2018年3月期中間決算説明会
植平光彦氏:株式会社かんぽ生命保険の植平です。本日はお忙しいところ、ご参加いただきまして、本当にありがとうございます。はじめに私から経営方針の概略をご説明し、その後、常務執行役の加藤から経営状況の詳細をご説明いたします。
代表執行役社長紹介
私は株式会社かんぽ生命保険の代表執行役社長に就任して初めての決算説明会となりますので、簡単に私の経歴からご紹介させていただきます。
私は1979年に東京海上火災保険株式会社に入社いたしました。主に経営企画、営業企画の企画部門での仕事と、一部宮崎支店長をはじめとした営業現場での業務推進等にも取り組んでまいりました。
2013年6月に株式会社かんぽ生命保険にまいりまして、主に商品開発や営業企画を4年間担当し、本年の6月に代表執行役社長に就任いたしました。
株式会社かんぽ生命は2007年の民営化、2015年の株式上場を経て、将来の成長発展に向けた改革を進めている真っただ中です。
私自身、経営陣の一員として、これまでも尽力をしてまいりましたが、代表執行役社長としての私の使命は、これまでの成果をしっかり踏まえつつ、改革を加速進化させることにより、さらなる企業価値の向上を実現していくことであると認識しています。
これからも日本郵政グループの一員として、とくにパートナー会社である日本郵便株式会社と力を合わせながら、全力でみなさまのご期待に応えられるように、努力してまいります。引き続き変わらぬご支援とご鞭撻をよろしくお願いしたいと思います。
経営課題への対応方針
経営方針の概略についてご説明いたします。ここでは経営課題の対応について、私の基本的な考え方をご説明いたします。
すでにみなさまご承知のとおり、現在歴史的な低金利環境に加え、構造的に進んでいく少子高齢化が進展しています。こうした事態は生命保険業界にとっては、極めて厳しい事業環境が続いていると言わざるをえません。
こうした中で、株式会社かんぽ生命保険が今後さらなる発展を遂げていくために3つの柱を掲げています。1つ目は、お客さま本位を徹底した業務運営の追求。2つ目は、持続的な成長の実現。3つ目は、事業経営における健全性の確保です。
これら3つの事柄に真摯に取り組むことが必要であります。今後、次期中期経営計画を検討する際にもこの3つの柱が基本になると考えています。
もう少し噛み砕いてお話しします。1つ目のお客さま本位を徹底した業務運営の追求ですけれども、私はとくに保険募集面においては、親切に丁寧に、そしてわかりやすくお客さまに商品をお届けしていくご説明をしていくと。そのことにより、お客さまのご理解やご納得を得たうえで、ご契約をいただくことが大変重要だと考えています。
加えて、募集面での品質向上にもこれまで以上に努めたいと思っています。そしてすべての業務事務面での、お客さまの利便性の向上に努めてまいりたいと思います。
2つ目の持続的な成長の実現についてですけれども、ここでは保障性商品の販売スキルを向上させつつ、お客さまニーズをとらえた新商品の開発などをしていきたいと思います。
営業面でも、日本郵便株式会社との連携強化を図り、保有契約の底打ち・反転を、目指してまいりたいと思います。
最近の状況では、基本契約に付加する特約の負荷率が、これまで8割弱ぐらいだったところが、現在9割近くまで上昇するなど、この保障ニーズを重視した営業活動の定着が、成果を出しつつあると認識しています。
そして3つ目の、事業経営における健全性の確保についてですけれども、生命保険というお客さまの一生涯に寄り添う商品をご提供するうえで、我が社が健全な事業運営をサスティナブルに継続していくと。将来に向かって、継続することが前提となるということです。
当然ながら、適切なリスク管理、ERMによって健全性を維持しながら、ALMを基本にしながら資産運用の多様化を進めてまいりたいと思います。
以上の取り組みを実現するために、当然のことながら人材システム等への継続的な投資も含めて、今後2018年度から始まる次期中期経営計画を、具体的に検討してまいりたいと思います。
低金利環境を踏まえた商品戦略
ここでは具体的な経営戦略のうち、とくに低金利環境を踏まえた商品戦略について、少しご説明いたします。
市場金利が急速に低下したことへの対応として、昨年(2016年)の6月に学資保険の一部と、一時払いの定期年金保険の販売を停止いたしました。その後、二度にわたって、保険料改定の実施を行いました。
基本契約の予定利率は、昨年の8月に1.5パーセントから1パーセントに。また本年の4月には1パーセントから0.5パーセントへの引き下げを行いました。
この間、予定利率の引下げに伴う保険料の値上げ幅を極力抑制するために、死亡率や疾病の発生率も見直しを行いましたが、全体としては商品の収益性を確保する、総合的な改定ができたと考えています。
