logmi Finance
logmi Finance
サイボウズ株式会社4776

東証プライム

情報・通信業

会社概要

青野慶久氏(以下、青野):みなさま、こんにちは。サイボウズ株式会社、代表取締役社長の青野慶久です。本日はIRグループ面談にご参加いただき、ありがとうございます。上半期の業績およびトピックスについてご紹介します。

まず、会社のご紹介です。サイボウズは1997年に創業し、今28年たったところです。愛媛県松山市で2DKのマンションからスタートしたのが、サイボウズの起源になっています。事業内容は当初から変わらずグループウェアの開発と販売です。

従業員は少し増えましたが、大きくは変わっていません。

企業理念

サイボウズの企業理念は、「チームワークあふれる社会を創る」です。この「チームワークあふれる社会」とはどのような社会なのかを、5つのカルチャーで表現しています。

1つ目の条件として、チームには共通の理想があり、それにメンバーが共感していることです。そこには多様な個性を持った人が参加するため、その個性を重視するというのが2つ目のカルチャーです。

3つ目が、集まってきたメンバーが嘘をつくことなく、隠し事をすることなく、公明正大にチームワークに取り組むことです。4つ目が、メンバーが主体的に自分ごとと思ってチームに貢献していくことです。

そして5つ目のカルチャーは、対話と議論としています。意見の違う人はたくさんいますが、じっくりと対話をして建設的に議論し、お互いの理解を深めてチームワークを進めていくことです。

これがサイボウズの考えるチームワークあふれる状態です。これはもちろん、サイボウズの社内でも徹底していきますし、このような文化を世界に広げていきます。これが、サイボウズの存在意義です。

ここは私たちが非常にこだわりを持って取り組んでいるところです。企業理念を掲げているだけの会社もありますが、サイボウズはとにかくこの企業理念に沿って、これを徹底して経営していきたいと思っています。

グループウェア事業

「チームワークあふれる社会」を作るために、グループウェア事業に取り組んでいます。チームで広く情報を共有することで、公明正大で自主自律のカルチャーを持つチームを増やそうという取り組みです。

今、私たちの主力グループウェアは「kintone」です。ノーコード、ローコードで、プログラミングをしなくても情報共有サービスを自分たちで作ることができます。このようなプラットフォームの「kintone」を中心に、「サイボウズ Office」「Garoon」「メールワイズ」などの情報共有サービスを提供しています。

サイボウズの歩み

サイボウズの創業期からの売上および利益の推移です。

当初から順調に成長してきたわけではなく、なかなか成長できない時期もありましたし、M&Aをしてグループウェア以外の企業を模索するような時期もありました。しかし、2011年にもう一度グループウェアに集中し、クラウドにビジネスをシフトしていくと決めてからは、安定的に売上が上がるようになってきています。

そして、サイボウズのクラウドビジネスの特徴として、多くのクラウドインフラを自社で構築、運用している点があります。つまり、データセンターを借り、サーバーを買ってきて自社の資産とし、それを並べて運用するところから自分たちでしています。したがって初期投資がかかるため、利益率が一時的に下がることもありました。

今は、それなりの規模の経済が効き始め、あるいは円安で米国のサービスの価格高騰による影響をあまり受けることなく、原価を自分たちでコントロールすることができています。結果として利益水準が上がってきている状況です。

また、今「kintone」が成長のエンジンになっています。こちらも自社で直接販売するよりは、パートナーとエコシステムを作って、パートナー経由で販売していくモデルを作っています。今、自社の社員は昔ほどは増えていないのですが、それでも売上は上がっていき、それによって利益率も上がっていくモデルになっています。

サイボウズNEXT

私たちが今したいのは、「kintone」を新しいプラットフォームにしていくことです。まだ「kintone」が部門でしか入っておらず、一部の業務にしか使ってもらえていません。

これをできれば全社で、もしくは社外の人を巻き込んで、より多様なユーザーが多様な業務システムの基盤として「kintone」を使ってもらうことを、長期の戦略として狙っています。

2025年12月期 上期業績ハイライト

今期の上期業績です。今期の上期は連結売上高が178億9,900万円で、前年同期比27.1パーセントの成長となりました。この一番大きな要素として、価格を改定した影響でいつもより成長率が高くなっています。

クラウドの売上高比率も92.1パーセントまで増えてきています。売上の9割以上はクラウドということです。

そして、その中の成長エンジンである「kintone」の売上高が、上半期で102億8,100万円と100億円を超えてきました。「kintone」の売上高成長率は36.4パーセントで、価格改定の影響もあり例年よりも高い成長率になっています。

したがって、成長率を維持できるかについては、価格改定の影響を受けていることをご理解ください。

2025年12月期 上期連結業績詳細

費用と利益についてです。ポイントとして、人件費が前年同期比で5.2パーセント増えています。従業員が増え、特別賞与を出そうということもあり増えています。

そして、「kintone」について先々、グローバルへの展開を加速していきたいということで、いろいろと研究開発の活動をがんばっています。それにより研究開発費は前年同期比20.9パーセント増です。

