【QAあり】淺沼組、受注高は前年比69.2%増と大幅増 建築・土木分野での大型案件が寄与し、通期計画を上方修正
2025年度(2026年3月期)第2四半期決算説明会
浅沼誠氏:代表取締役社長の浅沼誠です。本日は当社説明会にご参加いただき、ありがとうございます。これより、株式会社淺沼組の2025年度第2四半期決算概要についてご説明します。
はじめに、私より簡単に概要をご説明します。当社グループの主たる事業である建設業界では、老朽化したインフラの更新需要が続いており、公共建設投資は堅調に推移しています。
民間建設投資では、省エネルギー基準適合義務化に伴う前年度の駆け込み需要の反動で住宅投資は伸び悩んでいますが、一方で非住宅投資は企業の設備投資意欲が堅調なことから、建設投資全体としては堅調な動きを続けています。
しかしながら、建設資材価格の高騰や人手不足の深刻化、労働時間規制の強化など、施工体制の確保には課題が残っており、事業環境は引き続き注視すべき状況です。
こうした中での当社グループの業績についてご説明します。受注高は、建築土木の大型案件の受注により大きく改善し、前年同期比69.2パーセントの増加となりました。この好調な受注環境を踏まえ、通期の受注計画を上方修正しています。
売上高は、豊富な大型繰越工事が順調に進捗したことにより、前年同期比21.1パーセントの増加を記録しました。
利益については、売上高の増加および売上総利益率の改善により、営業利益が前年同期比50.5パーセント増加し、堅調に推移しました。引き続き通期計画の達成に向けて、全社一丸となって取り組んでいきます。
また、2024年度からスタートした中期3ヵ年計画については、2年目に入り、半年が経過しました。3年間で注力する事項として6つのテーマを掲げ、それぞれにKPIを設定しています。
現在、各テーマとも着実に施策を実行しており、達成に向けて順調に推移しています。直近の主な取り組みについては、後ほどご説明します。
目次

浅沼真里香氏(以下、浅沼真里香):執行役員戦略企画本部コーポレート・コミュニケーション部長の浅沼真里香です。本日はよろしくお願いします。
目次に沿って、3つの内容についてご説明します。1つ目が2025年度第2四半期の業績内容、2つ目が2025年度上期における当社の取り組みの内容、3つ目が株主還元についての再掲です。
1.実績・進捗(連結)

2025年度第2四半期の業績についてご説明します。連結ベースでの実績進捗についてです。スライドの表では、左側が2024年度の内容、右側が2025年度、今年度の内容を示しています。
内容としては、左から2025年度の通期計画、その右に今年度第2四半期の実績、その右に通期に対する進捗率、さらにその右に前年同期比の増減額と増減率が記載されています。
第2四半期の実績についてです。受注高は第2四半期時点で1,327億3,100万円となり、通期計画に対する進捗率は79.2パーセントです。前年同期比では543億700万円増加し、増加率は69.2パーセントとなりました。
非常に好調に推移しています。その要因として、国内の建築分野で新築の倉庫や住宅などの大型案件を獲得したことが挙げられます。
リニューアルにおいても大型案件を獲得しました。土木分野においても、電線路関連の案件を受注したこともあり、非常によい水準で推移しています。
これに伴い、当初受注高の通期計画を1,515億円としていましたが、1,675億円に上方修正し、プラス160億円の増加となりました。
売上高は第2四半期実績で868億7,500万円となり、通期計画に対する進捗率は51パーセント、前年同期比ではプラス21.1パーセントと、良好な水準で推移しています。
昨年度に獲得した受注も含め、豊富な大型繰越工事が順調に進捗しています。これらは倉庫、工場、集合住宅を中心とした工事ですが、いずれも堅調に進捗した結果、前年同期比でプラスの推移を示しています。
売上総利益は第2四半期実績で100億2,600万円、通期に対する進捗が54.7パーセント、前年同期比プラス28.5パーセントです。売上総利益率は11.5パーセントで、前年同期比プラス0.6ポイントとなっています。
先ほどご説明したとおり、売上高の大幅な増加と売上総利益率の改善により、このような結果となりました。
販管費は第2四半期実績時点で54億8,400万円、前年同期比14.6パーセントの増加となっています。この要因として、当社の設計部門における管理体制の変更に伴う費用計上方法の変更、ベースアップも含めた人件費の増加、引当費用の増加などがあります。
営業利益は第2四半期実績で45億4,100万円となり、前年同期比プラス50.5パーセントです。販管費の増加分をしっかり吸収できており、営業利益率は5.2パーセントと前年同期比でプラス1.0ポイントとなっています。
親会社株主に帰属する当期純利益は30億7,000万円で、進捗率64.4パーセント、前年同期比プラス12億2,100万円、増加率66.1パーセントと好調に推移しています。
2.受注の内訳(単体)~官庁/民間別