また本年の10月には、新規業務として郵政民営化法の認可を得た、3つの新商品の販売を開始いたしました。いずれも高齢化の進展、低金利の継続に対応して、保証が必要なお客さまのお役に立てる商品となっており、これらをお客さまにわかりやすくご説明して、保障ニーズをしっかりと捉えてまいりたいと考えています。
保有契約の状況【保有契約年換算保険料】
保有契約の状況についてご説明いたします。9月末の個人保険の保有契約の年換算保険料は、前期末からやや減少したものの、全体の減少傾向は緩やかになっています。
また右側のグラフにあるように、第3分野においては、保障ニーズを重視した営業推進により、前期末と同水準を維持し、収益性の改善にも寄与いたしました。今後も10月に発売した新しい医療特約などを活用して質の高い契約を獲得しつつ、成長軌道への転換を目指してまいりたいと思います。
中間決算の概要
私からは最後に中間決算の概要について、簡単に触れさせていただきます。経常利益は、マーケットが安定的に推移したことによるキャピタル損益の改善等により610億円の改善を果たし、1,688億円という数字になっています。
中間純利益は、無配当特約の増加による契約者配当準備金繰入額の減少などにより87億円の増益となりました。
通期業績予想比でも、経常利益・純利益ともに、順調な進捗となっています。
また下段のEVという欄にある経済価値ベースについてですけれども、EVと新契約価値の双方ともに大きな改善をすることができました。
とくに新契約価値については、マイナス金利政策の導入を受け、機動的に保険料改定を実施する。先ほど申し上げたように、過去2回の保険料改定をしたことを契機に環境変化に適切に対応できたと考えており、その結果、こうした新契約価値の飛躍的な向上を図ることができたと考えています。
下期についても、保障性商品を中心に、さらなる販売強化を図ってまいります。結果、利益をしっかり確保して、安定的な株主還元が実現できるように努めてまいりたいと思います。
社内の業務運営についても少し触れさせていただきます。上下組織の区分なく、自由活発な議論を図り、明らかとなった課題については聖域を設けずに、全社一丸となって解決に向けて取り組んでまいりたいと思います。
私自身先頭に立って、こうした経営改革をリードしてまいりますので、引き続きみなさまのご指導ご支援を心よりお願い申し上げたいと思います。
以上で私からの説明を終わり、常務執行役の加藤より経営状況の詳細をご説明いたします。
連結財務諸表(要約)
加藤進康氏:常務執行役の加藤です。私からは中間決算を踏まえた経営状況の詳細についてご説明いたします。連結財務諸表の要約です。
保有契約の減少により、保険料等収入、総資産の規模は減少しておりますが、減少幅は縮小傾向にあります。
計上費用のうち、売却損などの資産運用費用が減少したことから、経常利益は前年同期から610億円のプラスとなっています。純利益については、収益性が相対的に高い民営化後の契約が積み上がっていたことから、安定的に推移しています。
新契約の状況 【新契約年換算保険料】
新契約の状況についてご説明いたします。
個人保険の新契約年換算保険料は、保険料改定の影響等により、前年同期比26パーセント減の2,089億円となりました。前年同期は7月に保険料改定前の駆け込みの需要があったことが、減少幅が大きい要因となっております。
一方、第三分野の新契約年換算保険料は、前年同期比で7.4パーセント増の279億円となり、中間期としては過去最高を記録しました。
下期には新たな医療特約を販売するなど、保障ニーズを重視した営業を一層強化することにより、さらなる新契約の販売拡大を目指してまいります。
医療特約の改定
10月に発売した新商品についてご説明いたします。医療特約の改定は2008年以来で、医療技術の進歩による入院日数等の短期化、予定利率の見直しによる 負担の背景といった背景を勘案し、1つ目は入院保障。2つ目は手術保障。3つ目は返戻金の3点について、改定を行なっています。
入院保障については、入院日数の短期化を踏まえ、入院の1日目に、入院保険金日額を5日分上乗せしてお支払いすることで、短期入院に手厚い保障としました。
2つ目は手術保障ですけれども、外来手術が増加していることを踏まえ、入院を伴わない手術や放射線治療なども保障対象に加えるとともに、保険金額もお客さまにわかりやすいシンプルな保障額としました。
3つ目の返戻金ですけれども、 終身保険に付加する医療特約について、解約返戻金がないタイプをバリエーションとして用意し、保険料負担の軽減を図りました。
このように保障範囲を充実させた新たな医療特約の販売を通じて、お客さまの保障ニーズにお答えし、保障性商品の強化を図ってまいりたいと考えております。
終身保険(低解約返戻金型)・長寿支援保険の創設
終身保険と長寿支援保険についてご説明いたします。
終身保険については、二度の保険料改定により、お客さま保険料の負担が増加したことから、従来より解約返戻金を低く設定したタイプを追加することで、保険料を低廉化し、魅力ある商品として投入しました。