それぞれ額的にはそれほど大きくないため、営業利益は前期の22億4,700万円から今期は51億6,300万円となり、129.7パーセント増で倍強になっています。

2025年12月期 上期 製品別 連結売上高

サービスごとの売上高です。「kintone」は半期で100億円を超え、前年同期比36パーセント強の成長となっています。「サイボウズ Office」「Garoon」「メールワイズ」も成長しています。

「Garoon」は価格改定の幅が小さかったこともあり、前年同期比13.1パーセント増と比較的小さめの成長率になっています。

製品別 SaaS経営指標

SaaSの指標です。経営的にはこちらがどうなるか非常に心配していたのですが、「kintone」のARPAといわれるサブドメインあたりの月額の売上高が前年同期比9,600円増の4万4,600円で、顧客単価が増えています。

これは価格改定の影響もあり、顧客単価が予想どおり上がっているということです。ただし、懸念していたのは価格改定によって解約率が上がることです。結果として解約率は上がらず、むしろ若干下がって0.92パーセントとなっています。お客さまの離反は最小限にとどめられたといえると思います。

ただし、解約率はさらに下げたいですし、サブドメインの単価を一層上げて「Garoon」の13万5,000円あたりに近づけられるように伸ばしていけると思います。引き続き営業をがんばっていきたいです。

kintone 導入状況

「kintone」の導入状況です。契約している企業は3万8,000社を突破しました。東証プライム上場企業は1,800社ぐらいですが、その中の47パーセントがどこかの部門で「kintone」を使っている状況です。

大企業の中での実績がかなりついてきたと思います。そして「kintone」は業種、業態を選ばないことも1つの特徴です。

グローバル 導入状況

グローバルの導入状況です。グローバルで契約している企業数は米国で890社、中華圏(中国・台湾)で1,440社、東南アジアで1,380社となっています。

米国は前年同期比で横ばいです。この背景としては、以前のように米国に大きな投資をするより、投資とリターンのバランスを見ながら投資しているところがあり、獲得ペースが落ちていることがあります。

加えて、米国のパートナーが思ったように立ち上がってこない状況があります。また、今、北米だけではなく南米にやや力を割き始めており、「kintone」をスペイン語やポルトガル語対応にして実績を出していこうとしています。

そのため米国は社数ベースでは増えていません。売上ベースでは増えているため心配はしていませんが、ここも増やしていきたいです。

中華圏は、米中の関係からネットワーク上のリスクがあり、今はローカルの企業より中国に進出している日系企業にシフトして注力しています。その関係もあり社数があまり伸びていませんが、既存の契約いただいている日系企業の単価は上がってきており、それほど心配はしていません。

そして、今成長率が一番高いのが東南アジアで、社数ベースでも前年同期比13.1パーセントの成長です。タイやマレーシアで伸ばせるチャンスがあるのではないかと思っており、マーケティング活動にも力を入れていきます。

今年9月に「kintone Days Global 2025」を開催します。タイのバンコク、中国の深圳、上海、台湾の台北の4都市横断で開催するのは初の試みです。このように海外事業にも力を入れていきたいと思っています。

2025年度上期トピックス

上期のトピックスを4つご紹介します。今力を入れているのが、部門導入から全社導入、大規模導入へというところです。そのために「ワイドコース」という「kintone」の新しいライセンス体系を作り、販売活動をがんばっています。

事例紹介 JX金属様

事例のご紹介です。JX金属では、国内外で約4,200名が「kintone」を活用し、申請業務などの現場のさまざまな業務を積極的に電子化してDXに取り組んでいます。

現場主導で改善に次々と取り組んでいただくことで、申請業務などにおける紙の大幅削減ができ、年間6,000時間を削減できそうだと聞いています。この「ワイドコース」は、大企業にしか販売しないライセンス体系です。

単価も1ユーザー当たり月額3,000円で、今までに比べると高めの設定ですが、作れるアプリケーションの数が今までの1,000個から3倍の3,000個になっています。また、APIのリクエスト数も、今まで1アプリ1万リクエストだったのが10万リクエストまで対応できます。大企業でかなり多く使っていただけて、ニーズに応えられる構成になっているということです。

AIへの取り組み 「kintone AIラボ」で開発中のAI機能をβ版として提供開始

「kintone」の活用用途拡大において、今、避けてはとおれないのがAI対応です。「kintone」も粛々と生成AI対応を進めています。

「kintone AIラボ」という名前で、既存のお客さまにはβ版として生成AI機能を提供しています。

その中でまず「検索AI」があります。生成AIは、学習データをもとに作文して返してくれる仕組みになっていますが、「kintone」の「検索AI」機能を使うと、社内に蓄えたデータを学習データとして生成AIが回答してくれます。例えば社内の人事のマニュアルを「kintone」でデータベース化して「検索AI」機能を使うと、生成AIが社内の人事情報に基づいて答えを返してくれます。

「有給の取り方はどうすればいいですか?」という質問などに回答し、自社独自の生成AIを置くことができる機能です。これを使うと、人事に詳しいAI、営業や顧客情報に詳しいAI、社内で進んでいるプロジェクトに詳しいAIのように、社内にたくさんのAIを作ることができます。

