チャンスは地方に転がっている

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藤野英人氏:皆さんこんばんは。藤野でございます。『投資バカの思考法』の著者でもありますし、レオス・キャピタルワークスという会社、ファンドの運用をしております。

今日は多分まだご飯を食べていない方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、お腹がすいてる中、話を聞いていただいて本当にありがとうございます。

『投資バカの思考法』、この本の中身の話を逐一しても、あまりおもしろくないと思いますので、今日は私の考えている投資の話や自分がどういう思いで仕事をしているかという話をしたいと思っています。

今日は90分時間があるので、60分強ぐらい私が話をして、ぜひ皆さんから質問をお受けしようと思います。少しの間ですが、楽しく有意義な時間を過ごせたらと思います。

私の会社は今、東京の丸の内に本社があるんですけど、年間120泊ぐらい出張をしています。平日の奈良県、それから和歌山県辺りに出張で木、金、土、日と行っています。

年間120日ということは、3日に1日ぐらいですけれど、120泊ということで日帰りの出張も結構しているので、おそらく半分ぐらいは東京以外のところにいるんですね。

何で東京以外のところにいる機会があるかというと、まず皆さんに聞きたいです。東京以外の出身の方は、どのくらいいます?

(会場挙手)

結構いる。田舎者ばっかりですね(笑)。すばらしい。

何で東京以外のところに行ってるかというと、東京以外にチャンスがいっぱいあるからなんです。すごく意外だと思うんですが。

株式投資の世界でもそうなんですけれど、例えば千代田区、それから中央区に本社がある会社はどのぐらいあると思います? 

上場してる会社が3,500社ぐらいです。3,500社のうち、かなりの大手が東京都になりますけども、その中でいわゆる大手町、丸の内、皇居辺り、この千代田区、中央区で本社がどのぐらいあるかというと、550社ぐらいですね。わずか10数キロぐらいの一定の地域の中で550社もあります。

日本を代表する会社の大半は千代田区、丸の内にあります。日経新聞の本社の隣が経団連会館です。経団連の中心的な会社はほとんどが丸の内にあるんですね。

丸の内軍と非丸の内軍が戦ったら?

では、その550社に投資をするのと、千代田区、中央区以外の残りの3,000社に投資をするのと、この10年間、どちらが成績が良かったのか?

千代田区、要するに東京の丸の内大手町軍団と非丸の内大手町軍団が戦います。成績で。どちらが勝ったでしょうか? この10年間。前振りしてますからね。

(会場笑)

もう答えがわかっていると思うんですけれど、前振りがなかったら皆さんは多分、中央区と大手町が勝つと思うと思うんです。

やはり、この10年間は地方が衰退して、東京が吸い取ったと思っている人が多いです。もちろんそういう面もあるんです。

あるんですが、すごくびっくりすることは千代田区中央区軍団とその他、東京でもそれ以外の地域はその他、この3,000社で成績を見てみると、20パーセントぐらいその他の地域のほうが良かったんです。これは結構すごいことじゃないかな、と。

何でかというと、一般的な常識とは違う話なんです。日本ではこの10年間ぐらい、東京と地方の格差がすごく開いて、そして東京の会社だけ成長してしまったったと思っているんですが、何のことはない。

少なくとも上場してる会社については東京、千代田区、中央区の会社以外が健闘していたということは、僕はちょっと痛快な話だなと思うんです。

でも時価総額、会社の価値が大きな日本の会社の大半はやはり千代田区、中央区にあります。

だから千代田区、中央区の会社の株が上がらないとデイトレまでなかなか上がりません。だからやはりここの会社が上がらないと、日経平均の指標は上がりにくいんです。

でも投資という面で見ると、別にどこに投資をしてもいいんです。そうするとより儲かる場所がどこか、と。お客さんのお金をお預かりして増やす仕事なので、有名で大きな会社に投資をしなければいけないということはありません。

お客さんのお金をお預かりして儲けるといったときには、より儲けられる可能性がある地域に行ったほうがいい。

それで実は、私の会社は東京の丸の内に本社があるんですけれど、丸の内以外の会社に投資をしたほうが成功するということで、いろんなところに行っています。

「安心」と「安全」はまったく違うもの

その中でも投資ですごく重要なところですが、多くの人が間違えることがあります。それが何かというと「安心」「安全」という言葉ですね。「安心なものは安全だ」と思いがちなんです。

例えば、安心なものってどういうものでしょうか? 知らない人は、あまり安心しないですね。知らない会社、安心しない。知っている会社、知っている人、それだけで安心感がわきます。

