましたが、現在、私たちが向き合うビジネスデータは、人事異動情報やニュースといったビジネス情報、企業と企業がビジネスで出会った証しとも言える請求書や契約書といったビジネス書類にまで及んでいます。
このように、取り扱うデータの対象が広がる中で、DSOCでは「Activating Business Data」というミッションを掲げています。
このミッションの下、DSOCには、データ統括部門としての3つの役割があります。1つ目は、名刺をはじめとした多様なビジネス情報を収集してデータを「生成」することです。 2つ目は、そのデータを正規化、リッチ化して「整理」すること、そして3つ目は、それらのデータを「活用」することです。この3つの役割については、第2章で詳しくご説明します。
沿革
次に、DSOCの沿革についてご説明します。2007年の会社設立時、Sansan事業の名刺データ化部門としてオペレーション部を発足しました。さらに、各サービスによってスピードやコスト等の重視するポイントが異なっていたことから、2012年のEight事業の立ち上げ後に、Sansan事業部とEight事業部それぞれに名刺データ化部門を設置しました。
しかし、各サービスの成⻑とともに増えていく名刺データ化需要に対してオペレーションがまったく追いつかず、名刺のデータ化が事業成⻑の足かせになっていました。
そこで、2013年に2つの事業部に置いていた名刺データ化部門を統合し、名刺データ化を効率化・自動化する研究開発に取り組むR&D組織を作りました。そして、2016年に組織名称をDSOCにあらため、データ化だけでなく、そのデータを活用することを組織の新たな役割として付け加えました。
その後、向き合うデータの種類も増え、名刺情報だけではなくなり始めた時に「Activating Business Data」というDSOCのミッションを掲げ、サービス開発部、研究開発部などの組織を設置しました。
組織体制・人員構成
次に、DSOCの体制についてご紹介します。7ページをご覧ください。現在、DSOCはサービス開発部と研究開発部の2つのコアの部に加えて、3つのグループで構成されています。
サービス開発部は、エンジニアとビジネス職のメンバーで構成され、データを「生成」「整理」する役割として、名刺データ化オペレーションをはじめとした、事業部に提供するサービスの開発、運用を担っています。
また、研究開発部ではさまざまな分野のスペシャリストが研究員として在籍し、データを「活用」するためのR&Dを行っています。
そのほか、DSOCのブランディングを担うクリエイターが所属するCreative Group、データ活用戦略の立案や新規事業企画を担うデータ戦略室を設置しています。直近では、新たにEBPM支援室を開設しました。
EBPMは「Evidence Based Policy Making」の略称で、「証拠に基づく政策立案」と訳されています。日本の行政機関が強く推進している取り組みです。本支援室では、DSOCで蓄積した研究成果を政策の評価や検証のエビデンスとして提供し、行政活動を後押しすることを目的としています。
優秀なエンジニアリング人材と研究員
8ページをご覧ください。DSOCの人材についてご紹介します。DSOCでは、まったく新しい組み合わせからイノベーションが生まれると考えており、メンバーの多様性を重視した採用活動を行っています。その結果、現在は新卒や中途を問わず多様なバックグラウンドや専門性を持った人材が活躍しています。
例えば、DSOCが発足した当時から、「Kaggle」で活躍するようなデータサイエンティストが組織に加入しています。「Kaggle」とは、世界中のデータサイエンティストが課題に対して最適モデルを競うコンペティションのことであり、日本人では約10名がその最上位タイトル「Kaggle Grandmaster」を所持しています。また、研究員には博士号を保有する人材も加入しています。
専門分野で言えば、データ化技術に係る画像処理、機械学習やデータサイエンスの技術者の登用はもちろん、文系の社会学や経済学系の研究者も在籍しています。
データの生成:名刺データ化における特有の課題
続いて、DSOCの役割についてご説明します。10ページをご覧ください。はじめに3つの役割の1つ目である、データの「生成」についてお話しします。