ノーコードで、本当に簡単な操作でできるようになっているのが「kintone」の特徴です。

次に「アプリ作成AI」です。「kintone」の特徴であるドラッグアンドドロップで開発できるという操作を飛び越して、なんと生成AIと対話するだけでアプリができてしまいます。

今私たちは「シュシュっと作れちゃう」と宣伝していますが、もう「シュシュっと」しなくていいと思います。「顧客データベースを作りたい」と生成AIと対話していたら、生成AIがアプリを作ってくれる機能です。

最近それがさらに進化したのが、「プロセス管理設定AI」です。プロセス管理のワークフローの機能設定が意外と難しくて詰まりがちなのですが、それも生成AIと対話することで、ノーコードで生成AIがプロセス管理を設定してくれます。

このような生成AIの機能を使った「kintone AIラボ」で、「kintone」のAIの付加価値を高めていきたいと思っています。

企業で生成AIを導入するといっても、あまり成功事例を聞かないと思いますが、「kintone」を使っているユーザーなら、このような身近なところから生成AIを次々取り込んでいくことができます。

「連携コネクタ」β版の提供開始

「連携コネクタ」の提供を開始しました。「kintone」の1つの売りは簡単な導入ですが、実はもう1つのメリットとして、拡張性が高いことが挙げられます。APIが装備されているため、さまざまなシステムとつないで大がかりで複雑なことができます。

なかなかそこまで踏み出す企業が少なかったため、なんとか利用促進を図りたいと、多くのお客さまが使っている「Microsoft 365」と非常に簡単に連携できる「連携コネクタ」をβ版で「kintone」に無料提供しました。まずは連携する便利さをみなさまに知っていただこうという取り組みです。

こちらの「連携コネクタ」は、BizteXからOEM供給を受けました。「Microsoft 365」との連携に限定される機能限定版ですが、簡単に連携のメリットを感じていただけるソリューションとなっています。

愛媛オレンジバイキングスへの参画

スポーツエンターテインメント事業への参入についてお話しします。サイボウズを28年経営してきていますが、事業に関してはソフトウェア、しかもグループウェアというごく狭い分野に特化して徹底的に深掘りするアプローチで経営してきました。

このたび、愛媛県のバスケットボールチームを子会社化し、プロスポーツエンターテインメント事業に参入する意思決定をしました。

これは本当にいろいろなご縁があり、またソフトウェア事業にも良いシナジーになって返ってくるのではないかと思い参入することにしました。

サイボウズは愛媛県出身の会社で、私自身も愛媛県出身です。愛媛県には大変お世話になっていますし、何らかのかたちで恩返ししたいと思っていました。

そのような時に、愛媛県のバスケットボールチームである愛媛オレンジバイキングスが財務的に厳しく、試合も勝つことが難しくなり、集客も厳しい状況になっていたのです。プロバスケットボールのBリーグは右肩上がりで伸びているのですが、なかなか成長についていけず、財務力を強化したいというお話をいただきました。

そこで、私たちが貢献できるのであればと増資を引き受けて、サイボウズの子会社になったということです。

スライドの写真の一番左にサイボウズの人事本部長である中根弓佳が写っています。彼女が偶然、2019年からバスケットボールのBリーグの理事をしていたご縁もあります。彼女を経由して今のBリーグの状況なども理解することができました。

自分たちが財務面で支援すれば、このチームは必ず強くなって人気チームになり、プロスポーツエンターテインメント事業としても黒字化していくことができると確信したため、今回の出資をすることになりました。

愛媛オレンジバイキングスへの参画

まずは愛媛オレンジバイキングスを財務的に強くし、良い選手を取って強化します。そして今使っている体育館などもきれいにしてお客さまを集められるようにしながら、プロスポーツエンターテインメント事業として成長曲線に乗せていきたいと思っています。

ただし、そこで終わるのであれば今回の出資はしていません。その先に、このチームを強くして住民に愛されるものにしていけば、愛媛県のいろいろな自治体や応援している住民の方々、もしくは地元の中小企業の方々も巻き込んで、みんなでDXをしましょうと号令をかけられるのではないかと考えています。

そのような号令がかかるようになったら、中小企業1社1社に導入するのではなく、地域産業のプラットフォームとして「kintone」を取り入れて、まちぐるみでDXを進めようという取り組みができるのではないかと思います。

今は、ソフトウェアについても1社1社で買うもので、結局、ほかの会社に連絡する時には電話やFAXを使います。社内はデジタル化されているのに、社外に一歩出るとアナログに戻ってしまうようなことがあります。

まちぐるみでDX化することができれば、デジタルのインフラで多くの企業において同時に全体最適で効率を上げられるのではないかと考え、このような取り組みをしたいと思っています。そのための第一歩としての愛媛オレンジバイキングスへの参画とご理解ください。

どのようなペースでどのように進んでいくのかはまったくわからないのですが、このような新しい取り組みにもチャレンジしていきます。

ガートナー社発行のレポートに掲載

外部機関からの評価もいくつかご紹介します。1つ目に、ガートナーが発行したレポートに掲載されました。

ガートナーが市民アプリケーション開発プラットフォームのマーケット・ガイドを作成しました。その中で市民アプリケーション開発プラットフォームのグローバルの代表的なベンダーとして、21社中の1社として掲載されています。