知らない男がそこに立ってるというと、それだけで不安感あります。知ってる男がそこに立っていても全然怖くないですね。知らない女が後ろから見ている。ただ知らないだけですよ。悪い人とは言ってない。

でも知らない女が後ろから見てると聞いた瞬間にぞわぞわっとしますよね。だから僕らは、知らないことに対する不安がすごく強い。

あと、大きな、小さなというと大きな会社のほうが安心しますね。有名な会社、無名な会社というと有名な会社のほうが安心するわけです。だから多くの人は安心するものは安全だと思い込んでいる。

ところが投資の世界でいうと、安心が必ずしも安全とは限らないんです。それよりもむしろ安心できない、例えば知らない会社、無名な会社、小さい会社が結果的に儲かったということが非常に多いです。

でも知らない会社、不安感あります。その不安感をなくすにはどうしたらいいでしょうか? 知ればいいんですね。少なくとも知ることによって不安はないものにできる。

だから私が年間120日もいろんなところに行っているのは、知っているものを増やすためです。知ることが増えると、安心することが増えるんですね。これはとっても大事なことです。

安全、安心のためにはなるべく行動しない、怖いから動かないと思う考え方もあるんですが、その場合は結局知らないこと、知らない知識に囲まれている状態になって、いつも怖いんです。

でも、一歩足を運べば知っているものが増えてくる。結果的に怖いものが減っていき、あたかも世の中が自分たちをサポートしてくれているように感じることができます。

足を運べば“近くて安心”な場所になる

私は今、秋田にすごく仕事で行ってます。なぜかというとお礼回りに。秋田銀行さんが私たちの投資信託の販売パートナーになっていて、それで秋田に行ってます。

僕は秋田県には行ったことがありました。47都道府県、ほとんど全て、全部に行って、一番少ない県は高知県で8泊ぐらい。どこの県も8泊以上してます。

でも、秋田県は結構少なかったんです。多分ここ(秋田銀行)に行くまでは8泊以下で少ないと思います。なぜかというと上場企業が少ないから。

でも秋田銀行さんが僕らの販売パートナーになったので、秋田に行くことになりました。何回も行きました。1回行って2回行って。そうすると、秋田が遠い地域でなくなります。

皆さんの出身地って皆さんにとって遠いでしょうか? 長崎県出身いる? 山形県、長崎県ってポピュラーですね。

物理的には遠いと思うんですけど、気持ち的には全然遠くない。やはり知っている地域、知ってるものは怖くない。心理的に近い。

秋田県って結構遠いでしょう? 秋田新幹線で5時間ぐらいかかります。飛行機でも結構遠いです。

奈良県出身の方います? 奈良県って東京からめちゃくちゃ遠いですよ。空港ないし、新幹線も通ってませんから。京都から特急で1時間ぐらいです。多分、遠い県でいうとすごく遠い気がしますね。

私たちは10月1日から奈良で一番大きな南都銀行さんと取引を始めて、南都銀行さんを通じて販売するようになったんですけど、奈良に何度も行くと奈良が心理的に非常に近いところになりました。だから足を向けてみる、と。そこの地域に何度か足を運ぶとすごく近い地域になります。

先月までは私にとってワルシャワは非常に遠いとこだった。なぜかというと行ったことない。ワルシャワ行った人っています? ポーランドです。いないですね。想像もつかないです。

ワルシャワについては知らないですよね。僕も行くまでは知らなかったです。ズロチという名前の通貨があるんです。ユーロじゃないですよ。多分、行ったことないからイメージできない。

私は仕事の帰りにプライベートで用事があって、ワルシャワに行ったんです。1回行ったら、すごく近いと思うんですね。何泊もして、いろんな人と交流して。

みんなとお話しして、ご飯を食べてということをしたら、僕にとってワルシャワはとても近い場所になりました。こういう食べ物があってこういう人たちがいて、友達がここにいてとなると近い。

だから私がすごく重要視してるのは、いろんな場所に行っていろんな人と話す。そうすると知ってるものが増えて、知らないものから知ってるものへ増えてくと、どんどん世界が広がり、身近なものが増えていくんです。

身近なものが増えていくと結果的に安心が増えていく。安心が増えれば増えるほど、その中のチャンスがある、安全なもの、要はちゃんと成長する、 利益が上がるものに対して投資をすることができるようになり、成功確率が増えていくことになります。

見方を変えればすべてが投資情報になる

投資というと何かすごい秘密の情報があって、その秘密の情報を得ることによって儲けていると思ってる人が多いんですが、ほとんどの情報はみんなが知っていることなんですね。みんなが見ている、みんなが知っているものが多いんです。

