当期におけるCOVID–19への対応と影響
荻野博一氏:みなさま、おはようございます。日本光電の荻野でございます。ただいまから、当期決算の概要と次期の業績見通し、取り組み内容についてご説明します。まずはじめに、全世界で新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、医療の最前線で患者さまの治療に尽力されている医療従事者のみなさまに心から敬意を表します。また、残念ながら感染によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げるとともに、罹患されたすべてのみなさまが1日も早く回復されるようにお祈り申し上げます。
本社においても社員7名の感染を確認し、富岡生産センタの稼働を一時停止しました。地域のみなさまをはじめ、関係者のみなさまに多大なご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。引き続き、社員とご家族の健康と安全の確保を最優先し、医療機器メーカーとして製品とサービスの継続的な供給に努めていきます。
1)当期の決算概要
はじめに、当期の決算概要についてご説明します。3ページをご覧ください。売上高は3.5パーセント増の1,850億円となりました。国内売上高は3.2パーセント増の1,343億円、海外売上高は4.3パーセント増の506億円となり、現地通貨ベースでは7パーセントの増加となりました。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、国内ではマイナス、欧州ではプラスの影響があったと見ています。粗利率は視野品販売の注力により、商品ミックスが良化し、0.2パーセントポイント増の48.3パーセントとなりました。営業利益は3.1パーセント増の155億円となりました。
期予想に対しては、海外、とくにアジアとアフリカが計画を下回ったことから、営業利益も下回りました。経常利益は為替差損の計上により6.4パーセント減の148億円、純利益は特別損失の計上により12パーセント減の98億円となりました。
2)営業利益増減の要因分析
4ページをご覧ください。営業利益が前期の150億円から155億円に増加した要因についてご説明します。為替の影響は5億円のマイナス要因となりました。数量は46億円のプラス要因となりました。価格変動・構成変化については、商品ミックスは良化したものの売価ダウンが影響し、2億円のマイナス要因となりました。販管費は人員の増強などにより34億円のマイナス要因となりました。
3)国内売上高
続いて地域別の状況です。国内売上高は41億円増の1,343億円となり、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要と反動減はほぼ相殺されました。市場別では、大学病院市場が新築移転に伴う大口商談の受注もあり、好調に推移しました。官公立、私立病院市場も堅調でした。
4)海外売上高
次に6ページをご覧ください。海外売上高は21億円増の506億円となりました。米州は12億円増の247億円で、現地通貨ベースでは7パーセント増加しました。英国は脳神経系群、AEDを中心に好調に推移しました。生体情報モニタも設置工事、保守サービスを含め好調でした。中南米は、政府商談の受注および代理店網の整備に努めた結果、コスタリカ、チリを中心に好調に推移しました。ブラジルも現地通貨ベースでは好調でした。
欧州は9億円増の90億円で、現地通貨ベースでは16パーセント増加しました。3月に入り生体情報モニタなどの需要が急増し、ドイツ、イタリアを中心に2桁成長となりました。アジア州は2億円減の148億円で、現地通貨ベースでは2パーセント増加しました。インド、中近東は好調に推移したものの、代理店網の整備に時間を要した東南アジアが低調でした。中国は現地通貨ベースでは好調に推移しました。その他地域では、南アフリカ、エジプトが回復しました。
5)商品群別売上高
7ページは商品群別の売上高の状況です。すべての商品群で売上を伸ばすことができました。なお、国内外での消耗品・保守サービス事業の強化を受け、売上構成比率は45.5パーセントとなりました。
5.1)生体計測機器
次に8ページをご覧ください。まず、生体計測機器は全体で3.7パーセント増の422億円となりました。国内は3.4パーセント増の332億円で、心臓カテーテル検査装置群が好調に推移しました。脳神経系群は減収、心電計群は前期並みとなりました。海外は、4.7パーセント増の90億円で、脳神経系群が米国を中心に好調に推移しました。心電計群は現地通貨ベースでは前期並みでしたが、円ベースでは減収となりました。
5.2)生体情報モニタ