ガートナーは基本的にはグローバル超大企業向けに、「ITはこうしていくべき」「今はこのような状況です」というレポートを出すのが特徴です。つまり、ガートナーが「大企業もきちんと市民開発プラットフォームに取り組むべきだ」というガイドを出したということです。

大企業であっても全部を業者で作るのも大変ですし、情報システム部門で作るのも大変です。そこで、「このようなノーコードの開発プラットフォームで市民アプリケーション開発を進めませんか」というガイドを出したのですが、そこに選んでいただきました。このようなトレンドもあり、私たちもエンタープライズへの営業を加速しています。

「HDI 格付けベンチマーク」クオリティ格付け

「HDI 格付けベンチマーク」です。これはコールセンターを評価するベンチマークで、こちらでも最高評価の三つ星を獲得しました。

三つ星を取るのは本当に難しいのですが、高い評価を得て4年連続で受賞することができ、現場も大変喜んでいます。サイボウズのサポートはフレンドリーかつ丁寧でわかりやすいという、大変高い評価をいただいています。

2025年12月期 通期業績見通し(2025年6月25日修正)

今期の業績見通しについてです。今期の業績については、売上高は前年比25.4パーセント増の372億200万円と予想しています。経常利益は前年比69.3パーセント増の90億3,200万円という予想です。

1株当たり配当金も前期の30円から10円増やし、40円を予定しています。これはあくまでも、このまま進んでいくとこうなるという見通しです。変更される可能性はありますが、今のところこのような見通しを立てているとご理解ください。

中期ターゲット

中期のターゲットについてです。今期は価格改定の影響もあり、やや強めの成長になっています。しかし来期からはこれほど甘い話はないため、来期以降もペースを落とさずに成長していきたいと思っています。

今、目標に掲げているのが3期後の2028年で、このまま進むと480億円から500億円ぐらいの売上高になりそうです。もう少しがんばってストレッチし、509億円を目標に掲げています。この509億円は、2023年の売上高254億3,200万円の2倍です。5年で2倍にしていこうというのが今の私たちの目標になっています。

その時に「kintone」も年間で330億円ぐらい売れていることを社内の目標とし、活動しています。

中期の注力活動

中期の注力活動です。1つ目に大規模な導入、全社導入を推進していきます。部門導入ではなく全社で使ってもらえるプラットフォームとして、また中小企業だけではなくエンタープライズ企業でも使ってもらえるようにしていきます。

2つ目が、より多様な人がより多様な情報を扱えるプラットフォームとして導入していくという、プラットフォーム型のビジネスにどんどんシフトしていくことです。

3つ目はグローバルです。日本ではある程度売れてきましたが、まだグローバルではこれからです。しっかりグローバルで戦えるように製品もレベルアップして、新しい製品の研究開発も含めてがんばっていきたいと思っています。

企業理念

最後にもう一度、私たちの企業理念です。サイボウズは「チームワークあふれる社会を創る」ために活動をしています。スライドの5つのカルチャーを満たすようなチームが世界中に溢れることを狙い、それを目指して、より良いグループウェアを作って普及させていきます。

質疑応答:「kintone」のエンタープライズ向け導入拡大について

青野:「『kintone』のエンタープライズ向け導入拡大の取り組みと、その時間軸や現時点での手応えについて教えてください」というご質問です。

今はあまり変わったことはしていません。他社もしているのと同じように、エンタープライズ企業にアカウント営業という担当をつけています。

提案する時も、一般的な提案書を使うよりは、その企業の個別の事情に合わせて提案プランを作り、それに基づいて導入を進めていただきながら定着を図っていく活動をしています。

実際にお客さまも契約ユーザー数も増え、採算が取れる手応えは感じています。このまま引き続き取り組んでいきたいと思います。

時間軸に関しては早ければいいですが、お客さまの都合もあるため、丁寧に少しずつ進めていくことになるかと思います。

質疑応答:「ワイドコース」の現状と見通しについて

青野:「『ワイドコース』の導入実績、引き合い動向、今後の見通しと現状の課題について教えてください」というご質問です。

「ワイドコース」の具体的な導入実績はまだ開示していませんが、予定どおり着実に受注できています。

現状の課題としては、まずは製品としてさらにレベルアップしていかないといけません。何千人、何万人規模の大企業でプラットフォームとして使っていただこうと思えば、使いやすいユーザーインターフェースだけではなく、その裏側の管理機能もより充実させる必要があります。したがって、開発と営業が足並みをそろえて改善を進めているところです。

このあたりも数年がかりになりますが、エンタープライズ向けに良い機能を作って、良い提案をしていくという両輪で回していけると思っています。

質疑応答:海外事業の取り組みについて

青野:「海外事業の現状の取り組みと課題、来期以降の投資の考え方を教えてください」というご質問です。

海外事業は引き続きがんばっていきたいと思っています。現状はスライドのとおりです。

課題としては、米国ではパートナーエコシステムがなかなか立ち上がってこないことです。このため、粘り強く取り組んでいきます。南米のほうが引き合いがきているため、場合によっては南米にも力を入れていきます。

