2017年3月期 経営成績サマリー

松原圭吾氏:本日はお忙しい中、当社の決算説明ならびに中期経営計画の説明にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。本日は今申し上げた2つにつきましてご説明させていただきますので、いつもより多少説明の時間が長くなることをお許しいただきたいと思います。

それではまず、2017年3月期の決算を、一言で申し上げます。全ての指標が計画を大幅に上回る結果となり、資源・非資源ともに、当社の力強さを示す決算ができた年であったと言えると思います。

本年度からの新中経では、この力強い決算を足場に、さらに成長を加速し、最終年度には、当社の史上最高益を目指してまいります。

それではお手元の、2017年3月決算期決算説明会資料の1ページをご覧ください。まず、世界経済を概観しますと、商品市況の底打ちにより、後半に向けて景況感が改善し、米国を中心に、底堅い成長を見せました。

このような経営環境下で、EBITDAは5,961億円。当期利益は資源価格の堅調な動きや、資産リサイクルの着実な推進を主因に、3,061億円。基礎営業キャッシュフローは4,948億円の資金獲得となり、いずれも従来の通期予想を上回る結果となりました。

株主還元につきましては、年間の配当金は、従来予想から5円増配し、1株あたり55円を予定します。また、第4四半期には、追加株主還元として、475億円の自社株買いを実行いたしました。

2017年3月期 経営成績

2ページをご覧ください。当期利益は、前期比で3,895億円増益となりました。金属は、銅事業などの前期減損の反動や、市況の上昇。それから機械・インフラは、IPP事業における前期損失の反動を主因に、増益となりました。

2017年3月期 経営成績

3ページをご覧ください。基礎営業キャッシュフローは、前期比で231億円増加しました。エネルギーおよび化学品は、市況の下落により、減少しましたが、金属は市況の上昇、生活産業はマルチグレンのマージン改善を主因に、増加しました。

2017年3月期 資産サイクル及び融資(キャッシュ・フロー)実績

4ページをご覧ください。資産リサイクルは、東燃ゼネラル石油の株式や、ブラジル化学品関連事業の売却などにより、2,900億円の獲得となりました。

一方、投融資は6,350億円の支出となりました。主な案件としては、モザンビークの石炭インフラ事業、パナソニックヘルスケア、米国不動産アセットマネジメント会社などの投資を実行しました。

前中経3年間累計のキャッシュ・フロー・アロケーション実績

5ページをご覧ください。キャッシュフロー・アロケーションの実績についてご説明します。

まず、当期の実績ですが、基礎営業キャッシュフローと、資産リサイクルによる資金獲得から、既存とパイプラインへの投資を差し引いた、リカーリング・フリー・キャッシュフローは、5,100億円となり、そのうち3,600億円を成長投資に配分しましたので、フリー・キャッシュフローは1,500億円の黒字となりました。

赤枠の部分をご覧ください。この結果、全中経期間3年間累計のフリー・キャッシュフローは、4,900億円の獲得となり、全中経の経営目標であった黒字化を達成しました。また、株主還元の3,750億円を差し引いた、株主還元後のフリー・キャッシュフローも、1,150億円の黒字となりました。

全中経期間は、市況下落の影響を大きく受けましたが、成長投資と株主還元の両立を謳ったキャッシュフロー経営を十分に実践することができた3年間であったと、自負しております。

キャッシュ・フロー、バランスシート

6ページをご覧ください。右側のバランスシートをご覧ください。2017年3月末の総資産は、11兆5,000億円となりました。ネット有利子負債が3兆3,000億円となり、株主資本が3兆7,000億円となった結果、ネットDERは0.88倍に低下しました。

2017年3月期 株主還元

7ページをご覧ください。年間配当金は、従来予想から5円増配の、1株あたり55円を予定し、第4四半期には、取得総額475億円の自社株買いも実施しました。

以上で、2017年3月期決算の説明を終わります。

新中期経営計画

続きまして、2020年3月期に向けた新・中期経営計画について、ご説明をいたします。新中経に関する資料の方をご覧ください。

まず資料の1ページをご覧ください。こちらが、本日ご説明する4つの項目です。

三井物産の目指す在り姿

次に3ページをご覧ください。まずはじめに当社の目指す在り姿と、新中経のテーマについて簡単にご説明いたします。

当社の在り姿は、多様なプロ人材が当社の特徴であり、強みでもあるグループの総合力と、優れたパートナーやお客様とのネットワークを駆使し、主体的に事業創出に取り組み、新たな価値の創造に挑戦することです。