次に9ページをご覧ください。生体情報モニタは全体で4.8パーセント増の649億円となりました。国内は5.6パーセント増の397億円となり、新製品が寄与したほか、付加価値の高いオプション品も好調に推移しました。海外は3.7パーセント増の252億円で、米州、欧州、アジア州ともに増収となり、とくに欧州での売上が大きく伸びました。米国は、中位機種ベッドサイドモニタの発売遅延の影響を懸念していましたが、堅調に推移しました。中南米も好調に推移しました。アジア州では、サウジアラビアや中国が売上をけん引しました。
5.3)治療機器
次に10ページをご覧ください。治療機器は全体で4.1パーセント増の345億円となりました。地域別では、国内で6.3パーセント増の236億円、海外で0.3パーセント減の108億円となりました。商品別では、医科向け除細動器が1.8パーセント増の62億円となりました。国内は大口商談の受注や新製品が寄与しましたが、海外ではアジア州が減収となりました。
AEDは販売台数が全体で9万8,400台となり、売上は0.7パーセント増の154億円となりました。国内は販売台数の減少により減収となったものの、海外はデフィブテック製のAEDがアジア州、米州で増収となりました。人工呼吸器は、新築移転商談の受注もあり、ハミルトン社製が好調に推移したほか、自社の新製品も寄与し、33.6パーセント増の35億円となりました。
5.4)その他
次に11ページをご覧ください。その他商品群においては、全体で0.8パーセント増の432億円となりました。国内は画像診断装置などの現地仕入品が減収となり、1.2パーセント減の377億円となりました。検体検査装置や設置工事・保守サービスは好調に推移しました。海外は、17.1パーセント増の55億円となり、血球計数器は、中南米、欧州、アフリカで増収となりました。米国における設置工事・保守サービスも好調に推移しました。
6)財政状態
13ページは財政状態です。総資産は19億円減少し、1,677億円となっています。たな卸資産については回転期間が3.7ヶ月となりました。
7)キャッシュフロー
14ページはキャッシュフローの状況です。期末残高は12億円増加し、359億円となり、ROEは8.3パーセントとなりました。
8)設備投資と研究開発費
15ページは設備投資と研究開発費です。設備投資と減価償却費はともに35億円となりました。計画との差異は、生産設備や改修工事の期ズレによるものです。研究開発費は次期への期ズレもあり、計画を大きく下回る67億円となりました。次期計画については、設備投資は4億円増の39億円の予定です。需要の増加に伴い、人工呼吸器2機種と生体情報モニタの生産増強を図ります。減価償却費は前期並みの36億円、研究開発費は3億円増の70億円を見込んでいます。
1)経営環境
続いて、次期の業績見通しについてご説明します。当社を取り巻く経営環境については17ページをご覧ください。国内では病院の再編、統合や働き方改革の検討が進められていますが、足元では新型コロナウイルス感染症に対応した医療提供体制の確保が最優先事項となっています。海外においては、欧米諸国で医療の質と効率性の向上、新興国で医療インフラ整備が推進されていましたが、現在は各国で新型コロナウイルス感染症に対応するため、医療機器の緊急整備が続いています。
2)COVID–19感染拡大の影響–国内
新型コロナウイルスの次期業績への影響については、18ページと19ページにまとめています。国内の病院では、外来患者の減少や不急の手術・入院が延期されており、今後の収益の悪化が懸念されています。また、当社においても営業活動を自粛しており、カテーテル等の症例数の減少や診療所、PAD市場での需要減少などの影響が懸念されます。生体情報モニタや人工呼吸器の問合せは増加していますが、プラス影響は限定的であり、市場環境悪化のマイナス影響が大きいと考えています。なお、国内の見通しは上期末まで影響が続くと仮定しています。
2)COVID–19感染拡大の影響–海外
海外における影響は19ページのとおりです。現在、各国で医療機器の緊急整備が進められており、欧州に続き米国、新興国で生体情報モニタや人工呼吸器の商談が増加しています。下期にかけても、重症患者の集中治療体制の整備が必要な国では需要が見込まれます。
一方で、営業活動の抑制やAEDの需要減少などの影響が懸念されるとともに、部品調達に支障が出るリスクがあります。また、経済の停滞、悪化に伴う政府予算の縮小や設備投資の抑制が懸念されるほか、急激な需要増に対する反動減も想定されます。なお、海外の見通しは感染拡大の影響が第3四半期末まで影響が続くと仮定しています。
3)次期業績見通し
次期の業績見通しについては20ページをご覧ください。連結売上高は2.7パーセント減の1,800億円の見込みです。国内売上高は6.1パーセント減の1,262億円、海外売上高は6.2パーセント増の538億円、現地通貨ベースでは9パーセントの増加を見込んでいます。粗利率は48.4パーセントを見込んでいます。
