2020年 上半期(1−6月)ハイライト
森雅彦氏:みなさま、こんにちは。DMG森精機株式会社の2020年度上半期決算説明を行ないます。よろしくお願いいたします。まず、上半期の1月から6月の決算概要を説明します。全社受注は1,355億円で、前年同期比で39.3パーセント減となっています。ただし、1台あたりの受注金額は前年同期比5.5パーセント増加しています。同時5軸、自動化、デジタル化などで機械の安売りをせずにグロスマージンを確保しながら、丁寧に直販、直サービスの体制を用いてお客さまに届けたことが効いています。
また、デジタル化の推進を行なっています。もともと工作機械は完全にデジタルツインで設計していますので、設計データが完全デジタル化されていますが、その後の製造、テスト加工、お客さまへのプレゼンテーション、説明、立ち会い等の工程において、デジタルツイン技術を用いて、コロナ禍にあっても円滑な業務が行えるように推進しています。また後ほど説明します。デジタルツインショールームを7月に公開し、「DMG MORI Webinar」も拡充しています。
さらに、実際にお客さまとのコンタクトを確保するため、3密状態にならないよう注意した上で、東京とそれ以外において「テクノロジーフライデー」と呼ぶ、少人数によるプライベートショーを開始しました。
金融機関及び投資家のみなさまの協力により、劣後ローン及び劣後債による財務体質の強化を図っています。
決算概要
受注は先ほどお伝えした1,355億円、売上は1,543億円となり、営業利益は24億円となりました。2009年から開始したAG社との統合に伴い、とくに2016年以降の76パーセント以上の持ち株になって以降、さまざまな費用が発生しており、これがマイナス30億円となっています。そのうちマイナス21億円が補填条項であり、その他の費用をもって最終損益としてはマイナス22億円となりました。
8月後半になり、2020年12月期の予想としてぼやけていたものがだんだん明確になってきました。予想のレンジを、売上高3,300億円から3,400億円と幅を狭める発表をします。また、営業利益も70億円から100億円のレンジにします。費用はかかりますが、最終的な利益は10億円から30億円ということで、黒字を確保していきたいと考えています。為替の前提は、ドルが110円、ユーロが120円としています。
四半期業績推移
四半期の業績推移です。第2四半期は赤字となりました。主な原因は、未検収案件が増加したことです。みなさまご承知のとおり、当社は直接販売や直接据付を行なっています。他社のように、ディーラーに納入すれば売上が立つものではなく、お客さまへのきめ細かいサービスなどのためにこのようなシステムにしています。
したがって、最終的にお客さまからのサインがないと現在売上として認められない状況になっています。代金は80パーセントから90パーセント回収しているのですが、残りの10パーセント分が入っていないということで、約100億円の案件が未検収になっています。その分のずれが第3四半期、第4四半期に入ってきており、赤字となりました。
一方で、昨年度で3,800億円を超えていた損益分岐点が、現在約3,000億円強になっており、損益分岐点の引き下げに注力し、その成果が出てきつつあると考えています。
営業利益増減分析 2020年度上半期 vs 2019年度上半期
損益の分析です。昨年の上半期の営業利益200億円に対して、粗利益の改善でプラス15億円となっています。また、デジタルイノベーションによりプラス12億円となりました。例えば、立ち会い検証をデジタルで行ったり、営業マンの効率アップなど、後ほど説明しますが、「my DMG MORIポータル」によるサービスの効率アップ等が要因です。
人件費については、社員一同を対象とした報酬賃金カットを行ない、プラス90億円となりました。また、数量減で287億円減です。償却は昨年さまざまな問題がありマイナス6億円となりました。最終的に、上半期の営業利益は24億円となっています。なんとか黒字を確保したと思っています。
為替も、ドルは昨年の110円に対して108円、ユーロも124円に対して119円と円高に振れていますので、このあたりもシビアに効いてきているところです。
キャッシュフロー
キャッシュフローに関してです。第2四半期はマイナス149億円となっていますが、後半でネットワーキングキャピタルを減らし、前置金等が増えて通常の営業状態に戻りますので、通期としてはプラス方向のキャッシュ・フローを計画しています。
貸借対照表サマリー:ハイブリッド資本調達による財務体質強化
今回ハイブリッド資本調達ということで、資本性のある永久劣後ローンと劣後債を500億円から700億円発行させてもらいました。これにより、株主資本比率を本年末で35パーセント以上、Net D/Eレシオ0.5以下ということで、東証上場の平均値並みにもっていくことを実行します。
2008年金融危機時との比較
2008年の世界金融危機、いわゆるリーマンショックと比べたときです。リーマンショック直前のピークは2008年だったのですが、売上高が2,000億円を超え、営業利益も300億円を超えていました。DMGは2008年9月くらいから合併の話を始めたわけですが、このときはまだ森精機という数字の中でのものでした。
