2021年3月期第1四半期決算説明会
内田誠氏(以下、内田):本日はお忙しい中、当社の2020年度第1四半期決算発表にご参加いただきありがとうございます。今年度の第1四半期は、世界各国で新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がった結果、全体需要が前年の約半分の水準まで減り、当社の販売台数も合わせて大幅に減少しました。
また、世界の多くの工場で稼働停止を余儀なくされ、稼働継続をした工場においても販売の減少に伴い大きく稼働率が低下するなど、非常に厳しい経営環境となり、業績にも大きな影響がありました。
まず、2020年度第1四半期の事業報告および決算結果についてCOOのグプタよりご説明した後で、私の方から今年度の通期の見通し、ならびに「NISSAN NEXT」についてお話します。最後に、みなさまからのご質問をお受けしたいと思います。それでは、グプタの方から説明します。
2020年度 第1四半期 販売実績
アシュワニ・グプタ氏(以下、グプタ):本日はご参加いただき誠にありがとうございます。まず、グローバルな全体需要と当社の販売実績についてご説明したいと思います。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、主要なマーケットにおいて、四半期の業績に支障が生じたことについては言うまでもありません。1月から3月における中国の台数を含む、会計年度ベースの2020年度第1四半期のグローバルな全体需要は、前年比で44.5パーセント減の1,249万台となりました。
そのような中、当社のグローバル販売台数は前年比で47.7パーセント減の64万3,000台となりました。4月から6月の中国の台数を含む、より現実的なセールス期間で見ると、世界各地でロックダウンや新型コロナウイルスの感染拡大による市場の低迷等、販売に大きな影響がありましたが、当社の販売台数は82万7,000台となり、アメリカのレンタル向けを除いた市場占有率は5.4パーセントを維持しました。
このような状況において、日産は何よりも従業員の健康・安全を第一に考え、事業運営を行なってきました。当社が置かれている状況を正しくご理解いただくために、3つのキーとなる項目についてご説明したいと思います。第1に生産の状況、第2に販売店の稼働状況、そして第3に新型車の生産開始です。
生産状況
こちらが、第1四半期の生産の状況です。国内では、需要が低迷したことに加え、輸出台数が大きく落ち込んだ結果、当社の生産台数は前年を割り込みました。6月に入ってからも国内の生産台数は前年比61パーセント減となっています。
中国では、1月から3月までの生産台数は、前年比51パーセント減に留まったものの、4月から6月にかけては急激に回復し、前年を8パーセント上回りました。
北米の工場は、徐々に操業を再開しつつあるものの、6月は前年に対し60パーセントに留まっており、欧州ではいまだ20パーセントです。日産は、従業員の健康・安全を最優先に、慎重に工場の操業再開を行なっています。その結果、グローバルで工場の稼働率は低下しています。
販売店の稼働状況
次に、販売店の稼働への影響についてです。国内の販売店はすべて営業を継続していましたが、来店されるお客さまの数は最大で6割落ち込みました。中国でも同様に全店舗が営業していましたが、来店されるお客さまの数は減少しています。北米および欧州でも、営業再開した店舗は増えていますが、来店されるお客さまの数は大きく落ち込んでいます。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、当社はオンライン販売のプラットフォームの拡充を加速してきました。すでに11パーセントのお客さまにデジタルで車をご購入いただいています。「ショップ・アット・ホーム」というシステムを使った販売など、デジタルセールスのイニシアチブを開始し、よりスムーズなカスタマーエクスペリエンスを提供しています。
生産停止および減産を余儀なくされる一方で、営業している販売店やオンラインで販売を継続することで在庫を削減し、今後の販売の質の向上にもつなげていきます。
新型車の生産開始
続いて、新型車の生産開始についてです。在宅勤務中においても、予定どおりの新型車の生産立ち上げを実現してくれた国内外の従業員に心から感謝します。スケジュールどおりに生産を開始し、販売の勢いを維持できたのは、彼・彼女らのおかげです。
生産を開始した新型車の具体例を挙げると次のとおりです。2月にはメキシコで「セントラ」の生産がはじまりました。3月には「キックス e-POWER」の生産をタイ工場で、日本・アジア諸国向けに立ち上げました。6月には国内でアメリカ向けの「新型ローグ」の生産を立ち上げました。
ご存知のように、このパンデミックは、当社のオペレーションに重大な影響を与えましたが、この環境のもと、社員のケアをしながら事業が確実に継続できるようにしてきました。
コアマーケットにおける販売実績
3つのコアマーケットにおける販売状況ついてです。まず日本では、4月から6月にかけて、月次マーケットシェアは8パーセントを切る水準から11パーセントを超える水準まで回復しました。6月には軽自動車の販売が功を奏し、前年同月比でも改善しました。軽自動車については、3月に新型「日産ルークス」を発売し、市場占有率を大きく伸ばしました。登録車においても市場占有率は改善傾向にあります。