データの「生成」の前提として、名刺データ化における特有の課題についてご説明します。当たり前のように聞こえると思うのですが、電話番号やメールアドレスを1文字でも間違えれば、電話をかけることもメールを送付することもできません。つまり、情報としての価値が毀損します。データ活用のためには、名刺を限りなく100パーセントに近い精度でデータ化することが必須です。
一方、名刺のデータ化においては、さまざまな特有の課題があります。例えば、デザインや形状、文字サイズがばらばらで非定型であることです。また、ユーザーの撮影環境によっては名刺画像に影が入ったり、照明によって文字が認識しづらいといった画像品質が安定しないこともあります。
そのほかにも、氏名や肩書き等の項目を特定することも課題の1つです。例えば、「アナリスト」と書かれた文字列が「肩書き」なのか「資格」なのかは、人が瞬時に判断できたとしても、機械による識別は大変ハードルが高いのです。このような課題ため、一般的なOCRのみで名刺を正しく自動データ化することは現状は困難です。
データの生成:名刺情報のデータ化オペレーション
11ページをご覧ください。前述の課題の解決策として、私たちはAI OCRだけではなく、人の手入力を組み合わせたオペレーションを実施することで、機械によるデータ化を補完しています。技術だけではなく、「人の力」を活用できることが私たちの強みです。
この人力によるオペレーションとテクノロジーを組み合わせることによって、「Sansan」では名刺データ化精度99.9パーセントを実現しており、クラウド名刺管理サービス市場で83パーセントと圧倒的な市場シェアを獲得しています。
データの生成:OCRを補完する取り組み① ―データ化システム「GEES」―
12ページをご覧ください。AI OCRを補完する具体的な取り組みについてご紹介します。当社では、名刺データ化のオペレーションシステムを独自に構築しており、「GEES」と呼んでいます。
「GEES」とは、DSOCが独自に開発した、大量の名刺を正確かつ効率的にデータ化するオペレーションシステムです。機械で取り込まれた名刺画像を分割して作業単位を小さくすることにより、精度とセキュリティーを担保しながら、いつでも、どこでも入力作業が行える仕組みとなっています。
「GEES」による名刺データ化フローについて順にご説明します。まず、ユーザーが名刺をスキャン・撮影すると、取り込まれた名刺画像が当社に送付されます。そこで文字が読み取りやすい状態へと加工されます。
次に、名刺上の文字のかたまりを機械によって分割した後、会社名・姓名等の項目ごとの分類を実施し、セキュリティーに配慮した上で情報として価値がなくなるまで切片化します。
その後、機械と人によってデータ入力を行います。人による入力過程においては、入力ミスを防ぐために2人以上のオペレーターによって同じ画像の入力を行い、その結果が合致するまで入力工程を行うことでデータ化精度を高めています。
データの生成:OCRを補完する取り組み② ―AI・画像認識技術―
13ページをご覧ください。DSOCでは、高速かつ高精度な名刺データ化を実現するために、さまざまな画像認識技術やAIを独自に開発しています。名刺を認識し、数秒でデータ化の結果をユーザーに届ける「スマートキャプチャー」、名刺画像から姓名や企業名などの項目領域を推定する「項目セグメンテーション」といった、自動データ化に貢献する技術開発を行っています。
また、人による入力間違いには一定の規則性があることから、AIを用いて解析し、データ化精度を補完しています。
データの生成:OCRを補完する取り組み③ ―DSOC OCR―
14ページをご覧ください。DSOCの研究開発部においては、名刺の取り込みに特化した独自のOCRエンジン開発に取り組んでおり、「DSOC OCR」として提供しています。先ほど、名刺データ化において現在の一般的なOCRでは正確な精度を実現するのは困難であるとお伝えしましたが、我々は独自のOCRエンジン開発に挑戦しており、この「DSOC OCR」では、Eメールアドレスを99.7パーセント以上の精度で自動データ化することが可能となっています。Eメールアドレスのほか、氏名にも対象項目を適用しており、将来的には名刺全体の項目にも範囲を広げられるように開発を進めています。