「今、一番海外で投資をできそうな地域はどこですか?」と聞かれたら、やはり東南アジアです。タイなどで、もう少し投資を増やしても大きなリターンを取れる可能性があるため、東南アジアには少し投資を加速していきたいと考えています。

質疑応答:AI活用の現状と課題について

青野:「AI活用の現状と課題、AIエージェント機能の取り組みの現状について教えてください」というご質問です。

これについては先ほどプレゼンテーションの中で、今、「kintone」にどのように生成AI機能を取り込んで提供しているかというお話をしました。

今後の課題は、「kintone」だけでなく、「サイボウズ Office」や「Garoon」といった今までのグループウェア機能にもAIの機能を搭載していくことです。また、AIエージェントという新しい概念にも粛々と対応して、時代についていきたいと考えています。

質疑応答:価格改定の効果について

司会者:「昨年実施した、値上げによる効果と、来期に残る値上げ効果の概算について教えてください」というご質問です。

林忠正氏(以下、林):価格改定の影響ですが、大きく分けて3段階あります。1つ目が、月次契約のお客さまです。2024年11月のタイミングで値上げしており、すでに実績に反映されています。

2つ目が、年次契約のお客さまです。2024年11月以降、順次、契約が更新されていく中で価格の反映はされていますが、前年の12月、最初に2025年12月期の予測を立てたタイミングでは、価格改定による解約は、もう少し大きいのではないかと考えていました。

しかし、解約が意外に少なかったこともあり、2025年6月に開示した新たな業績の中で、あらためて読み直しました。年額のお客さまの値上げの影響と、その解約の現状を踏まえた数字は、すでに織り込んで出しています。

3つ目の影響ですが、今回、最低ユーザー数を5ユーザーから10ユーザーに引き上げました。月額で契約されているお客さまに関しては、2年間の据え置きになっています。2026年11月に一斉に適用されるため、このタイミングで影響が出てくるとは思いますが、そのままお使いいただければ、MRRは大きく伸びると考えています。

一方で、5ユーザーから10ユーザーと倍近い金額になるため、お客さまによっては一定の解約も予測されます。このあたりは社内で現在、金額を予想して算定しているため、おそらく年末に向けて、2026年12月期の事業計画を策定する中で盛り込んでいくことになります。

質疑応答:2025年12月期の広告宣伝費と研究開発費について

司会者:「2025年12月期の広告宣伝費と研究開発費について、どの程度をイメージしていますか?」というご質問です。

:こちらは詳細を出しているわけではないのですが、スライド11ページに第2四半期までの対前年の伸びが示されているため、このあたりを参考にご検討、ご確認ください。

質疑応答:人員採用について

司会者:「人員採用について、これから2028年12月期に売上高509億円を目指したいとのことですが、人員数が売上高達成のボトルネックとなる可能性はありますか?」というご質問です。

青野:可能性のあるなしでいくと、可能性はゼロではありません。ただし今日のプレゼンテーションの中でもご紹介したように、あまり人員数に依存するビジネスモデルにはなっていません。

エコシステム型のため、パートナー企業の事情もあります。また、今のメンバーがエンタープライズで大規模もしくは全社の導入を進めていけば、人員数がボトルネックになって売上高を達成できないことはないだろうと予想しています。

質疑応答:「kintone」の今後の拡大可能性について

司会者:「国内展開を考える上で、『kintone』の今後の拡大可能性についてはどう考えていますか?」というご質問です。

青野:現在のデータでは、「kintone」の売上が上半期で100億円、年間だと200億円ですが、まだまだ上を狙えると考えています。

「kintone」を使っているお客さまは、いまだ100万人、200万人というレベルですが、数千万人程度は狙えるはずです。十分、拡大の可能性はあると考え、取り組んでいます。

質疑応答:「kintone」のARPAについて

司会者:「『kintone』のARPAについてですが、2025年12月期の第2四半期は、前年対比で27パーセント増です。価格改定は2割程度なので、全社導入に伴うアップセル効果が効いているのでしょうか?」というご質問です。

青野:基本的に、そのように考えていただいてけっこうです。もともと「kintone」は、小さく入って大きく育てていくビジネスモデルのため、以前から少しずつ上がってきていました。今回、価格改定で2割ほど大きく上がり、それが加速したとご理解ください。

質疑応答:クラウド売上の増収率について

司会者:「クラウド売上の増収率0.数ポイント高が値上げ直後より加速しています。背景をどのように分析していますか? 値上げの浸透のほか、『ワイドコース』の貢献や全社導入などが考えられますが、いかがでしょうか?」というご質問です。

:「クラウド売上の増収率が0.数ポイント」がどこの数字なのかわかりませんが、値上げの浸透が一番大きいのではないかと考えます。

「ワイドコース」の実績についてはお答えできていませんが、着実に伸ばしていっている、積み上げていっているといった印象です。

また、値上げ前の解約率の前提と実績との差異についてですが、解約率は私たちが思っていたほどではなかったため、今回は、期中の2025年12月期の着地見込みの売上は上げ、その中に織り込んでいます。そのため、思っていたよりは解約が出なかった印象です。