営業利益については、研究開発など将来の成長に必要な投資は継続するものの、人件費・経費の抑制に努め、9.7パーセント減の140億円を見込んでいます。経常利益、純利益についてはご覧のとおりです。現時点で感染拡大の収束は見通せず、精度の高い業績予想を提示することが困難な状況ですが、感染拡大が一定期間で収束すると仮定した上で予想を策定しています。
4)次期業績見通しの要因分析
21ページをご覧ください。次期売上高が1,800億円となる要因についてご説明します。国内売上高は、病院・診療所向けが75億円、AEDが6億円それぞれ減少する見込みです。AEDの販売台数は4万5,800台を見込んでいます。海外売上高は43億円の実質増で、為替は12億円のマイナス影響を見込んでいます。営業利益のマイナス要因としては、減価償却費・研究開発費は3億円増加しますが、人件費・経費を4億円削減する見込みです。また、為替は4億円のマイナス影響で、減収の影響は12億円と見込んでいます。
[参考]商品群別売上高見通し/為替の影響
次期の商品群別の売上高見通しについては22ページのとおりです。生体情報モニタ、人工呼吸器の需要の増加に伴い、増産体制の構築を進めます。一方で、それ以外の医療機器は需要の減少が予想されることから減収となる見込みです。消耗品についても、カテーテル等の症例数の減少が想定されることから減収となる見込みです。なお、為替について、ドルは107円、ユーロは117円と想定しています。為替感応度はご覧のとおりです。
TRANSFORM 2020の成果
続いて、前中期経営計画の総括についてご説明します。24ページをご覧ください。3ヶ年中期経営計画「TRANSFORM 2020」では、高収益体質への変革に取り組んできました。高い顧客価値の創造に向けて、超音波診断装置や人工呼吸器など、当社初となる製品を相次いで投入し、自社品比率を65.6パーセントまで向上させることができました。また、消耗品・保守サービスにも注力し、目標を上回る45.5パーセントの売上比率となりました。
組織的な生産性の向上に向けては、東日本物流センタを設立し、物流の効率化を図りました。海外子会社へのERPの展開に加え、国内の本社、支社支店間で業務フローの電子化を進めました。
TRANSFORM 2020の定量評価–売上
目標と実績の差異は25ページのとおりです。国内では迷走神経刺激装置の取扱中止や、3月以降の訪問自粛の影響から目標を若干下回りました。海外では米州、アジア州、他が目標を大きく下回りました。タイムリーな新製品の投入に加え、東南アジアでの販売体制の整備、新興国での短納期商談への迅速な対応に課題が残る結果となりました。
TRANSFORM 2020の定量評価–利益
利益面は26ページのとおりです。売上高が目標に届かなかったことに加え、新製品の投入遅れが粗利率の改善に影響しました。また、生産効率の改善も課題となっています。さらに、東日本物流センタの設立や、海外販売・サービス体制の強化といった先行投資が重なり、営業利益が大幅に未達となりました。これまでの取り組みは一定の成果を上げていますが、さらなる生産性向上の取り組みが必要と考えています。
次期中期経営計画に向けた課題
27ページをご覧ください。この3年間で高収益体質への変革に向けた取り組みを進め、製品力、販売力、組織力は向上しているものの、グローバル展開に必要な組織機能や部門横断的な取り組みが課題として残りました。既存事業における収益性の改善とグローバルな企業体質の強化を軸に、新たな長期ビジョンと中期経営計画の策定を進めてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、市場環境が大きく変動していることから、公表を延期することとしました。これまでの前提を再度検証し、見直した上で公表する予定です。
1)地域別事業展開の強化①
続いて、次期の取り組みについてご説明します。まず、地域別事業展開の強化について29ページをご覧ください。ご覧のとおり、国内では過去数年で数多くの新製品、サービスを投入しました。これらの提案を強化することで商談の確実な獲得を目指します。
足元では生体情報モニタや人工呼吸器への問合せが増えていますが、一方で外来患者、および手術や入院の減少により病院収益の悪化が懸念されており、経営改善に貢献する顧客価値提案がこれまで以上に重要になると考えています。また、今後は遠隔医療サービスの需要が見込まれることから、「LAVITA」等を活用したクラウド型ビジネスの展開を強化していきます。
1)地域別事業展開の強化②
次に30ページをご覧ください。米国では引き続き、当社モニタリングソリューションへのニーズが高い状況です。新製品のスポットチェックモニタは体温とSpO2を測定できることから、感染症患者のスクリーニングへの活用が期待されます。感染症対策として需要が増加している生体情報モニタ、および人工呼吸器の販売展開を強化します。