データの生成:名刺1枚当たりのデータ化費用の推移
15ページをご覧ください。こちらは、これまでの名刺1枚当たりのデータ化費用の推移を表したグラフです。現在では考えられませんが、創業時のオペレーションはすべて手作業で行っており、繁忙期には我々も出社時に名刺データ入力を行うことが日常茶飯事でした。
人力だけでデータ入力を行っていたものの、サービスの成⻑とともに増加するデータ化の需要に対して労働集約的なオペレーションを続けていくことは明らかに限界が見えていました。そこで生まれたのが、先ほどご説明した機械と人を組み合わせたオペレーションシステム「GEES」です。
「GEES」では、人的リソースを最大限効率化できるよう、秘匿性や難易度の高いデータ化を担う直接雇用の約300名のオペレーター、70社以上の業務委託先、数十万人規模の管理されたクラウドワーカーの3階層によってオペレーターを構成しています。このような体制によって、データ化にかかわる人的費用を変動費化し、繁忙期・閑散期の波に柔軟に対応できる体制を構築しています。このような取り組みの結果、名刺1枚当たりのデータ化費用は創業時から数十分の1以下になりました。
同時に、データ化のスピードも大きく向上し、創業時は納品までに最大3ヶ月かかっていましたが、今では数時間以内に対応することが可能となっています。1ヶ月間でデータ化できる枚数は創業時の数万倍という体制を構築しています。
データの生成:名刺データ化オペレーションの他分野への活用
16ページをご覧ください。当社では創業当時から名刺のデータ化に向き合ってきましたが、名刺以外の請求書や契約書といった他分野においても名刺データ化オペレーションを活用する取り組みが始まっています。
例えば、クラウド請求書受領サービス「Bill One」では、郵送で届く紙の請求書やメール添付で送付されるPDFの請求書等、さまざまな方法・形式で届く請求書を受け取り、正確にデータ化を行っています。
請求書には金額の科目や税額表示といった、名刺とは異なった業界ルールがありますが、私たちがこれまで培ってきた名刺データ化オペレーションや画像認識技術の横展開によって、請求書を受領してから数時間以内に正確にデータ化を行うことができています。このほか、契約書データ化ソリューション「Contract One」においても同様の活用を行っています。
データの整理:データの有効活用における課題
次に、2つ目の役割であるデータの「整理」についてご説明します。17ページをご覧ください。現在、さまざまなデータをビジネスに活用することの重要性が高まっていることは言うまでもありません。企業が蓄積したデータの一部には、「社名が古い」「入力が漏れている」「役職が間違っている」等のデータの欠損により、有効活用できないという課題があります。
また、昨今のデジタルトランスフォーメーションの潮流によって、企業はさまざまなSaaS系のツールを導入していますが、顧客情報はサービスごとにばらばらに分散しているため、同じ顧客情報であっても全体で管理・運用することが難しくなっています。
そのため、データを「整理」することが重要であり、DSOCではデータを有効活用するための「整理」に関するさまざまな研究開発を行っています。
データの整理:データ基盤の構築
18ページをご覧ください。データの「整理」の例として、「Sansan」で名刺をデータ化した後のフローについてご説明します。「Sansan」では、データ化した名刺情報の会社名が新社名に変わった場合、旧社名を新社名に変更したり、URLのドメインを正規化したりします。
また、名刺情報を元に、帝国データバンクの企業情報や決算情報等を名刺情報に加えてデータベースを構築し、関連するニュース配信を行います。
このように、名刺データを正規化かつ最新化した上でさまざまなビジネス情報を加えてリッチ化し、ビジネスで有効活用できるデータ基盤としてデータを「整理」することが可能です。さらに、有償オプションではありますが、「Sansan」上で整備したデータベースを活用して、他社ツール上で顧客情報をクレンジングし、データを統合することも可能です。
