2017年3月期 決算・経営説明会
稲垣精二氏:改めましてみなさんおはようございます。第一生命ホールディングスの稲垣です。本日はご多忙の中、第一生命グループの決算・経営説明会にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。早速プレゼンテーションを始めさせていただきます。
第一生命グループの業績ハイライトをお示ししています。グループ業績は減収増益となりました。マイナス金利の導入に始まり、ブレグジットや米国の大統領選など市場の予想とは異なる結果によるイベントが相次ぎました。
そういう年度でしたが、第一生命グループがこれまで進めてきた事業分散・地域分散の成果として、連結純利益は前期比29.6パーセント増と高い伸びを達成することができました。
海外生命保険事業、アセットマネジメント事業は連結純利益の28パーセントを占めるに至っています。
17年3月期から株主還元の原資として、新たに定義したグループ修正利益が2,101億円となりました。
配当は従来予想の5円増配40円を上方修正して8円増配43円とした他、230億円の自己株式取得を決議いたしました。
総還元性向の還元額は737億円となりまして、総還元性向は35パーセントとなる見込みです。
連結主要業績
連結および主要子会社の概要について説明いたします。まず一番上の箱のところですが、連結経常収益は前期比約9,000億円減少となりました。
国内生命保険事業において円建て一時払い貯蓄商品の販売を抑制したことに加えて、第一フロンティア生命保険の収入が大幅な減少となりました。
連結経常利益また親会社株主に帰属する当期純利益はともに増益となりまして、11月に発表した通期会社予想も上回っております。
第一生命は会社予想を下回り前期比減益となりましたが、第一フロンティア生命は、下半期の国内外の金利状況を受けまして、市場価格調整に関わる責任準備金の戻し入れが発生し大幅に増益となりました。
海外生命保険事業は、オーストラリアでは期末にかけて死亡保障商品の収支が改善いたしまして、また米国では基礎の買収効果が貢献したこともあり、いずれも前期実績や会社予想を上回る決算となっております。
グループEEV変動要因分析
17年3月末のグループ・エンベディッド・バリュー(EEV)です。こちら19日に詳細レポートを発表させていただいております。
新規契約の獲得や金融環境の改善によりEVは、前期末の4.6兆円から約5.5兆円へと約8,500億円増加いたしました。ここでは前期末からのEVの変動要因についてご説明をいたします。
まず株主還元に関する調整を行った後の前期末EVに対して、新契約価値による増加が1,455億円、プロテクティブによる買収に関わる保有契約価値による増加は330億円ございました。
そして期待収益による増加が約4,000億円となっております。
以上ご説明した新契約価値から経済前提の前提条件の変更までの点線の部分の合計が約4,900億円の増加となりまして、EVの基礎的な成長部分とも言えるその成長率は10.7パーセントでございました。
経済前提に関する前提条件と実績の差異は金利と株価の上昇で約4,000億円のプラスとなっております。
その内国内金利による影響は約3,000億円、株価の上昇による影響は約2,200億円の押し上げでした。一方、外国証券の変動の影響が約1,000億円のマイナスとなっております。
グループEEV 新契約価値
こちらでは新契約価値についてご説明をいたします。国内の生命保険事業では、低金利を背景に一時払いの円建て貯蓄性商品の販売の抑制しております。
また中段左側の第一生命ですが、平準払の個人年金、また中段右の第一フロンティア生命の外貨建て定額生命の販売が増加しまして、商品ミックスの変化も影響しています。
第一生命では営業職チャネルの強化に向けた先行投資を行っておりまして、新契約費が増加しております。
それも短期的には新契約価値も減少につながっております。後ほど中期経営計画の進捗でもご説明しますが、今年度は生産性を維持しながら保障性商品の販売シフトを強化しまして、新契約価値の増加に取り組んでまいります。
米国では規制強化を控えて年金販売が減少しております。左下のプロテクティブもその影響を受けております。新契約価値は微減でしたが、別途定期保険の買収により、EVは約330億円増加しております。
資本充足率の状況
17年3月末の経済価値のベースの資本充足率は、前期末の98パーセントから132パーセントへと改善をしております。
新契約の獲得または永久劣後特約付き社債の発行そして経済環境の改善が主な要因です。経済価値ベースの資本充足率については、3月31日のリリースにおいて今年度末までに170〜200パーセントの水準を目指すという従来の目標を変更しまして、中長期的に目指す水準という位置づけに達しました。
その背景には短期的な経済条件の変動に振らされることなく、長期的な成長戦略を実行し利益成長を通じて健全性を確保するという当社の考え方がございます。
金融環境に応じて適正にリスクコントロールするということはもちろんですが、還元原資である会計利益を積み上げながら成長分野に資本を積み上げるという経営戦略が必要だと考えています。
長期の契約に基づいて事業を行う生命保険事業の特性を考えますと、経済価値指標は非常に重要な物差しであるということ、ここは変わりありません。