青野:やはり、値上げをしたことによる新規の導入件数はネガティブに見ています。本当は価格改定の影響がどこにどのようなかたちで出るのか、私たちも、少なくとも1年間程度は数字の変化を見ながら、次の手を打っていこうと考えています。いいことばかりではないということで、ご理解ください。

質疑応答:株主還元の強化について

司会者:「2024年12月期は、自社株買いの実施や従前の1円刻みの累進配当からのDPS引き上げと、株主還元が以前よりも強化されています。どのような変化があり、株主還元の強化に至っているのでしょうか?」というご質問です。

:一番ストレートなかたちでいうと、基本的には株主のみなさまへの還元というのは、私たちの事業自体が着実に成長していくところです。そのため、事業成長のために必要な投資の余力はきっちりと勘案した上で、株主のみなさまへの対応策や還元策を考えるべきだと考えています。

昨年の値上げも含めてですが、足元の業績が順調なこともあり、得られる利益をきっちりとステークホルダーのみなさまにも分配しようということで、今回、増配をしています。

考え方としては、サイボウズの事業成長が最優先というところは特に変わってはいないのですが、結果として、足元で余力があるところはきちんとみなさまに還元しています。

質疑応答:AI機能の展開について

司会者:「ご紹介いただいたAI機能については、オプションでしょうか? これによる単価上昇効果は期待してよいのでしょうか? 同様に、ベータ版でご紹介いただいた『連携コネクタ』についても、将来的にはオプション展開や価格引き上げ効果を期待してよいのでしょうか?」というご質問です。

青野:現在、これらはベータ版で無償提供することで、お客さまがどのような使い方をするのかを探っているところです。

その結果、単価を上げられる、もしくはオプション価格として提供できると思えればそうしますし、それほど使い込まれないということであれば、今のまま無料での提供が続く可能性もあります。そのあたりは、お客さまの利用状況を見ながら判断していきたいと考えています。

質疑応答:エンタープライズ向け営業に必要な時間について

司会者:「エンタープライズ向けとして、営業がカスタマイズ対応して受け入れられるのに必要な時間は、どの程度を想定していますか? 1年から2年でしょうか?」というご質問です。

青野:もっと長くかかるイメージです。3年から5年ぐらいはかかるのが、普通のエンタープライズ企業の動きのスピードだと考えており、粘り強く進めます。

また、3年から5年でかなり浸透してきたと思っても、競合企業にひっくり返される可能性もあるため、本当に長い戦いになりますが、粘り強く取り組んでいきます。

質疑応答:利益率の改善について

司会者:「ここ数年で、利益率が大きく改善してきました。今期は特に値上げ効果も寄与しているかと思いますが、来期以降も、今期ほどではないにせよ、継続して毎期利益率の改善は一定程度、期待してもよいでしょうか?」というご質問です。

:改善していきたいとは考えていますが、明確に今、お答えすることはできません。

というのも、サイボウズの費用構造の中で大きな比率を占めているのが、人件費と広告宣伝費です。広告宣伝費は、ブランドを作る際にはかなりのコストがかかりますが、一定のブランドができている今、売上に連動するかたちで同じぐらい使い続ける必要があるかというと、そこまでではないと考えています。

一方で、人件費については、市場環境でもかなり上がっていっています。また、これからの採用計画に応じて変化してくることもあり、それ次第で利益率は大きく変わってきます。そのため経験上、今後も上がっていくとは現時点ではいえませんが、引き続き改善していきます。

青野:少し補足します。スライド7ページにあるグラフの赤い線が、連結の営業利益です。見ておわかりのとおり、でこぼこしています。

これは何を意味するかというと、今はクラウドにしっかり投資しようと思えば、赤字になっても投資をするということです。

2021年、2022年についても、世の中にクラウド化の波がきており、大きく認知度を上げておこうと思ったため投資をしました。

私たちは、持続的な利益率の改善について柔軟に考えています。もっと長期で、どうすればビジネスを拡大していけるかを考えているため、利益率の改善を継続することについては期待をしないでいただきたいです。

ただ、企業理念で掲げているように、世界中のチームワークを良くするためにベストだと思えば短期で投資しますし、逆に、投資は控えたほうがよいと思えば利益を出しにいきます。

質疑応答:「kintone」の競争優位性について

司会者:「『Microsoft Power Apps』等の外資系のライバル製品のほか、国内では『AppSuite』、『desknet's NEO』等があると思います。これらのツールとの競争優位性は、どのようなところにあると見ていますか?」というご質問です。

青野:3点お話をしますと、1つ目の特徴として、導入のしやすさにこだわっていることがあります。申し込みからノーコードで簡単にアプリを作れたり、難しい専門用語やIT知識を覚えなくても使えたりする点が、特に外資系の競合企業より進んでいます。

2つ目は、私たちの強みであるエコシステムです。

結局のところ、ソフトウェアが良かったとしても、お客さまが全部使いこなせるわけではありません。また、お客さまはそれほど暇ではないため、近くにパートナー企業があり、支援してくれるパートナーネットワークがないと、ソフトは売れないと考えています。