当社の最大の強みは、多様なプロ人材であり、様々な資質や能力を持つバラエティ豊かな社員が、グループ全体にあふれています。

これらの社員が、それぞれの得意とする領域で、自らビジネスをつくり、育て、新たな価値を次々と生み出していきます。

この価値創造を持続的に行い、成長を加速する。これが新中経のテーマ、Driving Value Creationに込められた意味です。

新中期経営計画 定量計画サマリー

次のページをご覧ください。3年後である、2020年3月期の当期利益は4,400億円。すなわち当社の史上最高益更新を目標とします。基礎営業キャッシュフローは、6,300億円を目指し、ROEは10パーセントまで引き上げます。

新中期経営計画における重点施策

6ページをご覧ください。ここからは、定量目標達成に向けた施策をご説明します。

まず、現在の経営環境ですが、世界は資源価格のスーパーサイクル終焉に伴い、量的拡大から質的成長を追求するようになっており、また、欧米主導のグローバルルールから、地域ごとの部分最適化に向かうなど、目まぐるしい変化を続けています。

そのため、変化やリスクに耐えうる収益基盤の確立が当社の最重要課題であり、それに加えて、当社が強みを有する成長領域を見極め、メリハリをつけて経営資源を配分するとともに、それを支える経営基盤の強化が必要と感じています。

これらの課題にしっかり対応するために、新中経では4つの重点施策を設定しました。

重点施策 (1)強固な収益基盤づくりと既存事業の徹底強化①

次のページをご覧ください。4つの重点施策をご説明します。まず1つ目は、強固な収益基盤づくりと、既存事業の徹底強化です。新中経の中核分野は、金属資源・エネルギー、機械・インフラ、化学品の3つです。

金属資源・エネルギーは低商品価格化においても、強靭なキャッシュ創出力を有する事業群ですが、機械・インフラと化学品も、これまでの取り組みが実を結び、金属資源・エネルギーに次ぐ収益の柱に成長しています。

各分野の主要事業は、スライドに記載していますが、今後もこれら事業群の資産を積み増すボルトオン投資を継続し、強い事業をさらに強固なものにしていく考えです。

一方、過去に投資をした事業群で、潜在価値を有しながらも、実力を発揮できていないものについては、その価値の実現を徹底的に進めます。

具体的には、オペレーションの改善や、事業再生、さらには業界再編を通じて、事業価値の向上を図るとともに、事業の入れ替えも加速します。

また、創業以来の生業である、トレーディングを徹底的に強化するとともに、付加価値の高いトレーディング機能の発揮により、パートナーやお客様とのネットワークを強化して、価値創造の機会を拡大します。

重点施策 (1)強固な収益基盤づくりと既存事業の徹底強化②

次のページをご覧ください。こちらのチャートは、前中経までに積み上げた良質な事業資産群と、その収益貢献やキャッシュ創出が始まる時期を示しています。

金属資源・エネルギーでは、モアティーズ炭鉱の石炭インフラ事業や、テンパロッサの石油事業が貢献を開始するほか、機械・インフラおよび化学品は、発電や鉄道、タンクターミナルの拡張など、市況に左右されにくい安定収益を生み出す収益基盤の拡充が見込まれます。

これらこそが、中経期間において、新たな貢献を始める事業群であり、これらを着実に立ち上げることで、定量目標を達成します。

重点施策 (2)新たな成長分野の確立

次のページをご覧ください。重点施策の2つ目は、新たな成長分野の確立です。中期的な外部環境の変化も見据え、当社が強みを発揮できる成長分野を4つに定め、経営資源をダイナミックに配分します。まず1つ目は、モビリティ分野です。

社会ニーズの変化と、環境社会の対応を見据えた、素材および、移動・輸送サービスなどの複合的な取り組みを考えています。

2つ目はヘルスケア分野です。とくにアジアでの社会ニーズが増加している、糖尿病などの生活習慣病への対応に焦点を当てた、ヘルスケア・エコシステムの構築を目指しており、案件を厳選のうえで、さらなる拡充を図ります。

3つ目が、ニュートリション・アグリカルチャー分野です。世界的な人口動態や、生活様式の変化を見据え、当社では、農業・畜水産の生産性向上と、安定供給を狙うとともに、食の高付加価値化に取り組みます。

最後に、リテールサービス分野です。世界的に、多様な消費者の力が強まり、その嗜好も、様々に個別化していく中で、消費者ニーズに対応するためにも、最新のデジタル・ロジスティクスや、金融機能を駆使した次世代型事業の育成に取り組みます。

これらの4つの成長分野においては、当社の強みを活かした、新たな価値創造を進め、次の収益の柱を確立します。

重点施策 (3)キャッシュ・フロー経営の深化と財務基盤強化①

次のページをご覧ください。3つ目の重点施策であるキャッシュフロー経営の進化と、財務基盤強化の基本方針をご説明します。

1点目は、安定基礎営業に基づく、下限配当の設定です。安定基礎営業キャッシュフローとは、将来の商品市況動向も見据え、当社が安定的に創出可能な、基礎営業キャッシュフローのレベルを意味します。