しかし、経済価値は足元の経済条件が示唆する環境が将来にわたって実現していくという前提に立った指標であるということから、現在のように中央銀行の金融政策によって一時的にイールドカーブがコントロールされているときは注意が必要だと考えております。
また経済価値指標の高度化にも取り組んでいます。保険負債の評価においては死亡率や罹患率など、またリスク量の評価においては運用ポートフォリオなど各社の実態を反映した条件のもとで評価がされる中で、割引率にも一定の運用実態を反映させることで負債評価と試算評価の連動性がより高まると考えております。
具体的には保有資産の時価利回りがリスクフリーレートを上回る部分を割引率に付加して負債評価を行うこととしました。
この結果、新しいモデルでの資本充足率は151パーセントとなりました。今後はこの資本ベースに資本を進めてまいります。
国際資本規制の動向
保険会社に対する国際的な資本規制の動向についてまとめています。保険監督者国際機構(IAIS)は2019年を末として、国際的に活動する保険グループに適用する資本基準の策定作業を行っております。当社も積極的にこの策定プロセスに参加しております。
ICSが標準化され各国の当局により制度化されるまでにはまださまざまな主要を定義していく必要があると考えています。
中でも負債評価やリスク量評価に用いられる割引率をどのように設定するかということは、資産運用の実態をそのまま反映させるものから市場整合的アプローチをとるものまで幅広い意見がございます。
現在はさまざまな手法を広義の経済価値しようとして認めていく方向性に合意が整いつつあり、その水準化について議論が進められているところです。
当社は資本充足率の計測手法として一定の基準を資産運用の実態をリスクフリーレートに上乗せするというモデルの高度化を今回行っておりますが、この考え方もこうした国際的な保険の動向と同じ方向性になっていると考えております。
第一生命グループ業績予想
18年3月期の業績予想についてご説明をいたします。
18年3月期は、減収減益を予想しております。連結経常収益の減少は国内生命保険事業で保障性商品へのシフトを進める中、一時払い契約など貯蓄性契約の保険料減収を見込んでいるためです。
連結経常利益、連結純利益が減少する要因は、第一フロンティア生命で前期市場価格調整にかかる責任準備金が高水準であったことの反動です。
海外生命保険事業においても一時的要因などの反動減を予想しています。減益決算となりますが、中期経営計画の目標である総還元性向40パーセントの実現に向けて、1株当たり配当額では2円増配の45円を予想しております。
連結純利益の増減要因分析
連結純利益の変動要因の中で、第一生命の純利益の変動要因について詳しく説明をしております。
4月からの標準利率の改定に伴いまして、第一生命は1部商品の保険料率を改定をいたしました。
新契約については、標準利率に基づいて責任準備金を積み立てなくてはいけませんので、通期では責任準備金繰り上げ負担の増加が発生いたします。
こちらはキャピタル損益の改善によって一部相殺され、第一生命の純利益が微減にとどまると予想しております。
またグループ修正利益は3月31日にお伝えしたとおり1,800億円を予想しています。主な調整項目はページ右側に記載のとおりです。
株主還元の基本的な考え方
こちらのスライドは新しい還元君主であるグループ修正利益について説明しておりますので後ほどご確認いただければと思います。
キャッシュフロー・マネジメントを強化
今回グループ修正利益という概念にシフトしたのは、持株会社体制以降を契機にグループのキャッシュフロー・マネジメントを強化したいという思いからです。
持株会社はグループ各社から支払われるキャッシュとしての配当金を活用して、株主の還元および新たな成長事業への資本再配布を行う新たな持株会社です。
新たに定義したグループ修正利益は、グループ各社の配当原資となる修正利益をベースとしているため、グループ各社が持株会社に支払う配当原資と持株会社による株の配当原資が整合的なものとなります。
左下に17年3月期のグループ修正利益を記載しておりましたが、2,101億円でした。これをキャッシュフローの観点から図指したものが左下のフローチャートです。
なお当社が持ち株会社に移行したのは16年10月の期中でしたが、一部過程の数字でこちらお示ししていることをご了解いただければと思います。
ご覧のとおり左下から右への矢印がありますが、成熟した事業を営む第一生命は高い配当性向、つまりは送金率を設定する一方で、成長性の高い海外生保事業はこの送金率を抑制することで成長を支える資本を内部留保していくという考え方です。このような資本再配布を図っているということでご理解いただければと思います。
また、全グループ会社から持株会社への送金率が約60パーセントとなりまして、持株会社に送金されたキャッシュからの株主還元、ここでは還元カバー率と呼んでいますが、こちらも約60パーセントとなっております。
このようなかたちで成熟事業からの還元性向と、成長事業からの還元性向というところも、できるだけ透明度は上げて、我々が行っているグループ内の資本再配布についてもしっかりとご理解をいただければと思います。
株主還元の強化
現金配当は18年3月期も2円増配の45円を予想しています。実現すれば5期連続の増配となります。中長期的視点に立った成長戦略を実行しまして、現金配当の安定的向上を目指しております。
過去3期においては、自己株式の取得も続けておりますが、自己株式の取得は、業績動向などを踏まえた、機動的な株主還元策として引き続きここは活用してまいりたいと思います。