「kintone」はいまだ国内だけですが、国内でそれなりのパートナーネットワークを作ってきましたし、「kintone」と連携するサービスも多数出てきました。したがって、3つ目の強みは拡張性だといえます。

「kintone」にはパートナーエコシステムがあり、APIが装備されているため、導入時点はシンプルですが、そこから努力すれば、非常に複雑なことまでできるようになったり、かなり大がかりなシステムを作れるようになったりするのが特徴です。

この3つの競争優位性をもって、競合と向き合っていきたいと考えています。

質疑応答:北米市場の事業縮小可能性について

司会者:「北米市場において今後も伸び悩んだ場合、事業縮小を検討される可能性はありますか?」というご質問です。

青野:可能性のあるなしでいくとありますが、今のところは考えていません。というのも、北米市場は、IT業界においてはかなり特別な市場であり、ここでビジネスをしていることによってさまざまな良い影響を受けます。

例えば、本日、ガートナー社のレポートに当社が掲載された話がありましたが、私たちが北米市場でビジネスをしていなければ、掲載されることはまずありません。

あのようなグローバルなレポートは米国発ですから、やはり、米国で一定の認知度や知名度、ポジションを取っておくのは、グローバル全体でビジネスをする上でも大事なことです。

そのため、北米市場だけのリターンで見るのではなく、グローバル全体のリターンで見なければいけません。また、競合の観点からしても、多くは北米の市場からやってきます。北米は厳しい市場ですが、そこで戦っておくことで、どのような競合とどうすれば戦えるのかといった学びを得る大きな機会になります。

彼らが日本市場に攻めてきた時に、今度はディフェンスをしないといけないわけですが、先にきちんと北米市場で戦っておくことで、日本市場を守れると考えています。日本市場を守るためにも、北米市場で戦わないといけません。

そのため、北米市場の売上などだけで判断しないように事業投資をしていきます。

質疑応答:「kintone」の導入割合について

司会者:「『kintone』ですが、部門導入ではなく、複数ないし全社的な導入になっている企業の割合と、その見通しを教えてください」というご質問です。

青野:どの数字に基づくかが難しい質問ですが、一番は、やはりARPAでしょうか。ARPAが今のところ4万4,000円なので、そのぐらいの広がりです。

質疑応答:「Neco」移行における利益面での影響について

司会者:「クラウドインフラ基盤『Neco』への移行は、いつ頃を想定されていますか? 移行が完全に終われば旧基盤での運用コストがなくなるため、粗利や利益率にとってはプラスという認識でよろしいですか?」というご質問です。

:こちらは今、順次、乗せ換えているところではあります。ただ、直近でまだ数年はかかると考えられるため、いつ終わると断言はできません。

コスト面では、確かに2つを動かしている部分があるため、若干の影響はあります。

しかし、今想定しているのは、あくまで運用のオペレーションコストを下げることを目的とした基盤の移行です。そのため、原価率が極端に下がることはないと考えています。

質疑応答:「kintone」AI機能の利用実態について

司会者:「『kintone』のAI機能ですが、顧客の利用実態やフィードバックなどをどう分析していますか?」というご質問です。

青野:まだ、一部の先進的な企業が試している程度の利用実態かと思います。もっと私たちも啓蒙活動をしたり、利用率を上げたりしながら、お客さまを生成AIの世界に引き込んでいかないといけないと考えています。

質疑応答:「kintone」の将来的な付加価値について

司会者:「将来的に、企業の業務フローの中にAIが当たり前に入り込んでいる世界が来たとして、『kintone』が単なるデータベース以上の存在価値を示し続けるために重要なことは何だとお考えでしょうか? 『kintone』が外部のAIエージェント等から操作されるようになると、ただのインプットしやすいデータベース扱いになりかねないのではないかと危惧しています」というご質問です。

青野:私たちも危惧しているところです。「ただのインプットしやすいデータベース」という言葉がありましたが、ただのインプットしやすいデータベースはなかなか作れません。それを作れる会社をあまり見たことがないため、そこを突き詰めていくのも私たちが実現したいことです。

「kintone」を使って、あちらのデータもこちらのデータも次々インプットすることができ、それをもとに学習データを作って生成AIを作れるなら、生成AI時代にむしろ重宝されるデータベースになることもできます。

また、外部のAIエージェントなどにも積極的に対応していくことで、私たちは、業務フローの分野にもよりリーチしていける可能性もあるかもしれません。この生成AI時代に、新しいテクノロジーを学び、実装しながら生き残っていきたいと考えています。

質疑応答:ソリューション開発エンジニア部隊における生成AI活用について

司会者:「ソリューション開発エンジニア部隊における生成AI活用についてです。開発の効率化の進展はいかがでしょうか? 開発における活用が進み生産性が上がっている場合、将来的にエンジニア採用数が従来より減る可能性があるのではないでしょうか?」というご質問です。

青野:今、特に米国のソフトウェア企業では、生成AI活用でエンジニアを減らす動きもあります。まだ私たちはそこまでは進めていませんが、今後、生成AIを使った開発で効率が上がれば、今のメンバーでもっと多くの開発ができるようになるかもしれないため、そのあたりはチャレンジしていきます。