例えば、ここ「天狼院」。アパレルの中に本がある、新しいタイプの本屋さんですね。

実はここはアパレルの会社がやっていて、オーナーがTSIホールディングスという会社なんですが、私たちは実はここの会社の大株主です。今回、そういう関係があって呼ばれているんですけれども。

なぜ(株主になっている)かというと、この会社がどんどん成長しているから。でもこうやってアパレルで売り場とか現場を見ていて投資をしようという気持ちにはなかなかならないと思います。

私はあらゆるものが投資のチャンスがあるんじゃないかと、そういう目で見てるんですね。なぜかというと、僕らの(暮らしている)世界の中には、公開上場企業があふれている。

例えば電池を作ってる会社、床材を作ってる会社、イスの会社、と、周りを見るだけでもたくさんの上場企業があるんですね。こういうコップを作ってる会社もありますし。

これはサントリー食品。南アルプスの天然水を作っている会社ですね。このペットボトルの容器をつくる機械のメーカーも存在してる。さらに、これシールが貼ってありますね。

皆さん、ペットボトルでお茶とか飲んでぜひ外してみてください。このシールは、捨てるときには外しますよね。 容器を再生するときにはないほうがいいので、ピッとはがした状態で再生すると。

これを取った瞬間に、特にお茶とかを見ると全然おいしくなさそうになります。ぜひ取ってみてください。

なぜお茶がおいしそうに見えるかというと、このシールのおかげなんですね。このピラピラのシールは20年ぐらい前に開始されて10年ぐらい前から強烈に普及してきて、今はどこの会社でもこのシールを使っています。

これはシュリンクラベルと言うんです。シュリンクは縮むという英語ですね。要するに、縮む力を利用して貼っているんです。熱をぎゅっと加えて、それでぴっと貼る。だから糊の量が少なくて済むんです。

昔、ペットボトルって取ると糊が付いてました。ベテランのお兄さんとかベテランのお姉さんとか知ってると思います(笑)。そういうものなんですけども、最近はピッとはがしても糊が付いてないんです。

糊が付いてないから再生しやすくなってます、かつキュッと締まることによって、このペットボトルの形がどういう形であってもよく付く。

実はこのペットボトルの形というのも、この20年間で変化していますね。これも複雑な形状をしてますよね。複雑な形状をすることによってキラキラして見えるんです。女性なんか特にそうですけども、キラキラするものに吸い寄せられるじゃないですか。

キラキラしてないものよりも、キラキラしてるもののほうがいいですよね。そのほうが高級感があります。 だから、よりキラキラするように切れ込みを入れたり、もしくはくびれを作ったりして。

例えば伊藤園のジャスミンティーは、この女性のフォームになってます。中がくびれていて。飲みやすいっていうのもあるんですけれど、こういう女性形した形を僕らは美しいと思うんです。だからそういう美しいプロポーションみたいな形になっていると、より美しく見えて、美しく見えるものは手に取りやすいということになります。

革命の裏には様々な会社がいる

そういう革命ができるようになったのは、このペットボトルの技術だけではなくて、このシールのおかげなんですね。これを作ってる最大手がフジシールという大阪の会社です。東証一部上場の会社で、このシールを作ることによって巨大企業になりました。

世界にもこれを出してます。彼らはこれをサントリーでも、キリンでも、ポッカでも、コカ・コーラでも出してます。あらゆる会社で出してるのは、彼らには技術力があるからなんです。

では皆さん、こういうものを作ってる会社はどうでしょうか? つまらない会社でしょうか? 駄目な会社でしょうか?

やっぱりJPが、JR東日本がすばらしいですか? もちろんJPとかJR東日本はとてもすばらしい会社です。

でも、こういうプチシールみたいなものを作って、そしてお茶の飲み方を変えて、ペットボトルの形も変えてしまって、売り上げも利益も上がる会社というのは、とてもすばらしい会社だと思うんです。

だから私が皆さんにお伝えしたいことが何かというと、僕らが生きている世の中、世界というのはチャンスにあふれてるということなんです。こういうことに関心を向けられるかどうかが大事で。

多くの人はこういうものに関心を持たない。ただきれいにくっついてるなというだけなんだけど、これって何だろう、誰が作ってるんだろう、どういう仕組みなんだろうと考えると、実はあらゆるところにチャンスがある。

そして発見があり、魅力があるということがわかるんじゃないかと思います。

だから投資チャンスは、恵まれた人たちが偉そうに教えるとか情報をくれるとかというものでもないと思うんです。

それもあるとは思うんですが、実は誰でも情報を得ることができて、発見できると言えるんじゃないかと考えます。

だから私はいろんな情報を見ていろんなことを聞き、そして常に言っているのは、「どこにでもチャンスがないかと考えること」。

だから皆さんが、どんな服を着てるのかな、どんな眼鏡をしてるのかな、ネクタイをしてるかなしてないかな、それからどんな靴履いてるのかな、どんな髪型かな、髪の色どうかなということがすごく(気になります)。

今の大学生を見ていて驚いたこと

私は明治大学で教えてるんですけれど、昨日、一番最初の授業をして、気がついたこと、劇的に驚いたことは何でしょうか?