単体ベースでの受注内訳についてご説明します。スライドは受注内容を官庁と民間別に分類したものです。
スライド中央の2025年度の表をご覧ください。第2四半期の実績として、単体の受注高は建築・土木計で1,280億2,500万円です。内訳は、官庁が286億5,000万円、民間が993億7,500万円となっています。
特筆すべき内容として、官庁のお客さまからの受注は、前年同期比260.9パーセント増、約3.6倍に増加しています。
右側の円グラフをご覧ください。外側は今年度第2四半期の受注内訳、内側は前年度第2四半期の受注内訳を示しています。グリーンが建築、赤が土木、濃い色の部分が官庁のお客さまからの受注です。
昨年度の内側の円グラフをご覧いただくと、官庁からの受注は建築が6パーセント、土木が5パーセントで、合計11パーセントとなっています。今年度は建築が18パーセント、土木が4パーセントで合計22パーセントとなり、全体の2割を超える官庁案件を受注しています。
当社の基本方針は、工種や官庁・民間のバランスを考慮した受注体制を維持することです。しかし直近では、民間のお客さまからの受注が非常に多い状況が続いていました。本年度の受注結果は、官庁案件の強化にも取り組んだ成果が数字として表れたものと考えています。
3.受注の内訳(単体)~用途別(建築・土木)

スライドは受注内容を用途別に示しています。左側が建築用途、右側が土木用途となります。
まず建築用途についてですが、引き続き倉庫案件が最も多くを占めています。次いで、ホテルなどの宿泊施設が全体の24パーセント、集合住宅が16パーセント、事務所や教育研究施設などが続いています。バランスよく受注を進めていると考えています。
右側の土木については、冒頭でご説明したとおり、電線路関連の大口案件を受注したこともあり、電線路が42パーセント、造成が23パーセント、道路が16パーセントとなっています。
3.受注の内訳(単体)~用途別(建築 新築・リニューアル)

受注内容をさらに詳細化したスライドです。建築の受注について、新築ベースを左側に、リニューアル案件を右側に工種別および用途別に示しています。
右側のリニューアルをご覧ください。リニューアルの受注は堅調に推移しており、最も多いのは大型案件として受注した事務所の案件です。続いて工場の案件、その他の案件が続いています。
1. 中期3ヵ年計画のテーマ

2025年度上期の取り組みや直近の取り組みについて、当社の中期3ヵ年計画に沿ってご説明します。
当社の中期3ヵ年計画は、今年度で2年目となりますが、3年間で注力する6つのテーマを選定しています。今回は、直近の取り組みとして6つのうち4つのテーマにアップデートがありましたので、これについてご説明します。
テーマ2の「リニューアル事業の強化」、テーマ3の「人材の獲得・確保・育成」、テーマ4の「DX推進」、テーマ6の「環境・社会への貢献」の取り組み内容についてお話しします。
2. テーマ毎の取り組み(1/4)