データの活用:未来のビジネスシーンを変える「Sansan Labs」
3つの役割の最後として、データの「活用」についてご説明します。19ページをご覧ください。「Sansan Labs」として、名刺をスキャンするだけで、営業活動の効率化や社内人材のナレッジ・人脈活用をサポートする機能を提供しています。この機能群は、社会科学系の研究員による各種ビジネス課題の研究成果を「Sansan」上で体験できるものとなっています。
例えば、「同僚ナレッジサーチ」機能は、キーワードを入力して特定の業界や分野についてナレッジを持った同僚を検索することができます。また、同僚の名前で検索することで同僚が持っているナレッジを知ることもできます。プロジェクトメンバーの選定や社内の情報収集に活用することができます。
データの活用:EBPM支援室の取り組み①「Eight Company Score」
20ページをご覧ください。行政の「証拠に基づく政策立案」を後押しするために立ち上げたEBPM支援室では、外部のステークホルダーにおける企業の評判を、定性的・定量的に評価する独自指標を開発しています。この調査を「Eight Company Score」と呼んでいます。
これまで、企業とビジネス上の接点を持つステークホルダーからの企業評価を直接的に測定したデータはありませんでした。「Eight Company Score」は、名刺アプリ「Eight」ユーザーを対象としたアンケートの結果を数値化することで、ユニークな指標を開発することができました。
現在、約1,400社について調査を行っており、本指標の有効性を調査するために株式価値や企業業績との関連について検証したところ、PBRや時価総額、利益率といった関連性が実証され、企業の社会的評判が企業の利益創出と深く関わっていることを示せました。この「Eight Company Score」は、企業の将来性や持続的成⻑性を測る上で、投資家の方々のみならず、企業の方においても有益な指標であると考えています。
データの活用:EBPM支援室の取り組み②「ビジネス関係人口」
21ページをご覧ください。もう1つ、EBPM支援室の取り組みの事例をご紹介します。「ビジネス関係人口」です。「ビジネス関係人口」とは、ある地域と他の地域のビジネスパーソンとの関わりの度合いを示す独自指標です。こちらも名刺アプリ「Eight」のビジネスネットワークを活用し、地方の市区町村を所在地とする名刺を取り込んだユーザー数等を元に算出します。地方創生や災害復興の政策での活用を想定しており、行政の意思決定を支援します。
DSOCの目指す未来
最後に、DSOCの将来像についてご説明します。23ページをご覧ください。これからDSOCが目指す未来として大きく2つお話しします。
1つ目は、「ビジネスインフラになる」ということです。当社では、今年から「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げました。当社が提供するサービスが、ビジネスに溶け込んでおり、当たり前のように存在する世界を作っていきたいと考えています。
このビジョンのもと、DSOCでは、データ統括部門として「ビジネスデータのインフラになる」ことを目指しています。企業やビジネスパーソンを調べる際に、Sansanのプロダクトで調べることが最も確実かつ早く知る世界を作っていきたいと考えます。
2つ目は、「出会いを最適化し、ビジネスの課題をより早く解決する」ことです。出会いは人と人の出会いだけではありません。会社や人、会社や会社も出会いです。また、出会いは「誰」と出会うのかにフォーカスされがちですが、私たちは「誰」だけではなく「いつ」も重要な要素として提供できることを目指します。
例えば、ある製品を販売したいときに、どの企業に売るべきなのか、業種や従業員規模で選別すると思います。ただ、それだけでは足りず、その製品を欲しいと感じるタイミング、フェーズもあるはずです。データからその変化やタイミングも知ることができるかたちを目指しています。
そのような出会いにかかわるさまざまな要素やビジネスデータに向き合い、研究を重ねていくことで、ビジネス課題を解決する仕組みやテクノロジーを創造していきたいと考えています。最終的には、当社のミッションである「出会いからイノベーションを生み出す」に繋げていきたいと考えます。以上で、私からのご説明とします。ありがとうございました。