それが世界金融危機で3分の1以下になったわけです。利益もマイナス269億円となりましたが。直近のピークはやはり2年前で、米中対立が明らかになる前のもので5,000億円です。それに対して、今回が3,300億円から3,400億円と、前回は3分の1になりましたが、今回は3分の2で収まっているということで、利益に関しても赤字になることはないと思っています。
主な原因は受注地域です。2008年は日本、韓国、米州などであり、欧州や中国は大変弱かったです。しかし現在は、受注が全世界に非常にうまくばらけています。
業種に関しても、2008年度は我々が本格的に名古屋に本社を移して5、6年経ち、トヨタや電通への食い込みが成功して自動車比率が大変高かったころです。この数年は、東京にグローバルヘッドクォータを移し、ヨーロッパでの活動も盛んになることによって、自動車も大変重要なお客さまではありますが、一般産業機械、航空宇宙、全世界の中小企業、金型等の分散化も多様化の道へ進みました。
機種に関してはもっと明確に大きく様変わりしました。例えば、マシニングセンタや単体で売る付加価値の低い業種はほとんどなくなり、主に同時5軸と複合加工機、横形のマシニングセンタのシステムのULTRASONICレーザー加工などの超先端技術等に変遷してきています。グループ会社のマグネスケール、太陽光機、サキコーポレーション等が充実してきており、その受注高も安定してきています。
お客さまのベースも増えましたので、サービス、パーツ等が1,000億円近く安定収入として入ってきています。さらに子会社分で300億円等あり、1,300億円くらいは本業の工作機械のセールスサービス以外にも入ってきています。これもリーマンショックのときに比べて落ち込みを少なくすることができた要因だと考えています。その背景には、まだ道半ばではありますが、世界で直接販売、直接サービス、直接アプリケーションの体制を構築したことがあります。
2008年は、海外輸出はすべて全世界のディーラー網で行っていたわけですが、今は国内を除いてすべて直接販売を行っていることを強調しておきたいと思います。
次期3年の事業見通し
大きな金融機関や研究所、政府の予測を見ると、完全にコロナ前に戻るのは2023年度ではないかというお話があります。それを当社に当てはめると、ご覧のようなかたちになるのではないかと思います。
社員の給料は徐々に回復させつつも、その他の部分は下げていきます。例えば、来年度は今の調子でいうと3,800億円から4,000億円近く、営業利益は5パーセントぐらい、2022年度は4,100から4,200億円くらいです。2023年度に4,800億円ぐらいに復活した場合には10パーセント程度の営業利益を出せると思います。前回のピークは7.7パーセントですから、そこよりも少なくとも2.5パーセントから3パーセント程度の営業利益率の改善ができるのではないかと考えています。
地域別受注構成(連結受注)
事業環境について説明します。地域別の受注構成はご覧のようになっています。第2四半期は非常に下がりましたが、第3四半期はすでにほぼ数字が見えてきており、700億円から750億円程度に戻ってきています。
第3四半期において、完全に自由に渡航の制限が解けたわけではありません。とくに困っているのが、海外における立ち会いです。イギリス政府やフランス政府は、日本のエンジニアが向こうに行くときに、PCR検査が陰性であれば空港からお客さまのところへ行くことを許可されます。しかし、ドイツと日本の交渉はうまくいっておりません。もともとドイツは「日本のエンジニアは来てもいいですよ」という話だったのですが、日本が「ドイツは許可できません」という話になり、ドイツ側も「常に対等でいきましょう」という「Eye to Eye」のフェアな精神を持っていますので、「ドイツも許可しません」ということで話が膠着しています。
このあたりにおいて、9月末から10月に渡航が解除されて、きちんと検査を受けた人が両国で業務に行ける状況になれば、もう少し数字は上がってくるのではないかと考えています。
ドイツ人エンジニアの海外に対する渡航に関しては、アメリカはまだ無理ですが、カナダ等、厳密に科学的に対応して入国を許可し、据付業務をしている国もあります。日本の関係省庁にも、厳密かつ柔軟な対応を切にお願いするところです。
1台あたりの機械受注単価推移
1台あたりの受注単価です。ユーロで見ても円で見ても着実に上がってきています。以前からもお伝えしているとおり、最終的には約5,000万円くらいになる計画です。機械本体の価格は激しい競争にさらされていますので、2,400万円、2,500万円と昔から変わっていないわけですが、そこに同時5軸やミルターンとその軸数の増加、また、人間の手でプログラミングするのが大変難しくなってきますので、AIも含んだかたちでのいわゆるデジタル商品、プログラミングの仕組み等の追加で1,000万円程度です。それから、自動化で1,000万円、計測の複合化で数百万円ということで単価が上がってきています。