この安定基礎営業キャッシュフローをベースに算出した、配当総額を下限として、株主に還元することを約束します。

2点目は、3年間累計での、株主還元後のフリー・キャッシュフローを黒字化することで、有利子負債の水準を管理し、財務基盤の強化を図ります。

3点目は、下限配当控除後のフリー・キャッシュフローの資金使途ですが、その時々の営業状況に鑑みて、追加株主還元、有利子負債の返済、追加投資に配分します。

最後は格付けですが、今ご説明した3点を意識したキャッシュフロー経営の実行により、現状のA格以上を維持した上で、持続的な向上に努めます。

重点施策 (3)キャッシュ・フロー経営の深化と財務基盤強化②

次のページをご覧ください。先ほどの基本方針に基づく、新中経期間3年間累計のキャッシュフローアロケーションの見通しとなります。3年間累計のキャッシュインは、基礎営業キャッシュフローと資産リサイクルの合計で、2兆4,000億円を見込みます。

一方、キャッシュアウトは、1兆7,000億円から1兆9,000億円の投資計画に、下限配当総額の3,000億円を加え、2兆円から2兆2,000億円を見込みます。

その結果、下限配当控除後のフリー・キャッシュフローは、2,000億円から4,000億円の黒字を見込んでいます。

重点施策 (3)キャッシュ・フロー経営の深化と財務基盤強化③

次のページをご覧ください。投資の配分について、ご説明します。パイチャートをご覧ください。右側の赤い線の部分が、中核分野に対する投資配分です。

投資総額1兆7,000億円から1兆9,000億円のうち、約65パーセントをこの分野に配分し、中核分野が有する強い基礎営業キャッシ・フロー創出能力の維持と強化に充てます。

なお、中核分野への配分のうち、金属資源・エネルギーが約半分を占めます。一方、左側の青い線の部分が、成長分野への投資で、約35パーセントを配分し、次の収益の柱の構築に充てます。

赤い線と青い線が重なっている部分は、機械・インフラや化学品で、中核分野と成長分野が、一部重複する部分を意味します。

重点施策 (3)キャッシュ・フロー経営の深化と財務基盤強化④

次のページをご覧ください。資産リサイクルは、当社の定常的なビジネスモデルですが、新中経でも、その方針は全く変わりません。向こう3年間で、約7,000億円のキャッシュインを見込んでいます。

資産リサイクルの主な事業分野としては、機械・インフラ、金属資源・エネルギーと生活産業を想定しています。

重点施策 (4)ガバナンス・人材・イノベーション機能の強化

次のページをご覧ください。重点施策の4つ目である、経営基盤強化の具体的な施策を示しています。

1つ目はガバナンスの強化ですが、今回の社外役員の一部交代も踏まえて、引き続き取締役会の多様性拡大と、実効性強化に努めます。

2つ目は人材の強化で、当社最大の強みである、多様なプロ人材の活用を通じた、強力な人材プールの維持・拡充がその狙いです。

グループ全体での最適人材登用に加え、個人ベースでの時差出勤制度導入などの働き方改革を進め、個々人の潜在能力を最大限引き出すことができる施策を導入します。

また、多様なプロ人材の育成や拡充を行うべく、個の強化を徹底的に進めます。3つ目は、イノベーション機能の強化です。急速に進む技術革新は、当社にとって脅威であるとともに、大きな機会を与えてくれると考えます。

この波を生産性向上に積極的に活用するために、前期より、デジタルトランスフォーメーション活動を積極的に推進しており、これを加速させます。

定量目標 基礎営業キャッシュ・フロー

16ページをご覧ください。当社のKPIの1つである基礎営業キャッシュフローは、2018年3月期は5,000億円。2020年3月期は6,300億円までの上昇を見込みます。

定量目標 当期利益

次のページをご覧ください。もう1つのKPIである当期利益は、2018年3月期は3,200億円。2020年3月期は、当社史上最高益となる4,400億円を目標としています。2020年の内訳は、金属資源とエネルギーで2,400億円。

非資源分野で2,000億円を見込みます。金属資源とエネルギーは、商品価格上昇に過度に頼ることなく、主として生産量の増加や、コスト削減による増益を進め、非資源は中核分野である機械・インフラ、および化学品の収益力強化が、増益の原動力となります。

株主還元方針

19ページをご覧ください。最後に株主還元方針についてご説明をします。まず、先ほどご説明した通り、年間4,000億円の安定基礎営業キャッシュフローを前提に、配当総額1,000億円の下限を設定します。

なお、2018年3月期の配当は、1株あたり60円を予定し、基礎営業キャッシュフローの拡大を通じた継続的な増加を目指します。自社株買いについては、引き続き経営を取り巻く諸環境を勘案の上、金額や時期を含めて、機動的に対応します。以上で私の説明は終わります。