とくに6月末に販売した小型SUV「日産キックス」は、おかげさまでご好評いただいており、1ヶ月で1万台を超える受注をいただきました。これにより、登録車の市場占有率改善も今後さらに進むと見込んでいます。
中国では、当社の販売台数は着実に回復し、市場占有率も継続的に伸長しています。とくに4月から6月にかけては、販売を前年から4パーセント伸ばしました。「シルフィ」と「アルティマ」の好調が販売の勢いを支えています。
アメリカでは、収益性の高い小売販売に集中し、事業改革を進めています。小売の市場占有率を前年の4.9パーセントから5.4パーセントに拡大し、同時にフリート販売を前年の5分の1のレベルまで減らすことで、結果的に台当たりの売上高を前年比で約700ドル改善しました。
また、最近発表されたJ.D.パワーの「日本自動車商品魅力度調査」において、お客さまから4車種の日産車がセグメントでトップの評価を受けました。アメリカでは依然として新型コロナウイルスが猛威を振るっていますが、第1四半期の業績への同市場の貢献は着実に回復しています。とくに、新型「セントラ」や新型「ヴァーサ」、「タイタン」がその中心となりました。
2020年度第1四半期 主要財務指標①
続いて、財務実績についてご説明します。グローバル市場の低迷と販売台数の減少に伴い、連結売上高は前年比で50.5パーセント減の1兆1,742億円となりました。連結営業損失は1,539億円、当期純損失は2,856億円となりました。営業外損失には、持分法適用会社による投資損失847億円が含まれています。
特別損益のマイナス723億円には、新型コロナウイルス感染拡大による操業停止等に伴う一時的な損失影響がネットで332億円、事業構造改革費用が401億円含まれています。自動車事業のフリーキャッシュフローは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う収益の減少や工場の稼働率の低迷が大きく影響し、マイナス8,157億円となりました。
2020年度第1四半期 主要財務指標②
こちらは、営業利益の増減分析です。為替変動は35億円の増益要因となりました。台数・構成・部品販売および連結販売会社の収益悪化は、2,322億円の減益要因となりました。販売費用は359億円の増益要因、モノづくり・固定費・その他項目は、生産固定費や一般管理費の削減効果を、工場の低稼働による生産変動費の効率悪化が一部相殺し、373億円の増益要因となりました。
重要なことは、固定費削減や販売費の圧縮をしなければ結果はさらに悪化していただろうということです。「NISSAN NEXT」による結果が実証され、持続可能な成長に向けての基盤が構築されていることを示しています。当社が直面している課題に対して、適切なタイミングで適切な計画により対処しなくてはなりません。
流動性の状況
流動性については、2020年度第1四半期の自動車事業のフリーキャッシュフローは大幅なマイナスとなり、その結果、ネットキャッシュは2,352億円となりました。ネットキャッシュは減少したものの、当社は引き続き、1兆2,000億円を超える自動車事業のキャッシュを維持しています。6月から7月にかけて、1,824億円のコロナウイルス感染拡大対応の資金調達を確保したほか、700億円の社債発行も行ないました。
また、約1兆9,000億円のコミットメントラインを、6月末現在は未使用のまま維持しています。当社は新型コロナウイルス感染拡大の状況を注視し、必要に応じて即座に対応できるように準備しています。
いま一度、優先領域について強調します。まず、継続的に固定費の削減を徹底していきます。さらに、新型車の販売の質向上に向けた取り組みを実施し、収益性の伴う市場に向けての市場占有率を拡大します。そして、営業活動におけるキャッシュフローの管理および十分な資金調達で流動性を確保していきます。
2020年度は、直面する課題のスケールや市場環境が不安定であり続けることを経営陣は重々承知しています。長期的な視点で持続可能な収益ある成長へと回復させるよう、引き続き取り組んでいきたいと思います。私の説明は以上となります。
2020年度 販売台数見通し
内田:私の方から、2020年度の通期業績見通しについてご説明します。2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響ですべての市場で全体需要が前年を下回り、グローバルでは前年比で16.0パーセント減の7,204万台になると予想しています。
日本や中国は前年比で7パーセントから8パーセント前後の減少と想定していますが、欧米やその他市場は前年比で2割前後の減少となる見通しです。現時点においても市場の見通しは依然不透明であり、第2波によって、さらに市場環境が悪化する可能性もありますが、その影響を見通すことは現時点では難しく、引き続き市場動向を注視していく必要があると思っています。
そのような市場環境の中で、弊社の2020年度の販売台数は前年比で16.3パーセント減の412万5,000台を見込んでいます。日本と中国では、全体需要を上回る販売台数を見込んでいますが、それ以外の地域では下回る見通しです。
これは、米国市場でのフリートミックスの見直し、インセンティブの適正化など、これまでの課題であった「過度に台数を追うこと」をせずに、販売の質の向上に向けて取り組んでいることが主な要因です。グローバルのマーケットシェアは5.73パーセントと前年レベルをキープします。
2020年度 業績見通し