また、医療機関における初期導入コストの負担を軽減するため、サブスクリプションモデルの提供を開始しました。なお、中位機種ベッドサイドモニタについては、計画どおり上期のFDA再申請に向けて準備を進めています。4月には米国事業本部を設置しており、米国子会社間の連携、事業基盤の強化を進めています。
1)地域別事業展開の強化③
次に31ページをご覧ください。新興国市場では、先進国と同様の医療水準が求められるハイエンド市場向けに、付加価値の高い日本・米国の開発生産品を供給します。ミドル&ローエンド市場向けには、コストコスト競争力の高い上海の開発生産品を供給します。この3年間で投入した生体情報モニタ、人工呼吸器、救急車搭載除細動器は市場評価が高いため、販売展開をより一層強化します。また、4月に中国事業本部を設置しました。現地開発、生産機能を強化し、中長期的なシェア拡大を目指します。ドバイの試薬工場については、予定どおり2020年度の生産開始に向けて準備を進めています。
2)コア事業のさらなる成長①
次にコア事業のさらなる成長について、主な取り組みをご説明します。32ページをご覧ください。生体情報モニタリング事業では、ご覧のとおりこの3年間で中位機種ベッドサイドモニタや、当社初のスポットチェックモニタ、新興国向けのベッドサイドモニタなどを投入し、ラインナップを一新することができました。急性期から回復期まで幅広い製品ラインナップを揃え、大規模ネットワークへの対応を強化することで、競争力の向上を図っています。新型コロナウイルスの感染拡大により海外での需要が急増していることから、現在増産を進めています。
2)コア事業のさらなる成長②
次に治療機器事業について、33ページをご覧ください。ご存じのとおり人工呼吸器の需要が急増していることから、富岡生産センタおよび日本光電オレンジメッドでの増産を進めています。「NKV–330」は気管挿管の必要ない軽症患者に使用するため、上期に1,000台の供給を目指しています。
医療機関が現在保有している侵襲型の人工呼吸器を重症患者に使用いただきたいと考えています。「NKV–550」は、国内での製造販売承認を優先的かつ迅速な審査で取得することができました。現在、国内生産を進めており、7月出荷を目指しています。人工呼吸器は高い品質を求められる製品であり、部品調達等の課題もあることから、短期間での立ち上げは容易ではありませんが、生産体制の増強に全力を尽くしていきます。
3)企業体質の強化
次に34ページをご覧ください。課題となっているグローバルでの企業体質の強化に向け、新たに2つの組織を設置しました。「グローバル経営管理本部」では、経理、法務、人事などの機能を統合し、グローバルなガバナンス経営管理体制の強化を図ります。また、「Corporate Digital Transformation統括部」では、グローバルな情報基盤の整備を進め、データの利活用を推進するとともに、組織的なサイバーセキュリティ体制を強化します。
4)サステナビリティに向けた取り組み
サステナビリティに向けた取り組みは35ページのとおりです。日本光電が得る価値と社会が得る価値の2つの共創と最大化を図り、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に取り組みます。現在、医療、環境、企業活動の3つの分野でマテリアリティの検討を進めており、次期中期計画に織り込むことで企業活動を通じた課題解決に取り組みます。
利益配分の基本方針
最後に36ページをご覧ください。利益の配分については、引き続き将来の成長に向けた内部留保の確保に配慮し、長期安定配当を継続します。研究開発では、中長期的な視点から持続的成長に向けた製品・技術開発に注力します。設備投資については、人工呼吸器、生体情報モニタの増産体制の構築、情報基盤の整備に向けた投資などを予定しています。M&Aでは、引き続きコア事業の相乗効果を軸として、新たな成長機会を探索します。また、すべての事業戦略の要となる人財育成に注力していきます。
株主還元については、配当性向30パーセント以上を目標としています。配当を重視しており、自己株式の取得は機動的に検討します。次期の年間配当金は35円で、配当性向は29.8パーセントの予定です。
以上、当期決算の概要と次期の業績見通し、取り組み内容についてご説明しました。日本光電グループは、医療機器メーカーの社会的責任として、医療現場の最前線で新型コロナウイルス対策に尽力されている医療従事者のみなさまの支援に全力で取り組んでいきます。また、リーマンショック以来の世界的な経済危機を迎える可能性がある中、厳しい環境下でも事業と雇用の継続を守るために、現体質の一層の強化を図る所存です。ご清聴ありがとうございました。