テーマ2の「リニューアル事業の強化」についてご説明します。当社の建築事業では、新築案件のみならず、今後需要が見込まれるリニューアル案件の強化にも取り組んでいます。
中期3ヵ年計画のテーマの1つとして、このリニューアル事業の強化を掲げていますが、リニューアルを提案する際には、単なるリニューアル提案にとどまらず、当社の独自技術を活用した当社ならではの提案を行っています。
当社が開発している独自技術には重要な柱として、ここに記載の環境配慮技術があります。中でも当社は、土を使った技術を特に強みとしています。
土を売りにしているゼネコンは珍しいと聞いていますが、当社ではこの土を1つの強みとして開発を推進しています。このたび、土を使った2つの工法で特許を取得しましたので、少しご紹介します。
1つ目は、左側に掲載している2枚の写真の「還土(かんつち)ブロック」です。これはセメントなどの人工材料を使用せず、土と水を練り混ぜて自然の材料のみで作ったブロックです。
すでにお客さまにご提案し、採用いただいている案件もあります。下の写真は、当社名古屋支店の応接室で、両脇に「還土ブロック」を採用しています。お客さまを実際にお通しし、「還土ブロック」を見て触れていただきながら商談を行っています。
もう1つは、右側の2つの写真にある「立体木摺土壁」で、こちらも同様にこのたび特許を取得しました。これは土や藁スサ、おがくずといった自然由来の素材を使用し、土と木を交互に積層したものです。
上の写真では青く着色された部分が土となっています。土の部分を着色することもできるため、非常に意匠性に富む方法だと考えています。下の写真は、実際にお客さまの店舗の壁に一部実装されたものです。
ちなみに、店舗自体が2025年のグッドデザイン賞を受賞しています。「土が壁としてよみがえった」というストーリー性や、先ほど述べた意匠性が審査員から評価され、受賞に至ったということです。
このように、土を用いた当社の独自技術をリニューアル提案に盛り込むことで、付加価値の高いリニューアル提案を今後も行い、さらに強化していきたいと考えています。
2. テーマ毎の取り組み(2/4)

3つ目のテーマは人材の獲得・確保・育成です。まず、人材獲得の状況ですが、今年4月入社の新卒新入社員は、おおむね目標どおりの人数が入社しています。
来年4月入社の新卒学生についても、現時点ではまずまずの採用状況です。足元で人材の確保がまったくできず苦戦しているということはありませんが、引き続き、このような状況を踏まえ、当社の重要課題として人材の獲得・確保・育成に注力しています。
その取り組みとして、直接的に人材の獲得や確保につながるわけではありませんが、左側の写真にあるように、当社では公式SNSを運用しています。これを活用し、当社が誇る施工物件を発信することで、ブランディングや認知度の向上を目指して強化を進めています。
また、右側の写真に示しているように、当社は「2025年大阪・関西万博」においてオランダパビリオンの建設に携わり、このプロジェクトに関連したイベントを実施しました。具体的には、オランダパビリオンに約100人の社員を集め、建設プロジェクトについて語る場を設けました。
オランダパビリオン自体が移築を見越した循環型建築であることから、このプロジェクトを通じて循環型建築について学び、体験する機会を提供しました。このような活動は、いわゆる従業員エンゲージメントや社員満足度、一体感を高めることを目的として企画・実行したものです。
このようにして社内外での当社の認知度を向上させ、さまざまなステークホルダーの方々に当社を知っていただき、愛着を持っていただけるような活動を、今後も強化していきたいと考えています。
2. テーマ毎の取り組み(3/4)

4つ目のテーマであるDX推進についてです。先ほどの人材に関する話とも関連しますが、生産性向上にはDXが不可欠であるため、さまざまな取り組みを行っています。
その1つとして、全社員を対象としたDX研修、「DXリテラシー人材育成プログラム」を新たに導入し開始しました。
このプログラムは、まず全社員がアセスメントを受け、自身のDXレベルを認識した上で、自分にどのような課題があるかを意識してもらうものです。その後、eラーニングを通じて学び、目標点数に達するまで再度アセスメントを受けるかたちとなっています。
あらためて、全社員にDX意識を持ってもらい、それを底上げすることを目的として、こうした取り組みを行っています。その他の個別のDX施策については、中段にガントチャートのかたちで示していますが、着実に進めているところです。
一番下にAIと記載していますが、AIを活用した技術提案や設計などを試行的に進めています。今後もさらにDXの強化を進めていきたいと考えています。
2. テーマ毎の取り組み(4/4)