質疑応答:新規事業の進捗やテレビCM放映効果、イベントテックについて
質問者1:質問は大きく2点あります。1点目が新規事業について、2点目がDSOCに関してです。まず新規事業についてですが、「Bill One」はかなり順調に契約件数が伸びていると思います。現状、これが来年度末の目標に対してどれくらいの進捗なのか、評価の部分、定性的な部分について教えてください。
また、先ほどリード件数等々のお話がありましたが、テレビCM放映の効果が実際の契約件数に結びついてくるイメージにおいて、それがどのくらいの時期か、どのくらいのボリュームかなどについてもお話しいただける範囲でお願いします。
さらに、最後のパートではイベントテック事業への言及がなかったのですが、そこの進捗についてお話しいただけるところがあればお願いします。
橋本:「Bill One」の進捗についてですが、前回の決算説明会で「そろそろテレビCM放映されませんか」というお話をいただいた記憶があります。そして、2月末にはテレビCMを放映させていただき、先ほどお伝えしたとおりリードが倍増しています。
それが件数につながってくるのはこれからだと思っており、そのような意味では、かなり順調に進捗しています。もともと2022年5月末に1,000件以上というかなり高いハードルを設定していました。簡単ではないですが、「そこに向けてがんばれば届くかな」という感触は得ているため、非常に順調に推移していると思っています。
イベントテックについては、今回の決算発表では言及していませんが、「Sansan Seminar Manager」というプロダクトにおいて受注を取ることができていますし、イベントテック全体としてのかたちも見えてきているため、然るべきタイミングでもう少し具体的なお話ができると思っています。
質疑応答:DSOCにおける今後や人を惹きつける理由について
質問者1:次にDSOCに関してです。わかりやすい事例として、今回は名刺データ化のコストが下がったことでビジネスのスピードが上がり、収益貢献したというご説明をいただきました。その後にもいろいろな取り組みをしていると思いますが、他になにか目立つかたちで収益にインパクトがある事例がありましたら、いくつかご紹介いただければと思います。
また、最後に全体像のイメージとしてご説明していただいたのですが、今後どのようなテーマや分野に注力していくのかについて、もう少し具体的にお話ししていただける内容があればお願いします。
加えて、人材面ではデータサイエンスや機械学習の部分は引く手数多ですが、御社のDSOCが人を惹きつけている定性的な理由があれば、こちらもご解説いただけますか?
常樂:まずはこれからのお話ですが、まさにコストが1つの大きなポイントかと思っています。創業当時と比較して、コストはかなり削減できています。しかし、まだまだ伸びしろがあると思っていますので、さらにこの単価を抑制することで、最終的には事業貢献に結びつけたいと思っています。
このテクノロジーを横展開するという意味では、まさに請求書や契約書といったアナデジ分野に関しては、引き続き我々が優位に立つことができると思っていますし、そのようなかたちで事業に貢献していきたいと思います。
採用については、引き続き好調に採用できています。やはり我々のミッションや我々の持っているデータの価値を感じていただける方が多くいますので、そこで魅力を感じた方を採用しています。
質問者1:請求書や契約書について、1点補足で質問させてください。特に「Bill One」などは事業部になっており、契約書も担当があると思うのですが、製品開発においてDSOCはここにどのように、どのくらいの深さで関わっているのでしょうか? 今までイメージがなかったため、もしよろしければ解説してください。
常樂:まさにアナログなものをデジタルにする、データ化するというところは我々DSOCが深く関与しています。そのため、その点においては事業上、戦略上重要なポジションをとっていると考えています。
質問者1:では、そのデータ化の部分については一緒に製品開発を行っているイメージでしょうか?