単価は上がりますが、省人化や省力化、高精度化、ネットワーキングキャピタルの削減などに効いてきますので、お客さまにとっても大変利点のある提案であり、全世界で受け入れていただいています。
連結受注構成(1月−6月)
受注構成です。大きくは変わっていませんが、中国が6パーセントから9パーセントに増えました。また、機種別には、5軸加工機が36パーセントから38パーセントになったり、高性度化、高機能化が進んできています。業種別ではやはり自動車がコロナ禍の状況で大変ですし、航空宇宙も16パーセントから13パーセントに減っています。反対に、半導体関係が増えたり、医療機や検査機器等の一般産業機械が非常に増えています。規模別には、中小企業の方がリスクをとって設備投資しているところが見てとれます。
需要概況(地域別、業種別)
需要概況としては、地域別にはご覧のようになっています。やはり中国の回復が著しく堅調であり、天津工場も来年の3月まですべて受注残で埋まっているという、うれしい状況になっています。
業種別には、何度も言いますが、半導体製造装置関係や医療関係等が非常に強くなっていますし、それに付随して金型や一般機械等も強くなっています。
伊賀デジタルツインショールーム開設
デジタル化の推進についてご説明します。まず伊賀グローバルソリューションセンタをフルCG化しました。ご覧のようにプラットフォームをつくりました。まだここに人はいませんので、これからフルデジタルの案内を入れたり、お客さまにデジタルでワークを持ち込んでいただき、実際にデジタルツインで切削シミュレーションや干渉シミュレーションを行なったり、DMQPのパートナーのみなさまと工具やホルダーを選んだり、計測器を選んだりします。
また、Webinerも行いますし、LASERTECのアディティブマシンを用いたさまざまなLab&Fabも公開していく予定です。大変使いやすい仕組みになっていますし、今後ますます進化させていきます。
テクノロジーフライデー
テクノロジーフライデーについてです。まずはデジタルでお客さまと接触して、実際に機械を確認したいというお客さまに、いわゆるイノベーションデーということで、1万人を集める年に1回の大きな会合を行っていました。それを、東京で20名以下、伊賀で50名以下と、地域や商社別、営業マン別、業種別、会社のサプライヤーのグループ別などで開催しています。
こちらは大変好評です。昼食を挟んで半日程度の時間で参加していただき、展示機は今までの展示会と同じように数十台並べていますので、お客さまに個別に非常に詳しい説明とディスカッションをさせていただく場となっています。
十数年前に『クリック&モルタル』という本が流行りましたが、「クリック」でデジタル、「モルタル」で実物ということで、やはり実店舗とデジタルワールドが「行ったり来たりする」ことが実現でき、大変うれしく思っています。
AM Lab&Fab
アディティブの世界も、ドイツやアメリカに比べて日本は遅れていましたが、ここにきて急速にお客さまの関心が高まってきています。私どもは、工作機としてこのアディティブマシンを売っていますので、当然10年、20年とスペアパーツと機械の耐久性を考えています。
また、サービス面において順繰り、コンピュータのソフトウェアのアップグレードも計画しています。そのあたりが、今までこの世界でシェアを持っていた、いわゆるベンチャー系の複数年でサービスをしなくなる会社と比べて、全然コミットメントが違うということで、お客さまから大変関心を持っていただいています。
また、素材に関しても、日本を代表する素材メーカー、またドイツ、アメリカのメーカーと共同して、オープンソースでお客さまの興味のある素材に関して、我々がガイドをしながら両者で作り込んでいくということを行っています。そのため、自由度が大変高い仕組みになっています。
5G連携
話題になっている5Gですが、私どもとしては、工場内のWi-Fiでは精密な機器を高速でつなぐのは非常に不安定であるということで、まずはNTTコミュニケーションズと行っているローカル5GのAGVロボットの工場内自動運転に大変可能性があると考えています。
また、KDDIと行なっている複数台の機械を日本各地でつないで、私どもの東京にある先端技術研究センターと札幌のBUGで開発された人工知能を用いて機械同士が教えあい、びびり振動などを制御していく仕組みを、かなりのレベルで構築することができました。今後、来年度以降に出てくる商品にこのような開発された商品を実装していく作業に入っていきます。
WH−AGV
スライドは、ある時間の同じ時間内で表れるデータ量を色で見せたものになります。5Gと比べるとぜんぜんデータ量が違うということを見ていただけると思います。自動運転に関しては、広大で膨大な実験を自動車会社の各社が行うことによって、工場内で我々が非常に使いやすいCPUや周辺のソフトウェア等ができています。
工場内は機械の位置や歩行者、作業者を制御しやすいため、自動車の世界で開発された自動運転の技術を工場内で実現することによって、より効率の高い自動化をお客さまに提案できるものと確信しています。
デジタルコンテンツ:自動化ソリューションシステム