6つ目のテーマである環境・社会への貢献についてです。その取り組みの1つとして、2024年度のGHG(温室効果ガス)排出量算定結果に関して、ソコテック・サーティフィケーション・ジャパンによる第三者保証を取得しました。
これにより、2025年度中にSBT認定の取得を予定しています。SBT認定を取得した際には、2025年度の目標をより意欲的に設定し、今後も積極的にCO2削減可能な建設の推進に取り組んでいきたいと考えています。
また、足元のCO2削減状況ですが、目標に対して実績は順調に推移しています。中段左側のグラフでは、スコープ1とスコープ2における目標と実績の推移を示しています。
丸の点で表しているのは排出量原単位の目標と実績で、下部の棒グラフは総量ベースの目標と実績を示しています。2024年度の実績はいずれも2030年度目標および2050年度目標に向けて順調に推移していることが確認できます。
右側はスコープ3のカテゴリ11に関する内容です。2024年度の実績については、一過性の要因によりすでに目標を達成しています。
一過性の要因とは、2024年度に竣工・引き渡しを行った物件が前年度に比べて非常に少なかったことや、工事の大型化に伴い件数が減少したことです。引き渡し物件の延床面積に、建築物の省エネルギー性能を示す指標であるBEI値を掛けて算出する仕組みのため、引き渡し物件が少なかった結果、CO2排出量が大きく下がった数値となっています。
私どもは、これを2024年度の一過性の要因と見ています。ただし、今後もこの状況が続くようであれば、目標の引き上げを検討する必要があると考えています。
なお、先ほどお伝えしたBEI値については、確実に引き下げられており、そこからもCO2削減が進んでいると言えます。引き続き、CO2削減に寄与する建設を推進していきたいと考えています。
3. テーマ毎のKPIの進捗

6つのテーマのうち4つの取り組み内容についてお話ししましたが、この6つのテーマに対して、当社では財務・非財務KPIを設定しています。
これらは年に1回算出しており、2024年度の実績ベースでは順調に推移していますが、引き続き意識を持って施策を遂行していきたいと考えています。
株主還元

株主還元の内容です。現中期3ヵ年計画における当社の株主還元方針として、配当性向70パーセント以上を維持する方針に変更はなく、引き続きこれを掲げています。
真ん中のグラフには9期における配当内容および株主還元の状況が記載されています。当社は株主還元を重要視し、これに注力し強化していることをご覧いただけると思います。
2025年度の配当については、中間配当16円、期末配当25.5円の合計41.5円を予定しています。当社はこの方針を維持しながら、企業価値の向上と株価の向上に努めていきます。
以上でご説明を終わります。ご清聴いただきありがとうございました。
質疑応答:通期計画および期末配当の修正の可能性について
司会者:「第2四半期の進捗率が良く、かつ建設業は下期に利益が積み上がる印象がありますが、通期計画の修正はないのでしょうか? また、それに伴い期末配当の修正もあり得るのでしょうか?」というご質問です。
浅沼真里香:現時点で2025年5月14日に公表した計画からの修正はありません。ただし、冒頭でご説明したとおり、受注高についてはプラス160億円の上方修正を行い、連結ベースで1,675億円としています。
なお、受注計画以外の売上や利益などの修正については、現時点では行っていません。ただし、修正が必要となった場合は、速やかに開示します。
配当については、引き続き配当性向70パーセント以上を維持していきます。
質疑応答:市場環境における課題やリスクについて
司会者:「業績は非常に好調ですが、市場環境における課題やリスクはどのように想定しているのでしょうか?」というご質問です。
浅沼真里香:おっしゃるとおり、受注の需要は非常に旺盛です。しかし一方で、建設費の高騰が現在の課題となっており、それに伴い企業による設備投資計画の見直しや延期、中止といったリスクを懸念しています。
この物価上昇の背景には、資材価格の高止まりに加え、労務費、設備工事費、運送費といった要因が影響していると考えています。
特に労務費については、時間外労働規制への対応や建設従事者の高齢化による人手不足が要因となっています。この傾向は今後も続くと予想されるため、労務費の高騰については注視していきたいと思います。
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