常樂:おっしゃるとおりです。
質疑応答:「Bill One」の競合状況について
質問者2:「Bill One」に関してご質問させてください。今日ご説明いただいた概要でいうと、請求書受領側の企業が御社の顧客になるということだと思います。そのような認識だとすると、インフォマートのように、同業他社で請求書の受け手と送り手両方にサービスを展開している企業とはそれなりに競合環境になるという認識でよいでしょうか?
また、ラクスのように、請求書送付側にサービスを提供している会社とは直接的な競合にはならないというイメージでしょうか? それとも、送付側にも御社として関わっていくような方向感があるのですか? 競合状況についてご確認させてください。
橋本:Sansan事業、名刺管理サービスと比べると、比較的競合他社の参入があるとは感じています。名刺管理は圧倒的な市場シェアがありますし、ある程度の地位も持っているため、そのような意味で競合を意識することはあまりないのが現状です。
一方で、「Bill One」はまだまだ立ち上がったばかりのサービスですし、この市場が何なのかという定義がまだまだできていないのかと思います。請求書を受領する側、送る側、またその両方にサービスを展開する会社もあるため、それがどう絡み合って市場を作っていくかというのはまさにこれからです。
しかし、名刺管理とは違う文脈でニーズが非常に大きいゆえに、営業活動をしていてもそこまで競合を意識する必要はないというのが現場の感覚かと思います。まだまだ立ち上がったばかりのサービスですし、営業していてコンペになって、というシチュエーションはそこまでないと思っています。市場のパイを取り合っている感覚はまったくなく、一緒に市場を作っている感覚のほうが大きいと思います。
質疑応答:「Bill One」のコストについて
質問者2:2点目は「Bill One」のコストについてです。DSOCについてのご説明でも、初期と比べると名刺の読み取りコストがだいぶ軽くなったというお話がありました。「Bill One」の請求書の読み取りコストなどは、現時点で、名刺管理コストの曲線でいうとどのあたりの進捗なのでしょうか? 1枚当たりが高くても、量としてはまだそこまで拡大していないのかと思いますが、現時点で全社に占めるコストがどのような状況にあるのか教えてください。
将来的には、取扱量が増えていくことによって当然売上が伸びていくと思うのですが、全体に占めるコストの比率と、今の1枚当たりのコストが技術的にどのようなステージにあり、今後どのような期待を持っているのかについて教えていただけないでしょうか?
常樂:1枚当たりのコストに関しては、私からご説明します。まだまだ名刺に比べると請求書は始まったばかりですので、立ち位置でいうと創業時の少し先くらいの感覚です。したがって、コストを下げる余地は大幅にあると思っています。
橋本:1点補足します。全社に占めるコストで言うと、今期においては本当に微々たるものです。そもそも全社の中で3パーセント程度の人員で取り組んでいますし、まだそこまでボリュームが出ていないため、コストは非常にミニマムです。
来年度においても状況はあまり変わりません。テレビCMを除くと、コストについては何か大きくかかるようなものは特にないと思っています。
質疑応答:契約件数について
質問者3:契約件数についてお伺いします。営業の採用も非常に進めており、直近の数年では従業員数だけ見ても2割から3割くらい増えているということで、非常に営業のキャパシティが上がっていると思います。
その中で、直近では年間で1,000件くらいの契約件数の増加が続いており、足元の四半期で見ると300件近い数字まで伸びています。この「300件×4」の1,200件くらいは、新型コロナウイルスがやや落ち着きつつあるこの状況でも、来年に達成できるのかと思います。
ただ、営業のキャパシティの増加を踏まえると、もう少しがんばりたいのが来期なのかと感じます。契約件数を取ることはなかなか難しいとは思うのですが、外部環境および内部の営業キャパシティの増加を踏まえて、直近の1,000件前後でホバリングした状態から少し飛躍する年になると思います。来期はどのようにお考えでしょうか?