質疑応答:利益水準を大きく変動させうる要素について

司会者:「今後、利益水準を大きく変動させうる投資項目として、何を念頭に置かれていますか?」というご質問です。

青野:一番わかりやすいのは、プロモーションかと思います。2021年、2022年あたりは、新しくテレビCMや交通広告を増やしたことなどが利益に影響しました。

今後、日本でもプロモーションを加速していこうという動きもあるかもしれませんし、例えばアジアなどグローバルでもっとプロモーションをかけてみようということもあるかもしれません。このあたりは、利益水準を大きく変動させうる要素だと考えています。

質疑応答:米国事業再加速のための施策について

司会者:「海外ビジネスにおける米国事業再加速のための施策について、今期、取り組みたいことと、来期以降、取り組みたいことについての展望を伺えますか?」というご質問です。

青野:一番の課題を挙げると、エコシステム作りです。「kintone」は、あくまでもパートナーがいて、パートナーが付加価値をつけてくれて、そのパートナーが増えていくことで販売も伸びるモデルです。

なかなか米国ではパートナーの立ち上がりがよくないのですが、その中でも「kintone」を学んで販売をしてくれるパートナーも出てきているため、実績を上げながらエコシステムを拡大していきます。

非常に地道な活動ですが、まだまだいけると考え、引き続き取り組んでいきます。ただ、一気に伸びることはなかなか難しいと考えています。

質疑応答:米国事業について

司会者:「米国事業は、経営陣としても物足りない数字だと推察します。少なくとも中計期間中は、パートナーのリスキリングを待つというスタンスでしょうか?」というご質問です。

青野:繰り返しになりますが、おっしゃるとおり、中期経営計画期間中は、パートナー育成にフォーカスしていきます。

物足りなくはありますが、米国でソフトウェア事業を行うことは、これ以上、世の中に難しい事業がないのではないかというくらいの難易度です。「米国でソフトウェア事業で成功しました」と言った瞬間に、私たちの企業評価はまったく違うものになるはずです。

それぐらい、世界中の猛者が米国市場に集まってきているわけです。そのようなところで簡単に勝てるとは思っていないため、粘り強くマラソンのつもりでがんばっていきます。

質疑応答:価格改定について

司会者:「2024年に価格改定を行っていますが、今後、どのようなことがあったら価格改定を行いますか? インフレ等々が進んでいるため、こまめに価格は見直していくのでしょうか?」というご質問です。

:私の記憶だと、昨年の価格改定自体が10年ぶりぐらいだったと思います。サイボウズとしては、細かいスパンで価格改定することは、少なくとも今の時点では考えていません。

私たちは自社基盤上に乗っていることもあって、利用しているクラウドサービスの価格改定などの影響をそこまで受けません。自分たちがビジネスを拡大していく中で、適切なタイミングで行っていきます。そのため、非常にこまめに価格を見直すことは、今のところは想定しづらいです。

質疑応答:ARPAの成長について

司会者:「先ほど、ARPAは4万4,000円とお聞きしましたが、2、3年でどのくらいまで拡大が可能であると考えていますか? また、その成長を加速させるための施策はどのようなものがありますか?」というご質問です。

青野:もちろん、ARPAの数字は拡大させていきたいと考えてはいるものの、それを最重要の指標とは見ていないこともお話ししないといけません。

というのは、先ほど申し上げたように、「kintone」は、小さく入れて大きく育てるビジネスです。ARPAが大きく伸びていたら、新規で小さく入れるほうができているのか? という疑問が出ます。価格改定したところもありますが、今は若干、そちらを懸念しています。

新規の導入についても、まだまだ増やしていきたいと考えています。ARPAは一応、増えてはいくでしょうが、あまりにも増えれば、それはそれで問題があるという見方もあるため、他の数字とのバランスを見ながら改善していきます。

質疑応答:「kintone」の中堅・中小企業や自治体への拡販について

司会者:「『kintone』の国内販売については、大企業を中心にリソースを投下されていると思いますが、中堅・中小企業や自治体への拡販についてはどのようなスタンスでしょうか? あまり注力する領域ではないのでしょうか?」というご質問です。

青野:「チームワークあふれる社会を創る」ためには、小さなところから大きなところまで、自治体まで含めて全部取るつもりで販売を行っているため、注力市場ということになります。

例えば、テレビCMは大企業向けに作っているわけではありません。中小企業の方でも簡単に「シュシュっと作れますよ」ということをプロモーションしているわけで、中小企業さん向けのビジネスにも相当、注力しています。

ご質問にあったように、最近は自治体の導入が進んでおり、自治体も当たり前のようにクラウドを買えるようになっています。自治体の職員の人手不足などもあり、DXを進めようと、時には自治体の全庁導入ということで、何千ユーザー、場合によっては1万以上のユーザーの導入なども出てきています。

どちらかというと、国内の大企業については、今まで私たちがあまり拡販してこなかった市場に対して新しく訴求し、今までの市場は今まで以上にがんばっていくとご理解ください。

facebookxhatenaBookmark