個々の機械の動きも、静止画だけでは大変難しく、5軸の説明や計測機能の入った複合化加工機の説明をデジタルツインショールームで行っているのですが、とくに自動化に関しては、紙の資料ではほとんど理解不可能となってきます。AUTMATION SOLUTIONということで、自動化専門のデジタルショールームを構築しています。もうすぐ発表しますが、こちらは実際にあるショールームではなく、本当にデジタル空間上のものです。
自動化のショールームは、お客さま個々によって違いますので、さまざまな変幻自在なオートメーションの提案、自動化の提案をお客さまに見せることができる、非常にデジタルツインに向いた分野であると考えています。
TULIP:製造現場のデジタル化・工程改善ツール
また、ボストンのスタートアップでTULIPという会社に出資しています。これは工場内で機械加工後や機械の加工の前に様々な部品や工具、検査などを行なうのですが、その情報をいちいちシステム部門が関与しなくても、現場レベルで紙のマニュアルや工程をデジタル化し、トレーサビリティを確保して、製品の組み付けの工程の管理やコストの管理など、さまざまなことを「見える化」して使いやすくする仕組みです。
私どもの日本、ドイツ、アメリカ、中国、ポーランド等の工場では、100ステーション以上のものを使っており、すでに日本の先進的なお客さまにも採用が始まりつつあるものです。これも専門の子会社をつくり、日本の製造業の発展のために強力にご紹介していきたいと考えています。
my DMG MORI
今まで、my DMG MORIポータルということで、私どもの機械の設備機の確保の据付マニュアルや稼働状況などを常に紹介していたわけですが、なかなか日本においては進展が遅かったです。しかし今回、このコロナ禍においてお客さまにその価値を見直していただけたことで、my DMG MORIポータルへの参加のお客さまが1万件以上になりました。
いわゆる銀行のアカウントのように、お客さまが自分の口座に入ると、所有機の情報が全部あり、マニュアルも全部デジタルでキーワード検索ができるようになっています。しかも動画がありますので、実際にどのような作業をするのかが、文字ではなくて動画でお客さまの作業者に見ていただけます。
例えば、オイルの交換は安全にも配慮して点検の仕方等を示しています。すべてのマニュアルで、今まで動画がなかったものを全部動画で説明できるということになっています。
さらに、この「my DMG MORI ポータル」が故障して修理の必要な機械に対して、機械をクリックして私どものサービスセンターと直接つながるということも実験に入っています。2年後くらいには、お客さまとフルデジタルで遅滞なくつながるようになることを計画しています。当然、日本だけではなく、欧州でも米州でも行なっています。お客さま目線で見ると、今まで電話で会話してお待ちしていただく時間等の劇的な削減と、私どもに関しては、トレーサビリティを確保し、リアクションスピードと効率のアップを徹底的に図ることに用いていきたいと考えています。
DMG MORI Webinars(オンラインセミナー)
また、さまざまなオンラインセミナーを行なっています。このような仕組みは大きな会社から買ってくるわけですが、結局コンテンツの勝負になってきています。美しい静止画や動画、的確な作動付き論文のような言葉の使い方などをきっちりと守り、フレキシブルに対応し、グローバルに取り組んでいきたいと思います。
1番熱心に取り組んでくれているのが、中国の仲間です。タイやインドネシアなどのみなさまも取り組んでくれています。例えば、日本のアディティブマニュファクチャリングの例をご覧ください。我々の担当の営業部長がこのように出てくるわけです。一般に公開していますので、お時間があれば、ぜひご覧ください。
DMG森精機 デジタルアカデミー
これは社内向けにもありますが、お客さまのオペレーター向けにデジタルアカデミーという座学事業のeラーニング化を行なっています。私どもの実際のアカデミーでは、そこで得た知見と社員の理解度を基に、eラーニングの教材としてどんどんまとめていっています。
このような教材にもWebinarsにも、先ほどの「my DMG MORIポータル」からお客さまにアクセスしていただいて、機械を単に売るだけではなく、そのあとも現場のみなさまの教育訓練に役立てていく仕組みをつくっているところです。
DMG MORI SAILING TEAM
最後に、この 「Vendée Globe2020」についてご説明します。予選が行なわれ、白石康次郎スキッパーおよび我々の船が20位中10位で予選を完走しました。抑え気味に走りましたが、11月8日から世界1周レース「Vendée Globe2020」がはじまります。
オリンピック等、大きな大会が延期されたり中止したりする中で、環境が違ってもしっかりと努力していればきちんとレースが行なわれ、自助努力で立ち直っていくということで、我々の今置かれている状況と非常に似ていると思います。ぜひ、またこれもネット上で船の位置等配信しますので、ぜひ応援をお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。