橋本:見積もるのはなかなか難しいです。新型コロナウイルスの状況を踏まえて、ということですが、例えば2020年5月期でいうと、我々は第3四半期が2月末までのため、第3四半期までは新型コロナウイルスの影響はほとんどありませんでした。昨年度の第3四半期は320件くらいの受注件数を取れていたため、それに比べるとこの四半期はかなり回復してきたと思っています。
ただ、実際には、名刺管理サービスを売りに行ったときに、この状況下ではそこまで簡単に売れません。そのような状況を踏まえると、今の数字はよい数字なのかと思います。ここからさらに状況が改善し、新型コロナウイルスの影響がなくなったような状況が来るのであれば、昨年度の第3四半期くらいの数字は達成できると思いますし、人数が増えた分だけ継続的に拡大していくだろうという感触はあります。
質疑応答:「Bill One」の情報開示について
質問者3:2点目は情報開示に関してです。今回「Bill One」も立ち上がってきて、内部消去が大きく出たりなど、各事業がどうなっているのかが少しわかりづらい印象があります。来年「Bill One」は1,000件取るということで、対外的な開示の仕方で変更等を検討されている部分はあるのでしょうか?
橋本:検討はしているところです。現状、「Bill One」にはかなり注目していただいていると思いますが、まだまだ立ち上がったばかりのサービスですので、売上高に対する貢献という意味では、今期についてはそこまで大きくはありません。来期以降のセグメントの開示をどうするかも含めて検討しているところです。
質疑応答:DSOCのデータの可能性について
質問者4:DSOCのデータ活用に関して1つ質問があります。御社はEight経由で相当の数のビジネスパーソンの名刺データをお持ちだと思うのですが、もし自由に使えたら、セールス、リードジェネレーションなどに関しては誰よりも適切なデータをお持ちだと思います。ただ、個人情報保護法などで自由には使えないと認識しています。
スライドの19ページにSales TechとHR Techでの活用が載っているのですが、今後このプロダクトがどのように進化していくかなどの可能性に関して、お話しできる範囲でコメントをいただけますでしょうか?
常樂:もちろん、我々はデータを持っているわけではなく、お預かりする立場ですので、データを自由に扱ってよいわけではありません。個人情報保護法のお話もありますし、加えて、我々にデータを取り扱われる方はレピュテーションなどもかなり気にしていますので、データをどのように扱えばよいかは慎重に判断しています。
例えば、今回プレゼンでご説明した「Sansan Labs」は、むしろSansanのその企業のデータだけを解析して、その該当企業のみに提供しているサービスです。これまで、「Sansan Labs」でご利用いただいてユーザーから反応があった場合にSansanのプロダクトに乗せていくという流れで行っています。今後も「Sansan Labs」で実験的なサービスを提供させていただいて、反応がよければプロダクトに本格的に乗るかたちでサービス開発を行っていきたいと思っています。
質問者4:Sansanサイドでの名刺のデータが御社のクライアントのデータだというのは十分理解しているのですが、そのEightサイドでのデータというのはどうなのでしょうか?
常樂:EightについてもEightユーザー所有のデータであり、我々が所有しているわけではありません。こちらも同じようにお預かりしているという立場です。
質問者4:そうすると、Eight経由でスキャンしたデータも、セールスリードやHR Techなどのプロダクトに活用していくことは考えにくいのでしょうか?