年金保険については、金利低下により当社は年金保険の商品の販売を低下しておりましたが、長生きリスクへの保障を提供するため、いわゆるトンチン性を含めた長寿支援保険を開発し、投入しました。
これらの対応により、低金利環境下においても価格、それから返戻率の面で魅力ある商品をご提供できるようになったと考えています。
お客さま本位の業務運営
お客さま本位の業務運営についてご説明いたします。
企業価値の持続的な好調を実現するためには、お客さま本位の業務運営の徹底が必要不可欠であり、当社の経営上もっとも重要な柱と位置付けております。
本年4月には、経営トップのコミットメントを初め、7つの原則からなる「お客さま本位の業務運営に関する基本方針を定め、公表しました。
すべての業務について、わかりやすさという観点から見直しを行うとともに、満80歳以上へのご高齢者への保健募集に際しては、ご家族等への説明を引き受け条件とするなど、お客さま本位のサービスの提供に向けた改善、高度化に向けて取り組んでおります。
資産運用の状況
資産運用の状況についてご説明いたします。
ALMを基本としつつ、昨今の低金利環境を踏まえ、資産運用の多様化を進めてきた結果、株式・外国債券などのリスク性資産の残高は、この中間期末で約9兆円。総資産費で11.5パーセントまで拡大しました。
今後もマーケット環境を注視し、徹底したリスク管理のもとリスク性資産への投資を継続する方針であり、今期末には総資産費で12パーセント程度を見込んでいます。
また、右の表のとおり、負債の平均予定利率の低下が続く一方、資産の利子利回りは前年同期と同水準を維持し、350億円の順ざやを確保しました。
一方、キャピタル損益はマイナス24億円となりましたが、金利や為替など、マーケット変化の影響を受けた前年同期から大きく改善しています。
資産運用の多様化
資産運用の多様化についてご説明を続けます。低金利環境下で運用収益を確保していくため、今期も資産運用の多様化を推進し、投資対象を拡大していく方針です。
上期に開始したヘッジファンド、不動産への投資については、下期も継続し、アロケーションの調整や、投資対象地域の拡大等を検討してまいります。
プライベート・ エクイティ、インフラ・ エクイティについては、上期において態勢整備がおおむね完了したことから、下期に投資を開始する見込みです。
これらオルタナティブ投資については、時間分散を図りつつ、今後3年から5年程度をかけて、総資産の1パーセント程度まで残高を積み上げることを想定していますが、マーケット環境等を踏まえ、柔軟に対応していきたいと考えています。
また、オルタナティブ投資の資産運用力を一層向上させるため、業務提携や人材の採用等を通じて、態勢の強化を図ってまいります。
EVの状況
EVの状況についてご説明いたします。
2017年9月末のEVは、市場環境が安定的に推移したこと等により、前期末から増加し、3兆5,986億円となりました。とくに保険料改定による商品の収益性の改善と、それに伴う商品構成の保障性へのシフトにより、新契約価値は前年同期比965億円増の1,022億円となり、EVの増加に大きく寄与いたしました。
EVの変動要因
EVの変動要因についてご説明いたします。
低金利環境は続いているものの、当期の市場環境は安定的に推移したことから、EVは着実に増加し、経済前提一定でのRoEVについては年換算で9.7パーセント増となりました。
RoEVについては年平均6から8パーセント増を目処としておりますが、この中間期はこれを上回るペースとなりました。
また新契約マージンについては4.7パーセントと、マイナス金利導入前の水準を上回る実績となっており、保険料改定や、それに伴う商品構成の変化が効果として着実に表れていると考えております。
健全性の状況
健全性の状況についてご説明いたします。経済環境の変化に伴うリスクに備えて、危険準備金と価格変動準備金を合わせて、3兆39億円積み立てています。
また、将来の逆ざやを補う目的で積み立てている追加責任準備金は、5兆9,397億円となっています。
連結ソルベンシー・マージン比率、ESR、信用格付のいずれも、他社との比較において遜色ない水準にあり、高い健全性を有していると考えています。
2018年3月期連結業績予想
最後に2018年3月期の連結業績予想についてご説明いたします。今期は中期経営計画の最終年度にあたり、当期純利益は中計目標の800億円程度を上回る860億円を予想しております
株主配当については、1株当たりの安定的な増加を目指す方針のもと、前期比でプラス6.7パーセントの一株当たり64円を見込んでいます。
中間期は資産運用収益の増加など、一部の業績指標において多少の上振れが見られますが、おおむね順調に進捗しており、現時点においては当期の連結業績予想や、1株当たり配当予想に変更はないと考えております。
以上で私からのご説明は終わります。ご静聴ありがとうございました。