今年度の業績見通しは次のとおりです。今年度の中国を除いた販売台数は、前年比で21.7パーセント減の見通しとなっていることを反映し、連結売上高は前年比で21.0パーセント減の7兆8,000億円と予想しています。
連結営業損失は、4,000億円の見通しです。持分法投資益の悪化や、昨年度末に計上できなかった事業構造費用も盛り込んでいることから、当期純損失は6,700億円となる見込みです。
また、配当についてですが、今年度は収益力の向上に向けた事業構造改革に取り組んでいる最中であることに加え、新型コロナウイルス感染拡大による大きな影響もあり、収益、フリーキャッシュフローともに非常に厳しい1年になるため、お支払いは見送らせていただく見通しです。一刻も早く、安定的かつサステイナブルな株主還元を再開できるよう、全社を挙げて収益改善に向けて事業構造改革に取り組んでいく所存です。
2020年度 業績見通し 営業利益増減分析
続いて、営業利益の増減分析をご説明します。為替は、ドル円レートを中心に400億円の減益要因となっています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う全体需要の落ち込みによる新車の台数・構成の悪化に加え、部品販売や連結販売会社の収益悪化により、4,250億円の減益を見込んでいます。
貸倒引当等基金計上を含む販売金融事業の収益悪化と、リマーケティング費用と呼ぶ米国を中心としたリース車両の残存価値低下に伴う費用は、合わせて850億円の減益要因となっています。
モノづくり・固定費・その他の費用は、生産の停止に伴う稼働率の低下によって効率性が悪化した生産変動費や、商品性向上の費用の増加を固定費や購買コストの削減による増益でオフセットし、1,205億円の増益要因となる見通しです。
5月に発表した、2020年度に2018年度対比で3,000億円の固定費を削減する取り組みは計画どおり進んでおり、今年度も減価償却費や広告宣伝費、一般管理費を中心に1,500億円を超える削減を実行します。
NISSAN NEXT のゴール
最後に、事業構造改革「NISSAN NEXT」について触れたいと思います。この取り組みは、2023年度までの4年間で、会社を成長軌道に戻し、その先10年を戦っていくための十分な体制を再構築することです。過度な販売台数の向上は狙わず、収益を確保した着実な成長を果たすこと、自社の強みに集中し、事業の質、財務基盤を強化すること、そして新しい時代の中で「日産らしさ」を取り戻すこと、この3つが大きなポイントです。
持続的な成長に向けた新しいロードマップ
事業規模の最適化に向けては、先ほどご説明したとおり、2020年度末までに2018年度対比で固定費を3,000億円削減するという目標を計画どおり達成する見込みです。加えて、2023年度末までに生産能力の540万台規模への最適化、そしてグローバル商品ラインナップの効率化と競争力の強化に向けた取り組みを進めていきます。
また、選択と集中により、コアマーケット、コアモデル、コアテクノロジーに持続的にリソースを投入することで、確実なリカバリーと着実な成長を目指しています。これらの改革を実行する支えとして、品質重視やお客さま志向、そして、私たちのビジネスパートナーであるサプライヤー、ディーラーとの連携が必要不可欠であることは言うまでもありません。
新車攻勢:12の新型車を投入
また、今後18ヶ月の間に少なくとも12の新型車を投入し、商品ポートフォリオの若返りを図る計画についても着実に進行しています。米国では、最も売れている日産車である「ローグ」を一新することに加え、「パスファインダー」と「フロンティア」、そして「インフィニティ」2車種を投入し、販売の質とブランドをさらに向上させていきます。
日本国内では、日産ならではの電動パワートレインである、e-POWERを全グレードに搭載した、新型「キックス」を発売しましたが、今後、e-POWER搭載車をさらに拡充し、「アリア」と併せて電動化率を60パーセント近くまで引き上げ、さらなる攻勢をかけていきます。また、当社の強みであるC、D、EV、スポーツカーのセグメントにおいて、今後もラインナップの刷新と商品力の強化を積極的に進めていきます。
日産の歴史の新たな扉
先日発表しました「アリア」は、日産の新しい顔として、新ブランドロゴとともに、日産の歴史の新たな扉を開きました。日産の強みのすべてを結集させたクロスオーバーEV「アリア」は、すでに世界中から2万人を超えるお客さまから、購入に関心を示していただき、EVのフロントランナーとしてブランドを牽引していくものと期待しています。
本日発表しました2020年度の見通しは、いま置かれている厳しいビジネス環境と自社の事業構造改革の取り組みも相まって、大変厳しい内容となりますが、私は「NISSAN NEXT」を確実に実行していくことで、マイルストーンとして掲げた、比例連結ベースで2023年度に営業利益率5パーセント、マーケットシェア6パーセントというレベルの達成は実現できるものと確信しています。必ず成長軌道に戻し、再び輝ける日産の復活に向けて妥協せず、覚悟をもって取り組んでいきます。私からは以上です。
質疑応答:足元の市場情勢および業績見通しについて
質問者1:業績に関連した質問です。新型コロナウイルスの影響を大きく受けている足元の各主要市場の経済情勢をどのように見ていますか? 今回発表した業績見通しの赤字幅は想定内だったのでしょうか?
既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。