常樂:おっしゃるとおりです。全体のデータベースを使うことは難しく、あくまでもEightユーザーが所有している範囲の中で活用していただくかたちになると思います。
質疑応答:第4四半期の売上および利益の見通しについて
質問者2:冒頭のご説明で触れていたと思うのですが、今回、通期の業績見通しに変化がなく、かつ次年度も売上成長率は30パーセント以上を目指すということでした。差し引きすると、第4四半期の売上はそこまで強い見通しではないと思うのですが、これは引き算したものが今の見通しであるというよりは、見直していないということなのでしょうか? 御社の今年度の第4四半期について、売上および利益の面で何か気にしておくべきことがあるのかどうかを確認させてください。
橋本:通期の業績のガイダンスは変更していないのですが、見直しは常に行っており、それを見て判断しています。売上については想定の範囲内と言いますか、開示しているガイダンスのレンジ内に納まるのではないかということで、大きなサプライズなく想定どおりに着地する感触を持っており、特段見直しをしていません。
利益については、ある程度コントロールが効きやすい性質のものですので、第4四半期、来期に向けた投資をどこまで実行するかというさじ加減なのかと思っています。来期に30パーセントの売上成長を目指すという中において、これはけっこう高い目標であり、達成するのはけっこう難しいとは思っているのですが、それを達成するために必要な投資はできるだけ今期のうちに仕込んでおくという意思を込め、業績見通しを変えていません。
質疑応答:スキャン対象が変わった時のDSOCの効率性について
質問者3:DSOCについて追加で質問させてください。名刺で培ったデータ化の効率性というところなのですが、今回「Bill One」請求書でそのコアな競争優位性を発揮されると思います。今後、請求書もしかり、紙のデータを電子化するというコアな優位性はいろいろな場面で活躍すると思うのですが、名刺で培ったこの効率性が、例えば名刺から請求書に変わると初動に効率性が落ち、ある程度規模が出ると効率性が上がってくるのでしょうか?
今期は名刺から請求書ですが、請求書からいろいろな他のものに転用すると効率性が落ちるのでしょうか? それとも他の分野でも簡単に転用できるようになるのですか? スキャンする対象が変わった時の御社のDSOCの効率性がどうなのかについて教えてください。
常樂:名刺で培ったテクノロジーは横展開できる部分もあり、感覚的に言うと半分くらいはそのまま横展開できる技術を持っていると思っています。ただ、フォーマットなどの業界特有の部分を理解しながらデータ化する必要がありますので、残り半分は少しラーニングしながらコア部分を磨いていくかたちになると思っています。
質問者3:すると、御社としては、あまり項目が複雑ではない、あるいはビジネス側の知見がそこまでなくても取り込みやすいもののほうがよいというイメージでしょうか?
常樂:業界的な風土や経験がないものがあれば取り込みやすいのですが、我々は業界的な部分が複雑であるところも人手を介して行っている部分がありますので、むしろそのようなところのほうが我々の強みをより発揮できる部分かと思っています。
質疑応答:データの保管について
質問者5:大量のデータはすべて日本に保管されているのでしょうか? 直近でLINEの問題があったため、確認させてください。
常樂:データはすべて日本国内に置いています。
質問者5:今まで御社は、データベースもしくは保管されている場所へのハッキングなどのインシデンスは1回もないという理解でよいでしょうか?
常樂:おっしゃるとおりです。大きなインシデント、個人情報が漏洩するような事件は発生していません。
質問者5:また、直近でどこにデータを保管しているのかについての確認の質問は増えていますか?
常樂:世の中で個人情報に対する大きな問題も発生したりしていますので、Sansanのユーザーからお問い合わせをいただくことはあります。
質疑応答:「Bill One」の平均単価について
司会者:チャットからご質問をいただいていますので、質問を読みあげます。「『Bill One』の現在の平均単価はいくらになっていますか? そして、1,000件を達成した時にどう変わっていくのかについて教えてください」
橋本:「Bill One」の単価の具体的な数字はお伝えできませんが、「Sansan」の単価は約16万円になっており、実績としてはそれよりは小さい単価で推移しています。1,000件を達成した時、来年度末にどれくらいになっているかについては、売り方などを工夫して試行錯誤している段階ですので、なかなか難しいところではあります。今の単価をそれなりに維持するか、あるいは数を取っていくにしたがって少し単価自体が減っていくか、そのあたりに落ち着くと思っています。