学生たち、明治の大学3年生、4年生、男の子も女の子も髪を染めている子がゼロだったんです。全部黒髪です。髪染めてるやつはダサいそうですね、今の大学生。

だから世の中って変化するんですよね。茶髪の人がゼロです。本当に1人もいなかったです。1年前はいっぱいいました。すごい世の中の変化が激しいですね。

私はこの明治大学で15年間授業を行っています。ベンチャーファイナンスという授業を行っていて。何でそういう授業をしているかというと、まず教えることが好きで楽しい。もう1つは教えることが、一番の学ぶことなんです。

15年間、私は私の授業に皆勤賞ですね。当たり前な話。私はいつも私の授業に参加しているんです。だから私は15年間、1回も休まずに自分の授業に参加している生徒なんですね。先生なんだけど、自分で自分を教えてるところがあります。

さらにこの15年間、私はずっと大学3、4年生にベンチャーファイナンスの授業を教えているから、私が留まっている限り、今の大学3、4年生の人たちの変化や考え方を学ぶことができるんです。

彼らから僕らは学ぶ。今の大学生はどういうことを考えているか、何が大切で何が嫌いで、何が彼らをかきたてているのかということを僕らは学びます。

だから、彼らとご飯食べたりして、「何考えてる?」「何してる?」「何が楽しい?」と彼らから勉強します。「何か流行ってるものない?」「Facebookどう?」「今はどういうアプリ使ってんの?」とか。それから海外旅行で行く場所とかの話をいっぱい聞いてます。

だから私には常に大学生から新しい情報が入る仕組みになっているし、私も彼らに今の世の中の経済の話をフィードバックさせるっていう教え合う関係ですね。

そうすると新しい情報が入ってくる。なるほど、今こういうアプリが流行って、グローバルのサイトの時代だ、動画のサイトの時代なんだなということがとてもつぶさによくわかる。

だから投資をすることですごく大切なのは知識を増やすこと。もちろん株式投資をするために四季報を読んだり、会社を調べたりホームページを見たりするのはとても大事なことですが、自分が行動するときにたくさんいろんなことや考え方を知るというのもとても大切なことだと思います。

藤野流SNSを使った情報収集法

その中でとてもいい武器があるんです。スマホ、今持ってる方多いです。スマートフォンはやはりすばらしくて、例えばTwitterとかFacebookとかいろんなSNSのツールを無料で得ることができます。

その中でとても私が重要視していることは、私はよく発信もしてるんですけど、発信する以上に読むことが大切です。FacebookとかTwitterとかで私が重要視しているのは読むことです。すごくたくさん読みます。

そして、読むのですごく大事なことは普通の人のを読むことです。

有名人とかいわゆるキュレーターって言われている人たちの情報を読むことも大事ですけど、僕はキュレーターとか有名な人は外してるんです。よっぽど大事な人は見ますけど、そういう人以外は外して。

何を見てるかっていうと、普通の人のを見てます。特に普通の人なんだけどやたらにおもしろい人っているじゃないですか。特に著名じゃないんだけどそのクラスの中でおもしろいとか。そういう人を発見して見るのがすごく好きなんですね。

かつ自分との意見の違いとかも結構つながってくるんです。なるべく年代の違う人、地域の違う人を見ると。例えば、北海道で十勝でアスパラガスを作っている45歳のおじさん。山梨県で保険の代理店をしているシングルマザーのお姉さんとか。そういういろんなステータスの方を。

もちろんずっと1日中見ているわけじゃないですが、そういった2万人ぐらいのさまざまな人たちをフォローをしています。

すばらしいのは、彼らはタダで情報公開してくれます。かつ、彼らは嘘ついてることもあるんですけども、お金を貰って書いてるわけじゃないでしょう?

自分の思ったこと感じたことを、彼ら彼女らの感性で書いてるということです。それがとっても大事なんです。

だから山梨県の35歳のシングルマザーの人は、こういうことにはこう感じる。60歳の沖縄の人は、こういうふうに感じるということを知ることができる。そうするとあらゆる人の意見を見ることができるんですね。